【発明の詳細な説明】
ターンテーブル上の情報ディスクのクランプ装置
本発明は、ターンテーブル上の情報ディスクのクランプ装置に関するものであ
り、本クランプ装置はフレームと、フレームに支持され、かつ回転軸線の回りを
回転可能な、情報ディスクを支持するターンテーブルと、第一および第二の位置
の間で移動可能で、第一の位置でターンテーブル上の情報ディスクを押さえる押
さえ部材を有し、第一の位置から第二の位置への移動の際に前記押さえ部材をタ
ーンテーブルから離れるように移動させるために前記押さえ部材と協調し、また
第二の位置でディスク押さえ部材を保持するキャリアとを具えたものである。
こうしたクランプ装置としてはドイツ特許出願公開第3303705号(ここに文献
として引用する)記載のものが知られている。この既知のクランプ装置は、駆動
スピンドル上に取り付けたターンテーブルを具え、ターンテーブルは情報ディス
ク、例えば光ディスクの支持面を有し、レーザービームによって機械的な接触無
しに走査可能である。この既知のクランプ装置はまた磁力手段と、カバーの形に
形成したディスク押さえ部材とを設けたキャリアを具え、前記カバーはハウジン
グに回動可能に取り付けられ、押さえ部材がターンテーブルの支持面に対して第
一の磁力によって情報ディスクを押さえる閉鎖位置と、ディスク押さえ部材が第
二の磁力によって保持される第二の位置との間で移動可能である。この目的のた
めに、磁力手段はディスク押さえ部材に固定したリング形の永久磁石と、カバー
に固定した強磁性体リングとを具えている。カバーの閉鎖位置において、永久磁
石はターンテーブル上の情報ディスクを押さえるため、強磁性体製のターンテー
ブルと協調する。強磁性体リングによる影響を防ぐため、ディスク押さえ部材に
は防護キャップを設けている。開放位置において、永久磁石は、ディスク押さえ
部材をその重量に逆らって浮上位置に保つため強磁性体リングと協調する。
この既知のクランプ装置の欠点は、カバーの開放位置と閉鎖位置との間の移動
の間に、ディスク押さえ部材が比較的大きく、しかし特に急激に変位し、その結
果ノイズが生じることである。もう一つの欠点は、装置全体の高さが比較的高く
なり、かつ比較的多くの部品を必要とすることである。
本発明の目的は、簡単で低ノイズの、情報記録担体のターンテーブル上へのク
ランプ装置を提示することである。
本発明に係るクランプ装置は、キャリアが弾性手段を具え、この弾性手段がキ
ャリアの第一の位置においてディスク押さえ部材に相対的に接触しない位置にあ
り、かつキャリアの第二の位置においてディスク押さえ部材を保持することを特
徴とする。従って前記弾性手段を前記キャリアの第一の位置にあるように形成か
つ配置し、この第一の位置で情報の記録および/または読み取りが可能で、ディ
スク押さえ部材がターンテーブルと共にキャリアまたはその部品と完全に離間し
て回転可能である。簡単な磁石のシステムを、例えばターンテーブル中の永久磁
石およびキャリア中の軟磁性体部品によって形成し、ターンテーブル上に置いた
情報ディスクに必要な圧力を加えることを可能とする。キャリアが第一の位置か
ら第二の位置へ移動すると、ディスク押さえ部材はターンテーブルから滑らかに
離れ、キャリアのディスク押さえ部材に相対的に小さな変位により、弾性手段は
ディスク押さえ部材と適切に接触し、圧力によりディスク押さえ部材は弾性手段
に対して保持位置に置かれる。キャリアが第二の位置から第一の位置へ動くと、
ディスク押さえ部材は徐々にターンテーブルに接近し、そのためディスク押さえ
部材とターンテーブル上に置かれた情報ディスクとの接触が、より厳密に規定し
た状態で行われる。このように、本発明に係るクランプ装置は、第一の位置にお
けるディスク押さえ部材の自由な回転を許容する比較的単純な手段を具え、かつ
第二の位置において騒音が発生しないことを保証する。これらの手段は、最小限
の装置全体の高さを必要とするのみである。本発明に係るクランプ装置のキャリ
アは、ハウジングに回動可能に取り付けたカバーにより形成される。
本発明に係るクランプ装置の実施例は、弾性手段がディスク押さえ部材の周端
縁と協調する接触面を有する弾性舌状部を具え、前記接触面はディスク押さえ部
材と対面することを特徴とする。第二の位置において前記弾性舌状部の接触面は
ディスク押さえ板のロックを確実にする。
本発明に係るクランプ装置の実施例は、前記弾性舌状部をディスク押さえ板に
隣接して配置し、かつキャリアの第一の位置において前記弾性舌状部がターンテ
ーブルの回転軸線にほぼ平行に延在し、前記接触面を前記弾性舌状部の突出部に
設け、この突出部の少なくとも一部がディスク押さえ部材に対面し、かつキャリ
アの第一の位置においてディスク押さえ部材の周端縁とターンテーブルの間に配
置され、またキャリアの第二の位置において周端縁に対して緊密に係合すること
