【発明の詳細な説明】
難燃剤
本発明は様々な熱可塑性および熱硬化性ポリマー材料における使用に適切なハ
ロゲン非含有難燃剤に関する。
機械の電気火災は電気的故障の結果として頻繁に起こり、ワイヤーおよびケー
ブルの絶縁用クラッドのようなポリマー材料の発火および燃焼を起こす。このよ
うな火災は、火災だけでなく、ポリマー材料の熱崩壊から誘導される毒性ガスの
発生から、作業者および特性の両方に対して潜在的な危険を示す重大な問題であ
る。発火部分へのアクセスが物理的に制限されるとき、例えば、機械内部、周辺
部等では、火災を消すまたは火災を認識することさえ制限されるので、この問題
は複雑である。従って、燃焼に対して向上した耐性を有するポリマー組成物の開
発に多くの興味が注がれてきた。
特定の化合物をプレポリマー組成物中にブレンドすることが最終製品の燃焼に
対する難燃効果を与えうることが知られている。ハロゲン含有難燃剤が知られて
おり、そしてポリマー材料の易燃性を減じるために使用されている。しかし、ハ
ロゲン化された難燃剤の使用に関する問題の認識が高まっている。例えば、ハロ
ゲン化難燃剤は高い煤煙発生および毒性ガスの両方をもたらすことが知られてお
り、それは作業者および消防員等に対して危険であり、隣接する周辺部を損傷し
うる腐蝕性ガスをももたらす。更に、これらのガスはより広く環境悪化効果をも
もたらす。ハロゲン化難燃剤の代替品は(a)燐を基礎とする材料または(b)
燐を基礎としない材料のいずれかに広く分類されることができる。
殆どの燐を基礎としない材料は、不活性充填剤材料、例えば、炭
酸カルシウムを含み、それはあまり耐燃性効果を有しない。アルミナ三水和物、
水酸化マグネシウムおよび炭酸カルシウムはポリオレフィンポリマーの難燃剤と
して使用されてきた。不運なことに、このような材料は、所望のレベルの難燃性
能を達成するためには、ポリマー組成物の重量基準で高い充填量が要求される。
この高い充填量はポリマーの物性、例えば、引張強度および/または伸び率に明
らかに悪い影響を及ぼすことが判っている。更に、アルミナ三水和物のような材
料は低い熱安定性を有する。
燐を基礎とする難燃剤の使用は知られており、熱暴露時に、更なる燃焼を抑制
するように保護性の発泡した炭質物を形成するような発泡性配合物を発生する無
機燐酸塩の使用は特に知られている。このような配合物はセルロース型材料、樹
脂および塗料用の低分子量ポリオールを含む配合物、並びに他のこのようなコー
ティング材料に一般的に用途を見いだす。様々な燐含有化合物は開示されており
、例えば、Chemical Abstracts 92 111554および96 143939;米国特許第3,485,7
93号、第3,541,046号、第3,810,862号、第4,001,177号、第4,140,660号、第4,18
2,792号、第4,198,493号、第4,341,694号、第4,433,115号、第4,491,644号、第4
,587,362号、第4,642,366号、第4,742,088号、第5,089,559号および第5,010,133
号;国際出願公開第WO85/09626号および第WO89/01011号;豪州特許出願第7734
2/87号および欧州特許出願公開第0026391号、第0044835号、第0115871号、第02
04027号、第0413613号および第0466137号に開示されている。しかしながら、数
多くのかかる従来技術の難燃剤の1又は複数の下記の欠点に悩まされていること
が判っている:
(i)水感受性。
(ii)成分化合物とポリマーマトリックス間での非相溶性に基づ
く添加剤の移動。
(iii)ポリマーの物理特性に及ぼす添加剤の有害作用。
(iv)添加剤の高い特異性。
例えば、米国特許第4,491,644号は、主としてポリ(プロピレン)の中で利用
するために配合されている、メラミン及びビス(ペンタエリスリトールホスフェ
ート)燐酸より形成された塩を含んで成る商標名CHARGARDのもとで市販されてい
る難燃性添加剤を開示している。同様に、欧州特許第0,115,871号は窒素含有オ
リゴマー及びポリ燐酸アンモニウムを含んで成る難燃性添加剤を開示しており、
これは特定のポリマー、例えばポリエチレンに対して特異的なグレードで商標名
SPINFLAMで市販されている。従って、ポリマーにおいて使用する高性能な難燃化
法の要望が存続している。
1990年8月20日提出の我々の同時係属欧州特許出願第90309092.6は次式の核:
(式中、
nは整数であり、且つ2〜25の値を有し;
R1は20個までの炭素原子を含んで成るアルキル基を表わし;
るアルキル基、10個までの炭素環原子を含んで成るアリール核である)を表わす
か、又はR2は複数環核(これは4〜8個の環原子を含んで成り、少なくとも1
個の環原子が窒素であり、そしてこの環
核をトリアジン核に連結している)を有する化合物を、任意的に燐の起源との組
合せで含んで成る難燃性添加剤を開示している。
1992年4月24日提出の我々の英国特許出願第9208926.7号は、燐起源と、ポリ
マー又はオリゴマーであって下記の一般式により表わされるものから選ばれる反
復単位:
(式中、R1は20個までの炭素原子を含んで成るアルキル基、10個までの炭素
環原子を含んで成るアリール基、又は−YR5により表わされる基(ここで、R5は
アルキルであるか、又はその他の脂肪族基であって20個までの炭素原子を含んで
成るもの、又は10個までの炭素環原子を含んで成るアリール基であり、そしてY
はO,Sもしくは−NR6であり、ここで、R6は水素原子、20個までの炭素原子を
含んで成るアルキル基、10個までの炭素環原子を含んで成るアリール基であるか
、又はR5とR6は一緒になって複素環(N原子を含む)を形成してよく、ここで
その他の環原子はC,N,O及びSより選はれる)を表わし;
各R3は独立して、20個までの炭素原子を含んで成る二価の脂肪族連結基又は1
0個までの環原子を含んで成る二価の芳香族連結基を
表わし;
R2及びR4は独立して水素原子、20個までの炭素原子を含んで成るアルキル基
もしくは10個までの環原子を含んで成る芳香族基であるか、又はR3が脂肪族基
のとき、R2及びR4は−N−R3−N−を含む複素環を完成しており、残りの環
