【発明の詳細な説明】
光学的記録システムにおけるディジタルイコライザ
発明の分野
この発明は情報蓄積システムに関し、特に蓄積媒体から得たディジタル情報に
対応する信号をフィルタリングする装置および方法に関するものである。
従来技術の説明
コンピュータ技術発展の一側面として、コンピュータハードウエアや周辺機器
の小型化があげられる。初期のコンピュータは、能力に制限があり、大きなスペ
ースを必要とした。しかしながら、技術の進歩とともに、コンピュータはより高
性能になっている。このような流れは、技術者がより多くの情報を処理すること
のできる製品やソフトウエアを設計することを可能にしている。このような情報
を取り扱うためには、大容量の蓄積媒体が必要である。
現在、磁気テープ、磁気ディスク、光ディスク等の種々の形式の情報蓄積媒体
が存在する。磁気または光ディスクに関しては、一般に、情報はディスク中心の
周りに同心円状にまたはらせん状に連続するトラックに蓄積される。蓄積される
情報は、蓄積媒体中にもしくはその上に「マークされ」または「書き込まれた」
「ピット」、「シンボル」、「マーク」と呼ばれるディジタルビットの形式であ
る。一般的に、ディジタル情報は、トラックに沿って媒体にマークをすることが
でき、存在するマークの検出をすることのできるランダム・アクセス・メモリ(
RAM)ヘッドの使用により、これらのトラックに沿って書き込まれ、再生され
る。磁気ディスクのためには、このような装置は磁気ヘッドの形式をとる。光デ
ィスクのためには、このような装置は、(ビーム生成およびビーム方向付け光学
装置とともに)レーザおよび感光装置が使用された光学ヘッドの形式をとる。
蓄積媒体の各形式は、情報を蓄積するため、限られた間隔または表面領域を有
している。この限定された間隔上に、できるだけ多くの情報のビットを蓄積する
ことが望ましい。ディスク上の情報量を増加させる技術の一つのとしては、マー
クを互いに近づけるよう移動させることが挙げられる。同じトラックに沿って隣
接するトラック及び/又はマーク間の距離を近づけることにより、密度を増加さ
せ、この圧縮を達成する(すなわち、各マーク周辺の間隔が減少する)。光ディ
スク上に蓄積された情報密度を高くする技術の例は、米国特許 番号5、031
、168に開示されており、この技術の開示および教示は、ここで参考として取
入れる。
この特許は、隣接するトラック上のマークが、その方式においてオフセット(
offset)になることにより、トラック間にトラック結合(track coherency)が
存在するフォーマット技術について言及している。隣接するトラックが互いにど
のくらい近い間隔で配置できるかは、読み出し動作中に他のトラックから隣接す
るマーク間で生じる干渉によって制限される。隣接トラック上のマークオフセッ
トの目的は、隣接するトラック間のクロストークを減少させるためである。この
ような干渉は、一般に“シンボル間干渉”(ISI)と呼ばれ、読みだそうとし
ている信号またはマークに隣接するマークからの干渉をRAMヘッドが、読むこ
とにより生じる。
ISIを減少させるための公知技術は、3タップ横断的(トランスバーサル)
フィルターを用いて達成するものかある。例えば、IEEE磁気学会会報 MA
G−12巻、第6号、1976年11月発行のT.ヤメヤマ等の“コサイン・イ
コライザを用いる方法による記録密度の向上”を参照のこと。このようなフィル
ターは、3つの異なった間隔で分岐した遅延線から構成されている。各タップ(
分岐)からの信号は、可変利得器を通過し共通加算器に入る。タップウエイト(
分岐比率)および遅延時間が適切に設定されると、加算器の効果として、隣接し
たマークによって生じた干渉を減少させる。この効果において、時間領域におけ
る所望の信号は減らされ、これによりISIが減少するという結果を生じさせる
。
理想的な動作状態において、マークは、一定の大きさと形状を有しているので
、書込んだ情報信号の振幅および干渉特性を予測することができる。しかし、動
作環境において、実際のマークの大きさに影響を与えるいくつかの要素がある。
この要因には、温度変化、蓄積媒体の感度および書込み電力の不正確さが含まれ
る。
マークの大きさおよび形状の変化は、書込まれた信号の振幅、対称性、および干
渉特性に影響を及ぼし、その結果、イコライズ・フィルターの効果を減少させる
。すなわち、書込まれた信号の要素が変化するので、ISI減少フィルターは、
ISIを最小にするため、これらの変化に基づいてタップウエイトを再度計算し
、再設定しなければならない。しかしながら、従来は、このようなことが所望さ
れていたにも拘らず、以下でさらに議論するように、コストおよび計算の複雑さ
故に、実行されていなかった。
横断的フィルターは、3つ以上のタップを有してもよく、これによってより多
量のシンボル間干渉を除去する。ただし、その代りに雑音の問題があり、一般に
分岐の数に伴って増加する。従来技術の例として、1992年発行のロジヤーE
.ジーマー等の“ディジタル通信入門”216頁−225頁に記載されたシンボ
ル干渉を除去するためのゼロ強制機能(zero forcing function)を用いた横断
的フィルターの一型式を参照のこと。この形式の横断的フィルターは、タップの
数を増やすことでほぼ全てのISIを除去する。このフィルター技術に伴う問題
点は、ゼロ強制機能が信号対雑音比を最適化しないことにある。さらに、ゼロ強
制機能のためにタップウエイトを計算する場合、一群の連立方程式(simultaneo
us equations)を解く必要がある。ディジタル・シグナル・プロセッサ(“DS
P”)において、このような計算は多量のコード空間が必要となり、時間もかか
る。この結果、リアルタイムなイコライゼーションを達成することは困難である
。これらの欠点により、ゼロ強制機能の光学的記憶装置への適用が制限される。
他の形式の横断的フィルターが、雑音を制限するのにより有効であるにもかか
わらず、これらは光学記憶装置への適用が制限されるという別の欠点を有してい
る。例えば、最小平均二乗誤差(LMS)イコライザーは、既知のデータストリ
ームの平均二乗誤差が最小にされるまでタップウエイトを連続的に調節する場合
において連続的プロセスを用いる。このように、もし、蓄積媒体の条件が変化す
ると、タップウエイトを調節するのに比較的時間を必要とする。例えば、もし、
タップウエイトの調節に10回の繰り返しが必要であれば、光ディスクを、10
回分析しなければならない。このような、遅延は非常に非効率的であり、フィル
ターの適用を困難にする。
さらに、既存の全ての形成の横断的フィルターは、隣接するトラックからのシ
ンボル間干渉をランダム雑音として処理する。このため、ゼロ強制フィルターは
