JPH08283809A - 出銑大樋移動装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 高温・重厚長大、かつ重量状態がその都度異
なる出銑大樋の交換・取換作業を、人手を介すること無
く、自動化して行い、作業の効率化、短縮化を図ること
ができる出銑大樋移動装置を提供すると共に、高温、粉
塵環境下での取換作業から解放し、作業環境の改善を図
る。 【構成】 高炉の出銑大樋の取替交換作業に用いる出銑
大樋移動装置において、大樋を搭載自在でかつレ−ル上
を走行可能に形成した走行台車と、該レ−ルの延長上に
出銑大樋及び走行台車を搭載し昇降可能に形成したテ−
ブルと、該テーブル用の複数の昇降装置を備え、かつ該
昇降装置に上下位置検出装置を備えたことを特徴とする
ものである。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、鉄鋼業における高炉出
銑大樋の取替作業に用いられる出銑大樋移動装置に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】高炉には高温に溶融した溶銑やスラグを
受銑し、銑、滓を分離する出銑大樋が、切替え使用する
ため少なくとも２本以上設けられている。この出銑大樋
は通常２０ｍ程度の長さを有し、その内表面には高温の
溶銑やスラグが通過するため、定形又は不定形の耐火物
を施工しており、出銑大樋の重量は１５０トンにも達す
る重厚長大なものとなる。この大樋の内表面には高温の
溶銑やスラグが通過することによる摩耗・化学的劣化、
あるいは、使用樋の切替えによる加熱・冷却の繰り返し
による劣化が生じたり、また、出銑大樋鉄皮の熱による
変形等により定期的に取替える必要がある。

【０００３】従来、この出銑大樋の取替・交換作業は、
炉前で出銑大樋が据え付けたままの状態で、内表面の定
形又は不定形の耐火物を取替・交換する方法と、天井ク
レ−ンで出銑大樋を吊上げ積載した後に所定の補修場位
置に移動させ耐火物を取替・交換する方法がある。

【０００４】炉前で出銑大樋が据え付いたままの状態で
取替・交換作業を行う方法では、まず出銑作業終了後、
樋内面温度が相当程度低くなるまで待った後、出銑大樋
上に鋼板を設置し、この鋼板上にバックホ−を設置す
る。次にこのバックホ−により出銑大樋内面の定形又は
不定形の使用済耐火物を解体・除去した後、定形又は不
定形の耐火物を新たに施工する。

【０００５】また、天井クレ−ンを用いる方法では、ま
ず出銑作業終了後、樋内面温度が相当程度低くなるまで
待った後、天井クレ−ンで出銑大樋を垂直に吊り上げて
所定の補修場位置に降下移動させる。次ぎにあらかじめ
準備・補修された新たな出銑大樋を所定の補修場位置よ
り天井クレ−ンで揚重し、炉前の通常操業位置に移送し
ていた。また、このような従来の出銑大樋の取替作業
は、通常１０日程度を要しており、取替が長期に及ぶた
め、出銑作業における高炉出銑口の開孔・閉塞のための
装置及び出銑樋等、一連の新たな装置を設ける必要があ
った。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述の
方法では、以下のような問題点があった。 （１）出銑大樋耐火物の解体・除去・築造作業は、出銑
大樋の内部や真上で作業者が行う作業であるため、危険
かつ高温雰囲気条件での作業であり、また、粉砕工具を
用いての作業であるため、振動・騒音が発生するばかり
でなく、粉砕の際に粉塵が発生し、劣悪環境下の作業で
ある。 （２）小形の高炉を除いて出銑大樋は大重量であるた
め、天井クレーンで揚重する場合は、大容量のクレーン
を必要とし、設備費が増大する。

