JPH08302009A - ポリコハク酸イミドの処理方法 - Google Patents

ポリコハク酸イミドの処理方法

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JPH08302009A
JPH08302009A JP7106348A JP10634895A JPH08302009A JP H08302009 A JPH08302009 A JP H08302009A JP 7106348 A JP7106348 A JP 7106348A JP 10634895 A JP10634895 A JP 10634895A JP H08302009 A JPH08302009 A JP H08302009A
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acid
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義一 藤井
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 ポリコハク酸イミドを、有機酸で処理する方
法。ポリコハク酸イミド100gと、有機酸である98重量
%ギ酸 100gとを窒素雰囲気下で90分間攪拌することに
より、該ポリコハク酸イミドを処理した。このポリコハ
ク酸イミドを48重量%水酸化ナトリウム水溶液を用いて
加水分解することにより、重量平均分子量7,900 のポリ
アスパラギン酸ナトリウムを得た。上記ポリアスパラギ
ン酸ナトリウムのGPCのチャートを、図1に実線で示
す。 【効果】 本発明の方法を用いてポリコハク酸イミドを
処理することにより、該ポリコハク酸イミドを原料とし
て用い、目的に応じて変性させてなるポリアスパラギン
酸誘導体の生分解性を高めることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリコハク酸イミドを
処理する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ポリアスパラギン酸誘導体等の原
料であるポリコハク酸イミドの製造方法としては、以下
に示すような種々の方法が知られている。
【0003】即ち、Bull.Chem.Soc.Jpn.,51(5),1555 −
1556(1978)、米国特許第 5,057,597号、米国特許第 5,2
19,986号、米国特許第 5,221,733号等には、単に、アス
パラギン酸を固相で熱重合することにより、ポリコハク
酸イミドを得る方法が開示されている。
【0004】また、国際公開特許公報(国際公開番号)
WO93/23452、米国特許第 5,296,578号、特開平6-298930
号公報等には、マレイン酸アンモニウムやマレアミド酸
を熱重合することにより、ポリコハク酸イミドを得る方
法が開示されている。
【0005】さらに、特開平6-211982号公報、特開平6-
211983号公報等には、ポリアルキレングリコール中で、
アスパラギン酸やマレアミド酸を熱重合することによ
り、ポリコハク酸イミドを得る方法が開示されている。
【0006】特開平6-256504号公報には、水等の溶媒中
において、150 ℃〜300 ℃でアスパラギン酸やマレイン
酸アンモニウムを重合させることにより、ポリコハク酸
イミドを得る方法が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、本願発
明者等の検討によれば、アスパラギン酸やマレイン酸ア
ンモニウムを固相またはポリアルキレングリコール中で
熱重合して、ポリコハク酸イミドを得る場合、該ポリコ
ハク酸イミドから得られるポリアスパラギン酸誘導体
は、充分な生分解性を示すとは言い難い。また、加水分
解により得られるポリアスパラギン酸およびその塩は、
水溶性であるため、回収が困難である。それ故、上記ポ
リアスパラギン酸およびその塩が生分解性を充分に備え
ていない場合、該ポリアスパラギン酸およびその塩が水
系に蓄積される虞れがあるという問題点を有している。
【0008】また、アスパラギン酸やマレアミド酸を水
中で重合させてポリコハク酸イミドを得る場合、重合と
平行して加水分解が起こるので、低分子量のポリコハク
酸イミドとなってしまう。つまり、低分子量のポリアス
パラギン酸誘導体しか得ることができないという問題点
を有している。そこで、生分解性に優れたポリアスパラ
ギン酸誘導体を得る方法が求められている。
【0009】本発明の目的は、前述した問題点を解決
し、生分解性に優れたポリアスパラギン酸誘導体を製造
する方法、即ち、ポリアスパラギン酸誘導体の原料であ
るポリコハク酸イミドを処理する方法を提供することに
ある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本願発明者等は、生分解
性に優れたポリアスパラギン酸誘導体を製造する方法に
ついて鋭意検討した結果、上記従来の問題点を解決する
ことができるポリコハク酸イミドの処理方法を見い出し
て、本発明を完成させるに至った。
【0011】即ち、請求項1記載の発明のポリコハク酸
イミドの処理方法は、上記の課題を解決するために、ポ
リコハク酸イミドを有機酸で処理することを特徴として
いる。
【0012】請求項2記載の発明のポリコハク酸イミド
の処理方法は、上記の課題を解決するために、ポリコハ
ク酸イミドを酸アミドで加熱処理することを特徴として
いる。
【0013】請求項3記載の発明のポリコハク酸イミド
の処理方法は、上記の課題を解決するために、ポリコハ
ク酸イミドを、pH6以下の水性媒体中において、50℃
以上、150 ℃未満の温度で加熱処理することを特徴とし
ている。
【0014】請求項4記載の発明のポリコハク酸イミド
の処理方法は、上記の課題を解決するために、ポリコハ
ク酸イミドを、ヒドロキシル価1100mgKOH/g以上の