、隣接トラックとのシンボル間干渉を増幅し、情報信号を歪ませる。
この結果、情報の高密度蓄積においては、(1)イコライゼーション・フィル
ターのタップウエイトを最適化することにより、シンボル間干渉を許容可能な程
度に最小化し、雑音を増幅することなく、むしろ減衰させるもの、(2)もし、
蓄積媒体のマークのサイズが変化した場合に、タップウエイトを効率的に調節す
るもの、又は(3)隣接するトラックからのシンボル間干渉をより効率的にフィ
ルタする再生フィルターおよび装置が要求される。
発明の概要
本発明は、情報信号からISIを除去するための簡易かつ効率的な装置および
方法を提供するものである。情報を蓄積媒体から再生する場合、ISIを減少さ
せるため、情報は、特殊な伝達特性を有する横断的フィルターを通過する。本発
明は、また、フィルターの動作パラメータを計算し、設定するための手段および
方法、およびバイナリ1とバイナリ0の検出しきい値を計算し設定するための手
段および方法を提供するものである。このフィルターの他の重要な態様は、光記
録媒体に見られるような低周波数に含まれている大きな雑音エネルギーを伴った
雑音域を有した雑音を増幅するのではなく、むしろ減衰させることにある。本発
明の他の態様は、タップウエイトをリアルタイムに調節し、動作環境において様
々な理由によりマークの大きさが変化する場合にしきい値を決定できることにあ
り;これにより、最大割合でのデータ再生が維持される。
本発明の原理に従って構成された第1の好ましい実施例において、情報蓄積媒
体上のマークは、おなじ大きさを有し、対称形状であると仮定する。この媒体は
、一般的に特殊な品質管理装置を用いて製造されているため、これらの条件は、
読み出し専用媒体が使用される環境において共通して見受けられる。しかしなが
ら、この条件は、本技術分野の当業者であれば理解するように、他の媒体におい
ても見ることができる。この条件下において、フイルターのタップウエイトを決
定および設定するためのアルゴリズムは、容易に実行される。蓄積媒体から取込
まれ
たサンプリング周波数および分離マークの振幅形状(プロフィール)が与えられ
ると、本発明は、信号をフィルタリングするためのフィルターを備えるようにな
り、これによりフィルターは複数のタップを有し、以下の一般的な形式を有する
伝達関数によって定義される:
ここで、Wは、実質的に分離され、書き込まれたマークの読み出しパルス形状か
ら導き出される;Wは、マークの中心が発生した瞬間にマークの中心がサンプル
振幅により分割されて発生した時(後のサンプル振幅は、実質的に読み出しパル
ス形状のピークである)よりも時間T早くまたは時間Tよりも遅い時刻における
サンプル振幅の比と等しい;Dは、遅延演算子であり、eSTと等しく、sはラプラ
ス演算子であり;Tはデータクロックの期間を示す。タップウエイトは、上記伝
達関数からのDと同じ順序の項を集計することにより決定され、合計2n+1のタッ
プが存在する。
本発明のイコライゼーション・フィルターが、実際に雑音を増幅させず、むし
ろ減衰させるのは、以下でさらに議論するように、フィルターがサンプリングし
たデータの周波数の約半分の雑音を増幅するにも拘らず、低周波数におけるフィ
ルターの強い減衰特性によるものである。多量の雑音を低周波数において含む記
録媒体として知られているものには、光記録媒体があり、本発明のフィルターは
、最も雑音が発生する領域で雑音を減衰させ、雑音をあまり含まない領域を増幅
するので特に有利である。したがって、分析に基づいた実際の最終的な総合結果
として、殆ど全ての既存の横断的フィルターが雑音を増幅するにもかかわらず、
雑音は増幅されず、むしろ減衰している。
さらに、フィルターからの結果出力が、バイナリ1であるかバイナリ0である
かを決定するためのしきい値(DL)は、以下の値WおよびW11から演算するこ
とができる:
ここで、W11は、分離されたマークが存在するトラックに隣接するトラック上の
第2パルスの形状から導き出され;分離マークが存在するトラックでマーク中心
が発生した時よりもT/2早くまたはT/2遅い時点で、分離マークが存在するト
ラッ
クに隣接するトラックのサンプル振幅の比である。上記の式DLは、もし、オフ
セットされたマークが、隣接するトラックにおいて1.5ビット間隔空いている
場合に限定して適切であり、もし、そうでなければ、本式は適切に修正されなけ
ればならない。
しかし、WORMおよび/または消去可能ディスクに関して、マークの大きさ
は、運転状況に応じて変化させてもよい。このような変化による効果の一つは、
読み出しパルスの振幅形状の変化であり、これにより、値WおよびW11が変化す
る。しかし、本発明の特色は、読み出しパルスのサンプル振幅を再計測すること
により、タップウエイトがリアルタイムに再計算されることにある。デバイダ(
分割器)は、次に、ディジタル・シグナル・プロセッサー(“DSP”)が新た
なタップウエイトおよび新たな検出しきい値を再計算する間に、WおよびW11の
値を再計算させることができる。
したがって、本発明の他の態様は、情報蓄積媒体から情報を取込み、取込んだ
情報信号中に少なくともいくらかの量のISIを有する装置により読み出しパル
スの再計測を実行する装置であって以下を備えたものである:蓄積媒体;蓄積媒
体上の分離されたマークからパルス形式で情報を取込む手段;取込んだパルスか
らWおよびW11を演算する手段;シンボル間干渉を減少させるため信号をフィル
タリングする手段;および検出しきい値を作り出す手段。
本発明の利点は、新たな伝達関数の組合せにおいて、最適レベルのシンボル間
干渉のフィルタリングを維持するために、情報蓄積装置のリアルタイム調整を可
能にすることにある。
実際の運転条件においては、非対称形状であることに起因して、マークの輪郭
もまた変化する。この状況において、元のタップウエイトの設定では、シンボル
間干渉を最適レベルでフィルタリングしない。したがって、本発明は、この条件
下でタップウエイトを再計算し再設定する。次に、干渉比は、それぞれ異なった
値W-およびW+となる。この状況下において、本発明は、前述のものに似ており
、フィルターが以下の形式を有する伝達関数で定義される信号をフィルタリング
するためのフィルターを備えている:
この伝達関数の利点は、DSPがタップウエイトを演算することを可能にする
ことであり、これによりマークの形に拘らず、最適レベルのフィルタリングを行
なうことが出来るということである。
本発明の他の態様は、マークが一定の配列に整えられていた場合に、シンボル
間干渉の最適なフィルタリングを行なうことにある。この配列において、最初の
トラック上のマークは、等間隔に配置される。隣接するトラック上では、マーク
はずらして配置されているので、最初のトラック上のマーク間の中間点を挟んで
