JPH0835968A - 肝疾患の診断方法 - Google Patents

肝疾患の診断方法

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JPH0835968A
JPH0835968A JP19210594A JP19210594A JPH0835968A JP H0835968 A JPH0835968 A JP H0835968A JP 19210594 A JP19210594 A JP 19210594A JP 19210594 A JP19210594 A JP 19210594A JP H0835968 A JPH0835968 A JP H0835968A
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健久 石井
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 ヒト体液中に含まれる不活性型の1本鎖ヒト
肝実質細胞増殖因子を検出することにより、急性肝炎、
劇症肝炎、慢性肝炎および肝硬変等の肝疾患を診断す
る。 【効果】 本発明によれば、現在の診断系よりも病態を
よく反映した肝疾患の診断系を提供することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は肝疾患の診断方法に関
し、詳細にはヒト肝実質細胞増殖因子(以下、「hHG
F」と略記する)に対する特定の抗体を用いることによ
る肝疾患の診断方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】肝炎
や肝硬変等に代表される肝疾患は、肝臓癌へと進行し、
死に至ることがある重篤な疾患である。ところが肝臓は
生体内の中でも極めて複雑な臓器であり、その機能が十
分に解明されていないため、肝疾患障害に対する有望な
薬剤はいまだに見出されていない。
【0003】近年、インターフェロンの肝疾患、特に肝
炎に対する効果が報告されている。しかしインターフェ
ロンは全ての肝炎患者に対して効果を有するわけではな
く、またその多用による副作用が問題視されている。肝
疾患の診断系においても、肝炎の原因と考えられている
ウイルスのゲノム構造が解明されたことに伴い、かかる
ウイルスの遺伝子がコードするポリペプチド等を使用し
たアッセイ系が開発されているが、ウイルスが極めて変
異しやすい等の理由により、十分な検出感度は得られて
いないのが現状である。
【0004】一方、ヒト肝実質細胞増殖因子(以下、
「hHGF」と略記する。また単に肝実質細胞増殖因子
を表す場合、「HGF」と略記する)は、生体内より取
り出した初代培養肝実質細胞の増殖を促進させうるヒト
由来の蛋白性因子で、劇症肝炎患者血漿より見出だされ
た(特開昭63−22526号公報)。さらにその後、
hHGF蛋白質をコ−ドするアミノ酸配列および遺伝子
(cDNA)配列(特開平3−72883号公報)、さ
らにこのcDNAを用いることによる組換えhHGF蛋
白質の生産方法(特開平3−285693号公報)につ
いても報告されている。かかる組換えヒトHGF(以
下、「rhHGF」と略記する)蛋白質は、生体外
(J.Clin.Invest.,87,1853−1
857(1991))、また生体内(Jpn.J.Ph
armacol.,59(suppl.1),137
(1992))において肝実質細胞の増殖および機能を
促進する働きが認められた。さらに、hHGFの標的細
胞・組織が広く検索され、肝細胞以外の種々の上皮細胞
(尿細管上皮・肺上皮・胆管上皮・胃上皮)や線維芽細
胞・リンパ球系細胞がHGFに反応してその増殖や運動
性を変化させることが判明した(Mitsubishi
Kasei R&D Review,,16−24
(1993))。また、これらHGF標的細胞上のレセ
プター分子として、癌原遺伝子c−met産物が機能し
ていることも明らかとなっている(Science,
51,802−804(1991))。
【0005】hHGFは、分子量約86,000のヘテ
ロダイマー構造を有する糖蛋白質であるが、もともとは
1本鎖の前駆体蛋白質としてmRNAより合成され、次
いでジスルフィド結合を介した活性型の2本鎖蛋白質に
プロセスされることが判明している(Biochem.