原子はC,N,O及びSより選ばれてよく、そして
X1はO,S又はNR2を表わし、ここでR2は前記の通りであり、そして
X2はO,S又はNR4を表わし、ここでR2及びR4は前記の通りである)
を有するものを含んで成る難燃性添加剤を開示している。
煤煙発生の低下した、腐蝕性ガス発生の低下した及び易燃性の向上したポリマ
ー材料のための難燃性添加剤における使用にとって適当である他の化合物がこの
度見い出された。これらの化合物はワイヤーおよびケーブル絶縁、熱復帰性材料
及び成形用部品にとって有用な様々なポリマーと相溶性である。
本発明の一の観点に従うと、無機燐含有酸とポリマー化合物との塩を含んで成
るハロゲン非含有難燃性添加剤を提供し、ここでこのポリマー化合物はホモポリ
マー又はコポリマーであり、そして少なくとも10の反復単位より形成され、且つ
複数の塩基性窒素官能基を含む線形骨格を含んで成る。この添加剤はポリマー材
料において、単独で、又はその他の難燃性添加剤と組合せて用いるのに適当であ
り、煤煙発生が低められ、腐蝕性ガスの発生が低められ、そして難燃特性の高め
られた添加剤をもたらす。本発明の難燃性添加剤は、ワイヤー及びケーブル絶縁
、熱復帰性品目、電気テープ及び成形部品にとって有用な様々な熱可塑性及び熱
硬化性ポリマーと相溶性である。この添加剤は、追加の成分、例えばその他の難
燃剤、充填剤
、着色料等を任意的に含んで成るコーティング組成物の中に分散剤として配合さ
れてもよい。更に、この添加剤はコークス、マスチック及びシール材の中に採用
されうる。
本発明の更なる観点に従うと、難燃性充填量の本発明の添加剤を含むポリマー
及びかかるポリマーから形成した物品を提供する。これらの添加剤はポリマー、
特に、しかしながら排他的にではなく、ポリオレフィンポリマーにおける使用に
とって極めて適当である。
燐含有酸との塩を形成するポリマー化合物は、その骨格において、又はそれに
懸垂している基において存在しうる塩基性窒素官能基を保有していなくてはなら
ない。このポリマーの骨格は線形であり、そして少なくとも10の反復単位より成
り、それらは同一である必要はなく、即ち、このポリマーはホモポリマー又はコ
ポリマーでありうる。反復単位当りの骨格原子の数は当業界によく知られている
通り、ポリマーのタイプで変更される。例えば、ビニル付加ポリマーは反復単位
当り2個の骨格炭素子を有し、一方、開環プロセスにより形成されたポリマーは
反復単位当りX個の骨格原子を保有し、ここでXはもとの環の中の原子の数であ
る。2つの二価モノマーの相互反応により形成されたポリマー(即ち、段階成長
ポリマー)については、反復単位当りの骨格原子の数は、各モノマーの分子当り
のカテナリー原子の数の合計であると解される。本発明の目的にとっては、ビニ
ル付加又は開環重合に由来するポリマーが好適である。
更に、この骨格はエンドキャップ基を除き少なくとも20個の原子、そして好ま
しくは少なくとも30個の原子を保有していなければならない。炭素及び窒素が好
適な骨格原子であるが、しかしその他のヘテロ原子、例えばO,S,P等も存在
していてよい。好ましくはこの骨格原子の少なくとも10個は、塩基性窒素官能基
の一部を構成
している窒素原子及び1又は複数の塩基性窒素官能基を含んで成る懸垂基に結合
している炭素原子より成る群から選ばれる。塩基性窒素官能基は窒素含有基であ
り、それらは窒素のプロトン化を介して酸との塩を容易に形成する。典型的な例
にはアミン類(第一、第二又は第三)及び窒素含有複素環、例えばピリジン類、
ピロリジン類、ピペリジン類、モルホリン類等が含まれる。線形骨格なる語は、
このポリマーが認知できる骨格を保有し、且つ尿素−ホルムアルデヒドとメラミ
ン−ホルムアルデヒドとの縮合物により形成されるものの如きの三次元ネットワ
ークの形態にないことを意味するのに用いている。即ち、このポリマーは、それ
が塩形成前に可溶性であり続けるのを担う、骨格由来のいくつかの枝を保有しう
る。線形骨格の利用は塩の合成のし易さの点で有利であり、なぜならそれは均質
な溶液の利用を可能にするからである。少なくとも10の反復単位を有するポリ
マーの相対的な高分子量は、ホストポリマーの中での添加剤を非移動性、且つ水
分非感受性とする。この塩は次式(I)により表わされる少なくとも一の単位
(I)〔RH〕+・1/Y〔XY-〕
(式中、
Rはポリマー化合物の窒素含有反復単位であり、
XY-は脱プロトン化又は部分脱プロトン化形態の燐含有酸であり、そして
Yは整数である)を含んで成る。この塩は好ましくは少なくとも10のかかる単
位、そしてより好ましくは10〜50のかかる単位を含んで成る。
Rは好ましくは一般式(II)又は(III)により表わされる構造を示している
:
(式中、
R1及びR2は独立してH又は5個までの炭素原子のアルキル基を表わし;そし
て
R3は塩基性窒素官能基を含んで成る基を表わす)。
R3により表わされる基の例には以下のものが含まれる:
式II及びIIIにより表わされるもの以外の反復単位はその他のモノマーとの共
重合の結果として存在していてもよいが、これは好適ではない。式IIの反復単位
を含んで成るポリマーの例には(限定することなく)、ポリエチレンイミンが含
まれる。式IIIの反復単位を含んで成るポリマーの例には(限定することなく)
、アリルアミン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、4−アミノスチレ
ン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート及びN−ビニルピロリドンの
ポリマー及びコポリマーが含まれる。この塩基性窒素官能基は、このポリマーを
作るのに用いたモノマーの中に最初から存在してよく(上記の例の場合)、又は
事前成形ポリマー、例えばポリビニルアミン及びそのN−アルキル誘導体上の前
駆体基の化学変化により作り上げられたものであってよい。
その他の有用なポリマーには、ジアリルアミン誘導体の重合に由来するシクロ
ポリマーが含まれ、これは「Encyclopedia of Polymer Science and Engineerin
g」第2版、第4巻、第543頁に記載の
通り相互連結型ピペリジン環を含んで成る。
