JPH0864171A

JPH0864171A - メタルハライドランプ

Info

Publication number: JPH0864171A
Application number: JP19322994A
Authority: JP
Inventors: Koji Kawai; 浩司河合
Original assignee: Hamamatsu Photonics KK
Current assignee: Hamamatsu Photonics KK
Priority date: 1994-08-17
Filing date: 1994-08-17
Publication date: 1996-03-08

Abstract

(57)【要約】【目的】赤側の波長における色純度を向上させたメタ
ルハライドランプを提供する。【構成】１対の対向電極を有する発光管内に、希ガス
と、水銀と、金属または金属ハロゲン化物とを封入して
なるメタルハライドランプに、該金属または金属ハロゲ
ン化物を構成する金属元素として、エルビウム（Ｅｒ）
およびスズ（Ｓｎ）を含有させる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、屋内・屋外の照明の
他、液晶プロジェクタ（特にカラー液晶プロジェク
タ）、フィルムないしスライドプロジェクタ、オーバー
ヘッドプロジェクタ（ＯＨＰ）、カラープリンタ、顕微
鏡等の光源、あるいはファイバ用光源としても好適に使
用可能なメタルハライドランプに関する。

【０００２】

【従来の技術】メタルハライドランプは、発光管（放電
管）内に金属ハロゲン化物を封入した放電ランプであ
り、封入金属原子のスペクトル線や金属ハロゲン化物の
分子スペクトルの発光を利用して、高効率、高演色性を
実現し、あるいは特定の波長域に効率の良い発光を与え
ることができるランプである。

【０００３】このようなメタルハライドランプは、道
路、競技場等の屋外広域照明、店舗等の屋内照明に好適
に使用可能である。加えて、このランプを用いた場合に
は光源の小型化が容易であるため、メタルハライドラン
プは液晶プロジェクタ、フィルムないしスライドプロジ
ェクタ、ＯＨＰ、カラープリンタ、顕微鏡、あるいはフ
ァイバ用の光源として広く用いられている。

【０００４】このメタルハライドランプの発光管は、通
常は石英からなり、該発光管内には、少なくとも１種類
の金属ハロゲン化物に加えて、一般に、始動用の希ガス
（アルゴン等）と、ランプ電圧調節用の水銀（Ｈｇ）と
が封入される。

【０００５】メタルハライドランプにおいて、上記金属
ハロゲン化物を使用する理由は、以下の３つである。

【０００６】（１）金属単体では蒸気圧が低い場合で
も、金属ハロゲン化物とすれば、使用可能な蒸気圧が得
やすくなる。

【０００７】（２）金属単体が石英管を侵す場合でも、
金属ハロゲン化物は石英管を侵しにくい。

【０００８】（３）金属ハロゲン化物の使用により、良
好な分子スペクトル発光が得やすくなる。

【０００９】上記金属ハロゲン化物として希土類金属の
ハロゲン化物を用いた場合には、発光効率が増大し、且
つ色温度が高くなることが知られている。このような希
土類金属のハロゲン化物としては、ヨウ化スカンジウム
（ＳｃＩ₃）、ヨウ化ジスプロシウム（ＤｙＩ₃）、ヨ
ウ化ホルミウム（ＨｏＩ₃）、ヨウ化ツリウム（ＴｍＩ
₃）が使用されている。

【００１０】また、この希土類金属のハロゲン化物に加
えて、ハロゲン化スズ（ＳｎＩ₂）を封入することによ
り、発光管の失透を防止することも知られている。この
ハロゲン化スズを構成するハロゲンとして、ヨウ素
（Ｉ）に加えて臭素（Ｂｒ）を混合して用いた場合に
は、色温度の低下や色むらの改善が可能となる。

【００１１】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、臭素の
化合物はヨウ素の化合物に比べて蒸気圧が低い傾向があ
るため、臭素の混合により、発光効率が低下し、且つ分
光分布特性において水銀の共鳴線（Ｈｇ輝線）に近い５
８０ｎｍ付近の発光強度が強くなり過ぎて、色の再現性
が低下し、しかもランプ効率も低下するという傾向が生
ずる。

