JPH0870862A - ペルオキシダーゼおよびその生産方法 - Google Patents

ペルオキシダーゼおよびその生産方法

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JPH0870862A
JPH0870862A JP21028994A JP21028994A JPH0870862A JP H0870862 A JPH0870862 A JP H0870862A JP 21028994 A JP21028994 A JP 21028994A JP 21028994 A JP21028994 A JP 21028994A JP H0870862 A JPH0870862 A JP H0870862A
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peroxidase
optimum
stable
range
peroxidases
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JP21028994A
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English (en)
Inventor
Akira Shimizu
昌 清水
Masato Nakaya
端人 仲谷
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Daiwa Kasei KK
Original Assignee
Daiwa Kasei KK
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 アニリン系化合物等の芳香族アミンに対して
高い基質親和性を有するペルオキシダーゼIおよびII
およびその安価で大量な生産方法を提供する。 【構成】 ホウロクタケ属に属する新菌株から得られ
る、以下の特性:(1)分子量:約48,000;(2)作用
適温の範囲:至適温度は約55℃;(3)熱安定性:pH
5.7で30分間保持した場合、約45℃まで安定;(4)
至適pH:約5.7;(5)安定pH範囲:30℃で16時
間処理する場合、pH4.3〜6.3;(6)等電点:約4.
5;および(7)プロトヘムを有する単量体;を有するペ
ルオキシダーゼI、ならびに、以下の特性:(1)作用適
温の範囲:至適温度は約50℃;(2)熱安定性:pH5.
7で30分間保持した場合、約45℃まで安定;(3)至
適pH:約5.7;および(4)安定pH範囲:30℃で1
6時間処理する場合、pH5.3〜6.3;を有するペル
オキシダーゼII。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、芳香族アミン及びフェ
ノール化合物に対して広い基質特異性を有し、特にアニ
リン系化合物に対して基質親和性の高いペルオキシダー
ゼおよびこのようなペルオキシダーゼを担子菌培養物か
ら生産する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ペルオキシダーゼは、過酸化酵素ともよ
ばれ、過酸化水素の存在下、種々の化合物を酸化する酵
素であり、動物・植物・微生物界に広く分布することが
知られている。ペルオキシダーゼは、既に臨床検査試
薬、酵素標識免疫測定などに実用化されており、更に、
工場廃液中の有毒成分の無毒化および除去、パルプ廃液
の脱色、洗濯物の色移り防止、フェノール樹脂の合成、
食品の劣化防止などの幅広い用途が期待されている。特
に、工場廃液、例えば、化学工業および染色工業などの
廃液、ならびに農薬関連物質に含まれ、一般に有毒であ
ることが知られている芳香族アミンの無毒化および除去
処理には、芳香族アミンに対して基質親和性の高いペル
オキシダーゼが必要である(上島、バイオサイエンスと
インダストリー、Vol.51、No.12、(199
3))。さらに、上記処理を屋外で夏期に実施する場合
には、高温となるため、耐熱性に優れるペルオキシダー
ゼが望まれる。
【0003】従来から西洋ワサビペルオキシダーゼが、
臨床診断などの用途に用いられてきた。しかし、上記酵
素は、植物由来であるため大量生産に適さず、また、多
くのアイソザイムを含むため、収穫時期によりそれらの
