【発明の詳細な説明】
K.ラクチス(K.lactis)のピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子の
プロモーターおよびその使用
本発明は、分子生物学の分野に関する。より具体的には、それは、転写プロモ
ーター活性をもつ新規なDNA配列、この配列を含む発現ベクター、およびその
使用による組み換えタンパク質、例えば異種タンパク質の生産に関する。また、
本発明は、このDNA配列を含む組み換え細胞にも関する。
分子生物学の分野においてなされた進歩は、微生物を改変し、その微生物に、
異種タンパク質を生産させることを可能にした。特に、様々の遺伝的研究は、細
菌E.コリ(E.coli)に焦点を絞って行われた。しかしながら、これらの
新規な生産方法の工業的応用は、特に、これらの組み換え微生物における遺伝子
の発現効率の問題により、なお制限される。それに加えて、これらの生産系の働
きを増大する目的で、異種タンパク質の高い発現レベルが得られる強力なプロモ
ーターを単離するための研究が実施されてきた。E.コリについては、トリプト
ファンおよびラクトースオペロンのプロモーターを、特に挙げることができる。
より最近は、酵母S.セレビシエ(S.cerevisiae)における研究
が、解糖に関与する遺伝子から得られるプロモーターに焦点を絞って行われてき
た。特に、3−ホスホグリセリン酸キナーゼPGK遺伝子のプロモーター(Dobs
on et al.,Nucleic Acid Res.10,1982,2625;Hitzman et al.,Nucleic Acid Res
earch 1982,7791)グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼGAPD H
遺伝子のプロモー
ター(Holland et al.,J.Biol.Chem.254,1979,9839; Musti etal.,Gene 25,198
3,133)、アルコールデヒドロゲナーゼ1 ADH1遺伝子のプロモーター(Ben
nentzen et al.,J.Biol.Chem.257,1982,3018; Denis et al.,J.Biol.25,1983,1
165),エノラーゼ1 ENO1遺伝子のプロモーー(Uemura et al., Gene 45,
1986,65)、GAL1/GAL10遺伝子のプロモーター(Johnson and Davis,M
ol.Cell.Biol.4,(1989)1440),またはCYC1遺伝子のプロモーター(Guarent
e and Ptashne,Pnas 78(1981)2199)、に関する研究を、挙げることができる。
最近では、組み換えタンパク質の生産の宿主細胞として酵母クルイベロミセス
(Kluyveromyces)の使用に関する遺伝的道具が、開発された。K
.ドロソフィラルム(K.drosophilarum)(プラスミドpKD1
−欧州特許第241435号)に本来存在する2ミクロンタイプのプラスミドの
認識が、組み換えタンパク質の生産の非常に効率的な宿主/ベクター系を確立さ
せた(欧州特許第361991号)。しかしながら、この系で使用されるプロモ
ーターは、今までは、まだ最適なものではなかった。特に、それらは、本質的に
異種のプロモーター、すなわちS.セレビシエのような他の微生物に由来するプ
ロモーターである。このことは、種々の不利益をもたらし、特に、転写機構のあ
る要素(例えば、トランス−アクチベーター)の欠如のために、プロモーターの
活性が制限され、制御の欠如による宿主細胞に対するある種の毒性を示すか、ベ
クターの安定性に影響を与える。
これらの条件下で、クルイベロミセスの強い相同プロモー夕ーを欠くことは、
この発現系の工業的利用における制限因子となっている。
今、本発明者は、転写プロモーター活性を示すクルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis
)のゲノムのある領域を同定し、ク
ローン化し、そして配列を決定した(配列番号:1、参照)。より正確には、こ
の領域は、K.ラクチスのピルビン酸デカルボキシラーゼをコードしている遺伝
子のプロモーター(KlPDC1)に対応する。この領域、または上記プロモー
ーの誘導体もしくは断片は、非常に効率的な方法で、クルイベロミセス属酵母に
おける組み換えタンパク質の生産に利用することができる。この配列は、また他