燐含有酸の例には(限定することなく);オルト燐酸、次亜燐酸、トリメタ燐
酸、ポリ燐酸、亜燐酸、次燐酸及びピロ燐酸が含まれる。
当技術分野においてよく理解されている通り、R1〜R3により表わされる基に
関して多くの代替が寛容されうる。これらの基の説明及び再考を簡略化するため
、「基」 「核」及び「成分」を、置換を許容する又は置換されうるものと、置
換されない又はされないであろうものとを区別するために用いる。例えば、「ア
ルキル基」とは、純粋な炭化水素鎖、例えばメチル、エチル、オクチル、シクロ
−ヘキシル、イソオクチル、t−ブチル等を含むことを意図するだけでなく、当
業界において公知の慣用のハロゲン非含有置換基、例えばヒドロキシル、アルコ
キシ、フェニル、ニトロ、アミノ等を担持しているアルキル鎖も含んでいる。「
核」なる語は同様に置換可能と考えている。即ち、「ピリミジン」核なる表現は
、未置換のピリミジン環を含むのみならず、当業界に公知の慣用の置換基を担持
するピリミジン環も含む。一方、「アルキル成分」なる語は、純粋な炭化水素ア
ルキル鎖、例えばメチル、エチル、プロピル、シクロヘキシル、イソオクチル、
t−ブチル等のみを含むものに限定される。一般に、燃焼により毒性の煙霧を発
生しがちな置換基、例えばニトリル及び硫黄含有物質は好ましくない。
この難燃性添加剤は任意的に、P/N塩を他の燐を基礎とする難燃剤に配合せ
しめることにより調製されてよい。この第二の燐を基礎とする添加剤は当業界に
よく知られ、(使用される濃度において)それが添加されるべきポリマーの性質
に有害な影響を及ぼすことのない任意の無機又は有機燐起源を含んで成りうる。
この第二の燐起源の好適な例はポリ燐酸アンモニウム(Monsantoより商標名PHOS
CHK P-40のもとで市販)、メラミン燐酸塩(Albright and Wilsonより商標名AMG
ARD NHのもとで市販)及び赤色燐を含んで成る。この燐起源は任意的に水不溶性
樹脂の中等に封入されていてよい。好適な例はメラミンホルムアルデヒド中のポ
リ燐酸アンモニウムである(Hoechst Celaneseより商標名EXOLIT 462のもとで市
販)。
もしP/Nポリマー塩をこの第二の燐を基礎とする添加剤と一緒に使用するな
ら、この組合せ添加剤中の第二の燐を基礎とする添加剤のパーセンテージ(重量
)は、難燃性にすべきポリマーの易燃性及び達成すべき難燃度のレベルに依存す
るが、しかし好ましくは70重量%以下、より好ましくは50%以下、そして最も好
ましくは30%以下とする。
P/N塩及び第二の燐起源の粒子サイズは難燃化材料の易燃特性及び物理特性
の両者にとって重要である。好ましくは、両添加成分は易動状態にあり、そして
80μm未満、より好ましくは40μm未満の平均粒子サイズを有する。かかる粒子
サイズを得るための慣用の方法には、篩、ボールミル及びジェットミルの利用が
含まれる。他方、P/N化合物の調製の際、最終生成物の沈殿が粒子サイズを最
小限とするのに活用されうる。
本発明の難燃性添加剤の高い熱安定性に基づき、多種多様なポリオレフィン及
びその他のポリマーに難燃特性を授けるのが可能である。好適なポリマーには低
密度ポリ(エチレン)(LDPE)、ポリ(エチレン−エチルアクリレート)(EEA
)、ポリ(エチレン−アクリル酸)(EAA)、ポリ(エチレン−酢酸ビニル)(E
VA)、ポリ(プロピレン)(PP)、エチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EP
DM)及びそれらのコポリマーが含まれる。その他の好適なポリマーにはエポキシ
樹脂が含まれる。
ポリマーの選定、即ち、易燃性、溶融指数(ASTM)及びコポリマ
ー含有量は、添加すべき難燃剤の量及び達成すべき難燃度のレベルに影響を及ぼ
すであろう。一般に、難燃剤の総充填量は組成物全体の10〜60重量%、好ましく
は20〜50重量%とする。本発明の難燃性添加剤はEVA及びEEA配合物における使用
にとって極めて適切である。
本発明の難燃性添加剤、即ち、P/N塩及び任意的に第二の燐起源を含んで成
るポリマー(以降、「本発明のポリマー」と呼ぶ)は例えば、化学的、又は高エ
ネルギー放射線のいづれかにより架橋されうる。化学架橋法の例には、フリーラ
ジカル開始剤、例えば過酸化ジクミルの、補助硬化剤、例えばトリアリルイソシ
アヌレートと一緒での利用、又はMaillerfer及びDow Corningのそれぞれから商
標名MONSIL及びSIOPLASのもとで市販されている製品を用いるシラン架橋技術が
含まれる。高エネルギー放射線による架橋も、例えば電子線による照射により利
用できうる。放射線照射量は2〜40Mradのレンジにあり、好適には10〜20Mradが
適当である。照射中の架橋を促進するため、ラジカルプロモーター、例えばトリ
アリルイソシアヌレートが使用されうる。
表面処理を、難燃性添加剤とポリマーホストマトリックスとのカップリングを
高めるために使用できうる。ジルコアルミネート及びチタネートの如きの材料、
又はより一般的にはシランカップリング剤が使用されうる。
その他の添加剤、例えば煤煙抑制剤、酸化防止剤、熱安定化剤、UV安定化剤等
を添加してよい。しかしながら、それらがP/N化合物の難燃性メカニズムの妨
げとならないようその添加剤の選定において注意を払わねばならない。塩基性酸
化物、例えば酸化マグネシウム又は酸化亜鉛は高濃度において極めて有害である
ことが見い出されている。同様に、水和水を含む添加剤、例えばアルミナ三水和
物も高濃度において阻害しうる。
本発明の難燃性添加剤を含むポリマーは慣用の方法、例えばバンバリー又は二
軸ミルを利用して加工でき、そして圧縮又は射出法のいづれかにより押出又は成
形されうる。本発明のポリマー組成物はワイヤー及びケーブル絶縁体、寸法回復
性製品、特に熱回復性製品、成形部品、押出チューブ、パイプ及びテープタイプ
構築体であって、高レベルの難燃性が、少ない量の煤煙及び毒性腐蝕性燃焼産物
の発生と共に要求されるものにおける使用にとって極めて適切である。
寸法回復性製品は、適当な処理によってその寸法を変えてしまいうるものであ
る。熱回復性製品においては、この処理は熱であろう。ポリマーが架橋型EEA/E
VAである本発明のポリマー組成物は柔軟性、難燃性、熱回復性チューブの製造に
