【発明の詳細な説明】アグロバクテリウム種の純粋培養菌による第二鉄キレートの分解
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、アミノポリカルボン酸の第二鉄キレートの生物分解に関する。より
詳しくは、本発明は、これらの化合物をとくに水溶液から分解するための微生物アグロバクテリウム
種の使用、ならびにアグロバクテリウム種の純粋培養菌に関
する。
2.現状技術
これまで、エチレンジアミン四酢酸第二鉄(EDTA−第二鉄)の様なアミノ
ポリカルボン酸の金属キレートおよび他の類似のキレートは容易に生物分解され
ないことが分かっている。例えば、ゲリケら、生態毒物学および環境安全、3:
159−173(1975)参照。
その様な金属キレートを容易に分解できないために、多くの環境問題が生じる
。特に、活性化スラッジによる二次処理において、これらの金属キレートの生物
分解は非常に遅いので、これらのキレートが二次処理施設を通過し、ほとんど分
解されずに環境中に放出されることが報告されている。トムら、Proc.Roy.Soc. of London.
、189:
347−357(1975)参照。このために、環境において可能なキレートの
生物蓄積ならびに汚染された河川または堆積物中に高濃度を放出することにより
可能な重金属の移動も問題になっている。さらに、EDTAは、核廃棄物処理場
から放射性核種を移動させることにもなる。
他方、何年間にもわたってEDTAが環境中に蓄積することはなさそうである
。例えば、土壌中の比較的低濃度(土壌1グラムあたり2−1000マイクログ
ラム)のEDTA汚染は生物学的に除去されることが立証されている。Tiedje、Appl.Microbiol.、
30:327−329(1975)およびTiedje、J.Envir on Qual.、
6:21−26(1977)参照。これらの研究において、低濃度の
EDTAおよびその金属キレートは各種の土壌において15−45週間で消失す
ることが示されている。しかし、EDTAまたはその金属キレートを代謝できる
単一の細菌種は分離されなかった。
水溶液中のやや高い濃度(<2mM)において、ベリーら、Appl .Microbiol.、
29:787−794(1975)は、細菌の順化した混合個体群によるFe+3
EDTAキレートの好気性細菌分解を研究している。これらの濃度において、基
質の90%以上が5日で消失している。やはり、第二鉄EDTA基質だけを炭素
源として成長する単一の細菌種は分離されなかった。SU525627の要約は
、先ず水酸化ナトリウム処理を行い、次いで好気性細菌を使用して生
物学的精製を行うことにより、重金属錯体を沈殿させて水から除去する方法を記
載している。水酸化ナトリウム処理から得られる濾液はpH8−9で微生物で精製
する。
特開昭58−43782号は、プソイドモナスおよびアルカリゲネス種の株が
好気性条件下でEDTAを分解できることを記載している。試験した最高濃度は
5mMで、80%分解に5日間を要している。
生物学的分解の他に、EDTAの第二鉄キレートは、紫外線照射により分解で
きる。特に、模擬環境条件下で、ロックハートら、Env.Sci.and Technol.、9
:1035−1038(1975)ならびにロックハートら、Environ.Lett.、
9:19−31(1975)は、UV照射機構による分解を立証している。明る
い日光における分解速度は、親化合物の除去に初期濃度1.6mM、pH4.9で1
−2日間、初期濃度9.8mM、pH6.9で11日間以上かかることが分かった。
これらの研究で、EDTA−第二鉄の変換は立証されたが、広範囲な鉱化作用は
立証されなかった。
上記の理由から、アミノポリカルボン酸の金属キレートを、特にその様なキレ
ートで汚染された工業廃液から分解するための効率的な方法が常に必要とされて
いる。さらに、その様なキレートを除去するためのその様な分解方法は、環境に
害を与えることなく、迅速に行われる必要がある。
発明の概要
本発明は、微生物アグロバクテリウム種(アメリカン
タイプ コレクション、ロックビル、MD、にATCCNo.55002として供
託)がアミノポリカルボン酸の第二鉄キレートを迅速に、且つ効率的に分解し、
したがってこの微生物を使用して水溶液を処理し、その様な第二鉄キレートを除
去できるという発見によるものである。
そこで、その構成の一つの特徴において、本発明は微生物アグロバクテリウム 種
ATCC番号55002の生物学的純粋培養菌を目的としている。
その構成の別の特徴において、本発明は、アミノポリカルボン酸の第二鉄キレ
ートの一つ以上を含む水溶液からその第二鉄キレートを分解できる、アグロバク テリウム種
の生物学的純粋培養菌を目的としている。
その方法の特徴の一つにおいて、本発明は、アミノポリカルボン酸の第二鉄キ
レートの分解方法であって、該キレートをアグロバクテリウム種の生物学的純粋
培養菌と組み合わせることからなる方法を目的としている。本発明のこの特徴は
、さらにエチレンジアミン四酢酸、プロピレンジアミン四酢酸またはそれらの混
合物の第二鉄キレートを分解するための方法であって、該キレートの一つ以上をアグロバクテリウム種
の生物学的純粋培養菌と組み合わせることからなる方法に
関する。
その方法の別の特徴において、本発明は、アミノポリカルボン酸の第二鉄キレ
