JPH08224955A - 液体組成物、インクセット及びこれを用いた画像形成方法と画像形成装置 - Google Patents

液体組成物、インクセット及びこれを用いた画像形成方法と画像形成装置

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JPH08224955A
JPH08224955A JP15169495A JP15169495A JPH08224955A JP H08224955 A JPH08224955 A JP H08224955A JP 15169495 A JP15169495 A JP 15169495A JP 15169495 A JP15169495 A JP 15169495A JP H08224955 A JPH08224955 A JP H08224955A
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豊 倉林
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勝浩 城田
Katsuhiko Takahashi
勝彦 高橋
Keiichi Murai
啓一 村井
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 画像濃度が高く、紙上での定着性及び文字品
位に優れ、ブリーディングを抑え、耐水性に優れた画像
が得られるインクセットを提供する。 【構成】 少なくともカチオン性物質を含む液体組成物
であって、前記カチオン性物質が、GPCを使用して測
定した分子量分布のピークを分子量の異なる2つの領域
に少なくとも1つずつ有することを特徴とする液体組成
物と、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、レッ
ド、ブルー、グリーンの少なくとも1つのインクを含む
ことを特徴とするインクセット及びこれらを適用する画
像形成方法及びその装置である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、インクによるカラー画
像の形成において生じるブリーディングを低減し、耐水
性のある画像を得る技術に関し、とりわけインクジェッ
ト方式を利用した画像形成方法及びその装置、更には、
これ等に適用する液体組成物及びインクセットに関す
る。
【0002】
【従来の技術】インクジェット記録方法は、インクの小
滴を飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて記録を行う
ものである。特に、特公昭61−59911号公報、特
公昭61−59912号公報、特公昭61−59914
号公報において開示された吐出エネルギー供給手段とし
て電気熱変換体を用い熱エネルギーをインクに与えて気
泡を発生させることにより液滴を吐出させる方法によれ
ば、記録ヘッドの高密度マルチオリフィス化が容易に実
現でき、高解像度、高品質の画像を高速で記録できる。
【0003】しかしながら、従来のインクジェット記録
に用いられるインクは一般に水を主成分とし、これに乾
燥防止、目詰まり防止等の目的でグリコール等の水溶性
高沸点溶剤を含有したものが一般的で、このようなイン
クを用いて普通紙に記録を行った場合、十分な定着性が
得られなかったり、記録紙表面の填料やサイズ剤の不均
一な分布によると推定される不均一画像が発生したりし
た。また特にカラー画像を得ようとした場合には、複数
の色のインクが紙に定着する以前に次々と重ねられるこ
とから、異色の画像の境界部分では色が滲んだり、不均
一に混ざり合って(以下、この現象をブリーデイングと
呼ぶことにする)満足すべき画像が得られなかった。
【0004】定着性を高める手段として特開昭55−6
5269号公報には、インク中に界面活性剤等の浸透性
を高める化合物を添加することが開示されている。又特
開昭55−66976号公報には揮発性溶剤を主体とし
たインクを用いることが開示されている。
【0005】しかし、前者の方法ではインクの記録紙へ
の浸透性が高まる結果、定着性、ブリーディングについ
てはある程度向上するものの、インクとともに色材も記
録紙の奥深くまで浸透してしまうために画像濃度、彩度
が低下したりするなどの不都合が発生するほか、インク
の横方向に対する広がりも発生し、その結果、エッジの
シャープさが低下したり、解像度が低下したりする問題
も発生した。一方、後者の場合には、前者の不都合に加
え、記録ヘッドのノズル部での溶剤の蒸発による目詰ま
りが発生しやすく好ましくないものであった。
【0006】さらに、上述した問題点を改善するため
に、記録インクの噴射に先だって記録媒体上に画像を良
好にせしめる液体を付着させる方法が提案されている。
【0007】例えば特開昭63−60783号公報に
は、塩基性ポリマーを有する液体を付着させた後、アニ
オン染料を含有するインクを記録する方法が開示されて
おり、特開昭63−22681号公報には、反応性化学
種を含む第1の液体と該反応性化学種と反応を起こす化
合物を含む液体を記録媒体上で混合する記録方法が開示
されており、更に、特開昭63−299971号公報に
は1分子あたり2個以上のカチオン性基を有する有機化
合物を含有する液体を付着させた後、アニオン染料を含
有したインクを記録する方法が開示されている。又特開
昭64−9279号公報には、コハク酸等を含有した酸
性液体を付着させた後、アニオン性染料を含有したイン
クを記録する方法が開示されている。
【0008】さらに特開昭64−63185号公報に
は、染料を不溶化させる液体をインクの記録に先だって
付与するという方法が開示されている。
【0009】しかし上記いずれの方法も染料自体の析出
により画像のにじみの抑制や耐水性を向上させようとす
るものであり、前述したカラーインク間のブリーディン
グ抑制効果も不十分であり、又析出した染料が記録紙上
で不均一に分布しやすいために記録紙のパルプ繊維に対
する被覆性が悪く画像の均一感が低下することになる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記実情に鑑
みて下記5点の課題を解決するためになされたものであ
る。すなわち普通紙に対するインクジェット記録を行う
場合、(1)良好な定着性を有しながら文字品位も良好
であること、(2)十分な画像濃度が得られ、ベタ画像
の均一性が高いこと、又、特に普通紙に対するカラー画
