JPH0870892A - 遺伝子分析用試料としてのパラフィン包埋組織標本の処理方法及び処理用キット - Google Patents

遺伝子分析用試料としてのパラフィン包埋組織標本の処理方法及び処理用キット

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JPH0870892A
JPH0870892A JP18823795A JP18823795A JPH0870892A JP H0870892 A JPH0870892 A JP H0870892A JP 18823795 A JP18823795 A JP 18823795A JP 18823795 A JP18823795 A JP 18823795A JP H0870892 A JPH0870892 A JP H0870892A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】例えばPCR法による遺伝子増幅反応に好適な
高純度の核酸鎖を短時間で容易に得ることが可能な、遺
伝子分析用試料としてのパラフィン包埋組織標本の処理
方法、並びに、それらに用いられるキットを提供。 【構成】パラフィンを除去したパラフィン包埋組織標本
とタンパク質変性作用を有する界面活性剤とを含有する
水性懸濁液を60℃以上で加熱処理すること、を特徴とす
る遺伝子分析用試料としてのパラフィン包埋組織標本の
処理方法、加熱処理後、更にこれにタンパク質分解酵素
を反応させる同処理方法、及び更に該反応液にタンパク
質変性作用を有する有機化合物含有溶液を加えて作用さ
せた後、得られた溶液にアルコール類を加えて核酸鎖を
沈殿させることを特徴とする同処理方法、並びに、それ
に用いるキット。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の利用分野】本発明は遺伝子分析用試料としての
パラフィン包埋組織標本の処理方法及びそれに用いられ
る処理用キットに関する。
【0002】
【発明の背景】近年、病理学の分野において、遺伝子疾
患、感染症、悪性腫瘍などの診断やこれらの遺伝子の異
常などの検索のために遺伝子の分析が行われている。特
に、1985年、Goelzらによって、ホルマリン固
定パラフィン包埋組織からの核酸鎖の抽出が初めて可能
になり(Goelz,S.E.et al.:Bioc
hem.Biophys.Res.Commun.,1
30:118〜126,1985)、それに基づいて種
々の分子生物学的検索ができることが報告されて以来、
主にヘマトキシリン−エオジン(H・E)重染色などで
形態観察をして組織病理学的な背景が明らかな検体に対
し、レトロスペクティブな検索として、ポリメラーゼ
チェイン リアクション法(PCR法)などによる遺伝
子分析が行われている。
【0003】従来の核酸鎖採取等の遺伝子分析用試料と
してのパラフィン包埋組織標本の処理方法としては、脱
パラフィンされた組織細胞を界面活性剤とタンパク質分
解酵素等とを含む溶液でおよそ室温〜50℃、4〜48時間
処理して破壊した後、フェノールやクロロホルム等の有
機溶媒を加えて、核酸鎖を含む水相と変性タンパク質等
を含む有機溶媒相とに分ける二相分離方式により核酸鎖
以外の不純物を除去し、次いでアルコールを加えて水相
中の核酸鎖を沈澱させる方法が一般的である(実験医
学,Vol.8,No.9,84〜88頁,1990
年,羊土社)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の如き遺
伝子分析用試料としてのパラフィン包埋組織標本の処理
方法は、界面活性剤とタンパク質分解酵素とを同時に用
いて比較的温和な条件下、より具体的にはおよそ室温〜
50℃で脱パラフィンされた組織細胞の破壊処理を行なう
為、核酸鎖の回収率を高めるには、該変性・分解反応を
長時間(通常、4〜48時間)行わなければならないとい
う問題を有している。また、脱パラフィンされた組織細
胞の破壊処理後に行われるフェノールやクロロホルム等
を使用しての二相分離方式での核酸鎖以外の不純物の除
去方法もまた、有機溶媒相と水相とを分離操作する手間
と時間を要し、且つその操作の煩雑さは外来核酸鎖の混
入の要因にもなるという問題を有している。更に、この
方法により得られる核酸鎖は、PCR法による遺伝子増
幅反応に対する阻害物質が充分に除去されていない為、
PCR法を利用した遺伝子分析の試料として使用するに
は問題が多い。
【0005】一方、脱パラフィンされた組織細胞を界面
活性剤(SDS)を含む溶液(タンパク質分解酵素等は
含まない)中、37℃、15分間処理し、次いで、この溶液
にタンパク質分解酵素(プロテイナーゼK)を加えて更
に37℃、12時間処理することにより組織細胞を破壊した
後、フェノール及びクロロホルムを加え、常法により以
後の操作を行っている例もある〔Laboratory
Medicine,vol.22,No.8,p54
3−546(1991)〕。この方法は、他の従来法と
比べると処理時間がかなり短くなってはいるが、それで
も未だ12時間以上を要し、また、細胞破壊処理後の不純
物の除去も、依然として二相分離方式で行われているの
で、操作が煩雑であり、且つその操作の煩雑さは外来核
酸鎖の混入の要因にもなるという問題を抱えている。更
に、この方法により得られる核酸鎖も、PCR法による
遺伝子増幅反応に対する阻害物質が充分には除去されて
いない為、PCR法を利用した遺伝子分析用の試料とし
て使用するには未だ問題が多い。
【0006】
【発明の目的】本発明は、上記した如き状況に鑑み成さ
れたものであり、短時間で容易に核酸鎖を得ることが可
能な、遺伝子分析用試料としてのパラフィン包埋組織標
本の処理方法、PCR法による遺伝子増幅反応に好適な
高純度の核酸鎖を短時間で容易に得ることが可能な、遺
伝子分析用試料としてのパラフィン包埋組織標本の処理
方法、並びに、それらに用いられるキットを提供するこ
とを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、パラフィンを
除去したパラフィン包埋組織標本とタンパク質変性作用
を有する界面活性剤とを含有する水性懸濁液を60℃以上
で加熱処理することを特徴とする、遺伝子分析用試料と
してのパラフィン包埋組織標本の処理方法の発明であ
る。
【0008】また、本発明は、パラフィンを除去したパ
ラフィン包埋組織標本とタンパク質変性作用を有する界
面活性剤とを含有する水性懸濁液を60℃以上で加熱処理
した後、更にこれにタンパク質分解酵素を作用させるこ
とを特徴とする、遺伝子分析用試料としてのパラフィン
包埋組織標本の処理方法の発明である。
【0009】更に、本発明は、パラフィンを除去したパ
ラフィン包埋組織標本とタンパク質変性作用を有する界
面活性剤とを含有する水性懸濁液を60℃以上で加熱処理
した後、更にこれにタンパク質分解酵素を作用させ、次
いで核酸鎖を沈殿させることを特徴とする、遺伝子分析
用試料としてのパラフィン包埋組織標本の処理方法の発
明である。
【0010】また、本発明は、パラフィンを除去したパ
ラフィン包埋組織標本とタンパク質変性作用を有する界
面活性剤とを含有する水性懸濁液を60℃以上で加熱処理
した後、更にこれにタンパク質分解酵素を作用させ、次
いで該反応液にタンパク質変性作用を有する有機化合物
含有溶液を作用させた後、核酸鎖を沈殿させることを特
徴とする、遺伝子分析用試料としてのパラフィン包埋組
織標本の処理方法の発明である。
【0011】更にまた、本発明は、(i)タンパク質変性
作用を有する界面活性剤、(ii)タンパク質分解酵素、及
び(iii)ヒドロキシ安息香酸を含有する溶液を組み合わ
せてなることを特徴とする、遺伝子分析用試料としての
パラフィン包埋組織標本の処理用キットの発明である。
【0012】また、本発明は、パラフィンを除去したパ
ラフィン包埋組織標本とタンパク質変性作用を有する界
面活性剤とを含有する水性懸濁液を加熱処理した後、こ
れにタンパク質分解酵素を作用させ、次いで該反応液に
ヒドロキシ安息香酸含有アルコール水溶液を作用させた