【００１２】このような色の再現性の低下およびランプ
効率の低下を防止するために、希土類ハロゲン化物たる
ヨウ化ジスプロシウム（ＤｙＩ₃）と、ハロゲン化スズ
とに加え、ハロゲン化インジウム、ハロゲン化タリウ
ム、およびハロゲン化リチウムから選択された少なくと
も１種の化合物を封入することが提案されている（特開
平５−４７３７８号公報）。

【００１３】しかしながら、近年、プロジェクタ用光源
としては、赤、緑、青の色純度（色の鮮やかさ）の向上
が更に要求されている。

【００１４】本発明の目的は、特に赤側の波長における
色純度を向上させたメタルハライドランプを提供するこ
とにある。

【００１５】

【課題を解決するための手段】本発明者は鋭意研究の結
果、発光管内に封入すべき金属または金属ハロゲン化物
を構成する金属として、エルビウム（Ｅｒ）とスズとを
組合せることが、上記目的の達成に極めて効果的である
ことを見出した。

【００１６】本発明のメタルハライドランプは上記知見
に基づくものであり、より詳しくは、１対の対向電極を
有する発光管内に、希ガスと、水銀と、金属または金属
ハロゲン化物とを封入してなるメタルハライドランプで
あって；上記金属または金属ハロゲン化物を構成する金
属元素として、エルビウム（Ｅｒ）およびスズ（Ｓｎ）
を含むことを特徴とするものである。

【００１７】

【作用】本発明のメタルハライドランプにおいては、ス
ズとの組合せにおいて希土類元素たるＥｒを用いること
により、スペクトルプロフィール上の６２２ｎｍと６３
０ｎｍ付近で、（Ｄｙ、Ｈｏ、およびＴｍを用いた場合
には存在しない）弱い輝線スペクトルが観測され、且
つ、該ランプを熱線透過・可視反射型の反射鏡に組込ん
だ場合には、該反射鏡に対向して配置したスクリーン上
での赤成分の純度向上（ｘｙ色度図上でｘが増大し、ｙ
が減少する）が特異的に認められる。このように赤純度
が増大したランプは、例えば、プロジェクター用光源と
して特に好適に使用可能となる。

【００１８】本発明者の知見によれば、本発明のメタル
ハライドランプにおいては、Ｅｒ³⁺イオンの電子構造に
由来するピンク色（他の希土類元素にはない）の呈色に
基づき、赤色側の弱い輝線発光分が得られるものと推定
される。

【００１９】以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本
発明を詳細に説明する。

【００２０】図１は、本発明のメタルハライドランプの
一態様を示す模式断面図である。図１を参照して、この
メタルハライドランプは、略楕円体状又は略球体状の発
光部１と、該発光部１の両端に設けられた円柱状の封止
部２ａおよび２ｂとからなる。発光部１の内部は中空で
あり、この中空部には後述する一対の対向電極の先端部
が設けられており、更に、後述するような種々の物質が
封入されている。

【００２１】図１に示す態様においては、上記発光部１
及び封止部２ａ、２ｂはいずれも石英ガラスからなる
が、石英ガラスに代えて、他の透光性材料（例えば、透
光性アルミナＡｌ₂Ｏ₃）を用いてもよい。本発明にお
いて、発光部１の形状は、上記した希ガス、水銀および
金属ないし金属ハロゲン化物をその内部に封入可能であ
る限り、特に限定されない。より具体的には、上記した
略楕円体状又は略球体状の他、例えば角柱状であっても
よい。

【００２２】発光部１の大きさは、上記メタルハライド
ランプへの入力電力の大きさ等によって適宜選択可能で
ある。例えば、１５０Ｗ入力の交流点灯用メタルハライ
ドランプにおいては、発光部１の外径は直径１１ｍｍで
あり、発光部１の長さ（球体長）は１４ｍｍであること
が好ましい。

【００２３】上記封止部２ａ、２ｂの形状は、上記発光
部１および後述する電極を支持し、且つ該電極に電力を
供給する機能を発揮できる限り、特に制限されない。よ
り具体的には、上記した円柱状の他、例えば角柱状であ
ってもよい。