像形成時において、(3)ブリーディングを防止するこ
と、(4)色再現性が良好であり、高精細な画像が得ら
れること、(5)記録画像の耐水性を完全にすること、
である。
【0011】
【課題を解決するための手段及び作用】即ち本発明の液
体組成物は、カチオン性物質を含む液体組成物であって
該液体組成物は、その分子量分布をゲル・パーメーショ
ン・クロマトグラフィー(GPC)で測定した時に分子
量の異なるフラクションのそれぞれに少なくとも1つの
ピークを有し、該ピークが該カチオン性物質由来の物で
あることを特徴とする。
【0012】本発明の液体組成物は、カチオン性物質を
含む液体組成物であって、該液体組成物はその分子量分
布をゲル・ パーメーション・ クロマトグラフィー(GP
C)で測定したときに分子量1000以下及び1000
を越えるフラクションを有する分子量分布を示すもので
あって、該分子量1000以下のフラクション及び該分
子量1000を越えるフラクションに該カチオン性物質
を含むことを特徴とする。
【0013】本発明のインクセットは、カチオン性物質
を含む液体組成物であって該液体組成物は、その分子量
分布をゲル・パーメーション・クロマトグラフィー(G
PC)で測定した時に分子量の異なる領域のそれぞれに
少なくとも1つのピークを有し、該ピークは該カチオン
性物質由来の物である液体組成物と、イエロー、マゼン
タ、シアン、ブラック、レッド、ブルー、グリーンの少
なくとも1つのインクとを組合わせたことを特徴とす
る。
【0014】本発明のインクセットは、カチオン性物質
を含む液体組成物であって、該液体組成物はその分子量
分布をゲル・ パーメーション・ クロマトグラフィー(G
PC)で測定したときに分子量1000以下及び100
0を越えるフラクションを有する分子量分布を示すもの
であって、該分子量1000以下のフラクション及び該
分子量1000を越えるフラクションに該カチオン性物
質を含む液体組成物とイエロー、マゼンタ、シアン、ブ
ラック、レッド、ブルー、グリーンの少なくとも1つの
インクとを組合わせたことを特徴とする。
【0015】また本発明の画像形成方法は、(A)カチ
オン性物質を含む液体組成物であって該液体組成物は、
その分子量分布をゲル・パーメーション・クロマトグラ
フィー(GPC)で測定した時に分子量の異なる領域の
それぞれに少なくとも1つのピークを有し、該ピークは
該カチオン性物質由来の物である液体組成物を記録媒体
の少なくとも画像形成領域に付着させる工程、及び
(B)少なくともアニオン性基を有する染料含有するイ
ンクまたはアニオン性化合物を含有するインクをインク
ジェット方式により該液体組成物を付着させた記録媒体
に付与する工程を有することを特徴とする。
【0016】本発明の画像形成方法は、(A)カチオン
性物質を含む液体組成物であって、該液体組成物はその
分子量分布をゲル・ パーメーション・ クロマトグラフィ
ー(GPC)で測定したときに分子量1000以下及び
1000を越えるフラクションを有する分子量分布を示
すものであって、該分子量1000以下のフラクション
及び該分子量1000を越えるフラクションに該カチオ
ン性物質を含む液体組成物を記録媒体の少なくとも画像
形成領域に付着させる工程、及び(B)少なくともアニ
オン性基を有する染料含有するインクまたはアニオン性
化合物を含有するインクをインクジェット方式により該
液体組成物を付着させた記録媒体に付与する工程を有す
ることを特徴とする。
【0017】さらに本発明の画像形成装置はカチオン性
物質を含む液体組成物であって該液体組成物は、その分
子量分布をゲル・パーメーション・クロマトグラフィー
(GPC)で測定した時に分子量の異なる領域のそれぞ
れに少なくとも1つのピークを有し、該ピークは該カチ
オン性物質由来の物である液体組成物と、イエロー、マ
ゼンタ、シアン、ブラック、レッド、ブルー、グリーン
の少なくとも1つのインクとを組合わせたインクセット
とインクジェット手段を有することを特徴とする。
【0018】本発明の画像形成装置は、カチオン性物質
を含む液体組成物であって、該液体組成物はその分子量
分布をゲル・ パーメーション・ クロマトグラフィー(G
PC)で測定したときに分子量1000以下及び100
0を越えるフラクションを有する分子量分布を示すもの
であって、該分子量1000以下のフラクション及び該
分子量1000を越えるフラクションに該カチオン性物
質を含む液体組成物とイエロー、マゼンタ、シアン、ブ
ラック、レッド、ブルー、グリーンの少なくとも1つの
インクとを組合わせたインクセットとインクジェット手
段を有することを特徴とする。
【0019】更にまた本発明の画像形成装置はカチオン
性物質を含む液体組成物であって該液体組成物は、その
分子量分布をゲル・パーメーション・クロマトグラフィ
ー(GPC)で測定した時に分子量の異なる領域のそれ
ぞれに少なくとも1つのピークを有し、該ピークは該カ
チオン性物質由来の物である液体組成物の収納部と吐出
手段を有する第1の記録ユニット及びアニオン性化合物
を含むインクの収納部と吐出手段を有する第2の記録ユ
ニットとを具備することを特徴とする。
【0020】本発明の画像形成装置は、カチオン性物質
を含む液体組成物であって、該液体組成物はその分子量
分布をゲル・ パーメーション・ クロマトグラフィー(G
PC)で測定したときに分子量1000以下及び100
0を越えるフラクションを有する分子量分布を示すもの
であって、該分子量1000以下及び該分子量1000
を越えるフラクションに該カチオン性物質を含む液体組
成物の収納部と吐出手段を有する第1の記録ユニット及
びアニオン性化合物を含むインクの収納部と吐出手段を
有する第2の記録ユニットとを具備することを特徴とす
る。
【0021】そして本発明の実施態様によって得られる
効果として良好な定着性と文字品位を有し、十分な画像
濃度が得られ、ベタ画像の均一性の高いインクジェット
記録を行うことが出来、特に、普通紙に対するカラー画
像形成時においてブリーデイングを防止でき、色再現性
が良好で耐水性に優れた高精細な画像を得ることが出来
る。
【0022】次に本発明の実施態様を図面を用いて詳細
に説明する。
【0023】本発明において液体組成物は、インクジェ
ット記録に用いる液体組成物であって該液体組成物は、
カチオン性化合物を含有し、該液体組成物の分子量分布
をゲルパーメーションクロマトグラフィーで測定した時
に分子量1000以下の領域及び分子量1000を越え
る領域に該カチオン性物質を含むフラクションを有する
