JPH0890119A - 優れたフランジ成形性と強度を有する軽量スチール缶 - Google Patents

優れたフランジ成形性と強度を有する軽量スチール缶

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JPH0890119A
JPH0890119A JP22485594A JP22485594A JPH0890119A JP H0890119 A JPH0890119 A JP H0890119A JP 22485594 A JP22485594 A JP 22485594A JP 22485594 A JP22485594 A JP 22485594A JP H0890119 A JPH0890119 A JP H0890119A
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JP
Japan
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flange
strength
crystal grains
steel
minor axis
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JP22485594A
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Yashichi Oyagi
八七 大八木
Takehide Senuma
武秀 瀬沼
Koji Manabe
晃治 真鍋
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 冷延まま鋼板によるフランジ成形性と強度に
優れた軽量スチール缶を提供する。 【構成】 結晶粒の長軸と短軸の比率が3.0以上の冷
間圧延組織を有し、HR30T硬度が70以上の鋼板よ
り成る溶接缶の缶胴において、缶蓋2重巻締めフランジ
成形長さの該フランジ端部を起点に10%以上の部分に
おいて、結晶粒の長軸と短軸の比率が2.5以下の再結
晶組織を有することを特徴とする優れたフランジ成形性
と強度を有する軽量スチール缶。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金属缶、特に飲料缶に
多用されている缶底と缶胴が一体に成形されるスチール
製2ピース缶、および真空巻締めにて内容物が充填され
る缶に多用され缶胴が溶接により接合されるスチール製
3ピース缶に関するものである。
【0002】
【従来の技術】周知の如く、金属容器を缶体という観点
から分類すると、缶胴と地蓋が一体に成形された2ピー
ス缶と、天涯、地蓋、缶胴から成る3ピース缶とに大き
く分類される。
【0003】2ピース缶は、ビール、炭酸飲料等を内容
物とする飲料缶および制汗剤、シェービングクリーム等
を充填したエアゾール缶等があり、非常に生活に密着し
た容器で年々製造缶数は増加している。2ピース缶を成
形する加工の代表例はDI加工と呼ばれ、2回の絞り加
工(Drawing)と2〜3回のしごき加工(Ironing)によっ
て成形され、缶胴は原板厚みの1/2〜1/3程度にま
でしごき加工される。また、近年、ストレッチ加工によ
り、缶胴を原板厚みの20〜50%程度曲げ伸ばす加工
法が採用されることもある。いずれにしろ、使用される
素材には高度の加工性が要求され、現在アルミニウム
と、錫めっきあるいはクロムめっきした鋼板が用いられ
ている。
【0004】ところで、缶の軽量化に対して最も効果的
な方法は缶厚みの薄手化である。この2ピース缶はビー
ル・炭酸飲料等の内圧が生じる飲料に使用されるため、
内容物非充填時の缶強度は大して必要ではなく、側壁の
肉厚を相当薄くしても内容物充填後の内圧により缶強度
は確保される。ところが、缶底の場合、余り板厚を薄く
すると、内容物充填後の内圧により缶底が塑性変形(バ
ックリング現象:缶底部が内圧により膨れあがる現象)
し問題を生じる。従って、缶低部の板厚を薄くしてゆく
場合には、強度の高い鋼板を使用する必要がある。
【0005】一方、3ピース缶は、コーヒー・天然果汁
飲料・スポーツドリンク等の内容物を充填する容器とし
て重要な位置を占めている。3ピース缶の製造法として
半田缶の時代が長く続いていたが、TFS(ティンフリ
ースチール:鋼板表面に金属クロムと水和酸化クロムの
2層皮膜を有する鋼板)の開発と共に缶胴を有機接着剤
で接合する接着缶が出現した。その後、高速溶接(ワイ
ヤーシーム溶接)にて缶胴の接合を行う技術が開発さ
れ、溶接缶が幅広く採用されることになった。
【0006】前記2ピース缶はビール・炭酸飲料等の内
圧を有する缶に使用されるが、前述したように、側壁の
肉厚を相当薄くしても内容物充填後の内圧により缶強度
は確保されるため、その特性を利用して、2ピース缶は
使用材料を大幅に削減することが可能である。一方、3
ピース溶接缶は前述のごとくコーヒー・天然果汁飲料・
スポーツドリンク等の内容物を充填する容器として重要
な位置を占めているが、これらの内容物は真空巻締めで
充填されるため、内圧を有する2ピース缶と異なり、缶
自体に十分な強度が必要とされる。従って、非内圧缶
(溶接缶)の場合、缶胴部の肉厚を薄くするには限界が
ある。このことは、溶接缶のコストダウンをはかるため
には大きな障害となり、缶胴部の肉厚は0.15〜0.