おいて極めて有用である。
P/N塩は慣用の手順により調製できうる。例えば、窒素含有ポリマーと燐含
有酸との溶液を、所望の生成物の沈殿を起こさせる適当な比率において混合して
よい。他方、モノマー塩を調製し、そして慣用の方法により重合に委ねてよい。
本発明を添付の非限定例を参考にこれより説明するが、ここでポリマー及び難
燃性添加剤は様々な方法を利用して配合している。ポリオレフィンを基礎とする
配合物は、LDPEについては140℃、そしてEVA及びEVA/EPDMブレンドについては7
5〜85℃に電気加熱したSchnabenthan二軸ロールミルを利用して配合するか、又
は100℃(EVA/EPDM)及び140℃(LDPE)において2分間、30又は300cm3内部混
合ヘッドを有するBrabender PLASTICORDERトルクレオメーターを用いて混合した
。他のポリマーへの配合は個々の実施例において説明する。
試験ピースはGem油圧プレスを用いる圧縮成形により一般に製造した。採用し
た条件は、12トンの圧力で、110℃で10分(EVA又はEVA/EPDM)及び150℃で20分
(LDPE)とした。その他のポリマーを含む配合物については個別の実施例で説明
する。
「EXOLIT IFR-10」及び「EXOLIT IFR-23」(Hoechst-Celanese)、「Epsyn 75
06」(Copolymer Inc.)、「LUPOLEN 1812D」(BASF)、「IRGANOX 1010」及び
「IRGACURE651」(Ciba Geigy Chemicals)、「PHOSCHEK P-30」及び「PHOSCHEK
P-40」(Monsanto)、「EPIKOTE 815」(Shell Chemicals)、「ELVAX 470」(
Dupont)、「KR38S」(Kenrich Petrochemicals Inc.)、「CN-1197」及び「CHA
RGARD 329」(Great Lakes chemical Corporation)、「SPINFLAM MF82」(Mont
efluos)、「MONSIL」(Maillefer)、「SIOPLANS」(Dow Corning)、「AMGARD
NH」(Albright & Wilson)及び「PLASTICORDER」(Brabender)は全て商標名
である。
実施例におけるポリマーの難燃性能は一般に2つの手順、即ち、Underwriter
Laboratory UL 94鉛直バーフレームテスト及びコーン熱量性能、により評価した
。後者の手順は実施例における材料の煤煙及び毒性ガス生成を決定するためにも
利用した。
Underwriter Laboratory UL 94鉛直バーフレームテスト
これは幅広く受け入れられている試験法であり、そして難燃剤及び難燃化材料
の供給者により一般に使用されている。このテストにおいては、鉛直にクランプ
した検体バーをブンゼンバーナー由来の炎により発火させる。UL 94の第二部に
従い、V−0,V−1及びV−2と称す3レベルの性能を規定し、そのうちのV
−0が最も厳しい。UL 94は検体のサイズを長さ12.7cm(5インチ)、幅1.27cm
(1/2インチ)と規定している。サンプルの厚みは3.2mm(1/8インチ)よ
り大であってはならない。UL 94性能は明らかに検体
の厚みに依存し、そして一般に1.6mm(1/16インチ)又は3.2mm(1/8イ
ンチ)と見積られている。
コーン熱量評価
これは一般に、ASTM E 1354-90及び/又はISO DP 5660に従って行われる。こ
の手順においては、10cm×10cm×厚み(用途に基づいて変更可能、ただしほとん
どの場合3mm)の寸法の水平に載せた検体を照射束(本実施例においては一般に5
0kWm-2)に委ねる。電気スパーク発火も供し、これは観察する検体の持続燃焼に
より排除される。次に流出火炎を、特性のレンジを決定するために連続モニター
に委ねる。時間の関数としてのガス流の中の酸素濃度の測定は、熱放出速度を時
間の関数として計算することを可能にする(酸素消費量の原理を介し)一重要な
易燃特性である。燃焼産物流を通過するレーザービームの遮蔽の決定は、(通常
比励起面積として表わされる)生成された煤煙を測定することを可能にする。様
々な毒性ガス、特に一酸化炭素、二酸化炭素及び窒素酸化物も連続モニターでき
、最初の2つは赤外線スペクトルを介し、そして最後のものはケミルミネッセン
ス検出器を介する。更に、試験検体をこのテストの間中ロードセルの上に載せて
おき、測定する特性の全てが質量損失の速度に相関させるようにすることができ
る。コーン熱量データーのために用いる重要な略語を以下に示す:
RHR =熱放出速度(kWm-2)
tig =着火時間(s)
EHC =燃焼の有効熱(MJkg-1)
SEA =比励起面積(m2kg-1)
SPR =煤煙生成速度(s-1)
COPR=一酸化炭素生成速度(kgm-2s-1)
NOx =酸化窒素収量(kgkg-1)
RHRは火の強度として識別でき、従って易燃性能の点ではRHRの値が低いほど良
い。SEAは燃焼検体の質量損失率に対して生成煤煙量を関連付ける幅広く利用さ
れている煤煙性能パラメーターである。SPR及びCOPRは、SPR=SEA×RHR/EHC及
びCOPR=CO×RHR/EHCと定義する。全てのケースにおいて、これらの特性の値が
可能な限り低いことが所望される。
物理特性は500mm min-1のクロスヘッドスピードを採用し、Instron Model 102
6を用いて決定した。
実施例1
ポリ(アリルアンモニウム)ピロ燐酸塩の調製
ポリ(アリルアンモニウム塩酸塩)(120.00g;1.27mol)(商標名PAA-HCl-1
05のもとでNitto Boseki Co.Ltdより供給)をメタノール(2500ml)中の若干過
剰量の水酸化ナトリウム(65.00g;1.63mol)で処理し、そして乾燥条件下で18
時間還流に付した。冷却後、この溶液を濾過して塩化ナトリウムを除去した。残
りの溶液を約800mlにまで減らし、そして更に塩化ナトリウムを除去した。この
溶液の一部(250ml;約0.40molのポリアリルアミン)をメタノールで800mlにま