アルコール存在下で処理することを特徴としている。
【0015】以下に本発明を詳しく説明する。本発明に
おいて処理されるポリコハク酸イミドを製造する方法
は、特に限定されるものではなく、従来公知の種々の方
法を用いることができる。このうち、アスパラギン酸を
熱重合させる方法、あるいは、マレイン酸、フマル酸、
およびリンゴ酸からなる群より選ばれる少なくとも1種
の酸のアンモニウム塩および/またはアミドを熱重合さ
せる方法が、本発明の処理方法に対して好適なポリコハ
ク酸イミドを得ることができるので、好ましい。さら
に、より生分解性に優れたポリアスパラギン酸誘導体を
得るためには、アスパラギン酸を原料とするポリコハク
酸イミドを用いることが、特に好ましい。尚、該ポリコ
ハク酸イミドの原料であるアスパラギン酸の光学活性
は、特に限定されるものではなく、L体、D体、または
DL体の何れでもよい。
【0016】また、上記のアスパラギン酸やマレイン
酸、フマル酸、リンゴ酸等を、該化合物と共重合可能な
別の化合物と共重合させることによって、相当するポリ
コハク酸イミドを得てもよい。共重合可能な化合物とし
ては、具体的には、例えば、グルタミン酸、アラニン、
アルギニン、シスチン、グリシン、ヒスチジン、イソロ
イシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラ
ニン、プロリン、セリン、スレオニン、バリン、トリプ
トファン等のアミノ酸、あるいはアミド酸等が挙げられ
るが、特に限定されるものではない。即ち、本発明にお
いて、ポリコハク酸イミドとは、コハク酸イミド構造を
有する重合体を示す。
【0017】さらに、ポリコハク酸イミドを、後述する
ように、ヒドロキシル価1100mgKOH/g以上のアルコ
ール存在下で処理する場合には、前記例示の化合物を該
アルコール存在下で重合させることによって、ポリコハ
ク酸イミドを得ることもできる。
【0018】また、該ポリコハク酸イミドの製造条件、
即ち、反応温度や反応時間等の反応条件は、特に限定さ
れるものではなく、上記反応が完了するように、適宜設
定すればよい。
【0019】本発明によれば、上記ポリコハク酸イミド
を有機酸で処理することにより、生分解性に優れ、か
つ、高分子量のポリアスパラギン酸誘導体を得ることが
できる。
【0020】上記有機酸は、ポリコハク酸イミドを製造
する際に原料として用いるアスパラギン酸や、マレイン
酸、フマル酸、またはリンゴ酸等の酸のアンモウニウム
塩および/またはアミド酸、ポリアスパラギン酸以外の
酸であり、処理温度で液体である酸であれば、特に限定
されるものではない。処理温度で液体である有機酸は、
該コハク酸イミドを分散、あるいは溶解させることがで
きるので、該コハク酸イミドを均一に処理することがで
きる。上記有機酸の中でも、ギ酸、酢酸、プロピオン
酸、グリコール酸、および乳酸が、該コハク酸イミドを
均一に、かつ、効率よく処理することができるので、よ
り好ましい。さらに、上記例示の有機酸の中でも、ギ酸
が、ポリコハク酸イミドを溶解させることができ、該コ
ハク酸イミドを均一に、かつ、さらに効率よく処理する
ことができるので、特に好ましい。尚、これら有機酸
は、1種類のみを用いてもよいし、あるいは、2種類以
上を適宜混合して用いてもよい。また、上記有機酸は、
少量であれば、水等を含んでいても、特に精製する必要
はなく、市販品をそのまま用いてもよい。
【0021】ポリコハク酸イミドに対する有機酸の添加
量は、特に限定されるものではないが、ポリコハク酸イ
ミド1重量部に対して、有機酸0.01重量部〜20重量部の
範囲内が好ましく、0.05重量部〜10重量部の範囲内が、
特に好ましい。尚、上記有機酸の添加量が0.01重量部よ
り少なければ、ポリコハク酸イミドを効率よく処理する
ことができないため、好ましくない。一方、上記有機酸
の添加量を20重量部より多くしても、さらなる効果は認
められず、有機酸が無駄となるため、好ましくない。
【0022】また、該ポリコハク酸イミドを上記有機酸
で処理する場合の処理温度は、特に限定されるものでは
ないが、50℃以上が好適であり、80℃〜250 ℃の範囲内
がより好ましい。処理温度が50℃より低ければ、得られ
るポリアスパラギン酸誘導体が充分な生分解性を備える
ことができない虞れがあり、また、処理時間が長くな
り、生産性が低下する虞れがある。一方、処理温度が25
0 ℃より高ければ、ポリコハク酸イミド並びに添加した
有機酸の分解、着色が起こり易くなり、この結果、製品
として十分な性能および品質を備えたポリアスパラギン
酸誘導体が得られない虞れがある。
【0023】ポリコハク酸イミドを有機酸で処理する場
合の処理時間は、処理温度に応じて適宜設定すればよ
く、特に限定されるものではないが、通常1分間〜12時
間の範囲内である。
【0024】上記処理は、溶媒を用いず、有機酸のみで
該ポリコハク酸イミドを処理する方法が好ましいが、溶
媒を用いて処理することもできる。溶媒は、上記処理に
おいて、不活性な化合物であれば、特に限定されるもの
ではない。
【0025】ポリコハク酸イミドを有機酸で処理する際
の処理系の圧力は、特に限定されるものではなく、例え
ば、用いる有機酸の沸点が低い場合には、適宜、加圧し
てもよい。尚、常圧あるいは加圧下で処理を行う際に
は、例えば、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが
好ましい。不活性ガスを用いずに処理を行う場合には、
ポリコハク酸イミド並びに添加した有機酸が、酸化によ
って、分解、着色する虞れがある。
【0026】ポリコハク酸イミドを有機酸から分離する
必要がある場合には、水洗、あるいは加熱、および/ま
たは減圧下で乾燥させることによって、容易に該ポリコ
ハク酸イミドを有機酸から分離することができる。ま
た、該ポリコハク酸イミドは、有機酸から分離すること
なしに用いることもできる。