並列に配置される。この配列は、目標トラック上のマークの位置と一致する偶数
のサンプル点および目標トラック上のマーク間の中間点の位置と一致する奇数の
サンプル点を供給する。目標トラックは、RAMヘッドがそのトラックから情報
を取込もうとするトラックのことである。例として米国特許番号5、031、168を参
照のこと。
この配列により、目標トラックに隣接するトラック上のマークから生成された
シンボル間干渉の最適なフィルタリングを行なうフィルターおよび伝達関数の開
発が可能となる。このサンプリング技術は、同じトラックおよび隣接するトラッ
ク上のマークからのシンボル間干渉を最小化するために信号をフィルタリングす
る装置の開発を可能にし、装置は以下を備えている:等間隔でサンプル採取した
情報信号をフィルタリングするための第1手段;奇数間隔でサンプル採取した情
報信号をフィルタリングするための第2手段;および第1フィルター手段でフィ
ルタリングされた情報信号をフィルタリングするための第2手段でフィルタリン
グされた情報信号に加える手段。第1サンプル手段の伝達関数は、F(s)=1+W20
(D2+D-2)と定義され、第2サンプル機能の伝達関数は、F(s)=1+W10(D+
D-1)と定義される。W20は、前に議論したWと同じ干渉率として定義される;
サンプルは、例えば、サンプリングの偶数点(even points)において採取され
る。W10は、分離されたマークの中心におけるサンプル振幅に最も近い奇数点に
おいて採取されたサンプル振幅の干渉比として定義される。
本発明を特徴付ける上記又は他の利点及び特徴は、この文書に添付し、この文
書の一部をなすクレームにおいて特定し指摘されている。しかしながら、本発明
をよりよく理解するためには、使用により得られる利点および目的は、さらに本
願の一部をなす図面および本発明に対する好ましい実施例に表わされ記述されて
いることを参照することが望ましい。
図面の簡単な説明
図面において、参照番号および文字は、幾つかの図を通じて対応する要素を表
わす;
図1(a)は、蓄積媒体上の分離マーク(isolated mark)からの時間領域にお
ける読み出しパルス形状の略図である;
図1(b)は、蓄積媒体上の分離マークからのサンプル領域における読み出し
パルス形状の略図である;
図2は、3タップフィルターの略図である;
図3は、元のパルスが図2の3タップフィルターを通過した後のいくつかのサ
ンプル点におけるサンプル振幅値の時間領域図である;
図4は、コサインフィルターの略図である。
図5aは、5タップフィルターの略図である;
図5bは、図5aにおけるフィルターの後のサンプルデータ領域における読み
出しパルス形状の略図である;
図6は、式(5)および式(6)に対応するn個のタップを有する横断フィルタ
ーの略図である;
図7は、ISI全体を除去するためのIIRフィルターの略図である;
図8は、Nが1、2、3、4および無限大の場合のフィルターの伝達関数のグ
ラフ図である;
図9は、ノイズパワー振幅対ホワイトノイズ入力のグラフ図である;
図10は、光学記録媒体の雑音特性(媒体雑音対周波数)のグラフ図である;
図11は、(nが奇数である場合の)周波数の作用としての雑音振幅のグラフ
図である;
図12は、(nが偶数である場合の)周波数の作用としての雑音振幅のグラフ
図である;
図13は、いくつかのフィルターのための目標マークの径位置の作用としての
バンドギャップ/雑音のグラフ図である;
図14は、接続されたフィルターの略図である;
図15は、パルスが非対称であることを除いて、図1で描いたものに近似する
読み出しパルスのグラフ図である;
図16は、式(10)に対応する非対称の干渉比を有する一般化されたパルス減
少(slimming)ディジタルフィルターおよびその後のためのタップウエイトの略
図である;
図17aおよび図17bは、間隔を開けて描かれた目標マークにおける奇数サ
ンプリングおよび目標マークから1.5ビット離れた偶数サンプリングにおける
同期マークのグラフ図である;
図18は、中位のパッキング密度と、その結果生じた波形のグラフ図である;
図19は、媒体上のマークが高パッキング密度である場合と、その結果生じた
波形のグラフ図である;
図20は、中位の密度を用いた蓄積媒体上の読み出しマークによって発生した
電位間のバンドギャップの線図である;
図21は、高密度の場合の図20のバンドギャップの線図である;
図22は、蓄積媒体上のマークが非常に高い密度である場合と、その結果生じ
た波形のグラフ図である;
図23は、ディジタルフィルターの使用を通じて生じたギャップ差のグラフ図
である;
図24aは、本発明を実行するために使用されているさまざまな部品の機能ブ
ロック図である;
図24bは、分離マークおよび未測定サンプル点を示す略図である;
図24cは、隣接トラックに付されたマークおよび未測定サンプル点の略図で
ある;および
図25は、本発明を実行するために使用されている部品の第2の機能ブロック
図である。
発明の詳細な説明
この発明の原理は、ISIを減らすことを目的として、蓄積媒体を読み取るR
AMヘッドによって生成された信号のフィルタリングに適用される。このような
ISI低減の結果として、H信号とL信号の最悪のケース間のバンドギャップの
増加がもたらされる。バンドギャップの増加により、正確性が向上し、ビットエ
ラーの割合が小さくなる。本質的に、フィルタは、マーク中心が蓄積媒体上に現
れる時以外の時に、サンプリング振幅を小さくするために用いられ、効果的にI
SIを減少させ、バンドギャップを増加させる。この発明の好ましい応用は、光
ディスク環境中の信号のフィルタリングである。このような応用は、本発明の原
理を適用することのできる数え切れないぐらいの型の応用の典型的な一つにすぎ
ない。
この発明の理解を容易にするため、好ましい実施例のフィルタや付属装置を含
む構成要素の説明は、この発明の実施に用いる数学的アルゴリズムおよび理論を
導き出す説明の後回しにする。
アルゴリズムおよび理論
この発明は、データサンプル点におけるISIを小さくすることを目的とする
、パルス整形の一般的な方法と考えることができる。この発明は、フィルタが読
み出しチャネルの前段付近に位置する場合におけるアナログフィルタ、または読
み出しチャネルの後段に位置する場合(図25参照)におけるディジタルフィル
タのいずれでも実施可能である。この発明は、ディジタル・イコライザー(ここ
では、イコライザーという語は、本発明の原理を実現する横断的なフィルタと考
えてもよい)とともに実現されれば、効果的かつ柔軟な実施が可能である。まず
図1aおよび1bを参照して、読み出しチャネルのサンプリング時のパルス振幅
は、以下で与えられる:
周波数領域においては、パルス振幅は以下で与えられる