Biophys.Res.Commun.,163,9
67−973(1989))。また、このプロセスの過
程に着目し、1本鎖前駆体から2本鎖成熟体にプロセス
されて初めてHGFとしての活性が獲得されること
(J.Biol.Chem.,267,20114−2
0119(1992))、およびこのプロセス化に新規
なセリンプロテアーゼ(以下、「HGFアクチベータ
ー」と略記する)が関与することも知られている(J.
Biol.Chem.,268,10024−1002
8(1993))。また、実験動物を用いた解析から、
HGFは種々の肝障害及び肝切除に伴ってその合成が促
進されること(FEBS Lett.,270,81−
84(1990))、さらにHGFが正常肝中にも潜在
型として存在しており、肝障害に伴ってHGFアクチベ
ーターが活性化されてHGFを2本鎖型にプロセスする
こと(J.Biol.Chem.,269,8966−
8970(1994))が明らかとなっている。ラット
においては、HGFと各種臓器障害との関連において、
肝障害のみならず腎障害(Proc.Natl.Aca
d.Sci.USA,91,4357−4361(19
94))および肺障害(J.Biol.Chem.,
68,21212−21217(1993))の再生過
程へのHGF関与が示唆されている。ヒトにおいても、
HGF測定系が開発され(Hepatology,
,1−5(1991))、種々の肝疾患及びその他の
疾患における生体内HGF濃度が測定されている。それ
によると、血中HGF量は種々の肝疾患において上昇す
ることが認められ、HGFの診断意義として、劇症肝炎
早期診断、肝不全の早期予知、肝障害程度の推定などが
示唆された。さらに、最近、妊娠中毒症や腎疾患で血中
HGF高値が、リウマチで滑液・骨髄液中HGF高値
が、各種白血病で骨髄液中HGF高値が認められ、それ
ら疾患におけるHGF診断意義も議論されている(第1
回HGF/SF研究会、1994抄録)。しかしなが
ら、従来の技術においては、体内HGF値は抗HGF抗
体と反応するHGFの総和を見ているにすぎず、各種ヒ
ト疾患において増加する体内HGFが、2本鎖成熟体H
GFであるのか1本鎖前駆体HGFであるのかは明らか
ではなかった。また、ヒト体内においてもラット同様に
1本鎖HGF前駆体が存在しており、それがヒト疾患に
おいて変動するものであるかは不明であった。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、肝疾患の
新しい診断法を提供するべく検討を重ねてきた結果、1
本鎖HGF前駆体が健常人血漿中には存在せず、劇症肝
炎・慢性肝炎・肝硬変等の肝疾患患者血漿中にのみ存在
することを初めて見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】すなわち本発明の要旨は、ヒト体液中に含
まれる不活性型の1本鎖ヒト肝実質細胞増殖因子を検出
することを特徴とする肝疾患の診断方法に存する。以
下、本発明につき詳細に説明する。1本鎖のHGFは、
前述したように活性型である2本鎖HGFの前駆体であ
る。従って1本鎖のHGFを検出する手段としては、 1本鎖のHGFのみを特異的に検出する 1本鎖のHGFおよび2本鎖のHGFの総和を検出
し、そこから2本鎖のHGF量を差し引く 等が具体的な方法として挙げることができる。いずれに
しても、本発明においては1本鎖のHGFおよび/また
は2本鎖のHGFに対する抗体を使用することが望まし
い。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体
のいずれもが使用できる。これらの抗体は、いずれも常
法に従って調製することができる。例えばモノクローナ
ル抗体は、特公平5−60359号公報に記載の方法に
