JPH0823995A - 宿主細胞由来のプロテアーゼで低分子化され得る蛋白質の製造方法 - Google Patents

宿主細胞由来のプロテアーゼで低分子化され得る蛋白質の製造方法

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JPH0823995A
JPH0823995A JP6186602A JP18660294A JPH0823995A JP H0823995 A JPH0823995 A JP H0823995A JP 6186602 A JP6186602 A JP 6186602A JP 18660294 A JP18660294 A JP 18660294A JP H0823995 A JPH0823995 A JP H0823995A
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protease derived
urokinase
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Muneo Tsujikawa
宗男 辻川
Ken Okabayashi
謙 岡林
Masanori Morita
将典 森田
Toshizumi Tanabe
利住 田辺
Koichi Yamauchi
紘一 山内
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 宿主細胞由来のプロテアーゼで低分子化され
得る蛋白質を分泌産生する宿主細胞をアミノ酸,リン酸
塩,アンモニウム塩および非イオン界面活性剤からなる
群から選択される少なくとも1種を含有する培地中で培
養し、該蛋白質を採取することを特徴とする宿主細胞由
来のプロテアーゼで低分子化され得る蛋白質の製造方
法。当該蛋白質を採取する方法が、アンモニウム塩の存
在下でカラムクロマト処理をすることを特徴とする宿主
細胞由来のプロテアーゼで低分子され得る蛋白質の製造
方法である。 【効果】 遺伝子工学的手法により製造されるプロテア
ーゼで低分子化されうる蛋白質を完全体の状態で大量に
製造することができる。宿主細胞の増殖の亢進、該蛋白
質の産生量の向上、宿主細胞からの分泌が促進される。
また、培養上清中に分泌された該蛋白質の低分子化を有
効に抑制することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、宿主細胞由来のプロテ
アーゼで低分子化され得る不安定な蛋白質を安定にかつ
大量に製造する方法に関する。詳細には、遺伝子操作に
より得られる該蛋白質を産生分泌する宿主細胞を、特定
の物質を配合する培地中で培養することによって宿主細
胞の増殖を高めるとともに該蛋白質の産生、分泌を促
し、かつ低分子化を抑制することによる、宿主細胞由来
のプロテアーゼで低分子化され得る蛋白質の大量製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術・発明が解決しようとする課題】線維素溶
解に係わるプラスミノーゲン活性化因子には、血管内皮
細胞の産生する組織性のt−PA、ウロキナーゼ(U
K)などが知られている。しかし、ウロキナーゼは大量
に用いると、凝固・線溶諸因子の分解並びに活性化を惹
起し、出血傾向を誘起する欠点を有している。これに対
して、本発明者らは人腎細胞によって産生されるヒトウ
ロキナーゼの不活性型前駆物質〔以下、プロウロキナー
ゼという。特開昭60−62981号公報、J. Biol. C
hem., 260, 12 377 (1985)〕が、血栓を構成する線維で
あるフィブリンに対して特異的な親和性を有し、フィブ
リンを選択的に分解するなどの血栓溶解特性を有し、さ
らに好ましいことに、当該プロウロキナーゼにはウロキ
ナーゼと異なり出血傾向を惹起するという欠点がないこ
とを見出した〔Cell Struc. Func., 10, 151 (1985)
〕。したがって、このような優れた特性を有するプロ
ウロキナーゼは線維素溶解酵素として臨床上の幅広い利
用が期待される。
【0003】このような状況で、近年プロウロキナーゼ
等の有用な蛋白質を遺伝子組換え技術を用いて大量に製
造しようとする試みがなされている。特に分泌系を有す
る組換体(酵母)を利用する製造は、製造された蛋白質
の単離・精製が簡便であるという利点を有すること等か
らその方法について種々検討されている。しかし、Sacc
haromyces cerevisiaeを宿主細胞とした場合は、培地へ
の分泌量が低く、大量生産が困難であることが報告され
ている〔Gene, 99, 235-241, 1991 、J. Biol. Chem.,
265, (2), 801-807, 1990 〕。また、本発明者らは、ヒ
ト血清アルブミンやインベルターゼの場合に分泌量の増
加効果が得られたピキア酵母(Pichia pastoris) を宿主
細胞として(Bio/Technology, 5, 1305-1308, 1985)、
プロウロキナーゼについて同様に検討したが、ヒト血清
アルブミン等の場合と比較して当該蛋白質の培地への分
泌量は低く、菌体にかなりのプロウロキナーゼが分泌さ
れずに残存していた。
【0004】さらに本発明者らは、当該ピキア酵母をY
PM培地で培養した場合、培養上清にインタクトの蛋白
質と思われる50Kのもの以外に47Kや30K前後の
分解物が多く存在していることに気がついた。この47
K蛋白質は、EGFドメインを認識するモノクローナル
抗体によるウェスタンブロットの結果からインタクトな
プロウロキナーゼのN末端が欠失したものであると判断
され、培養上清に存在する宿主細胞等に由来するプロテ
アーゼによって、プロウロキナーゼが低分子化されるも
のと考えられた。また、プロウロキナーゼと同様に、宿
主細胞に由来するプロテアーゼにより低分子化されてし
まい、組換えDNA技術による量産が難しい蛋白質も知
られている(マウスEGF:Clare J.I.ら、Gene, 105,
205-212, 1991;ヒトEGF:米国特許WO90034
31;β−エンドルフィン:Bitter, G.A.ら、Proc. Na
tl. Acad. Sci. USA.,81, 5330, 1984等)。従って、こ
のような有用な蛋白質の、臨床分野を始めとする各分野
での実用化を図るために、上記問題を解決し、組換えD
NA技術による有用蛋白質の製造方法の確立が望まれて
いる。
【0005】本発明はかかる技術的背景の下に、宿主細
胞由来のプロテアーゼで低分子化され得る蛋白質の醗酵
学的もしくは遺伝子工学的手法による製造に関し、該蛋
白質を、低分子化されることなく大量に製造する方法を
提供することを課題とする。詳細には、宿主細胞に、宿
主細胞由来のプロテアーゼにより低分子化され得る蛋白
質を安定にかつ大量に産生・分泌させ、さらには分泌後
の低分子化をも抑制することにより、該蛋白質を大量に
製造する方法を提供することを課題とする。
【0006】
【発明が解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、組換え宿主細胞を
酸性アミノ酸,塩基性アミノ酸,リン酸塩,アンモニウ
ム塩および非イオン性界面活性剤から選択される少なく
とも1種を含有する培地中で培養することにより、宿主
細胞由来のプロテアーゼにより低分子化され得る蛋白質
が大量に産生・分泌されること及び培地中での該プロテ
アーゼによる低分子化が抑制されることを見出した。さ
らに、培地上清をアンモニウム塩の存在下でカラムクロ
マト処理することにより、目的の蛋白質の低分子化が効
果的に抑制され、大量の目的蛋白質が培地上清から単離
