JPH08277280A - イチイ細胞からのタキサン化合物の抽出方法 - Google Patents
イチイ細胞からのタキサン化合物の抽出方法Info
- Publication number
- JPH08277280A JPH08277280A JP7081554A JP8155495A JPH08277280A JP H08277280 A JPH08277280 A JP H08277280A JP 7081554 A JP7081554 A JP 7081554A JP 8155495 A JP8155495 A JP 8155495A JP H08277280 A JPH08277280 A JP H08277280A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- extraction
- cell wall
- taxaceous
- taxane compound
- yew
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Landscapes
- Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
- Medicines Containing Plant Substances (AREA)
- Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
- Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)
- Epoxy Compounds (AREA)
Abstract
(57)【要約】
【目的】 本発明は、医薬品又は医薬原料として有用な
タキサン化合物の効率的な抽出方法を提供することを目
的とする。 【構成】 本発明の抽出方法は、イチイ植物及びその培
養細胞の細胞壁を分解し、この分解産物に抽出処理を施
し、そしてタキサン化合物を含む抽出物を得る、ことを
含んで成る。細胞壁の分解を、磨砕処理、細胞壁分解酵
素処理、又はこれらの組み合わせ、等により行うことが
できる。
タキサン化合物の効率的な抽出方法を提供することを目
的とする。 【構成】 本発明の抽出方法は、イチイ植物及びその培
養細胞の細胞壁を分解し、この分解産物に抽出処理を施
し、そしてタキサン化合物を含む抽出物を得る、ことを
含んで成る。細胞壁の分解を、磨砕処理、細胞壁分解酵
素処理、又はこれらの組み合わせ、等により行うことが
できる。
Description
【０００１】
【産業上の利用分野】本発明は、タキサン化合物を、供
給源であるイチイ細胞から、効率的に製造するための抽
出方法に関する。
給源であるイチイ細胞から、効率的に製造するための抽
出方法に関する。
【０００２】
【従来の技術】以下の式(I):
【化１】 により表されるタキソールは、卵巣癌、乳癌、肺癌、等
の優れた抗癌剤として、米国、カナダ国などで利用され
ている。また、近年、以下の式(II):
の優れた抗癌剤として、米国、カナダ国などで利用され
ている。また、近年、以下の式(II):
【化２】 により表されるバッカチンIII 等も、タキソールを合成
するための原料や、新たなタキサン系抗癌剤の開発にお
ける原料として、利用度が高まっている。しかしなが
ら、これらのタキサン化合物の供給は、すべてイチイ(
Taxus sp. ) の細胞からの抽出に依存しているため、
需要に供給が追いつかないのが現状である。イチイ細胞
に含まれるタキサン化合物の量は、ごく微量であり、そ
の含量が高いとされる樹皮においてさえ0.1%程度であ
る。従って、タキサン化合物の効率的な抽出方法の開発
は、その供給を増大させるための重要な課題であり、そ
のため様々な検討が進められてきた。( エルソーリー、
ハラ・エヌらの「タキサン類を単離するための方法およ
び組成物」特表平６−５０９５６０；Witherup, keith
Mらの"High performance liquid chromatographic sepa
ration of taxol and related compounds from Taxus b
revifolia", J. Liq. Chromatogr. 1989. volume:12 Nu
