JP3161213B2 - マンガンパーオキシダーゼch−1及びその製造方法 - Google Patents

マンガンパーオキシダーゼch−1及びその製造方法

Info

Publication number
JP3161213B2
JP3161213B2 JP6694194A JP6694194A JP3161213B2 JP 3161213 B2 JP3161213 B2 JP 3161213B2 JP 6694194 A JP6694194 A JP 6694194A JP 6694194 A JP6694194 A JP 6694194A JP 3161213 B2 JP3161213 B2 JP 3161213B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
enzyme
manganese peroxidase
manganese
lignin
optimum
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP6694194A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH07274958A (ja
Inventor
由紀 河合
純 杉浦
幸雄 喜多
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
New Oji Paper Co Ltd
Oji Holdings Corp
Original Assignee
Oji Holdings Corp
Oji Paper Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Oji Holdings Corp, Oji Paper Co Ltd filed Critical Oji Holdings Corp
Priority to JP6694194A priority Critical patent/JP3161213B2/ja
Publication of JPH07274958A publication Critical patent/JPH07274958A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3161213B2 publication Critical patent/JP3161213B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規なリグニン分解酵
素であるマンガンパーオキシダーゼCH−1およびその
製造方法に関するものである。本発明の酵素はリグニン
に作用して、これを低分子化または分解する性質を有す
るため、木材等のリグノセルロース材料を原料とする紙
パルプ製造工程における種々の工程で利用できるもので
ある。即ちパルプ化工程、パルプ漂白工程、排水処理工
程など、リグニンを低分子化または分解する工程に利用
できるものである。さらに木材の糖化において、糖化の
前段の処理としてリグニンを分解することによって、セ
ルラーゼ作用を高めるといういわゆるセルロース系バイ
オマス利用の分野にも適用できるものである。
【0002】
【従来の技術】従来から木材パルプの製造は、木材を化
学的に処理して製造する方法が広く行われているが、環
境問題等の面から、木材等のリグノセルロース物質に白
色腐朽菌を接種、培養することによってリグニンを分解
し、セルロースパルプを製造する試みがなされている
(特開昭50−46903号)。しかしながら、この方
法で用いる白色腐朽菌は共存する炭水化物をも分解して
しまい、またセルラーゼ欠損変異株を用いた場合には、
本来のリグニン分解力が弱まってしまうこと等の問題点
があり、実用化されるに至っていない。
【0003】このような問題点を解決するために、白色
腐朽菌のリグニン分解酵素をリグノセルロース物質に作
用させ、リグニンのみを選択的に分解させようとする試
みがなされている(Science, 221巻, 661-662 (198
3))。この報告は、主としてリグニンモデル化合物を基
質としたものであるが、世界で最初にリグニン分解酵素
を単離、精製したものである。この酵素はファネロケー
テ・クリソスポリウムが生産する菌体外酵素であり、主
な特徴は至適pHが3.0であること、鉄含有酵素であ
ること、分子量が41,000〜42,000であること、酵素作用
に過酸化水素が必要であること、リグニンモデル化合物
の4位のフェノール性水酸基がメトキシル基になった化
合物に対して作用することが確認されていること等であ
る。この酵素はリグニンパーオキシダーゼであり複数の
アイソザイムの存在が知られている(FEBS Lett., 169