17mm程度が下限であるとされている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、鋼板製造工
程の簡略化と高強度材の使用による板厚減少によりスチ
ール缶の軽量化を達成するため、溶接缶体構造のあり方
を追求した結果なされたものである。鋼板素材のうち薄
くて強度の高い最も安価な鋼板は、冷延ままのいわゆる
フルハード材と呼ばれる材料である。この材料は、その
成分系で最高の強度を有する状態としてフルハードと呼
ばれている。この鋼板は冷間圧延のままで使用されるた
め、従来の鋼板製造工程で必要とされる焼鈍・調圧工程
は省略され、経済的に優れたものとなる(特公昭54−
1244号公報参照)。薄くて強度の高い材料を得るも
う一つの方法として、2回冷延法が知られている。熱延
板を0.25mm前後の板厚程度まで冷間圧延し、その板
厚で焼鈍を行い、再度冷間圧延を行い極薄鋼板を製造す
る方法である。この方法の場合、経済性は若干劣るにし
ても、強度の高いレベルで材質を作りわけるのに適して
いる。(特公昭38−8563号公報参照)。
【0008】いずれの方法にしても、本発明は高強度材
の使用による缶の軽量化を狙いとしており、結晶粒の長
軸と短軸の比率が3.0以上の冷間圧延組織を有し、H
R30T硬度が70以上である鋼板を原板として使用す
る。このような鋼板を2ピース缶(DI缶)用鋼板とし
て使用する場合、2回の絞り加工と2〜3回のしごき加
工工程(カップ成形工程)は、使用金型デザインを変更
することにより対処可能であるが、缶低部の成形におけ
るしわと割れ発生、およびフランジ成形における割れ発
生の問題を生じる。
【0009】これらの問題の解決方法として、缶底部の
成形については成形段数を増加させることにより現在流
通しているような缶形状に成形可能であるが、フランジ
成形時の割れ発生については全く対処の方法が見いだせ
ない状況にある。また、前記の鋼板を3ピース溶接缶用
鋼板として使用する場合、缶胴接合のための溶接は適切
な表面処理(例えば、錫めっき)を施すことにより問題
なく達成されるが、フランジ成形において割れ発生の大
きな問題を生じる。このように、フルハード材を使用し
た缶は2ピース缶、3ピース溶接缶ともにフランジ加工
時にフランジ割れが発生しやすいという問題がある。
【0010】
【課題を解決するための手段】フルハード材を素材とし
た缶のフランジ成形がうまく行えない原因について種々
検討した所、以下のことが判明した。2ピース缶におい
ては、フランジ成形以前のトータル加工度にその原因の
大半がある。即ち、硬質材を使用するためにDI加工前
に高度の冷間圧延(圧下率20%以上)を行っているこ
と、更にDI加工時に30%内外のしごき加工を行って
おり、トータルすると40%以上(焼鈍板を基準)の冷
間加工が施されている。
【0011】特にフルハード材の場合は、冷間圧延で9
0%以上の加工を行い、更にDI加工時に30%内外の
しごき加工を行うため、トータルすると95%(酸洗板
を基準)の加工が施されることになる。従って、フラン
ジ成形部の材料の延性は極度に低下しており、それが原
因となりフランジ割れが生じ易くなっているものと判断
された。このことは、硬質材の使用による板厚減少(缶
重量減少)の追求とフランジ成形性の向上は相入れない
内容となり、新たな対策が必要とされる。
【0012】また、3ピース缶において、フルハード材
を使用して溶接を行う場合、溶接接合部および溶接熱影
響部は、鋼板の再結晶温度以上に加熱されるため、冷間
圧延組織は消滅し再結晶組織を呈することになる。再結
晶化した溶接熱影響部は、材質レベルとして他の部分よ
り大幅に軟化し、フランジ成形において割れ発生の問題
を生じる箇所となる。また、2ピース缶と同様、フルハ
ード材は、冷間圧延で90%以上の加工を行うため、缶
胴部の材料の延性は極度に低下しており、それが原因と
なるフランジ割れが生じ易いという問題を生じる。この