ISIを減少するため、式(2A)は、1-W・(D+D-1)の形式のものが横断的フ
ィルタF1(s)を介してこの信号を通過させることを示唆している。このことは、
一般に図2に示されるような3タップフィルタとして知られている。この3タッ
プフィ
ルタの目的は、干渉期間におけるW2への従属性を強めることにある。よって、
フィルタ出力は次のようになる:
サンプル結果を図3に示す。2番目に近いサンプリング点の振幅が、Wではな
くW2である時(Wは通常1より小さい)、最も近いサンプリング点t1およびt-1
において完全なISI除去がされているのが直ちに認められる。t0とt1における
サンプル間の対比は、今、1-2W2であり、フィルタがない場合の1-Wと比べてか
なり改善されている。
等しくなる。よって、このフィルタは、図4に示す、よく知られたコサインフィ
ルタとよく似ているといえる。
高密度記録のため(図22に良く示されている)、トラック上のマークはオー
バーラップし、最内周において.3から.4ほどの高密度のWが重要な意味を持つ。
したがって、W2は0.1から0.15の範囲内となる。よって、5タップフィルタ
は、
で示される信号を生成する。
図5aは5タップフィルタを示し、図5bは種々のサンプリング時において測
定される振幅を示す。この場合、t1およびt-1における振幅が3W3に等しいのに
対し
トラストが得られる。t3およびt-3においてW3の振幅が生じているが、t2および
t-2においては信号が生じていない。したがって、5タップフィルタは、3タッ
プフィルタによって達成される改良を超えて、ISIを低減する。
複数タップフィルタの伝達関数は一般化でき、次のように表される:
図6に示すように、一般化したフィルタとして構築することができる。この伝
達関数を用いて、複数タップ横断的フィルタは、W0,W1(2つ),W2(2つ
)等
の2n+1のタップウエイトを持つ。タップウエイトは、下記の二項式によって定義
される。
ここで、mCnは、二項係数である。
したがって、タップ係数は、Dと同じ順序で各項を集めることによって、式(
5)から直接導かれていることが、当業者には明らかであろう。
nが大きくなるほど、関数F(n)(s)は下記に近づくことが、指摘される重要な
ことである。
当業者であれば式7から理解できるように、nの増加とともに、一般化された
フィルタは、読み取り応答の逆に近づき、より完全にシンボル間の干渉をキャン
セルすることになる。実際には、限定されたタップの数が、ISIを小さくする
ために用いられる。この伝達関数の他の側面はインバースフィルタであり、他の
実施例としては無限インパルス応答フィルタ(IIR)である。IIRの一般的
な構成は、図7に示すとおりである。
しかしながら、タップの数を増やすと、ノイズの振幅が大きくなる。入力信号
がホワイトノイズを含んでいる場合、フィルタによるノイズパワー振幅(GN)
は、下式で与えられる:
ここで、fは周波数、Tはサンプリング期間、F(n)(f)は上記式(5)から導か
れ次のように示される:
n=1,2,3,4および∞の場合のF(n)(f)の種々のプロットを、図8に示す。ノイ
ズ振幅は、タップの増加に伴って大きくなることが窺える。図9に示すように、
式9は、ホワイトノイズ入力に対するノイズパワー係数の計算にも用いることが
できる。
システム中のノイズがホワイトである場合、極端なノイズ増加なしに、ISI
を適切に減少できるいくつかの最適なnが存在しうることが、以上のことから示
唆される。しかし、光学記録媒体のノイズ特性は、ホワイトノイズに比べ、低周
波から高周波にわたって全般に減少したものである。これを図10に示す。さら
に、図11および図12に明らかに示されているように、奇数番目のフィルタ(
n=1,3等)は、偶数番目のフィルタに比べて良好な低周波減衰特性を持っている
。したがって、図10に示す特性のようなノイズ特性を示す記録媒体に対しては
、奇数番目のフィルタが好ましい。
図10に示すノイズ特性を持った媒体について、nが奇数である本発明のフィ
ルタは、ノイズエネルギーの増大よりも減少をもたらすことが、分析的な解析に
より示される。これは、図11に示すように、フィルタがデータサンプリング周
波数の半分の近傍でノイズエネルギーを増幅する一方で、低周波数においてのフ
ィルタの大きな減衰特性によるものである。したがって、全体的な結果として、
ノイズは増幅されず、むしろ減衰される。
次に述べる他の実施例は、読出パルスが非対称である場合に、最適なISIフ
ィルタリングを行なう。図15を参照すると、記録マークや読出ビームスポット
またはその双方が、半径方向に関して非対称であれば、読出パルスの左サイドに
おける干渉ウエイトW-は、右サイドのウエイトW+と異なったものになる(図1
5によく現われている)。このようなケースにおいては、一般化されたフィルタ
(および結合されたタップウエイト)の伝達関数は、下記のように変更される:
および、
図16に示すように、非対称フィルタは対称フィルタと同じような構成を有す
る。
他の実施例では、次に述べるように、隣接するトラックの干渉をフィルタリン
グしている。上記フィルタは、主として対象となるトラック上のマークからのI
SIに関するものであるか、ISIは隣接するマークからも生じる。図17に示
すように、マーク間隔の半分で隣接するトラックがオフセットされていれば、隣
接するマーク間には、特別な関係がある:
および、
W01,W10,W11,W20およびW21は、それぞれ、マークA,B,C,DおよびEからの
、対象となるマークに対する干渉の量Xである。
この特別の関係に基づいて、偶数位置が対象マークの位置である場合、偶数お
よび奇数タイミング位置の双方のサンプリングによりイコライザを構成すること
ができる。したがって、サンプリング周波数は、データ周波数の2倍となる。
(図14に示す)イコライザは、隣接するトラックが両者間に存在する特別の関
係を介して「互いに結合」されているので、結合フィルタと呼ばれている。
したがって、偶数サンプルは、FA(S)=1+W20(D2+D-2)の伝達関数を有する第1
の横断的フィルタに送られる。奇数サンプルは、FB(S)=W10(D+D-1)の伝達関数
を有する第2の横断的フィルタに送られる。結合フィルタの出力Seq(S)は、下
記で示される
トラックが互いに極めて近接している場合には、このアルゴリズムは極めて効
果的であり、高いBERが達成される。しかしながら、トラックスペースが比較
的大きい場合には、この結合フィルタはそれほど効果的でない。
帯域レベルのダイアグラムを検討すれば、上記式によるフィルタの重要性をよ
り良く評価することができる。(図18に示すように)低い記録密度においては
、レベル「1」と「0」がうまく分離され、「1」バンドと「0」バンドがとも