ートを含む水溶液から鉄を回収する方法であって、
a)アミノポリカルボン酸の一つ以上の第二鉄キレートを含む水溶液にアグロバ クテリウム種
の生物学的純粋培養菌を加えること、
b)その水溶液を、溶液から鉄が沈殿するのに十分な温度で、十分な時間、pH約
8以下に維持すること、および
c)該鉄を回収すること
からなる方法を目的としている。
図面の簡単な説明
図1(a)および1(b)は、振とうフラスコ中における、ナトリウムEDT
A−第二鉄によるアグロバクテリウム種(ATCC No.55002)の成長特性
を示す。基礎培地(下記)、35mMのナトリウムEDTA−第二鉄および100
mMのリン酸塩を含む溶液を、HClおよびNaOHを加えることによりそれぞれ
PH6.2および7.4に調節した。培養は振とう培養機中で29℃で行った。図
1(a)で、600nmにおける光学密度を0.1NのHClで希釈したアリコー
トに対してプロットし、そのプロットした値を希釈ファクターで補正した。図1
(b)では、EDTA−第二鉄濃度をミリモル単位でプロットし、測定したpHを
データ点上に示す。
図2(a)および(b)は、pHを7.4に調節し、温度を29−31℃に維持
し、1リットル規模で行ったアグロバクテリウム種(ATCC No.55002)
の培養菌から得た結果を示す。初期肉汁は、基本培地に35mMのナトリ
ウムEDTA−第二鉄および100mMのリン酸塩を含む様に調製した。特に、図
2(a)は、培養中の異なった時間における化学的酸素要求量(COD)を示す
。COD測定は、肉汁全体のアリコート全体(細胞を伴うCOD)で、および1
3000gで遠心分離して細胞物質および化学沈殿物を除去した後(COD上澄
み)に行った。図2(b)は、異なった培養点における、可溶性鉄(すなわち溶
液中の)、アンモニアおよびEDTA−第二鉄の濃度を示す。
図3(a)および3(b)は、EDTA−第二鉄によるアグロバクテリウム種
(ATCC55002)の大規模(7.2リットル)培養から得られた結果(炭
素および窒素の物質収支を含む)を示す。COD値は、細胞を遠心分離した後の
アリコートについて得た。EDTA−第二鉄からCO2およびアンモニアへの炭
素および窒素の変換は、接種時に測定したEDTA−第二鉄の初期濃度から可能
な最大値の百分率としてプロットする。失われたCODの百分率は、初期肉汁中
のCODから溶液中に残留するCODを引くことにより計算する。CODもアン
モニア値も蒸発に関しては補正していない。
図4はアグロバクテリウム種(ATCC55002)の成長に対する、初期pH
およびEDTA−第二鉄濃度の影響を示す。試験管は基本培地、リン酸塩緩衝液
(100mM)およびナトリウムEDTA−第二鉄を図に示す濃度で含んでいた。
試験管に、新たに収穫し、洗浄した細胞の濃縮物
から1.0の計算初期光学密度(OD)で接種し、30℃±1℃で48時間培養
した。誤差棒は三重実験(pH7.4)および二重実験(pH6.2)に対する標準
偏差を示す。反復実験において比較試験は行わなかった。
図5は、トリプチケース大豆肉汁寒天平板上で成長させた、白金/パラジウム
陰影をつけた、アグロバクテリウム種の電子顕微鏡写真である。
図6は、EDTA−第二鉄寒天平板上で成長させた、白金/パラジウム陰影を
つけた、アグロバクテリウム種の電子顕微鏡写真である。
小さな黒い断片は、細菌の表面上の局所的な高密度区域を示す。
好ましい実施態様の詳細な説明
エチレンジアミン四酢酸の第二鉄キレート(EDTA−第二鉄)を含む産業廃
棄物を受け入れる処理施設からアグロバクテリウム種、ATCC No.55002
の生物学的純粋培養菌を分離したが、これはアミノポリカルボン酸の第二鉄キレ
ートを以前に報告されている値よりも著しく高い速度および基質濃度で分解でき
る。この微生物は、直径約1ミクロンで長さ約2−3ミクロンの、好気性のグラ
ム陰性桿状菌である。この用途向けのアグロバクテリウム種の生物学的純粋培養
菌菌は、アグロバクテリウム種の明白な特徴を有する、一種類の細胞、単一祖先
または同一の祖先のすべての子孫ならびにその突然変異体および変種を含む
培養菌である。
分離されたアグロバクテリウム種の微生物は、EDTA−第二鉄を唯一の炭素
源として、24mM/日という急速な消費率で代謝することが分かった。好ましく
は、水溶液中で、EDTA−第二鉄濃度は約1mM以下から約150mM以上まで、
より好ましくは約3mMから約80mMまでの範囲にすることができる。この様に、
本発明の微生物は、EDTA−第二鉄を急速に、高基質濃度で分解することがで
きる。代謝が進行するにつれて、二酸化炭素およびアンモニアが生成し、pHが上
昇し、鉄が沈殿する。沈殿した鉄は、濾過、遠心分離、等の通常の方法により回
収することができる。分離されたアグロバクテリウム種の微生物は、プロピレン
ジアミン四酢酸(PDTA)、等の他のアミノポリカルボン酸の第二鉄キレート
も代謝する。
この出願の目的には、用語「アミノポリカルボン酸の第二鉄キレート」は、2
個以上のアミノ基および3個以上のカルボン酸基を有し、Fe+とキレートを形
成できるアミノポリカルボン酸を意味する。本発明の微生物により(第二鉄キレ
ートとして)分解できるアミノポリカルボン酸には、例えばエチレンジアミン四
酢酸(EDTA)プロピレンジアミン四酢酸(PDTA)、等がある。
新しく発見された微生物、アグロバクテリウム種の生物学的純粋培養菌は、ア