【0027】本発明においては、上記ポリコハク酸イミ
ドの処理方法とは異なる処理方法として、ポリコハク酸
イミドを酸アミドで加熱処理する方法を採用することが
できる。
【0028】上記酸アミドは、ポリコハク酸イミドを製
造する際に原料として用いるマレイン酸、フマル酸、ま
たはリンゴ酸のアミド以外の酸アミドであり、処理温度
で液体である酸アミドであれば、特に限定されるもので
はない。処理温度で液体である酸アミドは、該コハク酸
イミドを分散、あるいは溶解させることができるので、
該コハク酸イミドを均一に処理することができる。上記
酸アミドの中でも、N,N −ジメチルホルムアミド、N,N
−ジメチルアセトアミド、およびN−メチル−2−ピロ
リドンが、ポリコハク酸イミドを溶解させることができ
るので、より好ましい。尚、これら酸アミドは、1種類
のみを用いてもよいし、あるいは、2種類以上を適宜混
合して用いてもよい。また、上記酸アミドは、少量であ
れば、水等を含んでいても、特に精製する必要はなく、
市販品をそのまま用いてもよい。
【0029】ポリコハク酸イミドに対する酸アミドの添
加量は、特に限定されるものではないが、ポリコハク酸
イミド1重量部に対して、酸アミド0.01重量部〜20重量
部の範囲内が好ましく、0.05重量部〜10重量部の範囲内
が、特に好ましい。尚、上記酸アミドの添加量が0.01重
量部より少なければ、ポリコハク酸イミドを効率よく処
理することができないため、好ましくない。一方、上記
酸アミドの添加量を20重量部より多くしても、さらなる
効果は認められず、酸アミドが無駄となるため、好まし
くない。
【0030】また、該ポリコハク酸イミドを上記酸アミ
ドで処理する場合の処理温度は、50℃以上が好適であ
り、80℃〜250 ℃の範囲内がより好ましい。処理温度が
50℃より低ければ、得られるポリアスパラギン酸誘導体
が充分な生分解性を備えることができず、また、処理時
間が長くなり、生産性が低下するため、好ましくない。
一方、処理温度が250 ℃より高ければ、ポリコハク酸イ
ミド並びに添加した酸アミドの分解、着色が起こり、こ
の結果、製品として十分な性能および品質を備えたポリ
アスパラギン酸誘導体が得られないので、好ましくな
い。
【0031】ポリコハク酸イミドを酸アミドで処理する
場合の処理時間は、処理温度に応じて適宜設定すればよ
く、特に限定されるものではないが、通常1分間〜12時
間の範囲内である。
【0032】また、該ポリコハク酸イミドを上記酸アミ
ドで処理する場合には、上記処理温度と処理時間との関
係が、 (処理温度(℃))2 ×処理時間(hr)≧6,000 であれば、さらに生分解性に優れ、かつ、より一層高分
子量のポリアスパラギン酸誘導体を得ることができる。
つまり、上記処理温度並びに処理時間は、上記関係式を
満たすように、適宜組み合わせればよい。上記関係式を
満たす方法(処理温度と処理時間との組み合わせ)とし
ては、具体的には、例えば、100 ℃で36分間以上処理
する方法、150 ℃で16分間以上処理する方法、80℃
で1時間以上処理する方法等が挙げられるが、特に限定
されるものではない。
【0033】上記処理は、溶媒を用いず、酸アミドのみ
で該ポリコハク酸イミドを処理する方法が好ましいが、
溶媒を用いて処理することもできる。溶媒としては、上
記処理において、不活性な化合物であれば、特に限定さ
れるものではない。
【0034】ポリコハク酸イミドを酸アミドで処理する
際の処理系の圧力は、特に限定されるものではなく、例
えば、用いる酸アミドの沸点が低い場合には、適宜、加
圧してもよい。尚、常圧あるいは加圧下で処理を行う際
には、酸化による分解、着色を防ぐために、例えば、窒
素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0035】ポリコハク酸イミドを酸アミドから分離す
る必要がある場合には、水洗、あるいは加熱、および/
または減圧下で乾燥させることによって、容易に酸アミ
ドから分離することができる。また、該ポリコハク酸イ
ミドは、酸アミドから分離することなしに用いることも
できる。
【0036】本発明においては、上記ポリコハク酸イミ
ドの処理方法とはさらに異なる処理方法として、ポリコ
ハク酸イミドをpH6以下の水性媒体中において、50℃
以上、150 ℃未満の温度で加熱処理する方法を採用する
ことができる。
【0037】上記水性媒体としては、特に限定されるも
のではなく、水、あるいは、水と水溶性の有機溶媒との
混合溶媒を用いることができる。これら水性媒体の中で
も、水単独が、最も好ましい。尚、上記有機溶媒は、水
溶性の有機溶媒であれば、特に限定されるものではな
い。
【0038】ポリコハク酸イミドを水性媒体中で処理す
る際の該水性媒体のpHは6以下が好ましく、4以下が
より好ましい。pH6を越えて処理すると、ポリコハク
酸イミドが加水分解を受け、低分子量化するので、好ま
しくない。
【0039】水性媒体のpHは、処理温度並びに処理時
間により適宜変化するが、酸またはアルカリを添加する
ことによって調節することができる。添加する酸または
アルカリは、特に限定されるものではなく、酸として
は、鉱酸でも有機酸でもよく、アルカリとしては、金属
水酸化物でも有機アミンでもよい。さらに、必要に応じ
て、具体的には、例えば、リン酸二水素塩等の緩衝作用
のある酸またはアルカリを添加してもよい。
【0040】水性媒体中で、該ポリコハク酸イミドを処
理する温度は、50℃以上、150 ℃未満である。処理温度
が50℃より低いと、得られるポリアスパラギン酸誘導体
が充分な生分解性を備えることができず、また、処理時
間が長くなり、生産性が低下するため、好ましくない。
一方、処理温度が150 ℃以上であれば、ポリコハク酸イ
ミドが加水分解を受け、低分子量化するので、好ましく
ない。
【0041】ポリコハク酸イミドを水性媒体中で処理す
る場合の処理時間は、処理温度に応じて適宜設定すれば
