【発明の詳細な説明】
発明の名称
ニトロベンジルマスタード四級塩およびその低酸素選択性細胞毒剤としての利用
技術分野
本発明は、生物還元により細胞毒性を有する窒素マスタードを放出する性質を
有する、新規な芳香族ビス(2−ハロエチル)および芳香族ビス(2−アルキル
スルホニルオキシエチル)第4級アンモニウム塩に関する。これらの化合物は低
酸素性のほ乳動物および微生物の細胞に対して選択的に細胞毒性を及ぼす。本発
明は、さらに選択的低酸素細胞毒、細胞毒の還元的活性化プロドラッグ、および
/または低酸素性細胞の放射線増感剤、および/または抗癌剤としてのこれら化
合物の利用に関する。本発明は、また本発明の化合物を製造するための新規な中
間体にも関する。
発明の背景
種々の化学療法剤が知られている。これら化学療法剤のうちのいくつかは腫瘍
細胞を、それがどこに存在するかに拘わらず、選択的に破壊することによって癌
を治療する目的で投与される。多くの場合、腫瘍細胞は通常の細胞と僅かしか違
わないので高度に選択的な細胞毒の薬剤を得ることは困難である。一つの相違は
癌細胞がその成長をコントロールされることなく細胞分裂を繰り返すことである
。しかし、分裂しつつある細胞を攻撃するための治療は、副作用を最小にするよ
うなプロトコールを使用しても、細胞分裂を続けている他の組織、例えば皮膚お
よび髪、造血組織、腸管上皮組織、等の細胞にも作用する。時に腫瘍[例えば、
セルトリ(Sertoli)細胞腫瘍]は特殊な生化学的な性質を有することがあり、
このような細胞に作用する特殊な化学療法剤が考えられる。一般的な固形腫瘍で
あって、その中心部で細胞分裂が僅かにしか起こらない、または細胞分裂がまっ
たく起こらない腫瘍については、血液の供給が不完全であることから、治療とし
て実施できることは比較的限定されている。毛細管が低酸素性領域に増殖する傾
向を有する一方で、隣接する領域のコントロールされない細胞の増殖が新たに作
られた循環床への血液供給を阻害する傾向を持つのである。
固形腫瘍の低酸素濃度領域に存在する細胞(すなわち低酸素性細胞)は放射線
治療および従来の化学療法のいずれに対してもその効果を制限するものと考えら
れる。しかし、低酸素性細胞は通常固形腫瘍に限定されていることから、このよ
うな低酸素性の存在がある種の治療の機会を提供することもある。従って、低酸
素性細胞をターゲットとする薬剤(低酸素活性化細胞毒)は腫瘍に対して特異性
を有する。生物還元性薬の活性化に通常要求される過度の低酸素性領域(<0.
01%O2)は殆んどの固形腫瘍においてわずかな部分しか占めていないので、
活性化された細胞毒の拡散し得る範囲は限定されたものであることが好ましい。
低酸素選択性細胞毒(HSC's)は固形腫瘍の低酸素性微細環境を化学療法に
とって好都合なものに変換する可能性を有する。
1968年に発行された論文(Papanastassiou,Z.B.;Bruni,R.J.;White
,E.V.、「癌細胞破壊性物質VI.新規不活性生物アルキル化剤」Experientia,1
968,24,325)に、ある種の第四級窒素マスタードの不活性化生物アルキル化剤
としての使用について検討が行なわれている。ダニングの白血病およびウオーカ
ーの癌肉腫に対する予備的なスクリーニングにおいてある種の細胞毒性が見られ
た。この論文では白血病に見られるようなびまん性腫瘍に関して、チオールによ
るこれらの化合物の活性化が提案されたが、これらの化合物または類似の化合物
が、固形性腫瘍において見られるような低酸素性条件下で、選択的に細胞毒のメ
クロレタミン(mechlorethamine)を放出させるのに有用であることについては
いかなる示唆または教示も行なっていない。本発明化合物の低酸素性細胞に対す
る高度の選択性は、当初提案されたごとく活性化のメカニズムがチオールによる
求核置換に基づくものではないことを示唆する。事実、本発明の化合物はチオー
ルの存在下できわめて安定であることが確認された。
発明の要旨
本発明は、下記一般式(I)の新規な化合物および当該化合物の医学的に許容
可能な塩を提供するものである。
{式中、Xは結合鎖−CR1R2−またはCR1=CR2−(R1およびR2はそれ
ぞれ独立してH、低級アルキル基、フェニル基またはニトロフェニル基である)
を;YはハロゲンまたはOSO2Rを;Qは低級アルキル基(任意にアルキル基
および/またはエーテル基で置換されていてもよく、6までの炭素を含む)また
はニトロフェニル基を;Arは単環または二環の芳香族基[例えば下記式(Ia-
Ih)で示されるもの]を;Rはアルキル基および/またはエーテル基で置換さ
れていてもよい炭素数8までの低級アルキル基を;ZはNO2、SO2R、CON
HR、R、OR、SR、CF3およびアザ基(−CH=を−N=で置換した環)
から選ばれる1または2以上の基を意味する;
ただし、Y=ClまたはBr、Q=Me、X=−CH2−のとき、Arは2−ニ
トロフェニルまたは4−ニトロフェニル以外の基である}
一般式(I)で表される化合物のうち好ましいものは;
N,N−ビス(2−クロロプロピル)−N−メチル−N−(2−ニトロベン
ジル)アンモニウムクロリド;
N,N−ビス(2−クロロエチル)−N−メチル−N−(3−ニトロベンジ
ル)アンモニウムクロリド;
N,N−ビス(2−クロロエチル)−N−メチル−N−(3−メチル−2−
ニトロベンジル)アンモニウムクロリド;
N,N−ビス(2−クロロエチル)−N−メチル−N−(4−メチル−2−
ニトロベンジル)アンモニウムクロリド;
N,N−ビス(2−クロロエチル)−N−メチル−N−(5−メチル−2−
ニトロベンジル)アンモニウムクロリド;
N,N−ビス(2−クロロエチル)−N−(3−メトキシ−2−ニトロベン
ジル)−N−メチルアンモニウムクロリド;
N,N−ビス(2−クロロエチル)−N−(4−メトキシ−2−ニトロベン
ジル)−N−メチルアンモニウムクロリド;
N,N−ビス(2−クロロエチル)−N−(5−メトキシ−2−ニトロベン
ジル)−N−メチルアンモニウムクロリド;
N,N−ビス(2−クロロエチル)−N−(3,5−ジニトロベンジル)−N
−メチルアンモニウムクロリド;
N,N−ビス(2−クロロエチル)−N−メチル−N−[(4−メチルスル
ホニル)ベンジル]アンモニウムクロリド;
N,N−ビス(2−クロロエチル)−N−メチル−N−[(5−ニトロ−1
−ナフチル)メチル]アンモニウムクロリド;
N,N−ビス(2−クロロエチル)−N−メチル−N−[(8−ニトロ−1
−ナフチル)メチル]アンモニウムクロリド;
N,N−ビス(2−クロロエチル)−N−メチル−N−[(1−メチル−4
−ニトロ−5−イミダゾリル)メチル]アンモニウムクロリド;
およびこれらの化合物の医薬的に許容される塩である。
一般式(I)の化合物は次の化学反応式1に示す方法によって製造することが
できる。適当な芳香族α−メチルハライド(II)とN−アルキルまたはN−アリ
ールジエタノールアミンとの反応によって新規な第四級ジオール(III)が得ら
れ、この第四級ジオール(III)を長時間室温でSOCl2で処理することによっ
て表2に示す所望の第四級マスタード(I)に変換することができる。
次の一般式(III):
(式中、Z、XおよびQは、但し書きは適用されない外は上記の通りである)
で示される第四級ジオールは新規な中間体である。
本発明は、更に、一般式(I)の化合物(但し書きは適用されない)の低酸素
選択性細胞毒としての用途に関する。これらの化合物の還元活性化プロドラッグ
への製剤化は通常の方法によって行なうことができる。細胞毒剤は放射線治療法
と併用することが有利であることが知られているが、抗癌剤として単独で使用す
ることもできる。
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい態様を、具体例として、さらに詳
細に説明する。
図1は1ヶの電子還元によりメクロタミンを生成するN,N−ビス(2−クロ
ルエチル)−N−メチル−N−(2−ニトロベンジル)アンモニウムクロリド[
化合物(1)]のフラグメンテーションを示す。
図2は化合物(1)の細胞破壊における酸素依存性を示す。EMT6細胞を2
mMの薬剤で、5%のCO2と0−95%のO2が存在す気相条件下で3時間処理
した。O2濃度は高感度O2電極で測定した。
