JPH0890281A - 高Cr鋼の溶接方法 - Google Patents

高Cr鋼の溶接方法

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JPH0890281A
JPH0890281A JP25153094A JP25153094A JPH0890281A JP H0890281 A JPH0890281 A JP H0890281A JP 25153094 A JP25153094 A JP 25153094A JP 25153094 A JP25153094 A JP 25153094A JP H0890281 A JPH0890281 A JP H0890281A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 重量%で、Cr:7.5〜18.0%を含有
し、ミクロ組織が実質的にマルテンサイト単相あるいは
マルテンサイトを主体として一部フェライトを含む高C
r鋼を溶接するのに適した、溶接金属の耐食性と強度お
よび靱性に優れた溶接方法を提供する。 【構成】 重量%で、C:0.03%超0.12%以
下、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.02〜3.
0%、Cr:18.0〜28.0%、Ni:5.0〜1
0.0%、Mo+0.5W:1.0〜5.0%、Al:
0.005〜0.5%を含有し、Pを0.03%以下、
Sを0.01%以下、Nを0.03%以下に低減し、残
部Feおよび不可避不純物からなる溶接材料を用いてア
ーク溶接し、かつ溶接金属のミクロ組織をオーステナイ
トとフェライトの2相組織とし、オーステナイト分率を
30〜70%とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高Cr鋼の溶接方法に関
する。さらに詳しくは、例えば石油・天然ガスの輸送に
使われるラインパイプ、あるいは貯蔵に使われる容器、
あるいはさらに強度と耐食性が要求される用途において
使用される高Cr鋼を溶接するのに適した、耐食性、強
度および靱性に優れた溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年生産される石油・天然ガスには、湿
潤な炭酸ガスや硫化水素を含有するものが増加してい
る。こうした環境中で、炭素鋼や低合金鋼が著しく腐食
することは周知の事実である。そして、かかる腐食性の
石油・天然ガスの輸送に際しての鋼管の防食対策として
は、腐食抑制剤の添加が従来から一般的であった。しか
し、腐食抑制剤は、海洋油井では添加・回収処理に要す
る費用が膨大なものとなり、また海洋汚染の問題もあっ
て使用が困難になりつつある。そこで、腐食抑制剤を添
加する必要がない耐食材料に対するニーズが最近大きく
なっている。
【0003】こうした目的のために、炭酸ガス含有環境
等で優れた耐食性を有し、溶接性にも優れる鋼あるいは
鋼管が多く提案されている。これらは炭酸ガス含有環境
での耐食性を得るために11〜15%程度のCrを含有
し、溶接性を改善する目的でCを低減し、強度と靱性を
確保するために焼入−焼戻熱処理を施して、組織を焼戻
マルテンサイトとするのが一般的である。例えば、特開
平4−99154号公報および特開平4−99155号
公報には、CおよびNを低減し、置換型オーステナイト
安定化元素を添加した溶接性の優れたラインパイプ用高
Cr鋼が記載されている。
【0004】ところで、ラインパイプや圧力容器は溶接
によって接続あるいは製造されるものであるが、上記の
ような溶接性の優れた高Cr鋼に適した溶接材料あるい
は溶接方法が従来無かった。「NKK技報」、1989
年発行、第129号、第15〜22頁には、AISI4
10鋼をUOE鋼管として製造し、Niを添加した共金
系材料を用いてTIG溶接継手(ラインパイプの現地円
周溶接相当)を作成した例が報告されている。しかし、
この報告にもみられるように、高Cr鋼の共金系材料
は、Niを多量に含有したとしても、溶接金属の硬さが
非常に硬くなる。この場合、使用環境において、微量の
硫化水素が混入すると溶接金属に応力腐食割れを発生す
る恐れがある難点があった。また、溶接後に焼戻熱処理
を施して、溶接金属の硬さを低減することは可能ではあ
るが、高Cr鋼の場合には、熱処理温度と時間として例
えば620℃×1時間といった非常に高温かつ長時間の
熱処理が必要である。ラインパイプの敷設現場でこうし