よく、特に限定されるものではないが、通常1分間〜12
時間の範囲内である。
【0042】また、該ポリコハク酸イミドを水性媒体中
で処理する場合には、上記処理温度と処理時間との関係
が、 (処理温度(℃))2 ×処理時間(hr)≧20,000 であれば、生分解性に優れ、かつ、より一層高分子量の
ポリアスパラギン酸誘導体を得ることができる。また、 (処理温度(℃))2 ×処理時間(hr)≧50,000 であれば、生分解性に優れ、かつ、より一層高分子量の
ポリアスパラギン酸誘導体をさらに効率よく得ることが
できるので、好ましい。つまり、上記処理温度並びに処
理時間は、上記関係式を満たすように、適宜組み合わせ
ればよい。上記関係式を満たす方法(処理温度と処理時
間との組み合わせ)としては、具体的には、例えば、
120 ℃で1時間24分間以上処理する方法、100 ℃で2
時間以上処理する方法等が挙げられるが、特に限定され
るものではない。
【0043】また、上記水性媒体の使用量は、特に限定
されるものではないが、ポリコハク酸イミド1重量部に
対して、水性媒体0.01重量部〜20重量部の範囲内が好ま
しく、0.05重量部〜10重量部の範囲内が、特に好まし
い。尚、上記水性媒体の使用量が0.01重量部より少なけ
れば、ポリコハク酸イミドを効率よく処理することがで
きないため、好ましくない。一方、上記水性媒体の使用
量を、20重量部より多くしても、さらなる効果は認めら
れないため、好ましくない。
【0044】ポリコハク酸イミドを水性媒体中で処理す
る際の処理系の圧力は、処理温度によって適宜変更すれ
ばよく、特に限定されるものではないが、常圧または加
圧下で処理すればよい。
【0045】尚、水中で処理したポリコハク酸イミド
は、例えば、ポリアスパラギン酸誘導体としてのポリア
スパラギン酸塩を製造する際には、水から分離する必要
はない。つまり、上記ポリコハク酸イミドを、そのまま
水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物を用いて加
水分解することによって、ポリアスパラギン酸塩を容易
に製造することができる。
【0046】また、本発明においては、上記ポリコハク
酸イミドの処理方法とはさらに異なる処理方法として、
ポリコハク酸イミドを、ヒドロキシル価1100mgKOH/
g以上のアルコール存在下で処理する方法を採用するこ
とができる。尚、ここで言うヒドロキシル価とは、アル
コール1g中の水酸基と等モルの水酸化カリウムのmg数
で表した値であり、アルコールの水酸基含有量を示す。
【0047】上記のアルコールは、ヒドロキシル価が11
00mgKOH/g以上のアルコールであれば、特に限定さ
れるものではない。ヒドロキシル価が1100mgKOH/g
以上のアルコールの中でも、エチレングリコール、プロ
ピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメ
チレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリ
ン、およびトリエタノールアミンが、ポリコハク酸イミ
ドを溶解させることができ、該コハク酸イミドを均一
に、かつ、効率よく処理することができるので、好まし
い。尚、上記アルコールが2価以上の多価アルコールで
ある場合には、少なくとも1つのヒドロキシル基を有し
ていればよく、従って、ヒドロキシル基の一部がアルキ
ル基、アシル基またはカルボキシル基等の構造を有して
いてもよい。但し、ヒドロキシル基がアシル基によって
変性されている場合には、該アルコールは、全てのヒド
ロキシル基が変性されていてもよい。これらアルコール
は、1種類のみを用いてもよいし、あるいは、2種類以
上を適宜混合して用いてもよい。
【0048】ヒドロキシル価が1100mgKOH/g以上の
アルコールは、ポリコハク酸イミドの溶解性が高く、均
一に、かつ、効率よく処理することができるので、生分
解性に優れ、かつ、高分子量のポリアスパラギン酸誘導
体を得ることができる。一方、ヒドロキシル価が1100mg
KOH/g未満のアルコールを用いてポリコハク酸イミ
ドを処理した場合、該ポリコハク酸イミドの溶解性が低
く、充分な処理を行うことができず、従って、得られる
ポリアスパラギン酸誘導体は、充分な生分解性を備える
ことができない。
【0049】尚、ポリコハク酸イミドを、上記のアルコ
ールの存在下で処理する際には、アルコールのみでポリ
コハク酸イミドを処理する方法が好ましいが、他の溶媒
を一緒に用いてもよい。他の溶媒を一緒に用いる場合に
は、混合溶媒としてのヒドロキシル値が1100mgKOH/
g未満となってもよい。溶媒としては、上記処理におい
て、不活性な化合物であれば、特に限定されるものでは
ない。
【0050】アルコール存在下で該ポリコハク酸イミド
を処理する温度は、特に限定されるものではないが、50
℃以上が好適であり、80℃〜250 ℃の範囲内がより好ま
しい。処理温度が50℃より低いと、得られるポリアスパ
ラギン酸誘導体が充分な生分解性を備えることができな
い虞れがあり、また、処理時間が長くなり、生産性が低
下する虞れがある。一方、処理温度が250 ℃より高けれ
ば、ポリコハク酸イミド並びに添加したアルコールの分
解、着色が起こり易くなり、この結果、製品として十分
な性能および品質を備えたポリアスパラギン酸誘導体が
得られない虞れがある。
【0051】ポリコハク酸イミドをアルコール存在下で
処理する場合の処理時間は、処理温度に応じて適宜設定
すればよく、特に限定されるものではないが、通常1分
間〜12時間の範囲内である。
【0052】また、上記アルコールの使用量は、特に限
定されるものではないが、ポリコハク酸イミド1重量部
に対して、アルコール0.01重量部〜20重量部の範囲内が
好ましく、0.05重量部〜10重量部の範囲内が、特に好ま
しい。尚、上記アルコールの使用量が0.01重量部より少