に狭い(図20参照)。正確なデータ再生のためには、イコライゼーションは必
要でない。しかしながら、密度が高くなるにつれて、最悪ケース「1」と最悪ケ
ース「0」との間の差により定義されるバンドギャップ(G)は小さくなり、バン
ドは広くなる(図19および21)。極めて高い記録密度においては、トラック
に沿ったマークはオーバーラップし(図22参照)、Gは負になる(図23参照
)。イコライザの機能は、可能な限りギャップを増やすことであり、正確なレベ
ル検出を可能とすることである。
トラックに沿ってマークがオーバラップする場合には、このような数式はもは
や正確ではなくなるが、イコライザの相対的メリットの良きガイドを与える。マ
ークのオーバラップが無い場合、制限された形の数式は、
GOはイコライザが無い場合のギャップ、G_N1等は3タップフィルタがある場
合のギャップ等である。W20およびW11は、トラックに沿っておよびトラックを
横切って最も近い干渉のウエイトである(図17に良く現れている)。
バンドギャップを広くすることに加えて、与えられたイコライズされたバンド
レベルに対して、正確な検出の可能性を決定する、読出チャネル信号対ノイズ比
SNRもまた重要である。
ISIがなく低記録密度においては、ビットエラーレートは下記によりチャネ
ルSNRに関連する:
したがって、10-6のレンジのBERを11dBのチャネルSNRによって得るこ
とができる。しかしながら、ISIがある場合には、BERを決定するためのG
NR(すなわち、バンドギャップをノイズのrmsで割ったもの)という新たな表
現を用いる方が便利である。よって、最悪のデータパターンにおいて、10-6より
小さいBERを達成するため、比GNRは約10または20dBとすべきである。媒
体の欠陥によるエラーを検出する高能力(EDAC)(エラー検出および訂正)
システムに用いるための光記録システムにおいては、10-6以下のBERが適切で
ある。
上記のように、Gは、イコライザの干渉ウエイトに依存する。しかしながら、
ノイズもまたイコライザによって増幅される。読出チャネルのノイズがホワイト
であり、σのRMS振幅を有するとすれば、イコライズ後のノイズ振幅は以下に
よって与えられる:
式19から21および式14から17を組み合わせると、異なるイコライザの
ためのGNRが見出される。σはノイズ期間すべてに共通であるから、σが低下
するGNRを用いた種々のイコライザを比較することは意味のあることである。
3つのイコライザの比較結果を、図13に示す。順にG/Nが増加する傾向にあ
ることに注意が引かれる。
しかしながら、既に述べたように、光学的媒体のノイズスペクトルはホワイト
ではなく、図10に示すよいうに、低い周波数において多くのエネルギを含み、
高い周波数になるにつれて一様に減少する。したがって、式(19)から(21)は
、gnrが順次高くなるという一般的な傾向が維持されるとしても、光学的記録媒
体に実際に適用することはできない。
動作環境に応じて、蓄積媒体上のマークの大きさおよび形は変わりうる。この
ような事態においては、ISIフィルタリングの最適レベルを維持するため、リ
アルタイムの調整が必要である。ディジタル蓄積装置においては、通常、蓄積媒
体は、システム情報が記録されるヘッダーセクションと、情報書き込み読み出し
セクションを備えている。データセクションおよびヘッダーセクションの双方に
おいて、情報は個々のマークの形式で記録される。リアルタイム調整は、ヘッダ
ーエリアに1以上のマークを分離して配置することにより行われ、その目的は干
渉比WおよびW11をリアルタイムに得ることにある。
図24を参照して、この調整および計算は、T=T-1,T0およびT+1において
、分離されたマークをサンプルしてディジタル化した時に生じる読み出しパルス
の大きさを計測することにより達成される。この計測結果は、それぞれ、A-1,
A0およびA+1の振幅である。その後、デバイダ(図24aのブロック109に
現れている)は、値Wを提供するA-1/A0および/またはA+1/A0の比を生成す
る。さらに、しきい値DLを決定するため、クロストーク干渉比W11を計測する
必要がある。これは、対象トラック上のマークの無い点においてサンプルをとっ
たときに、対象トラックに隣接するトラック上の分離マークから生成されるパル
スを測定することにより実行される。図24a、24bおよび24c参照のこと
。サンプルB-1とB+1はT2および/またはT/2に採取され、比B-1/A0また
はB+1/A0は値W11を提供する。実際、図25に示すように、ある場所でのWを
測定し次の場所でのW11を測定する
ことができるように、与えられたトラックの分離されたマークは、ヘッダーエリ
アの他の場所で生成される。これらの値は、ディジタル・シグナル・プロセッサ
(DSP)に受け取られる。値が所定の範囲から外れている場合には、ディジタ
ル・シグナル・プロセッサは、マークの形状およびサイズが変わったことを認識
し、タップウエイトとDLを再計算する。その後、横断的フィルタのタップウエ
イトおよびしきい値DLがリセットされる。これにより、横断的フィルタは、シ
ンボル間干渉のフィルタリングレベルを最適化し続ける。
好ましい実施例
図24aおよび25に、本発明の原理に基づいて構成された、ディジタルイコ
ライザおよび付随機能ブロックの好ましい実施例を示す。当業者であれば、ここ
に示した種々の機能ブロックの構成および動作を直ちに理解できるであろう。し
かしながら、ブロックの簡単な説明およびブロックがどのようにして本発明を実
現するのかを以下に述べる。
まず、100はマークが付けられた光ディスクである。レーザー100および
光ピックアップ101は、公知の方法によりディスク100上のマークに機能的
に作用し、情報のビットを書き込み、読み出す。次に、信号を増幅するためプリ
アンプ部に伝送される信号が生成される。増幅された信号は、光学的に検出され
たディスク100のヘッダーおよびデータエリアからの信号の増幅およびフィル
タリングを提供する読み出しチャネル部103に、クロックの生成およびドライ
ブのデータ検出で使用するために伝送される。
信号は、読出チャネル部103からサンプル部104に伝えられる。ここで、
増幅された信号の振幅サンプルは、所定のデータレートにしたがって所定の離れ
た間隔で取得される。その後、サンプリングされた情報は、アナログ・ディジタ
ル・コンバータ(ADC)によってデジタイズされ、イコライザ部105に伝送
される。分離されたマークに関してサンプルした振幅は、後にDSP106に送
られる上述のWおよびW11を生成するため、デバイダーに送られる。当業者であ
れば理解できるように、イコライザー部105は上述の横断フィルタを備えてい