【００２４】図１の態様においては、上記封止部２ａ、
２ｂの内部には、それぞれモリブデン箔３ａ、３ｂが封
着（sealing ）されており、このモリブデン箔３ａ、３
ｂの一端は、それぞれ白金（図示せず）を介して、外部
リード線４ａ、４ｂと接続されている。該モリブデン箔
３ａ、３ｂの他端は、それぞれ白金（図示せず）を介し
て、一対の対向電極５ａ、５ｂと接続されている。

【００２５】図１の態様においては、外部リード線４ａ
は、その一部が封止部２ａ内に封着されており、他の部
分はメタルハライドランプの外部にむき出しの状態とな
っている。なお、外部リード線４ｂは、同様に、その一
部が封止部２ｂ内に封着されており、他の部分はメタル
ハライドランプの外部にむき出しの状態となっている。

【００２６】電極５ａは、その一部が上記したように封
止部２ａ内に封着されており、他の部分の先端（即ち、
モリブデン箔３ａと接続されている側と反対側の一端）
が、発光部１の内部に突き出し、もう一方の封止部２ｂ
に同様に設けられた電極５ｂの先端と対向している。

【００２７】メタルハライドランプの使用に際しては、
図示しない電源から、上記した外部リード線４ａ、４ｂ
に電力が供給される。外部リード線４ａ、４ｂに与えら
れた電流は、それぞれ、モリブデン箔３ａ、３ｂを介し
て、電極５ａ、５ｂに印加され、該電極５ａと電極５ｂ
との間で放電が起こり、メタルハライドランプが発光部
１において発光する。

【００２８】通常、上記したような構成を有するメタル
ハライドランプには、種々の構成態様ないし使用態様が
あり、例えば交流点灯用ランプと、直流点灯用ランプ等
の種類がある。直流点灯用ランプでは、上記した一対の
電極のうち、一方が陽極用で他方が陰極用となっている
のに対し、交流点灯用ではこのような区別がない点で、
両者は相違する。

【００２９】次に、図１の態様のメタルハライドランプ
に使用可能な電極について説明する。

【００３０】図１を参照して、電極棒５１の一端におい
ては、その先端（図面左下）から若干電極棒５１の中心
によった部分に、必要に応じて、コイル６が巻き付けら
れている。このコイル６は畜熱機能を有しており、電極
棒５１の先端付近の温度をより高く維持する機能を有す
るが、電極棒５１の構成上、必須のものではない。

【００３１】図２の態様においては、電極棒５１および
コイル６を構成する材料としてはタングステンが用いら
れているが、放電用の一対の電極を構成することが可能
である限り、材料はこれに限定されない。例えば、タン
グステンに酸化トリウム（ＴｈＯ₂）をドープしたもの
（いわゆる「トリタン」）等の電子放射物質を、上記電
極棒５１ないしコイル６を構成する材料として用いても
よい。

【００３２】以下、上記発光管内に封入すべき成分につ
いて説明する。

【００３３】（希ガス）本発明のメタルハライドランプ
内に封入すべき希ガスは、始動用（ないし始動補助用）
のガスとしての機能を発揮できる限り特に制限されない
が、アルゴン（Ａｒ）、ネオン（Ｎｅ）、ヘリウム（Ｈ
ｅ）、キセノン（Ｘｅ）、クリプトン（Ｋｒ）から選ば
れたガスのうちの少なくとも１種を、上記希ガスとして
用いることが好ましい。

【００３４】上記希ガスの封入量は、２５℃で、５０〜
３００Ｔｏｒｒ（６．６５〜３９．９ｋＰａ）の圧力を
与える程度であることが好ましい。

【００３５】（金属元素等）本発明においては、発光管
内に封入すべき金属または金属ハロゲン化物を構成する
金属元素として、エルビウム（Ｅｒ）及びスズ（Ｓｎ）
を少なくとも用いる。Ｅｒ添加による効果、すなわち６
２２ｎｍ、６３０ｎｍ付近の弱輝線スペクトルを出現さ
せる点からは、上記Ｅｒの封入量は、０．２×１０^-6ｍ
ｏｌ／ｃｃ（発光管内容積を基準、以下同様）以上であ
ることが好ましい。更に、Ｓｎ添加量を同等としつつ該
ＳｎのＨｇ輝線抑制、スペクトルのベースライン上昇効
果を得る点からは、Ｅｒの封入量は、０．５×１０^-6ｍ
ｏｌ／ｃｃ以上であることが好ましい。