なければ、ポリコハク酸イミドを効率よく処理すること
ができないため、好ましくない。一方、上記アルコール
の使用量を20重量部より多くしても、さらなる効果は認
められず、アルコールが無駄となるため、好ましくな
い。
【0053】ポリコハク酸イミドをアルコールで処理す
る際の処理系の圧力は、特に限定されるものではなく、
例えば、用いるアルコールの沸点が低い場合には、適
宜、加圧してもよい。尚、常圧あるいは加圧下で処理を
行う際には、酸化による分解、着色を防ぐために、例え
ば、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好まし
い。
【0054】上記アルコールで処理されたポリコハク酸
イミドは、特にアルコールから分離する必要のない場合
には、そのまま用いてもよい。一方、ポリコハク酸イミ
ドをアルコールから分離する必要がある場合には、水
洗、あるいは加熱、および/または減圧下で乾燥させる
ことによって、容易にアルコールから分離することがで
きる。
【0055】本発明におけるポリコハク酸イミドの処理
方法は、各々単独で行ってもよく、あるいは、2種類以
上の処理方法を適宜併用して行ってもよい。以上の方法
を用いて処理したポリコハク酸イミドをポリアスパラギ
ン酸誘導体の原料として用いることで、生分解性に優れ
たポリアスパラギン酸誘導体を容易に得ることができ
る。
【0056】得られるポリアスパラギン酸誘導体として
は、特に限定されるものではないが、具体的には、例え
ば、ポリアスパラギン酸およびその塩、ポリアスパラギ
ン、ポリ(2−ヒドロキシエチル)アスパラギン酸アミ
ド等が挙げられる。ポリアスパラギン酸塩としてはナト
リウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウ
ム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニ
ウム塩;アルキルアミン塩;アルカノールアミン塩等が
挙げられる。
【0057】ポリアスパラギン酸誘導体の製造方法は、
特に限定されるものではなく、従来公知の種々の方法を
用いることができる。例えば、ポリコハク酸イミドを水
の存在下で、水酸化ナトリウム等の塩基性化合物を用い
て加水分解することによって、ポリアスパラギン酸塩を
容易に得ることができる。尚、ポリアスパラギン酸誘導
体の製造条件、即ち、ポリコハク酸イミドと、所望する
ポリアスパラギン酸誘導体を得るのに必要な他の化合物
との反応条件は、特に限定されるものではなく、反応が
完了するように、適宜設定すればよい。
【0058】以上のように、本発明の方法を用いて処理
されたポリコハク酸イミドを原料として用い、目的に応
じて変性させることにより、生分解性に優れたポリアス
パラギン酸誘導体を得ることができる。上記ポリアスパ
ラギン酸誘導体、特に、ポリアスパラギン酸およびその
塩は、分散剤、スケール防止剤、洗剤用のビルダー等に
有用である。尚、本発明において、ポリコハク酸イミド
に上記各処理を施すことで、生分解性等が向上する詳細
な理由は明らかではないが、該ポリアスパラギン酸誘導
体の分子量を測定したところ、分子量分布において、あ
る特定の分子量を有する領域が減少していることが判明
した。このことから、ポリコハク酸イミドを本発明にか
かる方法を用いて処理することで、ポリコハク酸イミド
における生分解性に悪影響を与える成分を減少させるこ
とができるため、生分解性等が向上するのではないかと
推察される。
【0059】
【作用】本発明の方法を用いてポリコハク酸イミドを処
理することにより、該ポリコハク酸イミドを原料として
用い、目的に応じて変性させてなるポリアスパラギン酸
誘導体の生分解性を高めることができる。
【0060】
【実施例】以下、実施例および比較例により、本発明を
さらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら
限定されるものではない。尚、水溶性ポリアスパラギン
酸誘導体の分子量は、次のようにして測定した。
【0061】即ち、分子量は、ゲルパーミェーションク
ロマトグラフィ(GPC)によって測定した。カラム
は、水系のカラム(SHODEX OHpak SB-805,804,803,802.
5,800P;昭和電工株式会社製) を使用した。また、溶離
液は、リン酸二水素ナトリウム0.1 モル/L、塩化ナト
リウム0.2 モル/Lである水溶液を、水酸化ナトリウム
でpH7に調製して使用した。溶離液の流量は、0.5ml/
分とした。また、検出器には、示差屈折率計(SHODEX RI
SE-61;昭和電工株式会社製) を用いた。標準物質は、
ポリアスパラギン酸ナトリウムを用いた。
【0062】また、得られたポリアスパラギン酸誘導体
の生分解性を評価するために、生分解性試験を行った。
基礎培地は、JIS K 0102に基づいて調製し
た。汚泥は、都市下水場活性汚泥を使用した。汚泥濃度
は30ppm とし、試料濃度は100ppmとした。そして、上記
基礎培地、汚泥、並びに試料を用いて、25℃で、28日間
培養を行い、培養後の培地のTOC(全有機炭素)の減
少率を測定することにより、生分解度を求めた。尚、試
料として、得られたポリアスパラギン酸誘導体から、透
析により低分子量物を除いたものを用いた。
【0063】次に、処理すべきポリコハク酸イミドの製
造方法を示す。 〔製造例1〕温度計、ガス吹き込み管、および攪拌装置
等を取り付けたフラスコに、L−アスパラギン酸 200g
を仕込んだ。このフラスコを 250℃のオイルバスに浸漬
し、L−アスパラギン酸を窒素雰囲気下で3時間攪拌し
て、熱重合させた。反応終了後、該フラスコを冷却し
て、ポリコハク酸イミド 146gを得た。
【0064】〔製造例2〕製造例1と同様のフラスコ
に、DL−アスパラギン酸 200gを仕込んだ。このフラ
スコを 230℃のオイルバスに浸漬し、DL−アスパラギ