ミノポリカルボン酸の第二鉄キレートを除去するための方法に使用できる。好ま
しくは、この
方法は水溶液中で行うが、その際、水溶液を約8.0以下のpHに維持する。ある
いは、この方法は、アミノポリカルボン酸の第二鉄キレートで汚染されている埋
立て地、または他の類似の場所中で行うこともできる。前と同様に、培地のpHは
約8.0以下に調節するのが好ましい。
水溶液中で行う場合、本方法は、とりわけ工業廃液、洗浄溶液などの広範囲な
水溶液で効果的である。さらに、ここで使用する水溶液は有効量の殺菌剤を含む
べきではない。好ましい実施形態では、第二鉄キレートの分解速度を高めるため
に、水溶液は、アグロバクテリウム種の抑制剤を抑制有効量未満で、すなわちア
ミノポリカルボン酸第二鉄代謝の50%低下を引き起こす量未満で抑制剤を含む
べきである。
本発明の方法の好ましい実施形態では、水溶液に鉱物およびビオチン原料を加
える。特に、塩化アンモニウム、硫酸マグネシウムおよび硫酸カルシウムの塩を
それぞれ5mM、0.1mMおよび0.07mMの濃度で使用することができる。これ
らの実施形態では、微生物成長のための培地を改良するために、第二鉄キレート
を分解する水溶液に一定の微量鉱物塩を加える。これらの塩は、H3BO3、Mn
SO4・7H2O、ZnSO4・7H2O、CuSO4・H2O、(NH4)6Mo7O2 4
・H2O、CoSO4・7H2Oを含むことができる。これらの微量の塩は、約2
5マイクロモル未満の量で存在するのが好ましい。特に、これらの
塩は、それぞれ0.025mM、0.003mM、0.002mM、0.00035mM
、0.0002mMおよび0.00004mMの濃度で使用することができる。ビオ
チンも、一般的に約1〜約10マイクロモルの量で溶液に加えることができる。
塩、微量鉱物塩、およびビオチンの上記の特定濃度を含む水溶液をここでは「基
本培地」と呼ぶことがある。
水溶液中に存在できる他の原料には、相容性のある緩衝液、すなわちリン酸ナ
トリウム、リン酸カリウム、等の、微生物にとって毒性でない緩衝液がある。水
溶液のpHを望ましい範囲に維持するために、十分な量の緩衝液を加える。本発明
の方法に好ましい緩衝液は、リン酸塩緩衝液、例えば総リン酸塩濃度が25〜2
00mMであるナトリウム塩およびカリウム塩の50/50モル混合物である。し
かし、pHを約8.0未満の水準に維持するために酸を定期的に加える場合、どの
様な相容性のある緩衝液でも使用できる。好ましくは、水溶液のpHは約6〜8に
維持し、水溶液に加える緩衝液は一般的に約25mM〜約200mMの量で存在する
のが好ましい。
水溶液を約8.0以下のpHに維持するには、溶液に酸を加えることができる。
酸は、アグロバクテリウム種の微生物による第二鉄キレートの分解に影響しない
、どの様な酸でも使用できる。その様な酸には、HCl、H2SO4、等が含まれ
る。好ましくはHClを使用する。酸は、pHを
約8.0以下に維持するために定期的に加える。
金属キレートおよびアグロバクテリウム種の両方を含む水溶液の温度は、微生
物に無害な温度を使用するのであれば、重要ではない。したがって、微生物が第
二鉄キレートを分解できるのに十分な、どの様な温度でも使用できる。好ましい
実施形態では、使用する温度は約21℃〜約37℃であり、より好ましくは約2
9℃〜約31℃である。
下記の実施例は、アグロバクテリウム種の分離、確認および試験を説明し、本
発明をさらに説明するが、請求項の範囲を制限するものではない。
実施例
下記の手順を使用して本発明の微生物を評価した。
細菌の分離 EDTA−第二鉄を含む廃棄物を数年間受け入れてきた、通気二
次廃棄物処理施設からスラッジの試料を得た。試料はプラスチックびんに集め、
氷上で輸送し、使用前は4℃に保持した。濃縮培地(EDTA EM、表1参照
)に100マイクロリットルの試料を接種し、30℃で2週間培養した。この初
期濃厚培地から得た成長物を寒天平板培地(寒天固化EDTA EM)に塗り付
け、30℃で成長が観察されるまで培養した。これらの平板からの細菌コロニー
の継代を繰り返し、強制寒天培地(EDTA M1およびM2、表1参照)上に
おける成長について試験し、EDTA−第二鉄を唯一の炭素源として利用するコ
ロニーを選別した。次いで、これらの培地上で分離さ
れたコロニーを、唯一の炭素源としてEDTA−第二鉄を含む好気性液体培地(
EDTA G1、表1参照)に継代した。
すべての実験において、EDTA−第二鉄を含む培地はアグロバクテリウム種
を接種する前に滅菌した。幾つかの場合には、すべての成
分を加え、pHを調節した後、0.2ミクロンフィルターを通して濾過することに
より、この滅菌を行った。他の場合には、肉汁全体を濾過せず、原料溶液を個別
に濾過滅菌し、次いで一緒に加え、その時に無菌性を維持するためにエタノール
洗浄したpH電極を使用してpHを調節した。さらに他の場合には、ビオチン以外の
原料溶液をその場で加熱滅菌した。次いで、1mMで鉄を追加するためにFeCl3
(0.1M)の原料溶液を調製した。ビオチンおよびFeCl3原料を濾過滅菌
し、個別に加えた。不注意でアグロバクテリウム種以外の微生物により汚染され
た培地は、EDTA−第二鉄の分解を十分に支持せず、したがって、その様な他
の微生物を含む培地は好ましくない。
細胞の収穫および保存 EDTA−第二鉄培地で成長させた後、細胞を4℃で
