JPH08325827A - 分割型複合繊維からなる延伸糸およびその製造方法 - Google Patents

分割型複合繊維からなる延伸糸およびその製造方法

Info

Publication number
JPH08325827A
JPH08325827A JP14841295A JP14841295A JPH08325827A JP H08325827 A JPH08325827 A JP H08325827A JP 14841295 A JP14841295 A JP 14841295A JP 14841295 A JP14841295 A JP 14841295A JP H08325827 A JPH08325827 A JP H08325827A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fiber
yarn
drawn yarn
split
treatment
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP14841295A
Other languages
English (en)
Inventor
Isao Tokunaga
勲 徳永
Kazuhiko Tanaka
和彦 田中
Masao Kawamoto
正夫 河本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kuraray Co Ltd
Original Assignee
Kuraray Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kuraray Co Ltd filed Critical Kuraray Co Ltd
Priority to JP14841295A priority Critical patent/JPH08325827A/ja
Publication of JPH08325827A publication Critical patent/JPH08325827A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Multicomponent Fibers (AREA)
  • Spinning Methods And Devices For Manufacturing Artificial Fibers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【構成】 2種以上の非相溶性の重合体のサイドバイサ
イド型複合繊維からなる乾熱収縮応力0.14〜0.30
g/dの延伸糸、該延伸糸を、2種以上の非相溶性の重
合体を用いて紡糸・延伸直結方式によってサイドバイサ
イド型複合繊維の延伸糸を製造した後、該延伸糸を0.
05〜0.80g/dの糸張力下に150℃〜重合体の
融点未満の温度でスチームジェット処理するか、または
該延伸糸を0.25〜0.80g/dの糸張力にヤーン
ガイドで屈曲・擦過処理して製造する方法。 【効果】 本発明の延伸糸は、紡糸・延伸工程、製編織
工程等ではフィブリル化せず工程性に優れ、且つ製編織
後等に分割フィブリル化処理すると分割型複合繊維を構
成する最小の1層の単位又は多くとも2層からなる単位
にまで完全に且つ円滑に分割されて極細繊維化するの
で、柔軟性、バルキー性、緻密性に富み、しかも筋斑や
染色斑のない高品質の分割フィブリル化物を得ることが
でき、本発明の上記方法によってそのような優れた特性
を有する延伸糸を円滑に製造できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、分割型複合繊維よりな
る延伸糸、その製造方法、および該延伸糸を用いて製造
した布帛または繊維製品を分割フィブリル化処理してな
る分割フィブリル化物に関する。より詳細には、本発明
は、紡糸・延伸工程、製編織工程などでは分割フィブリ
ル化が生じずそれらの工程を極めて円滑に行うことがで
き、しかも製編織後などに分割フィブリル化処理を行う
と分割型複合繊維を構成する最小の1つの層からなる単
位または多くとも2層からなる単位にまで完全に且つ円
滑に分割されて極細繊維化され得る延伸糸に関するもの
であり、本発明の延伸糸からなる織編物やその他の繊維
製品を分割フィブリル化処理すると、柔軟性、バルキー
性、緻密性に富み、しかも筋斑、染色斑などのない、高
品質の分割フィブリル化物を円滑に得ることができる。
【0002】
【従来の技術】2種以上の互いに非相溶性の繊維形成性
熱可塑性重合体がサイドバイサイド型に接合している分
割型複合繊維からなる糸を用いて織編物や不織布などを
製造し、それを分割フィブリル化処理すると、分割型複
合繊維の各接合単位にまで分割されて極細繊維化し、柔
軟性、緻密性、バルキー性などに富む、肌触りや清掃機
能などに優れる分割フィブリル化物が得られることが知
られている。その分割フィブリル化物は、その優れた柔
軟性、ピーチスキン調の肌触り、緻密性、バルキー性、
清掃性などの特性を活かして、各種の衣料用品、スポー
ツ用品、衛生用品(紙おむつ、生理用ナプキン等)、清
掃用品(ワイパー、ワイピングクロスなど)、フィルタ
ー、マスク、ディスポーザブル手術衣、合成皮革基布等
などの多くの用途で使用されており、消費者のニーズに
マッチしていることによってその需要がますます増加し
ている。
【0003】上記した分割フィブリル化物の製造に当た
っては、従来、 (1)2種以上の非相溶性の繊維形成性熱可塑性重合体
を用いて溶融紡糸を行って分割型複合繊維からなる糸条
を製造し、その糸条を延伸せずに一旦巻き取り、調湿さ
れた室内等で所定の時間保管した後に延伸処理を施し
(FOY方式)、必要に応じて更に捲縮加工やその他の
加工を施し、それにより得られた糸を用いて織編物など
を製造してから分割フィブリル化処理を行う方法; (2)2種以上の非相溶性の繊維形成性熱可塑性重合体
を用いて溶融紡糸を行って分割型複合繊維からなる糸条
を製造し、その糸条を巻き取らずにそのまま直接延伸し
(紡糸・延伸直結方式)、必要に応じて更に捲縮加工や
その他の加工を施し、それにより得られた糸を用いて織
編物などを製造してから分割フィブリル化処理を行う方
法; (3) 上記(1)に記載したFOY方式または上記
(2)に記載した紡糸・延伸直結方式によって分割型複
合繊維からなる延伸糸を製造し、必要に応じて更に捲縮
加工やその他の加工を施し、それにより得られた糸を切
断して短繊維を製造し、その短繊維を分割フィブリル化
処理した後に不織布を製造する方法; (4) 上記(1)に記載したFOY方式または上記
(2)に記載した紡糸・延伸直結方式によって分割型複
合繊維からなる延伸糸を製造し、必要に応じて更に捲縮
加工やその他の加工を施し、それにより得られた糸を切
断して短繊維を製造し、その短繊維から不織布を製造し
た後に分割フィブリル化処理を行う方法;などが採用さ
れている。
【0004】そして、上記(1)〜(4)のいずれの方
法においても、品質の良好な分割フィブリル物を良好な
工程性で円滑に製造するためには、紡糸工程、その後の
延伸工程、捲縮加工などの糸加工工程、製編織工程、短
繊維への切断工程、不織布の製造工程などでは、糸を構
成する分割型複合繊維が分割しないで取り扱い性に優れ
る一方で、分割フィブリル化処理時には簡単に且つ完全
に分割されて極細繊維状にフィブリル化されることが必
要である。
【0005】しかしながら、FOY方式を採用している
上記(1)の従来法、および上記(3)〜(4)の従来
法でFOY方式を採用した場合には、延伸前に巻き取っ
た糸の保管時に、非相溶性の繊維形成性熱可塑性重合体
同士の接合部で部分的な剥離が生じ易く、特に分割型複
合繊維が互いに非相溶性のポリアミドとポリエステルと
から形成されている場合には、延伸前の調湿室での保管
中にポリアミド部分が吸湿して配向結晶化し、ポリエス
テルとポリアミドとの接合部で部分的な剥離・分割が生
じ易い。その結果、未延伸糸をその保管後に延伸処理し
たり、捲縮加工したり、製編織したり、不織布にしたり
する際に、保管中の部分的な剥離・分割によって生じた
フィブリルがそれらの処理装置に絡み付いたり付着し、
場合によっては断糸が生じて、作業性が低下するという
欠点がある。
【0006】また、紡糸・延伸直結方式(SDY方式)
を採用している上記(2)の従来法、および上記(3)
〜(4)の従来法で紡糸・延伸直結方式(SDY方式)
を採用した場合には、溶融紡糸された分割型複合繊維よ
りなる糸条が一旦巻き取られることなくそのまま直接延
伸され、場合によっては更に捲縮加工などが行われるの
で、それにより得られる延伸糸では非相溶性の繊維形成
性重合体同士の接合部での部分的な剥離・分割がなく、
フィブリル化していない延伸糸が得られる。そのため、
延伸工程や捲縮加工工程などが円滑に行え、またその後
の製編織工程や不織布などの製造工程も円滑に行うこと
ができる。しかしながら、従来の紡糸・延伸直結方式
(SDY方式)により得られる延伸糸では、2種以上の
非相溶性の繊維形成性熱可塑性重合体が互いに強固に接
合しているために、織編物や不織布などを製造した後の
分割フィブリル化処理において、分割型複合繊維がそれ
ぞれの単位にまで完全に分割・剥離されなくなり、分割