る。イコライザー部105は、シフトレジスタ50当の信号遅延器;所定のおよ
び再計
算されたタップウエイトを実現するための調整可能な乗算装置51;およびフィ
ルタ信号を生成するため種々の乗算され遅延された信号を結合する加算装置52
を備えている。実質的に、このイコライザー部105は、上述のアルゴリズムお
よび数式を用いた上記の横断的フィルタを実現するものである。これらの機能を
実行する装置の一例は、Harris CorpがモデルHSP 43891/883として製造を行
っている。
DSP部106は、ゲインを測定し、イコライザ部105に含まれるフィルタ
で用いるための係数(すなわちタップウエイト)およびしきい値レベルを決定し
、必要に応じて新たな係数を実現するようにイコライザーに指令する。これらの
機能を実現するDSPの一例としては、Analog devices Corporationの製造によ
るASDP 2105がある。
その後、イコライズされたデータは、データバッファ部108に順次保持され
、バッファ部108からデータを読み取るホストコンピュータとのインターフェ
イスがとれるまでブロック109においてバッファリングされる。イコライザー
部105からのデータは、ディスク100からのデータの再構築の際にエラーが
生じているか否かを決定するため、エラー検出訂正部107(EDAC)に送ら
れる。エラーが生じた場合、ブロック110において、イコライザーのパラメー
タの再調整が必要であることを示すため、エラーフラッグがセットされる。当業
者であれば、訂正ルーチンはブロック107においても用いることができること
を理解できるであろう。
上記の機能ブロックは、多くの構築および動作特性を考慮すべきであり、産業
界においてよく知られている。前述の説明において、本発明の構成および機能の
詳細とともに、本発明の種々の特性および利点を示したが、開示は説明のためだ
けのものであって、特に、遅延、乗算器、マークスペースおよびトラックスペー
スの数については、詳細な変更が可能であることが理解できよう。また、本発明
は磁気媒体、特に光ディスク媒体と同じようなノイズ特性の媒体とともにも用い
ることができる。さらに、当業者の知識の範囲内においてその他の修正、変更が
でき、これらは添付の請求の範囲の広い範囲中に含まれる。
【手続補正書】特許法第184条の8
【提出日】1994年11月7日
【補正内容】
さらに、既存の全ての形成の横断的フィルターは、隣接するトラックからのシ
ンボル間干渉をランダム雑音として処理する。このため、ゼロ強制フィルターは
、隣接トラックとのシンボル間干渉を増幅し、情報信号を歪ませる。
遅延およびウエイト付けを利用した従来装置の例として、ヨーロッパ特許EP
-A-0 150 114は、その一方にスケーリングされた入力サンプルが印加され、他
方にスケーリングされていない入力サンプルが印可される並列タップ遅延ライン
を持った限定応答フィルタを一般的に開示している。その後、ウエイト付け回路
は、フィルタ出力を生成するために付加されるウエイト付けされたサンプルを生
成するために用いられる。
この結果、情報の高密度蓄積においては、(1)イコライゼーション・フィル
ターのタップウエイトを最適化することにより、シンボル間干渉を許容可能な程
度に最小化し、雑音を増幅することなく、むしろ減衰させるもの、(2)もし、
蓄積媒体のマークのサイズが変化した場合に、タップウエイトを効率的に調節す
るもの、又は(3)隣接するトラックからのシンボル間干渉をより効率的にフィ
ルタする再生フィルターおよび装置が要求される。
発明の概要
本発明は、情報信号からISIを除去するための簡易かつ効率的な装置および
方法を提供するものである。情報を蓄積媒体から再生する場合、ISIを減少さ
せるため、情報は、特殊な伝達特性を有する横断的フィルターを通過する。本発
明は、また、フィルターの動作パラメータを計算し、設定するための手段および
方法、およびバイナリ1とバイナリ0の検出しきい値を計算し設定するための手
段および方法を提供するものである。このフィルターの他の重要な態様は、光記
録媒体に見られるような低周波数に含まれている大きな雑音エネルギーを伴った
雑音域を有した雑音を増幅するのではなく、むしろ減衰させることにある。本発
明の他の態様は、タップウエイトをリアルタイムに調節し、動作環境において様
々な理由によりマークの大きさが変化する場合にしきい値を決定できることにあ
り;これにより、最大割合でのデータ再生が維持される。
本発明の原理に従って構成された第1の好ましい実施例において、情報蓄積媒
体上のマークは、おなじ大きさを有し、対称形状であると仮定する。この媒体は
、一般的に特殊な品質管理装置を用いて製造されているため、これらの条件は、
読み出し専用媒体が使用される環境において共通して見受けられる。しかしなが
ら、この条件は、本技術分野の当業者であれば理解するように、他の媒体におい
ても見ることかできる。この条件下において、フイルターのタップウエイトを決
定および設定するためのアルゴリズムは、容易に実行される。蓄積媒体から取込
まれたサンプリング周波数および分離マークの振幅形状(プロフィール)が与え
られると、本発明は、信号をフィルタリングするためのフィルターを備えるよう
になり、これによりフィルターは複数のタップを有し、以下の一般的な形式を有
する伝達関数によって定義される:
ここで、Wは、実質的に分離され、書き込まれたマークの読み出しパルス形状か
ら導き出される;Wは、マークの中心が発生した瞬間にマークの中心がサンプル
振幅により分割されて発生した時(後のサンプル振幅は、実質的に読み出しパル
ス形状のピークである)よりも時間T早くまたは時間Tよりも遅い時刻における
サンプル振幅の比と等しい;Dは、遅延演算子であり、eSTと等しく、sはラプラ
ス演算子であり;nは2に等しいかもしくは大きい;Tはデータクロックの期間
を示す。タップウエイトは、上記伝達関数からのDと同じ順序の項を集計するこ
とにより決定され、合計2n+1のタップが存在する。
本発明のイコライゼーション・フィルターが、実際に雑音を増幅させず、むし
ろ減衰させるのは、以下でさらに議論するように、フィルターがサンプリングし
たデータの周波数の約半分の雑音を増幅するにも拘らず、低周波数におけるフィ
ルターの強い減衰特性によるものである。多量の雑音を低周波数において含む記
録媒体として知られているものには、光記録媒体があり、本発明のフィルターは
、最も雑音が発生する領域で雑音を減衰させ、雑音をあまり含まない領域を増幅
するので特に有利である。したがって、分析に基づいた実際の最終的な総合結果
として、殆ど全ての既存の横断的フィルターが雑音を増幅するにもかかわらず、
雑音は増幅されず、むしろ減衰している。
さらに、フィルターからの結果出力が、バイナリ1であるかバイナリ0であ