できることを見出して本発明を完成した。
【0007】すなわち、本発明は宿主細胞由来のプロテ
アーゼで低分子化され得る蛋白質を分泌産生する宿主細
胞、就中ピキア酵母を酸性アミノ酸,塩基性アミノ酸,
リン酸塩,アンモニウム塩および非イオン界面活性剤か
らなる群から選択される少なくとも1種を含有する培地
中で培養し、得られる培養上清から該蛋白質を採取する
ことを特徴とする宿主細胞由来のプロテアーゼで低分子
化され得る蛋白質の製造方法である。さらに本発明は、
当該製造方法における培養上清から宿主細胞由来のプロ
テアーゼで低分子化され得る蛋白質を採取する方法が、
アンモニウム塩の存在下でカラムクロマト処理、好まし
くは疎水性カラムクロマト処理および陽イオン交換カラ
ムクロマト処理をすることを特徴とする、宿主細胞由来
のプロテアーゼで分解され得る蛋白質の製造方法であ
る。さらにまた本発明は、プロウロキナーゼを産生分泌
する形質転換体(ピキア酵母)を提供する。
【0008】本発明でいう宿主細胞由来のプロテアーゼ
とは、宿主細胞の染色体遺伝子にコードされるプロテア
ーゼをいう。かかるプロテアーゼは、酵母では現在約3
0種類以上見つかっており、液胞(yscA, yscB, yscY)
、ミトコンドリア(yscMpI)、ペリプラズム(yscII) 等
に存在している。細胞内では、蛋白の分解、窒素代謝、
前駆体のプロセッシング等に関与していることが知られ
ている(Hirsch, H. H. et al, Molecular and Cell Bio
logy of Yeasts, p.134-200, 1989)。
【0009】本発明の製造方法が対象とする蛋白質は、
上記の宿主細胞由来のプロテアーゼの作用により低分子
化され得る蛋白質であれば特に限定されない。具体的に
はプロウロキナーゼ,ヒト組織プラスミノーゲン活性化
因子,血液凝固第IX因子,血液凝固第X因子,プロテイ
ンC,インターフェロン,エピダーマルグロスファクタ
ー(以下、EGFという)およびβ−エンドルフィン等
が例示される。特に好ましくは、プロウロキナーゼであ
る。
【0010】また本発明が対象とする蛋白質は、天然由
来の蛋白質に限定されず、天然の蛋白質が遺伝的に変異
してなる変異体および人工的に修飾してなる誘導体であ
ってもよい。例えばプロウロキナーゼの場合、天然型プ
ロウロキナーゼのエピダーマルグロースファクタードメ
インの全領域もしくはその一部を欠失、または該全領域
もしくはその一部を他のアミノ酸残基で置換してなる蛋
白質分子、プロウロキナーゼのフィンガードメインの全
領域もしくはその一部を欠失、または該残領域もしくは
の一部を他のアミノ酸残基で置換してなる蛋白質等が挙
げられる(特開平3−87180号、特開平3−871
81号、特開平5−95786号公報)。より具体的に
は、天然型プロウロキナーゼのN末端から302位のア
スパラギン残基をグルタミン酸残基に置換したプロウロ
キナーゼ誘導体、および天然型プロウロキナーゼのC末
端側に血栓親和性を有するAnnexin V 蛋白を結合させた
融合蛋白が挙げられる(US07/697364)。こ
れらの誘導体は、アスパラギン結合型糖鎖の付加しない
無糖鎖型のプロウロキナーゼであり、血栓親和性が高い
ため血栓溶解剤としての応用が期待されるものである。
【0011】本発明で用いられる宿主細胞は、上述のプ
ロテアーゼにより低分子化され得る蛋白質を分泌産生し
うるものであれば特に限定されず、天然に由来するもの
及び遺伝子操作により得られるものの別を問わない。ま
た、既に公知文献に記載されているものの他、今後開発
されるものであっても適宜利用することができる。具体
的には、宿主細胞由来のプロテアーゼにより低分子化さ
れ得る蛋白質をコードする遺伝子を細胞内で発現して該
蛋白質を産生し、かつ菌体外に分泌する機能を有する
菌、大腸菌,酵母,カビおよび枯草菌等が挙げられる。
具体的には酵母菌、中でもピキア属,サッカロマイセス
属であり、より具体的にはピキア・パストリス(Pichia
pastoris)GTS115(his 4)(NRRL寄託番号Y
−15851)等が例示される。
【0012】遺伝子組換え操作により、上記のプロテア
ーゼにより低分子化され得る蛋白質を分泌産生しうる宿
主細胞を調製する方法は、公知並びにそれに準じた手法
を採用することにより実施することができる。例えば、
プロウロキナーゼを産生分泌する宿主の調製方法として
は特開昭60−180591号(サッカロマイセス
属)、ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子を産生分泌
する宿主の調製方法としては、Transfusion Medicine,
p303-313, (1986)等が例示される。また、ピキア酵母を
宿主細胞とする場合は、培地中のメタノールによって強
力に誘導されるAOX遺伝子のプロモーターに目的蛋白
質の遺伝子を常法に従って接続することにより調製する
ことができる。この場合、発現ベクターは、自律増殖型
および染色体組み込み型の両者がともに用いられるが、
好ましくは染色体組み込み型のものである。発現ベクタ
ーとしてより好ましくは、AOX遺伝子の5’と3’の
非翻訳領域を両端にもち、AOXプロモーター,外来遺
伝子,AOXターミネーターの他に選択マーカーである
HIS4遺伝子を有する直鎖型ベクターである。形質転
換は、スフェロプラスト法(Cregg, J, M.ら、Mol. Cel
l. Biol., 5, 3376-3385, 1983) 、アルカリカチオン法
(Ito, H.,ら、J. Bacteriol.,153,(1)163-168, 1983)
のいずれの方法をも使用することができる。また、宿主
細胞として好ましくはヒスチジン要求性(his−)を
有する株である。かかる株を使用することにより、発現
ベクターの導入の有無を容易に知ることができる。すな
わち、HIS4遺伝子を含有するベクターが導入された
宿主細胞は、そのヒスチジン栄養要求性が消失しこれを
クローニングの指標とすることができるのである。な
お、これまでピキア酵母の分泌発現系としては、Inv
ertase(Tschopp, J, F., ら、Bio/Technology,
5, 1305-1308, 1987) 、マウスEGF(Clare, J. J.
ら、Gene, 105, 205-212, 1991) 、ウシライソザイム(D
igan, M. E, ら、Bio/Technology, 7, 160-164, 1989)
の高産生の報告があるが、プロウロキナーゼについての
報告はない。
【0013】本発明の製造方法は、宿主細胞由来のプロ
テアーゼにより低分子化され得る蛋白質を分泌産生しう
る宿主細胞を酸性アミノ酸,塩基性アミノ酸,リン酸
塩,アンモニウム塩及び非イオン性界面活性剤からなる
群から選択される少なくとも一種を含有する培地で培養
することを特徴とする。これにより宿主細胞由来のプロ
テアーゼにより低分子化され得る蛋白質を完全体の状態
で培養上清から大量に取得することが可能となる。すな
わち、当該培養方法は、目的蛋白質の宿主細胞内での発
現、産生効率の向上、菌体外への分泌の促進またはプロ
テアーゼによる低分子化の抑制に寄与するものと考えら
れる。
【0014】本発明で用いられる酸性アミノ酸としては
アスパラギン酸およびグルタミン酸等が、また塩基性ア
ミノ酸としてはアルギニンおよびリジン等が例示され
る。好ましくは、アルギニンおよびグルタミン酸であ
る。また、上記に例示するアミノ酸を1種もしくは数種
組み合わせて用いることもできる。培地中のアミノ酸含
有量は、通常0.02〜0.5M程度、好ましくは0.