が不充分となって、得られる分割フィブリル化物は柔軟
性、バルキー性、緻密性などに欠けたものとなり易く、
しかも筋斑や染色斑が生じ易いという欠点がある。
【0007】一方、分割型複合繊維よりなる糸、該糸か
ら形成された織編物や不織布などの分割フィブリル化法
としては、薬剤による方法、高圧流体噴射法、仮撚加工
を行う方法、ニードルパンチング法、加熱処理法などの
種々の方法が従来から知られているが、そのうちでも、
薬剤による分割フィブリル化法が設備、工程、コストな
どの点で有利である点から広く採用されている。
【0008】特に、ポリアミドとポリエステルよりなる
分割型複合繊維の糸、布帛などを薬剤を使用して分割フ
ィブリル化するに当たっては、(i)アルカリ水溶液を
用いて分割型複合繊維中のポリエステル部分を部分的に
溶解させるアルカリ減量処理を行って分割型複合繊維に
おけるポリエステル部分とポリアミド部分の接合部(界
面)に分割・剥離を生じさせて分割フィブリル化を行う
方法、(ii)ベンジルアルコール、フェニルエチルアル
コールなどのポリアミドを膨潤・溶解し得る溶剤の乳化
水溶液を用いてポリアミド部分を膨潤させてポリアミド
部分とポリエステル部分の接合部(界面)に分割・剥離
を生じさせて分割フィブリル化を行う方法などが知られ
ている。そのうちでも、上記(i)のアルカリ水溶液を
用いる分割フィブリル化法が、薬液が安価で且つ取り扱
い易く、しかも薬剤の回収の必要がないなどの点から、
設備、工程、コスト面で極めて有利であり、広く行われ
ている。しかしながら、アルカリ水溶液を用いる分割フ
ィブリル化法による場合は、ポリアミドとポリエステル
よりなる分割型複合繊維を、個々の極細繊維単位に完全
に分割しにくく、そのためその分割フィブリル化物は柔
軟性、バルキー性、緻密性などに欠けたものとなり易
く、しかも筋斑や染色斑が生じ易いという欠点がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、分割
型複合繊維よりなる糸の紡糸・延伸時、捲縮加工時、製
編織時、短繊維への切断時、不織布の製造時などには分
割型複合繊維が分割してフィブリル化することがなく、
そのため装置へのフィブリルの巻き付き、付着、断糸な
どのトラブルが生じずそれらの工程を円滑に行うことが
でき、しかも織編物や不織布などにした後の分割フィブ
リル化処理時には、分割型複合繊維を構成するそれぞれ
の最小の重合体単位にまで円滑に且つ完全に分割・剥離
されて極細繊維状に分割フィブリル化することができ、
その結果、柔軟性、緻密性、バルキー性に優れ、しかも
筋斑、染色斑等のない、高品質の分割フィブリル化物に
することのできる分割型複合繊維の糸を提供することで
ある。特に、本発明は、前記した優れた特性を有する、
アルカリ水溶液による分割フィブリル化処理に適したポ
リアミドとポリエステルとの分割型複合繊維の糸を提供
することである。そして、本発明の目的は、上記した優
れた特性を備える分割型複合繊維の糸を円滑に且つ簡単
に製造することのできる方法を提供することである。更
に、本発明の目的は、上記した優れた特性を有する分割
型複合繊維の糸、およびその糸を用いて製造した織編
物、不織布、その他の繊維製品の分割フィブリル化物を
提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らが、上記の目
的を達成すべく種々研究を行ったところ、2種以上の非
相溶性の繊維形成性熱可塑性重合体がサイドバイサイド
型に接合している分割型複合繊維よりなる糸において、
延伸後の延伸糸の乾熱収縮応力を0.14〜0.30g
/dの範囲にすると、紡糸時、延伸時、捲縮加工時、製
編織時、短繊維への切断時、不織布の製造時などに分割
型複合繊維における重合体の接合部に分割・剥離がなく
フィブリル化が生じず、それらの工程を良好な工程性や
作業性で行うことができること、しかも上記の乾熱収縮
応力を有する延伸糸から形成した織編物、不織布、その
他の繊維製品を分割フィブリル化処理すると、分割型複
合繊維の非相溶性の2種の重合体同士の接合部で極めて
円滑に且つ完全に分割・剥離されて極細繊維化が行われ
て、柔軟性、バルキー性、緻密性に優れ、しかも筋斑、
染色斑等のない、高品質の分割フィブリル化物が得られ
ること見出した。そして本発明者らは、上記した優れた
特性が、非相溶性のポリエステルとポリアミドからなる
分割型複合繊維であって且つ紡糸・延伸直結方式(SD
Y方式)で製造された延伸糸において特に顕著に発現さ
れることを見出した。
【0011】そして本発明者らは、上記した優れた特性
を有する、乾熱収縮応力が0.14〜0.30g/dで
ある分割型複合繊維の延伸糸が、2種以上の非相溶性の
繊維形成性熱可塑性重合体を用いて紡糸・延伸直結方式
(SDY方式)によって分割型複合繊維の延伸糸を製造
した後に、延伸糸の張力を0.05〜0.80g/dに
保ちながら特定の温度のスチームジェットを吹き付ける
か、または延伸糸の張力を0.25〜0.80g/dに
保ってヤーンガイドで屈曲・擦過処理することによっ
て、円滑に得られることを見出し、それらの知見に基づ
いて本発明を完成した。
【0012】すなわち、本発明は、2種以上の非相溶性
の繊維形成性熱可塑性重合体が繊維横断面においてサイ
ドバイサイド型に接合している分割型複合繊維からなる
延伸糸であって、乾熱収縮応力が0.14〜0.30g
/dであることを特徴とする延伸糸である。
【0013】そして、本発明は、2種以上の非相溶性の
繊維形成性熱可塑性重合体を溶融紡糸して繊維横断面に
おいて各繊維形成性熱可塑性重合体がサイドバイサイド
型に接合している分割型複合繊維よりなる糸条を紡糸・
延伸直結方式で製造し、次いで糸条の張力を0.05〜
0.80g/dの範囲に保って150℃以上のスチーム
ジェットを吹き付けることを特徴とする上記の延伸糸の
製造方法である。
【0014】そして、本発明は、2種以上の非相溶性の
繊維形成性熱可塑性重合体を溶融紡糸して繊維横断面に
おいて各繊維形成性熱可塑性重合体がサイドバイサイド
型に接合している分割型複合繊維よりなる糸条を紡糸・
延伸直結方式で製造し、次いで糸条の張力を0.25〜
0.80g/dの範囲に保ってヤーンガイドで屈曲・擦
過することを特徴とする上記の延伸糸の製造方法であ
る。
【0015】また、本発明は、延伸糸を用いて製造した
布帛または繊維製品を分割フィブリル化処理して得られ
る分割フィブリル化物を包含する。
【0016】以下に本発明について詳細に説明する。ま
ず、本発明の延伸糸は、2種以上の非相溶性の繊維形成
性熱可塑性重合体(以下単に「重合体」ということがあ
る)が繊維横断面においてサイドバイサイド型に接合し
た構造を有する分割型複合繊維からなっており、しかも
延伸糸の乾熱収縮応力が0.14〜0.30g/dであ
ることが必要である。
【0017】延伸糸の乾熱収縮応力が0.30g/dを
超えると、紡糸・延伸時、捲縮加工時、製編織時、短繊
維への切断時、不織布の製造時などに、分割型複合繊維
が非相溶性の重合体同士の接合部で分割・剥離してフィ
ブリル化し、そのフィブリルがローラー、クリール、ガ
イドなどに絡み付いたり、付着し、甚だしい場合には断
糸などが生じて、工程性が不良になる。一方、延伸糸の
乾熱収縮応力が0.14g/d未満であると、織編物、
不織布、その他の繊維製品を製造した後に分割フィブリ
ル化処理を行った場合に、非相溶性の重合体同士の接合
部での分割・剥離が円滑に且つ完全に行われず、最小の
重合体単位に分割せず、柔軟性、バルキー性、緻密性に
欠け、しかも筋斑、染色斑などの発生したものとなる。
ちなみに、紡出した分割型複合繊維よりなる糸条を一旦
巻き取った後に延伸する上記した従来のFOY法による
場合は、分割型複合繊維よりなる延伸糸の乾熱収縮応力
は通常0.31g/d以上であり、本発明の延伸糸より
も乾熱収縮応力が高くなっている。
【0018】ここで、本発明でいう「延伸糸の乾熱収縮
応力」とは、紡糸後に延伸を施した糸を巻き取って得ら
れる糸の乾熱収縮応力をいい、延伸後に上記したスチー
ムジェット処理またはヤーンガイドによる摩擦・擦過処
理を行っている場合は、それらの処理を行った後に巻き
取って得られる糸の乾熱収縮応力をいう。そして、本発
明における延伸糸の乾熱収縮応力の数値は、下記の実施
例に記載した方法で測定したときの値をいう。
【0019】本発明の延伸糸を構成する分割型複合繊維
は、繊維横断面でみたときに、2種以上の非相溶性の繊
維形成性熱可塑性重合体がサイドバイサイド型に接合し
た構造の複合繊維であればいずれでもよく、代表例とし
ては、互いに非相溶性の2種の繊維形成性熱可塑性重合
体AとBとが、図1の(a)、(c)に示すように平行
状またはほぼ平行状に接合しているもの、図1の(b)
に示すように放射状に接合しているもの、図1の(d)
に示すようにややランダム状に接合しているものなどを
挙げることができる。しかしながら、分割型複合繊維
は、図1のものに勿論限定されない。
【0020】本発明の延伸糸を構成する分割型複合繊維
は、繊維横断面において、非相溶性の2種の重合体同士
の接合部の長さ(L)と、該接合部を挟んで位置する2
種の重合体の厚さ(W1,W2)との比(L/W1,L/
2)がいずれも1〜15の範囲になっているのが好ま
しく、3〜12になっているのがより好ましい。この点