【００３６】上記Ｓｎの封入量は、スペクトルプロフィ
ールのＨｇ輝線の強度、およびｘｙ色度の点からは、
０．５×１０^-6ｍｏｌ／ｃｃ以上であることが好まし
い。

【００３７】本発明のメタルハライドランプは、金属元
素として上記ＥｒとＳｎとが封入されてなるものである
が、これらに加え、他の希土類元素（例えば、ネオジム
（Ｎｄ）、Ｄｙ、Ｈｏ、Ｔｍ）を単体またはハロゲン化
物として、必要に応じて封入してもよい。後述する実施
例において示すように、これらの「他の希土類元素」を
封入した場合にも、Ｅｒ封入による赤純度増大の効果
は、実質的に減殺されない。

【００３８】本発明のメタルハライドランプにおいて
は、上記ＥｒおよびＳｎに加えて、分光分布特性ないし
演色性の改善等の点から、タリウム（Ｔｌ、緑色波長の
強調効果あり）、インジウム（Ｉｎ、青色波長の強調効
果あり）、セシウム（Ｃｓ、放電の安定性向上効果あ
り）、リチウム（Ｌｉ、赤色波長の強調効果あり）、ナ
トリム（Ｎａ、黄色波長の強調効果あり）から選ばれた
元素のうちの少なくとも１種を、必要に応じて、金属な
いし金属ハロゲン化物として封入してもよい。これらの
元素のうち、Ｃｓ、Ｌｉ、およびＮａは、アルカリ金属
である。

【００３９】上記Ｔｌ、Ｉｎ、Ｃｓ、Ｌｉ、およびＮａ
から選ばれた少なくとも１種の元素の封入量（合計）
は、封入すべき元素の種類によっても異なるが、通常、
０．１×１０^-6〜２×１０^-6ｍｏｌ／ｃｃ程度であるこ
とが好ましい。

【００４０】（ハロゲン）本発明においては、発光管内
に封入すべき金属ハロゲン化物を構成するハロゲンは、
上記した金属元素との化合物を形成可能である限り特に
制限されないが、色温度の低下防止ないし色むらの改善
の点からは、ハロゲンとして、少なくとも臭素（Ｂｒ）
を含むことが好ましい。このＢｒは、Ｂｒ単体で用いて
もよく、また、必要に応じて、ヨウ素（Ｉ）、および塩
素（Ｃｌ）の少なくとも１種と、Ｂｒとを組合せて用い
てもよい。

【００４１】（他の態様）図３は、本発明のメタルハラ
イドランプの他の態様を示す模式側面図（上記した図１
の断面図の方向から、９０度の角度をなす方向から見た
側面図）である。

【００４２】この図３に示した態様のメタルハライドラ
ンプは、発光部１の外周の一部（発光部１の実質的に光
が透過する部分以外の部分）に配置された保護膜（ない
し保温膜）８を有する以外は、図１に示した態様のメタ
ルハライドランプと同様の構成を有する。

【００４３】この保護膜８は、セラミックの薄膜からな
ることが好ましい。より具体的には例えば、ＺｒＯ₂を
主成分とし、他にアルミナや無機酸化チタンを含むセラ
ミックの薄膜が好ましく用いられる。

【００４４】以下、実施例により本発明を更に具体的に
説明する。

【００４５】

【実施例】実施例１図３の模式側面図に示す構造を有するメタルハライドラ
ンプ（１５０Ｗタイプ）であって、図４の模式側面図に
示す外形寸法を有するランプを作製した。これらのラン
プにおいては、後述する表１〜表４（試料Ｎｏ．１〜１
０）に示す物質をそれぞれ発光管内に封入した。ランプ
の電気定格は全て、８０Ｖ、１．９Ａ（１５０Ｗ）と同
等のものとして作製した。電源は周波数３００Ｈｚ交流
定電力電源を使用した。