mber:11 Pages:2117-32; 及びVidensek, N らの"Taxol
content in bark,wood, root, leaf, twig and seedlin
g from several Taxus species", J. Nat.Prod. 1990,
volume:53 number:6 Pages:1609-10 を参照のこと。)
するための原料や、新たなタキサン系抗癌剤の開発にお
ける原料として、利用度が高まっている。しかしなが
ら、これらのタキサン化合物の供給は、すべてイチイ(
Taxus sp. ) の細胞からの抽出に依存しているため、
需要に供給が追いつかないのが現状である。イチイ細胞
に含まれるタキサン化合物の量は、ごく微量であり、そ
の含量が高いとされる樹皮においてさえ0.1%程度であ
る。従って、タキサン化合物の効率的な抽出方法の開発
は、その供給を増大させるための重要な課題であり、そ
のため様々な検討が進められてきた。( エルソーリー、
ハラ・エヌらの「タキサン類を単離するための方法およ
び組成物」特表平６−５０９５６０；Witherup, keith
Mらの"High performance liquid chromatographic sepa
ration of taxol and related compounds from Taxus b
revifolia", J. Liq. Chromatogr. 1989. volume:12 Nu
mber:11 Pages:2117-32; 及びVidensek, N らの"Taxol
content in bark,wood, root, leaf, twig and seedlin
g from several Taxus species", J. Nat.Prod. 1990,
volume:53 number:6 Pages:1609-10 を参照のこと。)
【０００３】従来の抽出方法は、主に、イチイ細胞を有
機溶媒中に浸漬し、タキサン化合物を溶媒中に溶出さ
せ、その溶媒を除去し、そしてタキサン化合物を含んだ
抽出物を得る方法であった。より詳しく説明すれば、1
種類以上の有機溶媒( メタノール、エタノール、ジクロ
ロメタン、クロロホルム等) 中に、乾燥・破砕したイチ
イ植物体原料( 葉、樹皮、等) を数時間浸漬・攪拌する
ことにより、タキサン化合物の抽出液を得ていた。抽出
液中の残渣を、濾過・遠心等により除去し、溶媒をエバ
ポレーター等を使用して蒸発させ、タキサン化合物を含
む抽出物を得ることができる。以上の操作を抽出操作と
いい、その後、得られた抽出物を、各種有機溶媒、水、
等を使用した液相間の分配、クロマトグラフィー等によ
り、それぞれの化合物毎に精製し、純粋なタキサン化合
物を得ていた。
機溶媒中に浸漬し、タキサン化合物を溶媒中に溶出さ
せ、その溶媒を除去し、そしてタキサン化合物を含んだ
抽出物を得る方法であった。より詳しく説明すれば、1
種類以上の有機溶媒( メタノール、エタノール、ジクロ
ロメタン、クロロホルム等) 中に、乾燥・破砕したイチ
イ植物体原料( 葉、樹皮、等) を数時間浸漬・攪拌する
ことにより、タキサン化合物の抽出液を得ていた。抽出
液中の残渣を、濾過・遠心等により除去し、溶媒をエバ
ポレーター等を使用して蒸発させ、タキサン化合物を含
む抽出物を得ることができる。以上の操作を抽出操作と
いい、その後、得られた抽出物を、各種有機溶媒、水、
等を使用した液相間の分配、クロマトグラフィー等によ
り、それぞれの化合物毎に精製し、純粋なタキサン化合
物を得ていた。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】上記の従来技術の抽出
方法においては、イチイ植物内に存在するタキサン化合
物の抽出能力に限界が在った。タキサン化合物の多く
は、イチイ細胞内に残存し、それらを抽出することが困
難であった。この問題を解決するにあたり、本発明者
は、イチイ細胞内におけるタキサン化合物の局在性につ
いて調査し、その結果として、タキサン化合物がイチイ
の細胞壁に最も多量に存在することを発見した。この事
実に基づいて、本発明者は、タキサン化合物の抽出操作