ことが好ましい。係る液体組成物としては例えばその分
子量をゲル・パーメーション・クロマトグラフィーで測
定した時にカチオン性物質の複数のフラクションを有す
るものが好ましく、図9及び図10に示したように分子
量の異なる領域、具体的には例えば分子量で1000以
下及び1000を越えるフラクションのそれぞれに分子
量のピークを有しそのピ−クがカチオン性物質由来のも
のである液体組成物や、図11や図12に示した様に分
子量1000以下及び1000を越えるフラクションを
有し、且つその分子量1000以下のフラクション及び
分子量1000を越えるフラクションに該カチオン性物
質を含む液体組成物が挙げられる。
【0024】なおかかる液体組成物が上記したような効
果を示す理由は明らかでないが、下記の(1)、(2)
の現象の少なくとも1つが生じてその結果上記の作用効
果を奏するものと考えられる。
【0025】(1)アニオン基を有する水溶性染料の場
合、該液体組成物中のカチオン性物質の低分子成分がイ
オン的、分子的相互作用により該染料と結合し溶液相か
ら分離を起こし染料の凝集体を形成する。またアニオン
性化合物を含有する顔料インクの場合にも、該液体組成
物中のカチオン性物質の低分子成分がイオン的、分子的
相互作用により該顔料と結合し分散破壊が起こり顔料の
凝集体が形成される。
【0026】そして次に該染料の凝集体、または顔料の
凝集体が該カチオン性物質の高分子成分に吸着され、よ
り大きなサイズの凝集体を形成し、紙等の記録媒体の繊
維の隙間に入り込みにくくなることで記録媒体上での染
料または顔料の移動度が、溶媒の移動度よりも極めて小
さくなる。そしてこの反応が極めて高速で起こる為、上
述の高品位のインクジェット記録が可能となる。
【0027】(2)アニオン基を有する水溶性染料の場
合、該液体組成物中のカチオン性物質の低分子成分がイ
オン的、分子的相互作用により該染料と結合し溶液相か
ら分離を起こし染料の凝集体を形成する。またアニオン
性化合物を含有する顔料インクの場合にも、該液体組成
物中のカチオン性物質の低分子成分がイオン的、分子的
相互作用により該顔料と結合し分散破壊が起こり顔料の
凝集体が形成される。
【0028】そして該カチオン性物質の高分子成分が記
録媒体の繊維の隙間を小さくし、該凝集体が繊維の隙間
に入り込みにくくなる為、記録媒体上での染料または顔
料の移動度が、溶媒の移動度よりも極めて小さくなり上
述の高い品位のインクジェット記録が可能となる。
【0029】特に、色材として顔料を用いた場合、記録
紙表面でインク中の顔料が凝集することで、その隠蔽力
が増加して、発色性及び画像濃度の向上が著しい。
【0030】同時に上述したようなメカニズムにより生
成した低分子カチオン性物質とアニオン性染料、又は、
顔料インク中のアニオン性化合物と顔料とカチオン性物
質の高分子成分とで形成される凝集体は粘性が大きくな
り、液媒体の動きと共に移動することがないので、前述
したフルカラーの画像形成時のように隣接したドットが
異色のインクで形成されていたとしても互いに混じり合
うようなことはなく、ブリーディングも起りにくい。
又、上記凝集体は本質的に水不溶性であり形成された画
像の耐水性は非常に向上する。
【0031】又本発明を実施するにあたっては、従来技
術のように分子量の大きいカチオン性高分子物質を使用
する必要がない。したがって、カチオン性物質を含む液
体組成物の粘度が増大することがないので、該液体組成
物をインクジェット記録ヘッド、特にオンデマンド型の
サーマルインクジェット記録ヘッドを使用して記録媒体
に付着させようとした場合に、周波数応答性、安定した
吐出体積、安定した吐出速度等の吐出特性に対して有利
であり、また、多価の金属塩を使用する必要がないの
で、コゲーションの問題も発生しない等の利点も本発明
の別の効果として挙げられる。
【0032】上記分子量の異なるカチオン性物質を含有
する液体組成物としては、前記した様にGPC で測定した
時に複数のフラクション、例えば低分子領域と高分子領
域とにフラクションを有し、そのそれぞれのフラクショ
ンにカチオン性化合物が含まれていることが好ましく、
例えば図9、図10に示したように低分子領域と高分子
領域のそれぞれに少なくとも1つのカチオン性物質由来
のピークを有する液体組成物や、図11、図12に示し
たように単一のピークを有し且つ低分子領域から高分子
領域にわたり広い分子量分布を示す液体組成物であって
低分子領域と高分子領域のフラクションの両方にカチオ
ン性化合物を含む液体組成物や単一のピークを有し且つ
低分子領域から高分子領域にわたり広い分子量分布を示
す液体組成物であって低分子領域から高分子領域まで連
続的な分子量分布を示すカチオン性化合物を含有する液
体組成物が挙げられる。
【0033】ここで図9に示した様な分子量分布を有す
る液体組成物において、複数のフラクションのうち低分
子側のフラクションに含まれるカチオン性物質として、
例えば該液体組成物の分子量分布において分子量100
0以下、特には200以上800以下、更には300以
上800以下のフラクションに含まれる様な物質とした
場合、高品位のインク画像を得る上で好ましい。
【0034】これはインクに含まれるアニオン性基を有
する水溶性染料またはアニオン性化合物と該液体組成物
が共存した場合に速やかに結合体を形成し該インクの移
動度を制限せしめ、溶媒の記録媒体への浸透に追随して
インクが記録媒体中に拡散、浸透して行くのを抑えるこ
とが出来る為であると考えられる。
【0035】また該低分子成分としてその分子量分布が
単分散に近いものが好適に使用出来、例えば分子量10
00以下の領域にピークを有する物が好適に用いられ
る。なおカチオン性物質の低分子成分として分子量分布
を持たない物質を用いる場合には化学式から求められる
分子量を分子量分布のピークの位置とみなす。
【0036】次にカチオン性物質の低分子量成分の具体
例としては、1級乃至2級乃至3級アミン塩型の化合
物、具体的にはラウリルアミン、ヤシアミン、ステアリ
ルアミン、ロジンアミン等の塩酸塩、酢酸塩等の他、第
4級アンモニウム塩型の化合物、具体的にはラウリルト
リメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベ
ンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルア
ンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、セチル