05〜0.3M程度、より好ましくは0.1M程度であ
る。当該アミノ酸を含有する培地で本発明の宿主細胞を
培養することにより、菌体の増殖が亢進し、また産生さ
れた蛋白質の分解が抑制される効果が得られる。
【0015】本発明で用いられるリン酸塩としては、リ
ン酸アンモニウムおよびリン酸ナトリウム等が例示され
る。培地中のリン酸塩の含有量は、2〜5w/v%程
度、好ましくは4w/v%程度である。また、本発明で
用いられるアンモニウム塩としては、リン酸アンモニウ
ム、炭酸アンモニウム等が例示される。培地中のアンモ
ニウム塩の含有量は、2〜5w/v%程度、好ましくは
4w/v%程度である。
【0016】リン酸塩およびアンモニウム塩として、好
ましくはリン酸アンモニウムの態様であり、より好まし
くは(NH4 2 HPO4 とNH4 2 PO4 との組合
せの態様である。培地中の(NH4 2 HPO4 および
NH4 2 PO4 の含有量としては総量で2〜5w/v
%、好ましくは4w/v%程度が挙げられる。リン酸塩
およびアンモニウム塩、就中(NH4 2 HPO4 およ
びNH4 2PO4 を含有する培地で本発明の宿主細胞
を培養することにより、宿主細胞から産生分泌されるプ
ロテアーゼで低分子化され得る蛋白質の分解が有効に抑
制されるという効果が得られる。
【0017】また、本発明で用いられる培地は、さらに
非イオン性界面活性剤を含有していてもよい。用いられ
る非イオン性界面活性剤としては、トライトンX−10
0,トゥイーン20,トゥイーン80,ノニデットP−
40等が例示され、好ましくはトライトンX−100で
ある。培地中の非イオン性界面活性剤の含有量は、0.
005〜0.03w/v%程度、好ましくは0.01w
/v%程度である。
【0018】本発明で用いられる培地は、上記酸性アミ
ノ酸,塩基性アミノ酸,リン酸塩,アンモニウム塩また
は非イオン性界面活性剤のうちいずれか少なくとも1種
を含有していればよい。好ましくは全ての成分を含有し
ている態様である。なかでもアルギニン、リン酸アンモ
ニウム〔(NH4 2 HPO4 およびNH4 2
4 〕およびトライトンX−100を含有することが好
ましい。
【0019】本発明で用いられる培地は、上記の条件を
満たし、かつ宿主細胞が生育,増殖しうるものである限
り、他の配合成分に関しては特に制限されない。他の配
合成分としては、通常のこの分野で用いられる既知の培
地に含まれる成分が例示される。例えば、一般に炭素源
として各種の糖類(グルコース,グリセロール等)、窒
素源として尿素や硝酸塩等、微量栄養素として各種ビタ
ミン、ヌクレオチド等の他、無機塩としてMg,Ca,
Fe,Na,K,Mn,Co,Cu等が例示される。具
体的には、YNB液体培地〔0.7%アミノ酸非含有イ
ーストナイトロジェンベース(Difco社製) 、2%グルコ
ース〕、YPD液体培地〔1%イーストエキストラクト
(Difco社製) 、2%バクトペプトン(Difco社製) 、2%
グルコース〕等が例示される。また、宿主細胞が、メタ
ノール資化性宿主である場合には、メタノール含有培地
を使用することができる。この場合メタノール濃度は、
0.01〜5%程度であり、具体的にはYPM培地〔1
%酵母抽出物、2%バクトペプトン、0.01〜5%メ
タノール〕が例示される。
【0020】よって、本発明で用いられる培地は、従来
公知の培地に上記のアミノ酸、リン酸塩,アンモニウム
塩または非イオン性界面活性剤を添加配合することによ
り簡便に調製することができる。
【0021】また、培地のpHは中性、弱塩基性または
弱酸性のいずれであってもよい。好ましくはpH6〜8
である。
【0022】培養は、上記培地を用いて、常法に準じ
て、菌体が目的の蛋白質を最大量産生し、かつ効率よく
分泌する条件を適宜選択して行うことができる。培養温
度としては、通常15〜43℃、好ましくは20〜30
℃が挙げられ、培養時間は通常1〜1000時間程度が
例示される。また必要により通気下で培養することもで
きる。なお、本培養に先立って、同様の条件で前培養す
ることもできる。
【0023】かくして培養した後、培養上清に分泌され
た目的の蛋白質は、培養物から公知の分離、精製手段に
より採取することができる。例えば、培養物を限外濾過
もしくは遠心分離にかけて培養上清を取得し、該培養上
清を硫安沈澱等の塩析、ゲル濾過処理、陰イオン交換
体、陽イオン交換体、疎水性クロマト等の各処理に供す
ることにより、目的蛋白質を精製することができる。よ
り具体的には、本発明が対象とする目的蛋白質は宿主細
胞由来のプロテアーゼにより低分子化されやすいため、
以下の方法により培養上清から精製することが好まし
い。
【0024】すなわち、遠心分離法または限外濾過法等
の常法により、分離取得した培養上清を宿主細胞由来の
プロテアーゼが混在する精製の初期段階で、リン酸およ
びアンモニウムを含有する緩衝液を用い、低い蛋白濃度
の条件下でカラムクロマト処理をする方法である。ここ
で用いられる緩衝液としては、アンモニウム塩を含有す
る緩衝液であれば特に限定されない。好ましくは、中性
域(pH6〜8、好ましくはpH7程度)に緩衝能を有
する緩衝液であり、含有するアンモニウム塩の濃度は
0.05〜1.5Mが好ましい。具体的には0.05〜
1.5M リン酸アンモニウム緩衝液(NH4 PO4
pH6〜8)が例示される。アンモニウム塩を含有する
緩衝液を用いることにより、本発明が対象とする蛋白質
のプロテアーゼによる低分子化を有効に抑制し、インタ
クトな蛋白質を高い収率で精製取得することができる。
【0025】カラムクロマト処理としては、陰イオン交
換カラムクロマト処理、陽イオン交換カラムクロマト処
理、ゲル濾過カラムクロマト処理、疎水性カラムクロマ
ト処理、キレート樹脂カラムクロマト処理等の通常蛋白
質の精製、特に醗酵または遺伝子工学的手法により製造
される蛋白質の精製に用いられるカラムクロマト処理が
例示される。なかでも本発明の好ましい態様としては、
疎水性カラムクロマト処理および陽イオン交換カラムク
ロマト処理の組合せが挙げられる。培養上清から目的蛋
白質を単離する方法として、好ましくはアンモニウム塩
を含有する緩衝液、好ましくはリン酸アンモニウム緩衝
液(pH6〜8)を用いて疎水性カラムクロマトグラフ
ィーおよび陽イオン交換カラムクロマトグラフィーを行
う方法が挙げられ、かかる方法により、分解物の少ない
インタクトで比活性の高い目的蛋白質を高い収率で単離
することができる。
【0026】本発明で用いられる疎水性クロマト処理
は、常法に従って行うことができる。疎水性クロマト用
担体としては、炭素数4〜18のアルキル基(ブチル基
型、オクチル基型、オクチルデシル基型等)、フェニル
基を有する不溶性担体が例示される。好適にはフェニル
基型が挙げられ、具体的にはフェニル−セルロース(商
品名:フェニルセルロファイン、生化学工業社製)、フ
ェニル−アガロース(商品名:フェニル−セファロー
ス、ファルマシア製)等が例示される。吸着、溶出条件
は、精製する目的の蛋白質に応じて好ましい条件を適宜
選択することができる。プロウロキナーゼの場合、接触
条件としてはpH6〜8程度、好ましくはpH7程度、
塩濃度0.5〜1.5M程度、好ましくは0.5〜0.