の過程において、イチイ細胞の細胞壁を分解することに
より、従来技術の抽出方法よりも、効率的にタキサン化
合物を抽出することに成功し、これにより、本発明の抽
出方法を完成させた。
方法においては、イチイ植物内に存在するタキサン化合
物の抽出能力に限界が在った。タキサン化合物の多く
は、イチイ細胞内に残存し、それらを抽出することが困
難であった。この問題を解決するにあたり、本発明者
は、イチイ細胞内におけるタキサン化合物の局在性につ
いて調査し、その結果として、タキサン化合物がイチイ
の細胞壁に最も多量に存在することを発見した。この事
実に基づいて、本発明者は、タキサン化合物の抽出操作
の過程において、イチイ細胞の細胞壁を分解することに
より、従来技術の抽出方法よりも、効率的にタキサン化
合物を抽出することに成功し、これにより、本発明の抽
出方法を完成させた。
【０００５】用語" タキサン化合物" とは、本明細書
中、タキソール、バッチカンIII 、等を含む以下の式(I
II):
中、タキソール、バッチカンIII 、等を含む以下の式(I
II):
【化３】 により表されるタキサン骨格を有する化合物をいう。用
語" イチイ細胞" とは、本明細書中、イチイ植物体(
葉、幹、樹皮、種子、茎、等) の細胞又は組織培養技術
により人工的に増殖させた培養細胞や毛状根をいう。用
語" 細胞壁分解酵素" とは、セルラーゼ、ペクチダー
ゼ、ドリセラーゼ、ペクトリアーゼ、等又はそれらの混
合物をいう。
語" イチイ細胞" とは、本明細書中、イチイ植物体(
葉、幹、樹皮、種子、茎、等) の細胞又は組織培養技術
により人工的に増殖させた培養細胞や毛状根をいう。用
語" 細胞壁分解酵素" とは、セルラーゼ、ペクチダー
ゼ、ドリセラーゼ、ペクトリアーゼ、等又はそれらの混
合物をいう。
【０００６】
【課題を解決するための手段】本発明は、イチイ細胞か
らのタキサン化合物の抽出方法であって、以下の段階: (i) イチイ細胞の細胞壁を分解し、(ii) (i) で得られ
た分解産物に抽出処理を施して、タキサン化合物を含む
抽出物を得る、を含んで成る方法を、提供する。さら
に、本発明は、イチイ細胞からのタキサン化合物の抽出
方法であって、以下の段階: (i) イチイ細胞の細胞壁を磨砕処理及び細胞壁分解酵素
処理から成る群から選ばれた少なくとも1 により分解
し、(ii) (i) で得られた分解産物に抽出処理を施し
て、タキサン化合物を含む抽出物を得る、を含んで成る
方法を、提供する。
らのタキサン化合物の抽出方法であって、以下の段階: (i) イチイ細胞の細胞壁を分解し、(ii) (i) で得られ
た分解産物に抽出処理を施して、タキサン化合物を含む
抽出物を得る、を含んで成る方法を、提供する。さら
に、本発明は、イチイ細胞からのタキサン化合物の抽出
方法であって、以下の段階: (i) イチイ細胞の細胞壁を磨砕処理及び細胞壁分解酵素
処理から成る群から選ばれた少なくとも1 により分解
し、(ii) (i) で得られた分解産物に抽出処理を施し
て、タキサン化合物を含む抽出物を得る、を含んで成る
方法を、提供する。
【０００７】本発明の手順は、基本的には、(i) イチイ
細胞の細胞壁の分解操作、(ii)有機溶媒による抽出操
作、の順による。 (i) イチイ細胞の細胞壁の分解操作 イチイ細胞の細胞壁の分解操作について留意すべき点
は、細胞壁をできるかぎり細かくすることが抽出効率の
向上につながるということである。以下に細胞壁を分解
する方法を掲げるが、細胞壁を分解する方法であればこ
れらの方法に限定されない。細胞壁を分解するには、ホ
モジェナイザー等によってイチイ植物体原料を破砕した
後、さらに乳鉢、等を使用した磨砕操作を行うとよい。
この時、磨砕中に適量の液体( 水、メタノール、エタノ
ール、等) を加えると、細胞壁の分解が促進され、より
細かい粒子を得ることができる。添加する液体量は、イ
チイ細胞の体積の1 倍〜20倍が適しているが、磨砕に用
いる容器の大きさ、イチイ細胞の状態、磨砕の速度、等
に依存して、適宜、変化することができる。液体の種類
は、磨砕後の処理の進め方に応じて決定することが望ま
しい。つまり、次の抽出操作において水を使用する場合
には水を、有機溶媒を使用する場合にはメタノール等の
有機溶媒を使用した方が、全体としての操作の簡便化に