【０００７】（３）小形の高炉の場合でも溶融した溶銑
やスラグにより劣化・摩耗した樋内表面の耐火物の残存
量、及び樋底面耐火物の局部的な摩耗により、残存滞留
する溶銑の凝固した残銑量は、取替える出銑大樋毎に大
きく変化する。このため、天井クレ−ンで揚重する場合
には、出銑大樋の重量ならびに重心位置が大きく変化
し、出銑大樋の重量が天井クレ−ンの吊り能力を上回っ
たり、また、玉掛け・揚重作業において熟練・技量を要
するため、熟練者をいかに確保かの問題があった。

【０００８】（４）高炉出銑口部の近傍は出銑口の開孔
・閉塞のための装置や、炉前の揚重装置などが設置され
ており、天井クレ−ンで揚重する場合には出銑大樋への
寄り付きが悪く、また前記装置類の狭隘なスペ−スの中
で揚重するため、極めて作業性が悪い。 （５）出銑直後の出銑大樋は溶融した溶銑やスラグによ
り、高温に熱せられているため、使用済耐火物の解体・
除去作業が行える作業環境になるまでには、長時間の冷
却時間が必要であり、極めて非効率な作業となる。

【０００９】（６）使用済耐火物の解体・除去作業及
び、新耐火物の施工作業が長期にわたり炉前で行われる
ため、出銑作業における高炉出銑口の開孔・閉塞のため
の装置及び出銑樋等、一連の新たな装置を設ける必要が
あり、設備費が増大する。 （７）出銑口前または鋳床上に設けられた大樋補修場な
どで大樋の補修整備を行なう場合には地上より耐火物等
の補修材料を天井クレ−ンを用いて鋳床操業床上まで移
動上架する作業が必要である。

【００１０】本発明は、上記課題に鑑みてなされたもの
であって、高温・重厚長大、かつ重量状態がその都度異
なる出銑大樋の取替・交換作業を、人手を介することな
く、自動化して行い、作業の効率化、短縮化を図ること
が出来る出銑大樋移動装置を提供すると共に、高温、粉
塵環境下での取替作業から作業員を解放し、作業環境の
改善を行うことにある。

【００１１】

【課題を解決するための手段】本発明は、高炉の出銑大
樋の取替交換作業に用いる出銑大樋移動装置において、
大樋を搭載自在でかつレ−ル上を走行可能に形成した走
行台車と、前記レ−ルの延長上に出銑大樋及び走行台車
を搭載し昇降可能に形成したテ−ブルと、該テーブル用
の複数の昇降装置を備え、かつ該昇降装置に上下位置検
出装置を備えたことによって上記課題を解決した。

【００１２】

【作用】本発明に係る出銑作業直後の出銑大樋と連結さ
れた走行台車は、走行レ−ル上を走行可能としているた
め出銑口部より迅速に後退・退避することが出来る。こ
のため、従来のように炉前での耐火物の解体・除去・築
造作業や、狭隘なスペ−スでの天井クレ−ンの玉掛け・
揚重移動作業を行う必要がない。

【００１３】また、本発明に係る昇降装置は、上下位置
検出装置を複数の該昇降装置のすべてに一対化するよう
に備えているため、昇降装置の制御を先導する主昇降装
置と、先導する主昇降装置に追従する追従昇降装置に区
分けし制御することにより、重量及び重心位置の変化に
よる各昇降装置の負荷変動に対し、各昇降装置の昇降位
置を単独かつ主昇降装置に追従させる制御ができる。こ
のため、出銑大樋及び走行台車を搭載したテ−ブルが常
に安定、かつ同調した昇降動作を行うことが出来ると共
に、従来のような天井クレ−ンの玉掛け・揚重移動作業
での熟練・技量を必要とした作業を行う必要がない。

【００１４】さらに、本発明に係る出銑大樋の走行台車
の走行を自動化して行い、また前述のように昇降動作を
自動化制御することにより、出銑作業直後の高温の出銑
大樋の長時間の冷却期間が不要となるばかりでなく、高
温の出銑大樋の交換・取替作業が迅速に行えるため、従
来必要であった出銑作業における高炉出銑口の開孔・閉
塞のための装置及び出銑樋等、一連の新たな装置を設け
る必要がない。