【００４６】本実施例で作製したメタルハライドランプ
の他の構成は、以下の通りであった。

【００４７】内容積：約０．６ｃｃ希ガス（Ａｒガス）：５０〜３００（Ｔｏｒｒ）電極：タングステン水銀量：１２ｍｇ発光管材質：石英（ＳｉＯ₂）電極間距離：５ｍｍ発光部外径：１１ｍｍ長さ：１４ｍｍ＜測定法１＞図５の模式側面図に示す構成を有する演色
測定システムを用いて、上記ランプのスペクトルプロフ
ィール（各波長ごと２２０〜８００ｎｍでの相対発光強
度）を測定した。

【００４８】＜測定法２＞図６の模式断面図に示す構成
を有する測定システムを用いて、上記ランプのｘｙ色度
を測定した。

【００４９】より具体的には、上記で作製した試料ラン
プを放物反射鏡（外径φ１１０ｍｍ、Ｆ＝１３）内に組
み込んだ後に発光させ、該発光を４０インチスクリーン
に投写し、スクリーン中心の照度とＸＹ色度とを、Ｒ
（赤）Ｇ（緑）Ｂ（青）の各フィルターを色彩色差計
（ミノルタＣＬ１００）の受光面前面に置くことにより
測定した。

【００５０】上記反射鏡としては、図７のグラフに示す
ような透過率を有する赤外透過可視反射膜を有するもの
を使用した。上記Ｒ、Ｇ、Ｂの各フィルターとしては、
図８のグラフに示すような透過率を有するもの（一般の
ＲＧＢ光分割式の液晶プロジェクターに使用されている
ものとほぼ同様のフィルター）を、それぞれ用いた。こ
の際、図６に示す中心照度（５番）／周辺照度（１番）
との比率が４以下となるように調整し、スクリーンの照
度分布がおおむね均一になるようにした。

【００５１】＜測定結果＞上記測定により得られた封入
物組成と、スクリーン中心照度、ＸＹ色度、電気特性と
を、下記表１〜表５にそれぞれ示す（これらの表のう
ち、表３および４は、ＴｌあるいはＩｎを添加したもの
について示す）。

【００５２】

【表１】

【００５３】

【表２】

【００５４】

【表３】

【００５５】

【表４】

【００５６】

【表５】

【００５７】試料Ｎｏ．１（本発明のメタルハライドラ
ンプ）については、図９にスペクトル、図１２にＸＹ色
度図、図１３に赤色付近（５９０〜７５０ｎｍ）の拡大
スペクトルを示す。一般に、図１２のＸＹ色度図の三角
形の面積が大きい程、プロジェクター用光源として適す
るとされている。すなわち、フィルター等の使用により
該三角形の面積を小さくする調整は可能であるが、逆の
調整（該三角形の面積を大きくすること）は不可能であ
る。

【００５８】上記した測定結果から、本発明のメタルハ
ライドランプにおいては、赤側の色純度が向上している
ことが判明した。

【００５９】試料Ｎｏ．２（Ｅｒを含まない従来例）に
ついては、図１０にスペクトル、図１２にＸＹ色度、図
１３に拡大スペクトルを示す。これらの結果から、この
Ｎｏ．２の試料においては、上記Ｎｏ．１（本発明）に
比べ、６２２ｎｍ、６３０ｎｍ付近の弱い輝線がなくな
っており、この分だけ赤純度が落ちていることが判明し
た。Ｎｏ．２試料の６２２ｎｍのＸＹ色度は、図１２に
示したように（Ｘ０．６９、Ｙ０．３１）であり、６３
０ｎｍの色度は（Ｘ０．７１、Ｙ０．２９）であった。
上記６２２ｎｍ、６３０ｎｍ付近の弱い輝線があると、
Ｎｏ．２ではＲの（Ｘ＝０．６２４、Ｙ＝０．３４９）
であったものが、Ｅｒを入れる（試料Ｎｏ．１）ことで
上記輝線が発生し、赤側に引張られる（図１２のＮｏ．
１）、すなわち、Ｘ値が増大して、Ｙ値が減少し、赤純
度が増す（赤があざやかになる）ことが判明した。