トリメチルアンモニウムクロライド等があり、更にピリ
ジニウム塩型化合物、具体的にはセチルピリジニウムク
ロライド、セチルピリジニウムブロマイド等、更には、
イミダゾリン型カチオン性化合物、具体的には2−ヘプ
タデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン等があり、
更に第二級アルキルアミンのエチレンオキシド付加物、
具体的にはジヒドロキシエチルステアリルアミン等が好
ましい例として挙げられる。
【0037】さらに本発明では、あるpH領域において
カチオン性を示す両性界面活性剤も使用でき、具体的に
は、アミノ酸型両性界面活性剤、RNHCH2 −CH
2COOH型の化合物があり、ベタイン型の化合物、例
えばステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキ
シエチルベタイン等が挙げられる。もちろんこれらの両
性界面活性剤を使用する場合にはそれらの等電点以下の
pHになるように液体組成物を調整するか、記録媒体上
でインクと混合した場合に該等電点以下のpHになるよ
うに調整するかのいずれかの方法をとることが好まし
い。
【0038】以上カチオン性物質の低分子成分の例を挙
げたが、本発明にて使用することのできる化合物は必ず
しもこれらに限定されないことはいうまでもない。
【0039】他のカチオン性化合物の低分子成分の例と
しては、例えば後述するカチオン性高分子成分のモノマ
−やオリゴマ−が挙げられる。
【0040】次にカチオン性物質の高分子成分として
は、該液体組成物の分子量分布を GPCを用いて測定した
ときに分子量が1000を越えた領域、特に1500以
上、更には1500以上10000以下の領域のフラク
ションに含まれる様なカチオン性物質がであることが、
インクの高速での定着及び高品位のインク画像を得る上
で好ましい。
【0041】ここでカチオン性物質の高分子成分として
は、例えば分子量1500以上の領域に分子量のピーク
を有する様な単分散に近いものが好適に使用出来る。
【0042】カチオン性物質の高分子成分の具体例とし
ては、ポリアリルアミン、ポリアミンスルホン、ポリビ
ニルアミン、キトサン及びこれらの塩酸、酢酸等の酸に
よる中和物又は部分中和物を挙げることが出来るが、こ
れらに限定されることが言うまでもない。例えばこれら
の高分子物質の分子量分布のピークの位置が1000を
越える領域、例えば1500以上10000以下の領域
に少なくとも1つ存在すれば、本発明を実施する際にそ
の効果は十分である。
【0043】尚、本発明における高分子物質の分子量と
は、特に断わらない限り、GPC(ゲルパーミエイショ
ンクロマトグラフィ)を使用して求めた平均分子量のこ
とを指し、ポリエチレンオキサイド換算の重量平均分子
量のことをいう。
【0044】また(2)のカチオン性高分子物質の別の
具体例として、ノニオン性高分子物質の一部をカチオン
化した化合物を用いても良い。
【0045】具体的には、ビニルピロリドンとアミノア
ルキルアルキレート4級塩との共重合体、アクリルアマ
イドとアミノメチルアクリルアマイド4級塩との共重合
体等を挙げることができるが、もちろんこれらの化合物
に限定されないことは言うまでもない。
【0046】更に、上述したカチオン性の高分子物質は
水溶性であれば申し分ないが、ラテックスやエマルショ
ンの様な分散体であってもかまわない。
【0047】次に図11及び図12に示した様な分子量
分布のカチオン性物質を含有する液体組成物について説
明する。
【0048】図11に示した分子量分布を有する液体組
成物の実施態様は、分子量1000以下に分子量分布の
ピークを有し且つ分子量1000を越える領域にもフラ
クションを有し、分子量1000以下及び分子量100
0を越えるフラクションにカチオン性化合物を含むもの
である。
【0049】そしてこのような液体組成物に用いる様な
カチオン性物質としては、分子量が低分子領域から高分
子領域にまで広く分布している物質が好適に用いられ
る。
【0050】具体的には該液体組成物の分子量分布を測
定したときに、低分子領域の側では分子量1000以
下、特に分子量800程度、更には分子量300程度の
フラクションにもカチオン性物質が含有され、また高分
子領域の側では分子量1000を越える領域、特に15
00以上、更には1500以上10000以下の領域の
フラクションにもカチオン性物質が含有されている様な
液体組成物を与えるカチオン性化合物が好ましい。
【0051】そして係るカチオン性化合物は、単一のく
り返し単位を有する1種類のカチオン性の多分散ポリマ
ーで達成してもよく、または2種若しくはそれ以上の異
なる構造のカチオン性ポリマーの混合物で達成しても良
い。そしてこのようなカチオン性物質としては、例えば
上記のカチオン性物質の高分子成分として用いられるポ
リマーであって分子量分布が広くなる様に合成したポリ
マーあるいはポリマーとオリゴマーの混合物などが挙げ
られる。
【0052】該液体組成物においてカチオン性物質の低
分子成分と高分子成分との混合割合は、材料に応じて適
宜調整すれば良いが、例えば重量基準で10:1〜1:
10、特には5:1〜1:5、更には1:1〜1:5の
範囲とした場合インク画像の耐水性を向上させることが
出来、またブリーデイングを十分抑制出来、更には画像
のエッジシャープネスを向上させることが出来る。
【0053】該液体組成物中のカチオン性物質の量も、
材料に応じて該液体組成物が上記の作用を奏する様に適
宜決定することが出来るが、例えば重量基準で0. 05
〜20重量%、特に0. 5〜5重量%とした場合インク
ジェット記録に適した液体組成物の物性、例えば粘度や
表面張力などを制御する上で好ましい物である。
【0054】つぎに前記液体組成物を構成するその他の
成分について具体的に述べる。
【0055】前記液体組成物は前述したカオチン性物質
の他に、水、水溶性有機溶剤及びその他の添加剤を含ん
でもよい。水溶性有機溶剤としては、ジメチルホルムア
ミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトン等
のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエー
テル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリ
コール等のポリアルキレングリコール類、エチレングリ