後、核酸鎖を沈殿させることを特徴とする、遺伝子分析
用試料としてのパラフィン包埋組織標本の処理方法の発
明である。
【0013】即ち、本発明者等は、上記目的を達成すべ
く鋭意研究を重ねた結果、遺伝子分析用試料としてのパ
ラフィン包埋組織標本を処理する方法に於いて、従来の
処理方法である界面活性剤とタンパク質分解酵素とを同
時に用いて比較的温和な条件下で行う、脱パラフィンさ
れた組織細胞の破壊処理の代わりに、パラフィンを除去
したパラフィン包埋組織標本とタンパク質変性作用を有
する界面活性剤とを含有する水性懸濁液を60℃以上で加
熱処理するか、或は該加熱処理後タンパク質分解酵素を
作用させれば、従来法に於ける問題点、即ち組織細胞の
破壊処理に長時間を要するという点が解消され、該処理
時間を大幅に短縮し得ることを見出した。更に、パラフ
ィンを除去したパラフィン包埋組織標本とタンパク質変
性作用を有する界面活性剤とを含有する水性懸濁液を加
熱処理した後、タンパク質分解酵素を作用させ、次いで
従来法で行われるフェノールやクロロホルム等を用いた
二相分離方式によるタンパク質変性・除去操作を行なう
代わりに、タンパク質変性作用を有する有機化合物含有
溶液(例えばフェノール性水酸基を有する有機化合物を
含むアルコール水溶液等)を用いて一相式のタンパク質
変性・除去操作を行えば、従来法に於ける問題点、即ち
分離操作が必要なため操作が煩雑となり且つ外来核酸鎖
が混入する可能性が高くなるという点や、PCR反応を
阻害する物質の除去が不十分であるという点等が解消さ
れ、操作手順を簡略化でき、操作時間を短縮し得るこ
と、更にはPCR法による遺伝子増幅反応に対する阻害
物質の混入が少なくPCR法に好適な核酸鎖を得ること
ができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】本発明に於いて用いられるパラフィン包埋
組織標本としては、採取した組織材料、例えば、膵臓、
大腸、大腸癌、筋肉、膀胱、腎臓、肺、脳、リンパ腫等
を組織・細胞の微細構造を保存すると共に標本作製の前
処置を施すために、タンパク質凝固作用を有するような
薬液、例えば、ホルマリン液、グルタール・アルデヒド
液、ホルマリン・アルコール混液、アルコール液、Bo
uin液、Zenker液、Hely液、オスミウム
液、カルノア液等で固定処理した後にパラフィンで包埋
した標本等、核酸鎖を含む標本であって通常この分野で
パラフィン包埋組織標本と呼ばれるものが全て挙げられ
る。
【0015】本発明に於いて用いられるパラフィン包埋
組織標本からパラフィンを除去する方法としては、通常
この分野でパラフィン包埋組織標本からパラフィンを除
去する方法であれば何れにても良く、例えば、パラフィ
ン包埋組織標本に非水溶性有機溶剤を加え攪拌振とう
し、遠心後上清を除きパラフィンを除去する方法等が挙
げられる。また、これらの方法で使用される、パラフィ
ンを溶解、除去する為の非水溶性有機溶剤としては、通
常この分野でパラフィンを溶解、除去する為に使用され
ているものであれば何れにても良く、特に限定されない
が、例えばキシレン、D−リモネン、オクタン等が好ま
しく挙げられる。なかでも、人体に対する毒性の点等を
考慮するとD−リモネン等が好ましく用いられる。ま
た、これらの使用量としては、試料である組織標本の厚
さ等によって異なる為一概には言えないが、該組織標本
を充分に浸漬し得る程度の量を用いれば足りる。
【0016】本発明に於いて用いられる界面活性剤とし
ては、タンパク質の変性作用を有するものとしてこの分
野で一般に用いられているものであれば陽イオン性界面
活性剤、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性
剤、両性界面活性剤の何れでも良く、特に限定されない
が、具体的には例えばドデシルトリメチルアンモニウム
ブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、
セチルトリメチルアンモニウムブロミド等の陽イオン性
界面活性剤、例えばドデシル硫酸ナトリウム(SD
S)、N−ラウロイルザルコシンナトリウム、コール酸
ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム等の陰イオン
性界面活性剤、例えばポリオキシエチレンオクチルフェ
ニルエーテル(例えばローム アンド ハース社商品
名:トリトンX−100等)、ポリオキシエチレンソル
ビタンモノラウレート(例えば花王(株)商品名:トゥ
イーン20等)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオ
レエート(例えば花王(株)商品名:トゥイーン80
等)、n−オクチル−β−D−グルコシド等の非イオン
性界面活性剤、例えば3−〔(3−コラミドプロピル)
ジメチルアンモニオ〕−1−プロパンスルホネート、ホ
スファチジルエタノールアミン等の両性界面活性剤等が
代表的なものとして挙げられる。これらの内、SDS等
の陰イオン性界面活性剤はタンパク質変性作用が強いの
で特に好ましく用いられる。また、これらの界面活性剤
は単独又は混合して使用することができることは言うま
でもない。
【0017】本発明の遺伝子分析用試料としてのパラフ
ィン包埋組織標本の処理方法の一つは、前述の如きパラ
フィンを除去したパラフィン包埋組織標本とタンパク質
変性作用を有する界面活性剤とを含有する水性懸濁液を
調製し、この水性懸濁液を60℃以上で加熱処理すること
により実施することができる。パラフィンを除去したパ
ラフィン包埋組織標本とタンパク質変性作用を有する界
面活性剤とを含有する水性懸濁液を調製する方法として
は、最終的にパラフィンを除去したパラフィン包埋組織
標本とタンパク質変性作用を有する界面活性剤とを含有
する水性懸濁液が得られる方法であれば良く、特に限定
されないが、最も一般的な方法としては、パラフィンを
除去したパラフィン包埋組織標本に、タンパク質変性作
用を有する界面活性剤を含有する水溶液を加え、該パラ
フィンを除去したパラフィン包埋組織標本を懸濁する方
法が好ましく挙げられる。
【0018】本発明に於いて用いられる界面活性剤の使
用濃度としては、使用する界面活性剤の種類により多少
異なるが、例えば、タンパク質変性作用を有する界面活
性剤を含有する水溶液中の濃度としては、通常0.01〜10
%(W/V)好ましくは0.1〜2%(W/V)の濃度範囲が挙
げられる
【0019】また、パラフィンを除去したパラフィン包
埋組織標本とタンパク質変性作用を有する界面活性剤と
を含有する水性懸濁液中には、例えばリン酸緩衝剤、ク
エン酸緩衝剤、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタ
ン(Tris)緩衝剤、グリシン緩衝剤、グット緩衝剤
等の緩衝剤、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩
化マグネシウム、塩化リチウム等の塩類等が含まれてい
ても良い。更に要すれば、例えばエチレンジアミン四酢
酸(EDTA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸
(EGTA)及びそれらの塩等のヌクレアーゼ阻害剤等
が適宜含まれていてもよい。尚、タンパク質変性作用を
有する界面活性剤がヌクレアーゼ活性抑制作用をも有す
る場合は、上記のようなヌクレアーゼ阻害剤等を使用す
る必要はないことは言うまでもない。これらの使用濃度
としては、核酸鎖の遊離を妨げない範囲であれば特に限
定されないが、例えば、タンパク質変性作用を有する界
面活性剤を含有する水溶液中の濃度としては、緩衝剤は
通常1〜500mM、好ましくは5〜200mMの範囲で用いら
れ、また、塩類は通常1〜500mMの範囲で必要に応じて
添加される。該水溶液のpHとしては、核酸鎖の遊離を妨
げない範囲であれば特に限定されないが、通常2〜12、
好ましくは5〜9の範囲から適宜選択される。また、ヌ
クレアーゼ阻害剤は、阻害剤の種類により異なるため一