ように、3ピース缶においてもフルハード材のような高
度の冷延組織を有する高強度材を使用して溶接缶を製造
し、フランジ割れの発生しない溶接缶体を安定して製造
する必要がある。
【0013】本発明は、このような背景のもとになされ
たものであり、その要旨は、(1)結晶粒の長軸と短軸
の比率が3.0以上の冷間加工組織を有しかつHR30
T硬度が70以上の鋼板よりなる缶胴を有する缶におい
て、該缶胴端部の缶蓋2重巻締フランジ成形長さLの該
フランジ端部を起点として10%以上の部分が、結晶粒
の長軸と短軸の平均比率で2.5以下の再結晶組織を有
することを特徴とする、優れた成形性と強度を有する軽
量スチール缶であり、(2)結晶粒の長軸と短軸の比率
が3.0以上の冷間加工組織を有しかつHR30T硬度
が70以上の缶底部と、加工により該缶底部の板厚より
薄く成形された缶胴を有する2ピース缶において、該缶
胴端部の缶蓋2重巻締フランジ成形長さLの該フランジ
端部を起点として10%以上の部分が、結晶粒の長軸と
短軸の平均比率で2.5以下の再結晶組織を有すること
を特徴とする、優れた成形性と強度を有する軽量スチー
ル缶、および、(3)結晶粒の長軸と短軸の比率が3.
0以上の冷間加工組織を有しかつHR30T硬度が70
以上の鋼板よりなる缶胴を有する3ピース溶接缶におい
て、該缶胴端部の缶蓋2重巻締フランジ成形長さLの該
フランジ端部を起点として10%以上の部分および溶接
部が、結晶粒の長軸と短軸の平均比率で2.5以下の再
結晶組織を有することを特徴とする、優れた成形性と強
度を有する軽量スチール缶にある。
【0014】一般に高強度材については各種の定義が存
在するが、本発明では製造方法の内容を最も良く反映す
る結晶組織と硬度を採用した。結晶組織としては、結晶
粒の形態として、結晶粒の長軸と短軸の比率を3.0以
上と規定することにより冷間圧延組織を代表させる。硬
度レベルとしては、HR30T硬度が70以上であるこ
とにより高強度な缶を得ることが出来る。また、上記高
強度材にさらにDI加工を行った2ピース缶の缶胴(缶
壁)も上記結晶粒の長軸と短軸の比率が3.0以上、硬
度レベルがHR30T硬度70以上を満足するのはいう
までもない。
【0015】このような条件を満たした鋼板で成形され
た2ピース缶においては、前述の如く、フランジ成形性
の劣ったものとなり、フランジ成形時に多数のフランジ
割れが発生する。これを防止するため種々の方策を検討
した結果、トリミング後のフランジ部において、フラン
ジ成形部全長(図1のL)の10%以上の長さ(缶高さ
方向)において缶全周を熱処理し、強度の冷間加工組織
を消失させることが有効である事を知見した。熱処理と
しては、短時間に鋼板の再結晶温度以上に加熱し、冷間
圧延とDI加工による歪を除去し、伸び特性を回復させ
ることが肝要である。
【0016】一方、やはりこのような条件を満たした鋼
板で成形された3ピース溶接缶においては、前述の如
く、フランジ成形性の劣ったものとなり、フランジ成形
時に多数のフランジ割れが発生する。これを防止するた
め種々の方策を検討した結果、フランジ成形部全長(図
1のL)の端部より10%以上の長さ(缶高さ方向)に
おいて缶全周を熱処理し、結晶粒の長軸と短軸の比率の
大きな冷間圧延組織を消失させることが有効である事を
知見した。熱処理としては、上記2ピース缶と同じく、
短時間に鋼板の再結晶温度以上に加熱し、冷間圧延によ
る歪を除去し、伸び特性(延性)を回復させることが肝
要である。
【0017】3ピース缶におけるフランジ成形時のフラ
ンジ割れ(クラック)は、2ピース缶と同じく冷間加工
(圧延)ままの延性に劣る缶胴端部をさらにフランジ成
形加工を行うことによって、フランジ端部を起点として
発生するフランジ割れに加えて、フランジ全周における
溶接部(溶接熱影響部)とそれ以外の部分の延性の差に
よって発生する。すなわち、缶胴端部付近のフランジ加
