JPH08311590A - 低温ろう付用Ａｌ合金フィン材 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】 0.005wt％を越え 0.3wt％以下のＳｉ、 1.5
wt％を越え 2.5wt％以下のＦｅを含有し、 0.1wt％を越
え 2.0wt％以下のＮｉ、 0.1wt％を越え 2.0wt％以下の
Ｃｏのうち１種または２種を含有し、残部アルミニウム
および不可避的不純物とからなる低温ろう付用Ａｌ合金
フィン材。 【効果】 本発明によれば高強度で熱伝導性に優れたＡ
ｌ合金フィン材が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、高熱伝導アルミニウム
フィン材に関するものであり、さらに詳しくは、特に低
温ろう付法によって製造される熱交換器のラジエータ
ー、ヒーター、コンデンサー等のフィンとして使用され
るものである。

【０００２】

【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】自動車
用熱交換器の多くはＡｌおよびＡｌ合金が使用されてお
りろう付法により製造されている。通常ろう付はＡｌ−
Ｓｉ系のろう材が用いられ、そのためろう付は 600℃程
度の高温で行われる。ラジエーター等の熱交換器は例え
ば図１に示すように複数本の偏平チューブ（１）の間に
コルゲート状に加工した薄肉フィン（２）を一体に形成
し、該偏平チューブ（１）の両端はヘッダー（３）とタ
ンク（４）とで構成される空間にそれぞれ開口させて、
一方のタンク側の空間から偏平チューブ（１）内を通し
て高温冷媒を他方のタンク（４）側の空間に送り、チュ
ーブ（１）およびフィン（２）の部分で熱交換して低温
になった冷媒を再び循環させるものである。

【０００３】ところで、近年、熱交換器は軽量・小型化
の方向にあり、そのためには熱交換器の熱効率の向上が
必要であり、材料の熱伝導性の向上が望まれている。特
に、フィン材の熱伝導性の向上が検討されており、合金
成分を純アルミニウムに近づけた合金のフィン材が熱伝
導フィンとして提案されている。しかしながら、フィン
を薄肉化した場合、フィンの強度が十分でないと熱交換
器の組付け時にフィンが潰れたり、熱交換器として使用
時に破壊してしまうという問題がある。上記純アルミニ
ウム系合金フィンの場合、強度が不足してしまう欠点を
有しており、高強度で熱伝導性を向上させたフィン材は
いまだ開発されていない。

【０００４】これは、高強度化にはＭｎ等の合金元素の
添加が有効であるが、熱交換器を製造する工程に 600℃
付近まで加熱されるブレージングがあるため、ブレージ
ング加熱中に、添加した合金元素が再固溶して熱伝導性
の向上を阻害する現象が起るためである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明はこれに鑑み、ろ
う付後の強度と熱伝導性が高いフィン材を開発するに
は、Ｓｉ量を適正化して熱伝導性を向上させ、多量のＦ
ｅ量を添加し、さらに熱伝導性を低下させることなく強
度の向上効果が大きい合金元素を添加すれば問題が解決
できると考え、本発明に到った。

【０００６】すなわち、本発明は、ろう付後の熱伝導性
と強度に優れた低温ろう付用Ａｌ合金フィン材について
なされたものであり、その１つは 0.005wt％を越え 0.3
wt％以下のＳｉ、 1.5wt％を越え 2.5wt％以下のＦｅを
含有し、 0.1wt％を越え 2.0wt％以下のＮｉ、 0.1wt％
を越え 2.0wt％以下のＣｏのうち１種または２種を含有
し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるＡ
ｌ合金フィン材である。

【０００７】また本発明の他の１つは、 0.005wt％を越
え 0.3wt％以下のＳｉ、 1.5wt％越え 2.5wt％以下のＦ
ｅ、0.01wt％を越え 0.2wt％以下のＺｒを含有し、 0.1
wt％を越え 2.0wt％以下のＮｉ、 0.1wt％を越え 2.0wt
％以下のＣｏのうち１種または２種を含有し、残部アル
ミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合
金フィン材である。