について図2の(a)および(b)を例に挙げて具体的
に説明すると、異種の重合体AとBとが接合している接
合部1の長さを(L)とし、該接合部を挟んで位置する
重合体Aの厚さを(W1)、そして該接合部を挟んで位
置する重合体Bの厚さを(W2)とすると、L/W1=1
〜15であり且つL/W2=1〜15であるのが好まし
い。L/W1および/またはL/W2が1よりも小さい
と、柔軟性、バルキー性、緻密性などに優れる分割フィ
ブリル化物が得られにくくなり、一方15を超えると接
合部における重合体間の分割剥離性が低下して、分割フ
ィブリル化が充分に行われにくくなる。
【0021】ここで、重合体Aの厚さW1および重合体
Bの厚さW2は、図2の(a)に示すように重合体Aと
重合体Bとが平行またはほぼ平行に多数接合している場
合には、接合部に直角またはほぼ直角に交わる直線の距
離として求められる。一方、重合体Aと重合体Bの接合
が図2の(b)に示すように互いに平行状になっていな
い場合には、接合部1を挟んで位置する重合体Aの厚さ
(W1)、および重合体Bの厚さ(W2)は、図2の
(b)に示すように、その接合部1の繊維の外周部に位
置する点2からそれぞれ隣接する別の接合部に下ろした
垂線の長さとする。
【0022】図2の(a)にも見るように、L/W1
よびL/W2の値は、分割型複合繊維における重合体A
と重合体Bの接合部1の位置によって異なってくる場合
が多いが[例えば図2の(a)では接合部1が繊維横断
面の中央にある場合と端部近くにある場合とでは重合体
Aの厚さ(W1)と重合体Bの厚さ(W2)が同じであっ
てもLの値が異なるのL/W1およびL/W2の値が異な
ってくる]、本発明ではL/W1およびL/W2の大半
(90%以上)が上記した1〜15の範囲になるように
するのが、延伸糸を構成する分割型多層複合繊維の分割
フィブリル化が完全に且つ円滑に行われるので好ましい
(なお本明細書ではW1とW2を総称して「W」と表示す
ることがある)。なお、以下の実施例では、アルカリ水
溶液による分割フィブリル化処理(アルカリ減量処理)
を行った後の分割型複合繊維の接合の長さ(L)および
それぞれの重合体の厚さ(W)を測定してL/Wを算出
しているが、これは分割フィブリル化処理を行った後に
接合の長さ(L)および重合体の厚さ(W)を測定する
方が測定が簡単に行えるためである。また、アルカリ水
溶液による減量の程度によって、L/Wの値は多少影響
を受けるが、アルカリ減量率が15%以下であれば、L
/Wの値はアルカリ減量前と殆ど変わらない。
【0023】分割型複合繊維の繊維横断面における非相
溶性の重合体の貼張合せ数(積層数)の合計は、2以上
であればいずれでもよく特に制限されないが、分割型複
合繊維の製造の容易性、分割フィブリル化処理により形
成される極細繊維の繊度等の点から平均して約2〜15
程度の貼張合せ数(積層数)にするのが好ましい。本発
明の延伸糸は1本の分割型複合繊維からなっている延伸
糸(モノフィラメント延伸糸)であっても、または2本
以上の分割型複合繊維からなっている延伸糸(マルチフ
ィラメント延伸糸)であってもよく、その中でも約6〜
150本程度の分割型複合繊維からなっているのが好ま
しい。また、延伸糸を構成する分割型複合繊維の単繊維
繊度(分割フィブリル化前)は、通常、約1〜15デニ
ール程度であるのが、紡糸・延伸時の工程性、製編織
性、不織布などの製造性、その後の分割フィブリル化処
理の容易性などの点から好ましい。そして、分割フィブ
リル化処理後に形成される極細繊維の単繊維繊度が約1
デニール以下、好ましくは0.6デニール以下になるよ
うにして、分割型複合繊維の単繊維繊度、分割型複合繊
維における非相溶性の重合体の貼張合せ数(積層数)を
決めるのが、柔軟性、バルキー性、緻密性などに優れ、
しかも機械的物性にも優れる分割フィブリル化物が得ら
れるので好ましい。
【0024】また、本発明の延伸糸を構成する分割型複
合繊維の横断面形状も特に制限されず、例えば上記した
図1の(b)〜(d)に示すような円形断面のもの、図
1の(a)に示すような楕円形のもの、また図示してい
ないが他の異形断面、例えば三角形、方形、多角形、多
葉形、アレイ形、T字形、V字形、中空形などを挙げる
ことができる。そのうちでも、本発明の分割型複合繊維
は、図1の(a)で例示する楕円形などで代表される偏
平形の横断面を有しているのがよく、図2の(a)に示
す長径(E)と短径(F)との比(E/F)が約1/1
〜10/1であるのが好ましい。特に、図1の(a)に
示すように、非相溶性の重合体同士の複数の接合部1が
偏平な繊維横断面の長径に交差するようにして互いに平
行に存在する分割型複合繊維であるのが好ましい。
【0025】本発明の延伸糸の分割型複合繊維繊維を構
成する2種以上の非相溶性の繊維形成性熱可塑性重合体
の組み合わせとしては、織編物、不織布、その他の繊維
製品の分割フィブリル化処理時に該分割型複合繊維繊維
が2種の非相溶性の繊維形成性重合体の接合部(界面)
で容易に分割剥離してフィブリル化され得る組み合わせ
であればいずれも採用することができ、例えば、ポリエ
ステル/ポリアミド、ポリエステル/ポリオレフィン、
ポリアミド/ポリオレフィン、ポリエステル/ポリアミ
ド/ポリオレフィン、エラストマー/ポリエステル、エ
ラストマー/ポリオレフィン等の組み合わせを挙げるこ
とができる。そのうちでも、ポリエステルとポリアミド
とよりなる分割型複合繊維繊維が、得られる繊維の風
合、外観、強度などの品質が良好であり、製造が容易で
あり、しかもアルカリ水溶液によって簡単に且つ円滑に
完全に分割フィブリル化が可能であるなどの点から特に
好ましい。
【0026】分割型複合繊維を構成する2種以上の繊維
形成性熱可塑性重合体のうちの1種としてポリエステル
を用いる場合は、テレフタル酸単位と、少なくとも1種
のグリコール単位、好ましくはエチレングリコール、ト
リメチレングリコール、テトラメチレングリコールから
選ばれる少なくとも1種のアルキレングリコールからな
る単位から主としてなるポリエステルが好ましく用いら
れる。前記のポリエステルは、場合によってテレフタル
酸単位と共に少量(通常全カルボン酸単位の15モル%
以下)の他のジカルボン酸単位やオキシカルボン単位を
有していてもよく、そのような他のジカルボン酸単位や
オキシカルボン酸単位としては、例えばイソフタル酸、
スルホイソフタル酸ナトリウム、ナフタレンジカルボン
酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカ
ルボン酸、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、p−オキ
シ安息香酸などの芳香族ジカルボン酸や芳香族オキシカ
ルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘ
キサンジカルボン酸などの脂肪族または脂環式ジカルボ
ン酸などからなる単位を挙げることができる。
【0027】また、ポリエステルは、上記したグリコー
ル単位と共に少量(通常全ジオール単位の15モル%以
下)の他のジオール単位を有していてもよく、そのよう
な他のジオール単位の例としては、シクロヘキサン−
1,4−ジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビス
フェノールA、ビスフェノールSなどのジオール単位、
ポリオキシアルキレングリコール単位などを挙げること
ができる。更に、ポリエステルは、その線状構造を実質
的に損なわない範囲内で、場合により少量の3官能性単
位を有していてもよく、そのような3官能性単位の例と
しては、トリメリット酸、ピロメリット酸などのポリカ
ルボン酸の単位;グリセリン、トリメチロールプロパ
ン、ペンタエリスリトールのようなポリオールの単位な
どを挙げることができる。そして、本発明では、上記し
たポリエステルのうちでも、ポリエチレンテレフタレー
ト、およびイソフタル酸を共重合単位として有するポリ
エチレンテレフタレートのうちの1種または2種が好ま
しい。
【0028】また、分割型複合繊維を構成する2種以上
の繊維形成性熱可塑性重合体のうちの1種としてポリア
ミドを用いる場合は、例えば6−ナイロン(ポリ−ε−
カプラミド)、6,6−ナイロン(ポリヘキサメチレン
アジパミド)、6,10−ナイロン(ポリヘキサメチレ
ンセバカミド)、11−ナイロン(ポリウンデカンアミ
ド)、7−ナイロン(ポリ−ω−アミノヘプタン酸)、
9−ナイロン(ポリ−ω−アミノナン酸)などの繊維形
成性ポリアミドの1種または2種以上が好ましく用いら
れる。そのうちでも、6−ナイロンが、品質、取り扱い
性、コストなどの点から特に好ましい。
【0029】上記したように、本発明の延伸糸を構成す
る分割型複合繊維はポリエステルとポリアミドから形成
されているのが好ましいが、そのうちでもポリエチレン
テレフタレートおよび/またはイソフタル酸共重合ポリ
エチレンテレフタレートからなるポリエステルと、6−
ナイロンとからなる分割型多層複合繊維であるのが好ま
しい。その際に、ポリエステルとして下記の実施例に記
載した方法で測定した極限粘度が0.5〜1.0のもの
を用いるのが好ましく、またポリアミドとして下記の実
施例に記載した方法で測定した極限粘度が0.8〜2.