を特徴とする。前記突出部は、前記弾性舌状部のほぼV字型の自由端部であり、
前記弾性舌状部のV字型の端部を成す部分がディスク押さえ部材から見て広がっ
ていることが望ましい。正しい操作のために、前記舌状部の部分が同じ長さであ
ることは必ずしも必要ではない。
本発明に係るクランプ装置の一つの実施例は、キャリアの第二の位置において
前記弾性舌状部が前記ディスク押さえ部材をキャリアの止め部に対して押しつけ
ることを特徴とする。この止め部はキャリアと一体化することが望ましく、また
キャリアの第一の位置においてディスク押さえ部材の周端縁とターンテーブルと
の間に設置することが望ましい。周端縁と止め部との間の間隔は小さいことが望
ましい。
本発明に係るクランプ装置の実用的な実施例は、前記弾性手段が合計3個の弾
性舌状部を具え、これらがディスク押さえ部材の周端縁に沿って等間隔で配置さ
れることを特徴とする。本実施例において、ディスク押さえ部材はキャリアの第
二の位置で3個の等間隔の留め具によって効率的に保持される。
本発明に係るクランプ装置の一つの実施例は、キャリアを弾性手段と共に一体
の射出成型品として製造することを特徴とする。弾性手段、特に一つまたは複数
の舌状部が、本実施例では簡単に、また効率的に実現される。製造に用いる合成
材料として、例えばアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)がある。
加圧ばねを利用したディスク押さえ機構は、特開平3-46153(ここに文献とし
て引用する)により知られていることに注目したい。加圧ばねは、その一端をホ
ルダーに直接取り付け、他端をディスク押さえ部材に中間素子によって取り付け
る。このホルダーはターンテーブルにより近い第一の位置とターンテーブルから
より離れた第二の位置との間を移動可能である。ホルダーの第一の位置において
、加圧ばねはディスク押さえ部材によってターンテーブル上のディスクに圧力を
加える。ホルダーの第二の位置において、ディスク押さえ部材は加圧ばねによっ
て吊るされる。この既知の機構の欠点は、加圧ばねが常にディスク押さえ部材と
連結し、そのためディスクをクランプしている間はディスク押さえ部材が加圧ば
ねを有するホルダーと相対的に自由回転できない、すなわち非接触とならないこ
とである。
本発明はまた、情報ディスクの光走査を行う走査装置に関するものである。こ
うした装置は前述のドイツ特許出願公開第3303705号により知られている。この
既知の装置は、例えば光ディスクの読み取りに適したディスクプレーヤーであり
、光走査システムを有するハウジングを具えている。
本発明に係る、情報ディスクの光走査を行う走査装置の第一の例は、本発明に
係るターンテーブル上の情報ディスクのクランプ装置を具え、さらにターンテー
ブルの回転軸線へ向かう、および離れる方向に移動可能な対物レンズを有するユ
ニットをも具えている。
本発明に係る、情報ディスクの光走査を行う走査装置の第二の例は、ハウジン
グと、ターンテーブルおよびターンテーブルへ向かう、および離れる方向に移動
可能な対物レンズを含むユニットとを具え、望ましくは本発明に係るターンテー
ブル上の情報ディスクのクランプ装置を具え、さらにハウジングに回動可能に取
り付けたカバーと、望ましくはハウジングに配置したダンパーとを具え、前記カ
バーは、前記ダンパーの歯付ホイールと協調する湾曲した歯付表面のあるアーム
を有し、また本装置は、カバーを開く間に歯付ホイールと歯付表面との間の、増
加する垂直方向の力を発生させるために設けた手段を具えている。本装置の利点
は、カバーのより厳密に規定された動作と、開放位置でのカバーの信頼性の高い
ロックとを最少の部品数で保証することである。
本発明に係る、情報ディスクの光走査を行う前述の走査装置の一実施例は、前
記弾性手段が歯付ホイールに対して傾斜し、歯付表面の少なくとも一部が延在し
た弾性フィンガーを具え、この弾性フィンガーが歯付表面と隣接する引込んだ端
部を有し、また開放位置でカバーをロックするために歯付ホイールと協調するこ
とを特徴とする。カバーを開く間は、歯付ホイールは前記弾性フィンガーに荷重
を加え、カバーの開放位置において弾性フィンガーを開放することができ、それ
によってカバーはロックされることとなる。
本発明はまた、本発明に係る走査装置を設けた光プレーヤーに関するものであ
る。
以下、図示の実施例を参照して本発明についてより詳細に述べる。
図1は本発明の実施例に係る、カバーを有する走査装置の一部を分解して示す
斜視図である。
図2は図1に示すカバーをディスク押さえ部材と同様に斜め下方から見た図で
ある。
図3は線図で示したディスク押さえ部材を有するカバーが開放位置にあること
を、図2のIII-III線に沿った断面図で示すものである。
図4は線図で示したディスク押さえ部材を有するカバーが閉鎖位置にあること