図3は好気性条件下(白記号)及び低酸素条件下(黒記号)でのEMT6単細
胞懸濁液に於て、経過時間に対する薬剤濃度×10%生存率時間の関係を示す。
図4は好気性条件下で化合物(1)によりEMT6球状体を化合物(1)で傷
つけないで1時間処理した場合(白記号)と分離して処理した場合(黒記号)の
細胞生存率を示す。
図5はマウスのKHT腫瘍に対する化合物(1)の評価を示す。
ニトロベンジルマスタード四級塩はイン・ビトロ(in vitro)で極めて高い低
酸素選択
性を示す新規なHSCs化合物である。表1に示す化合物は、ニトロ基の1ヶの
電子還元(酸素阻害性)により生成するラジカルアニオン1のフラグメンテーシ
ョンを受けるよう設計され、これにより脂肪族系窒素マスタードのメクロレタミ
ンを生成する(図1)。
多数の固形腫瘍はその中に低酸素組織をもっているが、そのことは人体内では
異常な状態であり、ここで提起した化合物はこの特殊な状況に於て、従来から使
用されてきた多数の既知化合物より優れた長所を有する標的選択性薬剤を形成す
ることができる。腫瘍還流量に副作用をもたらす薬剤による照射または処理は低
酸素状態を高めることになるが、このことによりこれらの化合物の活性は上昇す
る。
ニトロラジカルアニオンを生成する細胞酵素による芳香族ニトロ化合物の1電
子還元は化合物の還元電位により基本的に制御され、酸素化細胞および低酸素細
胞のいずれにおいても起こり得る。前者においては、分子状酸素による再酸化に
よりもとの化合物を再生することができる。しかし、酸素のない状態では最初の
ラジカルアニオンの分裂(フラグメンテーション;fragmentation)が化合物1
からベンジルラジカルを発生し、かつ反応性のある窒素マスタードのメクロレタ
ミンを放出することによって起こり得る。図1は1ヶの電子還元によりメクロレ
タミンを生成する化合物1のフラグメンテーションを示す。提案されたこのメカ
ニズムは、密接に関連するニトロベンジルハライドとニトロベンジル第四アンモ
ニウム塩が1ヶの電子還元によりフラグメントを生成すること、およびこれらの
化合物から誘導されたニトロラジカルアニオンがin vitroで酸素により容易に再
酸化されるとの事例が多数報告されていることにより支持されるものである。
HSCsのこの構造には多数の利点がある。四級塩の陽イオン電荷はマスター
ドの高度の不活性化とこの化合物の高い水溶性を保証している。ベンジル四級塩
官能基の正の大きなハメット置換基パラメータ(σo,p)[CH2N+(Me)3
に対して報告された+0.67の値に同等と推定される]は、4−異性体(化合
物5)の−330mVの計算還元電位に等しい。一方、周期電圧電流(cyclic v
olutammery)測定値は約−350mVの値を示した。すなわち、これらの値はH
SCsの期待値として提言した範疇(−300〜−450mV)に入る。
メクロレタミンは、非循環運動細胞に対して活性を示すだけでなく、高酸素濃
度に於て周囲をとりまく腫瘍細胞への逆拡散が期待されるような充分に長い(約
15分)半減期を有する。フラグメンテーション反応の速度は、適切な構造変換
(ニトロベンジルハライド
の系に於て)を行なうことにより数次のレベルに調節可能であり、原理的にこの
フラグメンテーションが特定の酸素濃度に於て逆酸化反応と競合することを可能
ならしめるものである。
好気性及び低酸素条件の細胞存在下に、この化合物からメクロレタミンが生成
する速度は、ジエチルジチオカルバメートで生成したマスタードを捕集し、ビス
付加体を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析することにより得られ
る---“窒素マスタードへのニトロミンの還元;好気性または嫌気性下のラット
肝細胞、JBLBL8及びウォーカー癌細胞系における不定期DNA合成”("C
arcinogenesis"10:2113〜2118:1989年)参照。
四級マスタード1(1mM)で3時間の前処理をしたEMT6細胞懸濁液の1
mLの小分けサンプルにジエチルジチオカーバメート(0.95MHEPES緩
衝液中に27.5mMを溶解した溶液を100mL)を添加した。得られた混合
物は遊離のメクロレタミンを誘導させるため37℃で15分間培養し、その後氷
冷メタノール(9mL)(蛋白を沈降させるため)で希釈して遠心分離した。上
澄液は減圧下に乾燥し、HPLC分析のため乾燥品は70%メタノールに再溶解
した。HPLC分析はWaters C18 mBondapak 8×100mmカラムを使用し、
溶媒濃度として、最初の25:75のA/B(A=80%MeCN/20%水;
B=0.5Mぎ酸緩衝液、pH4.5)を直線的濃度勾配により90:10のA/
Bにした。生成物p3及びp4(表−3参照)は280nmの吸光度により検出
し、それらの同定は標品の合成サンプルを注入して確認した。細胞懸濁液から得
たp4の回収率測定用の検量線は、メクロレタミンの既知量で処理し、その3分
後に上述のようにサンプリングをしたEMT6細胞(1×106cell/mL)の
好気性懸濁液から採取したサンプルから作成した。二段階のレベルのプロットは
良好な直線性があり、最適の近似式はy=1.41x+0.06(r=0.999
)であった。式中、yは実際(添加)のメクロレタミン濃度;xは回収(測定)
濃度(ビス付加体p4として)である。このような条件下でのメクロレタミンの
半減期は約70分(バイオアッセイにより測定)なので、メクロレタミン分解に
よる誤差は小さい。
化合物1の陽イオン電荷は水溶性(20℃で400mM以上)を高めている要
素である。ベンジル四級塩官能基の正の高いハメット置換パラメータ(σ=0.
67)は、ニトロベンゼン誘導体(標品にベンジルビオロゲンを用い、パルス放
射線分解による測定値:−3
69mV)に対する異常に高いニトロ基還元電位をもたらし、このことにより細
胞還元を効果的で適切な範囲のものにしている。
表−1は1mMの化合物1にEMT6細胞を3時間暴露した後、細胞培養で生
成したメクロレタミン(左記物質のジチオカーバメート付加物p4として検出)
の量を示す。
細胞還元によりメクロレタミンを生成する薬剤の性能はジエチルジチオカルバ
メートを用いる誘導化法により試験した。この試薬はメクロレタミンと速やかに
反応してビス(ジチオカーバメート)p4を生成する。この試薬はまたニトロミ
ンから、関連化合物の非窒素マスタードが還元的活性化により生成することを研
究するため以前に用いられていた。今回の場合は、ジエチルジチオカルバメート
が不活性化四級塩マスタードと直接反応しな
いが、それはベンジルジチオカーバメートp3を生成する求核置換反応によりそ
れからメクロレタミンを徐々に置換するという事実により分析は複雑になる。こ
の反応で生成したメクロレタミンは、次にジエチルジチオカルバメートと反応し
て付加物のp4を生成する。
このことは、表−1から明らかであり、ベンジルジチオカーバメートp3のお
よその一定量(約3mM;存在する四級塩マスタードの濃度の0.3%)が全て
の条件下で検出されており、これは15分間の培養中の直接置換経路によるもの
である。薬剤に酸素化したEMT6細胞を3時間暴露した後、検出したメクロレ
タミン付加物p4の少量がこの反応で生成したメクロレタミンの次の反応に関与
している。メクロレタミンは15分間の全培養時間中生成をつづけ、かつ、誘導
化反応は即座には進行しないので、このものの濃度はp3の濃度よりはるかに低
い。この事実から、すべてのものが必ずしも誘導されるとは限らないことがわか
る。低酸素条件下ではp3の濃度は同じであるがメクロレタミン付加物p4量の
増加が検出された(細胞密度の上昇により大きくなる):追加量は細胞の1電子
還元によるメクロレタミンの直接生成に関与する(図1)。
しかし好気性条件下での測定値を“バックグラウンド”として採用する場合は
、表−3のデータは経路Bにより発生した低酸素条件下でメクロレタミン収率(
生成率)の増加を示す(106cells/mLでの四級塩マスタード濃度0.1%に
対し5×106cells/mLでは1%)。
化合物1、4及び5の細胞毒性及び低酸素下の選択性をチャイニーズハムスタ
ーの卵巣細胞培養により評価した(表−4)。成長阻害試験は、W.R.Wilson,R.
