JPH089386Y2 - 内燃機関の可変圧縮比装置 - Google Patents

内燃機関の可変圧縮比装置

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JPH089386Y2
JPH089386Y2 JP3421490U JP3421490U JPH089386Y2 JP H089386 Y2 JPH089386 Y2 JP H089386Y2 JP 3421490 U JP3421490 U JP 3421490U JP 3421490 U JP3421490 U JP 3421490U JP H089386 Y2 JPH089386 Y2 JP H089386Y2
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建夫 久米
徹 岡田
雅彦 松田
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Description

【考案の詳細な説明】 〈産業上の利用分野〉 本考案は内燃機関(以下エンジンと称する。)の可変
圧縮比装置に関する。
〈従来の技術〉 従来より、エンジン中負荷域よりも大きい高負荷域や
高エンジン回転域においてはノッキングを発生させない
ようにしながら、中負荷域以下では熱効率を上げて燃費
等の改善をはかるべく、圧縮比を可変にしうるエンジン
が各種提案されている。
かかる圧縮比可変機構は、例えば特公昭63−32972号
公報に開示されている。この公報に開示された圧縮比可
変機構は、エンジンのコネクティングロッドの両端の軸
支部の一方に、コネクティングロッドの軸受孔とこの軸
受孔を挿通する支軸とを互いに偏心させる偏心軸受を、
ピストンからの荷重と支軸からの反力とが偏心すること
によって生じる回転力によって自在に回転するように設
け、更には軸受半径方向に移動可能なロックピンを駆動
することにより偏心軸受の回転を自由と固定との間に切
り替えるための油圧式作動式ロック手段を設けて、この
ロック手段への供給作動オイルの圧力を、ピストン位置
の検出手段と運転条件の検出手段との信号を受けるコン
ピュータからの信号により、ロック中には常時ロック手
段に油圧力がかかり、ロック解除中にはロック手段に油
圧力がかからない条件下で制御するようにしたものであ
る。
〈考案が解決しようとする課題〉 しかしながら、このような従来の内燃機関の可変圧縮
比機構では、このロック手段への供給作動オイルの圧力
を、ロック中には常時ロック手段に油圧力をかけている
が、この場合、作動オイルはピストンを挾んで設けられ
た油圧室の一方にしか作用させていないので、かかる油
圧室内の油圧が遠心力やコネクティングロッドの往復運
動の加速度によって大きく変動し、これによりロック動
作が不確実になるおそれがあり、その結果ロック時の信
頼性が低下するという問題点がある。
本考案は、このような問題点を解決しようとするもの
で、遠心力やコネクティングロッドの往復運動の加速度
によって、ロック手段によるロック・アンロック動作が
不確実にならないようにした、内燃機関の可変圧縮比装
置を提供することを目的とする。
〈課題を解決するための手段〉 このため本考案の内燃機関の可変圧縮比装置は、内燃
機関の気筒内を往復動するピストンに一端部を枢支され
ると共に他端部をクランクシャフトに枢支されたコネク
ティングロッドをそなえ、該コネクティングロッドの両
端部における枢支部のいずれか一方に該コネクティング
ロッドの軸受穴とこの軸受穴を挿通する支軸とを相互に
偏心させる偏心スリーブが回転可能に設けられ、該偏心
スリーブの回転を所要位置で固定しうる偏心スリーブロ
ック手段が設けられて、該偏心スリーブロック手段が、
該偏心スリーブに形成された係合部に係合しうるピン部
材と、ジャーナルを介して流体圧を供給することにより
該ピン部材に連結されたピストン部を移動させて該ピン
部材を駆動しうるピストン式流体圧駆動機構とをそなえ
て構成され、該ピストン式流体圧駆動機構が、該ピスト
ン部の両側に流体圧室をそなえるとともに、一方の流体
圧室に該ピストン部を他方の流体圧室側へ移動させるべ