0のものを用いるのが好ましい。分割型複合繊維をポリ
エステルおよびポリアミドから形成する場合は、ポリエ
ステル部分および/またはポリアミド部分は50重量%
未満であれば他の重合体を含んでいてもよい。
【0030】本発明の延伸糸を構成する分割型複合繊維
での各重合体の複合割合は、使用する重合体の種類、重
合体の組み合わせ内容、延伸糸の用途などに応じて調節
し得るが、ポリエステルとポリアミドとからなる分割型
多層複合繊維の場合は、ポリエステル:ポリアミドの複
合比が重量で2:1〜3:1であるのが好ましい。ポリ
アミドの複合割合が上記の範囲よりも多い(ポリエステ
ルの複合割合が上記の範囲よりも少ない)と繊維が分割
し易くなって、紡糸・延伸時、捲縮加工時、製編織時、
不織布の製造時などに分割・剥離によってフィブリルが
生じて工程性や作業性が悪くなり、得られる製品の品質
の安定性が低下し易くなる。一方、ポリアミドの複合割
合が上記の範囲よりも少ない(ポリエステルの複合割合
が上記の範囲よりも多い)と、製編織後などに行う分割
フィブリル化が円滑に且つ完全に行われず、目的とする
極細繊維化された分割フィブリル化物を得られにくくな
る。
【0031】上記した本発明の延伸糸を用いた場合は、
分割フィブリル化処理を行った際に、下記の数式で表
される完全分割率が80%以上のものが円滑に得られ、
したがって本発明はその好ましい態様として完全分割率
が80%以上である延伸糸を包含する。完全分割率が8
0%以上であると、分割フィブリル化したときに、柔軟
性、バルキー性、緻密性などに優れ、しかも筋斑や染色
斑のない、高品質のフィブリル化物が得られる。
【0032】
【数2】 完全分割率(%)=(D/C)×100 [式中、C=分割フィブリル化処理後の延伸糸における
各繊維単位の総数(すなわち分割フィブリル化処理後の
延伸糸において1層からなる単位と2層の結合体からな
る繊維単位と3層以上の結合体からなる繊維単位の合計
単位数)、D=分割フィブリル化処理後の延伸糸におい
て1層からなる単位または2層の結合体からなる繊維単
位にまで分割されている繊維単位の合計単位数を表
す。] 例えば、1層からなる単位が10本、2層の結合体から
なる繊維単位が5本、3層以上の結合体からなる繊維単
位が2本ある場合には、Cは10+5+2=17本とな
り、Dは10+5=15本となり、したがって完全分割
率は(15/17)×100(%)となる。なお、上記
した完全分割率を求めるための、分割の程度は、下記の
実施例に記載した方法で調べたものをいう。そして、延
伸糸を構成する分割型複合繊維がポリアミドとポリエス
テルとからなっている場合は、アルカリ水溶液を用いて
約2〜15%の減量率になるようにアルカリ減量して分
割フィブリル化処理を行ったときに、上記した完全分割
率が80%以上であるのが好ましい。
【0033】本発明の延伸糸は、上記したように、
(1) 2種以上の非相溶性の繊維形成性熱可塑性重合
体を溶融紡糸して繊維横断面において各繊維形成性熱可
塑性重合体がサイドバイサイド型に接合している分割型
複合繊維よりなる糸条を紡糸・延伸直結方式(SDY方
式)で製造し、次いで糸条の張力を0.05〜0.80
g/dの範囲に保って150℃以上のスチームジェット
を吹き付ける方法;または(2) 2種以上の非相溶性
の繊維形成性熱可塑性重合体を溶融紡糸して繊維横断面
において各繊維形成性熱可塑性重合体がサイドバイサイ
ド型に接合している分割型複合繊維よりなる糸条を紡糸
・延伸直結方式(SDY方式)で製造し、次いで糸条の
張力を0.25〜0.80g/dの範囲に保ってヤーン
ガイドで屈曲・擦過する方法;によって極めて円滑に製
造することができる。
【0034】上記(1)および(2)の方法において、
その溶融紡糸工程は分割型複合繊維を製造する既知の溶
融紡糸法にしたがって行うことができ特に制限されな
い。例えば、図3の(a)および図3の(b)に示すよ
うに、2種以上の非相溶性の繊維形成性熱可塑性重合体
を溶融状態で分割型複合繊維製造用の複合紡糸頭3に供
給し、該紡糸頭3の紡糸口金の複合紡糸ノズルから紡出
させるさせることにより製造することができる。その際
の紡糸頭3への重合体の供給量、紡糸温度、紡糸ノズル
からの紡出量などは各々の状況に応じて決めることがで
きるが、ポリエステルとポリアミドとの分割型複合繊維
を製造する場合には、紡糸温度を約270〜295℃程
度として、1つの紡糸孔当たり紡出量を約0.2〜10
g/分にすると分割型複合繊維を円滑に紡出させること
ができる。
【0035】紡出させた分割型複合繊維よりなる糸条は
次いで冷却風吹き付け装置4から冷却風を吹き付けて冷
却した後、必要に応じてガイド5を経て、油剤付与装置
(オイリングローラ等)6で油剤を付与した後直接延伸
する。延伸は、この種の紡糸・延伸直結方式において従
来から採用される延伸方式のいずれで行ってもよく、例
えばローラー加熱延伸方式、液浴加熱延伸方式、熱板接
触延伸方式などの延伸方式を採用できるが、図3に示す
ように、第1の加熱ローラー7とそれよりも回転速度の
大きい第2の加熱ローラー8を用いるローラー加熱延伸
方式で行うのが延伸時の繊維の分割フィブリル化などが
生じず、延伸操作が円滑に行える点から望ましい。その
場合に、加熱ローラー7および加熱ローラー8の温度、
延伸倍率などは分割型複合繊維を構成する重合体の種類
などに応じて決めることができるが、ポリエステルとポ
リアミドとの分割型複合繊維よりなる糸条の場合は、第
1の加熱ローラー7の温度を約60〜80℃、第2の加
熱ローラー8の温度を約100〜200℃とし、延伸倍
率(第2の加熱ローラーの周速/第1の加熱ローラーの
周速)を約2.5〜4.0倍程度とするのがよい。 場合によっては、上記した紡糸・延伸直結方式によらず
に、紡糸後に糸条を一旦巻き取った後に、別途延伸また
は延伸・仮撚などを行うことも可能であるが、本発明の
特徴である分割性および工程性良好に製造できる点や、
紡糸および延伸工程を継続して行える点、および得られ
る糸の物性などの点から、紡糸・延伸直結方式を採用す
るのが望ましい。
【0036】次いで、上記によって延伸した糸条を、糸
条の張力を0.05〜0.80g/dの範囲に保ちなが
らスチームジェット処理装置9に通して150℃以上の
スチームジェットを吹き付けて処理するか[上記(1)
の方法]、または糸条の張力を0.25〜0.80g/
dの範囲に保ちながらヤーンガイド10で屈曲・擦過処
理し[上記(2)の方法]、その後に巻き取る。本発明
で採用している前記のスチームジェット処理およびヤー
ンガイドによる屈曲・擦過処理は、いずれも、分割フィ
ブリル化処理に至る前の工程では分割型複合繊維の分割
剥離が生じないようにしながら、製編織後などに行う分
割フィブリル化処理時には分割型複合繊維が最小単位の
極細繊維に円滑に且つ完全に分割フィブリル化されるよ
うにするための処理工程である。
【0037】上記(1)の方法を行う場合に、スチーム
ジェット処理を糸条の張力を上記した0.05〜0.8
0g/d、好ましくは0.10〜0.60g/dの範囲
に保って行うことによって、分割型複合繊維が適度な揉
み作用を受けて、製編織後などにおける分割フィブリル
化が円滑に且つ完全に行われるようになる。スチームジ
ェット処理時の糸条の張力が0.05g/d未満である
と、スチームに作用によって繊維が吹き飛ばされて熱が
糸に均一に伝わらず、しかも糸道が安定しないので、分
割型複合繊維に良好な揉み作用が行われなくなる。一
方、スチームジェット処理時の糸条の張力が0.80g
/dを超えると、糸条にかかる張力が大きすぎてスチー
ム加熱による繊維の弛緩や揉み効果が低減し、やはり爾
後に行う分割フィブリル化処理時に最小単位の極細繊維
にまで円滑に且つ完全に分割フィブリル化されなくな
る。
【0038】また、スチームジェットの温度が150℃
未満であると、乾燥スチームが得られなくなり、しかも
分割型複合繊維に与える加熱による物性変化が小さく過
ぎて、爾後に行う分割フィブリル化処理が円滑に行われ
ない。ポリエステルとポリアミドとの分割型複合繊維の
場合は、スチームジェットの温度が150〜280℃で
あるのが好ましく、200〜260℃であるのがより好
ましい。糸条は瞬時にスチームジェット内を通過するた
め、スチームジェットの温度が分割型複合繊維を構成し
ている重合体の融点よりも高い場合であっても、該分割
型複合繊維内に融着等が生じることはない。
【0039】スチームジェット処理装置9の構造や形状
は特に制限されず、糸条全体にスチームジェットを均一