つながる。磨砕を、上記材料がペースト状( 粒径0.1mm
以下) になるまで、行うことが望ましい。
細胞の細胞壁の分解操作、(ii)有機溶媒による抽出操
作、の順による。 (i) イチイ細胞の細胞壁の分解操作 イチイ細胞の細胞壁の分解操作について留意すべき点
は、細胞壁をできるかぎり細かくすることが抽出効率の
向上につながるということである。以下に細胞壁を分解
する方法を掲げるが、細胞壁を分解する方法であればこ
れらの方法に限定されない。細胞壁を分解するには、ホ
モジェナイザー等によってイチイ植物体原料を破砕した
後、さらに乳鉢、等を使用した磨砕操作を行うとよい。
この時、磨砕中に適量の液体( 水、メタノール、エタノ
ール、等) を加えると、細胞壁の分解が促進され、より
細かい粒子を得ることができる。添加する液体量は、イ
チイ細胞の体積の1 倍〜20倍が適しているが、磨砕に用
いる容器の大きさ、イチイ細胞の状態、磨砕の速度、等
に依存して、適宜、変化することができる。液体の種類
は、磨砕後の処理の進め方に応じて決定することが望ま
しい。つまり、次の抽出操作において水を使用する場合
には水を、有機溶媒を使用する場合にはメタノール等の
有機溶媒を使用した方が、全体としての操作の簡便化に
つながる。磨砕を、上記材料がペースト状( 粒径0.1mm
以下) になるまで、行うことが望ましい。
【０００８】細胞壁を分解する他の方法としては、細胞
壁分解酵素により処理することによって処理した細胞の
細胞壁をさらに細かく分解する方法が挙げられる。使用
する細胞壁分解酵素の種類としては、セルラーゼ、ペク
チダーゼ、ドリセラーゼ、ペクトリアーゼ、等がある。
また、複数の細胞壁分解酵素を混合してもよい。これら
の細胞壁分解酵素による処理濃度は、0.1%以上、好まし
くは1%以上であり、その処理温度は、好ましくは30℃〜
40℃であり、そしてその処理時間は、好ましくは5 時間
以上である。そのpHは、中性又は弱酸性が適している。
細胞壁の分解を促進させ、そして抽出効率をさらに向上
させるには、磨砕処理と細胞壁分解酵素処理の両方を行
うことが望ましい。
壁分解酵素により処理することによって処理した細胞の
細胞壁をさらに細かく分解する方法が挙げられる。使用
する細胞壁分解酵素の種類としては、セルラーゼ、ペク
チダーゼ、ドリセラーゼ、ペクトリアーゼ、等がある。
また、複数の細胞壁分解酵素を混合してもよい。これら
の細胞壁分解酵素による処理濃度は、0.1%以上、好まし
くは1%以上であり、その処理温度は、好ましくは30℃〜
40℃であり、そしてその処理時間は、好ましくは5 時間
以上である。そのpHは、中性又は弱酸性が適している。
細胞壁の分解を促進させ、そして抽出効率をさらに向上
させるには、磨砕処理と細胞壁分解酵素処理の両方を行
うことが望ましい。
【０００９】(ii)有機溶媒による抽出操作 磨砕処理及び/ 又は細胞壁分解酵素処理による細胞壁分
解操作の後、その細胞残渣と酵素液のそれぞれについ
て、有機溶媒抽出を行う。細胞残渣に、直接、有機溶媒
( ジクロロメタン、メタノール、エタノール、クロロホ
ルム、等) を加える。この時、超音波を使用すると、効
率的に抽出できる。一方、酵素液に、ジクロロメタン、
クロロホルム、等の水に対して親和性が低く、タキサン
化合物を溶かし易い有機溶媒を加え、分配を行う。いず
れの場合においても、有機溶媒相を分取し、そして蒸発
させ、タキサン化合物を含む抽出物を得ることができ
る。
解操作の後、その細胞残渣と酵素液のそれぞれについ
て、有機溶媒抽出を行う。細胞残渣に、直接、有機溶媒
( ジクロロメタン、メタノール、エタノール、クロロホ
ルム、等) を加える。この時、超音波を使用すると、効
率的に抽出できる。一方、酵素液に、ジクロロメタン、
クロロホルム、等の水に対して親和性が低く、タキサン
化合物を溶かし易い有機溶媒を加え、分配を行う。いず
れの場合においても、有機溶媒相を分取し、そして蒸発
させ、タキサン化合物を含む抽出物を得ることができ
る。
【００１０】
【実施例】実施例1: 磨砕処理による細胞壁分解及びその後の有機
溶媒抽出 イチイの樹皮1gをホモジェナイザーにより破砕し、直径
約15cmの乳鉢に入れ、次に15mlのメタノールを添加し、