【００１５】

【実施例】以下に添付の図面に示された具体的な実施例
に基づいて本発明の構成を詳細に説明する。本発明に係
る出銑大樋移動装置の詳細を図１〜図４の正面図、側面
図および部分拡大図に従って説明する。図１および図２
において、１は大樋本体であり、この大樋１の前後下端
部の好適な位置に、大樋１とボルトまたはピンにより連
結された、台車駆動モーター３を有し、該モーターによ
るチェーン駆動により車輪４を転回する走行台車２が設
けられ、出銑大樋は樋長手方向に敷設された走行レール
３２上を任意の位置に走行する構造となっており、該レ
ールの延長する位置に出銑大樋移動装置ピット５が穿設
され、該ピット５内に出銑大樋移動装置６が設けられて
おり、前述の出銑大樋１は図１の右側から出銑大樋移動
装置のテーブル７上に進入・搭載される。

【００１６】ここで、本実施例では走行台車の走行駆動
装置をモーターとしているが、該モーターの代わりにウ
インチを用いて出銑大樋１及び走行台車２を牽引移動し
ても良い。また、出銑大樋１と走行台車２は固着された
構造としても良い。矩形状のテーブル７は、該ピットの
底面を固定支持面とし、かつテーブル７の平面内に矩形
配置される昇降装置として４式の等速多段型油圧シリン
ダー８ａ，８ｂ，８ｃ，（８ｄは図示せず）により当接
支承されると共に、テーブル１の矩形長辺方向にテーブ
ル７と回転自在に固結されたガイドローラー９ａ，９
ｂ，９ｃ，（９ｄは図示せず）が備えられている。

【００１７】また、図３は図１及び図２のガイドローラ
ー９ａ，９ｂ，９ｃ，９ｄ部の部分拡大図であって、該
ガイドローラー９は架構１１ｂに設置された案内レール
１０に沿って上下動をするように構成されている。しか
して、前記等速多段型油圧シリンダー８を作動させるこ
とにより、テーブル７はガイドローラ９によって案内レ
ール１０に沿って案内されながら高さ方向の任意の位置
に昇降移動する。

【００１８】また、図４は等速多段型油圧シリンダー８
の固定支持部拡大図であって、固定支持部は該シリンダ
ー８の受け座１２、支持座１３および球面座１４より構
成されており、前記テーブル７の昇降移動時に発生する
若干の水平移動を該シリンダーに悪影響を及ぼすことな
く吸収するため、受け座１２および支持座１３は球面座
１４で支承されている。

【００１９】図５、図６、図７において、上下位置検出
装置の構成について説明する。図５は上下位置検出装置
の部分拡大図、図６は該検出装置の部分正面図、図７は
図５をＡ−Ａ線で切った検出装置の部分側面図であっ
て、上下位置検出装置１５は軸継手１６を介し、回転軸
１７とキー１８ａにより固結され、該回転軸１７は歯車
保持金物１９により軸支され、該回転軸１７の中央部に
はキー１８ｂにより歯車２０が固結されている。

【００２０】また、歯車保持金物１９は、等速多段型油
圧シリンダー８のロッド先端部から固結片持ち支持され
たブラケット２１に固着された摺動案内金物２２によ
り、前記回転軸１７の軸直角方向に摺動可能に挟持され
ており、さらに、等速多段式油圧シリンダー８の近傍に
は支柱２３に鉛直方向に固定設置された前記歯車２０と
噛合する歯面２４を設けており、また噛合力を高めるた
め歯車保持金物１９と摺動案内金物２２の間にスプリン
グ２５を設けている。