従って、容易に作製することができる。
【0008】抗体は、例えば西洋ワサビペルオキシダー
ゼ、ガラクトシダーゼ等の酵素を用いて標識することに
より、エンザイム・イムノアッセイに供することができ
る。本発明においては、ヒト由来の体液、例えば血液、
血漿、血清、リンパ液、汗、尿等に含まれる1本鎖のH
GFを、上記抗体を用いて検出する。1本鎖のHGF
は、後述の実施例に示すように、健常人には存在せず、
急性肝炎、劇症肝炎、慢性肝炎、肝硬変等の肝疾患患者
内においてのみ存在する。従って1本鎖のHGFを検出
することは上記肝疾患の早期発見につながるものであ
り、臨床上の意義は極めて大きいものである。
【0009】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明するが、その要旨を越えない限り、以下の実施例に
限定されるものではない。 実施例1 劇症肝炎患者血漿中の1本鎖および2本鎖H
GFの検出 特開平5−208998号公報に記載の方法に従って、
組換えヒト1本鎖HGF前駆体を調製した。すなわちチ
ャイニーズハムスター卵巣由来細胞株CHOにヒトHG
FcDNA発現ベクターを導入し、安定してhHGFを
生産する産生株を作製した。hHGF産生株を無血清e
RDF培地(極東製薬社)中でローラーボトルで培養
し、0.2μmフィルター(アミコン社)通過後の培養
上清をSP−セファロース・ファースト・フロー(F
F)(ファルマシア社)カラムにアプライした。0.3
Mから1MのNaClにてグラジエント溶出し、組換え
hHGF標品を得た。本条件では10%程度の2本鎖H
GFを含み、1本鎖、2本鎖HGFとも約0.7MNa
Clにて溶出された。
【0010】一方、健常人5名、劇症肝炎患者2名(昏
睡グレードII)、慢性肝炎患者2名および肝硬変患者
2名より血清を採取した。劇症肝炎患者2名からは、血
漿交換時に血漿を採取した。血漿及び血清サンプルは使
用まで−70℃にて保存した。次に、健常人血清由来の
HGFアクチベーターを部分精製した。約50mlの健
常人血清を20mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.4)
にてSP−セファロースFFカラムにアプライし、次い
で素通り画分をヘパリン−セファロース(ファルマシア
社)カラムにアプライして、0.1−1M NaClに
てグラジエント溶出した。活性画分をさらにヒドロキシ
アパタイト(ファルマシア社)カラムに載せ、0.1M
リン酸緩衝液(pH7.4)にて溶出した。各画分の活
性は以下のように確認した。すなわち、各画分100μ
lと劇症肝炎患者由来血漿サンプル100μlを37
℃、2時間反応させ、サンプル中のHGF量をELIS
Aにて測定し、サンプル中HGF量を増大させる画分を
HGFアクチベーター画分とした。
【0011】上記劇症肝炎患者由来の血漿サンプル20
0μlを、ウサギ抗組換えhHGF(以下、「rhHG
F」と略記する)ポリクロ−ナル抗体10μgと4℃に
て20時間、次いで10μlのプロテインAセファロー
スを加えて4℃にて3時間インキュベートし、免疫複合
体を形成させた。これを0.5%NP−40を含む20
mMTris−HCl緩衝液(pH7.4)にて十分に
洗浄後、20μlのSDS−サンプル緩衝液(Natu
re,227,680−685(1970))中で5分
間ボイルした。サンプルを還元および非還元条件にてド
デシル硫酸ナトリウム(SDS)−5%ポリアクリルア
ミドゲル電気泳動(PAGE)法にて分離し(20mA
一定)、次いで泳動ゲルを水平型ブロッティング装置
(ザルトリウス社)にセットして150mA一定、1時
間にてナイロン膜(ミリポア社)上に泳動蛋白質をブロ
ットした。ナイロン膜上のHGF蛋白質は、アビジン/
ビオチン結合を利用したウエスタンブロッティング法に
