JPH0894505A - 脱離ガス分析装置 - Google Patents

脱離ガス分析装置

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JPH0894505A
JPH0894505A JP6226479A JP22647994A JPH0894505A JP H0894505 A JPH0894505 A JP H0894505A JP 6226479 A JP6226479 A JP 6226479A JP 22647994 A JP22647994 A JP 22647994A JP H0894505 A JPH0894505 A JP H0894505A
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JP
Japan
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sample
heating
gas analyzer
infrared
desorbed gas
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Application number
JP6226479A
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English (en)
Inventor
Masako Mizuno
昌子 水野
Takashi Aoyama
青山  隆
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Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 固体材料の局所部分(結晶粒界、欠陥など)
にトラップされているガス成分を正確に分析する。 【構成】 試料4に対して、電子銃6から電子線24を
照射する。このとき、電子線24を対物レンズ8で集束
させて試料4に照射し、試料の一部分を加熱する。加熱
された試料4の一部分からはガスが放出されるので、こ
の放出ガスを質量分析計20で分析する。また、試料4
の加熱された一部分から放射される赤外線を、探針1
1、光ファイバ15を介して赤外線検出器16で検出
し、その赤外線データを温度計本体17に送る。温度計
本体17では赤外線データから試料4の表面温度を求
め、その結果に基づいて、制御装置18は電子線24の
強度を調節して試料4表面の加熱温度を制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は脱離ガス分析装置に係
り、特に固体材料中の局所部分から脱離するガスを分析
する脱離ガス分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】最近、鉄鋼材料の水素脆化、遅れ破壊、
応力腐食割れなど、鉄鋼材料中の局所部分に集積する水
素に起因する現象が問題になっている。これは、結晶粒
界、析出物と母相の界面、欠陥(転位線、転位ループ、
空孔など)、微量不純物の偏析部などに集積している水
素に起因すると考えられている。しかし、各々の場所に
存在する水素の定量化はなされておらず、定量化法の確
立が問題になっている。
【0003】固体材料中の水素の分析法として、昇温脱
離ガス分析法(TDS)がある。TDSは、固体試料
(バルク)を昇温加熱したときに、試料から放出され
る、吸着もしくは試料内の捕捉分子の脱離特性を温度の
関数として示すものである。結晶粒界、欠陥、析出物等
の捕捉サイトによって、水素が脱離するときの脱離温度
(脱離の活性化エネルギ)に違いがあれば、脱離スペク
トルをピーク分割し、金属組織との相関をとることによ
り、各ピークの同定を行うことができる。しかし、TD
Sスペクトルの各ピークの同定にあたっては、結晶粒
界、欠陥、析出物等の異なる試料を作製して、それらの
試料についてTDSスペクトルの測定と金属組織の観察
を行って両者の相関をとる必要があり、操作や解析が煩
雑である。また、各々の捕捉サイトからの水素の脱離温
度が接近している場合や、捕捉サイトによって水素の脱
離量が大きく異なる場合には、ピーク分割の精度が悪く
なり、各々の捕捉サイトから脱離する水素の量を正確に
測定できないという問題がある。
【0004】また、試料の表面形状を観察する手段とし
て、走査電子顕微鏡(SEM)、走査トンネル顕微鏡
(STM)、SEMを備えたSTMなどがある。SEM
は、X線マイクロアナライザと結合させることによっ
て、SEMで観察した領域の組成分析を行うことができ
るが、X線マイクロアナライザでは水素の分析を行なう
ことはできない。STM、SEMを備えたSTMでも、
試料表面の形状を原子レベルで観察することが可能であ
るが、結晶粒界、欠陥などにトラップされている水素を
定量することはできない。
【0005】また、マック(C.H.Mak)らは、試
料表面にレーザを照射することにより、試料表面に吸着
した水素を脱離させて質量分析するという手法(レーザ
励起脱離ガス分析法)を用いて、ルテニウム(Ru)の
表面に吸着した水素の拡散係数を求めている(ジャーナ
ル オブ ケミカル フィズィックス、85巻、第16
76頁(1986年);J. Chem. Phys., 85, 1676(198
6))。この手法は、均一な表面構造を有する試料を測定
対象とするものであり、この装置を用いて試料の特定箇
所(結晶粒界、欠陥、析出物など)に捕捉されている水
素の量を求めることはできない。すなわち試料の表面形
状を観察して分析箇所を選択し、その箇所のみを局所的
に加熱して、その場所に存在する水素の量を求めるとい
う機能はない。また、この装置には昇温加熱するという
機能がなく、異なる捕捉サイト(結晶粒界、欠陥、析出
物など)に存在する水素(すなわち、脱離の活性化エネ
ルギーの異なる水素)を、各々分離して定量するという
ことはできない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、TD
Sではバルク試料から脱離するガスを分析するため、脱
離スペクトルを測定後、ピーク分割をし、各ピークの同
定を行う必要がある。各ピークを同定するには、脱離ス
ペクトルと金属組織の相関を調べる必要があり、複数の
試料についての測定が必要である。したがって、測定や
解析に長時間を要する。また、各々の捕捉サイトからの
水素の脱離温度が接近している場合や、捕捉サイトによ
って水素の脱離量が大きく異なる場合には、ピーク分割