乳棒によりペースト状になるまでよく磨砕した。磨砕処
理中にメタノールが揮発する度に新たなメタノールを添
加していった。次いで、得られた磨砕物に、ジクロロメ
タンとメタノールとの混合液(1:1) 100ml を添加し、1
時間攪拌した後、超音波処理を10分間行った。この懸濁
液を濾過し、有機溶媒をエバポレーターにより蒸発さ
せ、そしてタキサン化合物を含む抽出物を得た。この抽
出操作を3 回繰り返した。
溶媒抽出 イチイの樹皮1gをホモジェナイザーにより破砕し、直径
約15cmの乳鉢に入れ、次に15mlのメタノールを添加し、
乳棒によりペースト状になるまでよく磨砕した。磨砕処
理中にメタノールが揮発する度に新たなメタノールを添
加していった。次いで、得られた磨砕物に、ジクロロメ
タンとメタノールとの混合液(1:1) 100ml を添加し、1
時間攪拌した後、超音波処理を10分間行った。この懸濁
液を濾過し、有機溶媒をエバポレーターにより蒸発さ
せ、そしてタキサン化合物を含む抽出物を得た。この抽
出操作を3 回繰り返した。
【００１１】実施例2: 細胞壁分解酵素処理による細胞
壁分解及びその後の有機溶媒抽出 ホモジェナイザーにより破砕したイチイの樹皮を、細胞
壁分解酵素である1%ドリセラーゼ水溶液( マンニトール
0.6M、塩化カルシウム10mM、pH 5.7) 100ml に混和し、
24時間、35℃において穏やかに攪拌した。次いで、その
混和物を遠心分離により、酵素液と沈殿物に分離し、そ
れぞれからタキサン化合物の有機溶媒抽出を行った。酵
素液にはジクロロメタン100ml を添加し、よく攪拌する
ことによりタキサン化合物をジクロロメタン相に分配さ
せた。次に分液ロートを使用してジクロロメタン相だけ
を分取し、これをエバポレーターにより蒸発乾固させ、
タキソン化合物を含む抽出物を得た。沈殿物にはジクロ
ロメタンとメタノールとの混合液(1:1) 100ml を添加
し、1 時間激しく攪拌した後、超音波処理を10分間行っ
た。この懸濁液を濾過し、有機溶媒をエバポレーターに
より蒸発させ、そしてタキサン化合物を含む抽出物を得
た。酵素液及び沈殿物からの抽出操作を3 回繰り返し
た。
壁分解及びその後の有機溶媒抽出 ホモジェナイザーにより破砕したイチイの樹皮を、細胞
壁分解酵素である1%ドリセラーゼ水溶液( マンニトール
0.6M、塩化カルシウム10mM、pH 5.7) 100ml に混和し、
24時間、35℃において穏やかに攪拌した。次いで、その
混和物を遠心分離により、酵素液と沈殿物に分離し、そ
れぞれからタキサン化合物の有機溶媒抽出を行った。酵
素液にはジクロロメタン100ml を添加し、よく攪拌する
ことによりタキサン化合物をジクロロメタン相に分配さ
せた。次に分液ロートを使用してジクロロメタン相だけ
を分取し、これをエバポレーターにより蒸発乾固させ、
タキソン化合物を含む抽出物を得た。沈殿物にはジクロ
ロメタンとメタノールとの混合液(1:1) 100ml を添加
し、1 時間激しく攪拌した後、超音波処理を10分間行っ
た。この懸濁液を濾過し、有機溶媒をエバポレーターに
より蒸発させ、そしてタキサン化合物を含む抽出物を得
た。酵素液及び沈殿物からの抽出操作を3 回繰り返し
た。
【００１２】実施例3: 磨砕処理と細胞壁分解酵素処理
の両方による細胞壁分解及びその後の有機溶媒抽出 イチイの樹皮1gをホモジェナイザーにより破砕し、実施
例1 と同様の乳鉢に入れ、15mlの水を添加し、乳棒によ
りペースト状になるまでよく磨砕した。得られた磨砕物
に、実施例2 と同様の細胞壁分解酵素処理を施した。そ
の処理後、実施例2 と同様の有機溶媒抽出を行い、タキ
サン化合物を含む抽出物を得た。
の両方による細胞壁分解及びその後の有機溶媒抽出 イチイの樹皮1gをホモジェナイザーにより破砕し、実施
例1 と同様の乳鉢に入れ、15mlの水を添加し、乳棒によ
りペースト状になるまでよく磨砕した。得られた磨砕物
に、実施例2 と同様の細胞壁分解酵素処理を施した。そ
の処理後、実施例2 と同様の有機溶媒抽出を行い、タキ
サン化合物を含む抽出物を得た。
【００１３】実施例4: 従来技術の有機溶媒抽出 従来技術の抽出方法と比較するために、細胞壁分解操作
を施さないイチイ樹皮からの抽出を行った。破砕したイ