概には規定できないが、例えばEDTAを用いる場合に
は該水溶液中の濃度として、通常0.1〜200mM、好ましく
は1〜10mMの範囲で用いられる。
【0020】本発明の処理方法に於ける加熱条件として
は、加熱温度は、通常60℃以上、好ましくは70℃乃至懸
濁液の沸点以下、より好ましくは80℃乃至懸濁液の沸点
以下の範囲から、また、加熱時間は、通常2分以上、好
ましくは5分以上の範囲から夫々適宜選択され、通常は
30分間も加熱すれば十分である。尚、懸濁液の沸点は、
外圧の変化、該懸濁液中の含有物質の組成及び濃度等の
変化に応じてある程度変動することは言うまでもない。
【0021】本発明の処理方法をより具体的に記載すれ
ば、例えば以下の如くである。
【0022】即ち、パラフィン包埋組織切片(通常厚さ
約10μm程度)をテストチューブに入れ、例えばキシレ
ン、リモネン等の非水溶性有機溶剤を適当量(組織切片
を浸漬し得る程度)加えよく攪拌振とうした後、常温に
て遠心後上清を除きパラフィンを除去する(2回)。次
に適当量の例えばエタノール等の揮発性の有機溶媒を加
え攪拌振とう後、常温にて遠心し、上清を除いて非水溶
性有機溶剤を除去(2回)した後、得られたペレットを
乾燥処理する。続いて該ペレットに0.01〜10%(W/V)
のタンパク質変性作用を有する界面活性剤を含んだ水溶
液を添加し、該ペレットを懸濁する。次いで、得られた
懸濁液を例えば70℃以上で2分以上加熱すればよい。
尚、上記の方法で処理された遺伝子分析用試料(以下、
遺伝子分析用試料Aと称す。)は、そのままPCR法に
よる遺伝子分析等の試料として使用することも可能であ
り、また、これを更に、この分野で通常使用されている
方法によって核酸鎖を採取・精製する際の試料とするこ
とも可能である。
【0023】上記の処理方法を実施した後、即ちパラフ
ィンを除去したパラフィン包埋組織標本とタンパク質変
性作用を有する界面活性剤とを含有する水性懸濁液を加
熱処理した後に、更にタンパク質分解酵素を作用させ
て、遺伝子分析用試料としてのパラフィン包埋組織標本
を処理することによっても、PCR法による遺伝子分析
等の試料を調製することも可能である。このようにする
ことによっても、従来法と比べて操作手順を簡略化でき
るので操作時間を大幅に短縮することが可能となる。ま
た、タンパク質分解酵素を用いて処理することによりパ
ラフィン包埋組織標本からの核酸鎖の採取効率がより高
くなるという効果等も生じる。
【0024】本発明に於いて用いられるタンパク質分解
酵素としては通常この分野でタンパク質を分解する目的
で使用されるものであれば特に限定されないが、例えば
パパイン、プロティナーゼK、プロナーゼ等が好ましく
挙げられる。これらタンパク質分解酵素の処理温度は、
通常37〜70℃、好ましくは40〜60℃であり、処理時間
は、処理温度やその他の要因によっても左右されるが、
通常5〜300分、好ましくは60〜120分程度である。ま
た、これらの使用時の濃度としては、通常タンパク質分
解工程に於ける反応溶液中の濃度として0.01〜10mg/ml
の範囲で用いられる。尚、タンパク質分解酵素として、
本発明の加熱条件下、例えば70℃以上の高温条件下でも
触媒活性を示す、熱安定(耐熱)性タンパク質分解酵素
を使用する場合には、本発明に於いてパラフィンを除去
したパラフィン包埋組織標本とタンパク質変性作用を有
する界面活性剤とを含有する水性懸濁液を加熱処理する
際に、同時にタンパク質分解酵素を作用させることがで
き、更に操作手順を簡略化できる。
【0025】上記の遺伝子分析用試料としてのパラフィ
ン包埋組織標本の処理方法を実施するためには、例えば
以下の如く行えば良い。
【0026】即ち、前述の処理方法で処理された遺伝子
分析用試料A(即ち、パラフィンを除去したパラフィン
包埋組織標本とタンパク質変性作用を有する界面活性剤
とを含有する水性懸濁液を加熱処理したもの)に、更
に、0.01〜10mg/mlのタンパク質分解酵素を添加し、例
えば40〜60℃で60〜120分間反応させることにより実施
することができる〔尚、ここでタンパク質分解酵素を添
加する際に、プロテアーゼの賦活剤であるジチオスレイ
トール(DTT)等のチオール化合物を加えることは任
意であるが、特にタンパク質分解酵素としてパパインを
使用した場合は、該チオール化合物を添加することが望
ましい。〕。尚、上記の方法で得られた遺伝子分析用試
料(以下、遺伝子分析用試料Bと称す。)は、そのまま
PCR法による遺伝子分析等の試料として使用すること
も可能であり、また、これを更に、この分野で通常使用
されている方法によって核酸鎖を採取・精製する際の試
料として使用することも可能である。
【0027】即ち、上記の如き遺伝子分析用試料として
のパラフィン包埋組織標本の処理方法を実施した後、即
ちパラフィンを除去したパラフィン包埋組織標本とタン
パク質変性作用を有する界面活性剤とを含有する水性懸
濁液を加熱処理し、得られた懸濁液にタンパク質分解酵
素を作用させた後に、更に核酸鎖を沈殿採取して、PC
R法による遺伝子分析等の試料を得ることも可能であ
る。このようにして、遺伝子分析用試料としてのパラフ
ィン包埋組織標本を処理しても、従来法と比べて操作手
順を簡略化できるので操作時間を大幅に短縮することが
できる。
【0028】本発明に於いて核酸鎖を沈殿させる為に
は、この分野で核酸鎖を沈殿させるために通常用いられ
るものであれば特に限定されないが、例えばアルコール
類等が用いられる。アルコール類としては、この分野で
核酸鎖を沈殿させるために通常用いられるものであれば
特に限定されないが、例えばエタノール、イソプロパノ
ール等が好ましく挙げられ、目的の核酸鎖を沈殿させる
際には、採取した核酸鎖を含む溶液に対して通常0.5〜
3倍量のアルコール類が用いられる。
【0029】上記の遺伝子分析用試料としてのパラフィ
ン包埋組織標本の処理方法を実施するためには、例えば
以下の如く行えば良い。
【0030】即ち、前述の処理方法で処理された遺伝子
分析用試料B(即ち、パラフィンを除去したパラフィン
包埋組織標本とタンパク質変性作用を有する界面活性剤
とを含有する水性懸濁液を加熱処理し、得られた懸濁液
にタンパク質分解酵素を作用させて得られたもの)に、
0.5〜3倍量のアルコール類を添加し、混合した後、室
温にて10分間静置する。尚、ここで核酸鎖を沈殿させ易
くするために、例えばNaCl、酢酸ナトリウム等の塩
類をアルコール類と共に適宜加えることは任意である。
静置後遠心し、核酸鎖を沈殿させた後、上清を除き、沈
殿に例えば70%エタノール等を適当量添加して洗浄、遠
心し、上清を除いた後乾燥処理すれば目的とする遺伝子
分析用試料(以下、遺伝子分析用試料Cと称す。)を得
ることができる。尚、上記の方法で得られた遺伝子分析
用試料Cを、PCR法による遺伝子分析等の試料として
使用する場合には、これを更にこの分野で通常使用され
ている方法、例えば、TE緩衝液(10mMトリス−塩酸緩
衝液、1mM EDTA含有、pH8.0)等に再溶解し、適当
量のRNaseを添加後、37〜55℃で1〜90分間処理
し、RNAを消化する方法等で処理し得られた精製DN
Aを使用するのが望ましい。
【0031】また、前述の遺伝子分析用試料としてのパ
ラフィン包埋組織標本の処理方法を実施した後、即ちパ
ラフィンを除去したパラフィン包埋組織標本とタンパク
質変性作用を有する界面活性剤とを含有する水性懸濁液
を加熱処理し、得られた懸濁液にタンパク質分解酵素を
作用させた後に、タンパク質変性作用を有する有機化合
物含有溶液を作用させ、更に、核酸鎖を沈殿採取する方
法により遺伝子分析用試料としてのパラフィン包埋組織
標本を処理しても、従来法と比べて操作手順を簡略化で
きるので操作時間を短縮することができ、且つPCR法
による遺伝子増幅反応に対する阻害物質の混入が少なく
PCR法に好適な核酸鎖を採取することができる。
【0032】本発明に於いて用いられるタンパク質変性
作用を有する有機化合物としては、そのような性質を有
するものであって水にある程度溶解する性質を有するも
のであれば特に限定されないが、例えばフェノール性水