組成比が変動するという欠点を有する。
【0004】近年、微生物由来のペルオキダーゼが、種
々の菌類において探索されてきた。例えば、担子菌のコ
プリヌス・シネリウス(特開平3−1949号公報)、
糸状菌のアルスロマイセス・ラモスス(Agric. B
iol. Chem、Vol.50、247、(198
6))、不完全菌類のフザリウム・オキシスポルム、フ
ミコラ・インソレンスなどの菌類に由来するペルオキシ
ダーゼが知られている。
【0005】しかし、いずれのペルオキシダーゼも芳香
族アミンに対する基質親和性が低いこと、熱的に不安定
であることなどから、工場廃液からの有害物質除去に関
して、実用化がなされていないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の
課題を解決するものであり、その目的とするところは、
芳香族アミンに対する基質親和性に優れ、芳香族アミン
及びフェノール化合物に対して広い基質特異性を有する
ペルオキシダーゼ、ならびに耐熱性に優れたペルオキシ
ダーゼ、その生産方法および生産菌を提供することであ
る。これまで芳香族アミンに対する高い特異性を有し、
かつ耐熱性に優れるペルオキシダーゼを生産する菌類は
知られていない。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ホウロク
タケ(Trametes)属に属する、新たに単離した担子菌か
ら、新規なペルオキシダーゼ数種を見いだし、本発明を
完成するに至った。
【0008】本発明のペルオキシダーゼIは、次の特性
を有する。 (1)分子量:約48,000(SDS−PAGEによ
る); (2)作用適温の範囲:至適温度は約55℃である; (3)熱安定性:pH5.7で30分間保持した場合に、約
45℃まで安定である; (4)至適pH:N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプ
ロピル)-3-メチルアニリンを基質に用いた場合に、約
5.7; (5)安定pH範囲:30℃で16時間処理する場合にお
いて、pH4.3〜6.3; (6)等電点:約4.5;および (7)プロトヘムを有する単量体である。 このことによって、上記目的が達成される。
【0009】本発明のペルオキシダーゼIIは、次の特
性を有する。 (1)作用適温の範囲:至適温度は約50℃である; (2)熱安定性:pH5.7で30分間保持した場合に、約
45℃まで安定である; (3)至適pH:N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプ
ロピル)-3-メチルアニリンを基質に用いた場合に、約
5.7;および (4)安定pH範囲:30℃で16時間処理する場合にお
いて、pH5.3〜6.3;を有する。 このことによって、上記目的が達成される。
【0010】本発明のペルオキシダーゼIおよびII
は、ホウロクタケ属の担子菌、特に平成6年8月12日
に工業技術院生命工学工業技術研究所(生命研と略称す
る)に寄託したTrametes sp. Ha1株(生命研菌寄第14
472号;FERM P-14472)により生産される。こ
のことによって上記目的が達成される。
【0011】上記ペルオキシダーゼIおよびIIは、実
施例2に詳述するように、同一菌から単離される。
【0012】上記担子菌より生産される本発明のペルオ
キシダーゼIおよびIIの種々の特性を、それぞれ表1
および表2に示す。
【0013】
【表1】
【0014】
【表2】
【0015】上記特性を有する、ホウロクタケ属担子菌
由来のペルオキシダーゼは、これまで知られていない。
【0016】本発明のペルオキシダーゼIおよびIIの
生産方法は、上記生産菌を培養し、培養物より該ペルオ
キシダーゼIおよびIIを分離精製する工程を包含す
る。このことによって上記目的が達成される。
【0017】以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】本発明のペルオキシダーゼIおよびII
は、ホウロクタケ属の担子菌、特にTrametes sp. Ha1株
(生命研菌寄第14472号;FERM P-14472)に
より生産される。この菌株は、発明者らが土壌、海水お