ン酸を窒素雰囲気下で10時間攪拌して、熱重合させた。
反応終了後、該フラスコを冷却して、ポリコハク酸イミ
ド 146gを得た。
【0065】〔製造例3〕製造例1と同様のフラスコ
に、マレイン酸モノアンモニウム 200gを仕込んだ。こ
のフラスコを 250℃のオイルバスに浸漬し、マレイン酸
モノアンモニウムを窒素雰囲気下で 1.5時間攪拌して、
熱重合させた。反応終了後、該フラスコを冷却して、ポ
リコハク酸イミド 146gを得た。
【0066】〔製造例4〕製造例1と同様のフラスコ
に、フマル酸モノアンモニウム 200gを仕込んだ。この
フラスコを 250℃のオイルバスに浸漬し、フマル酸モノ
アンモニウムを窒素雰囲気下で 1.5時間攪拌して、熱重
合させた。反応終了後、該フラスコを冷却して、ポリコ
ハク酸イミド 146gを得た。
【0067】〔実施例1〕製造例1と同様の方法を用い
て得られたポリコハク酸イミド 100gと、有機酸である
98重量%ギ酸 (市販品)100gとを、温度計、ガス吹き込
み管、および攪拌装置等を備えたオートクレーブに仕込
んだ。このオートクレーブ内を窒素で置換した後、150
℃のオイルバスに浸漬し、窒素雰囲気下で1.5 時間攪拌
することによって、該ポリコハク酸イミドを処理した。
【0068】次いで、処理後に得られた粘稠なスラリー
を水洗して、処理後のポリコハク酸イミドをギ酸から分
離した。
【0069】次に、このようにして得られた固体状のポ
リコハク酸イミドを水に分散させてスラリーを得た。こ
のスラリーに、48重量%水酸化ナトリウム水溶液を加え
て、上記ポリコハク酸イミドが完全に溶解するまでアル
カリ加水分解を行った後、この水溶液をpH9〜10に調
整して、ポリアスパラギン酸ナトリウム水溶液を得た。
得られたポリアスパラギン酸ナトリウムの重量平均分子
量(Mw)は、7,900 であった。該ポリアスパラギン酸ナト
リウムのGPCのチャートを図1に実線で示す。また、
ポリアスパラギン酸ナトリウムの生分解性を測定した。
この結果を表1に示す。
【0070】〔実施例2〕製造例2と同様の方法を用い
て得られたポリコハク酸イミド10gと、94重量%ギ酸
(市販品)100gとを、温度計、ガス吹き込み管、還流装
置、および攪拌装置等を取り付けたフラスコに仕込ん
だ。このフラスコを、120 ℃のオイルバスに浸漬し、窒
素雰囲気下で3時間還流させながら攪拌することによっ
て、該ポリコハク酸イミドを処理した。
【0071】処理後に得られた粘稠な溶液を水中に投入
し、沈殿した固体を水洗して、処理後のポリコハク酸イ
ミドをギ酸から分離した。
【0072】次に、このようにして得られた固体状のポ
リコハク酸イミドを水に分散させて得られたスラリーを
用いて、実施例1と同様の加水分解を行い、ポリアスパ
ラギン酸ナトリウム水溶液を得た。得られたポリアスパ
ラギン酸ナトリウムの重量平均分子量(Mw)は、11,000で
あった。また、ポリアスパラギン酸ナトリウムの生分解
性を測定した。この結果を表1に示す。
【0073】〔実施例3〕製造例2と同様の方法を用い
て得られたポリコハク酸イミド10gと、酸アミドである
N,N −ジメチルホルムアミド30gとを、温度計、ガス吹
き込み管、および攪拌装置等を取り付けたフラスコに仕
込んだ。このフラスコを、200 ℃のオイルバスに浸漬
し、窒素雰囲気下で3時間攪拌して、該ポリコハク酸イ
ミドを処理した。
【0074】処理後、該フラスコを冷却し、得られた固
体を水洗して、処理後のポリコハク酸イミドをN,N −ジ
メチルホルムアミドから分離した。
【0075】次に、このようにして得られた固体状のポ
リコハク酸イミドを水に分散させて得られたスラリーを
用いて、実施例1と同様の加水分解を行い、ポリアスパ
ラギン酸ナトリウム水溶液を得た。得られたポリアスパ
ラギン酸ナトリウムの重量平均分子量(Mw)は、4,800 で
あった。また、ポリアスパラギン酸ナトリウムの生分解
性を測定した。この結果を表1に示す。
【0076】〔実施例4〕実施例3におけるポリコハク
酸イミドに代えて、製造例3と同様の方法を用いて得ら
れたポリコハク酸イミド10gを用いた以外は、実施例3
と同様処理を行い、ポリアスパラギン酸ナトリウム水溶
液を得た。得られたポリアスパラギン酸ナトリウムの重
量平均分子量(Mw)は、4,800 であった。また、ポリアス
パラギン酸ナトリウムの生分解性を測定した。この結果
を表1に示す。
【0077】〔実施例5〕製造例2と同様の方法を用い
て得られたポリコハク酸イミド 150gと、水600gと
を、温度計並びに攪拌装置等を備えたオートクレーブに
仕込んだ。このときのスラリーのpHは 3.3であった。
次いで、上記オートクレーブ内を窒素で置換した後、12
0 ℃に昇温し、該温度で3時間攪拌して、ポリコハク酸
イミドを処理した。
【0078】処理後、該オートクレーブを冷却し、得ら
れたスラリーを用いて、実施例1と同様の加水分解を行
い、ポリアスパラギン酸ナトリウム水溶液を得た。得ら
れたポリアスパラギン酸ナトリウムの重量平均分子量(M
w)は、10,000であった。尚、上記ポリアスパラギン酸ナ
トリウムのうち、14モル%が加水分解されてアスパラギ
ン酸になっていた。また、ポリアスパラギン酸ナトリウ
ムの生分解性を測定した。この結果を表1に示す。
【0079】〔実施例6〕製造例4と同様の方法を用い
て得られたポリコハク酸イミド 150gと、水250gと
を、温度計並びに攪拌装置等を取り付けたオートクレー
ブに仕込んだ。さらに、このスラリーに、pH6.5 のク
エン酸ナトリウム水溶液89gを添加し、スラリーのpH
を5に調整した。次いで、上記オートクレーブ内を窒素
で置換した後、120 ℃に昇温し、該温度で2時間攪拌し
て、ポリコハク酸イミドを処理した。
【0080】処理後、該オートクレーブを冷却し、得ら
れたスラリーを用いて、実施例1と同様の加水分解を行
い、ポリアスパラギン酸ナトリウム水溶液を得た。得ら
れたポリアスパラギン酸ナトリウムの重量平均分子量(M