酸基を有する有機化合物が好ましく挙げられる。フェノ
ール性水酸基を有する化合物の具体例としては、例えば
フェノール、o−,m−,p−ヒドロキシ安息香酸、2
−アミノ−4−クロロフェノール、m−アミノフェノー
ル、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、カテコール、グア
ヤコール、ハイドロキノン、p−ヒドロキシフェネチル
アルコール、プロトカテキュ酸、p−(メトキシエチ
ル)フェノール等が挙げられる。なかでも、ヒト皮膚に
対して非腐食性のもの、例えばヒドロキシ安息香酸等が
好ましく、特にm−ヒドロキシ安息香酸が好ましく用い
られる。これらフェノール性水酸基を有する有機化合物
の使用濃度は、化合物の種類によって異なるが、一般に
タンパク質を変性させる工程に於ける反応溶液中の濃度
として0.01%(W/V)以上20%(W/V)未満の範囲で用い
られる。尚、m−ヒドロキシ安息香酸を使用する場合に
は、該反応溶液中の濃度として1〜10%(W/V)の範囲
が好ましく用いられる。
【0033】本発明に於いてタンパク質を変性させるた
めに使用する有機化合物含有溶液としては、タンパク質
を変性させる作用を有している上記した如き有機化合物
を含む溶液であれば特に限定されない。尚、該溶液中に
は該有機化合物を溶解させるために、例えばエタノー
ル、イソプロパノール等のアルコール類やアセトン等の
水溶性有機溶媒を含んでいてもよく、なかでもエタノー
ル、イソプロパノール等のアルコール類は、核酸鎖を沈
殿させる際に悪影響を与えないので好ましく用いられ
る。これら水溶性有機溶媒は該溶液中の濃度として通常
10〜90%(W/V)の範囲で適宜用いられる。また、該有
機化合物を含む溶液のpHとしては、用いる有機化合物
によって異なる為一概にはいえないが、何れにしてもタ
ンパク質変性作用に支障のない範囲であればよく、一般
に4〜10の範囲から適宜選択される。尚、有機化合物と
してm−ヒドロキシ安息香酸を使用する場合には、該溶
液のpHは5〜8の範囲から適宜選択される。尚、何れ
の場合であっても有機化合物は該溶液中に均一に溶解し
ていなければならないことはいうまでもない。該方法、
即ち、m−ヒドロキシ安息香酸等の有機化合物を含有す
る溶液を作用させる方法により処理した場合には、細胞
破壊処理後の不純物除去を一相式で行うことができるの
で、操作が容易であり、且つ外来核酸鎖の混入も防げる
ので、特に好ましい方法と言うことができる。
【0034】上記の遺伝子分析用試料としてのパラフィ
ン包埋組織標本の処理方法を実施するためには、例えば
以下の如く行えば良い。
【0035】即ち、前述の処理方法で処理された遺伝子
分析用試料B(即ち、パラフィンを除去したパラフィン
包埋組織標本とタンパク質変性作用を有する界面活性剤
とを含有する水性懸濁液を加熱処理し、得られた懸濁液
にタンパク質分解酵素を作用させて得られたもの)に、
更に、タンパク質変性作用を有する有機化合物を含有す
る溶液を添加し、室温にて数秒乃至数時間反応させタン
パク質を変性させた後、遠心して上清を別のチューブに
移す。次に、その上清に0.5〜3倍量のアルコール類を
添加し、混合した後室温にて10分間静置する。尚、ここ
で核酸鎖を沈殿させ易くするために、例えばNaCl、
酢酸ナトリウム等の塩類をアルコール類と共に適宜加え
ることは任意である。静置後遠心し核酸鎖を沈殿させた
後、上清を除き、沈殿に例えば70%エタノール等を適当
量添加して洗浄、遠心し、上清を除いた後乾燥処理すれ
ば目的とする遺伝子分析用試料(以下、遺伝子分析用試
料Dと称す。)を得ることができる。尚、上記の方法で
得られた遺伝子分析用試料Dを、PCR法による遺伝子
分析等の試料として使用する場合には、これを更にこの
分野で通常使用されている方法、例えば、TE緩衝液
(10mMトリス−塩酸緩衝液、1mM EDTA含有、pH8.
0)等に再溶解し、適当量のRNaseを添加後、37〜5
5℃で1〜90分間処理し、RNAを消化する方法等で処
理し得られた精製DNAを使用するのが望ましい。
【0036】本発明の遺伝子分析用試料としてのパラフ
ィン包埋組織標本の処理用キットは、前述の遺伝子分析
用試料としてのパラフィン包埋組織標本の処理方法をよ
り効果的に実施するために使用されるもので、(i)タン
パク質変性作用を有する界面活性剤、(ii)タンパク質分
解酵素、及び(iii)ヒドロキシ安息香酸を含有する溶液
を組み合わせてなるものであり、夫々の構成要素の好ま
しい態様、具体例等については先に述べた通りである。
【0037】以下に実施例、比較例、参考例により本発
明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって何
ら限定されるものではない。
【0038】
【実施例】
実施例1.m−ヒドロキシ安息香酸を用いたDNA採取
法 ヒトのホルマリン固定パラフィン包埋組織切片(肝臓:
厚さ10μm,約15mm×25mm)1枚を1.5mlテストチューブ
に入れ、D−リモネン(商品名:レモゾール,和光純薬
工業(株)製)を1ml加えて、マイクロチューブミキサ
ー(MTー360,トミー精工製)にて3分間攪拌し
た。常温にて3分間,12,000rpmで遠心後上清を除きパ
ラフィンを除去した(2回)。次に1mlのエタノールを
加え上記ミキサーにて攪拌した後、常温にて3分間12,0
00rpmで遠心し、上清を除くことにより僅かに残ってい
るD−リモネンを除去し(2回)、乾燥処理した。続い
て得られたペレットに11mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.
0、1.11%SDS、5.6mM EDTAを含有。)180μlを
添加した後、90℃で10分間加熱した。その後、1M DT
T20μlと20mg/mlのパパイン溶液10μlを添加した後、
50℃で90分間反応させた。更に、10%(W/V)mーヒド
ロキシ安息香酸を含む40%(V/V)イソプロパノール水
溶液(pH6.0)を200μl加え室温にて30分間反応させ
た。12,000rpmにて、5分間遠心分離し、デカンテーシ
ョンにより上清を別のチューブに移し換えた。その上清
に3M NaCl水溶液40μlとイソプロパノール900μl
を添加し混合した後、室温にて10分間静置させ、12,000
rpmで15分間遠心して核酸鎖を沈澱させた。上清を除
き、沈澱に70%エタノール1mlを添加攪拌し、4℃にて
5分間15,000rpmで遠心した後、上清を除き、乾燥処理
して目的の核酸鎖を得た。最後に、得られた核酸鎖をT
E緩衝液(10mMトリス−塩酸緩衝液、1mM EDTA含
有、pH8.0)20μlに再度溶解して、10mg/ml RNas
eを1μl添加し、50℃で1時間処理しDNAサンプル
とした。このDNAサンプルは、螢光法によりその収量
を確認し、更にPCR法によりβ−グロビン遺伝子の増
幅を試みた(PCR法条件:94℃、1分間;55℃、2分
間;72℃、3分間。35回)。尚、蛍光法によるDNAの
定量は、以下の方法で行った。得られたDNAサンプル
1μlに2M 3,5−ジアミノ安息香酸・2HClを10
μl加えて攪拌した後、60℃で30分間反応させて、更に
0.6N 過塩素酸溶液1mlを加え、蛍光検出器にて蛍光強
度(Ex=415nm、Em=515nm)を測定した。また、こ
れと同時に既知濃度のDNAを使用して、DNA標準品
を作製し、その測定結果により得られた標準曲線により
各DNAサンプル中のDNA量を算出した。DNAサン
プル中のDNA収量等を表1に、また、PCR法により
増幅したDNAを、エチジウムブロミド0.5μg/mlを含
む、1×TAE緩衝液(0.04M Tris−酢酸、1mM
EDTA pH7.8)を用いて作製した3%アガロースゲ
ルを使用して100V定電圧で20〜30分電気泳動した後、U
Vイルミネーターを使用してDNAを蛍光検出した結果
を図1(レーン2)にそれぞれ示す。尚、図1中レーン
1は分子量マーカー〔φx174 phage DNA/
HaeIII、(株)ニッポンジーン製〕の結果を示す。