の宿主生物にも使用できると考えられる。
さらに、得られたプロモーター領域の優位性は、グルコースによるサプレッシ
ョンを欠いていて、慣用の工業的培養培地の使用を可能にすることである。
それ故、本発明の一つの主題は、配列番号:1、またはその相補的鎖、または
配列番号:1の誘導体、の全部もしくは部分を含み、転写プロモーター活性を有
するDNA配列にある。
本発明の意味において、誘導体とは、配列番号:1から、遺伝的および/また
は化学的性質の改変によって得られ、プロモーター活性を保持している、いかな
る配列をも意味すると解釈される。遺伝的および/または化学的性質の改変は、
一つまたは複数のヌクレオチドの変異、欠失、置換、付加および/または改変の
いかなるものも意味すると理解される。そのような改変は、種々の目的、特に、
ポータブルプロモーターの作製の目的、または特別なタイプのベクターもしくは
宿主での発現に適用されるプロモーター作製の目的、そのサイズの縮小、転写プ
ロモーター活性の増大、誘導可能なプロモーターの生成、調節レベルの改良、ま
たは
調節の性質の変更の目的で、実施することができる。そのような改変は、例えば
、試験管内での突然変異誘発によって、付加的な調節要素もしくは合成配列の導
入によって、または元の調節要素の欠失もしくは置換によって、実施することが
できる。
前記のような誘導体が作製される場合には、その転写プロモーター活性は、数
種の方法、特に、発現が検出できるレポーター遺伝子を問題の配列の制御下に置
くことによって示すことができる。当業者に既知のいかなる他の技術も、この実
施のために使用されることは明白である。
配列番号:1は、実施例記載の操作により、K.ラクチス2359/152の
ゲノムの断片およびE.コリのlacZ遺伝子間の融合体バンク(bank)か
ら得られた。専門家は、配列番号:1またはその相補的鎖の全部もしくは部分を
含むプローブによるハイブリダイゼーションによって、この領域を単離できるこ
とは明らかである。次いで、本発明による誘導体は、実施例に示されるように、
この配列から作製される。
本発明のその他の目的は、前記のようなDNAの配列を含んでなる組み換えD
NAに関する。
この組み換えDNAは、例えば、プローター配列・配列番号:1または“ポー
タブル”プロモーター(配列番号:3)としてこの配列の使用を容易にする制限
酵素部位を挿入されるプロモーター配列の誘導体を含むことができる。
好ましくは、この組み換えDNAは、その上、一つもしくは複数の構造遺伝子
を含有することができる。特に、これらは、医薬もしくは食物加工用のタンパク
質をコードしている遺伝子であってもよい。例として、酵素類(例えば、特にス
ーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、ア
ミラーゼ、リパーゼ、アミダーゼ、キモシン等)、血液誘導物(例えば、血清ア
ルブミン、α−もしくはβ−グロブリン、ファクタ−VIII、ファクターIX
、フォンビルブランド因子,フィブロネクチン、α−1−アンチトリプシン等)
、インシュリンおよびその変異体、リンホカイン[例えば、インターロイキン、
インターフェロン、コロニー刺激因子(G−CSF,GM−CSF,M−CSF
・・・)、TNF、TRF、等]、増殖因子(例えば、成長ホルモン、エリスロ
ポイエチン、FGF,EGF,PDGF,TGF、等)、アポリポタンパク質、
ワクチン(肝炎、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バール、ヘルペス、等
)生産のための抗原ポリペプチド、あるいはまた、特に、安定化部分に融合され
た活性部分を含有する融合体のようなポリペプチド融合体(例えば、アルブミン
もしくはアルブミン断片およびレセプターもしくはウイルスレセプター[CD4
、等]の一部との融合体)を挙げることができる。
なお一層好ましくは、また、その組み換えDNAは、該構造遺伝子の発現産物
の分泌を可能にするシグナルを包含する。これらのシグナルは、問題のタンパク
質の本来の分泌シグナルに対応しているが、それらは、また異なる起源のもので
あってもよい。特に、キラー毒素(Stark andBoyd,EMBO J.5(1986)1995)もしく
はαフェロモン(Kurjan and Herskowitz,cell 30(1982)933; Brake et al.,Yea