コール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、
トリエチレングリコール、1、2、6−ヘキサントリオ
ール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエ
チレングリコール等のアルキレングリコール類、エチレ
ングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモ
ノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチル
エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル
類、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチル
アルコール、イソブチルアルコール等の1価アルコール
類の他、グリセリン、N−メチル−2−ピロリドン、
1、3−ジメチルイミダゾリジノン、トリエタノールア
ミン、スルホラン、ジメチルサルホキサイド等が用いら
れる。
【0056】上記水溶性有機溶剤の含有量について特に
制限はないが、液体全重量の5〜60重量%、さらに好
ましくは、5〜40重量%が好適な範囲である。
【0057】この他、必要に応じて、粘度調整剤、pH
調整剤、防腐剤、界面活性剤、酸化防止止剤、蒸発促進
剤等の添加剤を配合してもかまわない。界面活性剤の選
択は、液体の浸透性を調整する上で特に重要である。
【0058】本発明で述べる液体組成物とは、記録イン
クの色調を変えない範囲の色調を有するものである。こ
の液体組成物の物性として好適な範囲は25℃付近で、
pHは3〜12、好ましくは3〜8、より好ましくは3
〜5であり、表面張力は10〜60dyn/cm、好ま
しくは10〜40dyn/cmであり、粘度は1〜30
cpsである。
【0059】次に、本発明に用い得る記録インクについ
て説明する。
【0060】本発明に用い得る記録インクは、上述した
アニオン性基を有する水溶性染料と水、水溶性有機溶剤
及びその他の成分、例えば粘度調整剤、pH調整剤、防
腐剤、界面活性剤、酸化防止剤等を必要に応じて含む。
【0061】本発明で使用するアニオン性基を有する水
溶性染料としては、カラーインデックス(COLOUR
INDEX)に記載されている水溶性の酸性染料、直
接染料、反応性染料であれば特に限定はない。又、カラ
ーインデックスに記載のないものでも、アニオン性基、
例えばスルホン基、カルボキシル基等を有するものであ
れば特に制限はない。ここで言う水溶性染料の中には、
溶解度のpH依存性があるものも含まれる。
【0062】インクに使用する水溶性有機溶剤として
は、前記液体組成物に使用される水溶性有機溶剤が同様
に使用できる。該水溶性有機溶剤の含有量の好適な範囲
についても同様である。又、インクの好適な物性範囲に
ついても、前記液体組成物の場合とまったく同様であ
る。
【0063】又、さらに本発明の効果を一層効果的に実
施するために、インクに以上説明した成分の他に、アニ
オン性の界面活性剤あるいはアニオン性の(好ましくは
分子量:1000以上の)高分子物質を添加してもよ
い。あるいは、前記両性界面活性剤をその等電点以上の
pHに調整して使用しても良い。アニオン性界面活性剤
の例としては、カルボン酸塩型、硫酸エステル型、スル
ホン酸塩型、燐酸エステル型等、一般に使用されている
ものは使用出来る。又、アニオン性高分子の例として
は、アルカリ可溶型の樹脂、具体的には、ポリアクリル
酸ソーダ、あるいは高分子の一部にアクリル酸を共重合
したもの等を挙げることが出来るが、もちろんこれらに
限定されない。
【0064】次に、本発明に用い得るインクの別の実施
形態について説明する。
【0065】この記録インクは、顔料及びアニオン性化
合物の他、水、水溶性有機溶剤及びその他の成分、例え
ば粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、酸化
防止剤等を必要に応じて含む。ここでアニオン性化合物
は、顔料の分散剤であっても良いし、顔料の分散剤がア
ニオン性化合物でない場合、分散剤とは別のアニオン性
化合物を添加してもよい。勿論、分散剤が、アニオン性
化合物である場合でも、更に他のアニオン性化合物を添
加してもよい。
【0066】本発明で使用することができる顔料に特に
限定はないが、例えば以下に説明する顔料が好適に使用
される。
【0067】まず、ブラック顔料インクに使用されるカ
ーボンブラックとしては、ファーネス法、チャネル法で
製造されたカーボンブラックで、一次粒径が、15から
40ミリミクロン、BET法による比表面積が、50か
ら300平方メートル/g、DBP吸油量が、40から
150ml/100g、揮発分が0.5から10%、p
H値が2から9を有し、例えば、No.2300、N
o.900、MCF88、No.40、No.52、M
A7、MA8、No.2200B(以上三菱化成製)、
RAVEN1255(コロンビア製)、REGAL40
0R、REGAL660R、MOGUL L(キャボッ
ト製)、Color Black FW1、Color
Black FW18、Color Black S
170、Color Black S150、Prin
tex 35、Printex U(デグッサ)等の市
販品を使用することが出来る。また、本発明のために新
たに試作されたものでもよい。イエローインクに使用さ
れる顔料としては、C.I.Pigment Yell
ow 1、C.I.Pigment Yellow2、
C.I.Pigment Yellow 3、C.I.
Pigment Yellow 13、C.I.Pig
ment Yellow 16、C.I.Pigmen
t Yellow 83、マゼンタインクとして使用さ
れる顔料としては、C.I.Pigment Red
5、C.I.Pigment Red7、C.I.Pi
gment Red 12、C.I.Pigment
Red48(Ca)、C.I.Pigment Red
48(Mn)、C.I.Pigment Red 5
7(Ca)、C.I.Pigment Red 11
2、C.I.Pigment Red 122、シアン
インクとして使用される顔料としては、C.I.Pig
ment Blue 1、C.I.Pigment B
lue 2、C.I.Pigment Blue 3、
C.I.Pigment Blue 15:3、C.