チイ樹皮1gにジクロロメタンとメタノールとの混合液
(1:1) 100ml を添加し、16時間激しく攪拌した後、超音
波処理を10分間行った。この抽出操作を3 回繰り返し、
溶媒をエバポレーターにより蒸発させ、抽出物を得た。
を施さないイチイ樹皮からの抽出を行った。破砕したイ
チイ樹皮1gにジクロロメタンとメタノールとの混合液
(1:1) 100ml を添加し、16時間激しく攪拌した後、超音
波処理を10分間行った。この抽出操作を3 回繰り返し、
溶媒をエバポレーターにより蒸発させ、抽出物を得た。
【００１４】実施例5: 抽出物中のタキサン化合物及び
タキソールの定量 実施例1 〜4 により得られた抽出物中のタキサン化合物
及びタキソールの定量において、各種モノクロナール抗
体によるELISA 法(Enzyme Linked Immuno Solvent Assa
y)を使用した。これらのモノクロナール抗体は、Hawaii
BiotechnologyGroup Inc. により入手した。さらに、
抽出物のODS カラム溶出時間の測定及びUV吸収スペクト
ルの観測、質量分析(mass spectrometry) による分子量
測定を行い、抽出物中にタキサン化合物及びタキソール
が存在することを確認した。これらの定量結果を以下の
表1 中に示す。
タキソールの定量 実施例1 〜4 により得られた抽出物中のタキサン化合物
及びタキソールの定量において、各種モノクロナール抗
体によるELISA 法(Enzyme Linked Immuno Solvent Assa
y)を使用した。これらのモノクロナール抗体は、Hawaii
BiotechnologyGroup Inc. により入手した。さらに、
抽出物のODS カラム溶出時間の測定及びUV吸収スペクト
ルの観測、質量分析(mass spectrometry) による分子量
測定を行い、抽出物中にタキサン化合物及びタキソール
が存在することを確認した。これらの定量結果を以下の
表1 中に示す。
【００１５】
【表１】
【００１６】以上の操作をイチイの葉及びTaxus bacc
ata 由来の培養細胞についても行い、そしてさらに、細
胞壁分解酵素としてセルラーゼを使用した操作を行っ
た。その結果を以下の表2 及び3 中に示す。
ata 由来の培養細胞についても行い、そしてさらに、細
胞壁分解酵素としてセルラーゼを使用した操作を行っ
た。その結果を以下の表2 及び3 中に示す。
【００１７】
【表２】
【００１８】
【表３】
【００１９】
【発明の効果】磨砕処理単独においては、従来技術の抽
出法に比べ1.2 倍〜1.5 倍の抽出量の増加が見られ、細
胞壁分解酵素単独においても、従来技術の抽出法に比べ
1.2 倍〜1.4 倍の抽出量の増加が見られる。磨砕処理と
細胞壁分解処理との組み合わせにおいては、従来技術の
抽出法に比べ2 倍〜3 倍の抽出量の増加が見られる。こ
れらの結果から、細胞壁の選択的な分解がタキサン化合
物の抽出効率に大きく影響を及ぼすことが確認された。
本発明は、従来技術の抽出法に比べて、イチイ細胞の細
胞壁の分解によりタキサン化合物の抽出効率を、かなり
向上させることを可能にした。本発明は、例えば、現在
不足している抗癌剤、タキソールの供給量の増大に、寄
与することができる。さらに、その抽出効率の向上が原
材料であるイチイ細胞の必要量を従来よりも抑制するこ
とができるので、本発明は、タキサン化合物の製造のた
めの原料コストの低減に寄与することもできる。また、
本発明は、イチイ植物の伐採に伴う自然環境の破壊を軽
減する効果をも有する。
出法に比べ1.2 倍〜1.5 倍の抽出量の増加が見られ、細
胞壁分解酵素単独においても、従来技術の抽出法に比べ
1.2 倍〜1.4 倍の抽出量の増加が見られる。磨砕処理と
細胞壁分解処理との組み合わせにおいては、従来技術の
抽出法に比べ2 倍〜3 倍の抽出量の増加が見られる。こ
れらの結果から、細胞壁の選択的な分解がタキサン化合
物の抽出効率に大きく影響を及ぼすことが確認された。
本発明は、従来技術の抽出法に比べて、イチイ細胞の細
胞壁の分解によりタキサン化合物の抽出効率を、かなり
向上させることを可能にした。本発明は、例えば、現在
不足している抗癌剤、タキソールの供給量の増大に、寄