F.Anderson and W.A.Denny."J.Med.Chem.",1989,32,23;G.J.Finlay,B.C.Ba
guley and W.R.Wilson."Anal.Biochem.",1984,139,172,に詳細が記載され
ている方法により実施した(これらの内容はこの引用によって本明細書の一部を
構成することとする)。
化合物5の還元電位は経験式E(1)(mV)=163sp−−492、及び
既知のCH2N+(CH3)3のsp値の0.67、CH2N+CH3(CH2CH2C
l)2のspを約1.0とした推定値を用いて約−330mVと算出した:(Hans
ch,C.;Leo,A.J."Substituent Constants for Correlation Analysis in Chem
istry and Biology":Wiley and Sons Ltd:New York,1979.)。
AA8亜系(subline)での成長阻害試験またはUV4細胞でのクローン試験
法の何れ
かを用いた場合、化合物4は極めて低い細胞毒性を示した。3−ニトロベンジル
ハライドのラジカルアニオンは2−または4−ニトロの異性体より103倍以上
緩慢なフラグメントとして知られているので、化合物1及び5の大きな値は提案
した作用機序を支持するものである。
低酸素EMT6細胞と培養した化合物1からのメクロレタミンの生成は、生成
したマスタードをジエチルジチオカルバメートで捕集した後、付加体のHPLC
分析により確認した。
低酸素細胞に対する化合物1の選択性は、5%CO2又はN2を連続的に通気さ
せたUV4細胞の懸濁液を撹拌下に1時間、化合物1に暴露後、クローン原性の
生存率を検査して評価した(図4)。対照区(C10)の10%に生存率を低下さ
せるのに要する化合物1の濃度は、好気性条件下と比較して低酸素条件下では2
00分の1と小さく、化合物1は今まで報告された低酸素選択性モノ−生物還元
剤の中で最高のものの1つであることを示した。メクロレタミン自体は、下記細
胞に対して著しい選択性は示さないが、最近の試験では、この化合物は同様な試
験に於て、EMT6マウスの乳癌細胞に対し低酸素選択性(100倍以上)を示
すことを報じているので、この特性は修復能欠失細胞系にのみ限定されるもので
はない。化合物1と4の間の低酸素選択性での著しい差異はフラグメンテーショ
ンの速度の差(2−ニトロベンジルクロライドから誘導したラジカルアニオンの
半減期は3位異性体から誘導したそれの約半分である)、または酵素反応の速度
の差によるものである。
磁気撹拌式10mL懸濁液培養器(後期対数期UV4細胞、106/mL)を
用いた懸濁液撹拌型培養試験は、空気またはN2中にCO2を5%含有するガスを
連続的に通気している間、定期的にサンプルを採取することにより実施した。増
殖培地中の細胞懸濁液と薬剤溶液の両者は、低酸素培養下での薬剤への暴露期間
を通じて、実質的に完全な酸素欠乏状態を確保するため、撹拌前の60分間を適
切なガス相下にして事前に平衡化した。いくつかの異なる薬剤濃度を好気性及び
低酸素の両条件下で、細胞破壊のほぼ同じような値を与えるそれぞれの濃度を確
認するため試験した。これらの2つの生存曲線について、10%の生存フラクシ
ョン(CT10)に対する濃度×時間の比を低酸素選択性の尺度として用いた。
DNA架橋結合修復に無効なUV4細胞系は、メクロレタミンに対するのHF
値(野生
型AA8とUV4系のIC50値の比)が28(表−2)であることにより示され
るようにDNA架橋結合剤に過敏である。化合物1及び5が示す高いHF値は毒
性発現機序が架橋結合によるものかもしれないことを示唆する。これらのHF値
がメクロレタミン(代表的架橋結合剤)のそれよりはるかに高いという事実は、
これらの完全カチオン化合物の制約された細胞とりこみ性によるものかもしれな
い(飽和性移行関与プロセスによる可能性)。このことは、修復−コンピテント
(repair-competent)細胞内細胞毒濃度を得るのに極めて高い細胞外薬物濃度が
必要かも知れないことから、上記比率を誇張することの説明となり得る。これら
の化合物の薬物とりこみについては現在検討中である。
EMT6細胞に対する細胞毒
本発明者等は、化合物1が低酸素EMT6細胞(マウス乳癌)に対し高選択性
(1時間の暴露により約200倍)を示すことも観察した。一方、UV4と比較
し、低い選択性が架橋結合修復−コンピテント細胞系のEMT6に於て、1時間
後に認められ、その差は経時的に増加し、4時間後には数千倍に達した。
EMT6細胞の好気的及び低酸素条件下の撹拌培養懸濁液に対する化合物1の
細胞毒性は、力価の尺度として10%生存率に対する濃度×時間(CT10)を用
いるクローン化試験法により測定した。この結果は図3に示し、異なる実験は記
号を変えて示した。低酸素選択性は各測定時点における好気性と低酸素条件での
CT10値の比として算出した。多細胞EMT6球体(平均球径:1200mm)を
解離(プロナーゼ0.5mg/mL,DNAアーゼ0.2mg/mL)の直前また
は直後に、20%O2の平衡環境下、37℃で1時間、十分に撹拌しながら化合
物1と培養し処理した。得られた単細胞懸濁液は上記の方法で分析した。
無傷の球体と解離球体とを用いる以外は同一条件下でEMT6球体を暴露した
実験では、解離球体から得た細胞に比較して、無傷の球体は薬物に対しはるかに
感受性が高いことが示され(図4)、“低酸素と局部的拡散”の概念が支持され
た。図4は、好気性条件下に60分間、無傷(白記号)または解離(黒記号)の
EMT6球体をN,N−ビス(2−クロロエチル)−N−メチル−N−(2−ニ
トロベンジル)アンモニウムクロライドで処理した後の生存細胞を示す。異なる
記号は異なる実験を示す。
この結果は、無傷ならびに解離球体細胞の両者に於て同等の活性を示すN,N
−ビス(
2−クロロエチル)−4−アミノアニリン等の既知の活性化窒素マスタードの結
果と対照的であり、かつ、四級塩マスタードの還元的活性が、球体細胞の低酸素
領域で発現し、逆拡散により周囲の酸素化された細胞を破壊可能なメクロレタミ
ンを生成するという見解を支持するものである。EMT6球体を用いる実験は、
この薬物が拡散性細胞毒の低酸素選択性プロドラッグとして明らかに作用するこ
と示している。無傷の球体細胞に対し大幅に増強された活性は、これら球体細胞
が含有する低酸素細胞の少量部分を選択的に破壊するということだけによっては
説明することができず、四級塩マスタードが高い酸素濃度において相当数の周囲
の細胞を破壊可能な拡散性細胞毒(メクロレタミン)を生成することを証明する
ものである。予備試験で示されたEMT6細胞懸濁液中でのK値が低い(0.1
%以下のO2濃度)ことから、球体細胞の大部分に於て発現する酸素の極めて高
い濃度でこの薬物が効率よく活性化されるという別の可能性はなさそうである。
単回投与した場合、放射線増感剤もしくは低酸素性選択的細胞毒として極めてわ
ずかなイン・ビボ(in vivo)活性が示された。しかし、低酸素細胞の破壊に著
しい時間を要することは、長時間にわたり薬物の低濃度を維持する多回投与がよ
り適切なことを示唆している。
KHT腫瘍に対する化合物1のin vivo試験
in vivo活性について、KHT腫瘍を皮下にもつマウスで評価した。薬物は放
射線照射(15Gy)前及び後の異なる時点に75mmol/kg(最大許容薬量
の75%)の投与量を腹腔内に単回投与した。腫瘍は14時間後に摘出し、生存
細胞をクローン試験法により測定した。最大許容薬量の75%を投与すると、放
射線照射との複合作用によりKHT腫瘍に対する極めて僅かな活性を示した。し
かし、この活性は統計的には有意であった(図5)。この図はマウスのKHT腫
瘍に対する化合物1の評価結果を詳細に示す。75mmol/kgの単回投与量
の薬物を放射線照射(15Gy)の前または後のあらかじめ決められた時点に腹腔
内に投与した。図上の各点は3−4ケの腫瘍をプールしたものである。記号は対
照(○):薬物単独(□):放射線照射単独(●)放射線と薬物の併用(▲)で
表示する。データは4つの独立の実験からのものである。ハッチング箇所は歴史
的(従前の)対照群の細胞生存値(±95%信頼限界)を示し、上部は薬物また
は放射線照射なし、下部は放射線照射のみの場合である。
これらの化合物、特に化合物1は4時間後に数千倍に上昇するような極めて高
い選択性
を低酸素EMT6細胞の培養に於て示す。また、化合物1はこのような特性より
、哺乳動物の細胞培養での既知低酸素選択薬の中で最強のものの一つである。低
酸素選択性において異常に長い時間が必要な理由は不明であるが、部分的には低
酸素培養でのメクロレタミンの生成とその後の蓄積に際しての緩慢な動力学によ
るものと考えられる。
この種類の化合物のさらなる化学的研究とin vivoの生物学的試験が現在進行
中である。
次に記す化合物は反応式−1の方法により合成した本発明の具体例である。こ
れらの化合物の構造と物理化学的特性は表−2に、また細胞培養(特定)でのそ
れらの化合物の生物活性は表−3に示す。
化合物1
N,N−ビス(2−クロロエチル)−N−メチル−N−(2−ニトロベン
ジル)アンモニウムクロリド(1):
CH3CN(100mL)中の2−ニトロベンジルクロリド(5.00g,29
mmol)とN−メチルジエタノールアミン(3.47g,29mmol)の溶
液を還流下に6時間加熱した。生成した赤色懸濁液を20℃に冷却し、Et2O
(150mL)で希釈し、一夜撹拌した。生成した沈澱を濾別し乾燥後ジオール
化合物N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メチル−N−(2−ニトロ
ベンジル)アンモニウムクロリド(6.52g、77%)を得た。サンプルはE
tOH/Et2Oから板状結晶として析出した。
融点 148−149℃.1
H NMR[(CD3)2SO]δ8.16(dd,J=7.9,1.5Hz,1H,H−3または
H−6),8.03(dd,J=7.6,1.4Hz,1H,H−3またはH−6),7.90(td,J=
7.5,1.5Hz,1H,H−4またはH−5),7.85(td,J=7.7,1.5Hz,1H,H
−4またはH−5),5.59(t,J=5.0Hz,2H,2×OH),5.15(s,2H,Ar
CH2N),3.94−3.83(m,4H,NCH2CH2O),3.69−3.61(m,2H,N
CH2CH2O),3.45−3.37(m,2H,NCH2CH2O),3.01(s,3H,NC
H3);13
C NMR[(CD3)2SO]δ151.0(C−2),136.5,133.7,132.2,125.