I.Pigment Blue 16、C.I.Pig
ment Blue 22、C.I.Vat Blue
4、C.I.Vat Blue 6等が挙げられる
が、本発明のために新たに製造されたものでも使用可能
である。上述した顔料はインク全量に対して、1〜20
重量%、好ましくは、2〜12重量%の範囲で用いるこ
とが好ましい。
【0068】本発明で使用するインク中の顔料の分散剤
は、水溶性樹脂ならどんなものでも使用可能だが、重量
平均分子量は1000から30000の範囲が好まし
い。さらに、好ましくは、3000から15000の範
囲である。具体的には、スチレン、スチレン誘導体、ビ
ニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α、β−エ
チレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル
等の疎水性単量体、または、アクリル酸、アクリル酸誘
導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イ
タコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体から選
ばれる二つ以上の単量体からなるブロック共重合体、グ
ラフト共重合体、あるいは、ランダム共重合体、また、
これらの塩等が挙げられる。これらの樹脂は、塩基を溶
解させた水溶液に可溶でアルカリ可溶型樹脂である。さ
らに、親水性単量体からなるホモポリマーまた、それら
の塩でも良い。また、ポリビニルアルコール、カルボキ
シメチルセルロース、ナフタレンスルホン酸ホルムアル
デヒド縮合物等の水溶性樹脂も使用することが可能であ
る。しかし、アルカリ可溶型の樹脂を用いた場合の方
が、分散液の低粘度化が可能で、分散も容易であるとい
う利点がある。前記、水溶性樹脂は、インク全量に対し
て、0.1から5重量%の範囲で使用されることが好ま
しい。
【0069】更に本発明のインクは、好ましくは、イン
ク全体が中性又は、アルカリ性に調製されていること
が、前記水溶性樹脂の溶解性を向上させ、一層の長期保
存安定性に優れたインクとすることができるので望まし
い。pHが7から10の範囲にあれば更に好ましい。
【0070】また、pH調整剤としては、例えば、ジエ
タノールアミン、トリエタノールアミン等の各種有機ア
ミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリ
ウム等のアルカリ金属の水酸化物等の無機アルカリ剤、
有機酸や、鉱酸があげられる。
【0071】以上のごとき、顔料及び水溶性樹脂は水溶
性媒体中に分散または溶解される。上記の本発明に用い
得る顔料系インクにおいて好適な水性媒体は、水及び水
溶性有機溶剤の混合溶媒であり、水としては種々のイオ
ンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオ
ン水)を使用するのが好ましい。
【0072】また、その他、水と混合して使用される水
溶性有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エ
チルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピ
ルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチル
アルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1
−4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、
ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセ
トンアルコール等のケトンまたはケトアルコール類;テ
トラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエ
チレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリ
アルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピ
レングリコール、ブチレングリコール、トリエチレング
リコール、1、2、6−ヘキサントリオール、チオジグ
リコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコー
ル等のアルキレシ基が2−6個の炭素原子を含むアルキ
レングリコール類;グリセリン、エチレングリコールモ
ノメチル(またはエチル)エーテル、ジエチレングリコ
ールメチル(またはエチル)エーテル、トリエチレング
リコールモノメチル(またはエチル)エーテル等の多価
アルコールの低級アルキルエーテル類;Nメチル−2−
ピロリドン、2−ピロリドン、1、3−ジメチル−2−
イミダゾリジノン等があげられる。これらの多くの水溶
性有機溶剤の中でもジエチレングリコール等の多価アル
コール、トリエチレングリコールモノメチル(またはエ
チル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエー
テルが好ましい。
【0073】さらに、吐出安定性を得るためにはエタノ
ール、あるいは、イソプロピルアルコールを1%以上添
加することが効果的である。これはこれら溶剤を添加す
ることによって記録液の薄膜抵抗体上での発泡をより安
定に行うことができるからと考えられる。しかし、これ
ら溶剤を過剰に加えると印字物の印字品位が損なわれる
という欠点が生じるため、これら溶剤の適切な濃度は3
−10重量%であることがわかった。さらにこれら溶剤
の効果として、分散液にこれら溶剤を添加することによ
り、分散時における泡の発生を押え、効率的な分散が行
えることがあげられる。
【0074】本発明のインク中の上記水溶性有機溶剤の
含有量は、一般にはインク全重量の3−50重量%の範
囲であり、好ましくは、3−40重量%の範囲であり、
使用する水はインク全重量の10−90重量%、好まし
くはは30−80重量%の範囲である。
【0075】分散剤が、アニオン性高分子ではない場
合、上述した顔料を含むインクに更に、アニオン性化合
物を添加する必要がある。本発明で好適に使用されるア
ニオン性化合物としては、顔料分散剤の項で説明したア
ルカリ可溶性樹脂等の高分子物質の他、低分子アニオン
性界面活性剤が挙げられる。
【0076】低分子アニオン性界面活性剤の具体的な例
としては、スルホコハク酸ラウリルニナトリウム、スル
ホコハク酸ポリオキシエチレンラウロイルエタノールア
ミドエステルニナトリウム、ポリオキシエチレンアルキ
ルスルホコハク酸ニナトリウム、カルボキシル化ポリオ
キシエチレンラウリルエーテルナトリウム塩、カルボキ
シル化ポリオキシエチレンラウリルエーテルナトリウム
塩、カルボキシル化ポリオキシエチレントリデシルエー
テルナトリウム塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテ
ル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテ
ル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアル
キルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアル
キルエーテル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウ
ム、アルキル硫酸トリエタノールアミン等が挙げられる
がこれらに限定されるわけではない。
【0077】以上のようなアニオン性物質の好適な使用