た熱処理を施すこと、巨大な圧力容器の溶接部あるいは
全体にこうした熱処理を施すこと等は実際には極めて困
難であり、かつ膨大な費用と時間を要する。また、ティ
グ(タングステンイナートガス)溶接は溶接速度が遅
く、かつ1パスでの溶接金属量が少ないので、構造物の
溶接に適用すると施工コストが非常に高くなる難点もあ
る。従って、高Cr鋼を共金系あるいはマルテンサイト
系ステンレス鋼溶接材料を用いて溶接することは、施工
上は困難である。
【0005】一方、低合金鋼を溶接材料とすれば溶接は
容易であるし、溶接金属の溶接後熱処理は不要である。
しかし、低合金鋼は炭酸ガス含有環境における耐食性が
乏しく、耐食性の優れた高Cr鋼母材に耐食性の劣る低
合金鋼溶接金属が接触していると、溶接部が選択的に腐
食されるために、構造物の安全上、極めて危険であり、
採用することはできない。
【0006】さらに、耐食性の優れた高Niオーステナ
イト系ステンレス鋼や、Ni基超合金を溶接材料とすれ
ば、溶接部の選択腐食は発生せず、溶接金属の硬さが低
く、溶接金属の靱性を確保することができる。しかし、
オーステナイト系ステンレス鋼やNi基超合金は、その
結晶構造上、強度が低いという問題点がある。一般的に
は、これらの材料の降伏強度は300〜400N/mm
2 程度しかない。降伏強度が551N/mm2 以上にも
なる高Cr鋼母材を強度が非常に低い溶接金属で溶接す
ると、外部応力が負荷された場合に溶接金属が集中的に
変形し、破壊に至る恐れがある(アンダーマッチングと
いう)。従って、オーステナイト系ステンレス鋼や高N
i合金を溶接材料として高Cr鋼を溶接することにも大
きな困難があった。
【0007】上記のように、溶接構造物においては、溶
接金属の強度が母材よりも低いアンダーマッチングは嫌
われる場合が多く、溶接金属の強度が母材よりも高い方
が好ましい場合も多い。母材の強度が一定であるとする
と、溶接金属の強度を高めることが必要である。この場
合、強化手段は耐食性や靱性などの他の特性を著しく低
下させるものであってはならない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこうした現状
に鑑み、炭酸ガス含有環境等で優れた耐食性を有し、溶
接部の靱性、強度にも優れた高Cr鋼の溶接方法を提供
することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、下記〜の
通りである。
【0010】 第1発明は、重量%で、Cr:7.5
〜18.0%を含有し、ミクロ組織が実質的にマルテン
サイト単相あるいはマルテンサイトを主体として一部フ
ェライトを含む高Cr鋼の溶接方法において、重量%
で、 C : 0.03%超0.12%以下、 Si: 0.01 〜 1.0%、 Mn: 0.02 〜 3.0%、 Cr:18.0 〜 28.0%、 Ni: 5.0 〜 10.0%、 Mo+0.5W: 1.0 〜 5.0%、 Al: 0.005〜 0.5% を含有し、Pを0.03%以下、Sを0.01%以下、
Nを0.03%以下に低減し、残部Feおよび不可避不
純物からなる溶接材料を用いてアーク溶接し、かつ溶接
金属のミクロ組織をオーステナイトとフェライトの2相
組織とし、オーステナイト分率を30〜70%とするこ
とを特徴とする高Cr鋼の溶接方法である。
【0011】 第2発明は、前記第1発明において、
溶接材料が付加成分としてさらに、重量%で、 Cu:3%以下を含有する高Cr鋼の溶接方法である。
【0012】 第3発明は、前記第1発明または第2
発明において、溶接材料が付加成分としてさらに、重量
%で、Nb、V、Ti、Zr、Taの1種または2種以
上の合計含有量で1.0%以下を含有する高Cr鋼の溶
接方法である。
【0013】
【作用】以下に本発明で使用する溶接材料の各成分等の
範囲を限定した理由を述べる。なお、%は特に明記しな
い限り重量%を意味する。
【0014】C: Cは溶接金属の強度を大きく上昇さ
せる元素として、またオーステナイト生成元素として添
加する。Cの添加量が0.03%以下では溶接金属の強
度が不足し、アンダーマッチングになりやすい。CはC
r炭化物を生成して耐食性を低下させる元素ではある
が、C量が0.12%以下であればC添加による耐食性
の低下はさほど大きくはなく、母材である高Cr鋼のそ
れを下回ることはない。しかし、C含有量が0.12%
を超えると溶接金属の耐食性と靱性が低下するので、上
限は0.12%とする。