遠心分離により収穫した。肉汁を先ず4200gで20分間遠心分離し、次いで
上澄み液を取り、13000gで20分間遠心分離した。細胞ペレットを滅菌し
た蒸留水中に再分散させ、再度13000gで遠心分離して細胞を洗浄した。沈
殿した細胞ペレットを滅菌した蒸留水中に、600nmにおける光学密度>5に再
分散させた。長期保存のために、分散物にグリセリン(10体積%)を加え、ア
リコート(2ml)を液体窒素冷凍庫に保管した。
保存または新しい培地に接種する前に接種物を洗浄するための上記の手順は、
迅速な分解をもたらす条件を造り出すために採用した。幾つかの場合で、洗浄し
ていない接種物を使用した場合、新しい培地における成長が遅れた、または通常
観察される成長よりも著しく遅くなった。洗浄により沈殿物の多くが除去される
ことが光顕微鏡により確認される。
あるいは、細胞は、29−31℃で24時間維持した複合トリプチケース/大
豆肉汁(BBLから)中で成長させることができる。その様にして成長させた細
胞も、EDTA−第二鉄を含む水溶液に加えたときに、EDTA−第二鉄の分解
に有効である。
接種には、冷凍保存した細胞を加えた、または成長の後段階で種フラスコから
細胞を収穫した。新たに収穫した場合、細胞は、最初の13000gにおける遠
心分離以外は上記の様に調製し、それらの細胞を水または接種培地としての新し
い培地に分散させた。
電子顕微鏡 培地を0.1Mカコジル酸塩緩衝液中2%グルタルアルデヒドで
2分間固定し、ホルムバール(Formvar) 被覆格子上に落とし、乾燥させ、14゜
で白金/パラジウムで真空被覆被覆した。JEOL−100CX電子顕微鏡で回
転陰影により顕微鏡写真を撮影した。
株の確認 代表的な試料を血液寒天およびマッコンキー寒天平板上で継代培養
した。接種後、試料は、GNIカー
ド(ビテック システムス社、ヘーゼルウッド、MO63042)を使用するビ
テックAMSおよびAPIラピッドNFT(APIアナリタブ プロダクツ、プ
レインビュー、NY11803)システムを使用するAP120Eによる、生物
化学反応の分析による細菌の確認のために調製した。さらに、ドルッカー、微生 物学における方法
、9巻、J.R.ノリス、編集アカデミックプレス、ロンドン
、51〜125頁に記載されている全細胞脂肪酸のガスクロマトグラフィー分析
も使用して確認した。
EDTA−第二鉄評価分析 EDTA−第二鉄の測定の前に、エッペンドルフ
モデル5415遠心分離機で14,000 rpmで2分間遠心分離することによ
り、試料から細胞を分離した。次いで希釈試料中の最大EDTA−第二鉄濃度が
0.9mM未満になる様に、試料を水または初期可動相で希釈した。
HPLCは、試料を注入するためのWISP712試料処理装置、可動相を配
送するための2基のウォーターズ510ポンプ、第二鉄キレート検出のための3
60nmに設定したウォーターズ490多重波長検出器、およびクロマトグラムを
表示、記憶、記入および分析するためのウォーターズ840データシステムを備
えたモジュール式のウォーターズ アソシエーツ システム(ミリポアコーポレ
ーション、ミルフォード、MA01757)を使用して行った。 クロマトグラ
フィー分離は、30マイクロリットル
の試料を市販の長さ15cm、内径4.6mmの逆相HPLCカラム(スペルコ社、
ベレフォンテ、Penn.16823らか得たLC18)上に射出して行った。脱イ
オン水中、1g/リットルの酢酸アンモニウム、0.5g/リットルのPDTA、
1.5ミリリットル/リットルの氷酢酸、0.5ミリリットル/リットルの水酸
化アンモニウム、0.1ミリリットル/リットルのトリエチルアミン、および5
ミリリットル/リットルのアセトニトリルからなる初期可動相により1.0ミリ
リットル/分でIsocratic 溶離することにより、EDTA−第二鉄を2分間の保
持時間で溶離させた。射出から2.5分後、脱イオン水中、0.5g/リットルの
PDTA、0.1ミリリットル/リットルのトリエチルアミン、および600ミ
リリットル/リットルのアセトニトリルからなる最終可動相への段階勾配により
5.5分間で高度に保持されていた成分をカラムから洗い流した。さらに初期可
動相への段階勾配を4分間使用することによりカラムを再平衡化した。
計器は、0.03〜0.9mMの濃度にわたる、緩衝液を含まない脱イオン水中
のEDTA−第二鉄アンモニウムの一連の標準を射出することにより毎日校正し
た。標準の面積応答の直線最小2乗回帰分析を使用して傾斜および横断値(r−
2乗一般的に>0.996)を求め、次いでこれを使用して測定面積からの試料
に対する定量値を得た。正確さおよび精密さは、校正範囲全体にわたって5%よ
り優
れていると評価した。
アンモニア/アンモニウム評価分析 総アンモニアは、オリオン モデル95
−12アンモニア電極を使用して測定した(オリオン モデル95−12、オリ
オン リサーチ社の使用説明書に記載されている手順に従った。)。
COD評価分析 試料中のCODを評価するために、「水および廃水の標準試
験方法」、米国公衆衛生協会、ワシントン、D.C.、第16版、532−53
8頁(1985)の方法508Cに類似した、ハック ケミカル社(ハック社、
ラブランド、Co1.80539)の試験管比色定量法を使用した。
鉄分評価分析 水性試料中の総鉄分を評価するために、ストゥーキー、Anal.Chem.