より検出した。すなわち、膜を5%スキムミルクにてブ
ロッキング後、まずウサギ抗hHGFポリクローナル抗
体またはマウス抗hHGFモノクローナル抗体(10μ
g/ml)で37℃、2時間、次いで抗ウサギまたはマ
ウスIgGビオチン化抗体で37℃、1時間、さらにス
トレプトアビジン溶液で、室温、約15分反応させて、
膜上hHGF蛋白質を検出した(ベクター社、ELIT
Eキット)。
【0012】図1AおよびBに結果を示す。図1Aは、
CHOトランスフェクタント培養上清より精製したrh
HGF1本鎖前駆体(2μg/lane)を還元下でSD
S−PAGEで分離し、ウエスタンブロッティングの後
に、ナイロン膜上のrhHGF蛋白質をマウス抗hHG
Fモノクローナル抗体(lane1)、またはウサギ抗
rhHGFポリクロ−ナル抗体(lane2)と反応さ
せてELITEキットで発色させたものである。約90
KダルトンのHGF1本鎖前駆体は、lane2でのみ
検出されている。図1Bは、劇症肝炎患者由来血漿(l
ane1および4)、健常人血漿(lane2および
5)、または健常人由来HGFアクチベーター画分と前
処理した劇症肝炎患者由来血漿(lane3および6)
からHGF蛋白質を免疫沈降させ、非還元(lane1
−3)または還元(lane4−6)条件にてSDS−
PAGEで分離し、さらにマウス抗hHGFモノクロー
ナル抗体(lane1−3)またはウサギ抗rhHGF
ポリクロ−ナル抗体(lane4−6)を用いたウエス
タンブロッティングにてHGF蛋白質を検出したもので
ある。非還元下において、劇症肝炎由来血漿中には2本
鎖HGFが検出される(lane1)が、その量は血漿
サンプルをHGFアクチベーター画分と前処理すること
により2倍以上に増大した(lane3)。還元下で
は、1本鎖HGF前駆体が劇症肝炎由来血漿中に見出さ
れ(lane4)、その量はHGFアクチベーターとの
前処理により著名に減少した(lane6)。また、健
常人血漿中には1本鎖、2本鎖いずれの型のHGFも検
出できなかった。
【0013】以上の結果から、1本鎖HGF前駆体はこ
のウエスタンブロッティングの系においては、マウス抗
hHGFモノクローナル抗体で検出されず、ウサギ抗r
hHGFポリクロ−ナル抗体で検出されること、劇症肝
炎患者血漿中には、2本鎖HGFに加えて1本鎖HGF
前駆体が存在していること、そして1本鎖HGFも2本
鎖HGF同様健常人血漿中には認められないことが判明
した。
【0014】実施例2 劇症肝炎患者由来血漿サンプル
中HGF量の測定 劇症肝炎患者の血漿サンプル100μlに健常人血清等
量を添加して、37℃にて0−2時間インキュベート
し、反応液の50μlをELISAによるHGF定量に
供した。対照群として血清の代わりに0.5%ウシ血清
アルブミンを含むリン酸緩衝液/生理食塩水(PBS)
を同量添加した。また、血清中HGFアクチベーターを
不活化する目的で血清とともにロイペプチン50μMを
添加する検討も行った。
【0015】大塚製薬社製、hHGFアッセイキットに
より定量した。すなわち、96穴アッセイプレートの各
ウェルに希釈緩衝液50μl及びhHGF標準液または
検体50μlを加え、室温にて攪はんしながら1時間反
応させた。洗浄液にて3回洗浄後、第一抗体溶液(マウ
ス抗hHGFモノクローナル抗体)100μlを加え、
室温にて攪はんしながら1時間反応させた。次に洗浄液
にて3回洗浄後、第二抗体液(ウサギ抗hHGFポリク
ローナル抗体)100μlを加え、室温にて攪はんしな
がらさらに1時間反応させた。洗浄液にて3回洗浄後、
発色液を100μl/ウェル加えて室温で約10分間反
応させ、適度な発色が見られた段階で反応停止液を10
0μl/ウェル重層し、各ウェルの吸光度を492nm
で測定した。サンプル中HGF濃度は、hHGF標準曲