で希釈した。次に得られる溶液を強力に撹拌し、その間、pH7(中性)に達する
までピロ燐酸の濃メタノール性溶液(30.00g/140ml;0.17mol)を加えた。生成
された大量の白色固体(溶媒膨潤)を濾過し、メタノール(4×100ml)で洗い
、そして真空において160℃で18時間乾燥させた。収量=57.00g(98%)。その
生成物は水の中で不溶性である。
この生成物の熱分析は、長期間の乾燥の後でさえも1〜2%の揮発物を放出し
た。大気中での濃度重量曲線分析(TGA)は、この化合物が約200℃まで安定であ
ることを示した。残留物の約50重量%が740℃に至るまで保持された。
この生成物の化学分析は:N=8.29%及びP=18.29%を、1:1.004のN/P
比において示した〔理論値:N=9.59%及びP=21.20%、1:1のN/P比〕
。
実施例2
ポリ(アリルアンモニウム)ピロ燐酸塩の他の調製法
本実施例はポリ(アリルアンモニウム)ピロ燐酸塩の調製のための他の手順を
例示する。この手順は欧州特許公開第145,220号に開示されている。
500mlのフランジフラスコにコンデンサー、メカニカルスターラー及び窒素弁
を取付けた。ピロ燐酸(89.000g、0.500mol)を冷却しながら30mlの蒸留水の中に
溶かした。この酸性溶液を氷冷し、アリルアミンの滴下(37.500ml:0.500mol)
によりその温度が20℃を越えないことを確実なものとした。この添加は乾燥窒素
雰囲気下で撹拌しながら行った。得られる溶液を温めた(50℃)2,2’−アゾ
ビス〔2−アミジノプロパン〕の水性溶液(水(10ml)中1.000g)で処理し、
そして60℃で24時間撹拌した。この粘性生成物をブレンダーの中で何も溶けなく
なるまで繰り返し洗浄した。次にこの生成物を真空で110℃において18時間シリ
コーン処理(潤滑化/非粘着質)紙の上で乾燥させた。収量=58.6g。
実施例3
ポリ(アリルアンモニウム)ピロ燐酸塩の最適化
易燃性性能−UL 94試験
燐/窒素含有難燃剤は便宜上3種の活性成分、即ち、酸起源、チャーフォーマ
ー(char former)及び泡立剤又は発泡剤を含んで成る。あるケースにおいては
、2種の活性成分、例えばポリ燐酸アンモニウム(APP)とトリスヒドロキシエ
チルイソシアヌレート(THEIC)しかないものとした。
本発明の化合物は難燃系においてAPPの役割を果すと予測されうるので、それ
らはチャーフォーマー、例えばTHEICの存在下で採用すべきと考えられうる。非
架橋型EVA(ELVAX 470;Dupont)における易燃性性能を調べるため、種々の比の
ポリ(アリルアンモニウム)ピロ燐酸塩:THEICを試験した。得られた結果を表
1において報告する。
驚くべきことに、最適性能はポリ(アリルアンモニウム)ピロ燐酸塩を単独で
使用したときに認められた。
実施例4
対比易燃性性能−UL 94試験
本実施例は、ポリ(アリルアンモニウム)ピロ燐酸塩と公知の燐/窒素含有難
燃剤との易燃性性能を対比させる:対比系は:EXOLITIFR-10(Hoechst Celanese
)及びポリ燐酸アンモニウム(APP)(PHOSCHEK P-40,Monsanto)とした。得ら
れる結果を表2に示す。全てのデーターは非架橋化EVA(ELVAX 470)中のサンプ
ルについてである。
この結果は、ポリ(アリルアンモニウム)ピロ燐酸塩が、公知の燐/窒素含有
難燃剤のいづれよりも良好な性能を有することを示唆しており、そのUL 94 V-0
等級を達成せしめるうえで燃焼時間はなかった。
実施例5
対比易燃性性能−コーン熱量試験
本実施例は、公知の燐/窒素含有難燃剤と対比させたときのポリ(アリルアン
モニウム)ピロ燐酸塩の易燃性性能を実証する。その対比系は:EXOLIT IFR-10
及びEXOLIT IFR-23(Hoechst-Celanese)とした。全てのデーターは非架橋化EVA
ELVAX 470中のサンプルについてである。50kWm-2の標準照射束レベルを採用し
た。各サンプルについて2回の試験を行い、そしてそれらの結果を平均した。得
られる結果を表3に報告する。
これらの結果は、ポリ(アリルアンモニウム)ピロ燐酸塩が難燃剤として優れ
て機能し、一般に少なくとも従来の商業的材料と同じぐらいに良好であり、そし
て重要なパラメーターRHRについては顕著に優れていることを示す。図1は、EXO
LITIFR-10及びIFR-23の両者と異なり、ポリ(アリルアンモニウム)ピロ燐酸塩
を利用することによってRHRの劇的な向上が現実化されることを示唆している。
ポリ(アリルアンモニウム)ピロ燐酸塩は、800秒付近に至るまでの第二期熱放
出のなさにより証明される通り、EXOLITIFR-10又はEXOLIT IFR-23のいづれより
も、未燃焼燃料にとってのより良い保護チャーを担う。この証拠は、この試験の
完了及びこの装置からのサンプルホルダ一具の取外に基づき、未燃焼材料がチャ
ーの下に見えたことにある。ポリ(アリルアンモニウム)ピロ燐酸塩試験ピース
は試験中にはるかに少ない質量損失率をも示した。
実施例6
表面処理
本実施例は、P/Nポリマー塩のポリマー中での分散性を高め、それ故得られ
る材料の物理特性を高めるためのP/Nポリマー塩の表面処理の有用性を例証す
る。いくつかの表面処理剤、例えばチタ
ン酸塩、シラン、ジルコネート及びジルコアルミネートが利用できるが、しかし
ここで選んだ特定の例はKenrich Petrochemicals Inc.より商標名KR38Sで市販さ
れているチタン酸塩とした。難燃剤、本例においてはポリ(アリルアンモニウム
)ピロ燐酸塩をトルエン中のKR38Sの2%w/wの溶液(0.5%〜5.0%の間の濃
度が利用できる)の中で16時間ボールミルに付し、微細で分散し易い粉末を得た
。その粒子サイズは必要ならばジェットミルによって更に小さくできる。
この表面処理手順は燐/窒素化合物のようなタイプのみならず、ポリ燐酸アン
モニウムPHOSCHEK P-40についての対応のデーターにより例証される通り、全て
のP/N化合物の分散性を高める。以下の物理/機械特性結果はEVA(ELVAX 470
:溶融指数0.7;酢酸ビニル含量18%):EPDM(EPsyn 7506;Copolymer Inc.)