st 4(1988)S436)の遺伝子の分泌シグナルのように、酵母遺伝子由来の分泌シグ
ナルが使用できる。
本発明の特定の実施態様においては、組み換えDNAは、自律的にもしくは組
み込まれて複製できる発現プラスミドの部分である。
特に、自律的複製ベクターは、選ばれた宿主の自律的複製配列を用い
て得ることができる。特に、酵母においては、それらは、プラスミド(pKD1
、2μ、等)もしくは染色体配列(ARS)由来の複製起点であってもよい。
組み込みベクターは、特に、相同組み換えによって、そのベクターの組み込み
を可能にする宿主ゲノムのある領域における相同配列を用いて得ることができる
。本発明のその他の主題は、前記のようなDNA配列を含んでなる組み換え細胞
に関する。
有利には、その細胞は、酵母の中から、なお一層好ましくは、クルイベロミセ
ス属の酵母の中から選ばれる。しかしながら、本発明は、真核細胞でもまた原核
細胞であっても、本発明のプローター領域が活性をもつ全ての組み換え細胞を包
含すると理解される。かくして、真核細胞には、植物もしくは動物細胞、酵母も
しくは真菌類を挙げることができる。特に、酵母に関しては、サッカロミセス(Saccharomyces
)、ピヒア(Pichia)、シュワニオミセス(Schwanniomyces
)もしくはハンゼヌラ(Hansenula)属
の酵母を挙げることができる。動物細胞に関しては、細胞COS,CHO、C1
27、等を挙げることができる。真菌類では、アスペルギルス(Aspergi llus
)種もしくはトリコデルマ(Trichoderma)種を、特に挙げ
ることができる。原核生物宿主としては、エシェリヒア・コリ(Escheri chia coli
)のような細菌類、またはコリネバクテリウム(Coryn ebacterium
)、バチルス(Bacillus)もしくはストレプトミ
セス(Streptomyces)に属するものが使用される。
これらの種々の宿主における本発明の配列の転写プロモーター活性は、
例えば、問題のプロモ-ター配列の制御下で、問題の宿主中で発現されるリポー
ター遺伝子を含んでなる組み換えDNAを、問題の宿主細胞中に導入することに
よって確認することができる。
本発明の組み換え細胞は、外来DNAを細胞中に導入させ得るいかなる方法に
よっても得ることができる。それは、特に、形質転換、エレクトロポレーション
、接合、プロトプラストの融合、または当業者により既知の他の全ての技術であ
る。形質転換に関しては、種々の方法が、先行技術文献に記載されている。特に
、それは、Ito et al.(J.Bacteriol.153(1983)163-168)記載の技術による酢酸リ
チウムおよびポリエチレングリコールの存在下で、またはDurrens et al.[Curr.
Gent.18(1990)7]の技術によりエチレングリコールおよびジメチルスルホキシド
存在下で、細胞全体を処理することによって実施される。また、その他の方法は
、欧州特許出願第361991号にも記載されている。エレクトロポレーション
に関しては、それは、Becker and Guarentte(in: Methods in Enzymolgy vol.19 4
(1991)182)により実施される。
本発明のその他の主題は、前記のような配列を使用して組み換え遺伝子を発現
することに関する。本発明によるそのDNA配列は、実際に、高レベルで組み換
えタンパク質を生産することができる。
有利には、本発明の配列は、医薬もしくは食物加工用のタンパク質をコードし
ている遺伝子の発現のために使用できる。例としては、先に挙げたタンパク質を
挙げることができる。
また、本発明は、前記のような組み換え細胞を培養し、生産されたタンパク質
を回収することにより、組み換えタンパク質の生産方法を実現できる。タンパク
質の例としては、先に挙げたタンパク質を挙げること
ができる。
好ましくは、本発明の方法は、ヒト血清アルブミンもしくはその分子変異体の
一つを生産するために応用できる。アルブミンの分子変異体は、アルブミンの多
形性による天然の変異体、端の切り取られた形、またはアルブミンに基づく全て
のハイブリッドタンパク質を意味すると解釈される。
本発明の他の優位性は、続く実施例を読むことにより明らかにされるであろう
が、その実施例は、例示として、また限定されないものとして考慮される。図の説明
配列番号:1: K.ラクチスのプロモーターK1PDC1に対応する1.2