線より算出した。表1に結果を示す。
【0016】
【表1】 表1 ──────────────────────────────────── HGF濃度 (ng/ml) ──────────────────── プレインキュベーション時間 0 30分 120分 ──────────────────────────────────── 正常人血清+PBS <0.1 <0.1 <0.1 患者血漿 +PBS 6.38±0.16 7.12±0.20 8.72±0.35 患者血漿 +PBS +ロイペプチン − − 6.45±0.13 患者血漿 +正常人血清 <6.39 11.96±1.01 15.43±0.70 患者血漿 +正常人血清 +ロイペプチン − − 8.06±0.55 ────────────────────────────────────
【0017】表1において、劇症肝炎由来血漿中のEL
ISAにて測定されるHGF量は、血清とのプレインキ
ュベーションにより増大し、2時間後には約2.4倍に
なった。しかしながら、ロイペプチン添加サンプルで
は、この増加は認められず、健常人血漿中にもプレイン
キュベーション前後でHGFは認められなかった。次
に、正常人血清の代わりにHGFアクチベーターを用い
て同様の試験を行った。結果を表2に示す。
【0018】
【表2】 表2 ─────────────────────────────── 粗精製HGF HGF濃度 アクチベーター (ng/ml) ─────────────────────────────── 患者血漿 − 8.18±0.24 患者血漿 + 16.38±0.47 患者血漿+ロイペプチン + 8.57±0.33 組換え1本鎖HGF前駆体 − 2.40±0.23 組換え1本鎖HGF前駆体 + 7.96±0.30 組換え1本鎖HGF前駆体 +ロイペプチン + 3.22±0.42 ───────────────────────────────
【0019】正常人血清の代わりに粗精製HGFアクチ
ベーターを用いても、同様の結果が得られた。すなわ
ち、劇症肝炎患者血漿中HGF値はHGFアクチベータ
ーとのプレインキュベーションで約2倍に増加した。さ
らに、組換え1本鎖HGF前駆体のELISAによるH
GF値も、HGFアクチベーターとのプレインキュベー
ションで約3.3倍に増加した。以上の結果から、患者
血漿中には、2本鎖のみならず1本鎖HGF前駆体が存
在しており、健常人血清中のHGFアクチベーターによ
ってプロセスされること、およびプロセス化によって潜
在していた1本鎖HGFがELISAに反応するように
なってHGF測定値が数倍に上昇することが明かとなっ
た。
【0020】実施例3 肝疾患患者由来血漿サンプルと
各種血清との前処理によるサンプル中HGF量の変動 実施例1に示す如く採取した劇症肝炎、慢性肝炎、およ
び肝硬変由来血清を直接、または37℃で2時間プレイ
ンキュベートした後にHGF測定用ELISAに供し
た。その際、一部のサンプルには50μMロイペプチン
を添加して、血清中のHGFアクチベーターの作用を抑
える処置を施した。表3に結果を示す。
【0021】
【表3】 表3 ──────────────────────────────────── プレインキュベーション ロイペプチン HGF濃度 (ng/ml) ──────────────────────────────────── 劇症肝炎患者A − − 5.59±0.47 + − 9.01±0.34 劇症肝炎患者B − − 7.43±0.35 + − 9.62±0.31 + + 7.93±0.30 慢性肝炎患者A − − 0.51±0.03 + − 0.67±0.07 慢性肝炎患者B − − 0.45±0.04 + − 0.68±0.06 + + 0.51±0.02 肝硬変患者A − − 0.33±0.02 + − 0.46±0.03 肝硬変患者B − − 0.31±0.05 + − 0.47±0.06 + + 0.31±0.01 ────────────────────────────────────