【００６０】試料Ｎｏ．３（Ｓｎを含まない従来例）に
ついては、図１１にスペクトル、図１２にＸＹ色度を示
す。

【００６１】図１１に示すように、スペクトルのベース
は上記Ｎｏ．１、Ｎｏ．２に比べて低下し、５８０ｎｍ
付近のＨｇ輝線スペクトルが増大していることが判明し
た。また、ＸＹ色度図（図１２）に示したように、赤純
度が悪いことが判明した。

【００６２】試料Ｎｏ．４（本発明）、Ｎｏ．５（本発
明）は、上記Ｅｒに加えて他の希土類Ｎｄ、Ｄｙを封入
した本発明の態様である。これらの態様においては、上
記（表２）に示したように、上記試料Ｎｏ．１とほぼ同
じ特性が得られることが判明した。

【００６３】試料Ｎｏ．６（本発明）は、上記Ｅｒ、お
よびＳｎに加えて、Ｔｌ（Ｃｓ）を加えた本発明の態様
である。この試料Ｎｏ．６のスペクトルを図１５に示
す。図１５に示したように、５４０ｎｍ付近のＴｌの輝
線が出る以外は、試料Ｎｏ．１のスペクトルとほぼ同じ
特性であることが判明した。このＮｏ．６においては、
Ｇｒｅｅｎの強度が増大し、ＸＹ色度もＲ、Ｂは試料Ｎ
ｏ．１と実質的に同等であるが、Ｘが減少し、Ｙが増大
して緑色の純度が向上していた。

【００６４】試料Ｎｏ．７（本発明）は、上記した試料
Ｎｏ．６に、更にＮｄ、Ｉｎを加えた本発明の態様であ
る。この態様においては、Ｉｎの添加により、青色強度
が増大していた。

【００６５】上記した試料Ｎｏ．４〜Ｎｏ７の測定結果
から、Ｅｒ、Ｓｎをベースに他の希土類を加えた場合に
も、本発明の効果は実質的に阻害されないことが判明し
た。Ｉｎ、Ｔｌを添加した場合には、赤色は影響される
ことなく、青、緑を増強させることが可能であった。同
様に、リチウム（Ｌｉ）は赤色、ナトリウム（Ｎａ）は
黄色を増強することが可能と推定された。

【００６６】試料Ｎｏ．８およびＮｏ．９は、Ｅｒを含
まない従来例であり、Ｎｄ、Ｄｙ、Ｈｏ、Ｔｍの各希土
類と、Ｓｎ、Ｉｎ、Ｔｌが封入されたランプである。図
１４の赤色部拡大スペクトルに示したように、これらの
従来例においては、６２０ｎｍ、６３０ｎｍ付近の輝線
あるいは、盛り上がりが発生してないことが判明した。
上記した本発明に基づく試料（試料Ｎｏ．１およびＮ
ｏ．４〜７）の測定結果と、これらの試料Ｎｏ．８〜９
の測定結果との比較からも、上記したＥｒの添加効果は
支持される。

【００６７】本実施例においては、Ｓｎの量の増減が、
スペクトルプロフィールのＨｇ輝線の強度、およびＸＹ
色度に影響を与える点を考慮して、上記したＩｎ、Ｔｌ
添加試料以外に関しては、Ｓｎ添加量が同一量になるよ
うに調整した。

【００６８】実施例２電気定格を２５０ｗとした以外は、実施例１と同様にメ
タルハライドランプを作製して、そのスペクトルおよび
色度を測定したところ、下記表６に示すように、実施例
１とほぼ同様の結果が得られた。

【００６９】

【表６】

【００７０】

【発明の効果】上述したように本発明によれば、１対の
対向電極を有する発光管内に、希ガスと、水銀と、金属
または金属ハロゲン化物とを封入してなるメタルハライ
ドランプであって；上記金属または金属ハロゲン化物
を構成する金属元素として、エルビウム（Ｅｒ）および
スズ（Ｓｎ）を含むことを特徴とするメタルハライドラ
ンプが提供される。

【００７１】本発明のメタルハライドランプにおいて
は、上記エルビウム（Ｅｒ）のハロゲン化物と、ハロゲ
ン化スズとの組合せに基づき、赤側の波長における色純
度の向上が可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のメタルハライドランプの一実施態様を
示す模式断面図である。