を、図2のIII-III線に沿った断面図で示すものである。
図1に示す、本発明に係る走査装置は、光プレーヤー、特にCDまたはCDI
プレーヤーの一部を成すものである。走査装置は、フレーム1を有するハウジン
グ1aを具え、ハウジング内には電気光学ユニット3が弾性および減衰固定手段に
よって取り付けられ、またカバーが2本の旋回軸5によってフレーム1に回動可
能に取り付けられている。
本実施例における走査装置3は、欧州特許出願公開明細書第541162号(特開平
5-217188、ここに文献として引用する)に開示された形式の対物レンズ9を具え
ている。情報の光記録および/または読み取り用としてそれ自体公知の走査ユニ
ット3は電気的に駆動可能なターンテーブル11を具え、ターンテーブル11は軸線
11aの回りに回転可能であり、CDまたはCDIのような書き込み可能および/
または読み取り可能な光情報ディスクを支持し、かつ心決めを行う。機械的案内
手段13はスライド15を支持および案内する用をなし、回転軸線11aに対して半径
方向への移動が可能であり、また対物レンズ9を移動させるアクチュエータを取
り付けている。スライド15は、対物レンズ9を、ターンテーブル11に対して半径
方向に比較的大きな距離を移動させるための用をなし、またアクチュエータは対
物レンズ9の合焦およびトラッキングのための比較的小さな移動を行う。走査ユ
ニットおよびアクチュエータの詳細な内容については、前述の欧州特許出願公開
明細書第541162号を参照されたい。
本発明に係る走査装置は、ターンテーブル11上への情報ディスクのクランプ装
置を具えている。前記フレーム1および前記ターンテーブル11に加えて、前記ク
ランプ装置はディスク押さえ部材17を有するキャリアを具え、このキャリアは第
一の位置と第二の位置との間を移動可能で、かつカバー7により形成される。カ
バー7の閉鎖位置に対応する第一の位置において、ディスク押さえ部材17はター
ンテーブル11に載せた情報ディスクを保持するため、ターンテーブル11と協調す
る。この位置において、ディスク押さえ部材17はカバー7と完全に離間し、また
必要な締めつけ力は磁石システムによって与えられ、この磁石システムは第一の
部分16、例えば押さえ部材17中に配置した永久磁石および、第二の部分18、例え
ばターンテーブル11中に配置した軟磁性体ディスクから成る。図4はカバー7が
第一の位置にあることを示す。図3はカバー7が第二の位置、すなわち開放位置
にあることを示し、ここではディスク押さえ部材17がカバーによって支持されて
いる。
図2にも示すように、カバー7は、本実施例では3個の弾性舌状部19を具える
弾性手段を有し、これらはカバーの第一の位置では押さえ部材17から離間し、ま
たカバー7の第二の位置では押さえ部材17を保持する。弾性舌状部19はディスク
押さえ部材17の回りの仮想の円筒表面に突き出しており、カバーの閉鎖位置での
ターンテーブル11の回転軸線11aとほぼ並行に、その軸線方向に延在する。弾性
舌状部19およびカバー7は、例えばABSの一体射出成型品として形成すること
が望ましい。
弾性舌状部19はそれぞれ突起、特にディスク押さえ部材17と対面する接触面21
を有するV字形の端部19aを有する。カバー7の第一の位置、すなわちディスク
押さえ部材17がターンテーブル11上にある場合、端部19aはディスク押さえ部材1
7の周端縁17aと離間し、かつ周端縁17aとターンテーブル11との間に位置する。
カバー7の第二の位置において、ディスク押さえ部材17の周端縁17aは弾性舌状
部19の接触面21とカバー7の一つまたはそれ以上の止め部との間で緊密に嵌合す
る。本実施例ではカバー7は3個の止め部23を有し、これらはそれぞれカバー7
の円筒形の壁25上に固定した突起として形成している。
ハウジング1a内に設置されたダンパ−31はフレーム1に固定され、カバー7の
アーム37上に設けた歯付表面35と協調する歯付ホイール33を有している。少なく
とも一部が曲がりもしくは湾曲面をなす歯付表面35は、少なくとも一部がアーム
37の弾性フィンガー39上に延在する。カバー7の閉鎖位置から開放位置、および
その逆の移動の間、歯付ホイール33は歯付表面35と噛み合う。歯付表面35は、カ
バーの開放時にはフィンガー39に、増加する力が加わるように形成かつ配置され
、この力は旋回軸5の方向に加わる。本実施例では、この力は歯付表面35がフィ
ンガー39の位置でより緩やかな曲率を有しているか、または全く曲率を有してい
ない場合に働く。開放位置において、歯付ホイール33はフィンガー39の引込んだ
端部41に達し、その結果フィンガー39はわずかに跳ね返り、歯付ホイール33およ
びそれによってカバー7を止める。カバー7を閉じるために歯付ホイールが歯付
表面と噛み合って戻るには小さな力で済む。