kb断片のヌクレオチド配列。
図2: MiniMuトランスポゾンMudIIZK1の作製。
図3: MiniMuトランスポゾンMudIIZK1の制限酵素地図。
図4: クローン1D12の制限酵素地図。
図5: プロモーターK1PDC1を担持するBamHI−HindIIIの
2.05kb断片の制限酵素地図。一般的クローニング技術
分子生物学において使用される慣例の方法、例えば、プラスミドDNAの調製
的抽出、塩化セシウム濃度勾配におけるプラスミドDNAの遠心、アガロースも
しくはアクリルアミドゲルにおける電気泳動、電気溶出によるDNΛ断片の精製
、フェノールもしくはフェノール−クロロホルムによるタンパク質の抽出、エタ
ノールもしくはイソプロパノールに
よる生理食塩水中でのDNA沈殿、エシェリヒア・コリ等における形質転換は、
専門家にとって周知であり、広く文献に記述されている[Maniatis T.et al.,“
Molecular Cloning,a Laboratory Manual”,ColdSpring Harbor,N.Y.,1982; Au
subel F.M.et al.,(eds.),“CurrentProtocols in Molecular Biology”, Joh
n Wiley & Sons,New York 1987]。
制限酵素は、New England Biolabs(Biolabs),Bethesda ResearchLaboratoies(
BRL)もしくはPharmaciaによって供給され、供給先の指示に従って使用された。
pBR322およびpUCタイプのプラスミドは、市販のものである(Bethes
da Research Laboratoies)。
連結反応のためには、DNA断片が、アガロースもしくはアクリルアミドゲル
の電気泳動によってそれらのサイズに従って分別され、フェノールもしくはフェ
ノール/クロロホルム混合液を用いて抽出され、エタノールを用いて沈殿され、
次いで供給先の指示に従ってファージT4のDNAリガーゼ(Boehringer)の存
在でインキュベートされる。
突き出た5’末端のフィリング(filling)は、供給先の指示に従って
E.コリのDNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント(Boehringer)を用い
て行われる。突き出た3’の末端の破壊は、製造者の指示に従って使用されるフ
ァージT4のDNAポリメラーゼ(Biolabs)の存在で行われる。突き出た5’
末端の破壊は、ヌクレアーゼS1により管理された処理によって実施される。
合成オリゴデオキシヌクレオチドを用いる試験管内での部位特異的変異誘発は
、Taylor et al.[Nucleic Acids Res.13(1985)8749-8764]
により開発された方法に従って実施される。
PCR[Polymerase−catalyzed ChainReact
ion,Saiki R.K.et al.,Science 230(1985)1350-1354; Mullis K.B.and Falo
ona F.A.,Meth.Enzym.155(1987)335-350]の該技術によるDNA断片の酵素的
増幅は、製造者の指示により、“DNA thermal cycler”(Pe
rkin Elmer Cetus)を用いて実施される。
ヌクレオチド配列の確認は、Sanger et al.[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,74(197
7)5463-5467]により開発された方法によって実施される。
K.ラクチスの形質転換は、当業者に既知のいかなる技術によっても実施され
、その実施例は本明細書中に示される。
別に述べられる場合以外は、使用される細菌菌株は、E.コリDH1(Hanaha
n D.,J.Mol.Biol.166(1983)557)もしくはE.コリJM109::(Mucts
)(Daignan-fornier and Bolotin-Fukuhara,Gene 62(1988)45)である。
使用される酵母菌株は、出芽酵母、より特別には、クルイベロミセス属酵母に
属する。菌株K.ラクチス2359/152およびK.ラクチスSD6が、特に
使用された。
プラスミドによって形質転換される酵母菌株は、エルレンマイヤーフラスコも
しくは21容パイロットファーメンター(SETRIC,France)中で、28℃で定常