7(C−3,4,5,6),121.2(C−1),63.5,61.5(ArCH2NCH2),54.9(
CH2OH),47.8(NCH3).
Anal.(C12H19Cl2O4)C,H,N,Cl
上記ジオール化合物(3.00g,10.3mmol)を撹拌下のSOCl2(
15mL)に少量づつ添加した。生成した淡黄色溶液を防湿条件下に20℃で3
日間撹拌した。過剰のSOCl2は20℃で蒸発させ、生成した淡黄色固形物は
EtOH/Et2Oで再結晶させN,N−ビス(2−クロロエチル)−N−メチル
−N−(2−ニトロベンジル)アンモニウムクロリド(1)を黄色針状結晶(2
.95g,87%)として得た。
融点 152−153.5℃.1
H NMR[(CD3)2SO]δ8.18(dd,J=7.9,1.3Hz,1H,H−3または
H−6),8.03(d,J=7.5Hz,1H,H−3またはH−6),7.92(td,J=7.5,
1.2Hz,1H,H−4またはH−5),7.87(td,J=7.7,1.2Hz,1H,H−4ま
たはH−5),5.19(s,2H,ArCH2N),4.25−4.10(m,4H,NCH2C
H2Cl),3.99−3.90(m,2H,NCH2CH2Cl),3.81−3.73(m,2H,
NCH2CH2Cl),3.13(s,3H,NCH3);13
C NMR[(CD3)2SO]δ150.9(C−2),136.6,133.8,132.6,126.
0(C−3,4,5,6),120.4(C−1),61.5,61.1(ArCH2NCH2),47.1(
NCH3),36.0(CH2Cl).
Anal.(C12H17Cl3N2O2)C,H,N,Cl.
化合物2
N,N−ビス(2−ブロモエチル)−N−メチル−N−(2−ニトロベン
ジル)アンモニウムブロミド(2):
化合物1と同様の反応により合成した。ジオール化合物N,N−ビス(2−ヒ
ドロキシエチル)−N−メチル−N−(2−ニトロベンジル)アンモニウムブロ
ミド(淡黄色、板状結晶,融点152−153℃;既知化合物)をSOBr2と
40℃で6日間反応させ、N,N−ビス(2−ブロモエチル)−N−メチル−N
−(2−ニトロベンジル)アンモニウムブロミド(2)を淡黄色プリズム晶とし
て得た(15%)。
融点 150−155℃.(EtOH/i-PrOHで2回再結晶後、分解)1
H NMR[(CD3)2SO]δ8.18(d,J=8.2Hz,1H,H−3),7.96−7.
85(m,3H,H−4,5,6),5.08(s,2H,ArCH2N),3.99−3.85(m,6H
,NCH2CH2Br),3.80−3.72(m,2H,NCH2CH2Br),3.06(s,3
H,NCH3);13
C NMR[(CD3)2SO]δ150.9(C−2),136.3,133.7,132.6,125.
9,120.3(C−1,3,4,5,6),61.0,60.7(ArCH2NCH2),46.4(NCH3
),22.4(CH2Br).
Anal.(C12H17Br3N2O2)C,H,N,Br.
化合物3
N,N−ビス(2−クロロプロピル)−N−メチル−N−(2−ニトロベ
ンジル)
アンモニウムクロリド(3):
化合物1と同様な反応において、2−ニトロベンジルクロリドをN−メチルビ
ス(2−ヒドロキシプロピルアミン)と反応させ、ジオール化合物N,N−ビス
(2−ヒドロキシプロピル)−N−メチル−N−(2−ニトロベンジル)アンモ
ニウムクロリドを、ジアステレオ異性体混合物(1HNMRより混合比約2:1
)の白色固体(36%)として得た。
融点 193−194℃(i-PrOH);
C,H,N,Cl分析(C14H23ClN2O4)
この異性体混合物を沸騰i-PrOHによるトリチウム化(Trituration)で殆ど
単一のジアステレオ異性体(95%以上)からなる白色粉末状固体(総合収率:
約6%)を得た。
融点 198-199℃;1
H NMR[(CD3)2SO]δ8.13(dd,J=7.9,1.4Hz,1H,H−3),7.
94(dd,J=7.6,1.6Hz,1H,H−6),7.89 (td,J=7.5,1.5Hz,1H,
H−4またはH−5),7.83(td,J=7.6,1.6Hz,1H,H−4またはH−5),5
.46(d,J=5.3Hz,2H,2×OH),5.11(s,2H,ArCH2N),4.46−4.
33(m,2H,CHOH),3.52(d,J=13.4Hz,2H,NCHAHBCHOH),
3.19(dd,J=13.4,9.4Hz,2H,NCHAHBCHOH),2.99(s,3H,NC
H3),1.09(d.J=6.3Hz,6H,CHCH3);13
C NMR[(CD3)2SO]δ151.2(C−2),136.5,133.6,132.3,125.
7(C-3,4,5,6),121.0(C-1),67.5,61.6(ArCH2NCH2),61.0(C
HOH),48.9(NCH3),22.1(CHCH3).
難溶性ジオール化合物ジアステレオ異性体とSOCl2との反応により、N,N
−ビス(2−クロロプロピル)−N−メチル−N−(2−ニトロベンジル)アン
モニウムクロリド(3)を淡黄色結晶(50%)として得た。
融点 147−148℃(i-PrOH−Et2Oで2回再結晶);1
H NMR[(CD3)2SO]δ8.20(dd,J=7.2,2.2Hz,1H,H−3または
6),8.04(dd,J=7.0,2.2Hz,1H,H−3または6),7.97−7.82(m,2H,
H−4,5),5.27(s,2H,ArCH2N),5.11(pentet,J=7Hz,2H,C
HCl),4.19(d,J=14.8Hz,2H,NCHAHBCHCl),3.88(dd,J=1
4.8,8.1Hz,
2H,NCHAHBCHCl),3.16(s,3H,NCH3);1.59(d,J=6.6Hz,
6H,CHCH3);13
C NMR[(CD3)2SO]δ150.8(C−2),136.6,133.9,132.6,126.
1(C−3,4,5,6),120.4(C−1),68.3,61.6(ArCH2NCH2),50.5,
48.0(NCH3,CHCH3),24.4(CHCH3).
Anal.(C14H21Cl3N2O2.H2O)C,H,N.
化合物4
N,N−ビス(2−クロロエチル)−N−メチル−N−(3−ニトロベン
ジル)アンモニウムクロリド(4):
化合物1と同様な反応により、3−ニトロベンジルクロリドをN−メチルジエ
タノールアミンと反応させ、ジオール化合物N,N−ビス(2−ヒドロキシエチ
ル)−N−メチル−N−(3−ニトロベンジル)アンモニウムクロリドをクリー
ム状固体(77%)として得た。
融点 130−131℃(EtOH);1
H NMR[(CD3)2SO]δ8.61(t,J=1.6Hz,1H,H−2),8.38(dd
,J=8.0,1.8Hz,1H,H−4またはH−6),8.17(d,J=7.8Hz,1H,H−
4またはH−6),7.82(t,J=8.0Hz,1H,H−5),5.68(t,J=5.0Hz,2
H,2×OH),4.95(s,2H,ArCH2N),4.00−3.88(m,4H,NCH2
CH2O),3.67−3.59(m,2H,NCH2CH2O),3.48−3.40(m,2H,N
CH2CH2O),3.10(s,3H,NCH3);13
C NMR[(CD3)2SO]δ147.9(C−3),139.9,130.3,128.2,124.