るかを決定するためのしきい値(DL)は、以下の値WおよびW11から演算する
ことができる:
ここで、W11は、分離されたマークが存在するトラックに隣接するトラック上の
第2パルスの形状から導き出され;分離マークが存在するトラックでマーク中心
が発生した時よりもT/2早くまたはT/2遅い時点で、分離マークが存在するト
ラッ
この場合、nは2と等しいかまたは大きい。この伝達関数の利点は、DSPが
タップウエイトを演算することを可能にすることであり、これによりマークの形
に拘らず、最適レベルのフィルタリングを行なうことが出来るということである
。
本発明の他の態様は、マークが一定の配列に整えられていた場合に、シンボル
間干渉の最適なフィルタリングを行なうことにある。この配列において、最初の
トラック上のマークは、等間隔に配置される。隣接するトラック上では、マーク
はずらして配置されているので、最初のトラック上のマーク間の中間点を挟んで
並列に配置される。この配列は、目標トラック上のマークの位置と一致する偶数
のサンプル点および目標トラック上のマーク間の中間点の位置と一致する奇数の
サンプル点を供給する。目標トラックは、RAMヘッドがそのトラックから情報
を取込もうとするトラックのことである。例として米国特許番号5、031、168を参
照のこと。
この配列により、目標トラックに隣接するトラック上のマークから生成された
シンボル間干渉の最適なフィルタリングを行なうフィルターおよび伝達関数の開
発が可能となる。このサンプリング技術は、同じトラックおよび隣接するトラッ
ク上のマークからのシンボル間干渉を最小化するために信号をフィルタリングす
る装置の開発を可能にし、装置は以下を備えている:等間隔でサンプル採取した
情報信号をフィルタリングするための第1手段;奇数間隔でサンプル採取した情
報信号をフィルタリングするための第2手段;および第1フィルター手段でフィ
ルタリングされた情報信号をフィルタリングするための第2手段でフィルタリン
グされた情報信号に加える手段。第1サンプル手段の伝達関数は、F(s)=1+W20
(D2+D-2)と定義され、第2サンプル機能の伝達関数は、F(s)=1+W10(D+
D-1)と定義される。W20は、前に議論したWと同じ干渉率として定義される;
サンプルは、例えば、サンプリングの偶数点(even points)において採取され
る。W10は、分離されたマークの中心におけるサンプル振幅に最も近い奇数点に
おいて採取されたサンプル振幅の干渉比として定義される。
本発明を特徴付ける上記又は他の利点及び特徴は、この文書に添付し、この文
書の一部をなすクレームにおいて特定し指摘されている。しかしながら、本発明
をよりよく理解するためには、使用により得られる利点および目的は、さらに本
算されたタップウエイトを実現するための調整可能な乗算装置51;およびフィ
ルタ信号を生成するため種々の乗算され遅延された信号を結合する加算装置52
を備えている。実質的に、このイコライザ一部105は、上述のアルゴリズムお
よび数式を用いた上記の横断的フィルタを実現するものである。これらの機能を
実行する装置の一例は、Harris CorpがモデルHSP 43891/883として製造を行
っている。
DSP部106は、ゲインを測定し、イコライザ部105に含まれるフィルタ
で用いるための係数(すなわちタップウエイト)およびしきい値レベルを決定し
、必要に応じて新たな係数を実現するようにイコライザーに指令する。これらの
機能を実現するDSPの一例としては、Analog devices Corporationの製造によ
るASDP 2105がある。
その後、イコライズされたデータは、データバッファ部108に順次保持され
、バッファ部108からデータを読み取るホストコンピュータとのインターフェ
イスがとれるまでブロック109においてバッファリングされる。イコライザー
部105からのデータは、ディスク100からのデータの再構築の際にエラーが
生じているか否かを決定するため、エラー検出訂正部107(EDAC)に送ら
れる。エラーが生じた場合、ブロック110において、イコライザーのパラメー
タの再調整が必要であることを示すため、エラーフラッグがセットされる。当業
者であれば、訂正ルーチンはブロック107においても用いることができること
を理解できるであろう。
上記の機能ブロックは、多くの構築および動作特性を考慮すべきであり、産業
界においてよく知られている。前述の説明において、本発明の構成および機能の
詳細とともに、本発明の種々の特性および利点を示したが、開示は説明のためだ
けのものであって、特に、遅延、乗算器、マークスペースおよびトラックスペー
スの数については、詳細な変更が可能であることが理解できよう。また、本発明
は磁気媒体、特に光ディスク媒体と同じようなノイズ特性の媒体とともにも用い
ることができる。
請求の範囲
1.蓄積媒体を読み取るランダムアクセス・メモリヘッドによって生成される
形式の信号をフィルタリングする装置であって:
a)所定の期間信号を遅延させる複数の伝達遅延手段(50);
b)入力および出力を有する調整可能な複数の乗算装置(51)であって、タッ
プウエイトによって遅延信号を乗算するため、前記入力において前記遅延手段(
50)に機能的に接続された乗算装置;
c)前記各乗算装置(51)の出力に機能的に接続され、前記乗算装置(51)か
らの乗算され遅延された信号を加算して、フィルタリングされた信号を生成する
ための加算手段(52);
を備えたものにおいて
装置の伝達関数が:
によって表わされ、これによりフィルタリングされた信号のシンボル間干渉が最
小化され、信号に現われるノイズが低周波において顕著に減衰されることを特徴
とするもの。ここで、Wはマーク中心が生じた時のサンプル振幅によって分割さ
れるマーク中心発生時よりもT早い時かT遅い時の実質的に分離されたマークの
サンプル振幅の比によって定義される干渉比、DはeSTに等しい遅延演算子、sは
ラプラス演算子であり、nは2と等しいかまたは大きい、前記タップウエイトは
伝達関数から同じ順番Dの項を集めることにより決定される。
2.請求項1の装置において、乗算装置(51)の数が7であることを特徴とす
るもの。
3.請求項1の装置において、前記媒体は、それぞれがディスクの中心から半
径を有するほぼ同心円状またはらせん状のトラックに記録された情報を有するデ
ィスクであり、Wの値は与えられた半径のために予め定められており、タップウ
エイトは各所定の値Wのために決定されることを特徴とするもの。
4.請求項3の装置において、タップウエイトは、ルックアップテーブルを用
いて与えられた値Wのために決定されることを特徴とするもの。
5.請求項3の装置において、さらに下記を備えたもの:
a)前記媒体上の分離されたマークのパルス形状を測定する手段、ここで前記パ
ルス形状は信号によって運ばれる;
b)測定したパルス形状からWを決定する手段;
c)決定したWにしたがって、新たなタップウエイトおよび新たなしきい値を決
定する手段;
d)前記乗算装置を新たなタップウエイトに設定する手段。
6.請求項5の装置において、新たなタップウエイトおよび新たなしきい値を
決定する手段は、ディジタル・シグナル・プロセッサ(106)を備えていること
を特徴とするもの。
7.請求項5の装置において、さらに、フィルタリング信号がバイナリー1で
あるかバイナリー0であるかを決定するために、しきい値を利用する比較手段を
備え、しきい値DLは値WおよびW11から計算されることを特徴とするもの:
DL=(1/2)(1-2W)(1+4W2)(1+2W+4W11)
ここで、W11は、第1のパルス形状が位置する径に隣接する径の第2のパルス
形状から導かれる第2の干渉比として定義される。
8.請求項7の装置において、W11は、パルス中心が発生する時からT/2早
い時点またはT/2遅い時点におけるサンプル振幅の、第1のパルス形状が位置
する径に隣接する径の、分離されたマークが位置する径において、パルス中心が
発生する時のサンプル振幅に対する比として定義されるもの。
9.信号をフィルタリングする方法であって下記のステップを備えたもの:
a)生成された信号を受け取り;
b)生成信号を、複数の遅延信号にタップウエイトを乗算するための複数の調整
可能な乗算装置を含むフィルタを通してフィルタリングし、ここで、前記フィル
タは下記の伝達関数F(s)を有している:
ここで、WはWはマーク中心が生じた時のサンプル振幅によって分割されるマー
ク中心発生時よりもT早い時かT遅い時の実質的に分離されたマークのサンプル
振幅の比によって定義される干渉比、DはeSTに等しい遅延演算子、sはラプラス
演算子であり、nは2と等しいかまたは大きい、前記タップウエイトは伝達関数
から同じ順序Dの項を集めることにより決定され、フィルタリング信号における
シンボル間干渉が最小化され、信号に存在するノイズが低周波で大きく減衰され
る。
10.請求項9の方法において、生成された信号は、光ディスクからデータを
読み出す形式のランダムアクセス・メモリヘッドによって生成される場合におい
て、データは光ディスク媒体におけるマーク上に蓄積され、マークは、通常、光
ディスクの中心から異なる半径にある円状トラック、同心円またはらせんにおけ
るトラック内に配置されており、下記のステップを備えたもの:
a)トラックの読み出しを行なう前に各トラックのためにWを決定するステップ
;
b)新たなWのために対応するタップウェイトを計算するステップ;および
c)各乗算装置に計算されたタップウェイトを設定するステップ。
11.請求項10の方法であって、下記のステップを備えたもの:
トラック上の実質的に分離されたマークによりリアルタイムに生成されたパルス
の形状を測定するステップにおいて、Wの値は、マークの中心が発生した時点で
マークの中心がサンプル振幅により分割された時、T早い時点またはT遅い時点
におけるサンプルされた振幅の比率と等しい。
12.請求項11の方法であって、さらに、エラーを検出するととともに、W
を再計算するステップを備えたもの。
13.蓄積媒体を読むランダムアクセス・メモリヘッドにより生成され、パル
スが非対称である信号をフィルタリングするための装置であって、以下を備えた
装置:
a)特定の信号を遅延させる複数の伝達遅延手段(50);
b)タップウェイトによって遅延した信号を乗算するために前記遅延手段(50
)の入力において装置(51)に機能的に接続されており、入力および出力を有す
る複数の調整可能な乗算器装置(51);および
c)前記の各装置(51)の出力に機能的に接続され、前記装置(51)からの遅
延信号の乗算結果を加算するための加算手段(52)であり、これによってフィル
ターされた信号が作り出される装置おいて、
該装置の伝達関数が:
によって表わされ、W+およびW-は径方向に関して非対称なマークのための非対
称干渉比であり、読み出しパルス(W-)の左側での干渉ウエイトが右側(W+)
のそれと異なっている、Dは遅延演算子であってeSTに等しく、nは2と等しいか
または大きい、sはラプラス演算子であり、前記タップウェイトは上記伝達関数
からのDにおける同じ命令の条件を集計することによって決定される、これによ
り、フィルターされた信号におけるシンボル間干渉は最小化され、低周波数にお
いて信号とともに存在するいかなる雑音を著しく減少させる。
14.請求項13の装置において、乗算装置(51)の数が7であることを特徴
とするもの。
15.請求項13の装置であって、さらに下記を備えたもの:
a)パルス形状は信号によって運搬されるものであり、媒体上の分離されたマ
ークのパルス形状を計測するための手段;
b)計測したパルス形状からWを決定する決定する手段;
c)決定されたWに従い、新たなタップウェイトおよび新たなしきい値を決定
する手段;および
d)新たなタップウェイトを用いて前記乗算手段を設定する手段。
16.請求項15の装置において、新たなタップウェイトおよび新たなしきい
値を決定する手段は、ディジタル・シグナル・プロセッサー(106)を備えてい
ることを特徴とするもの。
17.非対称信号をフィルタリングする方法であって、下記のステップを備え
たもの:
a)生成信号を受取るステップ;
b)生成信号を、複数の遅延信号にタップウェイトを乗算するための複数の調
整可能な乗算装置を含むフィルターを通してフィルタリングするステップ、ここ
で、フィルターは下記の伝達関数F(s)を有している:
ここで、W+およびW-は径方向に関して非対称なマークのための非対称干渉比
であり、読み出しパルス(W-)の左側での干渉ウエイトが右側(W+)のそれと
異なっている、Dは遅延演算子であってeSTに等しく、nは2と等しいかまたは大
きい、Dは遅延演算子であってeSTに等しく、sはラプラス演算子であり、前記タ
ップウェイトは上記伝達関数からのDにおける同じ命令の条件を集計することに
よって決定される、これにより、フィルターされた信号におけるシンボル間干渉
は最小化され、低周波数において信号とともに存在するいかなる雑音を著しく減
少させる。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 ローフェンバーガー,ジェームズ エイ
チ.
アメリカ合衆国,コロラド州 80919,コ
ロラド スプリングス,リフレ サークル
6427
(72)発明者 ポポヴィック,スティーブ エス.
アメリカ合衆国,コロラド州 80906,コ
ロラド スプリングス,ウェッジウッド
コート 375
【要約の続き】