的に撹拌をしつつ高栄養培地(YPD:1%酵母エキス、2%バクトペプトン、
2%グルコース;またはYPL:1%酵母エキス、2%バクトペプトン、2%ラ
クトース)において培養される。実施例 I−K.ラクチスのK1PDC1プロモーターの単離
配列番号:1は、K.ラクチス2359/152のゲノム断片およびE.コリ
1acZ遺伝子間の融合体バンクから得られた。この実施例は、(A)融合体バ
ンクの作製において、(B)K.ラクチスのピルビン酸デカルボキシラーゼの遺
伝子プロモーターを担持するこのバンクのクローンの選択および同定において記
載する。A/融合体バンクの作製
A.1.MiniMuトランスポゾンMudIIZK1(図2および図3)の
作製。
MiniMu MudIIZK1は、Daignan-Fornier and Bolotin-Fukuhara
(Gene 62(1988)45)により記されたMiniMu MudIIZZ1から構築
された。それは、miniトランスポゾンMudIIZZ1の複製起点を、クル
イベロミセスにおける機能的複製起点:プラスミドpKD1の複製起点で置換す
ることによって得られた(欧州特許第231435号)。
A.1.1.プラスミドpKD1の複製起点を担持するカセットの構築(断片
S11)。
次に続く操作を容易にするために、その断片S11(プラスミドpKD1の複
製起点を担持する)が、カセットNotIの形に置かれた。このために、プラス
ミドpUCl8の誘導体が、クローニング多重部位(HindIIIおよびEc
oRI部位)の外側部位が、NotI部位に変えられて構築された。これは、対
応する酵素による消化、クレノウ酵素の作用およびNotI部位に対応する合成
オリゴヌクレオチド[オリゴ
d(AGCGGCCGCT);Biolabs]による連結によって行われた。得られ
たプラスミドは、pGM67と名付けられる。次に、プラスミドKEp6(Chen
et al.,Nucl.Acids Res.114(1986)4471)の酵素Sau3Aによる消化によって
得られた960bp断片S11が、プラスミドpGM67のBamHI適合部位
に挿入された。このようにして得られたプラスミドは、pGM68と命名され、
NotIカセットの形で、断片S11を含む。 A.1.2.MudIIZZ1
トランスポゾンの2μ複製起点のサプレッション。
miniMu MudIIZZ1(Daignan-Fornier and Bolotin-Fukuhara、
前出)を担持するプラスミドpGM15は、酵素SalIによる消化によって2
μ領域から欠失された。このようにして得られたユニークSalI部位は、次い
で、クレノウ酵素の作用の後、NotI部位に対応する合成オリゴヌクレオチド
の連結によって、NotI部位に転換された。得られたプラスミドは、pGM5
9と呼ばれる。
A.1.3.断片S11の挿入
改変されたプラスミドpUC18由来のプラスミドpKD1の複製起点を担持
するカセットNotI(断片S11)は、次いで、プラスミドpGM59のユニ
ークNotI部位中に導入された。
得られたプラスミドは、pGM83と命名され、miniMuを担持し、Mu
dIIZK1と呼ばれ、酵母クルイベロミセス・ラクチス、ならびにK.ラクチ
スにおけるleu2変異を相補できるS.セレビシエの遺伝子LEU2の機能的
コピー(Kamper et al.,Curr.Genet. 19(1991) 109)に適応される。mini−
mu MudIIZK1の制限酵素地図は、図3に示される。
A.2.MuヘルパーJM109::(Mucts)を担持する菌株E.コリ
中へのMiniMu MudIIZK1の導入: 菌株JM109::(Muc
ts)::(MudIIZK1)の収得。
菌株JM109::(Mucts)は、塩化カルシウムの存在で、minim
u MudIIZK1を含むプラスミドpGM83によって形質転換された。次
に、形質転換後、転位が、Castilho et al.(J.Bacteriol.158(1984)488)による
記載の技術に従い、熱ショックによって導入された。次いで、誘発後得られたフ
ァージ溶菌液が、菌株JM109::(Mucts)を重感染するために使用さ
れる。菌株JM109::(Mucts)は、recAであり、ファージによっ
て包膜された直鎖状DNAは、再閉鎖して複製プラスミドを生成することができ