【0015】Si: Siは溶接金属の脱酸剤および強
化元素として有効であるが、含有量が0.01%未満で
はその脱酸効果が充分ではなく、1.0%を超えて含有
させても、その効果は飽和するばかりか、衝撃靱性を低
下させるので、Siの含有量は0.01〜1.0%に限
定する。
【0016】Mn: Mnは溶接金属の脱酸剤として必
要で、また溶接金属の組織を調整するためのオーステナ
イト生成元素としても重要であって、0.02%以上を
含有させる必要がある。しかし、3.0%を超えて含有
させても、その効果はもはや飽和するばかりか、過剰に
Mnを含有させることは、材料の製造時に困難を生ずる
ので、上限含有量は3.0%とする。
【0017】Cr: Crは溶接金属の耐食性と強度を
確保するために18.0%以上を含有させることが必要
であるが、28.0%を超えて含有させると、溶接金属
の組織を調整するためにオーステナイト生成元素として
多量の合金元素を添加しなければならず、これはコスト
をいたずらに上昇させるばかりである。従って、Crの
含有量は18.0〜28.0%とする。
【0018】Ni: Niは溶接金属の組織中にオース
テナイトを安定に生成させ、靱性と耐食性を確保する元
素として重要である。その含有量が5.0%未満では衝
撃靱性が不充分であり、またオーステナイト分率を確保
することが困難になる。Niの含有量が10.0%を超
えると、オーステナイト分率が過大になって溶接金属の
強度が低下する恐れがあるのに対して、衝撃靱性を向上
させる効果はもはや飽和する。従って、Niの含有量は
5.0〜10.0%とする。
【0019】Mo+0.5W: MoおよびWは溶接金
属の耐食性と高強度を確保するために添加する。含有量
が同じである場合に、Wの効果はMoの効果の1/2で
あるので、両者を合計した効果はMo+0.5Wで表わ
される。そして、Mo+0.5Wが1.0%未満では、
溶接金属の耐食性と強度が充分ではなく、5.0%を超
えると、溶接金属のフェライトとオーステナイトの分率
を適正に保つのが困難になるか、オーステナイト分率を
30〜70%とするためにオーステナイト生成元素を過
大に添加しなければならなくなる。従って、Mo+0.
5Wの値は1.0〜5.0%とする。なお、MoとWは
いずれか一方を単独に添加しても、両者を複合して添加
しても、Mo+0.5Wで表わされる量が1.0〜5.
0%の範囲に入れば良い。
【0020】Al: Alは脱酸剤として0.005%
以上の添加が必要である。しかし、0.5%を超えて添
加すると、粗大な酸化物系介在物を形成して、溶接金属
の耐食性と衝撃靱性を損なうので、上限含有量は0.5
%とする。
【0021】P: Pは多量に存在すると靱性を低下さ
せるので0.03%以下に低減することが必要であり、
少ないほど好ましい。
【0022】S: Sも多量に存在すると熱間加工性、
延性および耐食性を低下させるので、少ない方が望まし
く、0.01%以下に低減することが必要である。溶接
材料としての製造性を一段と改善し、溶接金属の耐食性
をさらに改善するためには、Sを0.005%以下に低
減するのがより好ましい。
【0023】N: Nは溶接金属の強度を高める元素で
はあるが、多量に含有させると溶接金属やボンド部にブ
ローホールを生成するなどの問題を生ずる。従って、N
量は0.03%以下に限定する。
【0024】以上が本発明方法で使用する溶接材料の基
本成分であるが、必要に応じてさらに以下の元素を添加
して、特性を一段と向上させた溶接材料を使用すること
もできる。
【0025】Cu: Cuは溶接金属の強度と耐食性を
高めるのに顕著な効果があり、オーステナイト分率を所
定の範囲に調整するためにも有用な元素である。しか
し、3.0%を超えて添加しても、その効果はもはや飽
和するのに対して、溶接材料の製造性を低下させるの
で、上限含有量は3.0%とする。
【0026】Nb、V、Ti、Zr、Ta: Nb、
V、Ti、Zr、Taは溶接金属の硬さを低下させ、耐
食性を改善する効果がある。しかし、過剰に添加しても
これらの効果は飽和するのに対して、靱性を低下させる
ので、Nb、V、Ti、Zr、Taの1種または2種以
上の合計含有量が1.0%を超えないものとする。
【0027】本発明方法で使用する溶接材料には、上記
の成分の他に、製造性、靱性や耐食性などを調整する目
的で、あるいは添加合金元素に付随した不純物として、
Sn、Sb、Bなどを含有することができる。また、製
造性を改善する目的で、希土類元素(REM)、Ca、