の精度が悪くなり、各々の捕捉サイトから脱離する水素
の量を正確に測定できないという問題がある。また、水
素の量を正確に測定できないという点では、SEM、S
TM、SEMを備えたSTMでも同様である。
【0007】さらに、レーザ励起脱離ガス分析法では、
試料の特定箇所(結晶粒界、欠陥、析出物など)に存在
する水素を分離して定量するということができないとい
う問題がある。
【0008】本発明の目的は、固体材料の局所部分に捕
捉されているガスを直接分析することにより、ガス成分
を正確に測定することができる脱離ガス分析装置を提供
することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の脱離ガス分析装置は、真空容器と、前記真
空容器内に収納された試料に対して、電子線、赤外線ま
たはレーザ光線を集束させて照射し試料の一部分を加熱
する加熱手段と、前記試料の加熱された一部分から放出
されるガスを分析する分析手段と、を具備するものであ
る。
【0010】また、上記構成の脱離ガス分析装置に、試
料の加熱された一部分から放射される赤外線を検出する
赤外線検出手段と、検出した赤外線データから試料の温
度を求めるとともに、その求めた温度に基づいて、加熱
手段から照射される電子線、赤外線またはレーザ光線の
強度を調節して試料の加熱温度を制御する制御手段と、
を付加した構成としてもよい。そして、電子線を走査す
ることにより、試料の全体もしくは一部の表面像を検出
する手段を設けることもできる。
【0011】また、本発明の脱離ガス分析装置は、真空
容器と、前記真空容器内に収納された試料の表面に接近
して針状部材が設けられ、該針状部材内を介して試料に
赤外線またはレーザ光線を照射して試料の一部分を加熱
する加熱手段と、前記試料の加熱された一部分から放出
されるガスを分析する分析手段と、前記試料の加熱され
た一部分から放射される赤外線を検出する赤外線検出手
段と、検出した赤外線データから試料の温度を求めると
ともに、その求めた温度に基づいて、前記加熱手段から
照射される赤外線またはレーザ光線の強度を調節して試
料の加熱温度を制御する制御手段と、を具備するもので
ある。
【0012】さらに、本発明の脱離ガス分析装置は、試
料の表面に接近して針状部材が設けられ、該針状部材内
を介して試料に赤外線またはレーザ光線を照射して試料
の一部分を加熱する加熱手段と、前記試料の加熱された
一部分から放出されるガスを分析する分析手段と、前記
針状部材を試料表面に対して相対的に移動させる駆動手
段と、前記針状部材と試料表面との間にトンネル電流を
生じさせるための電圧を印加する電圧印加手段と、前記
駆動手段によって前記針状部材を試料表面に対して相対
的に移動させたときの前記トンネル電流を検出するトン
ネル電流検出手段と、前記トンネル電流の検出値に基づ
いて試料表面の凹凸を表示する表示手段と、を具備する
ものである。
【0013】前記針状部材は試料表面上に対して二次元
的に走査可能となっている。上述の加熱手段には、電子
線、赤外線またはレーザ光線のスポット径とその形状を
調節する手段が設けられている。また、上述の加熱手段
は、試料表面上で二次元的に走査して試料を加熱できる
よう構成されている。また、上述の分析手段には、試料
の加熱領域にサンプリング管を近づけることにより、加
熱領域からの放出ガスを選択的に抽出する手段が設けら
れている。
【0014】
【作用】本発明の脱離ガス分析装置においては、SEM
によって試料表面を観察して分析箇所を設定した後、小
径に絞った電子線、赤外線あるいはレーザ光線を照射す
ることによって試料の一部分を局所的に加熱し、その加
熱によって脱離する(放出される)ガスを質量分析計な
どで分析することにより、固体試料中の局所部分から脱
離するガスの分析を可能にしている。
【0015】また、SEM、STM、あるいはSEMを
備えたSTMによって、試料表面を観察して分析箇所を
設定した後、針状部材を分析箇所に接近するように移動
させた後、針状部材内に赤外線あるいはレーザ光線を通
すことによって試料の局所部分を加熱し、その加熱によ
って脱離するガスを質量分析計などで分析することによ
り、固体試料中の局所部分から脱離するガスの分析を可
能にしている。
【0016】本発明の脱離ガス分析装置においては、S
EM、STM、SEMを備えたSTMによって試料表面
を観察して、脱離ガスの測定領域を選定した後、その測
定領域を加熱手段によって局所的に加熱することによ
り、たとえばステンレス鋼の結晶粒界、析出物、欠陥な
どの捕捉サイトにトラップされている、水素などのガス
を直接分析することができる。
【0017】加熱する部分の面積に関しては、電子線の
ビーム径、レーザ光線や赤外線を集束させるための集光
系、レーザ光線や赤外線を通す針状部材の先端部分の径
などを変化させることにより、加熱する部分の面積を変
化させることが可能であり、5nm〜2mmオーダーの
範囲で加熱部分の径を変化させることができる。また、
試料に赤外線やレーザ光線を照射するときの、試料に対
する傾きを調整することによって、ビーム径の形状を、
円形、だ円形などに変化させることができる(だ円形の
長軸と短軸の比率を変化させることも可能である)。
【0018】本発明の脱離ガス分析装置は、電子線、赤
外線、レーザ光線などを試料に対して相対的に移動させ
て試料を加熱するという手段を有している。また、針状
部材内に赤外線、レーザ光線などを通して試料を加熱す
る場合においても、針状部材を試料に対して相対的に移
動させる手段を有している。これらの手段を用いること
により、電子線、赤外線、レーザ光線あるいは針状部材
を走査させて(試料をXY方向に移動させてもよい)、
試料のある範囲を一定温度で加熱し、試料から脱離する
ガスのMS強度を3次元画像として描くことができる。
【0019】なお、本発明の脱離ガス分析装置では、S
EMやSTM観察を行ったのと同一の領域について、上
述した方法により脱離ガスの分析をおこなって3次元像
を得ることができるので、試料の形状や表面の凹凸と脱
離ガス量の相関を求めることができる。
【0020】また、同一の領域で温度を変化させて脱離
ガスの3次元像を測定することにより(たとえばある領
域についてまず200℃で脱離ガスの3次元像を測定
し、引き続き同じ領域にについて400℃で脱離ガスの
3次元像を測定する)、複数の捕捉サイトが接近してい
たり、重なっていたりするような場合(たとえば粒界上
にクロム炭化物が析出しているような場合)でも、各々