【0022】血清サンプルのプレインキュベーションに
より、サンプル中HGF値は劇症肝炎、慢性肝炎、肝硬
変由来のいずれにおいても1.3−1.6倍上昇した。
実施例1および2で述べたように、この測定値の上昇
は、サンプル中に1本鎖HGF前駆体が存在しており、
それがHGFアクチベーターでプロセスされることによ
って初めてELISA抗原として認識されることに起因
する。実際、HGFアクチベーター活性を阻害するロイ
ペプチン存在下では、HGF値の上昇は認められなかっ
た。
【0023】以上の結果より、劇症肝炎のみならず、慢
性肝炎、肝硬変など種々の肝疾患においても1本鎖HG
F前駆体の存在すること、および患者自身の血清中にも
HGFアクチベーターが存在することが判明した。患者
血中においては、HGFアクチベーターは部分的にしか
活性化されていない為に、血中のHGFの一部は1本鎖
前駆体として存在すると解釈される。 実施例4 1本鎖HGF前駆体を測定可能なELISA
法 実施例1にて用いたhHGFアッセイキットは1本鎖H
GF前駆体を測定できず、それは一次抗体の反応性に起
因した。そこで、他の抗体、ウサギ抗rhHGFポリク
ローナル抗体およびマウス抗rhHGFモノクローナル
抗体を調製してELISAを確立し、1本鎖HGF前駆
体および2本鎖成熟型HGFに対する反応性を検討し
た。
【0024】まずウサギ抗HGFポリクローナル抗体を
調製した。ニュージーランドホワイトラビット雌10週
齢に、特開平3−285693号公報に記載の方法で精
製したrhHGF5mgをフロイント完全アジュバント
(1:1)とよく混合して背部皮内投与した(0週)。
次いで、10週後にrhHGF約1.5mgをフロイン
ト不完全アジュバント(1:1)とよく混合して脾臓内
に直接投与した。13週後にrhHGF150μgを3
00μlの0.5M NaCl−0.01%ツウィーン
20に溶解して耳静脈より投与した。16週目にはオク
タロニー法にて>128倍の力価が認められたため、耳
動脈より採血し血清を得た。
【0025】次に、マウス抗HGFモノクローナル抗体
を調製した。BALB/cマウス雄8週齢に、rhHG
F30μgをフロイント完全アジュバント(1:1)と
よく混合して腹腔内投与した(0週)。次いで、2およ
び4週後にrhHGF30μgをフロイント不完全アジ
ュバント(1:1)とよく混合して腹腔内投与した。さ
らに、6週後、rhHGF45μgをPBSに溶解して
尾静脈より投与した。最終免疫の2日後に脾臓を摘出し
て、マウスミエローマ細胞株P3U1と融合させ、目的
の抗体を安定して生産するハイブリドーマを樹立した。
この細胞株を培養し、培養上清を取得して抗体ソースと
した。
【0026】ウサギ抗rhHGFポリクローナル抗体を
含有する血清はPBSにて10倍に希釈し、またマウス
抗rhHGFモノクローナル抗体を産生するハイブリド
ーマの培養上清は40%硫安沈澱析出物を100mM
NaCl−10mM トリス(pH9)に溶解して、プ
ロテインA−セファロースカラムクロマトグラフィ−に
供した。サンプルを添加したカラムはPBS(血清サン
プル)または100mM NaCl−10mM トリス
(pH9)でよく洗浄後、10mMグリシン−HCl
(pH2.8)にて目的抗体を溶出した。得られた抗体
含有液はPBSにて透析、分注し、使用まで−80℃に
て保管した。
【0027】得られた抗体のうち、ウサギポリクローナ
ル抗体の一部は2ステップELISA法の二次抗体とし
て用いるため、過よう素酸法によって西洋ワサビペルオ
キシダーゼ(HRP、ベーリンガーマンハイム社)で標