ない。次いで、組み込み体[菌株JM109::(Mucts)::(MudI
IZK1)]は、クロラムフェニコール耐性(CmR)、アンピシリン感受性(
AmpS)クローンとして選択される。
A.3.E.コリDH1におけるK.ラクチスのゲノムバンクの調製高分子量
DNAが、K.ラクチス2359/152株から調製され、酵素Sau3Aによ
って部分的に消化された。サイズ4〜8kbの断片が、LMP(“低融点”、SE
AKAM)アガロースゲル上で回収され、BamHIにより直鎖化されたプラスミド
pBR322中にクローン化され、コウシ腸ホスファターゼ(Biolabs)の作用
で脱リン酸された。このようにして、E.コリDH1における1000コロニー
の35プールが作製された。各プールの1000コロニーは、アンピシリン耐性
およびテトラサイクリン感受性であり、このことは、それらが、pBR322中
に、K.ラクチスのゲノムDNA断片を全て挿入したことを示している。
A.4.融合体バンクの作製
A.4.1.菌株JM109::(Mucts)::(MudIIZK1)中
へのK.ラクチスのゲノムバンクの導入。
DH1において生産された各プールのプラスミドDNAが抽出される(Maniat
is)。次いで、このDNAが、塩化カルシウムの存在下、菌株JM109::(
Mucts)::(MudIIZK1)を、形質転換するために使用される。ゲ
ノムバンクの各プールに含まれる1000コロニーを代表にして、プール当たり
3000クローン以上が、形質導入を可能にする菌株JM109::(Muct
s)::(MudIIZK1)において回収された。
A.4.2.MiniMu MudIIZK1の転位
融合体バンクは、K.ラクチスのゲノムDNAバンクを形成するプラスミド中
へのMiniMu MudIIZK1の広範な転位によって作製される。min
imuductionは、Castilho et al.(J.Bacteriol.158(1984)488)に記載
の方法により実施され、形質導入株が、LBAC選択培地(アンピシリン50m
g/l、クロラムフェニコール30mg/mlを補足されたLB培地(Gibco BR
L))上で、プラスミドによって与えられたマーカーAmpRおよびmini−m
uによるマーカーCmRについて、選択された。各プールについて、転位は、直
列に行われ、プール当たり10,000〜20,000の形質導入株が回収され
る。形質導入株のDNAは、次に、調製物100mlから抽出され、ポリエチレ
ングリコールを用いる沈殿によって精製され(Maniatiset al.,1989)、水10
0μlに懸濁される。次いで、このDNAは、K.ラクチスを形質転換し、プロ
モ−ターを担持するクローンを選択す
るために使用される。B/ K.ラクチスのK1PDC1プロモ
ーターの単離
上記のように作製された融合DNAは、エレクトロポレーションによって、K
.ラクチスの受容菌株を形質転換するために利用された。この受容菌株は、SD
6と命名され、変異leu2(mini−mu MudIIZK1の選択マーカ
ーに対応する)およびlac4−8をもっている。この後者の変異は、その菌株
が、唯一の炭素源としてラクトースを含有する培地上で成長するのを妨げるが、
それは、β−ガラクトシダーゼをコードしているE.コリのlacZ遺伝子の過
発現によって相補される(Chen et al.,J.Bacic Microbiol.28(1988)211)。そ
れ故、β−ガラクトシダーゼに融合したタンパク質の発現は、形質転換後のラク
トースでのSD6株の成長を可能にする。このポジティブスクリーンは、強力な
プロモーターをもつクローンを素早く選択するのに使用された。
B.1.受容菌株K.ラクチスSD6の構築。
菌株SD6(Chen et al.,Mol.Gen.Genet.233(1992)97)は、菌株K.ラクチ
スCXJ1−7A(a,lac4−8、uraA,adel−1,kl,k2,
pKD1)(Chen and Fukuhara,Gene 69(1988)181)を、菌株AWJ−137(
leu2、trp1、ホモタリック)(Kamper et al.,Curr.Genet.19(1991)109
)とともに増殖させ、遺伝子型ADE+,uraA,leu2,lac4−8を
もつ胞子を選択して得られた。得られた胞子は、プロトプラストによる形質転換
後には再生することができないので、戻し交雑は、菌株CXJ1−7Aを用いて
行われた。一緒に胞子形成後、選択された遺伝子型の胞子が、