また「←」印はヒトβ−グロビン遺伝子の増幅領域(11
0bp)を示す。
【0039】比較例1.従来法(フェノールを用いた方
法)によるDNA採取 ヒトのホルマリン固定パラフィン包埋組織切片(肝臓:
厚さ10μm,約15mm×25mm)1枚を1.5mlテストチューブ
に入れ、D−リモネンを1ml加えて、マイクロチューブ
ミキサー(MT−360,トミー精工製)にて3分間攪
拌した。常温にて3分間,12,000rpmで遠心後上清を除
きパラフィンを除去した(2回)。次に1mlのエタノー
ルを加え上記ミキサーにて攪拌した後、常温にて3分間
12,000rpmで遠心し、上清を除くことにより僅かに残っ
ているD−リモネンを除去し(2回)、乾燥処理した。
次いで、得られたペレットに、1%SDS、0.1mg/ml
プロティナーゼK(或いはパパイン)を含むSSC緩衝
液(0.15M塩化ナトリウム及び0.015M酢酸ナトリウム含
有。pH7.0)300μlを添加した後、48℃で48時間反応さ
せた。途中、1mg/mlプロティナーゼK溶液(または1
mg/mlパパイン溶液)50μlを3回加えた。その後、等
量のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール
混液(25:24:1)を加えて混合後、5分間6,000rpmで
遠心し、上層の水相をピペッティングにより別のチュー
ブに移した(2回)。得られた水相に等量のクロロホル
ム/イソアミルアルコール混液(24:1)を加えて混合
後、5分間6,000rpmで遠心し上層を新しいチューブに移
した(2回)。得られた上層溶液にこれに対し3/50容
量の5M塩化ナトリウム溶液と2.5倍量のエタノールを加
えて攪拌後、−80℃にて15分間放置した。次いで4℃に
て20分間15,000rpmで遠心し上清を除き、ペレットに70
%エタノールを加え混合後、4℃にて5分間15,000rpm
で遠心し上清を除き乾燥処理し、目的の核酸鎖を得た。
最後に、得られた核酸鎖をTE緩衝液20μlに再度溶解
して、10mg/ml RNaseを1μl添加し、50℃で1時
間処理しDNAサンプルとした。このDNAサンプル
は、螢光法によりその収量を確認し、更に実施例1と同
じ条件でPCR法によりβ−グロビン遺伝子の増幅を試
みた。尚、蛍光法によるDNAの定量は、以下の方法で
行った。得られたDNAサンプル1μlに2M 3,5−
ジアミノ安息香酸・2HClを10μl加えて攪拌した
後、60℃で30分間反応させて、更に0.6N 過塩素酸溶液
1mlを加え、蛍光検出器にて蛍光強度(Ex=415nm、
Em=515nm)を測定した。また、これと同時に既知濃
度のDNAを使用して、DNA標準品を作製し、その測
定結果により得られた標準曲線により各DNAサンプル
中のDNA量を算出した。DNAサンプル中のDNA収
量等を表1に、また、PCR法により増幅したDNA
を、エチジウムブロミド0.5μg/mlを含む、1×TAE
緩衝液(0.04M Tris−酢酸、1mM EDTA pH7.
8)を用いて作製した3%アガロースゲルを使用して100
V定電圧で20〜30分電気泳動した後、UVイルミネータ
ーを使用してDNAを蛍光検出した結果を図1(レーン
3)にそれぞれ実施例1の結果と併せて示す。
【0040】
【表1】
【0041】表1の結果から明らかな如く、本発明の方
法(実施例1)と従来法(比較例1)に於いて、同等の
DNA収量を得るための総操作時間を比較すると、本発
明の方法は従来法に比べその総操作時間が著しく短縮さ
れていることが判る。これは、種々の要因が重なった為
の結果ではあるが、主な要因としては以下のような点が
挙げられる。即ち、従来法では界面活性剤とタンパク質
分解酵素とを同時に用いてタンパク質変性分解を行うた
め、核酸鎖の回収率を高めるために該反応を長時間(48
時間)行った後にフェノール、クロロホルム等を用いた
二相分離方式でタンパク質の変性・除去操作を行う必要
がある。これに対して本発明方法においては、同様な工
程を、界面活性剤によるタンパク質を変性する為の加熱
処理、次にタンパク質分解酵素を用いたタンパク質の分
解、その後にタンパク質変性作用を有する有機化合物を
含む溶液を用いて一相式でタンパク質を変性・除去する
という工程によって行うため、短時間に従来法と同程度
の収率で核酸鎖を抽出することが可能になったのであ
る。更に、表1及び図1の結果から明らかな如く、本発
明の方法と従来法の結果を比較するとDNA収量に差は
認められなかったが、得られたDNAをPCR法により
増幅させたところ、本発明の方法で抽出したDNAにつ
いてはβ−グロビン遺伝子の増幅断片が認められたのに
対し、従来法で抽出したDNAについてはそれが認めら
れなかった。このことから本発明の方法で抽出したDN
Aは、従来法により得られたそれに比べてPCR法によ
る遺伝子分析に適していることが判る。
【0042】参考例1.実施例1及び比較例1で得られ
たDNAサンプル中のPCR阻害物の検出 実施例1及び比較例1で得られたDNAサンプル13μl
にそれぞれDNase70Uを添加し、37℃、1時間反応
させてヒト由来のDNAを消化した後、等量のフェノー
ル/クロロホルム/イソアミルアルコール混液(25:2
4:1)を加えて混合後、5分間6,000rpmで遠心し、上
層の水相を別のチューブに移し、DNaseを除去し
た。得られた水相に、これに対し3/50容量の5M塩化
ナトリウム溶液と2.5倍量のエタノールを加えて攪拌
後、−80℃にて15分間放置し、次いで4℃にて20分間1
5,000rpmで遠心し上清を除き、ペレットに70%エタノー
ルを1ml添加して洗浄した後乾燥処理した。得られたペ
レットにTE緩衝液13μlを添加、溶解したものを、下
記の試験用のサンプル液とした。サンプル液の2、4又
は7μlをそれぞれ100attomoleのラットcDNAと混合
し、PCR法(条件:94℃、45秒;60℃、45秒;72℃、
2分間。30回)によりラット グルコース3リン酸脱水
素酵素(G3PDH)遺伝子(983bp領域)の増幅を行
った後、エチジウムブロミド0.5μg/mlを含む、1×T
AE緩衝液(0.04MTris−酢酸、1mM EDTA pH
7.8)を用いて作製した3%アガロースゲルを使用して1
00V定電圧で20〜30分電気泳動した後、UVイルミネー
ターを使用して目的のバンドを蛍光検出した。結果を図
2に示す。尚、図2中の各レーン番号は以下の試料を使
用した結果を夫々示す。 Lane 1及び6: 分子量マーカー(φx174
phage DNA/HaeIII) 2: 比較例1由来のサンプル液無添加 3: 比較例1由来のサンプル液2μl添加 4: 比較例1由来のサンプル液4μl添加 5: 比較例1由来のサンプル液7μl添加 7: 実施例1由来のサンプル液無添加 8: 実施例1由来のサンプル液2μl添加 9: 実施例1由来のサンプル液4μl添加 10: 実施例1由来のサンプル液7μl添加 また、図2中「←」印はラットG3PDH遺伝子の増幅
領域(983bp)を示す。
【0043】図2の結果から、実施例1由来のサンプル
液を添加した試料では各ラット遺伝子の増幅バンドの量
的変化は見られないが、比較例1由来のサンプル液を添
加した試料ではその添加量の増加に応じてラット遺伝子
の増幅率が低下する(増幅バンドの幅が小さくなる)傾
向が見られることが判る。このことは、比較例1で得ら
れたDNAをPCR法により増幅させても目的の遺伝子
を検出し得なかった原因が、該DNA中に混入したPC
R法に対する反応阻害物によるものであることを示唆し
ており、従来の処理方法(比較例1)ではPCR法に対
する反応阻害物を充分に除去できないと判断される。こ
れに対し、本発明の処理方法によれば、PCR法の反応
を阻害する物質の混入がほとんどなく、PCR法の試料
として好適な核酸鎖が得られることが判る。
【0044】実施例2.加熱処理によるパラフィン包埋
組織標本からのDNA採取 ホルマリン固定パラフィン包埋組織標本(ラット肝臓)
から4枚の組織切片(厚さ10μm,約10mm×20mm)を切り