【００２１】しかしてロッド先端部から固結片持ち支持
されたブラケット２１上に回転自在に支持された歯車２
０は、等速多段型油圧シリンダー８の動作により前記歯
面２４上を噛合回転し、該回転移動量を上下位置検出装
置１５に伝達することができる。

【００２２】次ぎに本発明の装置に係る出銑大樋の取換
・交換作業の操作手順について説明する。まず、図１に
おいて出銑作業が完了した出銑大樋１及び走行台車２
は、該台車駆動モーター３により、チェーン３ａを介し
車輪４を転回駆動させ、走行レ−ル３２に沿ってレール
延長上に位置するテ−ブル７上まで走行移動し、テ−ブ
ル７上のあかじめ設定された停止位置で停止する。

【００２３】次に出銑大樋１及び走行台車２をテ−ブル
７上に搭載した状態で、４式の等速多段型油圧シリンダ
ー８ａ，８ｂ，８ｃ，８ｄを同時に作動させ、また降下
の際の４式の等速多段型油圧シリンダーの位置同調制御
を、全ての該シリンダーに設けた上下位置検出装置１５
と、図８に示す油圧制御回路により、後述する油圧制御
を行いながら出銑大樋１及び走行台車２を所定の位置に
降下移動する。さらに、所定の位置まで降下した出銑大
樋１及び走行台車２は前記と同様の走行移動動作を行
い、レール３３上を走行し所定の樋補修場まで後退・退
避する。

【００２４】次にあらかじめ補修整備された出銑大樋１
は走行台車２により樋補修場からテ−ブル７上に走行移
動・搭載し、前記と同様の等速多段型油圧シリンダーの
位置同調制御を行いながら、走行レ−ル３２の位置まで
揚重移動した後、炉前の通常操業位置に走行移動復帰さ
せる。

【００２５】本発明に係る油圧制御回路について、図８
に示す配管系統図に従って説明する。図８において２６
は油圧ポンプ、２７はオンロード弁、８は昇降用等速多
段型油圧シリンダー、２８は該シリンダー８への供給油
量を制御するサーボ弁、２９ａはサーボ弁を含むバルブ
スタンド、１５はシリンダー８の上下位置検出装置、３
０ｂ，３０ｃ，３０ｄはサーボ弁２８、等速多段型油圧
シリンダー８及び上下位置検出装置１５を含む昇降装置
ユニットを示す。また、３１はそれぞれの昇降装置に設
置された上下位置検出装置１５から得られる位置データ
の取込み、及び位置制御するサーボ弁２８の開度を決定
する演算処理装置である。

【００２６】次ぎに本発明の装置にかかる油圧制御方法
について説明する。一般的に、一定圧力条件下の元で複
数のシリンダ−に異なる荷重を受けると、各シリンダ−
の作動時間に差異が生じる。重量、重心位置が変化し、
かつ各シリンダーに加わる負荷荷重が大きく異なる本発
明に係る該シリンダーの、位置同調制御を行うにあた
り、まず、制御回路上、４式の該シリンダーのうち８ａ
を主シリンダーとし、他のシリンダーを主シリンダーに
追従する追従シリンダー８ｂ，８ｃ，８ｄとして設定
し、さらに各シリンダーに設置された上下位置検出装置
１５ａ，１５ｂ，１５ｃ，１５ｄと演算処理装置３０に
より、主シリンダー８ａに追従シリンダー８ｂ，８ｃ，
８ｄが追従出来るよう個別に制御することとした。

【００２７】しかして、油圧ポンプ２６のオンロード弁
２７を作動させ、すべてのサーボ弁２８まで油圧作動油
を加圧・送油すると同時に、予め設定されたテーブル７
の昇降速度になるよう主等速多段型油圧シリンダー８ａ
に接続されたサーボ弁２８ａの開度をあけ、該シリンダ
ー８ａに送油し、該シリンダー８ａを作動させテーブル
７を移動させる。