与することができる。さらに、その抽出効率の向上が原
材料であるイチイ細胞の必要量を従来よりも抑制するこ
とができるので、本発明は、タキサン化合物の製造のた
めの原料コストの低減に寄与することもできる。また、
本発明は、イチイ植物の伐採に伴う自然環境の破壊を軽
減する効果をも有する。
Claims (2)
- 【請求項１】 イチイ細胞からのタキサン化合物の抽出
方法であって、以下の段階: (i) イチイ細胞の細胞壁を分解し、(ii) (i) で得られ
た分解産物に抽出処理を施して、タキサン化合物を含む
抽出物を得る、を含んで成る方法。 - 【請求項２】 前記細胞壁の分解が、磨砕処理及び細胞
壁分解酵素処理から成る群から選ばれた少なくとも1 に
よる、請求項１に記載の方法。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP7081554A JPH08277280A (ja) | 1995-04-06 | 1995-04-06 | イチイ細胞からのタキサン化合物の抽出方法 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP7081554A JPH08277280A (ja) | 1995-04-06 | 1995-04-06 | イチイ細胞からのタキサン化合物の抽出方法 |
Publications (1)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH08277280A true JPH08277280A (ja) | 1996-10-22 |
Family
ID=13749513
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP7081554A Withdrawn JPH08277280A (ja) | 1995-04-06 | 1995-04-06 | イチイ細胞からのタキサン化合物の抽出方法 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JPH08277280A (ja) |
Cited By (3)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2000204090A (ja) * | 1999-01-07 | 2000-07-25 | Jean Rioult | ポリマ―樹脂カラムを用いる工業用分取低圧クロマトグラフィ―によるパクリタキセルおよび他の関連タキサンの分離および精製 |
| CN102363612A (zh) * | 2011-11-03 | 2012-02-29 | 赵华 | 一种简便高效提取紫杉醇的方法 |
| CN106975536A (zh) * | 2017-04-11 | 2017-07-25 | 浙江大德龙生物技术有限公司 | 一种紫杉醇提纯用超声波原料粉碎装置 |
-
1995
- 1995-04-06 JP JP7081554A patent/JPH08277280A/ja not_active Withdrawn
Cited By (4)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2000204090A (ja) * | 1999-01-07 | 2000-07-25 | Jean Rioult | ポリマ―樹脂カラムを用いる工業用分取低圧クロマトグラフィ―によるパクリタキセルおよび他の関連タキサンの分離および精製 |
| CN102363612A (zh) * | 2011-11-03 | 2012-02-29 | 赵华 | 一种简便高效提取紫杉醇的方法 |
| CN106975536A (zh) * | 2017-04-11 | 2017-07-25 | 浙江大德龙生物技术有限公司 | 一种紫杉醇提纯用超声波原料粉碎装置 |
| CN106975536B (zh) * | 2017-04-11 | 2018-10-19 | 浙江大德龙生物技术有限公司 | 一种紫杉醇提纯用超声波原料粉碎装置 |
Similar Documents
| Publication | Publication Date | Title |
|---|---|---|