Mgなどを含有することも可能である。なお、ここで希
土類元素とは、原子番号が57〜71番および89〜1
03番の元素およびYを指す。また、本発明では酸素の
含有量は特に限定はしていないが、酸素は酸化物系非金
属介在物を生成する根源となる不純物であるから、少な
いほど好ましい。
【0028】次に、本発明においては、溶接金属のミク
ロ組織を限定する。すなわち、溶接金属のミクロ組織
は、強度、衝撃靱性、硬さ、耐食性という複数の要求特
性を同時に満足するために、オーステナイト+フェライ
トの2相組織であることが必要である。フェライト単相
あるいはフェライト主体の組織では、衝撃靱性が悪く、
オーステナイト単相あるいはオーステナイト主体の組織
では、溶接金属の強度が不足する。また、マルテンサイ
ト単相あるいはマルテンサイト主体の組織であると硬さ
が硬く、衝撃靱性に乏しい。オーステナイト+フェライ
トの2相組織とすれば、溶接金属の強度が高まる一方で
硬さが過剰に上昇することを防止し、従って溶接に際し
て予熱あるいは後熱処理を施さなくても溶接割れが発生
せず、さらに優れた衝撃靱性が得られる。
【0029】溶接金属中のオーステナイト分率が30%
未満では、フェライト分率が過大になって溶接金属の衝
撃靱性が低下するとともに、フェライト硬さが高くなり
すぎる。一方、オーステナイト分率が70%を超える
と、成分をいかに調整しても溶接金属の強度を確保する
ことが困難になる。従って、溶接金属のオーステナイト
分率は30〜70%の範囲とすることが必要である。
【0030】本発明方法はアーク溶接を採用する。通常
のアーク溶接であれば特に限定されるものではないが、
ラインパイプや圧力容器等の溶接には被覆アーク溶接、
ミグ(メタルイナートガス)溶接、マグ(メタルアクテ
ィブガス)溶接、ティグ(タングステンイナートガス)
溶接などが好ましい。溶接は自動、半自動、手動のいず
れでも良く、特に限定されるものではない。ミグ、マ
グ、ティグではワイヤの成分を本発明の範囲とすれば良
く、被覆アーク溶接ではかかる成分を有する心線を用い
て必要な被覆を施せば良い。
【0031】本発明が対象とする高Cr鋼は、Cr量が
7.5〜18.0%であって、ミクロ組織が実質的にマ
ルテンサイト単相、あるいはマルテンサイトを主体とし
て一部フェライトを含むもので、高強度が要求される鋼
である。本発明は母材の降伏強度が483N/mm2
上である場合に特に有効であり、母材の強度が551N
/mm2 以上である場合にはさらに一段と有効である。
【0032】高Cr鋼ではあっても、組織がフェライト
単相、あるいは実質的にフェライトからなる場合には、
鋼自体の強度が必ずしも高くはないので、本発明方法を
採用する必要がない場合が多い。それは、こうした鋼
は、主として加工性を要求される薄板として使用される
場合が多く、母材あるいは溶接部の衝撃靱性に対する要
求がないか、あっても要求レベルが低いためである。ま
た、溶接部に要求される強度もさほど高くないからであ
る。勿論、組織がフェライト単相、あるいは実質的にフ
ェライトからなる高Cr鋼に本発明方法を採用しても何
ら問題はない。
【0033】本発明が対象とする高Cr鋼は、Cr量が
前述の範囲であれば、他の成分は特に限定されるもので
はない。たとえば、溶接性を改善する目的でCおよびN
を低減すること、マルテンサイト組織を得るためにN
i、Cu、Mnを添加すること、さらに耐食性を改善す
る目的でMo、Wを添加すること、さらに衝撃靱性と熱
影響部硬さを改善する目的でNb、V、Ti、Zr、T
a等を添加すること、耐食性や熱間加工性などを改善す
る目的で、希土類元素(REM)、Caの1種以上を添
加することも可能である。不純物であるP、S、Oは低
減されるのが一般的であり、Si、Alは脱酸目的で添
加され、強度を目的としてBを添加することもある。
【0034】本発明は、ラインパイプなどの鋼管の円周
溶接に採用することが可能であるし、圧力容器や構造物
に使用される鋼板の溶接に採用することも可能である。
【0035】
【実施例】以下に本発明の実施例について説明する。
【0036】表1に成分を示す高Cr鋼管(外径27
3.1mm、肉厚11.1mm)を母材とし、表2に示
す溶接材料を用いて、表3に示す溶接方法および条件で
溶接して溶接継手を作成した。なお、表1に示した鋼管
は、鋼管として製造した後に焼入−焼戻熱処理を施し
て、いずれも降伏強度を551N/mm2 以上とした鋼
管である。また、溶接に際して、予熱はまったく行わ