巻, 247-250(1984))。リグニンパーオキシダーゼはそ
の他カワラタケ、ヤケイロタケ等多くの木材腐朽菌から
見い出され、一部のものは精製されている。
【0004】一方、アラゲカワラタケ、カイガラタケが
生産するリグニン分解酵素が知られているが(特開昭6
2−220190号、62−220189号)、これら
はフェノールオキシダーゼであり、主な特徴は至適pH
が4.5であること、銅含有酵素であること、分子量が
約63,000または、約65,000であること、等電点が3.5
付近であること、酵素作用に酸素が必要であること、リ
グニンモデル化合物の4位のフェノール性水酸基がメト
キシル基になった化合物に対しては作用せずフェノール
性のリグニンモデルに対して作用すること等である。
【0005】また、マンガンパーオキシダーゼも代表的
なリグニン分解酵素の一つであり、分子量が46,000以下
であること、鉄含有酵素であると推定されていること、
酵素作用に過酸化水素が必要であること、酵素反応がM
n(II)依存性であること、リグニンモデル化合物の4
位のフェノール性水酸基がメトキシル基になった化合物
に対しては作用せず、フェノール性のリグニンモデルに
対して作用することが確認されていること等が主な特徴
であり、リグニンパーオキシダーゼとは全く性質の異な
る酵素である。
【0006】マンガンパーオキシダーゼは二価のマンガ
ンを三価に酸化する活性を有し、また、この反応を介し
てグアヤコールやリグニンのモデル化合物を酸化分解す
る活性を持っている(J. Biol. Chem., 264巻, No.6, 3
335-3340(1989))。白色腐朽菌のリグニン分解酵素を木
材に作用させる場合、マンガンパーオキシダーゼによっ
て酸化された三価のマンガンは、いずれの酵素よりも分
子量が小さいために木材組織に侵入しやすく、木材組織
中を自由に移動しリグニンと反応できるためリグニン分
解に重要な働きをする酵素と考えられている。
【0007】マンガンパーオキシダーゼの生産方法とし
ては、Kirk、Dodson、Bonnarmeらの
方法が報告されているが、アラゲカワラタケIFO49
17株をマンガンパーオキシダーゼ生産のための一般的
な培養方法であるKirkらの培養方法(Arch.Microbi
ol.,117巻,227-285 (1978))に従って培養した場合、マ
ンガンパーオキシダーゼは全く生産されなかった。ま
た、Dodsonらの方法(FEMS Microbiology Letter
s, 42巻, 17-22(1987))に従って培養した場合、該酵素
活性は最高で16日目で0.6単位と大変少なく、さら
にBonnarmeらの方法(Appl. Environ. Microbi
ol.,56巻,No. 1, 210-217(1990))に従って培養した
場合、酵素活性は最高で培養4日目で1.6単位であ
り、いずれの方法もマンガンパーオキシダーゼを精製す
るために充分な量の酵素を確保することが困難である。
【0008】また従来、マンガンパーオキシダーゼは菌
体の増殖を盛んに行わせる培地では生産量が少なく、窒
素源が少ない培地で、気相の酸素濃度が高い条件でしか
酵素を大量に生産させることができなかった(Arch.Mic
robiol.,117巻,227-285 (1978))。しかしながら、この
ような条件で培養を行った場合菌体の増殖が遅いため、
酵素を大量に生産させるためにはあらかじめ増殖を盛ん
に行わせる培地で増やした大量の菌体を植え継ぐという
操作が必要であった。
【0009】マンガンパーオキシダーゼは、Leiso
laらによってファネロケーテ・クリソスポリウムの培
養液から、分子量約46,000、等電点4.2〜4.9であ
る6つのアイソザイムとして分離されている(Arch. Bi
ochem. Biophys., 242巻, 329-341 (1985))。ファネロ
ケーテ・クリソスポリウム以外の微生物の培養物からの
マンガンパーオキシダーゼの精製は、ヒラタケ由来の等
電点3.5、3.8、4.2、4.3である4つのマン
ガンパーオキシダーゼアイソザイム(特開平3−123
295、Plenum Publishing Corporation, 863-868(199
3))、カワラタケ由来の等電点2.93、2.96、3.06、3.0
9、3.17の5つのマンガンパーオキシダーゼアイソザイ
ム(Acta Chemica Scandinavica, B41巻, 762-765 (198
7)、Arch.Biochem. Biophys., 300巻, No.1, 57-62 (19
93))、コガネシワウロコタケ由来の分子量49,000、等
電点3.8であるマンガンパーオキシダーゼ(Arch. Bi