(4:1)のポリオレフィン/ゴムブレンドについてである。チタン酸塩処理し
た又は処理していないポリ(アリルアンモニウム)ピロ燐酸塩の粒子サイズは両
ケースにおいて53μm未満とし、一方、ポリ燐酸アンモニウムはどちらのケース
においても10μmの平均粒子サイズを有するものとした。ポリ(アリルアンモニ
ウム)ピロ燐酸塩及びポリ燐酸アンモニウムについて得られた結果を以下の表4
の中に報告する。
実施例7
ポリ燐酸アンモニウムとの組合せでの使用
本実施例は、P/Nポリマー塩がその他の燐起源との組合せにおいて、有害な
結果なしで、そしてあるケースにおいては易燃性特性についての向上を伴って、
利用できることを実証する。以下の例は全て、実施例6に従い、EVA ELVAX 470
:EPDM EPsyn 7506〔4:1〕の中に配合した、53μm未満の粒子サイズのKR38S
チタン酸塩処理ポリ(アリルアンモニウム)ピロ燐酸塩(PAP)である。コーン
熱量データーは50kWm-2照射束において得た。得られた結果を表5に示す。
実施例8
第二燐起源を有する様々なカップリング剤で処理したPAPの有用性
本実施例は、第二燐起源、即ち、ポリ燐酸アンモニウムPHOSCHE
K P-40の添加を伴って、又は伴わないでの、様々なチタン酸塩及びシランカップ
リング剤を伴うPAPの性能を示す。全ての材料をコーン熱量計性能についてEVA E
Psyn〔4:1〕の中で評価した。使用したカップリング剤はKR38Sチタン酸塩(K
enrich PetrochemicalsInc.)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン及びア
ミルトリエトキシシランとした。難燃剤としてポリ燐酸アンモニウムを含むサン
プルを対比のために含ませた。全てのコーン熱量実験は50kWm-2照射束で行い、
そして全てのPAPサンプルを53μm未満の粒子サイズにまで小さくした。得られ
た結果を表6に示す。
実施例9
棚寿命試験
3ケ月経たPAPサンプル(KR38Sチタン酸塩処理)をポリ燐酸アンモニウム(PH
OSCHEK P-40)〔4:1〕とブレンドし、そしてEVA(EL
VAX 470):EPDM(EPsyn 7506)〔4:1〕の中に26%の充填レベルで配合せし
めた。このサンプルについての易燃性データー及び同一の難燃剤の新たに調製し
たバッチを含む類似のもののそれを以下に示す。両ケースにおいてそのデーター
はコーン熱量計に由来する。その熱束は両材料に関して50kWm-2とした。得られ
た結果を表7に示す。
実施例10
ポリオレフィン/ゴムブレンド中での難燃剤としての利用
PAP単独での易燃性性能を以下の通りにして、従来の商業的なハロゲン非含
有難燃剤EXOLIT IFR-10及びEXOLIT IFR-23並びに以下の商業的に入手できる材料
、即ち、デカブロモジフェニルオキシド(DB):酸化アンチモン(ATO):三水
和アルミナ(ATH)(2:1:1)を基礎とする典型的なハロゲン化難燃剤と対
比させた。DBはGreat lakes Chemicalsから、ATOはAnzon America Inc.(11-000
0-2556-6)から入手し、そしてATHはSolem由来の932級とした。全てのコーン熱
量データーは非架橋化EVA(ELVAX 470):EPDM(EPsyn 7506)〔4:1〕に関す
る。先の実施例と同様、50kWm-2標準照射レベルを採用した。ここでも各サンプ
ルについて2回試験し、そしてその結果を平均した。得られる結果を表8及び添
付図面の図2に示す
。
実施例11
エポキシ樹脂の中での難燃剤としての使用
本実施例は、熱硬化性エポキシ樹脂にとっての難燃剤としての、単独で、又は
PHOSCHEK P-40ポリ燐酸アンモニウムPHOSCHEK P-40と一緒に使用したPAPの有用
性を示す。ここでの特定の例は、20〜30%の難燃剤を含む、1部の2,4,6−
ジメチルアミノメチルフェノールで硬化させた2部のEPIKOTE 815(Shell Chemi
cals)を基礎とする樹脂より成る。検体を110℃で16時間硬化させ、そしてコー
ン熱量計で50kWm-2照射束で評価した。全ケースにおいて、PAPは3−アミノプロ
ピルトリメトキシシランで表面処理し、そしてその粒子サイズは53μmにした。
得られる結果を表9に示す。
実施例12
低密度ポリエチレン中での難燃剤としての使用
本実施例は、低密度ポリエチレンにとっての難燃剤としての、第二燐起源を伴
っての、又は伴わないでの一般式(I)の化合物の有用性を示す。配合物は上記
の通りにして調製し、そして50kWm-2の照射束においてコーン熱量計で評価した
。配合物の組成を表10に示し、それにおいてはその後に記載の命名を採用した:
LDPE=LUPOLEN 1812 D、
DBDPO=デカブロモジフェニルオキシド(Great Lakes Chemical Corp.)、
ATO=三酸化アンチモン(Anzon America Inc.)、
IRGANOX 1010=Ciba Geigy Chemicals、
ステアリン酸=Aldrich Chemical Company Ltd、
PHOSCHEK P40=ポリ燐酸アンモニウム(Monsanto)、
PAP=ポリ(アリルアンモニウム)ピロ燐酸塩
コーン熱量評価は表11に示す結果をもたらした。
本発明の化合物は、単独であろうと、第二燐起源との組合せであろうとも、デ
カブロモジフェニルオキシド/三酸化アンチモンの如きの幅広く利用されている
難燃性添加系よりかなり優れて、熱放出率、煤煙発生及び毒性ガス生成の点で、
LDPEに優れた性能を授ける。
実施例13
架橋化ポリオレフィン中での難燃剤としての使用
本実施例は、架橋化エチレン−酢酸ビニルコポリマー(ELVAX 470)中での、
ポリ燐酸アンモニウムPHOSCHEK P-40との4:1のブレンドとしてのPAPの有用性
を示す。45%又は50%の総難燃剤と3%のトリメチロールプロピルトリメタクリ
レート電子線prorad及び1phrのステアリン酸とを含む配合物を調製した。これ
らの材料を外径0.64cm(0.25インチ)及び壁厚25μm(25mil)のチューブへと
押出し、これを次に10MRadの電子線照射量への曝露により架橋させた。
易燃性性能はチューブ材料用のUnderwriter Laboratory UL 224試験によって