に吹き付けることのできる装置であればいずれでもよ
く、例えば図3の(a)に示すような、糸条を包囲して
その全周からスチームを吹き付ける形式のスチームジェ
ットノズルなどが好ましく用いられる。その際のスチー
ムノズルとしては、図4の(a)(上面図)に示すよう
な糸条Yに対してスチームジェットを直角に吹き付る形
式のもの、図4の(b)(上面図)に示すような糸条Y
の周囲から螺旋状に取り巻いてスチームジェットを吹き
付ける形式のもの、または図4の(c)のように一方か
らスチームジェットを吹き付ける形式のものなどが使用
でき、糸条を均一に加熱し、もみの効果を与えることが
出来ればいずれの形式でも良い。スチームジェットの速
度なども各々の状況やノズルの形式などに応じて調節す
ることができ、糸条の走行状態や分割性の程度、工程性
などを観察して適宜決定するのが好ましい。
【0040】また、上記(2)の方法を行う場合に、走
行糸条の張力を0.25〜0.80g/d、好ましくは
0.35〜0.60g/dの範囲にすることによって、
ヤーンガイド10による摩擦・擦過処理時に分割型複合
繊維が適度なシゴキ作用を受けて、製編織後などに行う
分割フィブリル化処理が円滑になる。ヤーンガイド10
による摩擦・擦過処理時の糸条の張力が0.25g/d
未満であると、ヤーンガイド10による糸条の摩擦・擦
過が小さくって繊維に適度なシゴキ作用が与えられず、
爾後の分割フィブリル化処理が円滑に行われなくなる。
一方、ヤーンガイド10による摩擦・擦過処理時の走行
糸条の張力が0.80g/dを超えると、糸条の摩擦・
擦過が大きくなり過ぎて、繊維が損傷して毛羽や断糸な
どが発生し、糸条の巻き取り工程、織編物や不織布の製
造工程などが円滑に行われなくなる。
【0041】ヤーンガイド10としては、直径が約0.
2〜1.0cm程度の棒状体を使用するのがよい。ま
た、作業性や工程性などを考慮すると約2〜4本の棒状
体を配置してヤーンガイド10を構成するのがよく、そ
の際に前記棒状体を、図3の(b)に例示すように、間
隔をあけて交互に位置をずらせて配置するとよい。その
場合に、ヤーンガイド10による糸条Yの屈曲角度θ
(図5に示す角度θ)を約30°〜60°とするのが好
ましい。また、ヤーンガイドの材質としては、分割型複
合繊維に損傷を与えることなく適度な摩擦・擦過作用を
及ぼすものであればいずれでよく、例えば、セラミッ
ク、金属、プラスチック、木材、ガラスなどから形成し
ておくことができるが、セラミックスや金属から形成す
るのが工程性や糸品質の点から好ましい。また、ヤーン
ガイドの表面は、鏡面仕上げされたような状態よりも、
梨地仕上げがなされたような表面に微細な凹凸を有して
いるような状態であるのが好ましい。
【0042】上記したスチームジェット処理およびヤー
ンガイドによる摩擦・擦過処理は、場合によっては分割
型複合繊維よりなる糸条の延伸処理中に行うこともでき
るが、延伸後に行うのが工程性や操作性が良好であり、
しかも分割型複合繊維の爾後の分割フィブリル化処理が
円滑に行われるなどの点から好ましい。なお、図3の
(a)および(b)に記載されている方法による場合
は、第2の加熱ローラー8と第3のローラー11(常
温)との回転速度を調節することによって、糸条Yに、
上記した0.05〜0.80g/dの張力または0.2
5〜0.80g/dの張力をそれぞれ付与できる。そし
て、上記したスチームジェット処理またはヤーンガイド
による摩擦・擦過処理を行った糸条を、常法によって巻
き取り装置12などにより巻き取る。巻き取り速度は各
々の状況に応じて調節できるが、通常、約2000〜6
000m/分程度としておくのが好ましい。
【0043】本発明では、上記した一連の工程を行うこ
とによって、紡糸・延伸時、スチームジェット処理時、
ヤーンガイドによる摩擦・擦過処理時、巻き取り時、そ
の以後の製編織時、不織布の製造時などには分割型複合
繊維に分割フィブリル化が生じず、それらの工程性を円
滑に実施することができ、織編物などにした後の分割フ
ィブリル化処理時には個々の最小単位にまで円滑に且つ
完全にフィブリル化が可能な分割型複合繊維よりなる延
伸糸が製造される。その理由としては、上記したスチー
ムジェット処理では、糸条がスチームジェット流の中を
通過する時に、熱とスチームジェットの噴射力による揉
み作用によって、分割型複合繊維中の各層の変形や層間
の微細で部分的な剥離などが潜在的に生じ、それが爾後
の分割フィブリル化処理時に顕在化することによるもの
と考えられ、また上記したヤーンガイドによる摩擦・擦
過処理では、制御された張力下での屈曲、摩擦、擦過作
用などによって、分割型複合繊維中の各層の変形、ひず
み、層間の微細で部分的な剥離などが潜在的に生じ、そ
れが爾後の分割フィブリル化処理時に顕在化することに
よるものと考えられる。なお、上記のようにして製造し
た本発明の延伸糸は、必要に応じて更に捲縮加工、仮撚
加工などを施してあってもよく、捲縮加工、仮撚加工な
どを施す場合は、上記したスチームジェット処理または
ヤーンガイドによる摩擦・擦過処理を行った後に行うの
が、工程性、作業性、糸品質などの点から好ましい。
【0044】上記により製造した延伸糸は、次に製編織
工程を経て編物や織物を製造するか、長繊維状のままで
または短繊維状にして不織布を製造したり、或いは紡績
工程を経て紡績糸にした後その糸を用いて編物や織物な
ど製造することができる。そして、そのようにして得ら
れた織編物、不織布などに対して分割フィブリル化処理
を施すことによって、分割型複合繊維が個々の最小単位
にまで円滑に且つ完全にフィブリル化されて極細繊維と
なり、柔軟性、嵩高性、緻密性に優れる分割フィブリル
化物が得られる。ここで、不織布の場合には、分割フィ
ブリル化は不織布を製造した後に行う代わりに、不織布
を製造する前に行っても差し支えない。
【0045】上記した分割フィブリル化処理は、分割型
複合繊維を構成する繊維形成性熱可塑性重合体の種類、
布帛の種類などの種々の状況に応じて、例えば、薬剤処
理法、高圧流体噴射法、仮撚加工法、ニードルパンチ
法、加熱処理法などのうちの適当な方法を選んで行うこ
とができる。
【0046】特に、分割型複合繊維がポリアミドとポリ
エステルとから形成されている場合は、アルカリ水溶液
を用いる減量加工法によって行うのが好ましい。従来の
ポリアミド/ポリエステル分割型複合繊維よりなる織編
物のアルカリ減量処理による場合は、アルカリ減量処理
のみでは極細繊維への分割フィブリル化が充分に行われ
ず、分割斑が発生し、これが布帛などにおける筋斑や染
色斑の一因ともなっていたが、本発明の延伸糸を用いて
製造した織編物や不織布などの布帛をアルカリ減量処理
した場合には、マイルドなアルカリ微減量処理を行うだ
けで、極細繊維への分割フィブリル化が円滑に且つ完全
に行われて、筋斑や染色斑などのない、柔軟性、ボリュ
ーム感、緻密性に優れる分割フィブリル化製品を得るこ
とができる。なお、ポリアミドとポリエステルとの分割
型複合繊維よりなる布帛をアルカリ減量処理するに当た
っては、布帛の製造後にリラックス、精練工程を経てか
らアルカリ減量処理を行うのが好ましい。アルカリ減量
処理の条件などは特に制限されず、各々の状況に応じて
選択することができるが、アルカリとして水酸化ナトリ
ウムを用いる場合は、例えばNaOH濃度が約10〜1
00g/リットルで温度が約50〜120℃のアルカリ
水溶液中に布帛を約1〜60分間浸漬して行うことがで
きる。その際にアルカリによる減量率を約2〜15%程
度にしておくのが、分割性、製品の品質、コストなどの
点から好ましい。
【0047】また、上記により分割フィブリル化処理を
行った布帛は、布帛の状態または布帛から縫製品などを
製造した後に、必要に応じて従来既知の方法で染色処理
を行うことができる。ポリアミドとポリエステルとの分
割型複合繊維よりなる布帛の場合は、アルカリ減量処理
の後に、例えば分散染料などを用いて加熱・加圧下(例
えば100〜120℃)に染色したり、分散染料と含金
属染料を併用して染色することができる。
【0048】
【実施例】以下に本発明について実施例などにより具体
的に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されな
い。以下の例において、ポリアミド(6−ナイロン)の
極限粘度[η」、ポリエステル(ポリエチレンテレフタ
レートまたはイソフタル酸共重合単位を8モル%含有す
るポリエチレンテレフタレート)の極限粘度[η]、ス
チームジェット処理時またはヤーンガイドによる摩擦・