9(C−2,4,5,6),130.1(C−1),64.8,62.9(ArCH2NCH2),54.7(
CH2OH),48.1(NCH3);
Anal.(C12H19ClN2O4)C,H,N,Cl
SOCl2と上記ジオール化合物との反応でN,N−ビス(2−クロロエチル)
−N−メチル−N−(3−ニトロベンジル)アンモニウムクロリド(4)を白色
微結晶固体(92%)として得た。
融点 157−158℃(EtOH−Et2O);1
H NMR[(CD3)2SO]δ8.57(t,J=1.8Hz,1H,H−2),8.44−8.
39(m,1H,H−4またはH−6),8.13(d,J=7.8Hz,1H,H−4またはH−6
),7.85(t,J=7.8Hz,1H,H−5),5.05(s,2H,ArCH2N),4.31−
4.15(m,4H,NCH2CH2Cl),4.05−3.94(m,2H,NCH2CH2Cl)
,3.83-3.71(m,2H,NCH2CH2Cl),3.19(s,3H,NCH3);13
C NMR[(CD3)2SO]δ147.9(C−3),139.6,130.5,127.9,125.
2(C−2,4,5,6),129.2(C−1),63.9,61.0(ArCH2NCH2),47.2(
NCH3),36.0(CH2Cl);
Anal.(C12H17Cl3N2O2.H2O)C,H,N,Cl
化合物5
N,N−ビス(2−クロロエチル)−N−メチル−N−(4−ニトロベン
ジル)アンモニウムクロリド(5):
化合物1と同じ反応により、4−ニトロベンジルクロリドをN−メチルジエタ
ノールアミンと反応させ、ジオール化合物N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル
)−N−メチル−N−(4−ニトロベンジル)アンモニウムクロリドを吸湿性白
色針状結晶(56%)として得た。融点 96−97℃(i-PrOH);1
H NMR[(CD3)2SO]δ8.34(d,J=8.6Hz,2H,H−3,5),8.01(
d,J=8.6Hz,2H,H−2,6),5.69(t,J=5.1Hz,2H,2×OH),4.94(s
,2H,ArCH2N),4.00−3.90(m,4H,NCH2CH2O),3.68−3.58(
m,2H,NCH2CH2O),3.48−3.39(m,2H,NCH2CH2O),3.10(s
,3H,NCH3);13
C NMR[(CD3)2SO]δ148.4(C−4),135.3(C−1),134.9,12
3.5(C−2および6,3および5),64.6,63.0(ArCH2NCH2),54.7(CH2
OH),48.2(NCH3);
Anal.(C12H19ClN2O4.2H2O)C,H,N
上記のジオール化合物をSOCl2と反応させてN,N−ビス(2−クロロエチ
ル)−N−メチル−N−(4−ニトロベンジル)アンモニウムクロリド(5)を
白色粉末(45%)として得た。
融点 175−177℃(EtOH/Et2O:その後、粉砕し、更に90℃/1mm
Hgで乾燥し結晶中のEtOHを除去した);1
H NMR[(CD3)2SO]δ8.37(d,J=8.7Hz,2H,H−3,5),7.97(
d,J=8.7Hz,2H,H−2,6),5.06(s,2H,ArCH2N),4.31−4.16(m
,4H,NCH2CH2Cl),4.04−3.94(m,2H,NCH2CH2Cl),3.81
−3.71(m,2H,NCH2CH2Cl),3.20(s,3H,NCH3);13
C NMR[(CD3)2SO]δ148.6(C−4),134.7,123.7(C−2および
6,3および5),134.4(C−1),63.8,61.1(ArCH2NCH2),47.3(NC
H3),36.0(CH2Cl);
Anal.(C12H17Cl3N2O2)C,H,N,Cl.
化合物6
N,N−ビス(2−クロロエチル)−N−メチル−N−(3−メチル−2
−ニトロベンジル)アンモニウムクロリド(6):
化合物1と同様な反応により、3−メチル−2−ニトロベンジルクロリドをN
−メチルジエタノールアミンと反応させ、ジオール化合物N,N−ビス(2−ヒ
ドロキシエチル)−N−メチル−N−(3−メチル−2−ニトロベンジル)アン
モニウムクロリドを白色固体(89%)として得た。
融点 120−121℃;1
H NMR[(CD3)2SO]δ7.85(dd,J=6.9,2.0Hz,1H,H−4または
6),7.73−7.66(m,2H,H−4または6およびH−5),5.63(t,J=5.0Hz,
2H,2×OH),4.86(s,2H,ArCH2N),3.91−3.84(m,4H,NCH2
CH2O),3.66−3.58(m,2H,NCH2CH2O),3.46−3.38(m,2H,N
CH2CH2O),3.03(s,3H,NCH3),2.33(s,3H,ArCH3);13
C NMR[(CD3)2SO]δ152.6(C−2),134.2,133.2,131.0(C−
4,5,6),130.4(C−1),119.3(C−3),63.4,61.5(ArCH2NCH2)
,54.8(CH2OH),47.9(NCH3),17.0(ArCH3);
Anal.(C13H21ClN2O4)C,H,N,Cl
上記ジオール化合物をSOCl2と反応させてN,N−ビス(2−クロロエチル
)−N−
メチル−N−(3−メチル−2−ニトロベンジル)アンモニウムクロリド(6)
を白色板状結晶(66%)として得た。
融点 167−168℃(i-PrOH);1
H NMR[(CD3)2SO]d7.81(dd,J=7.1,1.9Hz,1H,H−4または6
),7.76−7.69(m,2H,H−4または6およびH−5),4.86(s,2H,ArC
H2N),4.22−4.09(m,4H,NCH2CH2Cl),3.94−3.85(m,2H,N
CH2CH2Cl),3.80−3.72(m,2H,NCH2CH2Cl),3.14(s,3H,
NCH3),2.33(s,3H,ArCH3);13
C NMR[(CD3)2SO]d152.5(C−2),134.6,133.3,131.0(C−4
,5,6),130.6(C−1),118.4(C−3),61.3,61.0(ArCH2NCH2),
47.1(NCH3),35.9(CH2Cl),17.0(ArCH3);
Anal.(C13H19C13N2O2)C,H,N.
化合物7
N,N−ビス(2−クロロエチル)−N−メチル−N−(4−メチル−2
−ニトロベンジル)アンモニウムクロリド(7):
化合物1と同様な反応により、4−メチル−2−ニトロベンジルクロライドを
N−メチルジエタノールアミンと反応させ、ジオール化合物N,N−ビス(2−
ヒドロキシエチル)−N−メチル−N−(4−メチル−2−ニトロベンジル)ア
ンモニウムクロリドを灰白色固体(86%)として得た。
融点 131−132℃;1
H NMR[(CD3)2SO]δ8.00(s,1H,H−3),7.90(d,J=7.9Hz
,1H,H−6),7.71(br d,J=8Hz,1H,H−5),5.60(t,J=5.0Hz,2
H,2×OH),5.10(s,2H,ArCH2N),3.98−3.81(m,4H,NCH2
CH2O),3.71−3.55(m,2H,NCH2CH2O),3.47−3.33(m,2H,N
CH2CH2O),3.00(s,3H,NCH3),2.47(s,3H,ArCH3);13C
NMR[(CD3)2SO]δ150.8(C−2),142.8(C−1),136.2,134.0
,125.7(C−3,5,6),118.2(C−4),63.3,61.3(ArCH2NCH2),54
.8(CH2OH),47.6(NCH3),20.4(ArCH3).
Anal.(C13H21ClN2O4)C,H,N.
上記ジオール化合物をSOCl2と反応させてN,N−ビス(2−クロロエチル
)−N−メチル−N−(4−メチル−2−ニトロベンジル)アンモニウムクロリ
ド(7)を極めて淡い黄色結晶固体(73%)として得た。
融点 151−152℃(i-PrOH);1
H NMR[(CD3)2SO]δ8.02(s,1H,H−3),7.92(d,J=7.9Hz,
1H,H−6),7.73(d,J=7.9Hz,1H,H−5),5.15(s,2H,ArCH2
N),4.28−4.16(m,4H,NCH2CH2Cl),4.01−3.85(m,2H,NCH2
CH2Cl),3.83−3.66(m,2H,NCH2CH2Cl),3.11(s,3H,NC
H3),2.48(s,3H,ArCH3);13
C NMR[(CD3)2SO]δ150.6(C−2),143.2(C−1),136.3,13
4.2,125.9(C−3,5,6),117.4(C−4),61.2,60.9(ArCH2NCH2)
,46.9(NCH3),36.0(CH2Cl),20.4(ArCH3).