の捕捉サイトにトラップされているガスを分離して定量
することができる。
【0021】さらに、本発明の脱離ガス分析装置では、
試料の加熱部分の温度を赤外線検出手段で検出して、そ
の信号を試料を加熱手段に送って、試料に照射する電子
線、赤外線、レーザ光線などの強度を変化させるという
機能を有している。そのため、試料を一定温度で加熱す
るだけでなく、直線的に昇温加熱する、階段状に温度を
上昇させて加熱する、一定速度で昇温加熱した後、ある
温度で保持して加熱するなど、種々のモードで加熱する
ことができる。なお、スペクトルが複数のピークからな
っているような場合には、加熱モードを最適化すること
によって各ピークの分解能を向上させることができる。
【0022】また、本発明の脱離ガス分析装置では、試
料から脱離したガスをサンプリング管を用いて取り込み
検出手段まで導くことにより、局所加熱で少量のガスし
か発生しないような場合でも脱離ガスを正確に検出で
き、精度良く分析を行うことができる。
【0023】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を用いて説明す
る。
【0024】(第1実施例)図1に、本発明の第1実施
例による脱離ガス分析装置の構成を示す。図1におい
て、1は真空容器2に固定された支持体である。3x及
び3yは、各々試料戴置用のXステージ及びYステージ
であり、支持体1に取り付けられている。4はXステー
ジ3xの上面に置かれた試料である。そして試料4は、
Xステージ3x及びYステージ3yの移動により、支持
体1上の斜面に沿った平面内で移動可能である。また、
3zは支持体1全体を上下方向に移動させるZステージ
である。5は支持体1に設けられた防震機構である。
【0025】6は電子線14を発生する電子銃、7x及
び7yは電子線24を二次元的に走査するための偏向コ
イル、8は対物レンズである。また、9は試料4に電子
線24を照射したときに試料4から放出される二次電子
を検出する検出器、10は検出器9からの信号を受けて
二次電子像を表示するCRTである。
【0026】11は探針であり、電子線24を電子銃6
から試料4に照射して試料4の局所部分を加熱したとき
に、試料4の局所部分から発生する赤外線を取り込むた
めのものである。12は探針11から取り込まれた赤外
線を集光する赤外線集光部、13は探針11と集光部1
2を保持する探針保持部材である。14xは探針11を
X軸方向(Xステージ3xの移動方向と同方向)に移動
させる移動機構、14yは探針11をY軸方向(Yステ
ージ3yの移動方向と同方向)に移動させる移動機構で
ある。また、14zは探針11をその軸方向(これをZ
軸方向とする)に移動させる移動機構である。
【0027】19は探針のX、Y及びZ軸方向への移動
をコントロールする探針移動機構制御装置である。16
は赤外線検出器である。赤外線集光部12に集光された
赤外線は光ファイバ15によって赤外線検出器16に送
られ、ここで電気信号に変換される。その後、その信号
は温度計本体17に送られ、温度計本体17にて試料4
の局所部分の加熱温度を表示する。18は温度計本体1
7からの信号を受けて、電子銃6から照射される電子線
24の電圧や電流を制御する電子銃制御装置である。2
0は質量分析計であり、試料4に電子線24を照射して
試料4の局所部分を加熱したときに試料4の局所部分か
ら脱離するガスを分析する。
【0028】なお、図1に二点鎖線で示すようなたとえ
ばステンレス鋼などからなる、試料4に対して相対的に
移動させることができるキャピラリ(細管)70を用い
て、試料4を加熱したときに脱離するガスを取り込み、
質量分析計20に導いてもよい。このような手法を用い
ることにより、局所加熱で脱離ガスが少ないような場合
でも、無駄なく脱離ガスを検出でき、高感度で分析する
ことができる。ここで、キャピラリ70はサンプリング
管を構成している。
【0029】図2に赤外線を取り込む探針部分の一様態
例を示す。図2において、試料4は、Yステージ3yの
上に設けられたXステージ3x上に載置されている。探
針11は金属層21でおおわれた、たとえば溶融石英
(二酸化ケイ素)などの光学的に透明な(赤外線の吸収
係数が大きい)本体22からなっており、探針11の先
端には、試料4の局所部分に電子線24をあてたときに
発生する赤外線25を取り込むための、非常にちいさな
開口23を設けてある。探針11の先端の開口部23か
らとりこまれた赤外線25は、赤外線集光部12、光フ
ァイバ15を介して、赤外線検出器16に送られる(図
1参照)。探針11を試料4の加熱部分(電子線24の
照射部分)に接近させることにより、試料4の加熱部分
から発生する赤外線25のみを取り込むことができる。
【0030】なお図1において、電子銃6、偏向コイル
7x,7y、対物レンズ8は加熱手段を、質量分析計2
0は分析手段を、探針11、光ファイバ15、赤外線検
出器16は赤外線検出手段を、温度計本体17、電子銃
制御装置18は制御手段をそれぞれ構成している。
【0031】以下に、試料温度測定の原理について説明
する。全ての物質は熱をもっており、熱を持つ物質は必
ず赤外線を放射する。物質から放射される赤外線の放射
エネルギは、物質の温度と比例関係にあることが知られ
ている。したがって、赤外線の放射エネルギ、すなわち
赤外線強度を測定することにより、温度の測定が可能に
なる。赤外線温度計はこの原理により、被測定物質の放
射エネルギを赤外線検出器にて電気信号に変換し、あら
かじめ設定した被測定物質の放射率と演算して、温度を
表示する。
【0032】本発明は、この赤外線温度計を試料の局所
部分を加熱したときの温度測定に適用したものであり、
試料の加熱部分に、その本体が溶融石英(二酸化ケイ
素)などの赤外線の吸収係数が大きい物質から成る探針
を接近させることにより、試料の局所部分から発生する
赤外線の強度を正確に測定しようというものである。
【0033】本実施例による脱離ガスの測定は、たとえ
ば次のように行われる。まず、試料表面をSEMで観察
することによって加熱部分を選定する。SEM観察を行
うときは、Zステージ3zを上下方向に移動させること
によって探針11と試料4とが少し離れた位置になるよ
う調整し、さらに電子線24により試料4の表面を走査
して試料表面を観察し、電子線24の照射によって加熱
する部分(分析箇所)を選定する。次に、その選定した
分析箇所に電子銃6から電子線24を照射して加熱し、
そのときに脱離してでてくるガスを質量分析計20にて