識した。すなわち、HRP5mg含有0.3M重炭酸ソ
ーダ緩衝液(pH8.3)1mlに1% 1-フルオロ
2,4−ジニトロベンゼンエタノール液を0.1ml添
加し、室温にて1時間攪はん後、0.06M過よう素酸
ナトリウム水溶液1mlを徐々に添加して室温にて30
分間攪はん、さらに0.16Mエチレングリコール水溶
液1mlを急速に加えて1時間攪はんした。これを10
mM炭酸ソーダ緩衝液pH9.6に対して4℃、1昼夜
透析して酸化HRPを調製した。精製抗体5mgも同様
に10mM炭酸ソーダ緩衝液pH9.6に対して透析し
ておき、酸化HRP液と抗体液を混合し、室温にて2時
間攪はんした。混合液に水酸化ほう素ナトリウム5mg
を添加し、4℃で2時間放置後、PBSに対して透析
し、HRP標識抗体を得た。結合しなかった抗体および
HRPはセファクリルS−300を用いたゲルろ過によ
って除去された。すなわち、予めPBSにて平衡化した
底面積約3cm2 、ゲル高約1mのカラムに透析物をア
プライし、流速0.2−0.5ml/分程度でPBSに
て溶出させた。OD280 にてモニターしながら最初のピ
ークを分取し、標識抗体画分とした。標識抗体は、小分
けして−80℃にて保存した。
【0028】前述した方法で組換えヒト1本鎖HGF前
駆体および2本鎖成熟型HGFを取得した。それぞれの
蛋白量はOD280 の値から換算し、一定量を還元下にて
SDS−PAGE(12.5%ポリアクリルアミド)に
供した。図2にSDS−PAGEの結果を示す。レーン
2から4は1本鎖HGF前駆体の、レーン5から7は2
本鎖成熟型HGFの電気泳動パターンを示す。1本鎖H
GF前駆体画分は少量の2本鎖HGFを含むため、図2
のゲルをデンシトメーター(島津製作所社)で解析し
て、バンドの面積から1本鎖/2本鎖の割合を求めた。
図中、レーン1〜6はそれぞれ、分子量マーカー、1本
鎖HGF 2.5μg/レーン、1本鎖HGF 5.0
μg/レーン、1本鎖HGF 10.0μg/レーン、
2本鎖HGF 4.3μg/レーン、2本鎖HGF
8.6μg/レーン、2本鎖HGF 17.0μg/レ
ーンを表す。
【0029】図3に結果を示す。それによると、2本鎖
成熟型HGFサンプルは、ほぼ100%2本鎖で、1本
鎖HGF前駆体を含まなかった(図3A)。一方、1本
鎖HGF前駆体サンプルは、約72%の1本鎖型に28
%の2本鎖成熟型HGFを含んでいた(図3B)。次
に、これらのサンプルをELISAに供して、1本鎖H
GF前駆体および2本鎖成熟型HGFの反応性を検討し
た。
【0030】上記の如く調製した抗HGF抗体を用い
て、HGFに特異的なELISA法を確立した。すなわ
ち、ファルコン社96穴プレートに一次抗体としてマウ
ス抗rhHGFモノクローナル抗体またはウサギ抗rh
HGFポリクローナル抗体(10μg/mlとなるよう
0.05M炭酸緩衝液pH9.6に懸濁)を50μl/
ウェル添加して4℃、1昼夜静置、次いで液を捨て、1
%ウシ血清アルブミン含有PBSを250μl/ウェル
加えて4℃、1昼夜以上置いてウェル壁をブロッキング
した。試験時にプレートのブロッキング液を捨ててよく
水気を切り、被検液を50μl/ウェル加えた。被検液
は0.1%CHAPS、1M(ウサギポリクローナル抗
体)または0.4M(マウスモノクローナル抗体)Na
Cl、0.1%ウシ血清アルブミン、および0.05%
ツウィーン20を含む0.01Mリン酸緩衝液(pH
7.4)にて適当に希釈した。4℃、1昼夜反応後に液
を捨て、0.05%ツウィーン20含有PBS(以下、
「PBST」と略記する)にてよく洗浄後、二次抗体と
してHRP標識ウサギ抗rhHGF抗体液を50μl/
ウェル添加して室温にて2時間反応させた。二次抗体
は、上記方法にて調製したものを0.1%ウシ血清アル
ブミン含有PBSTにて100−200倍に希釈して使