よび淡水、ならびに腐朽物からペルオキシダーゼを生産
する菌類を広くスクリーニングした結果、新たに竹の枯
葉から単離された新菌株である。
【0019】(1)形態および培養 本発明のペルオキシダーゼIおよびII生産菌(以下、
本菌という)は、リグニン分解能を有する白色腐朽菌で
あること、培養菌糸に骨格菌糸およびかすがい連結(cl
amp connection)を有するがシスチジアおよび剛毛状菌
糸などの異形細胞は存在しないこと、ならびに培養菌糸
に分生胞子が形成されないこと、等の菌学的性質を有す
ることにより、ホウロクタケ(Trametes)属に属する担
子菌と同定され、Trametes sp. Ha1と命名した。本菌
は、フェノールオキシダーゼ(ラッカーゼ)を産生する
ことが認められた。
【0020】本菌のさらに詳細な菌学的性質は、以下の
通りである。
【0021】(ポテト・グルコース寒天培地)培養開始
後7日目において、コロニーの表面および裏面は共に白
色であり、直径5〜10mmに成長し、気中菌糸は短く
密で綿毛状である。菌糸は、特徴的な結合菌糸を伴い、
少数の骨格菌糸が認められ、かすがい連結を有する。菌
糸の表面は、平坦であり、幅は2〜6μmである。シス
チジアおよび剛毛状菌糸は認められない。分生胞子の形
成は認められない。
【0022】(サブロー寒天培地)培養開始後7日目に
おいて、コロニーの表面は白色、裏面は薄茶色であり、
直径3〜7mmに成長し、気中菌糸は短く疎である。菌
糸は、特徴的な結合菌糸を伴い、少数の骨格菌糸が認め
られ、かすがい連結を有する。菌糸の表面は、平坦であ
り、幅1〜4μmである。分生胞子の形成は認められな
い。
【0023】(フェノールオキシダーゼ反応)0.5%
の没食子酸または0.5%のタンニン酸を含むサブロー
寒天培地に本菌を接種し、30℃で培養条件下、菌体の
周囲が褐変する反応陽性が認められる。従って、本菌は
リグニン分解性木材腐朽菌(白色腐朽菌)の一種であ
る。
【0024】本菌の生育範囲は、ポテトグルコース寒天
培地(ポテトエキス末4.0g、ブドウ糖20g、寒天2
0gを、1リットルの蒸留水に溶解する。)において、
約4〜40℃、pHは約2〜12であり、生育好適温度
は25〜35℃、生育好適pHは4.0〜8.0である。
特に好ましい生育条件は、30℃でpHが約5.5であ
る。
【0025】次に、本菌から本発明のペルオキシダーゼ
IおよびIIを生産するための条件について説明する。
【0026】本菌は、液体培養または固体培養のいずれ
でも培養し得る。本菌を生育させる培地としては、特に
限定されず、通常の液体培地または固体培地が用いられ
る。炭素源としては、本菌が同化し得るものならいずれ
も使用し得、例えばグルコース、ショ糖、糖蜜等の糖
類、澱粉、木粉などが用いられ得る。窒素源としては、
ペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、肉エキス、大豆分
解物、尿素などの有機窒素源の他、硝酸アンモニウム、
硝酸ナトリウム等の無機窒素源も使用し得る。必要に応
じてリン酸塩、硫酸マグネシウム、カリウム、カルシウ
ム、銅、ナトリウム、マンガン、亜鉛等の無機塩類、ビ
タミン類等が添加され得る。これら培地成分は、本菌の
生育を阻害しない濃度であればよく、炭素源は0.1〜
20重量%、好ましくは5〜10重量%、窒素源は0.
01〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%である。
【0027】培地のpHを、2.0〜12.0、好ましく
は4.0〜8.0に調製し、滅菌して使用する。培養温度
は、担子菌類が生育し得る温度であればよく、実用上、
10〜40℃、好ましくは25〜35℃である。本菌を
液体培養する場合は、通気培養または振盪培養が好まし
い。培養時間は、培養条件によって異なるが、通気また
は振盪培養の場合は、通常2〜10日間が好ましい。
【0028】(2)培養液からのペルオキシダーゼIお
よびIIの分離精製 本菌の培養液から本発明のペルオキシダーゼIおよびI
I(以下、本ペルオキシダーゼIおよびIIという)を
分離精製するには、既知の精製法、例えば透析、塩析、
各種カラムクロマトグラフィー、等電点沈澱、ゲル濾過
が単独もしくは併用して利用され得る。
【0029】本ペルオキシダーゼIおよびIIは、菌体