分析する。その際、Zステージ3z及び探針移動機構1
4x,14y及び14zを調節して、探針11を試料4
上の分析を行いたい箇所に近づけておき、電子線照射に
よって発生する赤外線を取り込む。
【0034】加熱温度に関しては、電子線24を照射し
て試料4の局所部分を加熱したときに試料4から発生す
る赤外線25(図2参照)を、探針11の先端の開口部
23より取り込み、赤外線集光部12に集光後、光ファ
イバ15にて赤外線検出器16に導き、赤外線検出器1
6にて検出する。さらに赤外線検出器16にて赤外線を
電気信号に変換後、その信号を温度計本体17に送る。
温度計本体17にて上述したような演算処理を行い、温
度を表示する。そして、温度計本体17より電子銃制御
装置18に信号を送り、電子銃6から放射する電子線2
4の電流密度や加速電圧の値を変化させることにより、
加熱温度を変化させる。
【0035】加熱方式に関しては、試料4の局所部分を
一定温度で加熱するという方式をとることができる。ま
た、試料4の局所部分に探針11を接近させた状態で一
定速度で昇温加熱するという方式をとってもよい。さら
に、一定速度で昇温加熱した後、一定温度で保持した
り、一定温度である時間加熱した後、昇温加熱を行なっ
てもよい。また、階段状に温度を上昇させて加熱するこ
ともできる。
【0036】また、上述した実施例では、試料4上の特
定箇所を選択して加熱しているが、電子線24を走査さ
せて連続的に加熱してもよい。上述した実施例では、探
針11を用いて、試料4を加熱したときに発生する赤外
線を取り込み赤外線集光部12に導いているが、集光レ
ンズなどを備えた光学系によって、試料4から発生する
赤外線を集光し、赤外線集光部12に導いてもよい。
【0037】(第2実施例)図3に、本発明の第2実施
例による脱離ガス分析装置の構成を示す。図3におい
て、図1あるいは図2と同一の構成要素には同一の番号
を付してある。上述した第1実施例(図1及び図2)
は、SEMで試料表面を観察して(試料上に電子線を走
査して、試料表面を観察して)、加熱箇所(分析箇所)
を選定後、試料上の局所部分に電子線を照射することに
よって加熱し、その際脱離して出てくるガスを分析しよ
うというものである。
【0038】一方、図3に示した装置は、SEMにより
試料表面を観察して(試料上に電子線を走査して、試料
表面を観察して)、加熱箇所(分析箇所)を選定後、小
径に絞った赤外線やレーザ光線を照射することによっ
て、試料の局所部分を加熱し、その際脱離して出てくる
ガスを分析しようというものである。なお、レーザ光線
による加熱によって試料4から放射される赤外線の検出
や試料の測温に関しては、第1実施例と同様の手段を用
いることができる。
【0039】図3において、26はたとえば炭酸ガスレ
ーザなどのレーザ照射装置(レーザ光源)、27はたと
えば集光レンズ、アパーチャなどのレーザ光集束装置、
28は小径に絞られたレーザ光線を示す。また、29は
温度計本体17からの信号を受けて、レーザの強度を変
化させるレーザ光制御装置である。
【0040】本実施例による脱離ガスの測定方法の一例
を以下に示す。まずZステージ3zを移動させることに
よって、探針11と試料4を少し離して、電子線24に
より試料4表面を走査して試料表面を観察し、分析箇所
を選定する。その選定した箇所に、レーザ光集束装置2
7によって小径に絞ったレーザ光線28を照射して試料
4を局所的に加熱し、そのときに試料4の局所部分から
脱離してくるガスを質量分析計18にて分析する。その
際、Zステージ3z及び探針移動機構14x,14y及
び14zを調節して、探針11を試料4上の分析を行い
たい箇所に近づけておき、レーザ光線28の照射によっ
て発生する赤外線を取り込む。
【0041】加熱部分の温度制御に関しては、第1実施
例(図1及び図2)と同様の方法にて行う。すなわち、
レーザ光線28を照射して、試料4の局所部分を加熱し
たときに発生する赤外線25を探針11の先端の開口部
23より取り込み、赤外線集光部12に集光後、光ファ
イバ15にて赤外線検出器16に導き、赤外線検出器1
6にて検出する。また、赤外線検出器16にて赤外線を
電気信号に変換後、その信号を温度計本体17に送り、
温度計本体17にて演算処理を行い、温度を表示する。
そして、温度計本体17よりレーザ光制御装置29に信
号を送り、レーザ照射装置26から照射するレーザ光線
28の強度を変化させることにより、加熱温度を変化さ
せる。
【0042】なお、上述した実施例では試料の加熱にレ
ーザ光線を用いたが、試料の加熱に赤外線を用いてもよ
い。その場合には、炭酸ガスレーザなどにより赤外線波
長領域の光を発生させてもいいし、赤外線ランプから発
せられる光を集光レンズなどを用いて絞って試料に照射
してもよい。
【0043】上述した実施例では、試料4上の特定箇所
を選択して加熱しているが、レーザ光線や赤外線を試料
4に対して相対的に移動させて、連続的に加熱してもよ
い。また、瞬間的あるいは断続的にレーザを照射しても
よい。
【0044】(第3実施例)図4に、本発明の第3実施
例による脱離ガス分析装置の構成を示す。図4におい
て、図1〜図3と同一の構成要素には同一の番号を付し
てある。本実施例は、第1実施例及び第2実施例に比べ
て試料を加熱するための加熱手段の構成が異なってい
る。
【0045】上述した第2実施例(図3)は、SEMに
より試料表面を観察して(試料上に電子線を走査して、
試料表面を観察して)、加熱箇所(分析箇所)を選定
後、小径に絞った赤外線やレーザ光線を照射することに
よって、試料の局所部分を加熱し、その際に脱離して出
てくるガスを分析しようというものである。
【0046】一方、本実施例はSEMにより試料表面を
観察して(試料上に電子線を走査して、試料表面を観察
して)、加熱箇所(分析箇所)を選定後、分析箇所に探
針を接近させ、探針内にレーザ光や赤外線を通すことに
よって、試料を局所的に加熱しようというものである。
【0047】図4において、支持体1にはXステージ3
x及びYステージ3yが設けられ、Xステージ3x上に
は試料4が載置されている。また、30は内部にレーザ
光線、赤外線などを通して、試料4の局所部分を加熱す
るための探針、31はレーザ光線、赤外線などを探針3
0に導入する光線導入部、32は探針保持機構である。
33xは探針30をX軸方向(Xステージ3xの移動方
向と同方向)に移動させる移動機構、33yは探針30
をY軸方向(Yステージ3yの移動方向と同方向)に移
動させる移動機構である。33zは探針30をその軸方