ず、溶接後の熱処理も行わなかった。各溶接継手の断面
について、エッチングして溶接金属の組織を現出した後
に、オーステナイト分率をポイントカウント法で測定し
た結果を表3中にあわせて記載した。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】次に、各々の溶接継手から、溶接金属に切
欠が位置するようにJIS4号衝撃試験片(フルサイ
ズ)を採取し、衝撃試験を実施した。溶接金属最高硬さ
は、荷重1kgのビッカース硬さとして測定した。ま
た、溶接線に直交する方向において、平行部に溶接金
属、溶接熱影響部、母材を含むようにJIS5号引張試
験片を採取し、室温で引張試験を行った。一方、各溶接
継手の溶接金属から試験片を採取して、湿潤炭酸ガス環
境における腐食試験を行った。湿潤炭酸ガス環境におけ
る腐食試験条件としては、試験温度120℃のオートク
レーブ中で、炭酸ガス40気圧で5%NaCl水溶液中
に30日間浸漬して、試験前後の重量変化から腐食速度
を算出した。腐食速度の単位はmm/yとしたが、一般
にある環境におけるある材料の腐食速度が0.1mm/
y未満の場合、その材料は充分耐食的であり、使用可能
であると考えられている。
【0041】試験結果を表4に示した。表4の衝撃試験
結果において、○は破面遷移温度が−30℃以下、×は
破面遷移温度が−30℃を超えて0℃以下、××は破面
遷移温度が−0℃超であったことをそれぞれ表わしてい
る。引張試験結果においては、○は母材部で破断し、溶
接金属部では破断しなかったもの、×は溶接金属部で破
断したものを表わしている。腐食試験結果としては、前
記腐食速度を示した。
【0042】
【表4】
【0043】表4から明らかなように、本発明例である
No.1〜5では、溶接金属の衝撃靱性が優れ、溶接金
属の強度が高くて溶接金属では破断せず、溶接金属の最
高硬さは低く、かつ溶接金属の耐食性が優れるという多
数の要求特性を同時に満足できたことがわかる。なお、
これらの特性は、前述の通り溶接時に予熱あるいは後熱
処理を施さない溶接ままで得られた。
【0044】これに対して、比較例であるNo.6は溶
接材料が低合金鋼ベースであるために、溶接金属の耐食
性と衝撃靱性が著しく悪かった。比較例No.7は溶接
材料が13%Cr−4Ni共金系であって、溶接ままで
は焼入ままのマルテンサイト組織であり、溶接金属の硬
さが非常に硬かった。また、比較例No.8はオーステ
ナイト系溶接材料を用い、耐食性と衝撃靱性は良かった
ものの、溶接金属の強度が非常に低く、まったく不充分
であった。比較例No.9は溶接金属のミクロ組織がフ
ェライト+オーステナイト2相混合組織ではあったが、
成分が適切でなく、かつ溶接金属のオーステナイト分率
が不適切であったために、溶接金属の衝撃靱性が著しく
悪かった。
【0045】
【発明の効果】本発明は耐食性、強度および靱性に優れ
た高Cr鋼の溶接方法であり、産業の発展に貢献すると
ころが極めて大である。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、Cr:7.5〜18.0%を
    含有し、ミクロ組織が実質的にマルテンサイト単相ある
    いはマルテンサイトを主体として一部フェライトを含む
    高Cr鋼の溶接方法において、重量%で、 C : 0.03%超0.12%以下、 Si: 0.01 〜 1.0%、 Mn: 0.02 〜 3.0%、 Cr:18.0 〜 28.0%、 Ni: 5.0 〜 10.0%、 Mo+0.5W: 1.0 〜 5.0%、 Al: 0.005〜 0.5% を含有し、 Pを0.03%以下、 Sを0.01%以下、 Nを0.03%以下 に低減し、残部Feおよび不可避不純物からなる溶接材
    料を用いてアーク溶接し、かつ溶接金属のミクロ組織を
    オーステナイトとフェライトの2相組織とし、オーステ
    ナイト分率を30〜70%とすることを特徴とする高C
    r鋼の溶接方法。
  2. 【請求項2】 溶接材料が付加成分としてさらに、重量
    %で、 Cu:3%以下 を含有する請求項1に記載の高Cr鋼の溶接方法。
  3. 【請求項3】 溶接材料が付加成分としてさらに、重量
    %で、 Nb、V、Ti、Zr、Ta の1種または2種以上の合計含有量で1.0%以下を含
    有する請求項1または2に記載の高Cr鋼の溶接方法。
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