外に分泌生産され、培養液中に蓄積される。従って、培
養後、菌体等の不溶物を遠心分離、濾紙または濾布など
による濾過等により除去し、本ペルオキシダーゼIおよ
びIIを含有する粗酵素液を回収する。得られた粗酵素
液を、濃縮、硫安分画(塩析)、透析、各種クロマトグ
ラフィー、ゲル濾過などの一般的に用いられる酵素の精
製方法により、本ペルオキシダーゼIが精製され得る。
例えば、上記得られた粗酵素液を硫安分画後、透析、各
種クロマトグラフィー、限外濾過に順次供試することに
より、精製された高活性の本ペルオキシダーゼIおよび
/またはIIを含有する画分が得られる。
【0030】(3)本ペルオキシダーゼIおよびII活
性の測定 本発明において本ペルオキシダーゼIおよびII活性
は、過酸化水素の存在下、本ペルオキシダーゼIおよび
IIが触媒する、4-アミノアンチピリンと、水素供与体
との酸化縮合による発色反応で測定する。水素供与体と
しては、例えば、フェノール、N,N-ジエチルアニリン
(DEA)、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピ
ル)-3-メチルアニリン(TOOS)、N,N-ジメチルアニリ
ン(DMA)があげられる。酸化縮合による発色反応系に
おいて、用いた基質に応じて、505nm(フェノー
ル)または555nm(DEA、TOOS、DMA)における吸光
度を測定する。本願においては、別に記載がない限り、
40mMのリン酸緩衝液(pH5.7)に、0.5マイク
ロモルの4-アミノアンチピリンおよび3マイクロモルの
N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3-メ
チルアニリンを含んだ溶液500μlへ、1マイクロモ
ルの過酸化水素を添加し、30℃で1分間プレインキュ
ベートし、次いで、酵素液20μlを加え、反応液の最
終液量を600μlとする。これを、555nmの波長
で吸光度を測定し、酵素液20μlの代わりに蒸留水2
0μlを加え、同様に測定したブランク値を差し引いた
後、1分間に吸光度を0.01増加させる酵素活性を1
単位(U;ユニット)とする。
【0031】以下の実施例にて、本発明をさらに詳細に
説明するが、これらはなんら本発明を限定するものでは
ない。
【0032】
【実施例】実施例1 (Trametes sp. Ha1の培養)10mlの培地(5%グル
コース、0.5%ペプトン、0.1%酵母エキス、0.2
%KH2PO4、0.1%K2HPO4、0.02%MgSO4・7H2O、pH
6.0)を含む60ml容試験管にTrametes sp. Ha1の
一白金耳を接種し、28℃で4日間、振盪培養した。次
いでこの培養液20mlを、2.5lの上記培地を含む
5l容ミニジャーファーメンターに植菌し、28℃で7
日間、通気撹拌培養した。
【0033】実施例2 (本ペルオキシダーゼIおよびIIの精製)上記実施例
1で得られた培養液を濾紙で濾過して除菌し、回収した
濾液を粗酵素液とした。
【0034】この粗酵素液を限外濾過により濃縮後、
0.5M塩化ナトリウムを含む10mMトリス塩酸緩衝
液(pH7.5)で透析し、同緩衝液で平衡化したコン
カナバリンAセファロースカラム(4.4×5.1cm、Pharma
cia社製)に供試した。同緩衝液で非吸着物質を洗浄溶
出後、0.2Mメチル-α-D-グルコピラノシドを含む同
緩衝液(pH7.5)により、本ペルオキシダーゼIお
よびIIを溶出した。溶出液を10mM塩化ナトリウム
を含有する20mMヒスチジン緩衝液(pH5.5)で
透析し、透析内液を得た。
【0035】上記透析内液を、上記緩衝液で平衡化した
モノQカラム(0.5×5.0cm、Pharmacia社製)に供試し
た。非吸着物質を上記カラムより同緩衝液で洗浄、溶出
させた後、同緩衝液に塩化ナトリウムを加え、塩化ナト
リウムの10mMから300mMへの濃度勾配をかけ
て、上記カラムに吸着された本ペルオキシダーゼIおよ
びIIを溶出し、分画回収した。本ペルオキシダーゼI
およびIIは、それぞれ約40mMおよび約150mM
で、溶出した。
【0036】各ペルオキシダーゼ溶出液を10mM塩化
ナトリウムを含む40mMヒスチジン緩衝液(pH4.
8)で透析後、同緩衝液で平衡化したモノPカラム(0.