Anal.(C13H19Cl3N2O2)C,H,N,Cl.
化合物8
N,N−ビス(2−クロロエチル)−N−メチル−N−(5−メチル−2
−ニトロベンジル)アンモニウムクロリド(8):
化合物1と同様な反応により、5−メチル−2−ニトロベンジルクロリドをN
−メチルジエタノールアミンと反応させて、ジオール化合物N,N−ビス(2−
ヒドロキシエチル)−N−メチル−N−(5−メチル−2−ニトロベンジル)ア
ンモニウムクロリドを淡黄橙色油(90%)として得た。1
H NMR[(CD3)2SO]δ8.08(d,J=8.3Hz,1H,H−3),7.82(d
,J=1.3Hz,1H,H−6),7.64(dd,J=8.3,1.3Hz,1H,H−4),5.61
(t,J=5.1Hz,2H,2×OH),5.13(s,2H,ArCH2N),3.95−3.84(
m,4H,NCH2CH2O),3.70−3.62(m,2H,NCH2CH2O),3.46−3.
38(m,2H,NCH2CH2O),3.01(s,3H,NCH3),2.48(s,3H,A
rCH3);13
C NMR[(CD3)2SO]δ148.5,144.7(C−1,2),136.9,132.3,12
5.9(C−3,4,6),121.4(C−5),63.6,61.6(ArCH2NCH2),54.8
(CH2OH),47.8(NCH3),20.8(ArCH3).
MS(FAB)m/z269(100%,M+for ammonium ion);
HRMS C13H21N2O4として;計算値269.1501,測定値269.1476
上記ジオール化合物をSOCl2と反応させてN,N−ビス(2−クロロエチル
)−N−メチル−N−(5−メチル−2−ニトロベンジル)アンモニウムクロリ
ド(8)を淡黄色結晶固体(51%)として得た。
融点 133−134℃(CH3CN);1
H NMR[(CD3)2SO]δ8.12(d,J=8.4Hz,1H,H−3),7.82(d
,J=1.2Hz,1H,H−6),7.67(dd,J=8.4,1.2Hz,1H,H−4),5.17
(s,2H,ArCH2N),4.25−4.10(m,4H,NCH2CH2Cl),3.98−3
.90(m,2H,NCH2CH2Cl),3.82−3.73(m,2H,NCH2CH2Cl)
,3.12(s,3H,NCH3),2.48(s,3H,ArCH3);13
C NMR[(CD3)2SO]δ148.3,144.8(C−1,2),137.0,132.7,12
6.1(C−3,4,6),120.6(C−5),61.4,61.2(ArCH2NCH2),47.1(
NCH3),36.0(CH2Cl),20.8(ArCH3).
Anal.(C13H19Cl3N2O2)C,H,N.
化合物9
N,N−ビス(2−クロロエチル)−N−(3−メトキシ−2−ニトロベ
ンジル)−N−メチルアンモニウムクロリド(9):
化合物1と同様な反応により、3−メトキシ−2−ニトロベンジルクロリドを
N−メチルジエタノールアミンと反応させて、ジオール化合物N,N−ビス(2
−ヒドロキシエチル)−N−(3−メトキシ−2−ニトロベンジル)−N−メチ
ルアンモニウムクロリドをクリーム状固体(89%)として得た。
融点 144−145℃(EtOH−Et2O);1
H NMR[(CD3)2SO]δ7.71(t,J=8.2Hz,1H,H−5),7.56(d
,J=8.0Hz,1H,H−4または6),7.50(d,J=7.2Hz,1H,H−4または6
),5.62(t,J=5.0Hz,2H,2×OH),4.80(s,2H,ArCH2N),3.9
1(s,3H,OCH3),4.18−4.12(m,4H,NCH2CH2O),3.94−3.86
(m,2H,NCH2CH2O),3.76−3.68(m,2H,NCH2CH2O),3.02(
s,3H,NCH3);13
C NMR[(CD3)2SO]δ150.7(C−2),142.7(C−1),132.1,12
6.2,116.2(C−4,5,6),120.4(C−3),63.5,61.3(ArCH2NCH2)
,57.0(OCH3),54.9(CH2OH),48.1(NCH3).
Anal.(C13H21ClN2O5)C,H,N,Cl.
上記ジオール化合物をSOCl2と反応させ、N,N−ビス(2−クロロエチル
)−N−(3−メトキシ−2−ニトロベンジル)−N−メチルアンモニウムクロ
リド(9)を淡黄色結晶(72%)として得た。
融点 175−176℃(i-PrOH);1
H NMR[(CD3)2SO]δ7.73(t,J=8.2Hz,1H,H−5),7.59(d
,J=8.6Hz,1H,H−4またはH−6),7.50(d,J=7.8Hz,1H,H−4また
は6),4.86(s,2H,ArCH2N),4.22-4.08(m,4H,NCH2CH2Cl
),3.92(s,3H,OCH3),3.98−3.86(m,2H,NCH2CH2Cl),3.8
2−3.73(m,2H,NCH2CH2Cl),3.16(s,3H,NCH3);13
C NMR[(CD3)2SO]δ150.8(C−2),142.6(C−1),132.1,12
6.3,119.5,116.5(C−3,4,5,6),61.5,60.7(ArCH2NCH2),57.1(
OCH3),47.3(NCH3),36.1(CH2Cl).
Anal.(C13H19Cl3N2O3)C,H,N.
化合物10
N,N−ビス(2−クロロエチル)−N−(4−メトキシ−2−ニトロベ
ンジル)−N−メチルアンモニウムクロリド(10):
化合物1と同様な反応により、4−メトキシ−2−ニトロベンジルクロライド
をN−メチルジエタノールアミンと反応させて、ジオール化合物N,N−ビス(
2−ヒドロキシエチル)−N−(4−メトキシ−2−ニトロベンジル)−N−メ
チルアンモニウムクロリドをクリーム状結晶固体(78%)として得た。
融点 142−143℃(i-PrOH);1
H NMR[(CD3)2SO]δ7.93(d,J=8.7Hz,1H,H−6),7.68(d
,
J=2.7Hz,1H,H−3),7.45(dd,J=8.7,2.7Hz,1H,H−5),5.59(t
,J=5.0Hz,2H,2×OH),5.04(s,2H,ArCH2N),3.92(s,3H,
OCH3),3.91−3.83(m,4H,NCH2CH2O),3.64−3.55(m,2H,N
CH2CH2O),3.41−3.33(m,2H,NCH2CH2O),2.97(s,3H,NC
H3);13
C NMR[(CD3)2SO]δ161.0,152.1(C−1,2),137.6,118.9,11
1.0(C−3,5,6),112.5(C−4),63.1,61.3(ArCH2NCH2),56.3(
OCH3),54.8(CH2OH),47.4(NCH3).
Anal.(C13H21ClN2O5)C,H,N,Cl.
上記ジオール化合物をSOCl2と反応させ、N,N−ビス(2−クロロエチル
)−N−(4−メトキシ−2−ニトロベンジル)−N−メチルアンモニウムクロ
リド(10)を淡黄色プリズム晶(34%)として得た。
融点 142−143℃(i-PrOH−EtOAc);1
H NMR[(CD3)2SO]δ7.89(d,J=8.7Hz,1H,H−6),7.70(d
,J=2.8Hz,1H,H−3),7.48(dd,J=8.7,2.8Hz,1H,H−5),5.05
(s,2H,ArCH2N),4.21−4.07(m,4H,NCH2CH2Cl),3.93−3
.83(m,2H,NCH2CH2Cl),3.92(s,3H,OCH3),3.76−3.67(m
,2H,NCH2CH2Cl),3.06(s,3H,NCH3);13
C NMR[(CD3)2SO]δ161.3,152.0(C−1,2),137.7,119.0,11
1.2(C−3,5,6),111.6(C−4),61.0,60.9(ArCH2NCH2),56.3(
OCH3),46.6(NCH3),35.9(CH2Cl);
Anal.(C13H19Cl3N2O3)C,H,N,Cl.