向(これをZ軸方向とする)に移動させる移動機構であ
る。また、34は探針30のX,Y及びZ軸方向への移
動をコントロールする探針移動機構制御装置である。
【0048】また、26はレーザ光線、赤外線などを照
射する光線照射装置、27はレーザ光線、赤外線などを
集束させる光線集束装置、28は集束されたレーザ光
線、赤外線などを光線導入部31に送るための、たとえ
ば光ファイバなどの導波管、34は温度計本体17から
の信号を受けて、レーザ光線、赤外線などの強度を制御
する制御装置である。
【0049】図5は加熱部分の詳細を示している。図5
において、探針30は金属層35でおおわれた、たとえ
ば溶融石英製の本体36からなっており、探針30の先
端には、試料4の局所部分にレーザ光線、赤外線38を
照射するための、非常に小さな開口37が設けられてい
る。探針30を試料4上の脱離ガスを測定したい箇所に
接近させて、レーザ光線、赤外線38を照射することに
より、試料4を局所的に加熱することができる。
【0050】光線照射装置26たとえば炭酸ガスレーザ
から発せられるレーザ光線を、導波管28により光線導
入部31を介して探針30まで導く。探針30の本体3
6は溶融石英(二酸化珪素)からできている。探針30
を試料4の分析箇所に接近させた状態で、探針30の本
体36にレーザ光線を通すと、溶融石英(二酸化珪素)
は波長9.2μmの赤外線に対して鋭い吸収ピークをも
っているので、溶融石英から成る探針の本体36はエネ
ルギを吸収して温度が上昇し、試料4に熱を供給し、試
料4を加熱する。このような方法を用いることにより、
試料4の局所部分を加熱することができる。
【0051】試料の加熱に関しては、特定箇所を選択し
て加熱してもいいし、探針30を試料に対して相対的に
移動させて連続的に加熱してもよい。
【0052】(実施例4)図6に、本発明の第4実施例
による脱離ガス分析装置の概略構成を示す。図6には、
試料表面の観察並びに加熱部分を示してある。上述した
第3実施例は、SEMにより試料表面を観察して加熱箇
所を選定している。それに対して、本実施例ではSTM
により試料表面を観察して加熱箇所を選定しようという
ものである。加熱箇所を選定後、探針内にレーザ光線や
赤外線を通すことによって、試料を局所的に加熱するの
は、第3実施例と同様である。
【0053】図6において、探針30は、光線導入部3
1を介して、ヘッド(図示せず)に搭載された3次元圧
電素子39に取り付けられており、試料4は試料台(図
示せず)に戴置されている。図示してないが、試料台に
はヘッドを試料に近づけるためのZ軸方向粗動機構と、
試料の位置を動かすためのX及びY軸方向粗動機構が設
けられている。
【0054】探針30をZ軸方向粗動機構を用いて試料
4の表面にゆっくり降ろしていき、試料4と探針30と
の間に電圧を印加すると流れるトンネル電流が検出され
るまで探針30を試料4に近づける。その後、XY走査
回路40により、3次元圧電素子39のX軸Y軸圧電素
子に対して印加する印加電圧を掃引することによって、
探針30をX軸Y軸方向に操作する。このときトンネル
電流を探針/試料間相互作用検出器42にて検出し、探
針30と試料4の間のトンネル電流の大きさが変化しな
いように、フィードバック回路41を通してZ軸方向の
圧電素子に対する電圧をフィードバック制御する。この
ときZ軸方向の圧電素子に印加した電圧から探針30の
Z軸方向の変位量をコンピュータ43で計算し、画像表
示装置44に試料4の表面形状などを表示する。そし
て、画像表示装置44に表示された試料4の表面形状を
観察することにより、脱離ガスの測定箇所を選定する。
【0055】次に、脱離ガスの測定箇所に探針30を近
づけて、第3実施例と同様の手法にて、レーザ照射装置
35から、光線導入部31を経由して探針30にレーザ
光線を送って、試料4を加熱し、そのときに試料4から
脱離して出てくるガスを図示していない質量分析計にて
分析する。
【0056】試料の加熱に関しては、試料4上の特定箇
所を加熱してもよいし、試料4上に探針30を走査させ
て、選択範囲を連続的に加熱してもよい。また、試料4
上に探針30を走査させて、選択範囲を連続的に加熱し
て、試料4表面から脱離するガスのMS強度を、画像と
して3次元的に描くこともできる。
【0057】また、このとき測定温度を変化させて、同
一の範囲を複数回加熱してもよい。たとえば、まずTa
℃にて試料の選択範囲を加熱して脱離ガスを測定して3
次元像を表示する。次に、Tb℃(Ta<Tb)にて同
じ領域を加熱して脱離ガスを測定して3次元像を表示す
る。ここで、Ta℃は捕捉サイト(a)にトラップされ
ている水素が脱離する温度であり、Tb℃は捕捉サイト
(a)及び捕捉サイト(b)にトラップされている水素
が脱離する温度である。このような手法を用いることに
より、脱離の活性化エネルギが異なる捕捉サイト(a)
及び(b)が接近しているような場合でも、各々の捕捉
サイトにトラップされている水素の濃度を求めることが
できる。なお、具体的な測定例については後述する(第
6実施例参照のこと)。
【0058】上述した実施例では、トンネル電流の大き
さを一定に保つように、3次元圧電素子39のz軸方向
の長さを変化させ、3次元圧電素子39のz軸方向の長
さの変位量に基づいて、試料表面の形状を表示するよう
にしたが、探針30と試料4との距離を一定に保持した
まま、探針30を試料4の表面上を移動させ、その際に
検出されるトンネル電流の値に基づいて、試料4の凹凸
を画像表示装置44上に表示してもよい。
【0059】また、上述した実施例では、STMによっ
て試料4表面を観察しているが、SEMを備えたSTM
によって試料表面を観察して、加熱箇所を設定してもよ
い。この場合も上述した実施例と同様の手法にて、脱離
ガスの測定を行うことができる。
【0060】(第5実施例)以下に、本発明の第2実施
例における図3の装置を用いて、ステンレス鋼中の局所
部分に存在する水素の分析を行なった例を示す。また、
比較のため、従来の昇温脱離ガス分析装置での測定例も
併せて示す。
【0061】表1に、分析に用いた試料の処理条件を示
す。試料にはオーステナイトステンレス鋼SUS304
を用いた。表1の試料(a)は、溶体化処理(1050
℃で30分加熱後水冷)のみの試料であり、試料(b)
は、溶体化処理後、鋭敏化処理(621℃で2時間加
熱)をしたものである。熱処理後、(a)、(b)の試
料ともにオートクレーブを用いて、80℃、0.6MP