工部全周を見ると、溶接部は溶接熱によって鋼組織が再
結晶し延性が回復する。一方溶接部以外の部分は冷間圧
延ままの延性に乏しい組織のため、フランジ成形加工を
行うと、硬度が低く延性の良い溶接部に伸びが集中し該
溶接部からフランジ割れが発生するものである。そこ
で、本発明のようにフランジとなる缶胴端部を熱処理し
再結晶させてフランジ加工するとフランジ端部近傍の溶
接熱影響部と溶接熱影響部以外の伸び特性の差が小さく
なり、また溶接熱影響部以外のフランジ端部近傍の伸び
特性が回復するため、フランジ割れが防止できる。
【0018】熱処理を行うフランジ長さを10%以上に
規制した理由は、フランジ成形部以上の長さにまで熱処
理を行うと缶強度の低下、特に座屈強度の低下を招き高
強度材を使用する価値が薄れると共に、耐食性上の問題
を生じることになる。すなわち、缶の製造には錫めっき
鋼板あるいはクロムめっき鋼板が使用されており、鋼板
の再結晶温度以上に加熱すると、錫と鉄あるいはクロム
と鉄との合金化が進み、耐食性が劣化するものである。
【0019】従って、熱処理を行う部位としては、2ピ
ース缶では、最も大きな伸びが必要とされる缶上端部
(トリミング先端部)を必ず含み、3ピース溶接缶で
は、やはり最も大きな伸びが必要とされる缶上下端部を
必ず含み、フランジ成形長さ(図1のL)のフランジ端
部を起点に少なくとも10%以上の長さに亘って行うこ
とが必要である。
【0020】また、3ピース溶接缶の場合、鋼板表面に
は予め内面塗装・外面印刷が行われており、過度の熱が
かかると有機皮膜が破壊され耐食性及び外観不良等の問
題を生じることになる。なお、3ピース溶接缶の溶接熱
影響部は範囲が狭く、また通常補修塗装を行うため、耐
食性の問題はなく、結晶粒の長軸と短軸との平均比率が
2.5以下の再結晶組織であればフランジ成形長さ方向
の熱処理範囲は特に問わない。
【0021】ここで、熱処理長さがフランジ成形長さの
フランジ端部を起点に10%未満では加工性回復効果が
小さく、安定したフランジ加工が期待できない。またフ
ランジ成形長さ全長を熱処理すれば、フランジ成形性は
より安定するが、缶内部に近い部分まで表面皮膜が消失
あるいは変質することとなり耐食性面での安定性がやや
損なわれるため、80%未満であることが望ましい。
【0022】熱処理の程度としては、鋼板の再結晶温度
以上への加熱ということであり、使用する鋼板成分系に
より多少ことなるが、600〜750℃に加熱すること
により達成される。加熱雰囲気としては、酸化による変
色等を防止するため、不活性雰囲気にて行うことが望ま
しい、但し、0.5秒以下の短時間加熱が可能な場合に
は、酸化膜の成長は少なく、必ずしも不活性雰囲気は必
要ではない。
【0023】加熱の熱源としては、短時間での急速加熱
を行うことが重要であり、レーザー加熱、誘導加熱等が
採用される。レーザー加熱は設備コストが高く、加熱部
位に対するレーザー照射の正確さが必要とされ、高速製
缶ラインへの導入にはかなり高度の技術が必要である。
従って、誘導加熱方式のほうがより実用に適している。
加熱後の冷却は、場合によっては水冷を行っても良い
が、焼き入れ組織による硬化を避けるため、ガス冷却が
適当である。
【0024】3ピース缶では、加熱を行う時期として溶
接前のブランク(1缶相当寸法に小切りされた長方形の
鋼板)段階で、フランジ相当部位にフランジ成形長さの
少なくとも10%以上の長さに熱処理を施すか、溶接に
より円筒形の缶胴を製造した後に熱処理を行っても良
い。
【0025】このような方法で熱処理が施されると、缶
胴の大半の部分は強度の冷間加工組織を有し、フランジ
成形部は10〜100%(フランジ端部からの長さ比
率)再結晶した延性の良い結晶組織を有する缶体にする
ことができる。フランジ部の再結晶組織の尺度として
は、結晶粒の長軸と短軸の平均比率が2.5以下の再結
晶組織であることを採用する。以下、本発明の実施例に
つき詳述する。
【0026】