塩化リチウム中で、Ito et al.(J.Bacteriol.153(1983)163)(LiCl濃度20
mMであり、S.セレビシエについてItoによって使用された濃度の10倍以下
)記載の技術からの方法により、プラスミドKEp6を用いる形質転換によって
試験された。菌株CXJ1−7Aは、形質転換対照株として使用された。
これらの基準で選択された菌株SD6は、正確に形質転換し:DNAμg当た
り1〜3x104の形質転換株、そして形質転換株は十分安定である:非選択培
地で6継代後、コロニーの30〜40%が表現型[Ura+]を保持している。
B.2.K1PDC1プロモーターの単離
菌株SD6は、Becker and Guarante(Methods in Enzymology vol.194(1991)1
82)(Jouan apparatus;2500V/cm; 80−100n
gDNΛ/形質転換)によるエレクトロポレーションによって、A.4.2.(
E.コリにおける11,000クローンのバンクに対応)において得られた形質
導入株の11プールのDNAを用いて形質転換された。YPD培地(酵母エキス
10g/l;ペプトン10g/l;グルコース20g/l)で5時間再生後、そ
の細胞は、最少ラクトース培地に撒かれた。ラクトース上で成長可能な形質転換
株が、各コロニーについて再びストリーク培養され、各クローンについて、その
プラスミドが、抽出され、E.コリで増幅され、ベクターおよびmini−mu
の制限酵素地図の素早い確認の後、酵母SD6を再形質転換するために使用され
た。再形質転換後、得られたK.ラクチスのクローンの中で、その一つ、クロー
ン1D12が、制限酵素(図4、参照)によって、またK.ラクチスのタンパク
質とβ−ガラクトシダーゼとの接
合体の配列の分析によって研究された。このために、mini−muのlacZ
末端から始まる接合体の配列(二本鎖配列)が、接合体から−59ヌクレオチド
の位置にある次のオリゴヌクレオチド:
5’−CTGTTTCATTTGAAGCGCG−3′(配列番号:2)を用い
る配列決定によって決定された。
他の酵母もしくは真核生物(Genbank,MIPS, EMBL,等)の
タンパク質バンクの配列と比較して、このように得られたヌクレオチド配列から
のタンパク質配列の分析は、クローン1D12による配列によって生じた配列が
、K.ラクチスのピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子のプロモーターに対応す
ることを示している。次いで、融合体の上流領域を含む2.05kbのBamH
I−HindIII断片が、ベクタ−Bluescript KS+(Stratage
ne)中にサブクローン化され、制限酵素地図が作られ(図5)、そしてその配列
が、1.2kbにおける逐次欠失によって決定された(配列番号:1)。また、
配列要素の収得により、専門家は特異的なプローブを作製でき、そして分子生物
学の慣例の技術によるハイブリダイゼーションによって、本発明のプロモーター
領域を再クローン化できる。II−クルイベロミセスの形質転換
。
酵母中にDNAを導入させる種々の技術が使用される。
有利には、使用されるクルイベロミセスの種々の菌株が、Ito et al.(J.Bact
eriol.153(1983)163-168)記載の技術による酢酸リチウムおよびポリエチレング
リコールの存在下で、細胞全体を処理することによって形質転換される。エチレ
ングリコールおよびジメチルスルホキシドを用いるDurrens et al.[Curr.Gent.1 8
(1990)7]の形質転換技術も、
同様に使用された。また、例えば、Karube et al.(FEBS Letters 182(1985)90
)記載の方法により、エレクトロポレーションによって酵母を形質転換すること
もできる。
その他の方法は、既に欧州特許第361991号明細書に詳細に記載されてい
る。III−プロモーター配列番号:1の使用による外来遺伝子の発現
。
配列番号:1に記載のK.ラクチスの領域の転写プロモーター活性は、菌株S
D6のlac4−8変異の相補を導く能力によって、その単離の時においても認
識される。事実、この能力は、E.コリのlacZ遺伝子の発現の結果であり、
外来遺伝子の発現能を同じ証拠によって表している。IV−ポータブルK1PDC1プロモーター(配列番号:3)の構築