擦過処理時の糸張力、延伸糸の乾熱収縮応力、および分
割型複合繊維におけるポリアミドとポリエステルの接合
部の長さと幅の比(L/W)の測定、並びに紡糸・延伸
時の工程性、製編時の工程性、分割フィブリル化性、染
色性、および編地における筋斑の発生性の評価を、それ
ぞれ下記のようにして行った。
【0049】ポリアミドの極限粘度[η]の測定:ポリ
アミドをテトラクロロエタン/フェノールの1/1容量
混合溶液に溶解して25℃で測定した。ポリエステルの極限粘度[η]の測定 :ポリエステルを
テトラクロロエタン/フェノールの1/1容量混合溶液
に溶解して25℃で測定した。
【0050】スチームジェット処理時またはヤーンガイ
ドによる摩擦・擦過処理時の糸張力:Nakaasa Instrumen
t Co., Ltd.製のTension Meter(0〜200g)測定
用を使用し、走行糸条をこの装置にはさみ、測定した。
【0051】延伸糸の乾熱収縮応力の測定:延伸処理後
にスチームジェット処理またはヤーンガイドによる摩擦
・擦過処理を行って巻き取って得られた延伸糸(ポリフ
ィラメント延伸糸)から、長さ10cmの試料を採取
し、その試料の一端をカネボー社製の乾熱収縮応力測定
機KE−2の試料把持具で把持し、試料のもう一方の端
部に0.05g/dの重りを取り付けて、この重りを取
り付けた端部を固定し、この状態で試料を入れた加熱炉
の温度を30℃の温度から2.3℃/分の昇温速度で上
昇させ、糸を収縮させつつ(測定機の試料把持具が下降
する)、試料の収縮応力を自動記録計で記録し、そのピ
ーク値を読み取って応力値(g)とし、下記の数式から
延伸糸の乾熱収縮応力を求めた。
【0052】
【数3】延伸糸の乾熱収縮応力(g/d)={応力値(g)
−初荷重(g)}/(2×M) ただし、M=試料の総デニール数
【0053】分割型複合繊維における接合部長さと幅の
比(L/W):アルカリ減量処理後の筒編地を解舒し、
それを適当な太さの綛とした後その綛から長さ5cmの
試料を採取し、試料を延ばして引き揃えた状態でパラフ
ィンで一つに固め、それを糸の長さ方向に直角にミクロ
トームで切断して薄片を作製し、その薄片(切断面)を
電子顕微鏡で観察して、各極細繊維における接合部に相
当する部分の長さLと幅Wを測定して各極細繊維ごとの
L/Wを求めた。
【0054】紡糸・延伸時の工程性の評価:紡糸時の断
糸、ビス落ち、ローラへの巻き付き、および延伸時のロ
ーラやガイドへの毛羽やフィブリルの巻き付きや付着、
断糸の有無を総合的に観察して、前記したトラブルが全
く生じず紡糸・延伸工程を極めて円滑に行えた場合を
◎、毛羽、断糸がごく僅かで工程性において問題がない
場合を○、毛羽や断糸はかなりあるが、紡糸・延伸がで
きる場合を△、巻付や断糸が激しく工業上紡糸・延伸不
能の場合を×として評価した。
【0055】製編時の工程性の評価:紡糸・延伸後に、
スチームジェット処理またはヤーンガイドによる摩擦・
擦過処理を行って巻き取った延伸糸を用いてメリヤス編
みの筒編地を製造し、その際のガイドやローラーへのフ
ィブリルや毛羽の巻き付きや付着、断糸等の発生の有無
および作業性を総合的に判断して、前記したトラブルが
全く生じず製編性が極めて良好な場合を◎、少し巻付き
や断糸が発生したが工業的生産上問題とはならない程度
の場合を○、巻付きや断糸のため工程性や製品品質上や
や問題がある場合を△、および断糸や巻付きが激しく工
程上のトラブルのため工業的に織編物が製造できない場
合を×として評価した。
【0056】分割フィブリル化性の評価:アルカリ減量
処理後の筒編地を解舒し、それを適当な太さの綛とした
後その綛から長さ5cmの試料を採取し、その試料を延
ばして引き揃えた状態にしてパラフィンで一つに固め、
糸の長さ方向に直角にミクロトームで切断して薄片を作
製し、その薄片(切断面)を電子顕微鏡で観察して、そ
の切断面における、各繊維単位の総数(すなわち完全に
分割された繊維単位、未分割または不完全分割の状態の
繊維単位の合計数)(C)および最小単位の1層および
多くても2層の結合体にまで分割されている繊維単位の
合計数(D)を数えて、上記の数式により完全分割率
(%)を算出し、下記の表1に示した基準に基づいて分
割フィブリル化処理性を評価した。
【0057】
【表1】 分割フィブリル化性の評価基準 ◎ : 完全分割率が90%以上 ○ : 完全分割率が80%以上90%未満 △ : 完全分割率が50%以上80%未満 × : 完全分割率が50%未満
【0058】染色性の評価:下記の実施例または比較例
に記載した方法でアルカリ減量処理によって分割フィブ
リル化した後のメリヤス編みの筒編地を、分散染料[染
色浴組成;染料(Kayalon Polyester Navy Blue R−S
F 3% owf)、助剤(Disper TC 1g/リット
ル、ウルトラMT レベル 1g/リットル)、浴比=
50:1]を用いて120℃で40分間染色し、取り出
して水洗したのち還元洗浄し、更に含金属染料[染色浴
組成;染料(Lanyl Navy Blue BW 2% owf)、
助剤(NaSO4 10% owf、(NH4)2SO4 5% ow
f)、浴比=50:1]を用いて100℃で40分間染
色し、その発色性および染斑の有無を肉眼で観察して、
鮮明で深い色調を呈していて染斑が全くない場合を◎、
色調にやや深みが不足しているものの染斑のない場合を
○、色調が不良でしかも染斑のある場合を×として評価
した。
【0059】編地における筋斑の発生性の評価:下記の
実施例または比較例に記載した方法でアルカリ減量処理
によって分割フィブリル化した後のメリヤス編みの筒編
地における筋斑の発生状態を肉眼で観察して、筋斑が全
く発生しておらず良好な編み状態を呈している場合を
◎、筋斑が僅かにあるが筒編地の品質にそれほど悪影響
がない場合を○、筋斑が多く発生していて筒編地の外観
が不良である場合を×として評価した。
【0060】《実施例1〜3および比較例1〜2》 (1) この実施例1〜3および比較例1〜2では、図
3の(a)に示した一連の工程を行って、6−ナイロン
とポリエチレンテレフタレートの分割型複合繊維からな
る延伸糸を製造した。すなわち、図1の(a)に示す横
断面構造を有する複合繊維が紡出される分割型複合繊維
用の複合紡糸ヘッド3に、6−ナイロン(極限粘度
[η]=1.21)(宇部興産株式会社製「1013B
K−1」)とポリエチレンテレフタレート(極限粘度
[η]=0.65)[(株)クラレ製「クラペットR
B」]を、1:2の重量比で供給して、紡糸温度290
℃で溶融紡糸し、冷却風吹き付け装置4から冷却風を吹
き付けて冷却した後、オイリングローラ6で油剤を付与
し、次いで第1の加熱ローラー7(表面温度80℃;周
速1050m/分)と第2の加熱ローラー8(表面温度
130℃;周速3200〜3500m/分)との間で延
伸した(なお延伸倍率は延伸糸の伸度が25〜30%の
範囲になるように設定した)。次いで、第2の加熱ロー
ラー8を出た糸条を第2の加熱ローラー8と第3の常温
ローラー(周速3250〜3550m/分)のほぼ中間
に配置したスチームジェットノズル9[スチーム温度2
40℃;図4の(a)のタイプのもの]を通してスチー
ムジェット処理した後(スチームジェット処理時の糸張
力=0.35g/d)、3200〜3500m/分の速
度で巻き取った。なお、上記の溶融紡糸に当たって、各
実施例または比較例では、楕円形の紡糸ノズルの孔形を
調節することによって、分割フィブリル化処理後の極細
繊維における上記した接合部の長さ(L)と幅(W)の
比(L/W)が下記の表2の範囲になるようにし、且つ
紡糸ノズルからの吐き出し量を、延伸およびスチームジ
ェット処理後に巻き取った延伸糸の総繊度が75d/2
4fになるようにした。
【0061】(2) 上記(1)で得られた延伸、スチ
ームジェット処理後の延伸糸の乾熱収縮応力を上記した
方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであっ
た。 (3) 次いで、上記(1)で得られた延伸糸を用いて
メリヤス編みの筒編地を製造した後、沸騰水中でリラッ
クス、精練を行った。次いで、それを苛性ソーダ水溶液
(濃度NaOH40g/リットル、温度95℃)中に5
分間浸漬してアルカリ減量処理をして分割フィブリル化
を行った後(減量率=5%)、水洗して乾燥し、分割フ
ィブリル化処理後の極細繊維における接合部に相当する
部分の長さと幅の比(L/W)を上記した方法により算