【実施例】
(1)2ピース缶の実施例 [実施例1−1]C含有量0.043%、板厚2.5mm
の熱延鋼板を、酸洗により表面のスケールを除去後、
0.20mmの板厚にまで冷間圧延した。冷間圧延後、脱
脂・酸洗前処理を行い、付着量2.8g/m2 の錫めっ
きを鋼板両面に施した。Dl成形条件としては、ブラン
ク寸法142mmφの鋼板を86mmφのカップに絞り成形
し、2段目の絞りにて65mmφのカップに再絞りしたの
ちアイアニング加工により、側壁部の板厚0.065m
m、フランジ成形部の板厚0.120mmとなるような成
形を行った。
【0027】成形加工油を除去し、化成処理による塗装
下地処理を行った後、窒素雰囲気下に缶を導入し、レー
ザー照射によるフランジ部の熱処理を行った。レーザー
照射条件は事前検討により、板温が680℃に到達する
ような条件設定を行った。レーザー照射後のフランジ部
の結晶組織を観察したところ、フランジ部長さの約50
%が再結晶組織(長軸と短軸の軸比の平均値:1.5
0)を有していた。
【0028】レーザー照射によるフランジ部熱処理を終
了した缶は、通常の缶外面印刷・缶内面塗装を行い、4
段のネックドイン加工(缶蓋巻き締め部近傍のみの缶径
を縮める加工)とフランジ成形加工に供したが、全く問
題なく成形可能であった。
【0029】[実施例1−2」C含有量0.048%、
板厚3.0mmの熱延鋼板を、酸洗により表面のスケール
を除去後、0.18mmの板厚にまで冷間圧延した。冷間
圧延後、脱脂・酸洗前処理を行い、付着量2.8g/m
2 の錫めっきを鋼板両面に施した。DI成形条件として
は、ブランク寸法146mmφの鋼板を86mmφのカップ
に絞り成形し、2段目の絞りにて65mmφのカップに再
絞り成形したのちアイアニング加工により、側壁部の板
厚0.065mm、フランジ成形部の板厚0.120mmと
なるような成形を行った。
【0030】成形加工油を除去し、化成処理による塗装
下地処理を行った後、大気中にて、誘導加熱によりフラ
ンジ部の熱処理を行った。誘導加熱条件としては、周波
数80KHz 、出力4.0kWの円筒形コイルを用い、10
0msecの熱処理を行った。誘導加熱後のフランジ部の結
晶組織を観察したところ、フランジ部長さの約30%が
再結晶組織(長軸と短軸の軸比の平均値:1.30)を
有していた。
【0031】誘導加熱によるフランジ部熱処理を終了し
た缶は、通常の缶外面印刷・缶内面塗装を行い、4段の
ネックドイン加工(缶蓋巻き締め部近傍のみの缶径を縮
める加工)とフランジ成形加工に供したが、全く問題な
く成形可能であった。
【0032】[比較例1−1]実施例1−1と同様の方
法で鋼板の両面に付着量2.8g/m2 の錫めっきを有
し、板厚0.20mmの冷延組織を有する鋼板を準備し
た。製缶条件としても実施例1と同様の条件を採用し、
絞り加工およびアイアニング加工度を同一に設定して成
形した。レーザー照射による熱処理を行わず、通常の缶
外面印刷・缶内面塗装を行い、4段のネックドイン加工
(缶蓋巻き締め部近傍のみの缶径を縮める加工)とフラ
ンジ成形加工に供したが、ネックドイン加工は可能であ
ったが、フランジ成形性に劣り、缶円周にて3〜6個の
フランジ割れが発生した。
【0033】[比較例1−2」実施例1−2と同様の方
法で鋼板の両面に付着量2.8g/m2 の錫めっきを有
し、板厚0.18mmの冷延組織を有する鋼板を準備し
た。製缶条件としても実施例2と同様の条件を採用し、
絞り加工およびアイアニング加工度を同一に設定して成
形した。誘導加熱による熱処理を行わず、通常の缶外面
印刷・缶内面塗装を行い、4段のネックドイン加工(缶
蓋巻き締め部近傍のみの缶径を縮める加工)とフランジ
成形加工に供したが、ネックドイン加工は可能であった
が、フランジ成形性に劣り、缶円周にて3〜6個のフラ
ンジ割れが発生した。
【0034】(2)3ピース缶の実施例 [実施例2−1]板厚3.0mmの熱延板(C含有量0.