42:779−781(1970)に記載されているストゥーキーのフェ
ロジン法の改良方法を使用した。EDTA−第二鉄を含めて、存在するキレート
から鉄陽イオンを放出させるために、「水および廃水の標準試験方法」、米国公
衆衛生協会、ワシントン、D.C.、第16版、148頁(1985)の方法3
02Eから採用した手順を使用して試料をまず消化した。50マイクロリットル
の試料を、酸洗した、厚壁のねじキャップ付きの試験管(ハックCOD試験管と
同等)に入れ、続いて50マイクロリットルの濃硝酸および100マイクロリッ
トルの濃硫酸を加えた。この試験管のキャップをきつく締め、ハックリアクター
プレー卜中で150℃で15分
間還流加熱した。冷却後、試験管のキャップを外し、再び反応器中に最高10分
間、ただし試験管が完全に乾燥するほど長くない時間置いた。冷却後、200マ
イクロリッ卜ルの酸−フェロジン試薬(0.514gのフェロジン、10gの塩
酸ヒドロキシルアミン、および50ミリリットルの濃塩酸を蒸留水に溶解し、1
00mlに希釈したもの)を加えた。内容物をうずミキサーで混合し、次いで1.
5ミリリットルの緩衝液(40gの酢酸アンモニウムおよび35ミリリットルの
濃水酸化アンモニウムを蒸留水で100ミリリットルに希釈したもの)を加えて
pHを5〜9に調節した。次いで、試料を5.4ミリリットルの蒸留水で希釈した
。
20〜1000mg/L総鉄分濃度にわたる標準を純粋な硫酸第二鉄アンモニウム
ドデシル水和物から調製した。これらの標準は試料と同様に処理した。分光光度
計(ハックDR/3)で562nmで測定した標準の吸光度および標準の濃度から
、直線最小2乗校正を行った。50mg/Lを超える総鉄分の濃度において、既知の
濃度のEDTA−第二鉄を含む試料を使用して観察した精密さおよび正確さは5
%より優れていた。実施例1−細菌の同定
分離した株のアグロバクテリウム種、グラム陰性好気性菌としての同定は、ビ
テックAMS(ビテック システムス、ヘーゼルウッド、ミズリー63042−
2395)で
ビテックGNIカード(グラム陰性同定カード、製品番号51−1306)を使
用して確率99%で行った。分離した株の同定に使用した生物化学的試験および
結果を表2に示す。この同定は、APIラピッドNFTストリップ(APIアナ
リタブ プロダクツ、プレインビュー、ニューヨーク11803、製品番号88
86−500951)によっても99.9%の確率で確認された。分離した株の
同定に使用したこの生物化学的試験および結果は表3に示す。株の脂肪酸のガス
クロマトグラフィー分析もアグロバクテリウムとしての種類を確認した。
上記の結果から、この微生物は一時的にアグロバクテリウム ラジオバクター
であると決定された。さらに、分離菌は、biovar1およびbiovar2を区別せずに
独立して(ア
メリカン タイプ カルチャー コレクション、ロックビル、MD)アグロバク テリウム種
として代表された。したがって、この微生物はここではアグロバクテ リウム種
と呼ぶ。実施例2−成長研究
微生物の様々な特性を決定するために成長研究を行った。この研究のために、
上記の基本培地ならびに100mMのリン酸塩緩衝液、および35mMのEDTA−
第二鉄ナトリウムをフェルンバッハフラスコ中で使用した。培養は、振とう培養
機で29℃で行った。試料を定期的に採取し、pH、EDTA−第二鉄濃度および
600nmにおける光学密度(OD)を測定した。pHは、オリオン組合わせ電極
およびコーニングpHメーターを使用して測定した。ODは細菌成長の尺度として
使用した。測定は、分解中に形成され、細菌成長のためにODを妨害する鉄沈殿
物を溶解させるために、0.1N HClに希釈して行った。
フェルンバッハフラスコ中における成長の際に観察されたODの増加を図1(
a)に示す。
図1(b)には、フラスコ内のEDTA−第二鉄の濃度を測定したpHと共にプ
ロットする。このグラフは、3個のフラスコすべてにおいて光学密度が増加し、
EDTA−第二鉄の濃度が減少し、pHが増加することを示している。pHが増加し
ない場合は、どのフラスコにおいてもEDTA−第二鉄の代謝は観察されない。