aの水素雰囲気中で120時間加熱して、試料に水素を
注入した。
【0062】
【表1】
【0063】図7及び図8に、試料(a)及び(b)に
ついての金属組織を模式的に示す。図7及び図8におい
て、45は結晶粒界、46は母相を示している。また、
図8において、47は島状に析出したクロム炭化物、4
8は連続的に析出したクロム炭化物を示している。図7
及び図8より、試料(a)では析出物がみられないが、
試料(b)では結晶粒界に沿って、島状(連続的ではな
く、とびとびに析出)あるいは連続的にクロム炭化物が
析出している。
【0064】まず、これらの試料について、従来法にて
昇温脱離スペクトルを測定した結果を、比較例として示
す。図9に従来技術による昇温脱離ガス分析装置の構成
を示す。図9において、49はロードロックチャンバ、
50はゲート弁、51は加熱チャンバ、52は質量分析
計である。53はロードロックチャンバ49内を真空排
気するための真空ポンプ、54は加熱チャンバ51及び
質量分析計52内を真空排気するための真空ポンプであ
る。また、55はロードロックチャンバ49内の圧力を
モニタする圧力計、56は加熱チャンバ51及び質量分
析計52内の圧力をモニタする圧力計である。58は、
試料57を石英製試料台59にセットするための試料送
り機構である。
【0065】60は真空外に設置された赤外線導入装置
であり、赤外線を石英製の赤外線導入ロッド61を通し
て、試料台59にセットされた試料57に裏面からあて
ることにより、試料57を加熱する。52は、加熱によ
って試料57から脱離したガスを分析する質量分析計で
ある。62は試料を加熱するときの温度を制御する温度
コントローラ、63は温度コントローラ62及び質量分
析計52を制御するコンピュータである。
【0066】図10及び図11に、図9の昇温脱離ガス
分析装置にて測定した、試料(a)及び(b)について
の水素の脱離スペクトルの一例を示す。測定に用いた試
料のサイズは、10mm×10mm×0.2mm、昇温
速度は0.5℃/sである。図10において、64が試
料(a)、65が試料(b)についての脱離スペクトル
である。また、図11において、スペクトル66は図1
0のスペクトル64の縦軸を10倍に拡大して示したも
のである。
【0067】図10及び図11において、64は290
℃、65は235℃を極大とするスペクトルである。脱
離スペクトル(図10及び図11)と金属組織(図7及
び図8)との相関より、64は主として結晶粒界、65
は島状あるいは連続的に析出したクロム炭化物から脱離
した水素であると考えられる。64において、結晶粒界
45からも水素が脱離していることが考えられるが、2
35℃を極大とするクロム炭化物から脱離した水素によ
るピークと重なるため、粒界から脱離した水素の量を正
確に見積もることができない。また、クロム炭化物の析
出の違い(たとえば連続的な析出物と島状の析出物、析
出物の大きさなど)による水素のトラップのしやすさの
違いの有無や、クロム炭化物のどの部分(たとえばクロ
ム炭化物自体、クロム炭化物と母相の界面など)に水素
が捕捉されているかなどの知見を得ることができない。
【0068】次に、本発明の第2実施例の図3に示した
装置での測定結果を示す。測定試料には、図8の粒界上
に島状あるいは連続的にクロムの炭化物が析出している
ものを用いた。図12は、分析を行った領域を説明する
ための図であり、図13及び図14は、図3の装置での
測定例を示したものである。以下に、測定手順及び測定
結果を示す。
【0069】まず、図3の装置の試料ステージ3x上に
試料(図8)をセットし、上述した方法によりCRT1
0により、試料の表面をSEM観察し、分析箇所を選定
する。以下に、結晶粒界から脱離する水素の分析を行う
場合を例ににあげて、測定手順を示す。探針11を試料
(図12)上の結晶粒界45上に移動させ、試料に接近
させる。次に、炭酸レーザなどのレーザ照射装置26か
らレーザ光線を放射して光線集束部27にて小径に絞っ
たレーザ光線を試料の粒界上に照射して、試料を一定速
度(0.5℃/s)で加熱し、そのときに脱離してでて
くるガスを質量分析計20にて分析する。
【0070】加熱温度に関しては、探針11にて加熱に
よって発生する赤外線を取り込み、赤外線検出器16に
て電気信号に変換後、その信号を温度計本体17を介し
て制御装置18に送り、レーザ照射装置26から放射す
るレーザ光線の強度を変化させることにより、加熱温度
を変化させた。
【0071】図13に、結晶粒界から脱離した水素のス
ペクトルを示す。また、図14に、同様の方法にて測定
した、クロム炭化物から脱離した水素のスペクトルを示
す。図13のピーク67は、結晶粒界(図12の45)
から脱離した水素による昇温脱離スペクトルであり、図
14のピーク68は、クロム炭化物(図12の47)か
ら脱離した水素による昇温脱離スペクトルである。図1
3及び図14より、水素の脱離スペクトルは図10及び
図11(比較例)に比べてシャープであり、結晶粒界及
びクロム炭化物に捕捉されている水素を分離して定量す
ることができる。このように本発明では試料の結晶粒界
や析出物(クロム炭化物)を局所的に加熱し、各々の場
所から脱離するガスを分析することができるので、比較
例のようにスペクトルのピーク分割や分割後の各ピーク
の同定を行う必要がない。なお、標準物質を用いて検量
線を作成することにより、脱離スペクトルの面積(積分
値)から、水素の濃度を算出することができる。
【0072】図15は、図12の点線69で示した、結
晶粒界及びクロム炭化物と直交するライン上の10点
(結晶粒界を0とした場合、−150nm〜100nm
の範囲)について、図13及び図14と同様の方法で、
水素の脱離スペクトルを測定し、粒界からの距離とスペ
クトルの面積(水素量に相当)とをプロットしたもので
ある。図15から、水素はクロム炭化物自体ではなく、
クロム炭化物と母相の界面、しかも片側に多く捕捉され
ていることがわかる。このように本発明の分析装置で
は、水素の捕捉サイトに関して、より詳細な情報を得る
ことができる。
【0073】なお、ここでは水素の分析例について示し
たが、他の成分、たとえば重水素、ヘリウム、水、四塩
化炭素、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素などについても
同時にモニターできる。
【0074】(第6実施例)以下に、本発明の第4実施
例における図6の装置を用いて、ステンレス鋼中の水素
の分析を行った例を示す。試料には、第5実施例の場合
と同様に図8に示したものを用いた。以下に、測定手順
を示す。
【0075】図16に、分析を行った領域を示す。図1
6の12μm角の点線で囲んだ部分69が分析領域であ
る。試料(図8)を試料台にセットし、探針30を試料
表面に近づけて、探針30をXY方向に走査させて、試
料の測定領域(図16の69)を加熱(一定温度にて加
熱)し、脱離して出てくるガスを質量分析した。まず、
250℃で試料の測定領域(図16の69)を加熱し
て、測定領域から脱離して出てくるガスのMS強度を3
次元画像として表示した。次に400℃で同じ測定領域
(図16の69)を加熱し、測定領域から脱離して出て
くるガスのMS強度を3次元画像として表示した。な
お、250℃での加熱ではまずクロム炭化物に捕捉され
ている水素が脱離し、400℃での加熱では結晶粒界に
捕捉されている水素が脱離すると考えられる(図13及
び図14より、結晶粒界に捕捉されている水素の脱離温
度(極大温度)は390℃であり、クロム炭化物に捕捉
されている水素の脱離温度は230℃であるため)。
【0076】図17に、試料を250℃及び400℃で
加熱したときの、ライン(A)(図16)上での、水素
のMS強度(水素量と相関がある)と粒界からの距離と
の関係を示したものである。また、図18は、試料を2
50℃及び400℃で加熱したときの、ライン(B)
(図16)上での、水素のMS強度と粒界からの距離と
の関係を示したものである。図17より、ライン(A)
上では、250℃で加熱したときに水素の脱離はみられ
ず、400℃で加熱したときに粒界近傍からの水素の脱
離がみられる。一方、図18より、ライン(B)上で
は、250℃で加熱したときにクロム炭化物と母相の界
面からの水素の脱離がみられる。また、400℃で加熱
したときには粒界近傍からの水素の脱離がみられる。こ
のように同じ領域を加熱温度を変えて測定することによ
り、水素のトラップサイトの位置が接近していたり、重
なっていたりする場合でも、各々のトラップサイトに捕
捉されている水素を分離して定量することができる(た
とえば結晶粒界上にクロム炭化物が析出しているような
場合)。
【0077】以上のように、本発明の装置では、ステン
レス鋼などの固体材料の局所部分にトラップされている
水素の定量が可能であり、水素脆化、遅れ破壊、応力腐
食割れなどのメカニズムを解明するのに有効であると考
えられる。
【0078】以上の実施例によれば、SEMによって試
料表面を観察して分析箇所を設定した後、小径に絞った
電子線、赤外線あるいはレーザ光線を照射することによ
って試料を局所的に加熱し、加熱によって脱離するガス
を質量分析計などで分析することにより、固体試料中の
局所部分から脱離するガスを直接分析することができ
る。
【0079】また、SEM、STMあるいはSEMを備
えたSTMによって、試料表面を観察して分析箇所を設
定した後、探針を分析箇所に接近するように移動させ、
探針に赤外線あるいはレーザ光線を通すことによって試
料の局所部分を加熱し、加熱によって脱離するガスを質
量分析計などで分析することにより、固体試料中の局所
部分から脱離するガスを直接分析することができる。
【0080】すなわち、本発明の分析装置を用いると、
固体材料の局所部分(結晶粒界、欠陥、析出物と母相の
界面など)にトラップされている成分を直接分析するこ
とが可能となる。
【0081】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
固体材料の局所部分(結晶粒界、欠陥、析出物と母相の
界面など)にトラップされている成分を直接分析するこ
とができるという効果がある。また、加熱温度を変化さ
せて測定することにより、異なるトラップサイト同士が
接近していたり、重なっているような場合(たとえば、
粒界上、あるいは粒界に沿ってクロム炭化物が析出して
いるような場合)でも、各各のトラップサイトに存在す
る水素を分離して定量することができるという効果があ
る。
【0082】したがって、本発明の分析装置は、鉄鋼材
料の水素脆化、遅れ破壊、応力腐食割れなどの原因にな
っている、局所部分にトラップされている水素の分析装
置として有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例による脱離ガス分析装置の
構成図である。
【図2】赤外線を検出する探針部の拡大図である。
【図3】本発明の第2実施例による脱離ガス分析装置の
構成図である。
【図4】本発明の第3実施例による脱離ガス分析装置の
概略構成図である。
【図5】赤外線を照射する探針部の拡大図である。
【図6】本発明の第4実施例による脱離ガス分析装置の
概略構成図である。
【図7】試料(a)の金属組織の観察結果を示す図であ
る。
【図8】試料(b)の金属組織の観察結果を示す図であ
る。
【図9】従来の昇温脱離ガス分析装置の構成図である。
【図10】試料(a)及び(b)について従来法で測定
した昇温脱離スペクトルを示す図である。
【図11】図10中の試料(a)の昇温脱離スペクトル
を拡大して示した図である。
【図12】試料の分析領域を説明するための図である。
【図13】本発明の脱離ガス分析装置での測定例を示す
図である。
【図14】本発明の脱離ガス分析装置での測定例を示す
図である。
【図15】本発明の脱離ガス分析装置での測定例を示す
図である。
【図16】試料の分析領域を説明するための図である。
【図17】本発明の脱離ガス分析装置での測定例を示す
図である。
【図18】本発明の脱離ガス分析装置での測定例を示す
図である。
【符号の説明】
1 支持体 2 真空容器 3x Xステージ 3y Yステージ 3z Zステージ 4,57 試料 5 防震機構 6 電子銃 7x,7y 偏向コイル 8 対物レンズ 9 二次電子検出器 10 CRT 11 探針 12 赤外線集光部 13 探針保持部材 14x,14y,14z 探針移動機構 15 光ファイバ 16 赤外線検出器 17 温度計本体 18 電子銃制御装置 19 探針移動機構制御装置 20 質量分析計 21 金属層 22 探針本体 23 探針の先端(開口部分) 24 電子線 25 赤外線 26 レーザ照射装置(光線照射装置) 27 レーザ光集束装置(光集束装置) 28 レーザ光線 29 レーザ光制御装置 30 探針 31 光線導入部 32 探針保持部材 33x,33y,33z 探針移動機構 34 制御装置 35 金属層 36 探針本体 37 探針先端(開口部分) 38 レーザ光線、赤外線 39 圧電素子 40 XY走査回路 41 Z軸フィードバック回路 42 探針、試料間相互作用検出器 43 コンピュータ 44 画像表示装置 45 結晶粒界 46 母相 47 島状に析出したクロム炭化物 48 連続的に析出したクロム炭化物 49 ロードロックチャンバ 50 ゲート弁 51 加熱チャンバ 52 質量分析計 53,54 真空ポンプ 55,56 圧力計 58 試料送り機構 59 試料ステージ 60 赤外線導入装置 61 赤外線導入ロッド 62 温度コントローラ 63 コンピュータシステム 64,66 試料(a)の昇温脱離スペクトル 65 試料(b)の昇温脱離スペクトル 67 結晶粒界に捕捉されている水素の昇温脱離スペク
トル 68 クロム炭化物に捕捉されている水素の昇温脱離ス
ペクトル 69 分析領域 70 キャピラリ

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 真空容器と、前記真空容器内に収納され
    た試料に対して、電子線、赤外線またはレーザ光線を集
    束させて照射し試料の一部分を加熱する加熱手段と、前
    記試料の加熱された一部分から放出されるガスを分析す
    る分析手段と、を具備する脱離ガス分析装置。
  2. 【請求項2】 真空容器と、前記真空容器内に収納され
    た試料に対して、電子線、赤外線またはレーザ光線を集
    束させて照射し試料の一部分を加熱する加熱手段と、前
    記試料の加熱された一部分から放出されるガスを分析す
    る分析手段と、前記試料の加熱された一部分から放射さ
    れる赤外線を検出する赤外線検出手段と、検出した赤外
    線データから試料の温度を求めるとともに、その求めた
    温度に基づいて、前記加熱手段から照射される電子線、
    赤外線またはレーザ光線の強度を調節して試料の加熱温
    度を制御する制御手段と、を具備する脱離ガス分析装
    置。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2に記載の脱離ガス分析装
    置において、前記加熱手段は、電子線、赤外線またはレ
    ーザ光線のスポット径とその形状を調節する手段を有す
    ることを特徴とする脱離ガス分析装置。
  4. 【請求項4】 請求項1又は2に記載の脱離ガス分析装
    置において、前記電子線を走査することにより、試料の
    全体もしくは一部の表面像を検出する手段を設けたこと
    を特徴とする脱離ガス分析装置。
  5. 【請求項5】 真空容器と、前記真空容器内に収納され
    た試料の表面に接近して針状部材が設けられ、該針状部
    材内を介して試料に赤外線またはレーザ光線を照射して
    試料の一部分を加熱する加熱手段と、前記試料の加熱さ
    れた一部分から放出されるガスを分析する分析手段と、
    前記試料の加熱された一部分から放射される赤外線を検
    出する赤外線検出手段と、検出した赤外線データから試
    料の温度を求めるとともに、その求めた温度に基づい
    て、前記加熱手段から照射される赤外線またはレーザ光
    線の強度を調節して試料の加熱温度を制御する制御手段
    と、を具備する脱離ガス分析装置。
  6. 【請求項6】 請求項2又は5に記載の脱離ガス分析装
    置において、前記赤外線検出手段は前記試料表面に接近
    して設けられた針状部材で、その針状部材の内部は赤外
    線に対して透明な物質から成り且つ外表面は金属材料で
    被われ、さらに針状部材の先端部には赤外線を取り込む
    ための小さな開口が形成されていることを特徴とする脱
    離ガス分析装置。
  7. 【請求項7】 試料の表面に接近して針状部材が設けら
    れ、該針状部材内を介して試料に赤外線またはレーザ光
    線を照射して試料の一部分を加熱する加熱手段と、前記
    試料の加熱された一部分から放出されるガスを分析する
    分析手段と、前記針状部材を試料表面に対して相対的に
    移動させる駆動手段と、前記針状部材と試料表面との間
    にトンネル電流を生じさせるための電圧を印加する電圧
    印加手段と、前記駆動手段によって前記針状部材を試料
    表面に対して相対的に移動させたときの前記トンネル電
    流を検出するトンネル電流検出手段と、前記トンネル電
    流の検出値に基づいて試料表面の凹凸を表示する表示手
    段と、を具備する脱離ガス分析装置。
  8. 【請求項8】 請求項5又は7に記載の脱離ガス分析装
    置において、前記加熱手段の針状部材は、赤外線または
    レーザ光線に対して透明な物質から成り且つ外表面は導
    電性材料で被われ、さらに針状部材の先端部には赤外線
    またはレーザ光線が通るための小さな開口が形成されて
    いることを特徴とする脱離ガス分析装置。
  9. 【請求項9】 請求項5又は7記載の脱離ガス分析装置
    において、前記加熱手段は、前記針状部材を試料表面上
    で二次元的に走査して試料を加熱することを特徴とする
    脱離ガス分析装置。
  10. 【請求項10】 請求項5又は7記載の脱離ガス分析装
    置において、前記加熱手段は、赤外線またはレーザ光線
    のスポット径とその形状を調節する手段を有することを
    特徴とする脱離ガス分析装置。
  11. 【請求項11】 請求項1,2,5又は7に記載の脱離
    ガス分析装置において、前記加熱手段は、試料表面上で
    二次元的に走査して試料を加熱することを特徴とする脱
    離ガス分析装置。
  12. 【請求項12】 請求項1,2,5又は7に記載の脱離
    ガス分析装置において、前記分析手段は、試料の加熱領
    域にサンプリング管を近づけることにより、加熱領域か
    らの放出ガスを選択的に抽出する手段を有することを特
    徴とする脱離ガス分析装置。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009168612A (ja) * 2008-01-16 2009-07-30 R-Dec Co Ltd 水素量測定装置
JP2013253970A (ja) * 2012-06-04 2013-12-19 Boeing Co:The 試料中の水素含有量測定のためのシステム及び方法

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