015%)を酸洗後、0.18mmの板厚にまで冷間圧延
を行った。この鋼板における結晶粒の長軸と短軸の軸比
は、顕微鏡での正確な測定は困難であるが、理論的には
約280程度になっていると推定される。硬度(HR3
0T)は79〜80程度のものであった。
【0035】脱脂・酸洗後、付着量1.5g/m2 の錫
めっきをこの鋼板の両面に施し、溶錫処理により光沢を
付与した後、金属クロムと水和酸化クロムよりなるクロ
メート皮膜(トータルクロム量として18mg/m2 )を
形成させた。この鋼板の両面に、コイル状にて乾燥膜厚
5μの有機塗装を施し、缶外面相当面には銘柄印刷(内
容物表示)を行い、艶ニスを塗布し塗装を完了した。そ
の際、缶胴部の溶接予定部分には塗装を行わないように
配慮した。
【0036】所定寸法に裁断後、ナゲットピッチ0.9
2mmになるような溶接速度と溶接電源周波数を選択し、
ワイヤーシーム溶接(抵抗溶接)を行った。缶胴の任意
の溶接部分を切断し、断面構造を調べてみたが、どの部
分も溶接入熱により冷間圧延組織は消滅し再結晶組織
(長軸と短軸の平均比率:1.80)が観察された。
【0037】溶接後の缶胴は、外径54mmの円筒形をな
しており、その両端部分を誘導加熱による熱処理を行な
った。誘導加熱条件としては、周波数80KHz 、出力
4.0kWの円筒形コイルを用い、100msecの熱処理を
行った。誘導加熱後のフランジ部の結晶組織を観察した
ところ、フランジ部長さの約30%(両端部約0.6m
m)が再結晶組織(長軸と短軸の平均比率:1.30)
を有していた。誘導加熱によるフランジ部熱処理を終了
した缶は、ネックドイン加工(缶蓋巻き締め部近傍のみ
の缶径を縮める加工)とフランジ成形加工に供したが、
全く問題なく成形可能であった。
【0038】[実施例2−2]板厚3.0mmの熱延板
(C含有量0.052%)を酸洗後、0.16mmの板厚
にまで冷間圧延を行った。この鋼板における結晶粒の長
軸と短軸の軸比は、顕微鏡での正確な測定は困難である
が、理論的には約350程度に成っていると推定され
る。硬度(HR30T)は80〜81程度のものであっ
た。
【0039】脱脂・酸洗後、付着量1.2g/m2 の錫
めっきをこの鋼板の両面に施し、溶錫処理により光沢を
付与した後、金属クロムと水和酸化クロムよりなるクロ
メート皮膜(トータルクロム量として18mg/m2 )を
形成させた。この鋼板の片面には、エポキシ樹脂を乾燥
膜厚で5μ塗布し、缶外面相当面にはチタン酸化物を含
む白色塗装を施した後銘柄印刷(内容物表示)を行い、
艶ニスを塗布し塗装を完了した。その際、缶胴部の溶接
予定部分には、内外面共、塗装を行わないように配慮し
た。
【0040】所定寸法に裁断後、ナゲットピッチ0.9
2mmになるような溶接速度と溶接電源周波数を選択し、
ワイヤーシーム溶接(抵抗溶接)を行った。缶胴の任意
の溶接部分を切断し、断面構造を調べてみたが、どの部
分も溶接入熱により冷間圧延組織は消滅し再結晶組織
(長軸と短軸の平均比率:1.35)が観察された。
【0041】溶接後の缶胴は、外径54mmの円筒形をな
しており、その両端部分を誘導加熱による熱処理を行な
った。誘導加熱条件としては、周波数40KHz 、出力
5.0kWの円筒形コイルを用い、80msecの熱処理を行
った。誘導加熱後のフランジ部の結晶組織を観察したと
ころ、フランジ部長さの約50%(両端部約1.0mm)
が再結晶組織(長軸と短軸の比率:1.55)を有して
いた。誘導加熱によるフランジ部熱処理を終了した缶
は、ネックドイン加工(缶蓋巻き締め部近傍のみの缶径
を縮める加工)とフランジ成形加工に供したが、全く問
題なく成形可能であった。
【0042】[比較例2]実施例2−1と同様に、板厚
3.0mmの熱延板(C含有量0.015%)を酸洗後、
0.18mmの板厚にまで冷間圧延し、脱脂・酸洗・付着
量1.5g/m2の錫めっき・溶錫処理・クロメート処
理及び有機塗装を行った。所定寸法に裁断後、ナゲット
ピッチ0.92mmになるような溶接速度と溶接電源周波
数を選択し、ワイヤーシーム溶接(抵抗溶接)を行っ