反対に、pHが8を超えて増
加するのを抑制しないとEDTA−第二鉄の消失は停止する。pH調節せずに、フ
ラスコ中のEDTA−第二鉄濃度が明らかに増加するのは、EDTA−第二鉄代
謝が終わった後の蒸発による(pH>9)。これらのフラスコのどれも蒸発に対す
る補正は行っていない。これらの数値に含まれるデータは、アグロバクテリウム 種
が成長する際にEDTA−第二鉄が分解され、分解が終わると成長も終わるこ
とを立証している。実施例3−1リットル規模における培養
分離菌を、pH調節できる様に2リットル培養機中で1リットル規模で成長させ
た。初期の培養機の肉汁は35mMのEDTA−第二鉄、100mMのリン酸塩、お
よび上記の基本培地を含む。さらに、FeCl3を最終濃度1mMまで加えた。培
養機に接種するために、株を振とうフラスコ中、上記と同じ培地中で、31℃で
24時間成長させた。振とうフラスコから取り出した細胞を13000gで20
分間遠心分離することにより肉汁から分離した。これらの細胞を200mlの新し
い肉汁に再分散させ、培養機に入れ、初期総体積を1リットルにした。
0.2ミクロンの無菌フィルターを通して空気を1リットル/分の流量でマル
チゲン発酵装置(ニューブランズウィック サイエンティフィック社、エディソ
ン、N.J.08818)に通した。発酵装置(培養機)は磁気駆動プロベラ軸
で500rpm で攪拌した。水素イオン濃度を監視
し、HClを自動添加しながらpH7.4〜7.7に調節した。培養機の温度は3
0±1℃に維持した。
この結果を図2(a)および2(b)に示す。培養が進行するにつれて観察さ
れるEDTA−第二鉄濃度の低下と平行して溶液中の鉄濃度も低下した。水溶液
から基質が除去されるにつれて、アンモニウム含有量が増加した。さらに、CO
Dは低下したが、EDTA−第二鉄濃度の低下(93%)に比例してはいない。
細胞および沈殿物を除去するための遠心分離の後に測定した試料では、CODは
8880から2640mgO2/リットルに低下(70%低下)し、細胞および沈
殿物がまだ存在する状態で測定した試料では、CODは8870から3392mg
O2/リットルに低下(62%低下)した。
さらに、選択した試料を希釈し、細菌計数のためにTSA上で平板培養した。
生存細菌の数は実験開始後46から70時間で減少し始めた。これは曲線の傾斜
の折れ曲りと良く一致している。実施例4−抑制
EDTA−第二鉄代謝に対する幾つかの因子の抑制効果を研究した。これらの
実験は試験管中で標準条件、すなわち100mMのリン酸塩緩衝液(pH7.4)、
上記の基本培地、35mMのEDTA−第二鉄、600nmにおける光学密度1に接
種、初期体積3.5ml、試験管振とう培養機中で29−31℃で1から4日間の
培養により行った。試験す
べき抑制因子の濃縮物を4から6種類の異なった量で異なった無菌試験管に加え
、残りの体積には脱イオン水を加えた。
幾つかの成分の抑制効果に関するデー夕を表4に示す。表中の濃度は、試験す
る因子のどれも含まない試料と比較した、実験期間中にEDTA−第二鉄の代謝
を50%低下させる濃度である。
上記の特定薬品による抑制に加えて、分解中にアグロバクテリウム種によりE
DTA−第二鉄分解の末確認代謝物
が形成され、生成物抑制を引き起こす。また、この微生物は光処理溶液中に見ら
れる一つ以上の成分により抑制される。実施例5−成長基質としてのキレート
成長のための基質として多くの金属キレートを試験した。これらの実験は、卓
上振とう装置に配置した試験管中で30℃で24日間行った。培地は、初期リン
酸塩緩衝液濃度が71mMであり、初期光学密度が0.4になる様に接種物を計算
した以外は、上記の成長抑制のための培地と同じであった。有機キレートの濃縮
物は、最終濃度4および20mMで試験管に加えた。金属を含む試料に関しては、
キレート化剤のモル量に等しいモル量をFeCl3、NiC12またはCuSO4
の濃縮物から加えた。接種物以外のすべての成分を加えた後、HClまたはKO
Hを使用して試料をpH7.4に調節した。2組の試験管を上記の様に調製したが
、細菌の成長を防止するために、すべての試料に0.25mlのHgCl2の2.