量としては、インク全量に対して、0.05から10重
量%の範囲であり、更に好適には、0.05から5重量
%である。
【0078】又、本発明のインクは、上記の成分のほか
に必要に応じて所望の物性値を持つインクとするため
に、界面活性剤、消泡剤、防腐剤等を添加することがで
き、さらに、市販の水溶性染料などを添加することもで
きる。
【0079】界面活性剤としては脂肪酸塩類、高級アル
コール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩
類、アルキルアリルスルホン酸塩類等の陰イオン界面活
性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオ
キシエチレンアルキルエステル類、ポリオキシエチレン
ソルビタンアルキルエステル類、アセチレンアルコー
ル、アセチレングリコール等の非イオン性界面活性剤が
あり、これらの1種または2種以上を適宜選択して使用
できる。その使用量は分散剤により異なるがインク全量
に対して0.01から5重量%が望ましい。この際、イ
ンクの表面張力は30dyne/cm以上になるように
活性剤の添加する量を決定することが好ましい。なぜな
ら、インクの表面張力がこれより小さい値を示すこと
は、本発明のような記録方式においてはノズル先端のぬ
れによる印字ヨレ(インク滴の着弾点のズレ)等好まし
くない事態を引き起こしてしまうからである。
【0080】以上で説明したような顔料系インクの作成
方法としては、はじめに、分散樹脂、水を少なくとも含
有する水溶液に顔料を添加し、撹拌した後、後述の分散
手段を用いて分散を行い、必要に応じて遠心分離処理を
行い、所望の分散液を得る。次に、この分散液に上記に
掲げたような成分を加え、撹拌してインクとする。
【0081】又、アルカリ可溶型樹脂を使用する場合、
樹脂を溶解させるために塩基を添加することが必要であ
る。樹脂を溶解させるアミンあるいは塩基の量を、樹脂
の酸価から計算によって求めたアミンあるいは塩基量の
1倍以上添加することが必要である。このアミンあるい
は塩基の量は以下の式によって求められる。
【0082】アミンあるいは塩基の量(g)=(樹脂の
酸価*アミンあるいは塩基の分子量*樹脂量(g))/
5600 更に、顔料を含む水溶液を分散処理する前にプレミキシ
ングを30分間以上行うと分散効率が良い。このプレミ
キシング操作は、顔料表面の濡れ性を改善し、顔料表面
への分散剤の吸着を促進するものである。
【0083】アルカリ可溶型樹脂を使用した場合の分散
液に添加される塩基類としては、モノエタノールアミ
ン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミ
ンメチルプロパノール、アンモニア等の有機アミン、あ
るいは水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基
が好ましい。
【0084】一方、本発明に使用する分散機は、一般に
使用される分散機なら如何なるものでも良いが、例え
ば、ボールミル、サンドミルなどが挙げられる。
【0085】その中でも、高速型のサンドミルが好まし
く、例えば、スーパーミル、サンドグラインダー、ビー
ズミル、アジテータミル、グレンミル、ダイノールミ
ル、パールミル、コボルミル(いずれも商品名)等が挙
げられる。
【0086】本発明を実施するにあたって使用する記録
媒体については特に制限されるものではなく、従来から
使用されているコピー用紙、ボンド紙等のいわゆる普通
紙が好適に使用される。もちろんインクジェット記録用
に特別に作成したコート紙やOHP用透明フィルムも好
適に使用されるし、一般の上質紙や光沢紙にも好適に使
用可能である。
【0087】本発明の画像形成方法としては、記録媒体
上で前記液体組成物とインクが共存できる方法であれば
良く、液体組成物とインクのいずれを先に記録媒体に付
与するかは問題ではない。
【0088】本発明で言う画像の形成領域とは、インク
のドットが付着する領域のことであり、画像形成領域の
近傍とは、インクのドットが付着する領域の外側の1か
ら5ドット程度離れた領域のことを指す。
【0089】液体組成物を記録媒体に付着せしめる方法
としては、スプレー、ローラー等によって、記録媒体の
全面に付着せしめる方法が考えられるが、インクが付着
する画像形成領域及び画像形成領域の近傍にのみ選択的
且つ均一に付着せしめることが可能なインクジェト方式
により行われるのが好ましい。
【0090】液体組成物を記録媒体に付着せしめてか
ら、インクを付着させるまでの時間については特に制限
されるものではないが、本発明をより一層効果的に実施
するためには、数秒以内、特に好ましくは1秒以内であ
ることが好ましい。これは、インクを先に記録媒体に付
着させてから、液体組成物を付着させる場合についても
同様である。
【0091】無色又は淡色の液体組成物を記録媒体に付
着せしめる方法としては、種々のインクジェット方式を
用いることができるが、特に好ましいのは、熱エネルギ
ーによって発生した気泡を用いて液滴を吐出する、いわ
ゆるオンデマンド型のサーマルインクジェット方式であ
る。
【0092】なお、本発明に用いるカチオン性化合物の
分子量分布はあらかじめ各々単独でGPC測定を行って
も良いし、液体組成物そのものの分子量分布を測定した
後、少なくともアニオン性基を有する染料が含まれる十
分な量のインクと前記液体組成物をビーカー内で混合撹
拌し、沈殿物を取り除いた後に再びGPC測定を行い、
インク混合前とインクを混合して沈殿物を取り除いた後
のGPCの測定結果を比較して、インク中の染料によっ
て沈殿して系内から取り除かれた成分の分子量分布から
求めても良い。
【0093】次いで、本発明に用いる記録装置について
説明する。本発明には記録ヘッドの記録インクに記録信
号を与え、発生した熱エネルギーにより液滴を吐出す
る、いわゆるオンデマンド型のサーマルインクジェット
方式が好ましい。その装置の主要部である記録ヘッドの
構成を図1、図2、図3に示す。
【0094】ヘッド13はインクを流路を形成したガラ
ス、セラミック、又はプラスチック等と感熱記録に用い
られる発熱抵抗体を有する発熱ヘッド15(図ではヘッ
ドが示されているが、これに限定されるものではない)
とを接着して得られる。発熱ヘッド15は酸化シリコン
等で形成される保護膜16、アルミニウム電極17−
1、17−2、ニクロム等で形成される発熱抵抗体層1
8、蓄熱層19、アルミナ等の放熱性のよい基板20よ
りなっている。
【0095】記録インク21は吐出オリフィス22まで
来ており、圧力Pによりメニスカス2−3を形成してい
る。
【0096】ここで、電極17−1、17−2に電気信
号が加わると、発熱ヘッド15のnで示される領域が急
激に発熱し、ここに接しているインク21に気泡が発生
し、その圧力でメニスカスが吐出し、オリフィス22よ
り記録液滴24となり、被記録材25に向って飛翔す
る。図3には図1に示したノズルを多数並べた記録ヘッ
ドの概略図を示す。該記録ヘッドは多数の流路を有する
ガラス板等27と図1において説明したものと同様の発
熱ヘッド28を密着して作られる。
【0097】尚、図1はインク流路に沿ったヘッド13
の断面図であり、図2は図1のA−B線での断面図であ
る。
【0098】図4に、該ヘッドを組み込んだインクジェ
ット記録装置の1例を示す。
【0099】図4において、61はワイピング部材とし
てのブレードで、その一端はブレード保持部材によって
保持されて固定端となり、カレンチレバーの形態をな
す。ブレード61は記録ヘッドによる記録領域に隣接し
た位置に配置され、記録ヘッドの移動方向と垂直な方向
に移動して吐出口面と当接し、キャッピングを行う構成