| RU2107065C1 (ru) | Способ получения 10-дезацетилбаккатина iii | |
| US5736366A (en) | Process for obtaining 10-deacetylbaccatin III | |
| US5475120A (en) | Method for the isolation and purification of taxol and its natural analogues | |
| JP4563632B2 (ja) | 天然資源からのパクリタキセルの抽出および精製方法 | |
| SI9200054A (en) | Methods and composition for isolating taxanes | |
| EP1140885A1 (en) | Method for high yield extraction of paclitaxel from paclitaxel-containing material | |
| TWI242010B (en) | Production of taxol and taxanes | |
| CN1958580A (zh) | 一种从人工种植南方红豆杉中全株提取紫杉醇的方法 | |
| WO2002038556A2 (en) | Process for mass production of gmp paclitaxel and related taxanes | |
| JPH08277280A (ja) | イチイ細胞からのタキサン化合物の抽出方法 | |
| US7169307B2 (en) | Process for the extraction of paclitaxel and 9-dihydro-13-acetylbaccatin III from Taxus | |
| CN1150179C (zh) | 一种从红豆杉类植物的可再生部分中分离10-脱乙酰浆果赤霉素iii的方法 | |
| CN104244933A (zh) | 从木材制备紫杉叶素的方法 | |
| EP1818328A1 (en) | Chromatographic method for the isolation and purification of taxane derivatives | |
| US5965752A (en) | Preparative scale isolation and purification of taxanes | |
| KR101756529B1 (ko) | 물을 이용한 파클리탁셀 추출물의 전처리 방법 | |
| Phuc et al. | Screening for paclitaxel and other taxanes in kernel and shell of Corylus avellana (Hazelnut) | |
| KR0183550B1 (ko) | 흡착제를 이용한 식물체 대사 물질의 초임계 유체 추출방법 | |
| RU2373198C2 (ru) | СПОСОБЫ ПОЛУЧЕНИЯ ПАКЛИТАКСЕЛА ИЗ РАСТЕНИЙ РОДА Taxus | |
| JPH0420596B2 (ja) | ||
| JPH06157329A (ja) | タキソール類含有レジンの効率的な抽出方法 | |
| CA2536000C (en) | Process for the extraction of paclitaxel and 9-dihydro-13-acetylbaccatin iii from taxus | |
| JPH0940567A (ja) | タキソールおよびタキサンテルペノイド類の製造方法 | |
| CN110639225A (zh) | 一种萃取生物碱的方法 | |
| KR19980078646A (ko) | 주목잎으로부터 탈속을 추출하는 방법 |
Legal Events
| Date | Code | Title | Description |
|---|---|---|---|
| A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20020702 |