【０００８】また本発明の他の１つは、 0.005wt％を越
え 0.3wt％以下のＳｉ、 1.5wt％を越え 2.5wt％以下の
Ｆｅを含有し、 0.1wt％を越え 2.0wt％以下のＮｉ、
0.1wt％を越え 2.0wt％以下のＣｏのうち１種または２
種を含有し、さらに 2.0wt％以下のＺｎ、 0.3wt％以下
のＩｎ、 0.3wt％以下のＳｎのうち１種または２種以上
を含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物から
なるアルミニウム合金フィン材である。

【０００９】さらに本発明の他の１つは、 0.005wt％を
越え 0.3wt％以下のＳｉ、 1.5wt％を越え 2.5wt％以下
のＦｅ、0.01wt％を越え 0.2wt％以下のＺｒを含有し、
0.1wt％を越え 2.0wt％以下のＮｉ、 0.1wt％を越え
2.0wt％以下のＣｏのうち１種または２種を含有し、さ
らに 2.0wt％以下のＺｎ、 0.3wt％以下のＩｎ、 0.3wt
％以下のＳｎのうち１種または２種以上を含有し、残部
アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウ
ム合金フィン材である。

【００１０】

【作用】本発明フィン材の添加元素の役割および合金組
成の限定理由について説明する。Ｓｉは、その添加によ
り強度を向上させる。Ｓｉそのものが固溶硬化により強
度を向上させるのに加え、特に、ＦｅやＮｉおよびＣｏ
と共存する場合、ＦｅやＮｉおよびＣｏの析出を促進す
る作用を有するため、分散強化に寄与する金属間化合物
を増やし、強度を向上させる。Ｓｉが 0.005wt％以下の
場合上記効果が十分でなく、 0.3wt％を越えるとＳｉの
固溶量が多くなり熱伝導性が低下する。さらに、Ｓｉは
その量が少ないほどフィンの電位を卑にし、フィンの犠
牲効果を高める働きを有する。したがって、Ｓｉは 0.0
05wt％を越え 0.3wt％以下とするが、特に0.05〜 0.2wt
％で安定した特性を示す。

【００１１】Ｆｅは合金中に一定量固溶してマトリック
スを硬化し、残りは金属間化合物として存在する。前者
は強度を向上させるが、熱伝導性を大きく低下させる。
後者は、分散硬化により強度を向上させる。後者による
強度向上効果は、Ｆｅ添加量が少ないところでも見られ
るが、 1.5wt％以下では本発明に見られるほど顕著では
ない。また、 2.5wt％を越えると成形性が低下し、フィ
ン材の製造が難しくなる。

【００１２】なお上記の通り熱交換器の軽量化の為に、
フィン材のより一層の強度向上が求められているが、従
来はＦｅ量を 1.5wt％を越える程度に多くすると、結晶
粒が微細になりすぎる為、ろう付加熱時にろうがフィン
材中に拡散し、フィン座屈の原因となるという問題があ
った。しかし本発明ではこのようにＦｅ量を多くして、
結晶粒が微細になっても、ろう付温度を低くして 585℃
以下とするいわゆる低温ろう付法を用いるのでろう付時
にろうがフィン材中に拡散する問題が解決され、且つ強
度向上が可能であることを見いだしたものである。

【００１３】Ｎｉは、熱伝導性を低下することなく強度
を向上させる効果を有することが判明した、本発明にお
ける重要な添加元素である。すなわち、Ｎｉは固溶硬化
により強度を向上させるが、同時にＮｉの固溶量に相当
する分だけＦｅの固溶量を減じさせる作用を有するので
ある。ＦｅとＮｉでは固溶した際に、強度の向上に対す
る効果はほぼ同じであるが、熱伝導性の低下作用はＮｉ
の方が格段に少ないのである。そのため、上記Ｆｅ量を
含有した合金にＮｉを添加すると、熱伝導性が低下する
ことなく強度が向上するのである。