出す。組織切片を1枚づつ1.5mlテストチューブに入
れ、夫々にD−リモネン1ml加えて、マイクロチューブ
ミキサー(MTー360,トミー精工製)にて3分間攪
拌した後、常温にて3分間,12,000rpmで遠心処理して
上清を除きパラフィンを除去した(2回)。次に各テス
トチューブに1mlのエタノールを加え上記ミキサーにて
攪拌した後、常温にて3分間12,000rpmで遠心処理して
上清を除くことにより僅かに残っているD−リモネンを
除去し(2回)、乾燥処理した。次いで、夫々のテスト
チューブに11mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.0、1.11%S
DS、5.6mM EDTAを含有。)180μlを添加した後、
これら4つのテストチューブのうち3つについては、10
0℃で夫々3分、5分、10分間加熱した。その後、1M
DTT20μlと20mg/mlのパパイン溶液10μlを添加した
後、50℃で90分間反応させた。残りの1のテストチュー
ブについては、加熱処理せずに、1M DTT20μlと20m
g/mlのパパイン溶液10μlを更に添加した後、50℃で90
分間反応させた。反応終了後、得られた各サンプル溶液
の10μlを、エチジウムブロミド0.5μg/mlを含む、1
×TAE緩衝液(0.04M Tris−酢酸、1mM EDT
A pH7.8)を用いて作製した1%アガロースゲルを使
用して100V定電圧で20〜30分電気泳動した後、UVイル
ミネーターを使用して目的のバンドを蛍光検出してDN
Aの遊離状態を確認した。尚、図3中の各レーン番号は
以下の試料を使用した結果を夫々示す。 Lane 1:分子量マーカー〔λ phage DNA
/HindIII、(株)ニッポンジーン製〕 2:加熱処理なし 3:100℃、3分間加熱 4:100℃、5分間加熱 5:100℃、10分間加熱
【0045】図3の結果から明らかな如く、加熱処理を
施さなかった場合(レーン2)では、DNA領域で蛍光
が殆ど観察されないこと、即ち、組織からのDNAの遊
離量が非常に少ないことが判る。また、レーン3〜5の
結果から、加熱処理を行うことによって組織からのDN
Aの遊離量が著しく増加することや、加熱時間に相関し
て遊離したDNA量が増加することも判る。
【0046】実施例3.加熱処理によるパラフィン包埋
組織標本からのDNA採取 ヒトのカルノア固定パラフィン包埋組織標本(肝臓)か
ら11枚の組織切片(厚さ10μm,約10mm×20mm)を切り出
す。組織切片を1枚づつ1.5mlテストチューブに入れ、
夫々にD−リモネン1ml加えて、マイクロチューブミキ
サー(MTー360,トミー精工製)にて3分間攪拌し
た後、常温にて3分間,12,000rpmで遠心処理して上清
を除きパラフィンを除去した(2回)。次に各テストチ
ューブに1mlのエタノールを加え上記ミキサーにて攪拌
した後、常温にて3分間12,000rpmで遠心処理して上清
を除くことにより僅かに残っているD−リモネンを除去
し(2回)、乾燥処理した。次いで夫々のテストチュー
ブに11mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.0、1.11%SDS、
5.6mM EDTAを含有。)180μlを添加した後、所定の
温度及び時間で加熱処理したものに、夫々1M DTT20
μlと20mg/mlのパパイン溶液10μlを添加した後、50℃
で90分間反応させた。更に、10%(W/V)mーヒドロキ
シ安息香酸を含む40%(V/V)イソプロパノール水溶液
(pH6.0)を200μl加え室温にて30分間反応させた。12,
000rpmにて、5分間遠心分離し、デカンテーションによ
り上清を別のチューブに移し換えた。その上清に3M N
aCl水溶液40μlとイソプロパノール900μlを添加し
混合した後、室温にて10分間静置させ、12,000rpmで15
分間遠心して核酸鎖を沈澱させた。上清を除き、沈澱に
70%エタノール1mlを添加攪拌し、4℃にて5分間15,0
00rpmで遠心した後、上清を除き、乾燥処理して目的の
核酸鎖を得た。最後に、得られた核酸鎖をTE緩衝液
(10mMトリス−塩酸緩衝液、1mM EDTA含有、pH8.
0)20μlに再度溶解して、10mg/ml RNaseを1μl
添加し、50℃で1時間処理しDNAサンプルとした。得
られた各DNAサンプル中のDNA収量を、蛍光法によ
り確認した。尚、蛍光法によるDNAの定量は、以下の
方法で行った。得られたDNAサンプル1μlに2M
3,5−ジアミノ安息香酸・2HClを10μl加えて攪
拌した後、60℃で30分間反応させて、更に0.6N 過塩素
酸溶液1mlを加え、蛍光検出器にて蛍光強度(Ex=41
5nm、Em=515nm)を測定した。また、これと同時に既
知濃度のDNAを使用して、DNA標準品を作製し、そ
の測定結果により得られた標準曲線により各DNAサン
プル中のDNA量を算出した。各DNAサンプル中のD
NA収量を表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】表2の結果から明らかな如く、室温で放置
した場合(加熱処理を施さなかった場合)のDNA収量
に比べて、70℃で2分及び10分間加熱処理を行った場合
のDNA収量は2倍以上、80℃、90℃及び100℃で加熱
処理を行った場合は、約3倍以上となり、加熱処理を行
うことによりDNA収量が著しく増加することが判る。
【0049】実施例4.加熱処理の有無によるパラフィ
ン包埋組織標本からのDNA採取量の変化 ヒトのホルマリン固定パラフィン包埋組織標本(肝臓)
から2枚の組織切片(厚さ10μm,約10mm×20mm)を切り
出した。該組織切片を1枚づつ1.5mlテストチューブに
入れ、夫々にD−リモネンを1ml加えて、マイクロチュ
ーブミキサー(MTー360,トミー精工製)にて3分
間攪拌した後、常温にて3分間,12,000rpmで遠心処理
して上清を除きパラフィンを除去した(2回)。次に各
テストチューブに1mlのエタノールを加え上記ミキサー
にて攪拌した後、常温にて3分間12,000rpmで遠心処理
して上清を除くことにより僅かに残っているD−リモネ
ンを除去し(2回)、乾燥処理した。次いで、夫々のテ
ストチューブに11mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.0、0.55
%SDS、5.6mM EDTAを含有。)20μlを添加した
後、一方のテストチューブについてのみ90℃で10分間加
熱処理した。他方のテストチューブについては加熱処理
を行わなかった。次いで、各テストチューブを常温にて
5分間、10,000rpmで遠心処理して得られた上清をDN
Aサンプルとした。最後に、得られたDNAサンプルの
うち0.5μlについて、PCR法によりk−ras遺伝子
の増幅反応を行った(PCR法条件:94℃、1分間;55
℃、2分間;72℃、3分間。45回)。PCR法により増
幅したDNAを、エチジウムブロミド0.5μg/mlを含
む、1×TAE緩衝液(0.04M Tris−酢酸、1mM
EDTA pH7.8)を用いて作製した2.5%アガロースゲ
ルを使用して100V定電圧で20〜30分電気泳動した後、U
Vイルミネーターを使用してDNAを蛍光検出した結果
を図4に示す。尚、図4中、レーン1は分子量マーカー
〔φx174 phage DNA/HaeIII、(株)
ニッポンジーン製〕の結果を、レーン2は加熱処理を行
わずに得られたDNAサンプルについての結果を、レー
ン3は加熱処理を行って得られたDNAサンプルについ
ての結果を夫々示す。また図4中、「←」印はk−ra
s遺伝子の増幅領域(108bp)を示す。図4の結果から
明らかな如く、加熱処理を行ったもの(レーン3)と加
熱処理を行わないもの(レーン2)とを比較すると、明
らかに加熱処理したものの方がk−ras遺伝子の増幅
量が多く、PCR分析の感度が増加していること、即
ち、加熱処理を行ったものの方がDNAの収量が大幅に
増加していることが判る。