ochem. Biophys., 279巻,25-31(1990))、シイタケ由来
の分子量44,600、等電点3.2のマンガンパーオキシダ
ーゼ(Appl. Microbiol. Biotechnol., 33巻, 359-365
(1990))、ケガワタケ由来の分子量43,000、等電点2.
95と3.2の2つのマンガンパーオキシダーゼアイソ
ザイム(Biotec. Appl. Biochem., 13, 291-302 (199
1))がある。これらのマンガンパーオキシダーゼは、至
適pHが3.0〜5.0である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、白色腐朽菌
をリグノセルロース物質に作用させた場合に、目的とす
るリグニンの分解の他に、共存する炭水化物の分解を起
こすという問題点を解決することを意図するものであ
り、主としてリグノセルロース物質中のリグニンを低分
子化または分解することに対して有効であり、より中性
に近い条件で作用できるマンガンパーオキシダーゼおよ
びその製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、リグニン
分解菌であるアラゲカワラタケについて鋭意研究を行っ
た結果、マンガンパーオキシダーゼを大量に生産するア
ラゲカワラタケの変異株を作製し、該変異株を増殖せし
め、その培養物から得た菌体外酵素をイオン交換クロマ
トグラフィー、ゲル濾過、高速液体クロマトグラフィー
により高度に精製し、従来知られたマンガンパーオキシ
ダーゼより至適pHが高い新規な酵素標品を得て、本発
明に到達した。
【0012】本発明の酵素は、下記の性質を有する新規
なマンガンパーオキシダーゼCH−1である。 (1) 作用 過酸化水素存在下で二価のマンガンイオンを三価に酸化
する。 (2) 基質特異性 二価のマンガンを酸化する。 (3) 至適pHおよびpH安定性 至適pHはpH5.5であり、pH4.0〜6.0の範
囲で安定である。 (4) 至適温度および熱安定性 至適温度は45℃であり、50℃までの熱に安定であ
る。 (5) 等電点は4.0付近である。 (6) 分子量は約49,000である。 (7) Hg2+、Al3+により弱く阻害を受け、 Fe
2+、Cu2+、シアン化カリウム、NaN3 、メルカプト
エタノール、ジチオスレイトール、EDTAで強く阻害
される。
【0013】また、本発明のマンガンパーオキシダーゼ
CH−1の製造方法は、上記のマンガンパーオキシダー
ゼCH−1の生産能を有するアラゲカワラタケの変異株
であるNTG III−55株(FERM P−1404
6)を培地に培養し、その培養物からマンガンパーオキ
シダーゼCH−1を採取することを特徴とするものであ
る。
【0014】本発明の酵素はグアヤコール等のフェノー
ル性水酸基をもつ化合物に対しては作用するが、ベラト
リルアルコール等の4位のフェノール性水酸基がメトキ
シル基になった化合物に対しては作用しない。本発明の
酵素はヘム酵素に特有の407nm付近の吸収を持ち鉄
含有酵素であると推定される。
【0015】本発明の酵素はカワラタケ属に属するマン
ガンパーオキシダーゼCH−1生産菌を培地に培養し、
その培養物中からマンガンパーオキシダーゼCH−1を
取り出すことにより製造される。本発明において、酵素
を生産するための培養は以下のようにして行なうことが
できる。
【0016】本発明に用いる微生物としては、マンガン
パーオキシダーゼCH−1を生産する能力を有する微生
物であればいずれも用いることができるが、アラゲカワ
ラタケ(Coliorus hirstus)が適しており、アラゲカワラ
タケIFO4917株に由来する変異株であるNTG I
II−55株(FERM P−14046)が特に適して
いる。
【0017】用いる培地としては、マンガンパーオキシ
ダーゼCH−1生産菌が増殖可能な培地であれば特に限
定されるものではない。従来、マンガンパーオキシダー
ゼは、菌体を大量増殖する培地で培養した場合にはその
生産量が少ないため、窒素源が少ない培地で、気相の酸
素濃度が高い条件で、大量の菌体を用いて培養する以外
に酵素を大量生産することができなかった。そのため、
あらかじめ菌体を大量増殖し、これを植え継ぐという操
作が必要であった。しかしながら、本発明の変異株を用
いる場合には、菌体を大量増殖する培地で菌体を増殖さ
せながら同時に酵素を生産することができるため、菌体
の植え継ぎ操作は不要である。
【0018】培地の栄養源としては、微生物の培養に通
常用いられているものを広く用いることができる。炭素
源としては同化可能なものであれば良く、例えばグルコ