ポータブルプロモーターは、PCRによって、2.05kbのBamHI−H
indIII断片中に、遺伝子K1PDC1のコドンATGに関して+1位置に
HindIII制限酵素部位を、そして1165bp上流においてMluIおよ
びSalI制限酵素部位を、挿入することによって作製される(配列番号:3)
。PCR生産物は、ベクターpCRII(Invitrogen)中にクローン化されて、
プラスミドpYG175を生じ、簡単なMluI−HindIII消化によって
そのプロモーターを再解離させ、かくして発現ベクター中へのクローニングを容
易にする。
次に、ヒト血清アルブミンの発現ベクターは、プラスミドpYG1018から
次のように作製される:プラスミドpYG1018は、LAC4プロモーターの
制御下のプレプロ−アルブミンを含む。それは、欧州特許第402212号明細
書に記載のベクターpYG1023から、K
1PGK遺伝子をもつBssHII−MluI−断片の欠失によって生じる。p
CRIIプロモーターおよびpYG1018ベクターの5μgが、HindII
IおよびMluIの60ユニットによって消化される。0.8%のアガロースゲ
ルでの移動後、プロモーターPDC1(約1.2kb)に対応するバンド、ベク
ター部分(約9kb)に対応するバンドおよびアルブミンのcDNA(約2kb
)に対応するバンドが、電気溶出される。次いで、3パートナーの連結(供給者
New England biolabsによるバッファーおよび温度の指示に従い)が、プロモー
ターDNA1μl、ベクターDNA1μlおよびアルブミンDNA2μlを用い
て実施される。E.コリにおける形質転換(Chung et al.NAR 16(1988)3580)後
、形質転換株のプラスミドDNAが、Ish-Horowicz and Burke(NAR 9(1981)29
89)により改変されたBirboim and Doly(NAR 6(1979)1513)のSDSにおけるア
ルカリ溶菌の技術に従って作製される。酵素消化後、良好な制限酵素プロフィル
をもつプラスミドが単離される。このプラスミドは、pYG181と呼ばれる。
菌株K.ラクチスCBS293.91は、実施例11に記載の条件下でpYG
181によって形質転換された。数種の形質転換株によるアルブミン生産が、欧
州特許第361991号記載の技術により試験される。その形質転換株によって
分泌されたアルブミンの量は、類似している(50−100mg/l)。
配列表
(2) 配列番号:1の情報
(i)配列の特徴:
(A)長さ:1239 塩基対
(B)型 : 核酸
(C)鎖の数: 二本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類:cDNA
(iii)ハイポセティカル:NO
(iii)アンチセンス:NO
(vi)起源:
(A)生物名:クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces
lactis)
(ix)特徴:
(A)NAME/KEY: CDS
(B)位置.1177...1239
(xi)配列
(2) 配列番号:2の情報
(i)配列の特徴:
(A)長さ:19 塩基対
(B)型 : 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類:cDNA
(iii)ハイポセティカル:NO
(iii)アンチセンス:NO
(xi)配列
(2) 配列番号:3の情報
(i)配列の特徴:
(A)長さ:1184 塩基対
(B)型 : 核酸
(C)鎖の数: 二本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ii)配列の種類:cDNA
(iii)ハイポセティカル:NO
(iii)アンチセンス:NO
(vi)起源:
(A)生物名:クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces
lactis)
(xi)配列
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C12P 21/02 C 9282−4B
// A61K 38/00
(C12N 15/09 ZNA
C12R 1:645)
(C12N 1/19
C12R 1:645)
(C12P 21/02
C12R 1:645)
(C12N 15/00 ZNA A
C12R 1:645)