【0050】実施例5.加熱処理の有無並びにタンパク
質分解酵素処理時間とDNA収量の関係 ヒトのホルマリン固定パラフィン包埋組織標本(肝臓)
から10枚の組織切片(厚さ10μm,約10mm×20mm)を切り
出した。組織切片を1枚づつ1.5mlテストチューブに入
れ、夫々にD−リモネンを1ml加えて、マイクロチュー
ブミキサー(MTー360,トミー精工製)にて3分間
攪拌した後、常温にて3分間,12,000rpmで遠心処理し
て上清を除きパラフィンを除去した(2回)。次に各テ
ストチューブに1mlのエタノールを加え上記ミキサーに
て攪拌した後、常温にて3分間12,000rpmで遠心処理し
て上清を除くことにより僅かに残っているD−リモネン
を除去し(2回)、乾燥処理した。次いで、夫々のテス
トチューブに11mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.0、0.55%
SDS、5.6mM EDTAを含有。)180μlを添加した
後、これら10個のテストチューブのうち5つについて
は、90℃で10分間加熱処理した。その後、各テストチュ
ーブに1M DTT20μlと20mg/mlのパパイン溶液10μl
を添加した後、50℃で夫々0.5、1.5、5、23、31時間反
応させた。残りの5つのテストチューブについては加熱
処理行わずに、1M DTT20μlと20mg/mlのパパイン
溶液10μlを添加した後、同様に50℃で夫々0.5、1.5、
5、23、31時間反応させた。反応終了後、更に、各テス
トチューブに10%(W/V)mーヒドロキシ安息香酸を含
む40%(V/V)イソプロパノール水溶液(pH6.0)を200
μl加え室温にて30分間反応させた。12,000rpmにて、5
分間遠心分離し、デカンテーションにより上清を別のチ
ューブに移し換えた。その上清に3M NaCl水溶液40
μlとイソプロパノール900μlを添加し混合した後、室
温にて10分間静置させ、各テストチューブを12,000rpm
で15分間遠心して核酸鎖を沈澱させた。上清を除き、沈
澱に70%エタノール1mlを添加攪拌し、4℃にて5分間
15,000rpmで遠心した後、上清を除き、乾燥処理して目
的の核酸鎖を得た。最後に、得られた核酸鎖をTE緩衝
液(10mMトリス−塩酸緩衝液、1mM EDTA含有、pH8.
0)20μlに再度溶解して、10mg/ml RNaseを1μl
添加し、50℃で1時間処理したものをDNAサンプルと
した。得られた各DNAサンプル中のDNA収量を、蛍
光法により確認した。尚、蛍光法によるDNAの定量
は、以下の方法で行った。得られたDNAサンプル1μ
lに2M 3,5−ジアミノ安息香酸・2HClを10μl加
えて攪拌した後、60℃で30分間反応させて、更に0.6N
過塩素酸溶液1mlを加え、蛍光検出器にて蛍光強度(E
x=415nm、Em=515nm)を測定した。また、これと同
時に既知濃度のDNAを使用して、DNA標準品を作製
し、その測定結果により得られた標準曲線により各DN
Aサンプル中のDNA量を算出した。各DNAサンプル
中のDNA収量を表3に、またタンパク質分解酵素の反
応時間とDNA収量の関係を図5に夫々示す。尚、図5
中の−□−は、加熱処理を行った後にタンパク質分解酵
素を反応させた場合を、また−+−は、加熱処理を行わ
ずにタンパク質分解酵素を反応させた場合を夫々示す。
【0051】
【表3】
【0052】表3及び図5の結果から明らかな如く、90
℃10分間加熱処理を行った後にタンパク質分解酵素を反
応させた場合は、タンパク質分解酵素を1.5時間反応さ
せた時点で既にDNA収量が2.06μg/切片に達してい
るが、これに対して加熱処理を行わずにタンパク質分解
酵素を反応させた場合は、タンパク質分解酵素を31時間
反応させても1.30μg/切片しかDNAが得られないこ
とが判る。また、90℃10分間加熱処理を行った後にタン
パク質分解酵素を反応させた場合は、タンパク質分解酵
素を0.5時間反応させただけで、加熱処理を行わずにタ
ンパク質分解酵素を31時間反応させた場合と同等量以上
のDNAを得ることができることも判る。以上のことか
ら、タンパク質変性作用を有する界面活性剤を用いて加
熱処理を行った後にタンパク質分解酵素を反応させるこ
とにより、従来法に比べ操作時間を大幅に短縮でき、且
つDNA収量を大幅に増加させることができることが判
る。
【0053】実施例6.界面活性剤(SDS)添加の有
無によるDNA採取量の変化 ヒトのホルマリン固定パラフィン包埋組織標本(肝臓)
から4枚の組織切片(厚さ10μm,約8mm×5mm)を切り
出した。該組織切片を1枚づつ0.5mlテストチューブに
入れ、夫々にD−リモネンを0.5ml加えて、マイクロチ
ューブミキサー(MTー360,トミー精工製)にて3
分間攪拌した後、常温にて3分間,12,000rpmで遠心処
理して上清を除きパラフィンを除去した。次に各テスト
チューブに0.5mlのエタノールを加え上記ミキサーにて
攪拌した後、常温にて3分間12,000rpmで遠心処理して
上清を除くことにより僅かに残っているD−リモネンを
除去し、乾燥処理した。次いで、これらのうち2本のテ
ストチューブには10mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.0、5.6
mM EDTAを含有。)20μlを添加し、そのうちの1本
は室温下で10分間放置し、他方は90℃で10分間加熱処理
した。また、残りの2本のテストチューブには10mMトリ
ス−塩酸緩衝液(pH7.0、0.55%SDS、5.6mMEDTA
を含有。)20μlを添加し、そのうち1本は室温下で10
分間放置し、他方は90℃で10分間加熱処理した。次い
で、各テストチューブを常温にて5分間、10,000rpmで
遠心処理し、得られた上清をDNAサンプルとした。最
後に、得られたDNAサンプルのうち4μlについて、
PCR法によりk−ras遺伝子の増幅反応を行った
(PCR法条件:94℃、1分間;55℃、2分間;72℃、
3分間。45回)。PCR法により増幅したDNAを、エ
チジウムブロミド0.5μg/mlを含む、1×TAE緩衝液
(0.04M Tris−酢酸、1mM EDTA pH7.8)を用
いて作製した2.5%アガロースゲルを使用して100V定電
圧で20〜30分電気泳動した後、UVイルミネーターを使
用してDNAを蛍光検出した。その結果を図6に示す。
尚、図6中、レーン1は分子量マーカー〔φx174
phage DNA/HaeIII、(株)ニッポンジーン
製〕の結果を、レーン2は界面活性剤(SDS)未含有
緩衝液を用い、加熱処理を行わないで得られたDNAサ
ンプルについての結果を、レーン3は界面活性剤(SD
S)未含有緩衝液を用い、加熱処理を行なって得られた
DNAサンプルについての結果を、レーン4は界面活性
剤(SDS)含有緩衝液を用い且つ加熱処理を行わない
で得られたDNAサンプルについての結果を、またレー
ン5は界面活性剤(SDS)含有緩衝液を用い且つ加熱
処理を行なって得られたDNAサンプルについての結果
を夫々示す。また図6中、「←」印はk−ras遺伝子
の増幅領域(108bp)を示す。図6の結果から明らかな
如く、界面活性剤未含有緩衝液を用い且つ加熱処理を行
わないで得られたDNAサンプルを用いた場合(レーン
2)と、界面活性剤未含有緩衝液を用い、加熱処理を行
って得られたDNAサンプルを用いた場合(レーン3)
は、何れもk−ras遺伝子の増幅断片がほとんど認め
られないこと、即ち界面活性剤未含有緩衝液を用いた場
合では、得られたDNAサンプル中のDNA収量は少な
く、加熱処理の有無による差はほとんどないことが判
る。また、界面活性剤含有緩衝液を用い、加熱処理を行
わないで得られたDNAサンプルを用いた場合(レーン
4)では、k−ras遺伝子の増幅断片がほとんど認め
られないが、界面活性剤含有緩衝液を用い且つ加熱処理
を行って得られたDNAサンプルを用いた場合(レーン
5)では、明らかにk−ras遺伝子の増幅断片が認め
られる。即ち界面活性剤含有緩衝液を用いた場合では、