w)は、 2,500であった。尚、上記ポリアスパラギン酸ナ
トリウムのうち、13モル%が加水分解されてアスパラギ
ン酸になっていた。また、ポリアスパラギン酸ナトリウ
ムの生分解性を測定した。この結果を表1に示す。
【0081】〔実施例7〕製造例1と同様の方法を用い
て得られたポリコハク酸イミド 150gと、水450gと
を、温度計、ガス吹き込み管、還流装置、および攪拌装
置等を取り付けたフラスコに仕込んだ。さらに、このス
ラリーに、10重量%希硫酸 150gを添加した。このとき
のスラリーのpHは 1.6であった。次いで、上記フラス
コを 120℃のオイルバスに浸漬し、上記スラリーを窒素
雰囲気下で10時間還流させながら攪拌することによっ
て、ポリコハク酸イミドを処理した。
【0082】処理後、該フラスコを冷却し、得られたス
ラリーを用いて、実施例1と同様の加水分解を行い、ポ
リアスパラギン酸ナトリウム水溶液を得た。得られたポ
リアスパラギン酸ナトリウムの重量平均分子量(Mw)は、
14,000であった。尚、上記ポリアスパラギン酸ナトリウ
ムのうち、8モル%が加水分解されてアスパラギン酸に
なっていた。該ポリアスパラギン酸ナトリウムのGPC
のチャートを図2に実線で示す。また、該ポリアスパラ
ギン酸ナトリウムの生分解性を測定した。この結果を表
1に示す。
【0083】〔実施例8〕製造例1と同様の方法を用い
て得られたポリコハク酸イミド20gと、ヒドロキシル価
1100mgKOH/g以上のアルコールであるエチレングリ
コール20gとを、温度計、ガス吹き込み管、および攪拌
装置等を取り付けたフラスコに仕込んだ。次いで、上記
フラスコを 140℃のオイルバスに浸漬し、上記スラリー
を窒素雰囲気下で3時間攪拌することによって、ポリコ
ハク酸イミドを処理した。尚、処理中において、上記ス
ラリーは、粘稠な液体となった。
【0084】処理後、上記フラスコを冷却したところ、
粘稠な液体は固化した。得られた固体を粉砕し、水中に
分散させた。このスラリーを用いて、実施例1と同様の
加水分解を行い、ポリアスパラギン酸ナトリウム水溶液
を得た。得られたポリアスパラギン酸ナトリウムの重量
平均分子量(Mw)は、10,000であった。該ポリアスパラギ
ン酸ナトリウムのGPCのチャートを図3に実線で示
す。また、ポリアスパラギン酸ナトリウムの生分解性を
測定した。この結果を表1に示す。
【0085】〔実施例9〕製造例2と同様の方法を用い
て得られたポリコハク酸イミド20gと、ヒドロキシル価
1100mgKOH/g以上のアルコールであるグリセリン10
gとを、温度計、ガス吹き込み管、および攪拌装置等を
取り付けたフラスコに仕込んだ。次いで、上記フラスコ
を 220℃のオイルバスに浸漬し、上記スラリーを窒素雰
囲気下で1時間攪拌することによって、ポリコハク酸イ
ミドを処理した。尚、処理中において、上記スラリー
は、粘稠な液体となった。
【0086】処理後、上記フラスコを冷却したところ、
粘稠な液体は固化した。得られた固体を粉砕し、水中に
分散させた。このスラリーを用いて、実施例1と同様の
加水分解を行い、ポリアスパラギン酸ナトリウム水溶液
を得た。得られたポリアスパラギン酸ナトリウムの重量
平均分子量(Mw)は、10,000であった。また、ポリアスパ
ラギン酸ナトリウムの生分解性を測定した。この結果を
表1に示す。
【0087】〔実施例10〕実施例8におけるエチレング
リコール20gに代えて、エチレングリコール10gと、ヒ
ドロキシル価1057mgKOH/gであるジエチレングリコ
ール10gとの混合溶媒を用いた以外は、実施例8と同様
の処理を行い、ポリアスパラギン酸ナトリウム水溶液を
得た。得られたポリアスパラギン酸ナトリウムの重量平
均分子量(Mw) は、 9,500であった。また、ポリアスパ
ラギン酸ナトリウムの生分解性を測定した。この結果を
表1に示す。
【0088】〔比較例1〕製造例1と同様の方法を用い
て得られたポリコハク酸イミド10gを水に分散させて得
られたスラリーを用いて、実施例1と同様の加水分解を
行い、ポリアスパラギン酸ナトリウム水溶液を得た。得
られたポリアスパラギン酸ナトリウムの重量平均分子量
(Mw)は 12,000 であった。該ポリアスパラギン酸ナトリ
ウムのGPCのチャートを比較のために、図1、図2、
および図3に破線で示す。また、ポリアスパラギン酸ナ
トリウムの生分解性を測定した。この結果を表1に示
す。
【0089】〔比較例2〕製造例2と同様の方法を用い
て得られたポリコハク酸イミド10gを水に分散させて得
られたスラリーを用いて、実施例1と同様の加水分解を
行い、ポリアスパラギン酸ナトリウム水溶液を得た。得
られたポリアスパラギン酸ナトリウムの重量平均分子量
(Mw)は、14,000であった。また、ポリアスパラギン酸ナ
トリウムの生分解性を測定した。この結果を表1に示
す。
【0090】〔比較例3〕製造例3と同様の方法を用い
て得られたポリコハク酸イミド10gを水に分散させて得
られたスラリーを用いて、実施例1と同様の加水分解を
行い、ポリアスパラギン酸ナトリウム水溶液を得た。得
られたポリアスパラギン酸ナトリウムの重量平均分子量
(Mw)は、5,500 であった。また、ポリアスパラギン酸ナ
トリウムの生分解性を測定した。この結果を表1に示
す。
【0091】〔比較例4〕製造例4と同様の方法を用い
て得られたポリコハク酸イミド10gを水に分散させて得
られたスラリーを用いて、実施例1と同様の加水分解を
行い、ポリアスパラギン酸ナトリウム水溶液を得た。得
られたポリアスパラギン酸ナトリウムの重量平均分子量
(Mw)は 5,000であった。また、ポリアスパラギン酸ナト
リウムの生分解性を測定した。この結果を表1に示す。
【0092】〔比較例5〕製造例1と同様の方法を用い
て得られたポリコハク酸イミド 150gと、水500gと
を、温度計並びに攪拌装置等を取り付けたオートクレー