化合物11
N,N−ビス(2−クロロエチル)−N−(5−メトキシ−2−ニトロベ
ンジル)−N−メチルアンモニウムクロリド(11):
Et3N(4.5mL、32mmol)と5−メトキシ−2−ニトロベンジルア
ルコール(1.48g、8.1mmol)のCH2Cl2(80mL)溶液にMsC
l(1.9mL,24mmol)を添加し、この混合物を12時間還流させる。
前記反応液を冷却、希塩酸
洗浄(2N、2×50mL)、乾燥(Na2SO4)、濃縮、ならびにシリカの短
いカラムを使用しての濾過(石油エーテル:酢酸エチル=9:1で溶出)により
、5−メトキシ−2−ニトロベンジルクロリドを黄色液(1.55g,95%)
として得た。1
H NMR(CDCl3)δ8.17(d,J=9.1Hz,1H,H−3),7.20(d,J=2
.8Hz,1H,H−6),6.93(dd,J=9.1,2.8Hz,1H,H−4),5.03(s,2
H,ArCH2Cl),3.93(s,3H,ArOCH3);13
C NMR(CDCl3)δ163.7(C−2),140.7,135.5,128.2,116.5,11
3.7(C−1,3,4,5,6),56.1(OCH3),43.7(CH2Cl);
MS(EI)m/z201[70%,M+(35Cl)],184(100%),166(60%,M
−Cl),156(50%),106(70%);
HRMS(EI)C8H8ClNO3として;計算値203.0163(35Cl),測定値2
03.0165.
このクロリドとN−メチルジエタノールアミンとの反応により、ジオール化合
物N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−(5−メトキシ−2−ニトロベ
ンジル)−N−メチルアンモニウムクロリドを淡橙色プリズム晶(73%)とし
て得た。
融点 143−144℃(i-PrOH);1
H NMR[(CD3)2SO]δ8.24(d,J=9.2Hz,1H,H−3),7.60(d
,J=2.8Hz,1H,H−6),7.34(dd,J=9.2,2.8Hz,1H,H−4),5.60
(t,J=5.1Hz,2H,2×OH),5.20(s,2H,ArCH2N),3.95(s,3
H,OCH3),3.93−3.85(m,4H,NCH2CH2O),3.72−3.64(m,2H,
NCH2CH2O),3.47−3.40(m,2H,NCH2CH2O),3.03(s,3H,N
CH3);13
C NMR[(CD3)2SO]δ162.6(C−2),143.2(C−1),128.8,12
2.2,116.2(C−3,4,6),124.4(C−5),63.7,61.8(ArCH2NCH2)
,56.4(OCH3),54.8(CH2OH),47.7(NCH3).
Anal.(C13H21ClN2O5)C,H,N,Cl.
上記ジオール化合物をSOCl2と反応させ、N,N−ビス(2−クロロエチル
)−N−(5−メトキシ−2−ニトロベンジル)−N−メチルアンモニウムクロ
リド(11)を淡黄褐色プリズム晶(47%)として得た。
融点 126−127℃(i-PrOH−EtOAc);1
H NMR[(CD3)2SO]δ8.25(d,J=9.2Hz,1H,H−3),7.69(d
,J=2.8Hz,1H,H−6),7.37(dd,J=9.2,2.8Hz,1H,H−4),5.27
(s,2H,ArCH2N),4.26−4.11(m,4H,NCH2CH2Cl),4.03−3.9
3(m,2H,NCH2CH2Cl),3.96(s,3H,OCH3),3.84−3.75(m,2
H,NCH2CH2Cl),3.16(s,3H,NCH3);13
C NMR[(CD3)2SO]δ162.7(C−2),143.0(C−1),129.0,12
2.4,116.6(C−3,4,6),123.6(C−5),61.5,61.4(ArCH2NCH2)
,56.6(OCH3),47.1(NCH3),36.1(CH2Cl).
Anal.(C13H19Cl3N2O3.0.5H2O)C,H,N.
化合物12
N,N−ビス(2−クロロエチル)−N−(3,5−ジニトロベンジル)−
N−メチルアンモニウムクロリド(12):
化合物1と同様な反応により、3,5−ジニトロベンジルクロリドをN−メチ
ルジエタノールアミンと反応させて、ジオール化合物N−(3,5−ジニトロベ
ンジル)−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアンモニウムク
ロリドを吸湿性桃色針状結晶(57%)として得た。
融点 206−207℃(EtOH);1
H NMR[(CD3)2SO]δ9.05(d,J=2.1Hz,2H,H−2,6),8.94(
t,J=2.1Hz,1H,H−4),5.71(t,J=5.0Hz,2H,2×OH),5.08(s
,2H,ArCH2N),4.01−3.87(m,4H,NCH2CH2O),3.71−3.62(
m,2H,NCH2CH2O),3.52−3.43(m,2H,NCH2CH2O),3.14(s
,3H,NCH3);13
C NMR[(CD3)2SO]δ148.2(C−3,5),134.0(C−2,6),132.0
(C−1),119.9(C−4),63.8,63.2(ArCH2NCH2),54.8(CH2O
H),48.1(NCH3).
Anal.(C12H18ClN3O6)C,H,N,Cl.
上記ジオール化合物をSOCl2と反応させ、N,N−ビス(2−クロロエチル
)−N−
(3,5−ジニトロベンジル)−N−メチルアンモニウムクロリド(12)を白
色針状結晶(84%)として得た。
融点 201−202℃(EtOH);1
H NMR[(CD3)2SO]δ8.98−8.95(m,3H,H−2,4,6),5.10(s,
2H,ArCH2N),4.29−4.14(m,4H,NCH2CH2Cl),4.06−3.97(
m,2H,NCH2CH2Cl),3.83−3.75(m,2H,NCH2CH2Cl),3.21
(s,3H,NCH3);13
C NMR[(CD3)2SO]δ148.3(C−3,5),133.7(C−2,6),130.8
(C−1),120.2(C−4),63.2,61.4(ArCH2NCH2),47.2(NCH3
),35.9(CH2Cl).
Anal.(C12H16C13N3O4)C,H,N,Cl.
化合物13
N,N−ビス(2−クロロエチル)−N−メチル−N−[(4−メチルスル
ホニル)ベンジル]アンモニウムクロリド(13):
化合物1と同様な反応により、4−メチルスルホニルベンジルクロリドをN−
メチルジエタノールアミンと反応させ、ジオール化合物N,N−ビス(2−ヒド
ロキシエチル)−N−メチル−N−[(4−メチルスルホニル)ベンジル]アン
モニウムクロリドを白色針状結晶(78%)として得た。
融点 130−131℃(EtOH);1
H NMR[(CD3)2SO]δ8.05(d,J=8.2Hz,2H,H−2,6またはH−
3,5),7.96(d,J=8.2Hz,2H,H−2,6またはH−3,5),5.63(t,J=5.1
Hz,2H,2×OH),4.88(s,2H,ArCH2N),3.97−3.90(m,4H,N
CH2CH2O),3.64−3.56(m,2H,NCH2CH2O),3.48−3.41(m,2H
,NCH2CH2O),3.28(s,3H,NCH3),3.08(s,3H,SO2CH3)
;13
C NMR[(CD3)2SO]δ142.1(C−4),133.5(C−1),134.4,12
7.1(C−2及び6,C−3及び5),65.1,63.0(ArCH2NCH2),54.7(C
H2OH),48.2(NCH3),43.2(SO2CH3).
Anal.(C13H22ClNO4S)C,H,N.
上記ジオール化合物をSOCl2と反応させ、N,N−ビス(2−クロロエチル
)−N−メチル−N−[(4−メチルスルホニル)ベンジル]アンモニウムクロ
リド(13)を白色結晶固体(55%)として得た。
融点 179−180℃(i-PrOH−EtOH);1
H NMR[(CD3)2SO]δ8.08(d,J=8.3Hz,2H,H−2,6またはH−
3,5),7.93(d,J=8.3Hz,2H,H−2,6またはH−3,5),5.00(s,2H,A
rCH2N),4.29−4.16(m,4H,NCH2CH2Cl),4.01−3.91(m,2H
,NCH2CH2Cl),3.79−3.70(m,2H,NCH2CH2Cl),3.28(s,3
H,NCH3),3.18(s,3H,SO2CH3);13
C NMR[(CD3)2SO]δ142.4(C−4),132.7(C−1),134.2,12
7.3(C−2および6,C−3および5),64.2,61.1(ArCH2NCH2),47.3
(NCH3),43.2(SO2CH3),36.0(CH2Cl).
Anal.(C13H20Cl3NO2S.0.5H2O)C,H,N.
化合物14
N,N−ビス(2−クロロエチル)−N−メチル−N−[(5−ニトロ−
1−ナフチル)メチル]アンモニウムクロリド(14):
化合物1と同様な反応により、5−ニトロ−1−ナフチルメチルクロリドをN
−メチルジエタノールアミンと反応させ、ジオール化合物N,N−ビス(2−ヒ
ドロキシエチル)−N−メチル−N−[(5−ニトロ−1−ナフチル)メチル]
アンモニウムクロリドを淡黄色結晶固体(78%)として得た。
融点 134−135℃(EtOH−Et2O);1
H NMR[(CD3)2SO]δ9.01(d,J=8.7Hz,1H,ArH),8.42(d
,J=8.7Hz,1H,ArH),8.33(d,J=7.5Hz,1H,ArH),8.17(d,J
=7.1Hz,1H,ArH),7.95−7.83(m,2H,2×ArH),5.65(t,J=5.