ース、マルトース、パルプ、木粉等が使用される。窒素
源としては利用可能な窒素化合物であれば良く、例えば
ペプトン、ソイトン、酒石酸アンモニウム、ダイズレク
チン等が用いられる。その他りん酸塩、硫酸塩、マグネ
シウム、カルシウム、カリウム、ナトリウム、銅、マン
ガン、亜鉛、等の塩類が必要に応じて使用される。培養
温度は生産菌が増殖可能な範囲で適宜変更し得るが、2
0℃〜40℃が好ましい。また、必要に応じてベラトリ
ルアルコールのようなリグニンモデル化合物を添加する
こともできる。
【0019】本発明の酵素は培養液中に分泌生産される
ので、培養後の培養物から本酵素を採取するには、液体
培養においては菌体を濾過、遠心分離などの方法で除去
した培養上清から、また固体培養においては培養物から
抽出した抽出液を用いて、通常の酵素の単離方法によっ
て行なうことができる。酵素の精製は、例えば陰イオン
交換体によるカラムクロマトグラフィー、ゲル濾過、高
速液体クロマトグラフィー等で行なうことができるが、
これらの方法を繰り返すことも可能であり、さらに必要
に応じて他の精製手段を組み合わせて用いることもでき
る。
【0020】なお本発明のマンガンパーオキシダーゼC
H−1は、従来より知られているファネロケーテ・クリ
ソスポリウム、ヒラタケ、カワラタケ、コガネシワウロ
コタケ、シイタケ、ケガワタケのマンガンパーオキシダ
ーゼとは以下の点で異なっており、新規な酵素である。
【0021】1)至適pHは5.5であり、従来より知
られているマンガンパーオキシダーゼのいずれよりも高
い。 2)等電点は4.0であり、ファネロケーテ・クリソス
ポリウムの4.2、4.3、4.55、4.9、ヒラタ
ケの3.5、3.8、4.2、4.3、カワラタケの
2.93、2.96、3.06、3.09、3.17、
コガネシワウロコタケの3.8、シイタケの3.2、お
よびケガワタケの2.95、3.2のいずれとも異なっ
ている。 3)分子量は49,000であり、ファネロケーテ・クリソス
ポリウムの46,000、ヒラタケの42,000〜45,000、カワラ
タケの44,000〜45,000、シイタケの44,600、およびケガ
ワタケの43,000とは全く異なるものである。また、コガ
ネシワウロコタケのマンガンパーオキシダーゼの分子量
は49,000であり本発明の酵素と同じであるが、至適pH
が異なるものである。
【0022】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳細に説
明する。実施例1 アラゲカワラタケIFO4917株由来の一核菌糸が形
成した分裂子を、80μg/ml濃度のニトロソグアニ
ジン(NTG)を含むりん酸ナトリウム緩衝液(pH
7.0)中に28℃で1時間放置することにより突然変
異処理を行った。生き残った分裂子をスクリーニングプ
レート(AzureBを960mM、グルコースを1.
5%、yeast nitrogen base w/o amino acidを0.67
%、MgSO4・7H2Oを0.05%、KH2PO4
0.1%、およびagarを1.5%含み、培地pH
5.0)に生育させ、マンガンパーオキシダーゼCH−
1を生産し、AzureBを脱色する株であるNTG I
II−55株(FERM P−14046)を選抜した。
次いで、得られたマンガンパーオキシダーゼCH−1生
産変異株NTG III−55株を用いて、下記の表1に示
す組成のグルコース−ソイトン培地200mlを含む5
00ml容三角フラスコ内でガラスビーズを入れて振盪
培養した場合、8日目で培養液1mlあたり3.5単位
の酵素生産が検出できた。
【0023】
【表1】
【0024】なお酵素の力価測定は、Mn(II)を基質
として、過酸化水素およびマロン酸ナトリウムを共存さ
せた下記の表2に示すの組成の反応液中で室温で反応さ
せ、生成するMn(III)− マロン酸複合体の270n
mの波長における吸光度の値を経時的に記録測定して行
った。1分間に吸光度を1.0増加させる活性を1単位
とした。
【0025】
【表2】
【0026】実施例2 アラゲカワラタケIFO−4917株由来のマンガンパ
ーオキシダーゼCH−1高生産変異株NTG III−55
を、下記の表3に示す低濃度窒素源培地(Bonnar
meらの培地)1.5Lを含むエアーリフト型2L培養
槽で28℃で培養した。培養2日目にダイズレクチン
(0.1g/L)とベラトリルアルコール(2.5m
M)を添加し、7日目に培養を終了した。ガラス濾紙で
濾過し、培養上清を採取した。20mMこはく酸緩衝液
(pH5.5)で一夜透析し、粗酵素液を得た。粗酵素
液のマンガンパーオキシダーゼ活性は、低濃度窒素源培
地1.5Lを含むエアーリフト型2L培養槽の場合6日
目で培養液1mlあたり3.6単位が検出できた。