8M程度が挙げられる。溶出条件としてはpH6〜8程
度、好ましくはpH7程度、塩濃度0.1〜1M程度、
好ましくは0.05〜0.5M程度、より好ましくは
0.2M程度である。
【0027】陽イオン交換体処理もまた、常法に従って
行うことができる。陽イオン交換体としては、陽イオン
交換基を有する不溶性担体であればいずれも使用するこ
とができる。陽イオン交換基としてはカルボキシメチル
(CM)基型、スルフォプロピル(SP)基型等が例示
される。好ましくはSP基型であり、具体的には、SP
−アガロース(商品名:S−セファロース、ファルマシ
ア社製)、SP−デキストラン(商品名:SP−セファ
デックス、ファルマシア社製)等が例示される。吸着、
溶出条件は、精製する目的の蛋白質に応じて好ましい条
件を適宜選択することができる。プロウロキナーゼの場
合、接触条件としては、pH6〜8程度、好ましくはp
H7程度、塩濃度0.01〜0.2M程度が挙げられ
る。溶出条件としては、pH6〜8程度、好ましくはp
H7程度、塩濃度0.1〜1M程度が挙げられる。
【0028】
【発明の作用・効果】本発明によれば、遺伝子工学的手
法もしくは醗酵法により製造されるプロテアーゼで低分
子化されうる蛋白質を完全体の状態で大量に製造するこ
とができる。すなわち、本発明でいう培地で該蛋白質を
分泌発現する宿主細胞を培養することにより、宿主細胞
の増殖の亢進、該蛋白質の産生量の向上、宿主細胞から
の分泌が促進される。また、本発明によれば、培養上清
中に分泌された該蛋白質の低分子化を有効に抑制するこ
とができる。なかでも、本発明で用いる非イオン性界面
活性剤は、宿主細胞の増殖や蛋白質の分解抑制には直接
寄与しないが、蛋白質の器具等への吸着等による消失を
抑制する効果を奏する。アミノ酸、就中アルギニンやグ
ルタミン酸は宿主細胞の増殖を亢進し、産生される蛋白
質の分解を抑制する効果を奏する。またリン酸アンモニ
ウムは蛋白質の分解を効果的に抑制する。しかもこれら
のものを組み合わせることにより、宿主細胞の増殖およ
び蛋白質の産生分泌は相乗的に向上する。さらに本発明
の単離方法によれば、精製段階で低分子化されやすい蛋
白質の分解を有効に抑制し、完全体の蛋白質を高い収率
で効率よく精製単離することができる。また、本発明に
より、初めてプロウロキナーゼを分泌産生することがで
きるピキア酵母(形質転換体)を提供することができ
る。
【0029】
【実施例・実験例】本発明をより詳細に説明するため
に、以下に実施例、実験例および参考例を挙げるが、本
発明はこれらにより何ら限定されるものではない。ここ
で用いた全ての酵素は、とくに断らない限り商業的供給
源、例えば宝酒造株式会社等から入手したものである。
酵素反応のための緩衝液および反応条件は特に断らない
限り各酵素の製造元の推奨に従った。
【0030】実施例1 プロウロキナーゼ発現ベクタ
ー、pKO126の構築 pUC19をHindIII で消化した後に、DNAポリ
メラーゼのクレノウ断片でfill-in を行い、pXhoI リン
カー[d(pCCTCGAGG)]を付加してライゲーションした。ア
ンピシリン、イソプロピル−β−D−チオ−ガラクトピ
ラノシド(IPTG )、5−ブロモ−4−クロロ−3−
インドリル−β−D−ガラクトシド(X−GAL)を含
むLB培地中で青色を呈するコロニーから調製したプラ
スミドをpKO110と命名した。当該プラスミドの大
きさはpUC19と大差がなく欠失がないことが予想さ
れ、またXhoI認識部位を有していることが確認され
た。尚、このプラスミドを有する形質転換体がIPT
G、X−GALを含むLB培地上で青色を呈した理由は
挿入したDNA断片が短く、かつ挿入によって遺伝子の
読み枠がずれなかったためであると推測される。
【0031】ムコール・レニン遺伝子由来のシグナル配
列とプロウロキナーゼcDNAをinframe で接続した遺
伝子を含む Saccharomyces cerevisiae 用の発現ベクタ
ーであるプラスミドJUK1(平松ら、Gene, 99, 235-
241, 1991)をBglIIで部分消化した後に、PstIで
消化して、シグナル配列の一部とプロウロキナーゼcD
NAの一部を含む330bpの断片を分離した。なお、
後記配列表配列番号1にプラスミドJUK1が含有する
ムコール・レニン遺伝子由来のシグナル配列のアミノ酸
配列及び塩基配列を示す。OPCカラム(アプライド・
バイオシステムズジャパン社製)を用いて精製した5μ
gずつのリンカーaとb(表1)にT4ポリヌクレオチ
ドキナーゼとATPを添加して37℃で30分間孵置し
て、5’末端をリン酸化した。
【0032】
【表1】
【0033】これらリンカーa,bを混合して70℃で
20分間加熱した後、室温に放置して徐冷した。アニー
リングしたリンカーとプラスミドJUK1から調製した
330bpのPstI−BglII断片を混合してライゲ
ーションした後、エタノール沈澱を行いDNAを回収し
た。沈澱をTEに溶解後、PstI−BglII断片を混
合してライゲーション後、エタノール沈澱を行いDNA
を回収した。該沈澱をTEに溶解後、PstI−Xho
Iで消化して360bpの断片を分離した。この断片を
pKO110から調製した。2.7kbのPstI−X
hoI断片とライゲーションした後に大腸菌に導入して
形質転換を行った。39クローンのアンピシリン耐性コ
ロニーからプラスミドを分離した。制限酵素消化による
一次スクリーニングを行い6クローンのプラスミドを選
びだして、導入したリンカー近傍の塩基配列をリキッド
フェーズ・シークエンサー(ファルマシア社製)で調べ
たところ、5クローンの塩基配列は期待通りの配列であ
った(配列表、配列番号2)。2クローンを選び出して
pKO113およびpKO114(3.05kb)と命
名した(図1)。ムコール・レニンのシグナル配列とプ
ロウロキナーゼcDNAをinframe で接続した遺伝子を
含む Saccharomyces cerevisiae 用の発現ベクターであ
るプラスミドN322Qから調製した890bpのPs
tI−BamHI断片をpUC19にクローニングして
pKO111を得た。さらにpKO111から890b
pのPstI−BamHI断片を調製して、該断片をp
KO113のPstI−BamHI部位へクローニング
してプラスミドpKO116およびpKO117(3.