【図２】本発明のメタルハライドランプにおいて好適に
使用可能な電極の一例を示す模式斜視図である。

【図３】本発明のメタルハライドランプの他の実施態様
を示す模式側面図である。

【図４】実施例１で作製した本発明のメタルハライドラ
ンプの外形寸法を示す模式側面図である。

【図５】メタルハライドランプの演色性を測定するため
の測定システムの一例を示す模式図である。

【図６】メタルハライドランプのｘｙ色度を測定するた
めの測定システムの一例を示す模式断面図である。

【図７】実施例でメタルハライドランプと組合せて用い
た反射膜の透過率特性を示すグラフである。

【図８】実施例で用いたＲ、Ｇ、Ｂの格フィルターの透
過率特性を示すグラフである。

【図９】実施例１で作製した本発明のメタルハライドラ
ンプのスペクトルを示すグラフである。

【図１０】Ｅｒを含まない従来のメタルハライドランプ
のスペクトルを示すグラフである。

【図１１】Ｓｎを含まない従来のメタルハライドランプ
のスペクトルを示すグラフである。

【図１２】実施例１で作製したメタルハライドランプ試
料Ｎｏ．１〜３のｘｙ色度を示すｘｙ色度図である。

【図１３】実施例１で作製したメタルハライドランプ試
料Ｎｏ．１および２の赤色付近拡大スペクトルを示すグ
ラフである。

【図１４】従来のメタルハライドランプの赤色付近拡大
スペクトルを示すグラフである。

【図１５】実施例１で作製した本発明のメタルハライド
ランプ（Ｔｌ、Ｃｓ添加）のスペクトルを示すグラフで
ある。

【符号の説明】

１…発光部、２…封止部、３ａ，３ｂ…モリブデン箔、
４ａ，４ｂ…外部リード線、５，５ａ，５ｂ…電極、５
１…電極棒、６…コイル、８…保護膜。

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】１対の対向電極を有する発光管内に、希
ガスと、水銀と、金属または金属ハロゲン化物とを封入
してなるメタルハライドランプであって；上記金属また
は金属ハロゲン化物を構成する金属元素として、エルビ
ウム（Ｅｒ）およびスズ（Ｓｎ）を含むことを特徴とす
るメタルハライドランプ。
【請求項２】前記ハロゲンとして、少なくとも臭素
（Ｂｒ）を含む請求項１記載のメタルハライドランプ。
【請求項３】前記ハロゲンとして、臭素単体を含む請
求項２記載のメタルハライドランプ。
【請求項４】前記ハロゲンとして、ヨウ素（Ｉ）また
は塩素（Ｃｌ）から選ばれた少なくとも１種と、臭素と
を含む請求項２記載のメタルハライドランプ。
【請求項５】前記金属または金属ハロゲン化物を構成
する金属元素として、タリウム（Ｔｌ）、インジウム
（Ｉｎ）、セシウム（Ｃｓ）、リチウム（Ｌｉ）、およ
びナトリウム（Ｎａ）から選ばれた少なくとも１種の金
属を含む請求項１記載のメタルハライドランプ。
【請求項６】前記Ｅｒの封入量が０．２×１０^-6ｍｏ
ｌ／ｃｃ（発光管内容積基準）以上である請求項１記載
のメタルハライドランプ。
【請求項７】前記Ｓｎの封入量が０．５×１０^-6ｍｏ
ｌ／ｃｃ（発光管内容積基準）以上である請求項１記載
のメタルハライドランプ。
【請求項８】前記希ガスとして、アルゴン（Ａｒ）、
ネオン（Ｎｅ）、ヘリウム（Ｈｅ）、キセノン（Ｘ
ｅ）、およびクリプトン（Ｋｒ）から選ばれた少なくと
も１種のガスを含む請求項１記載のメタルハライドラン
プ。
【請求項９】前記発光管を構成する材料が、石英また
は透光性アルミナである請求項１記載のメタルハライド
ランプ。
【請求項１０】前記電極を構成する材料が、タングス
テン、または酸化トリウム（ＴｈＯ₂）をドープしたタ
ングステンである請求項１記載のメタルハライドラン
プ。