0Hz,2H,2×OH),5.38(s,2H,ArCH2N),4.00−3.90(m,4H,
NCH2CH2O),3.80(dt,J=13.5,5.2Hz,2H,NCH2CH2O),3.48
(dt,J=13.5,5.2Hz,2H,NCH2CH2O),3.05(s,3H,NCH3);13
C NMR[(CD3)2SO]δ147.5(C−5),135.4,130.4,128.5,126.
2,125.0,123.5(C−2,3,4,6,7,8),133.8,125.6,124.6(C−1,9,10),6
3.2,62.9(ArCH2NCH2),55.0(CH2OH),48.0(NCH3).
Anal.(C16H21ClN2O4)C,H,N,Cl.
上記ジオール化合物をSOCl2と反応させて、N,N−ビス(2−クロロエチ
ル)−N−メチル−N−[(5−ニトロ−1−ナフチル)メチル]アンモニウム
クロリド(14)を淡黄色粉末(64%)として得た。
融点 152−153.5℃(i-PrOH−Et2O);1
H NMR[(CD3)2SO]δ9.08(d,J=8.7Hz,1H,ArH),8.44(d
,J=8.7Hz,1H,ArH),8.35(d,J=7.5Hz,1H,ArH),8.13(d,
J=7.2Hz,1H,ArH),7.94(t,J=8.3Hz,1H,ArH),7.87(t,J
=8.1Hz,1H,ArH),5.44(s,2H,ArCH2N),4.32−4.24(m,2H
,NCH2CH2Cl),4.23−4.08(m,4H,NCH2CH2Cl),3.88−3.81
(m,2H,NCH2CH2Cl),3.14(s,3H,NCH3);13
C NMR[(CD3)2SO]δ147.4(C−5),135.5,130.2,128.5,126.
1,125.3,123.4(C−2,3,4,6,7,8),133.7,124.8,124.6(C−1,9,10),6
2.5,61.1(ArCH2NCH2),47.1(NCH3),36.1(CH2Cl).
Anal.(C18H19Cl3N2O2)C,H,N,Cl.
化合物15
N,N−ビス(2−クロロエチル)−N−メチル−N−[(8−ニトロ−
1−ナフチル)メチル]アンモニウムクロリド(15):
化合物1と同様な反応により、8−ニトロ−1−ナフチルメチルクロリドをN
−メチルジエタノールアミンと反応させ、ジオール化合物N,N−ビス(2−ヒ
ドロキシエチル)−N−メチル−N−[(8−ニトロ−1−ナフチル)メチル]
アンモニウムクロリドを褐色油(70%)として得た。1
H NMR[(CD3)2SO]δ8.47(d,J=8.2Hz,1H,ArH),8.42(d
,J=8.2Hz,1H,ArH),8.25(d,J=7.5Hz,1H,ArH),8.22(d,
J=7.3Hz,1H,ArH),7.88(t,J=7.7Hz,1H,ArH),7.79(t,
J=7.8Hz,1H,ArH),5.54(t,J=4.4Hz,2H,2×OH),4.97(s,2
H,ArCH2N),3.83−3.74(m,4H,NCH2CH2O),3.54−3.44(m,
2H,NCH2CH2O),3.29−3.10(m,2H,NCH2CH2O),2.72(s,3
H,NCH3);13
C NMR[(CD3)2SO]δ147.1(C−8),138.6,134.9,132.6,127.
1,125.7,125.5(C−2,3,4,5,6,7),135.0,123.4,121.0(C−1,9,10),6
5.3,63.4(ArCH2NCH2),54.7(CH2OH),47.6(NCH3);
MS(FAB)m/z305(100%,M+for the ammonium ion),186(50%).
HRMS(FAB)C16H21N2O4に対して:計算値305.1501;祖測定値305.1509
上記ジオール化合物をSOCl2と反応させ、N,N−ビス(2−クロロエチル
)−N−メチル−N−[(8−ニトロ−1−ナフチル)メチル]アンモニウムク
ロリド(15)を黄金褐色プリズム晶(37%)として得た。
融点 103−104℃(アセトン),1
H NMR[(CD3)2SO]δ8.52(d,J=8.3Hz,1H,ArH),8.46(d
,J=8.2Hz,1H,ArH),8.29(d,J=7.5Hz,1H,ArH),8.24(d,
J=7.3Hz,1H,ArH),7.91(t,J=7.7Hz,1H,ArH),7.82(t,J
=7.8Hz,1H,ArH),4.96(s,2H,ArCH2N),4.15−4.05(m,2H
,NCH2CH2Cl),4.01−3.92(m,2H,NCH2CH2Cl),3.77−3.67
(m,2H,NCH2CH2Cl),3.55−3.45(m,2H,NCH2CH2Cl),2.
81(s,3H,NCH3);13
C NMR[(CD3)2SO]δ146.9(C−8),138.9,135.1,133.1,127.
2,126.0,125.6(C−2,3,4,5,6,7),135.2,123.3,120.1(C−1,9,10),6
5.3,61.5(ArCH2NCH2),46.9(NCH3),35.9(CH2Cl).
Anal.(C16H19Cl3N2O2.H2O)C,H,N,Cl.
化合物16
N,N−ビス(2−クロロエチル)−N−メチル−N−[(1−メチル−
4−ニトロ−5−イミダゾリル)メチル]アンモニウムクロリド(16):
化合物1と同様な反応により、1−メチル−4−ニトロ−5−イミダゾリルク
ロリドを
N−メチルジエタノールアミンと反応させ、ジオール化合物N,N−ビス(2−
ヒドロキシエチル)−N−メチル−N−[(1−メチル−4−ニトロ−5−イミ
ダゾリル)メチル]アンモニウムクロリドをクリーム状固体(74%)として得
た。
融点 177−178℃(EtOH−Et2O);1
H NMR[(CD3)2SO]δ8.13(s,1H,H−2),5.59(t,J=4.6Hz
,2H,2×OH),5.25(br s,2H,imidCH2N),3.98−3.86(m,4H,N
CH2CH2O),3.90(s,3H,imidCH3),3.85−3.75(m,2H,NCH2C
H2O),3.58−3.48(m,2H,NCH2CH2O),3.12(s,3H,NCH3);13
C NMR[(CD3)2SO]δ147.5(C−4),139.8(C−2),120.6(C
−5),63.5,55.4(imidCH2NCH2),55.0(CH2OH),47.6(NCH3
),33.8(imidCH3).
Anal.(C10H19ClN4O4)C,H,N,Cl.
上記ジオール化合物をSOCl2と反応させ、N,N−ビス(2−クロロエチル
)−N−メチル−N−[(1−メチル−4−ニトロ−5−イミダゾリル)メチル
]アンモニウムクロリド(16)を白色固体(66%)として得た。
融点 173−176℃(dec.,MeOH);1
H NMR[(CD3)2SO]δ8.15(s,1H,H−2),5.22(br s,2H,im
idCH2N),4.26−4.12(m,4H,NCH2CH2Cl),4.06−3.97(m,2H
,NCH2CH2Cl),3.95−3.86(m,2H,NCH2CH2Cl),3.89(s,3
H,imidCH3),3.18(s,3H,NCH3);13
C NMR[(CD3)2SO]δ147.8(C−4),140.2(C−2),119.4(C
−5),61.4,54.9(imidCH2NCH2),47.3(NCH3),36.0(CH2Cl
),33.8(imidCH3).
Anal.(C10H17C13N4O2)C,H,N,Cl.
表−3に示した一般式(I)の芳香族ビス(2−ハロエチル)および芳香族ビ
ス(2−アルキルスルホニルオキシエチル)四級アンモニウム塩の例示化合物は
哺乳動物の腫瘍細胞により還元的に活性化される性能をもち、細胞毒性剤として
活性な化合物を包含するこ
とは表−3のデータから明かである。この化合物は低酸素腫瘍細胞に選択毒性を
示し、そのことより抗癌剤として有用であり、また放射線増感剤として、放射線
療法と併用して有効に使用できる。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C07C 217/58 7457−4H C07C 217/58
237/30 9547−4H 237/30
309/69 7419−4H 309/69
317/32 7419−4H 317/32
323/32 7419−4H 323/32
C07D 233/95 7019−4C C07D 233/95
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AT,AU,BB,BG,BR,BY,
CA,CH,CN,CZ,DE,DK,ES,FI,G
B,GE,HU,JP,KG,KP,KR,KZ,LK
,LU,LV,MD,MG,MN,MW,NL,NO,
NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SI,S
K,TJ,UA,US,UZ,VN
(72)発明者 デニー・ウィリアム・アレクサンダー
ニュージーランド国 オークランド,パク
ランガ,ガッサマー ドライブ 165