95kb)を得た(図2)。pKO116をBamHI
とKpnIで消化して3.95kbのDNA断片を分離
した。一方、プロウロキナーゼcDNAを含む哺乳類細
胞用発現ベクターであるpSV−G1−UKをBamH
IとKpnIで消化して320bpのDNA断片を取得
し、pKO116のDNA断片(3.95kb)にライ
ゲートしてプラスミドpKO118を得た。pKO11
8をKpnIで消化した後にT4DNAポリメラーゼを
用いて平滑末端とした後、pXhoIリンカー(宝酒造
社製)を付加した。XhoI消化によって、1.57k
bの断片を分離してpKO110のXhoIサイトへク
ローニングしてプラスミドpKO121を得た。pKO
121をXhoIで消化して1.57kbのDNA断片
を分離して、pAO807NX〔プラスミドpHIL−
D2(インビトロゲン社製)をプラスミドpHIL−D
2をEcoRI消化し、クレノウ断片によりfill-in
し、pXhoIリンカーを付加したのち、XhoI消化
した断片を分離してライゲーション反応を行い調製し
た。〕のクローニング部位であるEcoRI認識部位を
XhoI認識部位に変換したプラスミド〕のXhoIサ
イトにクローニングをした。インサートの方向が順方向
であるpKO126を分離した(図3、図4)。
【0034】実施例2 形質転換体の取得 実施例1で得られたpKO126(10μg)をザイモ
リレース消化後、塩化カルシウム処理してコンピテント
な状態にしたピキア酵母(Pichia pastoris GTS11
5:NRRL寄託番号Y−15851)懸濁液100μ
lに導入し、HIS+ の形質転換体を選択した。該形質
転換体をSD〔0.67% 非含有アミノ酸YNB,2
%デキストロース〕プレート上でストロークして単一コ
ロニーを分離した。pKO126を導入した形質転換体
として30クローンを分離してSC01〜SC30と名
付けた。
【0035】上記で得られたプロウロキナーゼ分泌発現
株SC01〜SC30の中からプロウロキナーゼ産生量
の多い株を選択するために、各株の性状を調べた。 (1)HIS4遺伝子の安定性 SC02,06,08,10,12,13,18,1
9,20,22,24,25,28及びSC29の14
株をYPDプレートに蒔き、30℃で2日間培養した。
単一コロニーを10クローンづつ、HIS+ 選択プレー
ト〔Noble agar 15g, sorbitol 91g, glucose 10g, YNB
(w/o) 3.35g, Biotin 0.2mg/500ml 〕に植菌し、30℃
で2日間培養した。全てのコロニーの増殖が観察され、
いずれもHIS4遺伝子を安定に保持しているものと考
えられた。
【0036】(2)培養 上記の14株を30ml試験管中5mlのYPM1 培地
(メタノール1%含有)で30℃培養を行い、46,7
0,99時間後のプロウロキナーゼ活性(PA活性を指
標として測定)、RPHA、A540 を測定した。その結
果、PA活性は、SC06,08,12が比較的高かっ
た。A540 は吸光度が20以下のもの(SC06,0
8,10,19,22)と、30以上のもの(SC0
2,12,13,18,20,24,25,28,2
9)とに大別された。これらの株のうちUK活性が比較
的高く増殖度の悪いSC06と増殖度の良いSC12を
50mlYPM/300mlフラスコでメタノール濃度
を1,2,3,4,5%に変えた条件で培養した。その
結果、SC06ではメタノール濃度2%および3%の培
地での71時間培養で約20IU/ml、SC12では
メタノール濃度3%の培地での71時間培養で約4.6
IU/mlの発現が認められた。
【0037】(3)ウェスタンブロット SC02,06,13およびSC28について、YPM
1 培地(メタノール1%)およびYPM4 培地(メタノ
ール4%)でそれぞれ2日間培養して、得られた培養上
清のウェスタンブロットを行った。YPM4 培地の培養
上清に約50Kのバンドが認められ、特にSC06でそ
のバンドが濃かった。
【0038】(4)サザンブロット SC02,06,10,12,19,22,29および
ピキア酵母GTS115からそれぞれDNAを抽出し、
染色体上の発現カセットの存在状態をサザン法により調
べた。プローブはAOX1プロモーターに相当するpH
IL−D2(インビトロゲン社製)をNotI−Eco
RI消化した0.9Kb断片とウロキナーゼの構造遺伝
子に相当するpMT015(pUC18にプロウロキナ
ーゼのcDNAが組み込まれたベクター)のXhoI消
化1.2Kb断片を使用し、KpnI,PstI,Nc
oIで消化したDNA断片とのハイブリダイゼーション
を行った。これらの結果から、増殖度が悪くかつPA活
性も低いSC10,19および22株は発現カセットが
シングルコピーでAOX1サイトに置換された状態で存
在していると予想された。また増殖度は悪いがPA活性
が高いSC06株は発現カセットがダブルコピーでAO
X1サイトに置換された状態で存在していた。一方、増
殖度の良いSC02および12株は発現カセットがマル
チコピーでAOX1サイトに挿入された形で組み込まれ
ており、SC29株は発現カセットがAOX1サイト以
外のサイトに組み込まれていると予想された(表2)。
尚、表中Sとは、slowを意味する。
【0039】
【表2】
【0040】実施例3 形質転換体の培養 実施例1〜2で得られたプロウロキナーゼ分泌発現ベク
ターSC06株をYPD培地で30℃、2日間2回植え
継ぎながら前培養し、メタノール2%含有のYPM2
地に0.01%トライトンX−100、0.1Mアルギ
ニン塩酸、2%(NH4 ) 2 HPO4 および2%NH4
2 PO4 を配合してなる培地0.5リットルに540
nmの吸光度(A540 )が0.1となるように植菌し、
30℃で3日間培養した。
【0041】実施例4 プロウロキナーゼの単離 (1) フェニルセファロース−カラムクロマトグラフィー 実施例3で得られた培養上清2.86リットルに、2M
NH4 PO4 (pH7.0)772mlを加えて、最
終濃度0.7M NH4 PO4 となるように調製し、当
該溶液を平衡化用緩衝液0.7M NH4 PO4 (pH
7.0)で平衡化したフェニルセファロースカラム(5
cm i.d.×7.8cm:150ml、ファルマシ
ア社製)に190ml/hrの流速で添加した。添加
後、同平衡化用緩衝液750mlで洗浄し(washI)、
さらに洗浄用緩衝液〔0.5M NH4 PO4 (pH
7.0)〕750mlで洗浄した(washII)。その後、
溶出用緩衝液〔elute I : 0.2M NH4 PO4 (p
H7.0)〕1200mlで150mlずつ8本分取
し、さらに溶出用緩衝液〔elute II: 0.05M NH
4PO4 (pH7.0)〕750ml、溶出用緩衝液〔e
luteIII: 1%トライトンX−100,0.05M N
aPO4 (pH7.0)〕1リットルで溶出した。各画
分のPA活性を測定すると、パス溶液及びwashIにはほ
とんど溶出されず、washIIに6%、elute Iに90%、
elute IIとeluteIIIが各々0.4%であり、elute Iに
大部分の活性が認められた。次に、各溶出画分について
抗UK抗体によるウェスタンブロットを行ったところ、
パス溶液及びwashIにはバンドは認められず、washIIに
は50Kとび47Kとが同程度存在していた。elute II
にはバンドが認められず、eluteIIIには30k以下の大
部分の分解物が溶出された。elute Iでは画分1及び2
に50Kのバンド以外に47Kの明確なバンドが認めら
れ、画分3以降では50Kのメインバンドの他は47K
の含量が少なく、40K以下の分解物が多少存在してい
た。そこで、47Kの含量が少なくPA活性が高かった
画分3から画分6をプールして、次のステップに供し
た。
【0042】(2)Sセファロースカラムクロマトグラ
フィー (1)で得られた画分3から画分6のプール600ml
に1%トライトンX−100 12mlと水588ml
とを加え、平衡化用緩衝液〔0.01%トライトンX−
100,0.1M NH4 PO4 (pH7.0)〕で平
衡化したSセファロースカラム〔2.5cm i.d.