【0027】
【表3】
【0028】低濃度窒素源培地1.5Lを含むエアーリ
フト型培養槽で日間培養し、20mMこはく酸緩衝液
(pH5.5)で透析して得た粗酵素液は、該緩衝液で
平衡化したゲル濾過カラム、DEAEトヨパール650
−M TSKgel(東ソー(株)社製)直径2.5c
m×18cmに通し、吸着画分を0Mから0.5Mまで
の濃度勾配でNaClを含む該緩衝液を通して溶出し7
mlずつ分画した。マンガンパーオキシダーゼ活性は2
つのピークに分かれて溶出し、マンガンパーオキシダー
ゼCH−1は後から溶出したピークである。
【0029】マンガンパーオキシダーゼCH−1のピー
ク画分を集め、アミコン社製限外濾過膜PM−30を用
いて限外濾過濃縮したところ、フェノールオキシダーゼ
活性がわずかに混入していたため、該緩衝液で平衡化し
たゲル濾過カラム、SephacrylS−200(直
径2.5cm×93cm)に通し、流速20ml/hr
とし、5mlずつ分画した。マンガンパーオキシダーゼ
CH−1画分を集め、限外濾過により濃縮した後、さら
にpH6.0酢酸緩衝液で平衡化したHPLCカラム、
MonoQ HR5/5(直径5mm×50mm)に通
した。流速を1.5ml/minとし、0〜0.5Mの
濃度勾配でNaClを含む該緩衝液で溶出した。検出は
280nmおよびヘム蛋白の特異吸収407nmの吸光
度で行なった。マンガンパーオキシダーゼCH−1は2
7分から29分にかけて溶出した。HPLCで分画した
マンガンパーオキシダーゼCH−1は、SDSポリアク
リルアミドゲル電気泳動により単一の酵素に精製されて
いることを確認した。
【0030】以下にマンガンパーオキシダーゼCH-1の性
質について調べた。 (1) 作用機序 本酵素の作用機序を確認するためにMn(II)を基質と
して表2の組成の反応液中で室温で反応させた。反応液
の可視および紫外吸収スペクトル(500〜200n
m)の経時的変化を測定した。結果は図1に示したよう
にMn(III) −マロン酸複合体の示す270nmの紫
外吸収の増加が認められ、Mn(II)からMn(III)
への酸化が確認できた。
【0031】(2) 至適pH及び安定pH 至適pHは、グリシン−塩酸緩衝液(pH3以下)、マ
ロン酸ナトリウム(pH3〜6)、りん酸ナトリウム
(pH6〜8)、トリス−塩酸緩衝液(pH7〜9)を
用いて測定した。酵素の活性は図2に示されるようにp
H5.5で最大となった。pH安定性は本発明の酵素を
10mMの所定の緩衝液中で50℃、一時間保持し活性
を測定した。結果は図3に示すとおりであって、pH
4.0〜6.0で安定であった。なお、pH2.2はグ
リシン−塩酸緩衝液、pH2.9は酒石酸ナトリウム緩
衝液、pH3.3〜6.5はマロン酸ナトリウム緩衝
液、pH5.6は酢酸ナトリウム緩衝液、pH7.1は
りん酸ナトリウム緩衝液、pH8.0,8.9はトリス
塩酸緩衝液、pH10.0〜10.6はグリシン−水酸
化ナトリウム緩衝液を用いて測定した。
【0032】(3) 至適温度及び熱安定性 至適温度は温度条件を変えて本発明の酵素活性を測定し
た。結果は図4に示す通りであって、その至適温度は4
5℃であった。熱安定性は20mMマロン酸緩衝液(p
H5.0)中40〜65℃の各温度で本発明の酵素を1
0分間放置し、酵素活性を測定した。その結果は図5に
示す通りであって、本発明の酵素は50℃まで安定であ
った。
【0033】(4) 等電点 アンホラインディスクゲルpH3.6〜5.7による等
電点電気泳動の結果より等電点は4.0であった。 (5) 分子量 SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により測定し、
約49,000であった。 (6) 金属イオン、阻害剤の影響 種々の金属塩を反応液中に1mMの濃度で添加し、活性
を測定した。結果は表4に示した通りであり、Hg2+
Al3+により弱く阻害を受け、Fe2+、Cu2+で強く阻
害された。金属イオンによる阻害は、反応中に生成した
Mn3+がこれらの金属イオンを酸化するために使われた
ため活性値が低くなったことも考えられる。
【0034】
【表4】
【0035】阻害剤等種々の物質を反応液中に1mMの
濃度で添加し、活性を測定した。結果は表5に示した通
りであり、シアン化カリウム、NaN3 、メルカプトエ
タノール、ジチオスレイトール、EDTAで強く阻害さ
れた。
【0036】
【表5】
【0037】(7) 本酵素はヘムタンパク質の特徴である
407nm付近の吸収があり、水溶液は褐色を呈する。 (8) 本酵素の作用には過酸化水素を必要とする。
【0038】比較例1 アラゲカワラタケIFO4917株を実施例1記載の方