5×20.0cm、Pharmacia社製)に供試し、非吸着物質を同
緩衝液で洗浄溶出した。次いで、5%ポリバッファー7
4(pH2.8、Pharmacia社製)で、本ペルオキシダー
ゼを溶出し、分画回収した。
【0037】各ペルオキシダーゼの回収画分の一部を、
ポリアクリルアミド電気泳動に供試し均一なことを確認
した。本ペルオキシダーゼIは、さらにSDSを含むポ
リアクリルアミドゲル電気泳動に供試して、単量体であ
ることを確認した。
【0038】アルカリ-ピリジン-ヘモクロム法(生化学
辞典第2版、1214頁;東京化学同人刊)により、本
ペルオキシダーゼIおよびIIは、プロトヘムを有する
ことが明らかになった。
【0039】実施例3 (本ペルオキシダーゼIの分子量)SDSポリアクリル
アミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)法(Laemmli,U.K.、Na
ture、227、680(1970))で本ペルオキシダーゼIの分子
量を測定した。
【0040】上記実施例2で得られた精製ペルオキシダ
ーゼIおよび分子量マーカーとして既知の6種のタンパ
ク質(分子量約97,400、66,300、42,400、30,000、20,1
00および14,400)を同時に泳動した。泳動終了後、クー
マシーブリリアントブルーで染色し、本ペルオキシダー
ゼIと各分子量マーカーとの相対泳動距離より、本ペル
オキシダーゼIの分子量を測定した。
【0041】本SDS-PAGEにより、本ペルオキシダーゼI
は、単一バンドを示した。本ペルオキシダーゼIのSDS-
PAGEにおける分子量は、約48,000である。
【0042】実施例4 (本ペルオキシダーゼIおよびIIの作用適温範囲およ
び熱安定性) (1)作用適温の範囲 上記実施例2で得られた精製された本ペルオキシダーゼ
IおよびIIの活性を、上記発色反応系において種々の
温度条件(20、30、40、45、50、55、60、70℃)下で測
定した。結果をそれぞれ図1および図2に示す。それぞ
れの図中の横軸は反応温度(℃)を表し、縦軸は最大活
性値を100とした場合の相対活性(%)を表す。本ペル
オキシダーゼIおよびIIの至適温度は、それぞれ約5
5℃および約50℃である。
【0043】(2)熱安定性 上記実施例2で得られた精製された本ペルオキシダーゼ
IおよびIIを種々の温度条件(0、30、40、45、50、5
5、60、70、80、95℃)下、20mMリン酸緩衝液(p
H5.7)190μl中に、酵素液10μlを加えて、
30分間インキュベートした後、直ちに氷冷して10分
後に活性を測定した。結果をそれぞれ図3および図4に
示す。それぞれの図中の横軸は処理温度(℃)を表し、
縦軸は最大活性値を100とした場合の相対残存活性
(%)を表す。
【0044】本ペルオキシダーゼIは、約45℃まで安
定であり、温度処理条件が50℃においても、酵素活性
が60%以上保持される。本ペルオキシダーゼIIは、
約45℃まで安定であり、温度処理条件が50℃におい
ても、酵素活性が60%以上保持される。
【0045】実施例5 (本ペルオキシダーゼIおよびIIの至適pHおよび安
定pH範囲) (1)至適pH pH領域に応じて、1/30M酢酸緩衝液、1/30M
リン酸緩衝液、または1/30Mトリス-塩酸緩衝液を
用いてpHを1.7〜7.9(1.7、3.5、4.3、5.7、6.
1、6.5、7.3、7.9)に調整した各緩衝液をつくり、上記
実施例2で得られた精製された本ペルオキシダーゼIお
よびIIの活性を測定した。
【0046】結果を図5および図6に示す。それぞれの
図中の横軸は反応pHを表し、縦軸は最大活性値を10
0とした場合の相対活性(%)を表す。本ペルオキシダ
ーゼIおよびIIの至適pHは、いずれも約5.7であ
る。
【0047】(2)安定pH範囲 pH領域に応じて、100mM酢酸ナトリウム-塩酸緩
衝液、100mM酢酸緩衝液、100mMリン酸緩衝
液、100mMトリス-塩酸緩衝液および100mMグ
リシン-水酸化ナトリウム緩衝液を用いてpHを1.0〜
9.4(1.0、2.5、3.4、4.3、5.3、6.3、7.4、7.9、9.