出したところ、下記の表2に示すとおりであった。 (4) また、上記(3)によるアルカリ減量処理によ
る分割型複合繊維の分割フィブリル化性の評価を上記し
た方法で行ったところ、下記の表3に示すとおりであっ
た。 (5) 上記(3)でアルカリ減量処理して得た分割フ
ィブリル化後の筒編地に対して、上記の“染色性の評
価”の項に記載した方法で染色を行って、その染色性お
よび筋斑の発生性の評価を行ったところ、下記の表3に
示すとおりであった。 (6) また、上記と併せて紡糸・延伸時の工程性およ
び製編時の工程性の評価を上記した方法で行ったとこ
ろ、下記の表3に示すとおりであった。
【0062】《実施例4および比較例3〜4》6−ナイ
ロンとポリエチレンテレフタレートの複合比率(重量
比)を下記の表2に示すように変えた以外は、実施例1
と同様にして溶融紡糸、延伸、スチームジェット処理、
巻き取り、アルカリ減量処理による分割フィブリル化お
よび染色処理を行って、実施例1と同様にして各種の条
件や物性の測定、工程性および品質の評価を行ったとこ
ろ、下記の表2および表3に示すとおりであった。
【0063】《実施例 5》ポリエステルとしてポリエ
チレンテレフタレートの代わりにイソフタル酸共重合単
位を8モル%有するポリエチレンテレフタレート(極限
粘度[η]=0.68)[(株)クラレ製「クラペット
KL−246 1B」]を用いた以外は、実施例1と同様
にして溶融紡糸、延伸、スチームジェット処理、巻き取
り、アルカリ減量処理による分割フィブリル化および染
色処理を行って、実施例1と同様にして各種の条件や物
性の測定、工程性および品質の評価を行ったところ、下
記の表2および表3に示すとおりであった。
【0064】《実施例6〜7および比較例5〜6》スチ
ームジェットノズルにおけるスチーム温度を下記の表2
に示すように代えた以外は実施例1と同様にして溶融紡
糸、延伸、スチームジェット処理、巻き取り、アルカリ
減量処理による分割フィブリル化および染色処理を行っ
て、実施例1と同様にして各種の条件や物性の測定、工
程性および品質の評価を行ったところ、下記の表2およ
び表3に示すとおりであった。
【0065】《実施例8〜9および比較例7〜8》スチ
ームジェット処理を行う際の糸張力を下記の表2に示す
ように代えた以外は実施例1と同様にして溶融紡糸、延
伸、スチームジェット処理、巻き取り、アルカリ減量処
理による分割フィブリル化および染色処理を行って、実
施例1と同様にして各種の条件や物性の測定、工程性お
よび品質の評価を行ったところ、下記の表2および表3
に示すとおりであった。
【0066】《実施例10〜12および比較例9〜1
0》延伸後の糸条をスチームジェット処理する代わり
に、図3の(b)に示した工程にしたがって、ヤーンガ
イド10による摩擦・擦過処理を行った以外は実施例1
と同様の条件下に溶融紡糸、延伸、スチームジェット処
理、巻き取り、アルカリ減量処理による分割フィブリル
化および染色処理を行って、実施例1と同様にして各種
の条件や物性の測定、工程性および品質の評価を行った
ところ、下記の表2および表3に示すとおりであった。
なお、その際にヤーンガイド10としては、直径8m
m、長さ15cmの3本の棒状体(セラミックス製;表
面は梨地調)を図3の(b)に示すように交互に間隔を
あけて千鳥状に配置(θ=45°)した。また、ヤーン
ガイド10による摩擦・擦過処理時の糸張力を下記の表
2に示すようにそれぞれ調節した。
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】上記表2および表3の結果から、延伸後の
乾熱収縮応力が0.14〜0.30g/dの範囲にある
実施例1〜12の本発明の延伸糸は、いずれも、紡糸・
延伸時の工程性に優れていて、紡糸時の断糸、ビス落
ち、ローラへの巻き付きや、延伸時のローラーやガイド
への毛羽やフィブリルの巻き付きや付着、断糸などを生
ずることがなく、紡糸・延伸が円滑に行えること、また
その延伸糸は製編性に優れていて編地を製造する際にガ
イドやローラーへのフィブリルや毛羽の巻き付きや付
着、断糸などのトラブルが生じないこと、製編して得ら
れた編地は筋斑がなく良好な外観を有すること、しかも
分割フィブリル化性に優れていて最小の単位にまで円滑
に且つ充分にフィブリル化して極細繊維状になること、
更に染色性にも優れていて染色斑のない深みのある良好
な色調に染色されることがわかる。そして、上記の表2
および表3の結果から、上記した種々の優れた効果は、
分割型複合繊維の横断面において、ポリアミドとポリエ
ステルとが、それらの接合部の長さと幅の比(L/W)
が1〜15となるようにサイドバイサイド型に接合して
いる場合に一層良好に発揮されることがわかる。
【0070】更に、上記表2および表3の結果から、上
記した種々の優れた特性を有する実施例1〜12の本発
明の延伸糸は、紡糸・延伸直結方式によって延伸糸を製
造した後に150℃以上のスチームジェットを0.05
〜0.8g/dの張力下に吹き付けた後に巻き取るか、
または0.25〜0.80g/dの張力下にヤーンガイ
ドで屈曲・擦過した後に巻き取ることによって円滑に製
造され得ることがわかる。
【0071】また、上記表2および表3の結果から、乾
熱収縮応力が0.14〜0.30g/dの範囲から外れ
る比較例1〜10の延伸糸の場合は、紡糸・延伸時の工
程性、製編時の工程性や編地の品質、分割フィブリル化
性および染色性のすべてが劣っているか、または紡糸・
延伸時の工程性や製編時の工程性はほぼ良好であるが編
地の品質、分割フィブリル化性および染色性の点で劣っ
ていることがわかる。 そして、そのような不良な結果は、スチームジェット処
理時のスチームの温度および/または糸張力、ヤーンガ
イドによる摩擦・擦過処理時の糸張力が上記した本発明
の範囲から外れたり、延伸糸を構成する分割型複合繊維
における上記したL/W(実際には分割フィブリル化処
理後の繊維におけるL/W)が1〜15の範囲から外れ
たりするとおき易いことがわかる。
【0072】
【発明の効果】本発明の延伸糸は、紡糸・延伸工程、製
編織工程などでは分割フィブリル化が生じずそれらの工
程を極めて円滑に行うことができ、しかも製編織後など
に分割フィブリル化処理を行うと分割型複合繊維を構成
する最小の1つの層からなる単位または多くとも2層か
らなる単位にまで完全に且つ円滑に分割されて極細繊維
化することができ、そしてそれにより得られる分割フィ
ブリル化物は柔軟性、バルキー性、緻密性に富み、しか
も筋斑、染色斑などがなく、高い品質を有しているの
で、それらの特性を活かして、各種の衣料用品、スポー
ツ用品、衛生用品(紙おむつ、生理用ナプキン等)、清
掃用品(ワイパー、ワイピングクロスなど)、フィルタ
ー、マスク、ディスポーザブル手術衣、合成皮革基布、
その他の広範な用途に有効に使用することができる。そ
して、本発明の方法による場合は上記した優れた特性を
有する延伸糸を、極めて良好な工程性で簡単に製造する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の延伸糸を構成する分割型複合繊維の横
断面構造の例を示す図である。
【図2】分割型複合繊維における非相溶性の2種の重合
体同士の接合部の長さ(L)と、該接合部を挟んで位置
する2種の重合体の厚さ(W1,W2)の測定法、および
分割型複合繊維における長径と短径の測定法を示す図で
ある。
【図3】本発明の方法を実施する際の工程図の例を示す
図である。
【図4】本発明の方法を実施するのに用いるスチームジ
ェットノズルの例を示す図である。
【図5】本発明の方法を実施するのに用いるヤーンガイ
ドの例を示す図である。
【符号の説明】
A 繊維形成性熱可塑性重合体 B 重合体Aと非相溶性の繊維形成性熱可塑性重合体 1 重合体Aと重合体Bの接合部 2 接合部1の繊維の外周部に位置する点 3 複合紡糸頭 4 冷却風吹き付け装置 5 ガイド 6 油剤付与装置(オイリングローラ等) 7 第1の加熱ローラー 8 第2の加熱ローラー 9 スチームジェット処理装置(スチームジェットノズ
ル等) 10 ヤーンガイド 11 第3のローラー 12 巻き取り装置

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2種以上の非相溶性の繊維形成性熱可塑
    性重合体が繊維横断面においてサイドバイサイド型に接
    合している分割型複合繊維からなる延伸糸であって、乾
    熱収縮応力が0.14〜0.30g/dであることを特
    徴とする延伸糸。