評価した。これは、鉛直状にクランプしたチューブへのブンゼン炎の5回の15秒
づつの燃焼の適用を包括し、各燃焼は、15秒間の間隔、又は観察する検体の燃焼
時間の間隔のいづれか長いほうの間隔を開けた。必須の合格基準、即ちVW-1に検
体が達するには、各ケースにおける燃焼時間は60秒を超えてはならず、そしてそ
の材料は検体の下に敷かれた綿毛パッドを発火してしまうような炎を落とすもの
であってはならない。各材料を概して5回試験し、そしてもしどの検体もその基
準に合格しなかったら、VW−1級でないものとみなした。検体について観察した
総燃焼時間、即ち、各ブンゼン適用についての燃焼時間の合計を表わす平均燃焼
値「F」によって材料を分類することも、UL 224説明書の一部ではないが、有
用であることがわかった。Fの値が低いほど、その易燃性性能の点でその材料は
優れている。得られる結果を表12にまとめる。
本実施例を実証するのに用いたPAPはN−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロ
キシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシランで表面処理してあり、
そして53μm未満の粒子サイズである。使用した対比材料はEXOLIT IFR-10及びE
XOL ITIFR-23とした。
従って、〔4:1〕のPAPブレンドは、本実施例の架橋化ポリオレフィンの中
に45%又は50%において充填したEXOLIT IFR-23よりも優れていた。
実施例14
本発明に属する一連の窒素含有ポリマーの実証
本実施例は、塩の中のポリマーカチオンとしてのポリ(アリルアンモニウム)
について先に実証した実施例に加えての様々なP/Nポリマー塩の性能を例証す
る。全ての難燃剤を、EVA(ELVAX 470):EPDM(EPsyn 7506)〔4:1〕より成
る未架橋ポリオレフィン/ゴムブレンドの中で、26%の充填量において、第二燐
起源を伴って、単
独添加剤として評価した。コーン熱量評価は50kWm-2の照射束で行った。試験し
た材料は、KR38Sチタン酸塩で表面処理したポリ(アリルアンモニウム)ピロ燐
酸塩〔I〕、ポリ(エチレンイミニウム)ピロ燐酸塩〔II〕、ポリ(2−ビニル
ピリジニウム)ピロ燐酸塩〔III〕、ポリ(1−ビニルピロリドニウム)ピロ燐
酸塩〔IV〕、ポリ(N−〔2−(メタクリロイル)エチル〕−N,N−ジメチル
アンモニウム)オルト燐酸塩〔V〕、ポリ(N−メチルビニルアンモニウム)ピ
ロ燐酸塩〔VI〕及びポリ(4−スチリルアンモニウム)ピロ燐酸塩〔VII〕とし
た。燐窒素難燃剤CN-1197(Great Lakes Chemical Corp.)についての対比デー
ターも示す。得られた結果を表13に示す。
この結果は、一連の本発明のポリマー塩が優れた易燃性特性、煤煙生成、及び
毒性ガス生成特性を示すことを実証する。
実施例15
本発明に属する一連の燐含有酸の実証
本実施例は、一般式(I)の化合物について考えられうる一連の燐含有酸の有
用性を実証する。ここで試験した塩はポリ (アリルアンモニウム)ピロ燐酸塩
〔VIII〕、ポリ(アリルアンモニウム)ポリ燐酸塩〔IX〕、ポリ(アリルアンモ
ニウム)オルト燐酸塩〔X〕及びポリ(アリルアンモニウム)次亜燐酸塩〔XI〕
とした。どの材料も表面処理にはかけず、そして全てを第二燐起源に頼ることな
く使用した。〔VIII〕及び〔IX〕はエチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA,ELV
AX 470,Dupont)の中で40%の充填量において評価した。〔VIII〕,〔X〕及び
〔XI〕はEVA(ELVAX 470):EPDM(EPsyn 7506)〔4:1〕の中で26%の充填量
において評価した。コーン熱量性能を50kWm-2の照射束で評価した。EVA中の添加
剤VIII及びIX並びにEVA:EPDM〔4:1〕中での添加剤VIII〜XIについて得られ
た結果をそれぞれ表14及び15に示す。
実施例16
熱可塑性ポリウレタン中での難燃剤としての使用
本実施例は熱可塑性ポリウレタンにとっての難燃剤としての一般式(I)の化
合物の有用性を示す。配合物をSchwabenthan Polymix(商標)二軸ミル上で140
〜145℃において配合し、そしてMoore油圧式プレスの中で170℃で5分圧縮成形
することにより試験ピースを仕上げた。評価を、50kWm-2の外部照射束を利用し
てコーン熱量計で行った。本発明に係る難燃剤を含む組成物を、ポリウレタン用
に特別にデザインされた商業的に入手できる燐/窒素難燃剤Spinflam(商標)MF
82/PUと対比させた。配合物組成は表16に示す通りである:
Estane(商標)58315−熱可塑性ポリウレタン(BF Goodrich)、
PAP−ポリ(アリルアンモニウム)ピロ燐酸塩、
MF82/PU−Spinflum(商標)MF82/PU(Himont Italia)。
コーン熱量評価は、表17に示す結果をもたらし、発火に至る重要な易燃性特性
(sで示すtig)、ピークの熱放出率(kWm-2で示すRHR pk)及び平均熱放出率
(kWm-2で示すRHR av)を示している。各ケースにおける試験時間は10分とし、
そして記載の値は二回の試験の平均である。窒素含有ポリマーの燃焼に基づいて
一般に発生する毒性ガスである窒素の酸化物の平均収量(検体のkg当りのkgで示
すNOx av(平均))についてのデーターも示す。窒素の酸化物の収量は、ケミル
ミネッセンス検出器(Signal 4000シリーズ)を含んで成るコーン熱量計へのア
ド・オン(add-on)ユニットにより測定した。
表17を参照することによりわかるように、発火に至る長い時間、類似の平均熱
放出率を示しながらの低めの熱放出ピーク率、及び低収量の窒素酸化物の如きの
毒性燃焼産物により例証される通り、PAPはSpinflam(商標)MF82/PUよりも、
熱可塑性ポリウレタン用難燃剤としてかなり優れた性能を発揮する。
実施例17
ポリスチレン中での難燃剤としての使用
本実施例はポリスチレンにとっての難燃剤としての一般式(I)の化合物の有
用性を示す。配合物をSchwabenthan Polymix(商標)二軸ミル上で95〜100℃に