法で培養しマンガンパーオキシダーゼCH−1を生産さ
せようとした場合、8日目で1mlあたり0.3単位の
酵素生産しか行われなかった。
【0039】比較例2 アラゲカワラタケIFO4917株をLeont'eveskiiら
の培養方法(Biochemistry-USSR, 56巻, (9), Part2, 1
173-1180 (1992))に従って培養し、本発明の酵素を生
産せしめようとした場合、マンガンパーオキシダーゼC
H−1活性は全く検出されなかった。
【0040】比較例3 アラゲカワラタケIFO4917株をDodsonらの
方法(FEMS Microbiology Letters, 42巻, 17-22(198
7))に従って培養した場合、マンガンパーオキシダーゼ
CH−1活性は16日目で0.6単位であった。
【0041】比較例4 アラゲカワラタケIFO4917株をBonnarme
らの方法(Appl. Environ. Microbiol., 56巻, No. 1,
210-217 (1990))に従って培養し本発明の酵素を生産せ
しめようとした場合、該酵素活性は4日目で1.6単位
であった。
【0042】
【発明の効果】本発明により、従来より知られているリ
グニン分解酵素生産菌とは異なる起源の微生物から、従
来の酵素より至適pHが高く、リグニンの低分子化、分
解に有効な、新規なリグニン分解酵素であるマンガンパ
ーオキシダーゼCH−1を製造することが可能となっ
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】Mn(II)を含む酵素反応液中で形成されたM
n(III) −マロン酸複合体の吸収スペクトルの経時的
変化(過酸化水素添加前、過酸化水素添加2分後、5分
後)を示す。
【図2】本発明の酵素の至適反応pHを示す。図中○は
酒石酸ナトリウム緩衝液、●はマロン酸ナトリウム緩衝
液、□は酢酸ナトリウム緩衝液、▲はりん酸ナトリウム
緩衝液を用いて測定したものである。
【図3】本発明の酵素のpH安定性を示す。
【図4】本発明の酵素の至適反応温度を示す。
【図5】本発明の酵素の熱安定性を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 9/08 C12N 1/14 JICSTファイル(JOIS)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 以下の性質を有するマンガンパーオキシ
    ダーゼCH−1(1) 作用過酸化水素存在下で二価の
    マンガンイオンを三価に酸化する。 (2) 基質特異性二価のマンガンを酸化する。 (3) 至適pHおよびpH安定性至適pHはpH5.
    5であり、pH4.0〜6.0の範囲で安定である。 (4) 至適温度および熱安定性至適温度は45℃であ
    り、50℃までの熱に安定である。 (5) 等電点は4.0付近である。 (6) 分子量は約49,000である。 (7) Hg2+、Al3+により弱く阻害を受け、F
    2+、Cu2+、シアン化カリウム、NaN 3 、メルカプ
    トエタノール、ジチオスレイトール、EDTAで強く阻
    害される。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のマンガンパーオキシダー
    ゼCH−1の生産能を有するアラゲカワラタケ由来の変
    異株であるNTGIII−55株(FERMP−1404
    6)を培地に培養し、その培養物からマンガンパーオキ
    シダーゼCH−1を採取することを特徴とするマンガン
    パーオキシダーゼCH−1の製造方法。
JP6694194A 1994-04-05 1994-04-05 マンガンパーオキシダーゼch−1及びその製造方法 Expired - Fee Related JP3161213B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP6694194A JP3161213B2 (ja) 1994-04-05 1994-04-05 マンガンパーオキシダーゼch−1及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP6694194A JP3161213B2 (ja) 1994-04-05 1994-04-05 マンガンパーオキシダーゼch−1及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH07274958A JPH07274958A (ja) 1995-10-24
JP3161213B2 true JP3161213B2 (ja) 2001-04-25