【００１４】さらに、ＮｉはＡｌ−Ｆｅ系の金属間化合
物を微細に分布させる効果を有する。通常Ａｌ−Ｆｅ系
の金属間化合物は鋳造時に生じ、それが圧延中に分断さ
れて微細に分布するが、Ａｌ−Ｎｉ系の金属間化合物も
鋳造時に生じるため、Ｎｉを添加した合金では、Ａｌ−
Ｆｅ系の金属間化合物はＡｌ−Ｎｉ系の金属間化合物に
分断されながら晶出するので、圧延時に微細に分断され
やすいのである。このようにＡｌ−Ｆｅ系の金属間化合
物が微細になると強度が向上し、さらにろう付中の再結
晶の核発生サイトが減じるために再結晶粒が粗大になり
ろう拡散が生じにくくなる。

【００１５】上記の効果を得るために、Ｎｉの下限は
0.1wt％とする。また、 2.0wt％を越えて添加した場
合、成形性が低下してフィンのコルゲート成形ができに
くくなる。

【００１６】ＣｏはＮｉと同様な働きを有する。しか
し、ＣｏはＮｉと比較して、熱伝導性が若干低下し、ま
たＡｌ−Ｆｅ系の化合物を分断する効果が弱い。本発明
では、Ｎｉの代わりにＣｏを用いたり、ＮｉとＣｏの同
時添加を行うことは可能であるが、Ｎｉのみの添加の方
が効果が大きい。Ｃｏ添加量の下限は 0.1wt％である
が、これは単独添加の場合で、Ｎｉと複合添加する場合
は、それ以下でも添加可能である。

【００１７】本発明フィン材では、さらに0.01wt％を越
え 0.2wt％以下のＺｒを添加する場合がある。Ｚｒはろ
う付時に生じる再結晶粒を粗大化し、フィンの垂下性な
らびにフィンへのろうの拡散を防止する働きを有する。
しかしＺｒの添加量が0.01wt％以下ではその働きが十分
でない。ところが発明者らが調べたところ、Ｚｒは強度
を向上させる働きをほとんど有さず、熱伝導性を低下さ
せる元素であるのでその添加の上限は 0.2wt％と定め
た。

【００１８】本発明フィン材ではさらに 2.0wt％以下の
Ｚｎ、 0.3wt％以下のＩｎ、 0.3wt％以下のＳｎのうち
１種または２種以上を添加することがある。これらは、
フィン材に犠牲陽極効果を付与するために添加されるも
のであり、それぞれ、上記の量を越えて添加した場合、
熱伝導性が低下する。

【００１９】さて、本発明フィン材合金の不可避的不純
物および上記以外の理由で添加される元素であるが、鋳
塊組織の微細化のために添加されるＴｉやＢ等があり、
これらの元素はそれぞれ0.03wt％以下であれば添加され
ていても差し支えない。また、Ｍｎ、Ｍｇ、Ｎａ、Ｃ
ｄ、Ｐｂ、Ｂｉ、Ｃａ、Ｌｉ、Ｃｒ、Ｋ、Ｖ等の元素が
強度向上や鋳塊割れ防止や成形性向上等の理由で添加さ
れる場合、それぞれ0.03wt％以下を必須条件とする。こ
れらの元素は、添加した場合いずれも熱伝導性を低下さ
せるためである。さらにＣｕは 0.2wt％まで含有可能で
ある。Ｃｕの含有による熱伝導性の低下はＭｎ等の元素
と比較して小さいが、多く含有されるとフィンの犠牲効
果を減じる。

【００２０】以上が本発明の合金組成であるが、本発明
フィンはベア材として用いられることが可能であり、ま
た、ブレージングシートフィンの芯材として用いること
も可能である。この場合のろう材は、特開平7-24593 号
公報に示されているＡｌ−７wt％を越え12wt％以下のＳ
ｉ− 0.5wt％を越え８wt％以下のＣｕ− 0.5wt％を越え
６wt％以下のＺｎ合金、又は特開平7-96385 号公報に示
されているＡｌ−７wt％を越え12wt％以下のＳｉ− 0.1
wt％を越え８wt％以下のＣｕ− 0.5wt％を越え６wt％以
下のＺｎ−0.05wt％を越え 0.5wt％以下のＦｅ合金等 5
85℃以下でろう付可能なろう材を使用すればよい。