5g/l 溶液を加えた。
24日後の試料における成長を、試料試験管の光学密度を、塩化第二水銀を加
えた比較試料中の光学密度と比較することにより評価した(表5)。試験した両
濃度において、それぞれの比較試料に比べて光学密度が5倍大きい基質は成長に
好ましいと考えられた。
実施例6−7.2リットル規模の培養
通気、混合およびpHの制御を改善し、炭素および窒素の物質収支を決定するた
めに、28℃に維持した、コンピュータ制御式の14リットルのヒェマップCF
3000培養機(ヒェマップAG、フォルケッツビル、スイス)中で7.2リッ
トル体積で培養を行った。
2つの、基本培地(上記)を含むEDTA−第一鉄培地の6リットルバッチに
、1.2リットルの同じ基本培地中に濃縮した、新たに収穫した細胞を接種した
。培養物の一方には250 g/lのスクロースおよび250 g/lの酵母エキスも0
.2g/分の一定率で供給した。この供給組成物はホーファー、J.バクテリオロ ジー
、41:193−224およびリッピンコットら、ザ プロカリオテス、第
1巻、スターら、編集、スプリンガー出版842−845頁のアグロバクテリア
の収穫に関する以前の研究に基づいて選択した。
図3(a)は、EDTA−第二鉄を唯一の炭素源とする培養においてEDTA
−第二鉄から可能な最大値の百分率として表した、EDTA−第二鉄のCO2お
よびNH3への累積転換を表すグラフである。さらに、CODの減少百分率もプ
ロットしてある。さらに、3つの曲線はすべて互いに平行であり、EDTA−第
二鉄が効率的に鉱化されていることを示している。図3(b)は、炭素源として
EDTA−第二鉄だけが供給される培養における、可溶性鉄分およびEDTA−
第二鉄の相対濃度を示す。
炭素および/または窒素源(スクロース/酵母)を追加した培養では、実質的
な分解が起きてはいるが、EDTA−第二鉄の分解および微生物の成長は活発で
はない。特に、同じ培養期間では、EDTA−第二鉄の37%が分解されたのに
対し、図3(b)に示す場合では85%以上が分解
されている。したがって、非殺閑性炭素源を含む廃液中のEDTA−第二鉄の実
質的な分解が期待できる。実施例7−アグロバクテリウム種(ATTC55002)による分解に対するE DTA−第二鉄濃度の影響
分離菌が耐えられる最高初期EDTA−第二鉄濃度を決定するために、100
mMのリン酸塩緩衝液を加えた基本培地(上記)を使用して一連の試験管培養を3
0℃±1℃で48時間行った。初期EDTA−第二鉄濃度は2.9〜140mMで
あった。濃度低下の値(初期に加えられた濃度から48時間後に残存する濃度を
差し引いて計算した)を図4に示す。この実験中、pHは調節しなかった。
分解の程度は初期pHに相関した。初期pHが低いほど、試験したすべての濃度に
関して、より多くのEDTA−第二鉄が分解された。分解は、初期pHが6.2で
は48mMの基質を消費し、pH7.4では28mMを消費する様に進行した。両方の
データにおいて、最大分解値は試験した最高濃度まで及んでいる。
初期水素イオン濃度がより高い場合(pH6.2)、EDTA−第二鉄は24mM
/日の限界速度で代謝され、初期イオン濃度が低い場合(pH7.4)、最高速度
は15mM/日である。実施例8−形態学
分離菌の細胞を、唯一の炭素源としてトリプチケース大豆肉汁またはEDTA
−第二鉄を含む寒天平板上で成長さ
せた(表1参照、17 g/l寒天の培地G1)。各培養菌の幾つかのアリコート電
子顕微鏡写真を上記の様に撮影した。これらの写真の例を図5(トリプチケース
大豆肉汁)および図6(EDTA−第二鉄)に示す。両者とも、培養菌は長さ約
2−3ミクロン、直径約1ミクロンの桿状菌からなる。EDTA−第二鉄上で成
長した微生物上にのみ小さな黒色斑点が認められた。
実施例で説明した様に、アグロバクテリウム種の培養菌は、アミノポリカルボ
ン酸の第二鉄キレートの分解に使用できる。この方法は好ましくはその様な第二
鉄キレートを含む水溶液に使用され、特にEDTA−第二鉄、PDTA−第二鉄
、またはこれらの混合物を水溶液から分解するのに適している。分解の速度およ
び程度はpH、つまり水素イオン濃度により異なる。生物分解が進み、その様な第
一鉄キレートが消費されるにつれて、細胞の量およびpHの両方が増加する。水素
イオン濃度が10-8よりはるかに下に低下させる(pHが8より大きくなる)場合
、分解および成長が止まる。酸を定期的に加えてpHが約8を超えないようにする
ことにより、より強力な分解が起こる。
どの様な理論にも制限されることなく、これらの実験では、pH上昇の少なくと
も一部の原因は、EDTA−第二鉄が代謝されるにつれて濃度が増加するアンモ
ニアの生成により説明できる。アンモニア自体は微生物の成長を抑制する(表4
)が、著しい、すなわち50%以上の抑制は、こ
れらの培養で生じる濃度よりも高い濃度で現れる。
アグロバクテリウム種によるアミノポリカルボン酸の分解は、実施例により示
される様に主として生物学的である。図4に示す様に、接種していない比較試料
では、培養が進行するにつれて、光学密度もpHも著しく増加せず、EDTA−第
二鉄の濃度も著しく低下しない。反対に、接種した試料では、分解が進むにつれ
て、培養中のEDTA−第二鉄濃度の低下には常に光学密度およびpHの増加が伴
う。最後に、接種した試料で観察されるアンモニア/アンモニウム濃度の急速な
増加およびCO2の著しい放出は、基質の比較的完全な代謝を立証している。分
解に対する光の影響はほとんど無い、または存在しないと考えられる。
本発明の微生物により分解されるEDTA−第二鉄からの有機炭素の鉱物化の
効率は、図3(a)に示すデータから計算できる。3日目において、初期炭素の
64%が生じたCO2であると考えられる。この時点で溶液申に残存するCOD
は、遠心分離して細胞および関連する沈殿物を除去した後、最初に存在したCO