た。缶胴の任意の溶接部分を切断し、断面構造を調べて
みたが、どの部分も溶接入熱により冷間圧延組織は消滅
し再結晶組織が観察された。
【0043】溶接後の缶胴は、外径54mmの円筒形をな
しており、溶接部以外は当然のことながら強度の冷間圧
延組織を有していた。この缶は、ネックドイン加工(缶
蓋巻き締め部近傍のみの缶径を縮める加工)を行うと、
溶接部近傍の熱影響部が軟化しているため殆ど全量その
部分に”しわ”が発生した。次いでフランジ成形加工に
供したが、溶接部近傍の熱影響部のみならす、その他の
部分にもフランジ割れが発生し、満足な缶体を得ること
が出来なかった。
【0044】
【発明の効果】以上のように、本発明の構成を有する缶
体とすることにより、極めて経済性に優れた鋼板の製造
プロセスの採用が可能となるとと共に、高強度材の使用
による缶強度の向上、缶体のゲージダウンによる軽量化
等、数多くの効果が期待される。その結果として、省資
源・省エネルギー効果も発揮され、地球に優しいスチー
ル缶を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】缶胴端部の缶蓋2重巻締フランジ成形長さ。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 結晶粒の長軸と短軸の比率が3.0以上
    の冷間加工組織を有し、かつHR30T硬度が70以上
    の鋼板よりなる缶胴を有する缶において、該缶胴端部の
    缶蓋2重巻締フランジ成形長さLの該フランジ端部を起
    点として10%以上の部分が、結晶粒の長軸と短軸の平
    均比率で2.5以下の再結晶組織を有することを特徴と
    する、優れた成形性と強度を有する軽量スチール缶。
  2. 【請求項2】 結晶粒の長軸と短軸の比率が3.0以上
    の冷間加工組織を有し、かつHR30T硬度が70以上
    の缶底部と、加工により、該缶底部の板厚より薄く成形
    された缶胴を有する2ピース缶において、該缶胴端部の
    缶蓋2重巻締フランジ成形長さLの該フランジ端部を起
    点として10%以上の部分が、結晶粒の長軸と短軸の平
    均比率で2.5以下の再結晶組織を有することを特徴と
    する、優れた成形性と強度を有する軽量スチール缶。
  3. 【請求項3】 結晶粒の長軸と短軸の比率が3.0以上
    の冷間加工組織を有し、かつHR30T硬度が70以上
    の鋼板よりなる缶胴を有する3ピース溶接缶において、
    該缶胴端部の缶蓋2重巻締フランジ成形長さLの該フラ
    ンジ端部を起点として10%以上の部分および溶接部
    が、結晶粒の長軸と短軸の平均比率で2.5以下の再結
    晶組織を有することを特徴とする、優れた成形性と強度
    を有する軽量スチール缶。
JP22485594A 1994-09-20 1994-09-20 優れたフランジ成形性と強度を有する軽量スチール缶 Pending JPH0890119A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002284158A (ja) * 2001-03-27 2002-10-03 Showa Aluminum Kan Kk 滑り性に優れた金属容器およびその製造方法
WO2019103041A1 (ja) * 2017-11-27 2019-05-31 Jfeスチール株式会社 鋼板およびその製造方法、ならびに二次冷間圧延機

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CN111344075A (zh) * 2017-11-27 2020-06-26 杰富意钢铁株式会社 钢板及其制造方法以及二次冷轧机
CN111344075B (zh) * 2017-11-27 2022-07-08 杰富意钢铁株式会社 钢板及其制造方法以及二次冷轧机

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