0、9.4)に調整した各緩衝液をつくり、上記実施例2で
得られた精製された本ペルオキシダーゼIおよびII
を、30℃で16時間、上記pHを有する各緩衝液中で
インキュベートした。次いで、各pH処理液を、0.02
Mリン酸緩衝液(pH6.0)で10倍に希釈した後、
ペルオキシダーゼ活性を測定した。それぞれの結果を図
7および図8に示す。各図中の横軸は処理pHを表し、縦
軸は、最大活性値を100とした場合の相対残存活性
(%)を表す。本ペルオキシダーゼIおよびIIの安定
pH範囲は、それぞれ4.3〜6.3および5.3〜6.3で
ある。
【0048】実施例6 (本ペルオキシダーゼIの等電点)クロマトフォーカシ
ング法により本ペルオキシダーゼIの等電点を測定し
た。測定の結果、本ペルオキシダーゼIの等電点は、約
4.5であった。
【0049】実施例7 (本ペルオキシダーゼIおよびIIの基質特異性)フェ
ノール、カテコール、o−クロロフェノール、m−クロ
ロフェノール、p−クロロフェノール、2,4-ジクロロフ
ェノール、2,5-ジクロロフェノール、4-クロロ-2-メチ
ルフェノール、2,6-キシレノール、アニリン、N-エチル
-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3-メチルアニ
リン(TOOS)、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチ
ル-O-メチルアニリン、およびp−メチルアニリンを基
質として供試し、上記と同様の方法で、上記実施例2で
精製された本ペルオキシダーゼIおよびIIの基質特異
性を調べた。比較のために、西洋ワサビペルオキシダー
ゼおよびアルスロマイセス由来のペルオキシダーゼにつ
いても同様に調べた。フェノールを基質とした場合の測
定値を100として各基質についての相対値(%)を表
3に示す。
【0050】反応条件は、40mMのリン酸緩衝液(p
H5.7)500μl中に、0.5マイクロモルの4-アミ
ノアンチピリン、1.0マイクロモルの過酸化水素を含
む溶液へ、3マイクロモルの上記基質を加え、30℃で
1分間プレインキュベートした後、20μlの本ペルオ
キシダーゼIまたはII液を添加し、反応液の最終液量
を600μlとした。この反応液の505nmにおける
吸光度の変化を測定した。
【0051】
【表3】
【0052】本ペルオキシダーゼIおよびIIは、芳香
族アミン類に対して高い基質親和性を示す。
【0053】実施例8 (培養条件の検討)綿栓をした60ml容試験管と50
0ml容フラスコとを用い、培地液量を少しずつ変え
て、酸素供給量の変化によるペルオキシダーゼIおよび
IIの生産性の変動を調べた。培地液量は、60ml容
試験管では、5、10および15ml、500ml容フ
ラスコでは、25、50、75および100mlとし
た。
【0054】ペルオキシダーゼIおよびIIの生産量
は、190mMのトリス-塩酸緩衝液(pH8.6)52
0μl中に、7.5マイクロモルのフェノール、1.25
マイクロモルの4-アミノアンチピリンおよび5.0マイ
クロモルの過酸化水素を含んだ溶液を、30℃で1分間
プレインキュベートし、20μlのペルオキシダーゼI
およびIIを含む粗酵素液を添加後、505nmにおけ
る吸光度の変化を測定して行った。
【0055】ラッカーゼの生産量は、190mMの酢酸
ナトリウム緩衝液(pH4.5)520μl中に、7.5
マイクロモルのフェノールおよび1.25マイクロモル
の4-アミノアンチピリンを含んだ溶液を、30℃で1分
間プレインキュベートし、20μlのラッカーゼを含む
粗酵素液を添加後、505nmにおける吸光度の変化を
測定して行った。
【0056】それぞれの結果を、図9および図10中に
縦線のバーで示す。なお、斜線のバーは同一の培地での
ラッカーゼの生産量を示す。
【0057】いずれの容器を用いた場合も、培地液量を
増加させることで、酸素供給量を減少させるとペルオキ
シダーゼIおよびIIの生産量が低下した。2リットル
容のフラスコを用いた実験でも、同様の結果が得られ
た。
【0058】これらの培養結果から、Ha1菌のペルオキ
シダーゼの生産は、菌体への酸素供給量により変動する
ことが示唆された。特に、ペルオキシダーゼの生産は、
ラッカーゼの生産よりも酸素供給量に影響されやすい。
【0059】
【発明の効果】本発明によれば、広い基質特異性を有す
る新規ペルオキシダーゼIおよびII、およびその生産
方法が提供される。本ペルオキシダーゼIおよびIIは
従来のペルオキシダーゼに比べ、芳香族アミンに対して
高い基質親和性を示し、耐熱性に優れるため、芳香族ア
ミンを含む工場廃液の処理、農薬関連物質の無毒化等に
有用である。本ペルオキシダーゼIおよびIIは、担子
菌の培養によって生産されるため、安価に大量に本ペル
オキシダーゼIおよびIIを提供することができ、試薬
または工業用途にも広く利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】20〜70℃の範囲で本ペルオキシダーゼIの活性
を測定した場合の相対活性を示す。
【図2】20〜70℃の範囲で本ペルオキシダーゼIIの活
性を測定した場合の相対活性を示す。
【図3】本ペルオキシダーゼIを0〜95℃の条件下、30