  2. 【請求項2】 紡糸・延伸直結法で製造されている請求
    項1の延伸糸。
  3. 【請求項3】 延伸糸を構成する分割型複合繊維が、繊
    維横断面において、非相溶性の2種の繊維形成性熱可塑
    性重合体同士の接合部の長さ(L)と、該接合部を挟ん
    で位置する2種の繊維形成性重合体の厚さ(W1,W2
    との比(L/W1,L/W2)がいずれも1〜15の範囲
    になっている分割型複合繊維である請求項1または2の
    延伸糸。
  4. 【請求項4】 下記の数式で表される完全分割率が8
    0%以上になるように分割フィブリル化される請求項1
    〜3のいずれか1項の延伸糸; 【数1】 完全分割率(%)=(D/C)×100 [式中、C=分割フィブリル化処理後の延伸糸における
    各繊維単位の総数、D=分割フィブリル化処理後の延伸
    糸において1層からなる単位または2層の結合体からな
    る単位にまで分割されている繊維単位の合計数を表
    す)。
  5. 【請求項5】 延伸糸を構成する分割型複合繊維が互い
    に非相溶性であるポリアミドとポリエステルから形成さ
    れている請求項1〜4のいずれか1項の延伸糸。
  6. 【請求項6】 2種以上の非相溶性の繊維形成性熱可塑
    性重合体を溶融紡糸して繊維横断面において各繊維形成
    性熱可塑性重合体がサイドバイサイド型に接合している
    分割型複合繊維よりなる糸条を紡糸・延伸直結方式で製
    造し、次いで糸条の張力を0.05〜0.80g/dの
    範囲に保って150℃以上のスチームジェットを吹き付
    けることを特徴とする請求項1の延伸糸の製造方法。
  7. 【請求項7】 2種以上の非相溶性の繊維形成性熱可塑
    性重合体を溶融紡糸して繊維横断面において各繊維形成
    性熱可塑性重合体がサイドバイサイド型に接合している
    分割型複合繊維よりなる糸条を紡糸・延伸直結方式で製
    造し、次いで糸条の張力を0.25〜0.80g/dの
    範囲に保ってヤーンガイドで屈曲・擦過することを特徴
    とする請求項1の延伸糸の製造方法。
  8. 【請求項8】 非相溶性の繊維形成性熱可塑性重合体と
    してポリアミドおよびポリエステルを用いる請求項6ま
    たは7の製造方法。
  9. 【請求項9】 請求項1〜5のいずれか1項の延伸糸を
    用いて製造した布帛または繊維製品を分割フィブリル化
    処理して得られる分割フィブリル化物。
JP14841295A 1995-05-24 1995-05-24 分割型複合繊維からなる延伸糸およびその製造方法 Pending JPH08325827A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP14841295A JPH08325827A (ja) 1995-05-24 1995-05-24 分割型複合繊維からなる延伸糸およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP14841295A JPH08325827A (ja) 1995-05-24 1995-05-24 分割型複合繊維からなる延伸糸およびその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH08325827A true JPH08325827A (ja) 1996-12-10

Family

ID=15452221

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP14841295A Pending JPH08325827A (ja) 1995-05-24 1995-05-24 分割型複合繊維からなる延伸糸およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH08325827A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2000053831A1 (fr) * 1999-03-08 2000-09-14 Chisso Corporation Fibre conjuguee clivee, procede de production associe, et article forme a l'aide de cette fibre
JP2008509290A (ja) * 2004-08-04 2008-03-27 チェ,ソンフン 極細糸の染色方法及びこれによって染色された極細糸で製織または編織された織物

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2000053831A1 (fr) * 1999-03-08 2000-09-14 Chisso Corporation Fibre conjuguee clivee, procede de production associe, et article forme a l'aide de cette fibre
US6410139B1 (en) 1999-03-08 2002-06-25 Chisso Corporation Split type conjugate fiber, method for producing the same and fiber formed article using the same
US6617023B2 (en) 1999-03-08 2003-09-09 Chisso Corporation Splittable multi-component fiber, method for producing it, and fibrous article comprising it
JP2008509290A (ja) * 2004-08-04 2008-03-27 チェ,ソンフン 極細糸の染色方法及びこれによって染色された極細糸で製織または編織された織物

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN101880921B (zh) 微纤维束
US4239720A (en) Fiber structures of split multicomponent fibers and process therefor
TWI709674B (zh) 芯鞘複合纖維及切割薄膜纖維(slit fibre)以及彼等纖維之製造方法
TW577945B (en) Hetero-composite-composite yarn, fabrics thereof and methods of making
JPS581221B2 (ja) シカガワヨウヘンシヨクブツノ セイゾウホウホウ
US6335092B1 (en) Composite staple fiber and process for producing the same
JPH08325827A (ja) 分割型複合繊維からなる延伸糸およびその製造方法
JP2005133250A (ja) 芯鞘複合繊維
JP3583248B2 (ja) ポリエステルとポリアミドからなる分割型複合繊維およびその製造方法
JP3020715B2 (ja) 新規な極細繊維用複合繊維
JP4485824B2 (ja) 分割型複合繊維及び繊維構造物
JP2001214337A (ja) 極細繊維からなるスライバー
JPS62110916A (ja) 複合繊維
JPH06248519A (ja) 微細に分割可能な複合繊維及びフィブリル化した繊維からなる繊維集合物
JPH10158967A (ja) 不織布およびその製造方法
JPH06341018A (ja) 複合繊維およびそれからなる不織布
JP3472944B2 (ja) 高反撥性ポリエステル複合仮撚加工糸の製造方法
JP2591715B2 (ja) 異収縮混繊ポリエステル糸の製造方法
JPH1181031A (ja) 芯鞘型複合繊維
KR100313363B1 (ko) 분할성이 우수한 다층편평형 복합섬유 및 그 방사구금 장치
KR950000722B1 (ko) 추출형 복합섬유
JPH11100764A (ja) 不織布およびその製造方法
JP2000129538A (ja) 分割型複合繊維およびこれからなる不織布
JP2002088580A (ja) 分割繊維及びこれを用いた繊維成形体
JP3574543B2 (ja) ポリエステル太細糸の製造方法