【００２１】本発明のフィンを用いる熱交換器は、自動
車用のラジエーター、コンデンサー、エバポレーター、
オイルクーラー等を挙げることができるが、これに限定
するものではない。

【００２２】また、本発明のフィンをろう付する方法は
従来より行われている非腐食性フラックスろう付、フラ
ックスろう付、真空ろう付等、いずれでも可能である。

【００２３】本発明のフィンの製造は、半連続鋳造によ
り鋳塊を製造し、熱延圧延、冷間圧延・焼鈍の工程で製
造可能であり、また、連続鋳造圧延、冷間圧延・焼鈍の
工程でも製造可能である。

【００２４】

【実施例】以下に実施例により本発明を具体的に説明す
る。表１に示す組成のアルミニウム合金フィン材（板厚
60μｍ、Ｈ１４調質）を常法により作製した。フィン材
のろう付加熱後の強度と導電率を測定し、また、５％Ｎ
ａＣｌ溶液中で飽和カロメル電極を用い自然電位を測定
した。ろう付加熱の条件は窒素ガス中で 580℃×５分で
行った。結果を表２に示す。ここで、導電率は熱伝導性
の指標であり、フィンの導電率が向上するとそれに伴な
って熱交換器の熱効率が向上する。

【００２５】

【表１】

【００２６】

【表２】

【００２７】表２によれば従来例のフィン材と比較し、
本発明フィン材は自然電位を確保しながら、引張強さと
導電率に優れた値を示していることが判る。

【００２８】

【発明の効果】以上のように本発明のフィン材は高強度
で熱伝導性に優れるので特に熱交換器に好適に用いられ
る等、工業上で顕著な効果を奏するものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】ラジエーターを示す一部断面の斜視図である。

【符号の説明】

１ 偏平チューブ ２ フィン ３ ヘッダー ４ タンク

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 0.005wt％を越え 0.3wt％以下のＳｉ、
   1.5wt％を越え 2.5wt％以下のＦｅを含有し、 0.1wt％
   を越え 2.0wt％以下のＮｉ、 0.1wt％を越え2.0wt％以
   下のＣｏのうち１種または２種を含有し、残部アルミニ
   ウムおよび不可避的不純物からなる低温ろう付用Ａｌ合
   金フィン材。
2. 【請求項２】 0.005wt％を越え 0.3wt％以下のＳｉ、
   1.5wt％を越え 2.5wt％以下のＦｅ、0.01wt％を越え
   0.2wt％以下のＺｒを含有し、 0.1wt％を越え2.0wt％以
   下のＮｉ、 0.1wt％を越え 2.0wt％以下のＣｏのうち１
   種または２種を含有し、残部アルミニウムおよび不可避
   的不純物からなる低温ろう付用Ａｌ合金フィン材。
3. 【請求項３】 0.005wt％を越え 0.3wt％以下のＳｉ、
   1.5wt％を越え 2.5wt％以下のＦｅを含有し、 0.1wt％
   を越え 2.0wt％以下のＮｉ、 0.1wt％を越え2.0wt％以
   下のＣｏのうち１種または２種を含有し、さらに 2.0wt
   ％以下のＺｎ、 0.3wt％以下のＩｎ、 0.3wt％以下のＳ
   ｎのうち１種または２種以上を含有し、残部アルミニウ
   ムおよび不可避的不純物からなる低温ろう付用Ａｌ合金
   フィン材。
4. 【請求項４】 0.005wt％を越え 0.3wt％以下のＳｉ、
   1.5wt％を越え 2.5wt％以下のＦｅ、0.01wt％を越え
   0.2wt％以下のＺｒを含有し、 0.1wt％を越え2.0wt％以
   下のＮｉ、 0.1wt％を越え 2.0wt％以下のＣｏのうち１
   種または２種を含有し、さらに 2.0wt％以下のＺｎ、
   0.3wt％以下のＩｎ、 0.3wt％以下のＳｎのうち１種ま
   たは２種以上を含有し、残部アルミニウムおよび不可避
   的不純物からなる低温ろう付用Ａｌ合金フィン材。