ブに仕込んだ。さらに、このスラリーに、炭酸ナトリウ
ムを添加し、スラリーのpHを6.5 に調整した。次い
で、上記オートクレーブ内を窒素で置換した後、120 ℃
に昇温し、該温度で3時間攪拌して、ポリコハク酸イミ
ドを処理した。
【0093】処理後、該オートクレーブを冷却し、得ら
れたスラリーを用いて、実施例1と同様の加水分解を行
い、ポリアスパラギン酸ナトリウム水溶液を得た。得ら
れたポリアスパラギン酸ナトリウムの重量平均分子量(M
w)は、 2,000であった。尚、上記ポリアスパラギン酸ナ
トリウムのうち、45モル%が加水分解されてアスパラギ
ン酸になっていた。また、ポリアスパラギン酸ナトリウ
ムの生分解性を測定した。この結果を表1に示す。
【0094】〔比較例6〕製造例1と同様の方法を用い
て得られたポリコハク酸イミド 150gと、水600gと
を、温度計並びに攪拌装置等を取り付けたオートクレー
ブに仕込んだ。このときのスラリーのpHは3.3 であっ
た。次いで、上記オートクレーブ内を窒素で置換した
後、180 ℃に昇温し、該温度で2時間攪拌して、ポリコ
ハク酸イミドを処理した。
【0095】処理後、該オートクレーブを冷却し、得ら
れたスラリーを用いて、実施例1と同様の加水分解を行
い、ポリアスパラギン酸ナトリウム水溶液を得た。得ら
れたポリアスパラギン酸ナトリウムの重量平均分子量(M
w)は、 1,800であった。尚、上記ポリアスパラギン酸ナ
トリウムのうち、38モル%が加水分解されてアスパラギ
ン酸になっていた。また、ポリアスパラギン酸ナトリウ
ムの生分解性を測定した。この結果を表1に示す。
【0096】〔比較例7〕実施例9におけるグリセリン
に代えて、ジエチレングリコール10gを用いた以外は、
実施例9と同様の処理を行い、ポリアスパラギン酸ナト
リウム水溶液を得た。得られたポリアスパラギン酸ナト
リウムの重量平均分子量(Mw)は、13,000であった。ま
た、ポリアスパラギン酸ナトリウムの生分解性を測定し
た。この結果を表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】実施例1〜10および比較例1〜 7の結果か
ら明らかなように、本実施例の処理により得られたポリ
アスパラギン酸ナトリウムは、比較例の処理により得ら
れたポリアスパラギン酸ナトリウムに比べて、生分解性
に優れていることが判った。また、比較例5・6の結果
から明らかなように、ポリコハク酸イミドを水中で処理
した場合、一見、生分解性に優れたポリアスパラギン酸
ナトリウムが得られるものの、該ポリアスパラギン酸ナ
トリウムの大半がアスパラギン酸に加水分解されること
が判った。一方、実施例7・8・9の結果から明らかな
ように、本発明によれば、ポリアスパラギン酸ナトリウ
ムのアスパラギン酸への加水分解を抑えることができ
る。即ち、本発明の処理方法を用いれば、ポリコハク酸
イミドを水中で処理した場合にも、生分解性に優れ、か
つ、高分子量のポリアスパラギン酸ナトリウムを効率よ
く得ることができることが判った。尚、ポリコハク酸イ
ミドを水中で処理することで、処理後のポリコハク酸イ
ミドを水から分離しなくても、そのまま水酸化ナトリウ
ム等の塩基性化合物を用いて加水分解することによっ
て、容易にポリアスパラギン酸塩を製造することができ
る。以上のように、本実施例によれば、生分解性に優
れ、かつ、高分子量のポリアスパラギン酸誘導体を得る
ことができる。
【0099】
【発明の効果】本発明のポリコハク酸イミドの処理方法
は、以上のように、ポリコハク酸イミドを有機酸で処理
する方法である。
【0100】また、本発明のポリコハク酸イミドの処理
方法は、以上のように、ポリコハク酸イミドを酸アミド
で加熱処理する方法である。
【0101】さらに、本発明のポリコハク酸イミドの処
理方法は、以上のように、ポリコハク酸イミドを、pH
6以下の水性媒体中において、50℃以上、150 ℃未満の
温度で加熱処理する方法である。
【0102】さらにまた、本発明のポリコハク酸イミド
の処理方法は、以上のように、ポリコハク酸イミドを、
ヒドロキシル価1100mgKOH/g以上のアルコール存在
下で処理する方法である。
【0103】本発明の方法を用いてポリコハク酸イミド
を処理することにより、該ポリコハク酸イミドを原料と
して用い、目的に応じて変性させてなるポリアスパラギ
ン酸誘導体の生分解性を高めることができるという効果
を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例において得られたポリアスパ
ラギン酸ナトリウムのGPCのチャートである。
【図2】本発明の他の実施例において得られたポリアス
パラギン酸ナトリウムのGPCのチャートである。
【図3】本発明のさらに他の実施例において得られたポ
リアスパラギン酸ナトリウムのGPCのチャートであ
る。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ポリコハク酸イミドを有機酸で処理するこ
    とを特徴とするポリコハク酸イミドの処理方法。
  2. 【請求項2】ポリコハク酸イミドを酸アミドで加熱処理
    することを特徴とするポリコハク酸イミドの処理方法。
  3. 【請求項3】ポリコハク酸イミドを、pH6以下の水性
    媒体中において、50℃以上、150 ℃未満の温度で加熱処
    理することを特徴とするポリコハク酸イミドの処理方
    法。
  4. 【請求項4】ポリコハク酸イミドを、ヒドロキシル価11
    00mgKOH/g以上のアルコール存在下で処理すること
    を特徴とするポリコハク酸イミドの処理方法。
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JP3383118B2 (ja) 2003-03-04

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