用した。2時間後、プレートをPBSTにてよく洗浄し
て水気を切り、50μl/ウェルの発色液を添加した。
発色液は、0.4mg/mlオルソフェニレンジアミン
および0.01%過酸化水素水を含む0.05Mクエン
酸−リン酸緩衝液(pH5.0)から成る。室温で10
−20分程度反応させ、適度な発色が得られた時点で
4.5N硫酸50μl/ウェルを添加して反応を停止さ
せた。各ウェルの吸光度は二波長測定用イムノリーダー
(日本インターメッド社)にて測定(490/620n
m)した。
【0031】図4および5に結果を示す。図4は、一次
抗体としてウサギ抗rhHGFポリクローナル抗体をプ
レートに固相化した場合(図中□は2本鎖成熟型HGF
を、◆は1本鎖HGF前駆体を表す)、図5はマウス抗
rhHGFモノクローナル抗体3種を固相化した場合の
1本鎖(図中、◆で表す)および2本鎖HGF(図中●
で表す)の反応性を示している。横軸は添加HGF濃度
を、縦軸はELISA反応性を490nm吸光度で表し
ている。ポリクローナル抗体、3種のモノクローナル抗
体いずれの場合においても、2本鎖成熟型HGFとほぼ
同等に1本鎖HGF前駆体とも反応した。
【0032】以上の結果より、HGFのサンドイッチE
LISA法において、固相化する一次抗体の性質を吟味
することにより、2本鎖成熟型HGFと同等に1本鎖H
GF前駆体も測定し得るELISAが確立できることが
判明した。
【0033】
【発明の効果】本発明によれば、1本鎖HGF前駆体を
検出することにより、現在の診断系よりも病態をよく反
映した肝疾患の診断系を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1Aは、組換えヒトHGF前駆体蛋白質に対
するマウス抗ヒトHGFモノクローナル抗体およびウサ
ギ抗ヒトHGFポリクローナル抗体の反応性の相違を、
ウェスタンブロッティングにて比較した図面に代わる電
気泳動写真である。図1Bは、劇症肝炎由来血漿中に、
1本鎖HGF前駆体の存在を認めた図面に代わる電気泳
動写真である。
【図2】1本鎖HGF前駆体および2本鎖成熟型HGF
のSDS−PAGEの電気泳動パターンを示した図面に
代わる写真である。
【図3】図2の電気泳動ゲルをデンシトメーターにて解
析し、1本鎖HGFと2本鎖HGFの割合を定量化した
図面である。
【図4】HGF特異的サンドイッチELISA法におけ
る1本鎖HGF前駆体および2本鎖成熟型HGFの反応
性を示す図面である。
【図5】HGF特異的サンドイッチELISA法におけ
る1本鎖HGF前駆体および2本鎖成熟型HGFの反応
性を示す図面である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年11月2日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヒト体液中に含まれる不活性型の1本鎖
    ヒト肝実質細胞増殖因子を検出することを特徴とする肝
    疾患の診断方法。
  2. 【請求項2】 活性型の2本鎖ヒト肝実質細胞増殖因子
    に対する抗体を用いることを特徴とする請求項1記載の
    方法。
  3. 【請求項3】 活性型の2本鎖ヒト肝実質細胞増殖因子
    および不活性型の1本鎖ヒト肝実質胞増殖因子に対して
    共に反応性を有する抗体を用いることを特徴とする請求
    項1または2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 肝疾患が、急性肝炎、劇症肝炎、慢性肝
    炎および肝硬変から選ばれることを特徴とする請求項1
    〜3に記載の方法。
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