×6.1cm:30ml、ファルマシア社製〕に流速6
0ml/hrで添加した。添加後、平衡化用緩衝液15
0mlで洗浄し(washI)、さらに洗浄用緩衝液〔wash
II: 0.1M NaCl in0.05M NaP
4 :pH7.0,0.01%トライトンX−100〕
150mlで洗浄後、溶出用緩衝液〔0.1〜0.5M
NaCl濃度勾配in0.05M NaPO4 (pH
7.0)、0.01%トライトンX−100〕300m
lで溶出した。その結果、パス溶出液、washI、washII
には、PA活性は殆ど認められず、0.2〜0.3M
NaClの溶出画分にPA活性が認められ、A280 の吸
光度と一致した。各画分を銀染色でみると、画分48ま
ではバンドは認められず画分50から画分56に52k
の薄いバンドが存在し、50kバンドは画分50から画
分68に存在しており、濃い50kバンドが存在する画
分57から画分62には、多少の分解物が確認された。
【0043】(3)濃縮 (2)のステップで52k蛋白が含まれず、50k蛋白
の含量が多かった画分をプールし、限外濾過膜(FILTRO
N STRRED CELLS: フィルトロン・テクノロジー社製)で
濃縮した。濃縮液10mlのPA活性は43000IU
/mlであり、90%の回収率が認められた。また、パ
ス画分52mlには1050IU/mlのPA活性が認
められた。各ステップ毎に蛋白量(modified Lowry法、
Bensadoun A. & Weinstein D.:Anal. Biochem., 70, 24
1-250, 1976)、、PA活性、比活性、回収率、精製度を
求めた(表3)。
【0044】
【表3】
【0045】フェニルセファロースの溶出段階で蛋白量
は1%程度まで減少し、精製度は60倍に上昇した。さ
らにSセファロースの溶出段階で、精製度は141倍ま
で上昇し、最後の濃縮液ではPA活性が4.3×105
IU、蛋白量が2.8mg、比活性が1.5×105
U/mg、回収率45%、精製度が155倍であった。
【0046】(4)得られたプロウロキナーゼの性状の
確認 得られた精製プロウロキナーゼの酵素的性状を確認する
ためにKm値を求め、人腎細胞により産生された天然の
プロウロキナーゼ(以下、トロンボリーゼという。)の
Km値と比較した。その結果、合成基質S−2444
(発色合成試薬、Kabi-Vitrium社製)に対するKm値は
トロンボリーゼで69μM、本発明のプロウロキナーゼ
で75μMとほぼ同一の結果が得られた。また、プラス
ミンによるプロウロキナーゼの活性下の経時的変化もト
ロンボリーゼの場合と比べて大きな差はなかった。
【0047】さらに得られた精製プロウロキナーゼのN
末端アミノ酸配列を決定した。(3)で得られた濃縮液
30μlに2X BJを30μlを加え、95℃で5分
間加熱し、SDS−PAGプレート(10/20、第一
化学)に15μlづつ4レーンにアプライし、電気泳動
後、PVDF膜に70mAで一夜4℃でブロッティング
した。ブロッティング緩衝液は25mMトリス,192
mMグリシン,20%メタノールを使用した。ブロッテ
ィング後、膜を蒸留水で5分間2回洗浄し、クマーシー
染色液(0.1%CBB R−250 in 50%メ
タノール)100mlに10分間漬け、脱色液(50%
メタノール、10%酢酸)80mlで5分間3回脱色
し、さらに蒸留水100mlで10分間、6回洗浄し
た。最後に60%メタノールで1回洗浄し、風乾した。
50K付近のバンドを切り取り、このペプチドのN末端
アミノ酸分析を行った。この結果、N末端アミノ酸配列
は、Ser-Asn-Glu-Leu-X-Gln-Val-Pro-Ser-Asn-Cys-Asp-
Cys-Leu-Asn-Gly-Gly-Thr であり、ヒト腎細胞由来のプ
ロウロキナーゼのN末端アミノ酸配列と一致した。ま
た、用いた発現ベクターはMucor renninのシグナル配列
にプロウロキナーゼのcDNAを接続した態様のもので
あるが、正常な位置でプロセッシングを受けプロウロキ
ナーゼを産生することが確認された。
【0048】実験例1 培地中の各添加物の影響 培地中の各添加物のプロウロキナーゼ産生等に対する影
響をみるために、YPM2 培地(1%酵母抽出物、2%
バクトペプトン、2%メタノール)の各添加物を添加し
た5種類のメタノール培地を調製した 培地1: YPM2 培地2: YPM2 +0.01% TritonX-100 培地3: YPM2 +0.1M Arginie-HCl 培地4: YPM2 +2% (NH4 ) 2 HPO 4 +2% NH 4 H 2 PO
4 培地5: YPM2 +0.01% TritonX-100 +0.1M Arginie-H
Cl+2% (NH4 ) 2 HPO 4+2% NH 4 H 2 PO4 実施例1〜2で得られたプロウロキナーゼ分泌発現ベク
ターSC06株をYPD培地で30℃、2日間2回植え
継ぎながら培養し、300ml容のフラスコにいれた上
記5種類(培地1〜培地5)のメタノール培地50ml
に540nmの吸光度(A540 )が0.1となるように
植菌し(n=3)、30℃で7日間培養した。24時間
毎にサンプリングを行い、A540 測定、PA活性測定、
抗UK抗体によるウェスタンブロットを行った。菌体の
増殖曲線を図5に示す。培地1と培地2はほぼ同じ曲線
を示し、2日目でA540 が21〜23になり、その後漸
減した。培地3では3日目では41.4まで上昇し、そ
の後漸減した。培地4と培地5では1日目の増殖は非常
に遅かったが、その後増殖速度が早くなり、培地4では
4日目に36.4、培地5では42.1まで増加し、そ
の後漸減した。
【0049】フィブリンプレート法によるPA活性を図
6に示す。培地1では3日目で71IU/mlまで上昇
し、その後減少したが、培地2では3倍以上、培地3で
は約4倍の活性上昇が認められた。培地4では培地2よ
りも低く、約2倍程度であった。全ての添加物を加えた
培地5では活性が著しく上昇し、5日目では867IU
/mlであった。
【0050】2日目から6日目までの培養上清をウエス
タンブロットにより経時的に観察した。培地1ではPA
活性が出現した2日目ですでに完全型プロウロキナーゼ
の50KDaバンドはほとんど認められず、33KDa
と29KDaのバンドが主であり、その後33KDaバ
ンドは減少し、29KDaバンドのみが残った。培地2
の場合も培地1と同様の傾向であった。培地3では2日
目で50KDaと47KDaのバンドが等量存在し、3
日目で50KDaバンドが減少し、5日目以降50KD
a、47KDaバンドが消失し、29KDaから35K
Daの分解物が増加した。培地4では3日目までは50
KDaバンドが主であったが、その後減少した。しか
し、培地3のような29KDaから35KDaの分解物
は少なかった。培地5では6日目まで50KDaのバン
ドが主で分解物は少なかった。
【0051】これらの結果から0.01%トライトンX
−100の添加は、菌の増殖やプロウロキナーゼの分解
抑制には影響しないが、PA活性は3倍以上増加してお
り、プロウロキナーゼのフラスコへの吸着を著しく抑え
ているものと予想される。0.1Mアルギニンの添加で
は菌の増殖を2倍程度促進し、中程度の分解抑制効果を
示した。リン酸アンモニウムの添加は菌の増殖を1.5
〜2倍程度促進し、3日目までは分解を著しく抑制し
た。全てを添加した場合、各添加物の相乗効果が認めら
れ、PA活性がYPM培地の約10倍まで上昇し、分解
も著しく抑制された。
【0052】実験例2 培地へのトライトンX−10
0及びアルギニン添加の影響 実施例1〜2で調製したプロウロキナーゼ分泌発現株S
C06をYPD培地(1%酵母抽出物、2%バクトペプ
トン、2%グルコース)で30℃、一夜培養した。その
後、A540 が0.1の濃度となるように300ml容フ
ラスコに入った表4記載の培地各々30mlに植菌し、
30℃で72時間と144時間培養した培養液のA540
とPA比活性を調べた(表4)。
【0053】
【表4】
【0054】0.01%トライトンX−100添加培地
を用いた72時間培養では、基本培地での場合と増殖度
は同じであったが、PA比活性は基本培地の4.6倍で
あった。また、0.1Mアルギニン添加系では増殖度が
亢進し、PA比活性は基本培地の1.6倍であり、0.