Family

ID=13330542

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP6694194A Expired - Fee Related JP3161213B2 (ja) 1994-04-05 1994-04-05 マンガンパーオキシダーゼch−1及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3161213B2 (ja)

Also Published As

Publication number Publication date
JPH07274958A (ja) 1995-10-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Koroljova‐Skorobogat'ko et al. Purification and characterization of the constitutive form of laccase from the basidiomycete Coriolus hirsutus and effect of inducers on laccase synthesis
Tien et al. Lignin peroxidase of Phanerochaete chrysosporium
Bonnen et al. Lignin-degrading enzymes of the commercial button mushroom, Agaricus bisporus
Gold et al. Manganese peroxidase from Phanerochaete chrysosporium
Desai et al. Isolation of laccase producing fungi and partial characterization of laccase
Praveen et al. Kinetic properties of manganese peroxidase from the mushroom Stereum ostrea and its ability to decolorize dyes
US10683487B2 (en) Myrmecridium flexuosum NUK-21, novel lactose oxidase isolated from Myrmecridium flexuosum NUK-21, and method for conversion of lactose into lactobionic acid by novel lactose oxidase
JP3523285B2 (ja) 糖分解酵素の製造法
KR100701819B1 (ko) 알데하이드 탈수소효소
US5024945A (en) Process for obtaining sarcosine oxidase from microorganisms
US4677062A (en) Process for producing bilirubin oxidase
EP0142169B1 (en) 2,5-diketo-d-gluconic acid reductase
JP3161213B2 (ja) マンガンパーオキシダーゼch−1及びその製造方法
US5149648A (en) Enzymes employed for producing pulps
JP2959181B2 (ja) マンガンパーオキシダーゼ及びその製造方法
JP2984552B2 (ja) ラッカーゼおよびその生産方法
US4463095A (en) Process for producing α-glycerophosphate oxidase
Kern Production and stability of lignin peroxidases of Phanerochaete chrysosporium cultivated on glycerol in the presence of solid manganese (IV) oxide
JP2573610B2 (ja) リグニンパ−オキシダ−ゼchおよびその製造方法
KR100516443B1 (ko) 미생물을 이용한 효소 락카아제의 제조방법
JP3018334B2 (ja) マンガンペルオキシダーゼnp−m2
JPH0956378A (ja) ラッカーゼiiおよびその生産方法
JP2613241B2 (ja) リグニンパーオキシダーゼmf−1およびその製造方法
JP2959182B2 (ja) フェノールオキシダーゼle及びその製造方法
JPS62220190A (ja) リグニン分解酵素およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Year of fee payment: 8

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090223

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090223

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100223

Year of fee payment: 9

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees