JPH086595B2 - 内燃機関の燃焼室 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は内燃機関の燃焼効率を改善するようにした燃
焼室構造の改良に関する。

（従来の技術） 内燃機関の燃焼室への吸気の流入効率を高めるため
に、吸気弁シートのシート面（当たり面）に接する球面
の一部により、燃焼室壁面を形成し、吸気弁と吸気弁シ
ートとの隙間から燃焼室に流入する吸気の流れを円滑化
する提案がある（実公昭51−21203号公報）。

ところで、各燃焼室に２つの吸気弁をもつ機関では、
主として部分負荷域における燃焼改善をねらって、シリ
ンダ内での吸気スワールを発生させる場合、通常シリン
ダ中心に対して同一サイドに各吸気弁を配置するため、
各吸気弁から燃焼室に流入した吸気流はシリンダ内周に
沿って半周したところで互いに正面から衝突し、したが
ってシリンダ内周に沿うスワール（横スワール）を維持
することが難しく、このためスワールはピストンの運動
方向への、いわゆる縦スワールが主流となる。

この縦スワールは、ピストンの下降に伴い、吸気ポー
トから燃焼室の斜め下方に向けて流入した吸気が、対向
する排気弁の下面を通った後、シリンダ内壁面、ピスト
ン頂面に当たり、縦渦を描くように上昇していく流れで
ある。

（発明が解決しようとする課題） ところが、吸気弁と吸気弁シートの隙間から流入し、
燃焼室壁面に沿って排気弁の下面を通り抜けるように流
れる吸気の主流は、排気弁側の壁面の凹凸等により、流
れが妨げられやすく、また、吸気ポートの軸線に沿って
斜めに流入した吸気は、排気弁の下面を通過した後、シ
リンダ内壁面に衝突した際に、その流入角度が水平に近
いほどエネルギを消失しやすく、このため縦方向のスワ
ールを吸入行程から圧縮行程にかけて十分に持続させる
ことが難しかった。

本発明はこのような問題を解決するための新規でかつ
有用な燃焼室構造を提供することを目的とする。

（課題を解決するための手段） そこで本発明は、燃焼室に吸気弁と排気弁を設け、吸
気弁の弁シートに連なる円錐面により燃焼室壁面の一部
を形成すると共に、吸気ポートの中心線を含む断面上に
おいて、シリンダ中心線を基準とする吸気弁の弁軸中心
線の傾きよりも前記円錐面の傾きを小さく設定して、前
記円錐面の頂点が弁軸中心線よりも燃焼室の内側に位置
するようにした。

（作用） 吸気弁から燃焼室に流入する吸気は、吸気弁シートと
の環状隙間から、これに連なる燃焼室壁の円錐面に沿っ
て多くの流れが案内される。円錐面に沿う流れは、流入
角度が不変のために渦などが発生しにくく、機関高回転
域でも吸気の充填効率を高く維持する。

他方、吸気ポートから燃焼室に流入した吸気の主流
は、そのまま円錐面に沿って対向する排気弁の下面へと
流れていこうとするが、円錐面の頂点が弁軸中心線より
も燃焼室内側にあって円錐面が傾いているため、吸気ポ
ートから流入した吸気は円錐面によってシリンダ中心線
方向に向けられる。

この結果、シリンダの反対側内壁に直角方向から衝突
する吸気成分が減り、縦スワールが強化される。

（実施例） 以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。

第１図、第２図に示す第１の実施例において、４はシ
リンダヘッド、11はシリンダブロック、12はピストン
で、シリンダヘッド４の下面とピストン12の上面との間
に燃焼室18が画成される。

シリンダヘッド４には、燃焼室18の天井壁面の中心部
に位置して点火栓17が取付けられ、この周囲に位置して
２つの吸気弁13並びに２つの排気弁14が配設される。

第２図の平面図に示すように、各吸気弁13と排気弁14
は、シリンダ列中心線を境にして互いに反対のサイドに
位置し、かつ各一対の吸気弁13と排気弁14が互いに対向
するように配置される。

各吸気弁13のシリンダ列中心線を境にして、シリンダ
ヘッド４の同一サイドに並列的に形成した吸気ポート５
と連通し、同様にして排気弁14も並列的な排気ポート７
と連通する。

そして、燃焼室18のシリンダヘッド側の天井壁面は、
各吸気弁シート６及び各排気弁シート８の着座面からほ
ぼ接線方向に延びる円錐面９及び10の一部をもって形成
される。

そして吸気弁13側の円錐面９は、吸気ポート５の中心
線を通る断面上、その頂点P₁が弁軸の中心線V₁よりも燃
焼室中心線（シリンダ中心線）Ｃに近い側に位置し、つ
まり円錐の頂点と底面中心とを結ぶ円錐中心線が中心線
V₁よりも小さな傾きをもつように（シリンダ中心線Ｃに
対して）設定され、吸気ポート５からの吸気の主流をシ
リンダ中心線方向に指向させるようになっている。

燃焼室18周辺部には、シリンダヘッド４の下面と同一
面の、スキッシュエリヤ15と16とが形成される。

以上のように構成され、次に作用を説明する。

吸気ポート５からの吸入空気は、吸気弁13が開くと吸
気弁シート６との環状隙間から燃焼室18へ流れ込み、そ
の主流は吸気弁シート６に連なる円錐面９に沿って案内
される。ところで円錐面９に沿う吸気の流れは渦を発生
することなく滑らかに流入し、高速回転域においても吸
気充填効率を高める働きをする。

吸入空気の主流は、吸気ポート５の傾斜角度に応じ
て、円錐面９に案内されつつ各吸気弁13からそれぞれ対
向する排気弁14の下面に向けて流れ込む。

ところが円錐面９は弁軸中心線よりも円錐中心線が起
き上がるように円錐中心線の傾きが小さくなっているた
め、吸気流れは真っ直ぐに対向する排気弁14の下面に向
かうのではなく、ピストン12の頂面に向かうように偏向
させられる。

このため、各吸気弁13からの燃焼室に流入した吸気流
は、従来に比較して対向するシリンダ内壁面に直交方向
から直接的に衝突する成分が減り、そのため減水のすく
ない強力な縦スワールを形成しやすくなる。

この結果、圧縮上死点付近で点火栓17による点火が行
なわれると、着火直後の火炎は前記スワールによる強力
なガス流動に基づき、火炎伝播が速やかに行なわれ、こ
れにより効率的な燃焼が実現する。

次ぎに第３図の実施例を説明すると、これは吸気弁13
の周囲の円錐面９の、排気弁14の方向への延長線と、排
気弁14の弁シート８の下面とが平行になるように、排気
弁14の弁軸の中心線C₂を傾けたもので、このようにする
ことにより、下方へと向かう吸気成分を強め、縦スワー
ルをさらに強化している。

（発明の効果） 以上のように本発明によれば、吸気弁から燃焼室に流
入する吸入空気は、吸気弁シートに連なる燃焼室壁の円
錐面に沿って渦などを生じることなく滑らかに案内さ
れ、高速回転域でも十分に高い吸気の充填効率を維持す
る一方、前記円錐面の中心線が弁軸中心線よりもシリン
ダ中心線に近くなるように傾きを少なくしたため、吸気
ポートから流入した吸気は円錐面に案内されてシリンダ
中心線方向に向けられ、このため、吸入行程から圧縮行
程にかけて減水の少ない強力な縦スワールを成起するこ
とができ、したがってこの縦スワールにより燃焼を促進
して、燃焼効率の大幅な改善が図れる。

【図面の簡単な説明】 第１図は本発明の第１の実施例を示す縦断面図（第２図
のＡ−Ａ断面）、第２図は同じく平面図、第３図は第２
の実施例を示す縦断面図である。 ４……シリンダヘッド、５……吸気ポート、６……吸気
弁シート、７……排気ポート、８……排気弁シート、
９、10……円錐面、11……シリンダブロック、12……ピ
ストン、13……吸気弁、14……排気弁、17……点火栓、
18……燃焼室。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】燃焼室に吸気弁と排気弁を設け、吸気弁の
   弁シートに連なる円錐面により燃焼室壁面の一部を形成
   すると共に、吸気ポートの中心線を含む断面上におい
   て、シリンダ中心線を基準とする吸気弁の弁軸中心線の
   傾きよりも前記円錐面の傾きを小さく設定して、前記円
   錐面の頂点が弁軸中心線よりも燃焼室の内側に位置する
   ようにしたことを特徴とする内燃機関の燃焼室。