く付勢するリターンスプリングをそなえ、且つ、上記一
方の流体圧室に予め所要の流体圧を印加する所要流体圧
印加手段と、該リターンスプリングの付勢力に抗して該
ピストン部を該一方の流体圧室側へ移動させるべく該所
要の流体圧よりも高い流体圧と前記所要の流体圧とを選
択的に上記他方の流体圧室に印加しうる高圧印加手段
と、奇数番ジャーナルもしくは偶数番ジャーナルの油路
に前記所要流体圧印加手段を連結する第一油路と、第一
油路に連結されていない偶数番ジャーナルもしくは奇数
番ジャーナルの油路に前記高圧印加手段を連結する第二
油路とをそなえていることを特徴とする。
〈作用〉 本考案の内燃機関の可変圧縮比装置では、ピストン式
流体圧駆動機構においてそのピストン部の両側に形成さ
れた両流体圧室に所要流体圧印加手段及び高圧印加手段
を介して予め所要の流体圧を印加しておく。
そして、ピストン部を一方の流体圧室側へ移動させて
ピン部材をある方向へ駆動する場合は、高圧印加手段の
切替えを行なって他方の流体圧室に上記所要の流体圧よ
りも高い流体圧を印加する。これにより、ピストン部が
リターンスプリングの付勢力に抗して一方の流体圧室側
へ移動する。
また、ピストン部を他方の流体圧室側へ移動させてピ
ン部材を逆方向へ駆動する場合は高圧印加手段を元に戻
して他方の流体圧室を元の上記所要の流体圧状態に戻
す。これにより、ピストン部がリターンスプリングの付
勢力によって他方の流体圧室側へ移動する。
〈実施例〉 以下、図面により本考案の実施例について説明する。
第1〜8図は本考案の一実施例としての内燃機関の可変
圧縮比装置を示すもので、第1図は低圧縮比状態にある
ときの様子を示す全体構成図、第2図は低圧縮比状態に
あるときの様子を示すコネクティングロッドの正面図、
第3図は高圧縮比状態にあるときの様子を示す全体構成
図、第4図は高圧縮比状態にあるときの様子を示すコネ
クティングロッドの正面図、第5図は第1,3図のV部拡
大断面図、第6図は低圧縮比状態にあるときの様子を示
す油圧駆動機構の断面図、第7図は高圧縮比状態にある
ときの様子を示す油圧駆動機構の断面図、第8図はその
油圧回路図である。
第1〜4図に示すように、コネクティングロッド6
が、その小端部をガソリンエンジン(内燃機関)の気筒
内を往復動するピストン8のピストンピン7に枢支され
るとともに、その大端部をクランクシャフト1のクラン
クピン2に枢支されている。
また、このコネクティングロッド6の大端部における
枢支部には、コネクティングロッド6の軸受穴とこの軸
受穴を挿通する支軸としてのクランクピン2とを相互に
偏心させる偏心スリーブ5が回転可能に設けられてい
る。即ちこの偏心スリーブ5はその円周円の中心とその
外周円の中心とが偏心しており、偏心最大位置からクラ
ンクピン2の外周を180°回転すると最小偏心位置を採
りうるようになっている。
なお、偏心スリーブ5の内周面とクランクピン2の外
周面との間には、第5図に詳しく示すように、偏心スリ
ーブ5の内周面付きのメタル軸受9が介装されるととも
に、偏心スリーブ5の外周面とコネクティングロッド6
の軸受穴の内周面との間には、コネクティングロッド6
の軸受穴の内周面付きのメタル軸受10が介装されてい
る。これにより、偏心スリーブ5とクランクピン2との
間で摺動できるとともに、偏心スリーブ5とコネクティ
ングロッド6の軸受穴との間で摺動できるようになって
いる。
ところで、偏心スリーブロック手段11が設けられてい
るが、この偏心スリーブロック手段11は、偏心スリーブ
5の軸方向即ちクランクシャフト1の軸方向に移動しう
るピン部材としてのストッパピン12をそなえており、こ
のストッパピン12をそのピストン式流体圧駆動機構とし
ての油圧駆動機構11Aで作動させることにより、偏心ス
リーブ5に形成された2つの係合部5a,5bにストッパピ
ン12を係合させて、この偏心スリーブ5の回転を2つの
位置(上記の偏心最大位置と最小偏心位置)で固定しう
るものである。
さらに、この偏心スリーブロック手段11について詳述
する。第6,7図に示すように、まず、ストッパピン12の
中間部には、フランジ状にピストン部12aが拡径して一
体に設けられており、このピストン部12a付きストッパ
ピン12が、コネクティングロッド6の大端部に形成され
た貫通穴に嵌合されている。この貫通穴はコネクティン
グロッド6の大端部をクランクシャフト軸方向に貫通し
ており、3つの径を有する3段穴部として構成されてい
て、一端部に位置する小径穴部はストッパピン12の径と
ほぼ同じで、中間部に位置する中径穴部はピストン12a
の径とほぼ同じで、他端部に位置する大径穴部はピスト
ン12aより大きく設定されている。
従って、この貫通穴にピストン12a付きストッパピン1
2を入れると、貫通穴の小径穴部にストッパピン12が液
密に挿通されるとともに、貫通穴の中径穴部にピストン
部12aが液密に挿嵌される。そして、リターンスプリン
グ15を入れて、更に貫通穴の大径部とほぼ同径で中央部
にストッパピン12とほぼ同径の貫通穴を形成されたキャ
ップ16を嵌め込み、このキャップ16をコネクティングロ
ッド6にボルト等にて固定すると、ストッパピン12がそ
の一端部を貫通穴の小径部に液密に嵌挿されるとともに
その他端部をキャップ16の貫通穴に液密に嵌挿されて、
貫通穴の中径部がピストン部12aにて2つのチャンバ13,
14に分割される。そして、このチャンバ13,14にそれぞ
れ油圧通路17,18が連通接続されるようになっている。
これにより、これらの2つのチャンバは、ピストン部12
aの両側に形成される油圧室(流体圧室)13,14として構
成される。なお、リターンスプリング15は油圧室13内に
装填されて、ピストン部12a付きストッパピン12を油圧
室14側へ付勢していることになる。なお、ピストン部12
a両側の受圧面積は等しく設定されている。
これにより、このストッパピン12に付設のピストン部
12a,油圧室13,14,リターンスプリング15,キャップ16等
で、ストッパピン12に連結されたピストン部12aを移動
させることによってストッパピン12を駆動しうるピスト
ン式油圧駆動機構11Aが構成される。
また、偏心スリーブ5は、第1〜4図に示すごとく、
コネクティングロッド6の大端部を挾むように軸方向に
離隔したフランジ部を有しているが、一方のフランジ部
における偏心スリーブ5が偏心最小位置を採るような部
分には、切欠き状の係合部5aが形成されるとともに、他
方のフランジ部における偏心スリーブ5が偏心最大位置
を採るような部分には、切欠き状の係合部5bが形成され
ていて、ストッパピン12が第3,7図に示すように右方へ
移動して第1の位置をとった状態で、第3,4図に示すよ
うに、ストッパピン12と係合部5bとが係合して、偏心ス
リーブ5が最大偏心位置でコネクティングロッド6の大
端部に固定されるとともに、ストッパピン12が第1,6図
に示すように左方へ移動して第2の位置をとった状態
で、第1,2図に示すように、ストッパピン12と係合部5a
とが係合して、偏心スリーブ5が最小偏心位置でコネク
ティングロッド6の大端部に固定されるようになってい
る。
そして、偏心スリーブ5が最大偏心位置でコネクティ
ングロッド6の大端部に固定されると、コネクティング
ロッド6は見掛け上最も伸びた状態になって、高圧縮比
状態を実現することができ、偏心スリーブ5が最小偏心
位置でコネクティングロッド6の大端部に固定される
と、コネクティングロッド6は見掛け上最も縮んだ状態
になって、低圧縮比状態を実現することができるのであ
る。なお、この低圧縮比状態での圧縮比はエンジンがノ
ッキングを起こさない程度の値が選ばれ、これは通常の
エンジンにおいて設定されている値とほぼ同等である。
したがって、高圧縮比状態での圧縮比が通常のエンジン
で設定されている値よりも高い値として設定されること
になる。
さらに、両油圧室13,14に油圧通路17,18を通じて予め
所要の油圧(標準油圧)を印加しておく所要流体圧印加
手段と、ピストン部12a付きストッパピン12をリターン
スプリング15の付勢力に抗して油圧室13側へ移動させる
べく、油圧室14に上記の標準油圧よりも高い油圧(標準
油圧+α)を印加しうる高圧印加手段とが設けられてい
る。
すなわち、油圧通路17,18は、第1,3図に示すように、
クランクシャフト1のクランクジャーナル3からクラン
クアーム4の部分を通ってクランクピン2から更にメタ
ル軸受9,偏心スリーブ5,メタル軸受10およびコネクティ
ングロッド6の大端部を通って、それぞれ油圧室13,14
に連通接続されている。
油圧通路17は偶数番ジャーナル(図では2番ジャーナ
ル3b)の油路から圧油が供給され、油圧通路18は奇数番
ジャーナル(図では1番ジャーナル3a)の油路から圧油
が供給される。1番目のクランクピン2aは1番ジャーナ
ル3a及び2番ジャーナル3bから圧油が供給され、n番目
のクランクピン2nはn番ジャーナル3及び(n+1)番
ジャーナル3から圧油が供給される。
なお、メタル軸受9とクランクピン2との間およびメ
タル軸受10と偏心スリーブ5との間は摺動するので、第
5図に示すごとく、メタル軸受9,10の内周面には、この
内周面を一周しそれぞれ油圧通路17,18につながる2条
の無端状溝が形成され、メタル軸受9に形成された各溝
には偏心スリーブ5に形成された油圧通路17,18の部分
に整合する貫通穴が形成されるとともに、メタル軸受10
に形成された各溝にもコネクティングロッド6の大端部
に形成された油圧通路17,18の部分に整合する貫通穴が
形成されている。
また、第8図に示すように、油圧通路17のクランクシ
ャフト外の部分は第一油路としてのメインギャラリ23側
につながるとともに、油圧通路18のクランクシャフト外
の部分は第二油路としてのサブオイルポンプ24またはメ
インギャラリ23側につながっている。すなわち、オイル
タンクあるいはオイルパン20からのオイル(潤滑油)は
リリーフバルブ21付きのオイルポンプ19によって所要油
圧(標準油圧を供給する油圧)のオイルとしてオイルフ
ィルタ22を介してメインギャラリ23ヘ供給され、このメ
インギャラリ23からは油圧通路17を通じて標準油圧のオ
イルを供給する。さらに、メインギャラリ23からのオイ
ルは、サブオイルポンプ24へ供給されて更に高い油圧
(標準油圧+α)として吐出されるようになっている
が、このサブオイルポンプ24からの油圧はスイッチング
バルブ25を介してメインギャラリ23からの油圧と選択的
に油圧通路18へ供給されるようになっている。すなわ
ち、スイッチングバルブ25を第8図に示すようにa位置
にすると、油圧通路18へはメインギャラリ23からの標準
油圧が供給され、スイッチングバルブ25をb位置にする
と、油圧通路18へはサブオイルポンプ24からの高い油圧
(標準油圧+α)が供給されるようになっている。
したがって、スイッチングバルブ25をb位置にする
と、油圧通路18へはサブオイルポンプ24からの高い油圧
(標準油圧+α)が供給されて、油圧室14にこの高い油
圧が供給される。このとき油圧室13内には油圧通路17を
介してメインギャラリ23からの標準油圧が供給されてい
るので、リターンスプリング15の付勢力に抗してピスト
ン部12a付きストッパピン12が、第3,7図に示すように右
方へ移動して、第1の位置をとると、第3,4図に示すよ
うに、ストッパピン12と係合部5bとが係合して、偏心ス
リーブ5が最大偏心位置でコネクティングロッド6の大
端部に固定される。これにより、コネクティングロッド
6は見掛け上最も伸びた状態になって、高圧縮比状態を
実現することができる。
また、スイッチングバルブ25をa位置にすると、油圧
通路18へはメインギャラリ23からの標準油圧が供給され
て、油圧室14にもこの標準油圧が供給される。このとき
油圧室13内には油圧通路17を介してメインギャラリ23か
らの標準油圧が供給されているので、リターンスプリン
グ15の付勢力によって、ピストン部12a付きストッパピ
ン12が、第2,6図に示すように左方へ移動して、第2の
位置をとると、第1,2図に示すように、ストッパピン12
と係合部5aとが係合して、偏心スリーブ5が最小偏心位
置でコネクティングロッド6の大端部に固定される。こ
れにより、コネクティングロッド6は見掛け上最も縮ん
だ状態になって、低圧縮比状態を実現することができ
る。
なお、オイルポンプ19,サブオイルポンプ24は共にエ
ンジンによって駆動されるようになっている。
また、第8図中の符号26はリリーフバルブで、このリ
リーフバルブ26は、(標準油圧+α)と標準油圧との差
圧αが一定となるように調整するものである。
さらに、27はスイッチングバルブ25の切替制御用のオ
イルコントロールバルブで、このオイルコントロールバ
ルブ27をa位置にすると、スイッチングバルブ25のパイ
ロット油圧が低下してスイッチングバルブ25をa位置に
することができ、オイルコントロールバルブ27をb位置
にすると、スイッチングバルブ25のパイロット油圧が上
がってスイッチングバルブ25をb位置にすることができ
るようになっている。
そして、このオイルコントロールバルブ27へはコント
ローラ40からの切替制御信号が入力されるようになって
いるが、コントローラ40は、エンジン負荷センサ41やエ
ンジン回転数センサ42からの検出信号を受けて、エンジ
ン中負荷域よりも大きいエンジン高負荷域あるいはエン
ジン高回転域を検出すると、オイルコントロールバルブ
27をa位置にするような制御信号を出し、エンジン中負
荷以下の領域を検出すると、オイルコントロールバルブ
27をb位置にするような制御信号を出すようになってい
る。
上述の構成により、エンジン中負荷以下の領域を検出
すると、オイルコントロールバルブ27をb位置にするよ
うな制御信号を出すので、スイッチングバルブ25もb位
置になって、油圧通路18へはオイルポンプ24からの高い
油圧が供給されて、油圧室14にこの高い油圧(標準油圧
+α)が供給される。このとき油圧室13内には油圧通路
17を介してメインギャラリ23からの標準油圧が供給され
ているので、結果として上記の高い油圧(標準油圧+
α)と標準油圧との差圧αがピストン部12aにかかり、
これによりこの差圧α分がリターンスプリング15の付勢
力に抗してピストン部12a付きストッパピン12を第3,7図
に示すように右方へ移動させる。その結果、ストッパピ
ン12が第1の位置をとり、第3,4図に示すように、スト
ッパピン12と係合部5bとが係合して、偏心スリーブ5が
最大偏心位置でコネクティングロッド6の大端部に固定
される。これにより、コネクティングロッド6は見掛け
上最も伸びた状態になって、高圧縮比状態となる。この
ように高圧縮比状態にすると、熱効率が良くなり、燃費
の向上等が期待できる。
また、エンジン中負荷域よりも大きいエンジン高負荷
域あるいはエンジン高回転域を検出すると、オイルコン
トロールバルブ27をa位置にするような制御信号を出す
ので、スイッチングバルブ25もa位置となって、油圧通
路17,18へは共にメインギャラリ23からの標準油圧が供
給されて、油圧室13,14に標準油圧が供給されてる。こ
れにより、リターンスプリング15の付勢力によって、ピ
ストン部12a付きストッパピン12が、第2,6図に示すよう
に左方へ移動して、第2の位置をとると、第1,2図に示
すように、ストッパピン12と係合部5aとが係合して、偏
心スリーブ5が最小偏心位置でコネクティングロッド6
の大端部に固定される。その結果、コネクティングロッ
ド6は見掛け上最も縮んだ状態になって、低圧縮比状態
となる。このように低圧縮比状態にすることにより、ノ
ッキングを確実に回避することができる。
このように上記一実施例では、両油圧室13,14にベー
スとしてそれぞれ標準油圧の制御油圧を印加しているの
で、エンジン回転数やクランク角度の変化により、両油
圧室間の圧力差が変化せず、これにより遠心力やコネク
ティングロッド6の往復運動の加速度等によって、スト
ッパピン12の作動が不確実になることはない。
また、ストッパピン12がクランクシャフト1の軸方向
に移動しうるように構成されているので、コネクティン
グロッドの往復運動等に基づき生じる慣性力の影響を受
けてもストッパピン12を確実に動作させることができ
る。
さらに、ストッパピン12が第1の位置をとると、偏心
スリーブ5を最大偏心位置でコネクティングロッド6の
大端部に固定することができるとともに、ストッパピン
12が逆方向に移動して第2の位置をとると、偏心スリー
ブ5を最小偏心位置でコネクティングロッド6の大端部
に固定することができるので、ストッパピン12の駆動タ
イミングを考える必要がなく、これにより圧縮比を変更
するための制御を簡素化することができる。これに対
し、特公昭63−32972号公報に記載のものでは、ピスト
ン位置を検出してロックピン突出タイミングを制御する
必要があり、制御が複雑になる。
上記のように油圧室13,14へ供給される制御油圧はシ
リンダブロックジャーナル→クランクシャフト1のクラ
ンクピン2→コネクティングロッド6の経路を経て供給
されるため、この制御油圧はクランクシャフト遠心力や
コネクティングロッド遠心力を受けて大きく変動する。
即ち、第9図に示すように、クランクシャフト角速度
をω、クランク半径をR、クランクジャーナル半径をr
j、クランクピン半径をrp、クランクピン中心からスト
ッパピン中心までの油路長をlとし、ジャーナル部の油
圧をPAとすると、角速度ωにおけるクランクピン中心で
の油圧PPCは次のようになる。
PPC=PA+(1/2)∫Δmrω=PA+(1/2)ρω(R2
−rj2) …(1) ここで、Aは油路の断面積、Δmは微小距離間の油の
質量、ρは油の密度である。
さらに、コネクティングロッド供給油圧PCRは次のよ
うになる。
PCR=PPC+(1/A)∫Δmrω =PA+(1/2)ρω(R2−rj2)+ρω・R・rp
・cosωt …(2) 同様に、コネクティングロッド・ストッパピン部油圧
PSPは次のようになる。
PSP=PA+(1/2)ρω(R2−rj2)+ρωR(rp+
l)cosωt =PA+ρω{(1/2)(R2−rj2)+R(rp+l)
cosωt} …(3) ここで、 PB=(1/2)ρω(R2−rj2) …(4) PC=ρωR(rp+l)cosωt …(5) とすると、PAはエンジン回転数およびオイル粘性係数の
関数、PBはエンジン回転数およびクランク位相の関数で
あるから、コネクティングロッド6に内蔵されたストッ
パピンの制御油圧は第10図に示すように大きく変動す
る。なお、第10図において、コネクティングロッド供給
油圧PCRはクランクピン部油圧(max,min)(特性B,C)
であり、コネクティングロッド・ストッパ部油圧PSP
ストッパピン部油圧(max,min)(特性D,E)である。
しかし、上記一実施例のように、両油圧室13,14間に
差圧分αが作用するようにすれば、クランクシャフト遠
心力やコネクティングロッド遠心力を受けて変動する圧
力分が相殺されるため、エンジン回転数やクランク位相
の影響を受けない油圧供給系を形成することができるの
である。
なお、上記実施例において、偏心スリーブロック手段
11のストッパピン12の駆動手段として、圧油を用いたも
のを使用したが、その他所要圧の流体(液体や気体)を
用いたものを使用してもよい。
〈考案の効果〉 以上詳述したように、本考案の内燃機関の可変圧縮比
装置によれば、内燃機関の気筒内を往復動するピストン
に一端部を枢支されると共に他端部をクランクシャフト
に枢支されたコネクティングロッドをそなえ、コネクテ
ィングロッドの両端部における枢支部のいずれか一方に
コネクティングロッドの軸受穴とこの軸受穴を挿通する
支軸とを相互に偏心させる偏心スリーブが回転可能に設
けられ、偏心スリーブの回転を所要位置で固定しうる偏
心スリーブロック手段が設けられて、偏心スリーブロッ
ク手段が、偏心スリーブに形成された係合部に係合しう
るピン部材と、ジャーナルを介して流体圧を供給するこ
とによりピン部材に連結されたピストン部を移動させて
ピン部材を駆動しうるピストン式流体圧駆動機構とをそ
なえて構成され、ピストン式流体圧駆動機構が、ピスト
ン部の両側に流体圧室をそなえるとともに、一方の流体
圧室にピストン部を他方の流体圧室側へ移動させるべく
付勢するリターンスプリングをそなえ、且つ、上記一方
の流体圧室に予め所要の流体圧を印加する所要流体圧印
加手段と、リターンスプリングの付勢力に抗してピスト
ン部を一方の流体圧室側へ移動させるべく該所要の流体
圧よりも高い流体圧と所要の流体圧とを選択的に他方の
流体圧室に印加しうる高圧印加手段と、奇数番ジャーナ
ルもしくは偶数番ジャーナルの油路に所要流体圧印加手
段を連結する第一油路と、第一油路に連結されていない
偶数番ジャーナルもしくは奇数番ジャーナルの油路に前
記高圧印加手段を連結する第二油路とをそなえているの
で、エンジン回転数やクランク角度の変化により、両流
体圧室間の圧力差が変化せず、これにより遠心力やコネ
クティングロッドの往復運動の加速度等の影響を受けて
も、ピン部材が確実に作動するという利点がある。
【図面の簡単な説明】
第1〜8図は本考案の一実施例としての内燃機関の可変
圧縮比装置を示すもので、第1図は低圧縮比状態にある
ときの様子を示す全体構成図、第2図は低圧縮比状態に
あるときの様子を示すコネクティングロッドの正面図、
第3図は高圧縮比状態にあるときの様子を示す全体構成
図、第4図は高圧縮比状態にあるときの様子を示すコネ
クティングロッドの正面図、第5図は第1,3図のV部拡
大断面図、第6図は低圧縮比状態にあるときの様子を示
す油圧駆動機構の断面図、第7図は高圧縮比状態にある
ときの様子を示す油圧駆動機構の断面図、第8図はその
油圧回路図であり、第9図はクランクシャフトの各部寸
法等を説明する図、第10図は油圧駆動機構およびその油
圧供給系にかかる油圧の特性図である。 図面中、 1…クランクシャフト、2…クランクピン、3…クラン
クジャーナル、4…クランクアーム、5…偏心スリー
ブ、5a,5b…係合部、6…コネクティングロッド、7…
ピストンピン、8…ピストン、9,10…メタル軸受、11…
偏心スリーブロック手段、11A…ピストン式流体圧駆動
機構としての油圧駆動機構、12…ストッパピン(ピン部
材)、12a…ピストン部、13,14…油圧室(流体圧室)、
15…リターンスプリング、16…キャップ、17,18…油圧
通路、19…オイルポンプ、20…オイルタンク、21…リリ
ーフバルブ、22…オイルフィルタ、23…メインギャラ
リ、24…サブオイルポンプ、25…スイッチングバルブ、
26…リリーフバルブ、27…オイルコントロールバルブ、
40…コントローラ、41…エンジン負荷センサ、42…エン
ジン回転数センサ。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−213630(JP,A) 特開 昭60−65234(JP,A) 特公 昭63−49057(JP,B2)

Claims (1)

    【実用新案登録請求の範囲】
  1. 【請求項1】内燃機関の気筒内を往復動するピストンに
    一端部を枢支されると共に他端部をクランクシャフトに
    枢支されたコネクティングロッドをそなえ、該コネクテ
    ィングロッドの両端部における枢支部のいずれか一方に
    該コネクティングロッドの軸受穴とこの軸受穴を挿通す
    る支軸とを相互に偏心させる偏心スリーブが回転可能に
    設けられ、該偏心スリーブの回転を所要位置で固定しう
    る偏心スリーブロック手段が設けられて、該偏心スリー
    ブロック手段が、該偏心スリーブに形成された係合部に
    係合しうるピン部材と、ジャーナルを介して流体圧を供
    給することにより該ピン部材に連結されたピストン部を
    移動させて該ピン部材を駆動しうるピストン式流体圧駆
    動機構とをそなえて構成され、該ピストン式流体圧駆動
    機構が、該ピストン部の両側に流体圧室をそなえるとと
    もに、一方の流体圧室に該ピストン部を他方の流体圧室
    側へ移動させるべく付勢するリターンスプリングをそな
    え、且つ、上記一方の流体圧室に予め所要の流体圧を印
    加する所要流体圧印加手段と、該リターンスプリングの
    付勢力に抗して該ピストン部を該一方の流体圧室側へ移
    動させるべく該所要の流体圧よりも高い流体圧と前記所
    要の流体圧とを選択的に上記他方の流体圧室に印加しう
    る高圧印加手段と、奇数番ジャーナルもしくは偶数番ジ
    ャーナルの油路に前記所要流体圧印加手段を連結する第
    一油路と、第一油路に連結されていない偶数番ジャーナ
    ルもしくは奇数番ジャーナルの油路に前記高圧印加手段
    を連結する第二油路とをそなえていることを特徴とする
    内燃機関の可変圧縮比装置。
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