01%トライトンX−100+0.1Mアルギニン添加
系ではPA比活性は、基本培地の11倍に上昇した。1
44時間培養後のPA活性は基本培地、0.01%トラ
イトンX−100添加培地、0.1M アルギニン添加
培地では72時間培養後のものと比較して低下傾向であ
ったが、トライトンX−100+アルギニン添加培地で
は漸増していた。次にこれらの培養上清について抗UK
抗体によるウェスタンブロットを行った。72時間培養
の基本培地では30K以下の分解物のみが認められ、ト
ライトンX−100添加では47K、アルギニン添加で
は50Kのうすいバンドが認められた。トライトンX−
100+アルギニン添加では50Kと47Kの濃いバン
ドが存在していた。
【0055】実験例3 培地へのリン酸塩およびアン
モニウム塩添加の影響 SC06株をYPD培地に30℃で一夜培養後、A540
が0.1の濃度になるように300ml容フラスコに表
5に記載の各培地30mlに植菌し、30℃で65時間
培養した(表5)。
【0056】
【表5】
【0057】1%NH4 2 PO4 +1%(NH4 2
HPO4 添加系ではYPM2 基本培地とPA比活性は同
じであったが、0.67%NH4 2 PO4 +1.33
%(NH4 2 HPO4 添加系では約2倍の活性上昇を
示した。また、2%NH4 2 PO4 +2%(NH4
2 HPO4 添加系と1.33%NH4 2 PO4 +2.
67%(NH4 2 HPO4 添加系では約3倍の活性上
昇が認められた。一方、(NH4 2 HPO4 単独添加
では2%、4%ともに増殖を抑制し、かつPA活性も認
められなかった。
【0058】実験例4 培地へのトライトンX−10
0、アルギニン、リン酸塩およびアンモニウム塩添加の
影響 同様にして、基本培地にトライトンX−100、アルギ
ニン、リン酸塩及びアンモニウム塩添加を添加して菌体
の増殖およびPA比活性への影響を調べた。
【0059】
【表6】
【0060】表6から、トライトンX−100+アルギ
ニン添加系に比べ、さらに2%NH4 2 PO4 +2%
(NH4 2 HPO4 を添加した場合には増殖が促進さ
れ、PA活性もさらに1.4倍上昇した。この培養上清
の抗UK抗体によるウェスタンブロットを行った。YP
2 培地では50Kバンドはなかったが、4%リン酸ア
ンモニウム添加では50Kバンドが認められた。トライ
トンX−100+アルギニン添加では50Kと47Kの
バンドがあり、47Kの方が濃かったが、さらに4%リ
ン酸アンモニウムを添加した場合には50Kバンドは主
であり、47Kバンドは少なかった。この結果から、4
%リン酸アンモニウム添加は50Kから47Kへの蛋白
質の低分子化を抑制しているものと考えられた(図
7)。
【0061】実験例5 培地へのグルタミン酸、ベン
ザミジン、アプロチニン、カゼイン水解物、アンモニウ
ム塩、リン酸塩添加の影響 実験例3で効果のあったリン酸アンモニウムについて、
リン酸塩に効果があるのか、アンモニウム塩の効果があ
るのか知るために、NH4 ClとNaPO4 の影響を調
べた。また、YPM2 に0.01%トライトンX−10
0を加えた培地を基本培地とし、それに各化合物を添加
して菌体の増殖およびプロウロキナーゼ産生の影響を調
べた。SC06をYPD培地で一夜培養後、A540
0.1の濃度になるように各培地5ml/チューブに植
菌し、30℃で70時間培養した。結果を表7に示す。
【0062】
【表7】
【0063】PA比活性は0.1Mグルタミン酸添加で
は基本培地の5倍に上昇し、0.1Mアルギニン添加よ
りも効果的であった。1mM,10mMのベンザミジン
添加ではPA活性は低下した。10IU/mlアプロチ
ニンはPA比活性に影響しなかった。また、カゼイン水
解物のうち3%カザミノ酸が菌体の増殖を促進し、基本
培地の約8倍のPA活性の上昇が認められた。また、4
%NH4 Clは菌体増殖およびプロウロキナーゼの産生
量を抑制した。0.25M NaPO4 添加ではpH
7.0以下では増殖は促進しているのもかかわらずPA
比活性は低かった。
【0064】これらの培養上清の抗UK抗体によるウェ
スタンブロットを行った。グルタミン酸、ベンザミンお
よびアプロチニン添加では50Kバンドが主で、47K
バンドは少なかった。3%カザミノ酸では50Kと47
Kバンドが同程度存在していた。4%NH4 Clでは5
0Kバンドのみが認められ30K以下の分解物もほとん
どなかった。0.25M NaPO4 添加ではpH7.
5の培養条件では50Kバンドの下に47Kのうすいバ
ンドが認められた。これらの結果からアンモニウム塩に
50K蛋白の分解を著しく抑制する効果が有るように思
われる。
【0065】次に、上の実験で効果のあったカザミノ
酸、グルタミン酸、アプロチニン、ベンザミジンの添加
実験を行った。結果を表8に示す。
【0066】
【表8】
【0067】30℃、71時間培養でカザミノ酸の濃度
を2%から5%に変えた場合、PA活性は2〜3%で
は、約500IU/mlであったが、4%以上では低下
の傾向であった。また、3%カザミノ酸に0.1Mグル
タミン酸、10IU/mlアプロチニン、1mMベンザ
ミンを添加した場合、PA活性は3%カザミノ酸と同程
度であった。0.25M NaPO4 添加ではpH7.
5でPA活性が基本培地と同程度であったが、pH8.
0以上では増殖が抑制され、活性の低下が認められた。
これらの培養上清の抗UK抗体によるウェスタンブロッ
トを行った。2%から5%カザミノ酸添加ではカザミノ
酸の濃度が高いほど、多少分解は少なかったが、50K
と47Kのバンドはほぼ同程度であった。また、3%カ
ザミノ酸にさらにグルタミン酸、アプロチニン、ベンザ
ミジンを添加した場合、50Kから47Kの分解を抑制
することはできなかった。
【0068】実験1から5の結果から、産生量を上げる
にはトライトンX−100、アルギニン、グルタミン
酸、カザミノ酸が有効であり、50K蛋白から47K蛋
白の分解を防ぐためにはアンモニウム塩、特にリン酸ア
ンモニウムが効果的であった。
【0069】実験例6 インビトロでのプロウロキナー
ゼの分解抑制実験 各添加物の分解抑制効果をみるために下記の実験を行っ
た。ピキア酵母GTS115株をYPM2 培地で144
時間、30℃で培養し、得られた培養物を0.22μm
のフィルターで濾過して培養上清とした。該培養上清3
0μlに各添加物(合計17.5μl)および実施例3
に従ってSC06株の培養上清から精製したプロウロキ
ナーゼ(2.5μl)を添加して反応液(50μl)と
し、シリコナイズしたコニカルチューブに入れて30℃
で24時間インキュベートし、プロウロキナーゼの分解
の程度をウェスタンブロットで調べた。なお、各添加物
の配合量の割合を表9に示す。
【0070】
【表9】
【0071】その結果、0.01%トライトンX−10
0の添加では、分解の状況は添加物無添加と同程度であ
った。0.1Mアルギニン添加では35KDa以下の分
解物は少なかったが、47KDaの分解物がやや見られ
た。リン酸アンモニウム添加および全ての添加では分解
はかなり抑制されていた。
【0072】実験例7 分解産物のN末端アミノ酸配
列 SC06株を添加物無添加のYPM2 培地で培養する
と、完全体のプロウロキナーゼはPA活性が認められた
2日めで既にほとんど存在せず、短時間で30KDa蛋
白(非還元条件)に分解した。この分解物の構造を調べ
るために下記の実験を行った。SC06株をYPM2
地50mlに(300ml容フラスコ)植菌して、30
℃で5日間培養し、その培養液300mlに1M トリ
ス塩酸(pH7.5)16ml、1%トライトンX−1
00 3.2mlを添加し、塩酸でpH7.5に調整
後、抗ウロキナーゼ抗体 formyl-cellulofine カラム
(日本チッソ社製)に供して、平衡化用緩衝液〔50m
Mトリス塩酸(pH7.5)、0.01%トライトンX
−100〕で洗浄後、さらに緩衝液〔50mMトリス塩
酸(pH7.5)、0.5M NaCl、0.01%ト
ライトンX−100〕で洗浄し、溶出液〔0.2M グ
リシン塩酸(pH2.5)、0.5M NaCl、0.