Dの39%(CODに関して測定した値は蒸発に対して補正していないので、実
際より大きく見積もってある)に相当する。測定(<10%相関)および蒸発の
影響の両方に関連する最大可能誤差を計算にいれても、最初に存在した炭素の2
0%未満が細胞に変換されたことになろう。
1リットル培養のデータから、生物分解により比較的少
量の細胞量が生じたことが確認される。溶液中に残存するEDTA−第二鉄濃度
が最初の濃度の7%になった実験の最後において、肉汁全体(細胞、沈殿物、お
よび可溶性代謝物を含む)の中に残存するCODと、細胞および沈殿物を濾別し
た後の溶液(可溶性代謝物)中に残存するCODとの差は、最初の新しい肉汁中
のCODの10%未満である(752対8870mgO2/リットル)。この差は
、細胞材料中に取り込まれた、最大酸化性炭素を反映している。したがって、こ
の微生物によるEDTA−第二鉄の代謝は細胞量の増加ではなく、主として鉱物
化につながる。
CO2および細胞量に加えて、未確認の分解生成物が溶液中に蓄積する。この
生成物は、培養の最後で細胞および沈殿物を除去した後の溶液中に存在する残留
CODから明らかである。アグロバクテリウム種(ATCC55002)は、存
在する初期EDTA−第二鉄の90%以上を分解する。しかし、COD低下は7
0%に近付くだけである。したがって、最初にEDTA−第二鉄として存在する
炭素の20−30%は、培養の最後には未確認の代謝物として溶液中に残留する
。これらの代謝物は微生物の成長を抑制することがある。
理論にとらわれることは望ましくないが、本発明の微生物は鉄を必要とすると
考えられる。このことは予備成長試験により示されている。これらの試験の幾つ
かで、大過剰のEDTAを含むEDTA−第二鉄培地中でこの株を培養
しようとするとき、様々な、時として長い遅延時間(3日間)が観察されている
。上記の様な培地を調製するための通常の手順では、基本培地およびリン酸塩緩
衝液からなる溶液にEDTA−第二鉄を溶解させた。すべての成分を溶解させた
後に、培地のpHを調節した。pHが増加するにつれて、水酸化鉄の特徴である赤−
オレンジ色の羽毛状の沈殿が生じた。次いで培地を濾過滅菌したが、これが沈殿
した鉄を除去し、溶液中に過剰のEDTAを残す。さらにpHが増加すると、この
過剰分が大きくなる。実際、より大きな規模の培養で遅延相を確実に最小にする
ために、濾過滅菌した培養基に1ミリモルの塩化第二鉄を加え、濾過により除去
された鉄の一部を置き換えた。この方法により最少遅延時間を数時間未満にした
。
鉄の不足に加えて、遅延時間は接種物の処理にも関連することが分かった。接
種物を、細胞を洗浄せずに遠心分離により、使用したEDTA−第二鉄培地から
収穫した場合、細胞に加えて、著しい量の化学的沈殿物が存在することが分かっ
た。この沈殿物は、強力なキレート化剤、EDTAが分解された後に生じる不溶
性の鉄塩であると考えられる。幾つかの実験では、上記の様に洗浄により接種物
から沈殿物の大部分を除去しなかった場合、続く培養において遅い成長が観察さ
れた。
この微生物のアミノポリカルボン酸第二鉄に対する優先性が著しいこと、およ
び比較的高い基質濃度において有効
であることから、この微生物は廃棄物処理戦略において有用である。清掃、汚染
除去、またはスケール除去剤としての使用において、使用したEDTAまたは他
のアミノポリカルボン酸の大部分が重金属、多くの場合鉄とキレート形成すると
考えられる。十分に過剰の鉄が水系に存在し、または加えられ、非鉄金属キレー
トの平衡を強制的に第二鉄キレートにする場合、本発明の微生物はその様な環境
で使用できる。
したがって、本発明のもう一つの特徴は、アミノポリカルボン酸とキレート形
成できる、Fe+3以外の金属陽イオンとアミノポリカルボン酸との金属キレート
を含む水溶液からその様なキレートを除去するための方法であって、
a)該金属キレートを含む水溶液に、該金属キレートの人部分が第一鉄キレート
になる様に十分な量の第二鉄塩を加えること、および
b)該溶液のpHを約8以下に維持しながら、該溶液にアグロバクテリウム種(A
TCC55002)を加えることからなる方法に関する。
一般的に、少なくとも金属キレートの少なくとも約50%、好ましくは少なく
とも約80%、より好ましくは少なくとも約95%が第二鉄キレートに転換され
る様に、十分な量の第二鉄塩を加える。ここで使用するための好適な第二鉄塩と
しては、硫酸第二鉄アンモニウム、硝酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、等の
、該水溶液に可溶な第二鉄
塩があるが、これらに限定するものではない。さらに、これに関して、水には不
溶だが、酸性水溶液には可溶な、ある種の第二鉄塩は、その様な第二鉄塩が可溶
であり、アグロバクテリウム種の微生物が耐えられる酸性の水性媒体を使用すれ
ば、使用できることが分かっている。
当業者には、上記の説明から、この方法に置ける各種の修正および変形が可能
である。請求項の範囲内に人るその様な修正はすべてここに含まれる。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C22B 3/18
//(C12N 1/20
C12R 1:01)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IT,LU,NL,S
E),CA,JP
(72)発明者 ブリートフェラー,ジェイムズ エム
アメリカ合衆国 ニューヨーク州 14617
ロチェスター セヴィル ドライヴ
267
(72)発明者 スティール,ディー バーニー
アメリカ合衆国 アラバマ州 36830 オ
ーバーン ユニヴァーシティ ドライヴ
815
(72)発明者 クーガン,ルイス エイ
アメリカ合衆国 ニューヨーク州 14468
ヒルトン アップルウッド レーン
287