【００２８】また、追従する追従等速多段型油圧シリン
ダー８ｂ、８ｃ、８ｄは前記主シリンダーと同様の動作
を行うが、各追従シリンダーに取り付けられた位置検出
装置１５ｂ，１５ｃ，１５ｄにより検出された位置デ−
タと前記主シリンダーに取り付けられた位置検出装置１
５ａにより検出された位置デ−タとの相対比較を演算処
理装置３１で行い、各該追従シリンダーに接続されたサ
ーボ弁２８ｂ，２８ｃ，２８ｄの開度を微小調整しなが
ら、昇降動作時の同調制御を行う。

【００２９】しかして本発明に係る出銑大樋移動装置を
用いて、高炉の出銑大樋の取替交換作業を行った結果、
従来１０日程度を要していた同作業が１６０分で完了す
ることができた。なお、本発明は前記実施例にのみ限定
されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種
々変更を加え得ることは勿論可能である。

【００３０】

【発明の効果】高炉出銑大樋取替作業において、高温・
重厚長大、かつ重量状態がそのつど異なる出銑大樋の取
替・交換作業を、人手を介することなく、自動化して行
い、作業の効率化、時間の短縮化が図ることが出来ると
共に、高温、粉塵環境下での取替作業から作業者を解放
し、作業環境の改善が図られ実用効果は極めて高い。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明にかかる出銑大樋移動装置の概略正面
図。

【図２】本発明にかかる出銑大樋移動装置の概略側面
図。

【図３】図１のガイドローラーの部分拡大図。

【図４】図１の等速多段型油圧シリンダー支持部拡大
図。

【図５】図１の上下位置検出装置の部分拡大図。

【図６】図５の上下位置検出装置の部分拡大正面図。

【図７】図５の上下位置検出装置の部分拡大側面図。

【図８】本発明にかかる出銑大樋移動装置の油圧配管系
統図。

【符号の説明】

１ 大樋本体 ２ 走行台車 ３ 台車駆動モーター ４ 車輪 ５ 出銑大樋移動装置ピット ６ 出銑大樋移動装置 ７ テーブル ８、８ａ，８ｂ，８ｃ，８ｄ 等速多段型油圧シリンダ
ー ９、９ａ，９ｂ，９ｃ，９ｄ ガイドローラー １０ 案内レール １１ａ，１１ｂ 架構 １２ 受け座 １３ 支持座 １４ 球面座 １５ 上下位置検出装置 １６ 軸継手 １７ 回転軸 １８ａ，１８ｂ キー １９ 歯車保持金物 ２０ 歯車 ２１ ブラケット ２２ 摺動案内金物 ２３ 支柱 ２４ 歯面 ２５ スプリング ２６ 油圧ポンプ ２７ オンロード弁 ２８，２８ａ，２８ｂ，２８ｃ，２８ｄ サーボ弁 ２９ａ バルブスタンド ３０ｂ，３０ｃ，３０ｄ 昇降装置ユニット ３１ 演算処理装置 ３２ 走行レ−ル ３３ 走行レ−ル

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 村田 足水 福岡県北九州市戸畑区大字中原46−59 日 鐵プラント設計株式会社内 (72)発明者 高山 将由樹 福岡県北九州市戸畑区大字中原46−59 日 鐵プラント設計株式会社内 (72)発明者 穴吹 幸隆 福岡県北九州市戸畑区大字中原46−59 新 日本製鐵株式会社機械・プラント事業部内

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 高炉の出銑大樋の取替交換作業に用いる
   出銑大樋移動装置において、大樋を搭載自在でかつレ−
   ル上を走行可能に形成した走行台車と、前記レ−ルの延
   長上に出銑大樋及び走行台車を搭載し昇降可能に形成し
   たテ−ブルと、該テーブル用の複数の昇降装置を備え、
   かつ該昇降装置に上下位置検出装置を備えたことを特徴
   とする出銑大樋移動装置。