分インキュベーション後に測定した相対残存活性を示
す。
【図4】本ペルオキシダーゼIIを0〜95℃の条件下、
30分インキュベーション後に測定した相対残存活性を示
す。
【図5】pH1.7〜7.9の範囲で本ペルオキシダーゼIの活
性を測定した場合の相対活性を示す。
【図6】pH1.7〜7.9の範囲で本ペルオキシダーゼIIの
活性を測定した場合の相対活性を示す。
【図7】本ペルオキシダーゼIをpH1.0〜9.4の条件下、
30℃で16時間インキュベーション後に測定した相対残
存活性を示す。
【図8】本ペルオキシダーゼIIをpH1.0〜9.4の条件
下、30℃で16時間インキュベーション後に測定した相
対残存活性を示す。
【図9】60ml容試験管による本菌培養時の本ペルオキ
シダーゼIおよびII生産量に対する酸素供給効果を示
す。
【図10】500ml容フラスコによる本菌培養時の本ペ
ルオキシダーゼIおよびII生産量に対する酸素供給効
果を示す。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 以下の特性: (1)分子量:約48,000; (2)作用適温の範囲:至適温度は約55℃である; (3)熱安定性:pH5.7で30分間保持した場合に、約
    45℃まで安定である; (4)至適pH:N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプ
    ロピル)-3-メチルアニリンを基質に用いた場合に、約
    5.7; (5)安定pH範囲:30℃で16時間処理する場合にお
    いて、pH4.3〜6.3; (6)等電点:約4.5;および (7)プロトヘムを有する単量体である;を有する、ペル
    オキシダーゼI。
  2. 【請求項2】 ホウロクタケ(Trametes)属に属する担
    子菌、Trametes sp.Ha1株(生命研菌寄第14472
    号)が生産する、請求項1に記載のペルオキシダーゼ
    I。
  3. 【請求項3】 以下の特性: (1)分子量:約48,000; (2)作用適温の範囲:至適温度は約55℃である; (3)熱安定性:pH5.7で30分間保持した場合に、約
    45℃まで安定である; (4)至適pH:N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプ
    ロピル)-3-メチルアニリンを基質に用いた場合に、約
    5.7; (5)安定pH範囲:30℃で16時間処理する場合にお
    いて、pH4.3〜6.3; (6)等電点:約4.5;および (7)プロトヘムを有する単量体である;を有するペルオ
    キシダーゼIを生産する方法であって、該ペルオキシダ
    ーゼIを生産するホウロクタケ属に属する担子菌を培養
    する工程、および培養物より該ペルオキシダーゼIを分
    離精製する工程を包含する、方法。
  4. 【請求項4】 以下の特性: (1)作用適温の範囲:至適温度は約50℃である; (2)熱安定性:pH5.7で30分間保持した場合に、約
    45℃まで安定である; (3)至適pH:N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプ
    ロピル)-3-メチルアニリンを基質に用いた場合に、約
    5.7;および (4)安定pH範囲:30℃で16時間処理する場合にお
    いて、pH5.3〜6.3;を、有するペルオキシダーゼ
    II。
  5. 【請求項5】 ホウロクタケ(Trametes)属に属する担
    子菌、Trametes sp.Ha1株(生命研菌寄第14472
    号)が生産する、請求項4に記載のペルオキシダーゼI
    I。
  6. 【請求項6】 以下の特性: (1)作用適温の範囲:至適温度は約50℃である; (2)熱安定性:pH5.7で30分間保持した場合に、約
    45℃まで安定である; (3)至適pH:N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプ
    ロピル)-3-メチルアニリンを基質に用いた場合に、約
    5.7;および (4)安定pH範囲:30℃で16時間処理する場合にお
    いて、pH5.3〜6.3;を、有するペルオキシダーゼ
    IIを生産する方法であって、該ペルオキシダーゼII
    を生産するホウロクタケ属に属する担子菌を培養する工
    程、および培養物より該ペルオキシダーゼIIを分離精
    製する工程を包含する、方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006124386A (ja) * 2004-09-30 2006-05-18 Geol Kagaku Kk 美白剤および抗酸化剤ならびに活性酸素除去剤
JP2011507867A (ja) * 2007-12-19 2011-03-10 イーエルシー マネージメント エルエルシー トラメテス属の抽出物を用いた皮膚処置用組成物および方法

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