01%トライトンX−100〕で溶出した。PA活性の
ある溶出液をモルカットL(分画分子量10000 、UFP2LG
C24 、ミリポア社製)およびウルトラフリーC3−LG
C(分画分子量10000 、ミリポア社製)で約100 倍に濃
縮したこのサンプルをSDS−PAGEにかけて30K
Daのバンドを切り出して、そこから抽出して得られた
30KDa蛋白質のアミノ酸配列を決定した。その結
果、下記のアミノ酸配列をN末端に有する2本のピーク
が認められた。 Ile-Ile-Gly-Gly-Glu-Phe-Thr-Thr-Ile-Glu-Asn-Gln- Lys-Pro-Ser-Ser-Pro-Pro-Glu-Glu-Leu-Lys-Phe- のアミノ酸配列はプロウロキナーゼのN末端から15
9番目のイソロイシンからの配列に一致し、のアミノ
酸配列はプロウロキナーゼのN末端から136番目のリ
ジンからの配列に一致した。このことから、30KDa
蛋白質は低分子2本鎖タイプのウロキナーゼであると考
えられた。
【0073】参考例 PA活性の測定 PA活性は、Levin, E,G.,らの方法(フィブリンプレー
ト法、J. Cell Bio.,94, 631-636, 1982 )に従って測
定した。60℃の1%寒天溶液に100IU/mlのヒ
トトロンビンを1/50量加えた後、すぐに50mMリ
ン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)、100mM N
aCl、0.1%NaN3 中に1%ウシフィブリノーゲ
ンを溶解した37℃の溶液を等量混合し、水平なプレー
トに添加し、寒天を固化させる。固化した白濁の寒天層
に直径4mmの穴をあけ、サンプルを20μlづつこの
穴に添加し、37℃で12時間放置する。PA活性が存
在すると、白濁した寒天層は透明になった溶解円が認め
られるようになる。この溶解円の直径を測定し、プロウ
ロキナーゼの標準品との比較によりPA活性を測定す
る。
【0074】
【配列表】配列番号:1 配列の長さ:54 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:genomic DNA 起源 プラスミドJUK1 配列の特徴 1-54 S sig peptide 配列 ATG TTG TTC TCT AAG ATC TCC TCT GAT ATC TTG TTG ACC GCT GCA AGC 48 Met Leu Phe Ser Lys Ile Ser Ser Ala Ile Leu Leu Thr Ala Ala Ser 5 10 15 TTC GCG 54 Phe Ala 18
【0075】配列番号:2 配列の長さ:72 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類: 起源 pKO113またはpKO114 配列の特徴 7-60 E sig peptide 61-72 E peptide 配列 CTCGAG ATG TTG TTC TCT AAG ATC TCC TCT GCA ATC TTG TTG ACC GCT 48 Met Leu Phe Ser Lys Ile Ser Ser Ala Ile Leu Leu Thr Ala -15 -10 -5 GCA AGC TTC GCG AGC AAT GAG CTC 72 Ala Ser Phe Ala Ser Asn Glu Leu 1
【図面の詳細な説明】
【図1】プラスミドpKO110、pKO113および
pKO114の構築方法を示す図である。
【図2】プラスミドpKO116およびpKO117の
構築方法を示す図である。
【図3】プラスミドpKO121およびプロウロキナー
ゼ分泌発現ベクターpKO126の構築方法を示す図で
ある。
【図4】プロウロキナーゼ分泌発現ベクターpKO12
6の制限酵素地図を示す図である。
【図5】実施例1における5種類のメタノール培地で培
養したピキア酵母SC06株の増殖を経時的に示した図
である。○:培地1、△:培地2、□:培地3、×:培
地4、●:培地5
【図6】実施例1における5種類のメタノール培地でピ
キア酵母SC06株を培養した培養上清中のPA活性を
経時的に示した図である。○:培地1、△:培地2、
□:培地3、×:培地4、●:培地5
【図7】実験例4で行ったウエスタンブロット(電気泳
動)の結果を示す。 レーン1:YPM2 培地使用 レーン2:YPM2 +2%NH4 2 PO4 + 2%(N
4 2 HPO4 レーン3および4:YPM2 +0.01% トライトンX-100
+0.1M アルギニン レーン5および6:YPM2 +0.01% トライトンX-100
+0.1M アルギニン+2%NH4 2 PO4 + 2%(N
4 2 HPO4
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12N 1/19 8828−4B // C12N 9/72 15/09 ZNA (C12P 21/02 C12R 1:84) (C12N 1/19 C12R 1:84) (C12N 9/72 C12R 1:84) (72)発明者 田辺 利住 大阪府枚方市招提大谷2丁目25番1号 株 式会社ミドリ十字中央研究所内 (72)発明者 山内 紘一 大阪府枚方市招提大谷2丁目25番1号 株 式会社ミドリ十字中央研究所内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 宿主細胞由来のプロテアーゼで低分子化
    され得る蛋白質を分泌産生する宿主細胞を酸性アミノ
    酸,塩基性アミノ酸,リン酸塩,アンモニウム塩および
    非イオン界面活性剤からなる群から選択される少なくと
    も1種を含有する培地中で培養し、得られる培養上清か
    ら該蛋白質を採取することを特徴とする宿主細胞由来の
    プロテアーゼで分解され得る蛋白質の製造方法。
  2. 【請求項2】 アミノ酸がアルギニン,リジン,グルタ
    ミン酸およびアスパラギン酸からなる群から選択される
    少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載
    の宿主細胞由来のプロテアーゼで低分子化され得る蛋白
    質の製造方法。
  3. 【請求項3】 非イオン界面活性剤が、トライトンX−
    100,トゥイーン20,トゥイーン80およびノニデ
    ットP−40からなる群から選択される少なくとも1つ
    であることを特徴とする請求項1または2に記載の宿主
    細胞由来のプロテアーゼで低分子化され得る蛋白質の製
    造方法。
  4. 【請求項4】 宿主細胞が、ピキア酵母であることを特
    徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の宿主細胞由来
    のプロテアーゼで低分子化され得る蛋白質の製造方法。
  5. 【請求項5】 宿主細胞由来のプロテアーゼで低分子化
    され得る蛋白質が、プロウロキナーゼ,ヒト組織プラス
    ミノーゲン活性化因子,血液凝固第IX因子,血液凝固第
    X因子,プロテインC,インターフェロン,エピダーマ
    ルグロースファクター,β−エンドルフィンおよびそれ
    らの変異体または誘導体からなる群から選択されるもの
    であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載
    の宿主細胞由来のプロテアーゼで低分子化され得る蛋白
    質の製造方法。
  6. 【請求項6】 プロウロキナーゼを分泌産生するピキア
    酵母をアルギニン,リン酸アンモニウムおよびトライト
    ンX−100を含有する培地中で培養し、得られる培養
    上清からプロウロキナーゼを採取することを特徴とする
    プロウロキナーゼの製造方法。
  7. 【請求項7】 培養上清から宿主細胞由来のプロテアー
    ゼで低分子化され得る蛋白質を採取する方法が、アンモ
    ニウム塩を含有する緩衝液を用いてカラムクロマト処理
    をすることを特徴とするものである請求項1〜6のいず
    れかに記載の宿主細胞由来のプロテアーゼで低分子化さ
    れ得る蛋白質の製造方法。
  8. 【請求項8】 カラムクロマト処理が、少なくとも疎水
    性カラムクロマトグラフィーおよび陽イオン交換カラム
    クロマトグラフィーであることを特徴とする請求項7記
    載の宿主細胞由来のプロテアーゼで低分子化され得る蛋
    白質の製造方法。
  9. 【請求項9】 プロウロキナーゼを分泌産生するピキア
    酵母。
JP6186602A 1994-07-14 1994-07-14 宿主細胞由来のプロテアーゼで低分子化され得る蛋白質の製造方法 Pending JPH0823995A (ja)

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