おいて配合し、そしてMoore油圧式プレ
スの中で120℃で5分圧縮成形することにより試験ピースを仕上げた。評価を、5
0kWm-2の外部照射束を利用してコーン熱量計で行った。本発明に係る難燃剤を含
む組成物を、商業的に入手できる燐/窒素難燃剤Spinflam(商標)MF82/PUと対
比させた。配合物組成は表18に示す通りである:
PS−ポリスチレン(Aldrich Chemical Co.)、
PAP−ポリ(アリルアンモニウム)ピロ燐酸塩、
MF82/PU−Spinflum(商標)MF82/PU(Himont Italia)。
コーン熱量評価は、表19に示す結果をもたらし、発火に至る重要な易燃性特性
(sで示すtig)、ピークの熱放出率(kWm-2で示すRHR pk)及び平均熱放出率
(kWm-2で示すRHR av)を示している。各ケースにおける試験時間は10分とし、
そして記載の値は二回の試験の平均である。窒素含有ポリマーの燃焼に基づいて
一般に発生する毒性ガスである窒素の酸化物の平均収量(検体のkg当りのkgで示
すNOx av(平均))についてのデーターも示す。窒素の酸化物の収量は、ケミル
ミネッセンス検出器(Signal 4000シリーズ)を含んで成るコーン熱量計へのア
ド・オン(add-on)ユニットにより測定した。
表19を参照することによりわかるように、類似(10%以内)の発火に至る時間
、ピーク熱放出率及び平均熱放出率、それと同時に右意に低収量の窒素酸化物の
如きの毒性燃焼産物により例示される通り、PAPはSpinflam(商標)MF82/PPよ
りも、ポリスチレン用の難燃剤として良好な総合的な性能を示す。
実施例18
ポリスチレン−コ−アクリロニトリル中での難燃剤としての使用
本実施例はポリスチレンとアクリロニトリルとのコポリマーにとっての難燃剤
としての一般式(I)の化合物の有用性を示す。配合物をSchwabenthan Polymix
(商標)二軸ミル上で130〜135℃において配合し、そしてMoore油圧式プレスの
中で150℃で5分圧縮成形することにより試験ピースを仕上げた。評価を、50kWm-2
の外部照射束を利用してコーン熱量計で行った。本発明に係る難燃剤を含む組
成物を、商業的に入手できる燐/窒素難燃剤Spinflam(商標)MF82/PUと対比さ
せた。配合物組成は表20に示す通りである:
PSA−ポリ(スチレン−コ−アクリロニトリル、75:25)(AldrichChemical Co.
)、
PAP−ポリ(アリルアンモニウム)ピロ燐酸塩、
MF82/PU-Spinflum(商標)MF82/PU(Himont Italia)。
コーン熱量評価は、表21に示す結果をもたらし、発火に至る重要な易燃性特性
(sで示すtig)、ピークの熱放出率(kWm-2で示すRHR pk)及び平均熱放出率
(kWm-2で示すRHR av)を示している。各ケースにおける試験時間は10分とし、
そして記載の値は二回の試験の平均である。窒素含有ポリマーの燃焼に基づいて
一般に発生する毒性ガスである窒素の酸化物の平均収量(検体のkg当りのkgで示
すNOx av(平均))についてのデーターも示す。窒素の酸化物の収量は、ケミル
ミネッセンス検出器(Signal 4000シリーズ)を含んで成るコーン執量計へのア
ド・オン(add-on)ユニットにより測定した。
表21を参照することによりわかるように、類似(10%以内)のピ
ーク熱放出率、平均熱放出率及び窒素酸化物の如きの毒性燃焼産物の収量、しか
しながら有意に長い発火に至る時間により例示される通り、PAPはSpinflam(商
標)MF82/PUよりも、ポリスチレン−コ−アクリロニトリル用の難燃剤として良
好な総合的な性能を示す。
実施例19
ポリ(ビニルアルコール)中での難燃剤としての使用
本実施例はポリ(ビニルアルコール)にとっての難燃剤としての一般式(I)
の化合物の有用性を示す。配合物をSchwabenthan Polymix(商標)二軸ミル上で
140〜145℃において配合し、そしてMoore油圧式プレスの中で170℃で5分圧縮成
形することにより試験ピースを仕上げた。評価を、50kWm-2の外部照射束を利用
してコーン熱量計で行った。本発明に係る難燃剤を含む組成物を、ポリウレタン
用に特別にデザインされた商業的に入手できる燐/窒素難燃剤Spinflam(商標)
MF82/PUと対比させた。配合物組成は表22に示す通りである:
PVA−ポリ(ビニルアルコール)分子量15,000(Fluka Chemical Co.)、
PAP−ポリ(アリルアンモニウム)ピロ燐酸塩、
MF82/PU−Spinflum(商標)MF82/PU(Himont Italia)。
コーン熱量評価は、表23に示す結果をもたらし、発火に至る重要
な易燃性特性(sで示すtig)、ピークの熱放出率(kWm-2で示すRHR pk)及び
平均熱放出率(kWm-2で示すRHR av)を示している。各ケースにおける試験時間
は10分とし、そして記載の値は二回の試験の平均である。窒素含有ポリマーの燃
焼に基づいて一般に発生する毒性ガスである窒素の酸化物の平均収量(検体のkg
当りのkgで示すNOx av(平均))についてのデーターも示す。窒素の酸化物の収
量は、ケミルミネッセンス検出器(Signal 4000シリーズ)を含んで成るコーン
熱量計へのアド・オン(add-on)ユニットにより測定した。
表23を参照することによりわかるように、類似(10%以内)のピーク熱放出率
、平均熱放出率及び窒素酸化物の如きの毒性燃焼産物の収量、しかしながら有意
に長い発火に至る時間により例示される通り、PAPはSpinflam(商標)MF82/PU
よりも、ポリスチレン−コ−アクリロニトリル用の難燃剤として良好な総合的な
性能を示す。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C08L 31/04 LHE 9456−4J
33/14 LHX 8619−4J
39/00 LJY 8619−4J
39/06 8619−4J
39/08 8619−4J
63/00 NJM 8830−4J
C09K 21/14 8318−4H
(72)発明者 リンゼイ,アラン
イギリス国,ハートフォードシャー,ウェ
ア,スタンステッド アボッツ,ロイドン
ロード 16