加熱処理を行うことにより得られたDNAサンプル中の
DNA収量を著しく増加させることができることが判
る。更に、界面活性剤含有緩衝液を用い且つ加熱処理を
行って得られたDNAサンプルを用いた場合(レーン
5)と界面活性剤未含有緩衝液を用い、加熱処理を行っ
て得られたDNAサンプルを用いた場合(レーン3)と
を比較すると、明らかにレーン5の方がk−ras遺伝
子の増幅量が多く、PCR分析の感度が増加しているこ
と、即ち、加熱処理を行う際に界面活性剤を共存させる
ことにより、得られたDNAサンプル中のDNA収量が
大幅に増加することが判る。以上のことから、パラフィ
ン包埋組織標本から得られる試料を、界面活性剤を用い
て加熱処理することにより、容易に遺伝子分析用試料を
得ることができることが判る。
【0054】
【発明の効果】以上述べた如く、本発明は、遺伝子分析
用試料としてのパラフィン包埋組織標本の処理方法とそ
の為の処理用キットを提供するものであり、本発明を利
用して遺伝子分析用試料としてのパラフィン包埋組織標
本を処理した場合には、従来法による処理方法に比較し
て操作が簡便であり、且つその実施に要する時間も極め
て短時間であるという効果、更には、不純物の混入、特
にPCR法の反応を阻害する物質の混入が少なく、例え
ばPCR法を利用した病理検査や遺伝子分析等の試料と
して好適な核酸鎖が得られるという効果等を奏するので
斯業に貢献するところ大なる発明である。
【0055】尚、本発明に於いて、タンパク質変性作用
を有する有機化合物の一つとして使用されるヒドロキシ
安息香酸は、フェノール性水酸基を有する有機化合物の
一つであるが、飲食物の防カビ剤として広く用いられ、
人体に対し非腐食性である。そのヒドロキシ安息香酸を
二相分離方式をとらない遺伝子分析用試料としてのパラ
フィン包埋組織標本の処理方法に於けるタンパク質変性
剤として用いようとする試みは今まで全くなされていな
かった。
【0056】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1及び比較例1で得られた、DNAサン
プルをポリメラーゼ チェインリアクション法(PCR
法)で増幅した後に3%アガロースゲル電気泳動にかけ
た結果を示す。
【図2】参考例1で得られた、ラットcDNAをPCR
法で増幅した後に3%アガロースゲル電気泳動にかけた
結果を示す。
【図3】実施例2で得られた、各DNAサンプルを3%
アガロースゲル電気泳動にかけ結果を示す。
【図4】実施例4で得られた、各DNAサンプルをPC
R法で増幅した後に2.5%アガロースゲル電気泳動にか
け結果を示す。
【図5】実施例5で得られた、各DNAサンプル中のD
NA収量とタンパク質分解酵素の反応時間との関係を示
す。
【図6】実施例6で得られた、各DNAサンプルをPC
R法で増幅した後に2.5%アガロースゲル電気泳動にか
けた結果を示す。
【符号の説明】
図1に於いて、レーン1は分子量マーカーの結果を、レ
ーン2は実施例1で得られたDNAサンプルのPCR法
による増幅結果を、レーン3は比較例1で得られたDN
AサンプルのPCR法による増幅結果を夫々示す。ま
た、「←」印はヒトβ−グロビン遺伝子の増幅領域(11
0bp)を示す。図2に於いて、各レーン番号は以下の試料
を使用してPCR法による増幅を行った結果を夫々示
す。 Lane 1及び6: 分子量マーカー(φx174
phage DNA/HaeIII) 2: 比較例1由来のサンプル液無添加 3: 比較例1由来のサンプル液2μl添加 4: 比較例1由来のサンプル液4μl添加 5: 比較例1由来のサンプル液7μl添加 7: 実施例1由来のサンプル液無添加 8: 実施例1由来のサンプル液2μl添加 9: 実施例1由来のサンプル液4μl添加 10: 実施例1由来のサンプル液7μl添加 また、「←」印はラットG3PDH遺伝子の増幅領域
(983bp)を示す。図3に於いて、各レーン番号は以下
の試料を使用した結果を夫々示す。 Lane 1:分子量マーカー〔λ phage DNA
/HindIII、(株)ニッポンジーン製〕 2:加熱処理なし 3:100℃、3分間加熱 4:100℃、5分間加熱 5:100℃、10分間加熱 図4に於いて、各レーン番号は以下の試料を使用してP
CR法による増幅を行った結果を夫々示す。 Lane 1: 分子量マーカー(φx174 pha
ge DNA/HaeIII) 2: 加熱処理なし 3: 90℃、10分間加熱 また、「←」印はk−ras遺伝子の増幅領域(108b
p)を示す。図5に於いて、−□−は、加熱処理を行っ
た後にタンパク質分解酵素を反応させた場合を、また−
+−は、加熱処理を行わずにタンパク質分解酵素を反応
させた場合を夫々示す。図6に於いて、各レーン番号は
以下の試料を使用してPCR法による増幅を行った結果
を夫々示す。 Lane 1: 分子量マーカー(φx174 pha
ge DNA/HaeIII) 2: 界面活性剤未含有緩衝液、加熱処理なし 3: 界面活性剤未含有緩衝液、90℃、10分間加熱 4: 界面活性剤含有緩衝液、加熱処理なし 5: 界面活性剤含有緩衝液、90℃、10分間加熱 また、「←」印はk−ras遺伝子の増幅領域(108b
p)を示す。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 パラフィンを除去したパラフィン包埋組
    織標本とタンパク質変性作用を有する界面活性剤とを含
    有する水性懸濁液を60℃以上で加熱処理することを特徴
    とする、遺伝子分析用試料としてのパラフィン包埋組織
    標本の処理方法。
  2. 【請求項2】 加熱処理の処理温度が70℃乃至水性懸濁
    液の沸点以下である、請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2に記載の処理方法を行
    い、更にこれにタンパク質分解酵素を作用させることを
    特徴とする、遺伝子分析用試料としてのパラフィン包埋
    組織標本の処理方法。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の処理方法を行い、次い
    で核酸鎖を沈殿させることを特徴とする、遺伝子分析用
    試料としてのパラフィン包埋組織標本の処理方法。
  5. 【請求項5】 請求項3に記載の処理方法を行い、更に
    該反応液にタンパク質変性作用を有する有機化合物含有
    溶液を作用させた後、核酸鎖を沈殿させることを特徴と
    する、遺伝子分析用試料としてのパラフィン包埋組織標
    本の処理方法。
  6. 【請求項6】 タンパク質変性作用を有する有機化合物
    含有溶液がフェノール性水酸基を有する有機化合物を含
    むアルコール水溶液である、請求項5に記載の方法。
  7. 【請求項7】 フェノール性水酸基を有する有機化合物
    がヒドロキシ安息香酸である、請求項6に記載の方法。
  8. 【請求項8】 (i)タンパク質変性作用を有する界面活
    性剤、(ii)タンパク質分解酵素、及び(iii)ヒドロキシ
    安息香酸を含有する溶液を組み合わせてなることを特徴
    とする、遺伝子分析用試料としてのパラフィン包埋組織
    標本の処理用キット。
  9. 【請求項9】 タンパク質変性作用を有する界面活性剤
    がSDSである、請求項8に記載の処理用キット。
  10. 【請求項10】 タンパク質分解酵素がパパインであ
    る、請求項8又は9に記載の処理用キット。
  11. 【請求項11】 パラフィンを除去したパラフィン包埋
    組織標本とタンパク質変性作用を有する界面活性剤とを
    含有する水性懸濁液を加熱処理した後、これにタンパク
    質分解酵素を作用させ、次いで該反応液にヒドロキシ安
    息香酸含有アルコール水溶液を作用させた後、核酸鎖を
    沈殿させることを特徴とする、遺伝子分析用試料として
    のパラフィン包埋組織標本の処理方法。
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