を備える。さらに63はブレード61に隣接して設けら
れるインク吸収体であり、ブレード61と同様、記録ヘ
ッドの移動経路中に突出した形態で保持される。前記ブ
レード61、キャップ62、吸収体63によって吐出回
復部64が構成され、ブレード61、及び吸収体63に
よってインク吐出口面に水分、塵等の除去が行われる。
【0100】65は吐出エネルギー発生手段を有し、吐
出口を配した吐出口面に対向する被記録材にインクを吐
出して記録を行う記録ヘッド、66は記録ヘッド65を
搭載して記録ヘッド65の移動を行う為のキャリッジで
ある。キャリッジ66はガイド軸67と揺動可能に係合
し、キャリッジ66の一部はモータ68によって駆動さ
れるベルト69と接続(図示せず)している。これによ
りキャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能と
なり、記録ヘッド65による記録領域及びその隣接した
領域の移動が可能となる。
【0101】51は被記録材を挿入するための給送部、
52はモータ(図示せず)により駆動される送りローラ
ーである。これらの構成によって記録ヘッドの吐出口面
と対向する位置へ被記録材が給送され、記録が進行する
につれて、排紙ローラー53を配した排出部へ排出され
る。
【0102】上記構成において記録ヘッド65が記録終
了等でホームポジションに戻る際、ヘッド回復部64の
キャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避して
いるが、ブレード61は移動経路中に突出している。こ
の結果、記録ヘッド65の吐出口面がワイピングされ
る。尚、キャップ62が記録ヘッド65の吐出口面に当
接してキャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘ
ッドの移動経路中に吐出するように移動する。
【0103】記録ヘッド65がホームポジションから記
録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレード
61は前記したワイピング時の位置と同一の位置にあ
る。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐
出口面はワイピングされる。
【0104】前記の記録ヘッドのホームポジションへの
移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりではなく、記録
ヘッドが記録のために記録領域を移動する間に所定の間
隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、こ
の移動に伴って上記ワイピングが行われる。
【0105】図5は、ヘッドにインク供給部材、例えば
チュープを介して供給されるインクを収容したインクカ
ートリッジの一例を示す図である。ここで40は供給用
インクを収容したインク収容部、例えばインク袋であ
り、その先端にはゴム製の栓42が設けられている。こ
の栓42に針(図示せず)を挿入することにより、イン
ク袋40中のインクをヘッドに供給可能ならしめる。4
4は廃インクを受容する吸収体である。
【0106】インク収容部としては、インクとの接液面
がポリオレフィン、特にポリエチレンで形成されている
ものが好ましい。
【0107】本発明で使用されるインクジェット記録装
置としては、前記の如きヘッドとインクカートリッジが
別体となったものに限らず、図6に示すごときそれらが
一体となったものも好適に用いられる。
【0108】図6において、70は記録ユニットであっ
て、この中にインクを収容したインク収容部、例えばイ
ンク吸収体が収納されており、かかるインク吸収体中の
インクが複数のオリフィスを有するヘッド部71からイ
ンク滴として吐出される構成になっている。インク吸収
体の材料としては、例えばポリウレタンを用いることが
できる。72は記録ユニット内部を大気に連通させるた
めの大気連通口であるこの記録ユニット70は、図4で
示す記録ヘッドに変えて用いられるものであって、キャ
リッジ66に対し着脱自在になっている。尚、本発明に
使用する記録装置において、上記ではインクに熱エネル
ギーを作用させてインク滴を吐出するインクジェット記
録装置を例に挙げたが、そのほか圧電素子を使用するピ
エゾ方式のインクジェット記録装置でも同様に利用でき
る。
【0109】さて、本発明の画像形成方法を実施する場
合には、例えば、前記図3に示した記録ヘッドを5つキ
ャリッジ上に並べた記録装置を使用する。図7はその一
例である。81、82、83、84はそれぞれイエロ
ー、マゼンタ、シアン、ブラック各色の記録インクを吐
出するための記録ヘッドである。又、85は液体組成物
を吐出するヘッドである。該ヘッドは前記した記録装置
に配置され、記録信号に応じて、各色の記録インクを吐
出する。又、液体組成物はそれに先立ち、少なくとも各
色の記録インクが記録紙に付着する部分にあらかじめ付
着させておく。図7では記録ヘッドを5つ使用した例を
示したが、これに限定されるものではなく、図8に示し
た様に1つの記録ヘッドでイエローインク、マゼンタイ
ンク、シアンインク、ブラックインク、液体組成物を液
流路を分けて行う場合も好ましい。
【0110】もちろん、液体組成物とインクの記録順が
上記した順序とは逆になるようなヘッドの配置をとって
も良い。
【0111】
【実施例】以下に実施例及び比較例を示して、本発明を
更に具体的に説明する。
【0112】(液体組成物の作成)以下に示す成分を混
合溶解した後、ポアサイズが0.22ミクロンのメンブ
レンフィルター(商品名;フロロポアフィルター、住友
電工製)にて加圧濾過し、液体組成物AからGを得た。
【0113】(液体組成物Aの組成) ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド(商品
名;エレクトロストリッパーQE、花王(株)製/Mw
=340) 2部 ポリアミンスルホン塩酸塩(商品名;PAS−A−1/
日東紡績(株)製)/分子量分布のピークの位置 20
00) 10部 チオジグリコール 10部 イオン交換水 85部。
【0114】(液体組成物Bの組成) ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド(商品
名;エレクトロストリッパーQE、花王(株)製/Mw
=340) 2部 ポリアミンスルホン塩酸塩(商品名;PAS−A−5/
日東紡績(株)製/分子量分布のピークの位置 350
0) 6部 チオジグリコール 10部 イオン交換水 82部。
【0115】(液体組成物Cの組成) ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド(商品
名;エレクトロストリッパーQE、花王(株)製/Mw
=340) 2部 ポリアリルアミン塩酸塩(商品名;PAS−92/日東
紡績(株)製/分子量分布のピークの位置 5000)
4部 チオジグリコール 10部 イオン交換水 84部。
【0116】(液体組成物Dの組成) ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド(商品
名;エレクトロストリッパーQE、花王(株)製/Mw
=340) 2部 ポリアリルアミン塩酸塩(自社合成)/分子量分布のピ
ークの位置 85003部 チオジグリコール 10部 イオン交換水 85部 (*)ポリアリルアミンは、機能材料、Vol.5,2
9(1986)に記載の方法に基づき合成を行った。以
下、他の実施例についても同様である。
【0117】(液体組成物Eの組成) ポリアリルアミン(自社合成)分子量分布のピーク位置
800 3部 ポリアミンスルホン塩酸塩(商品名;PAS−A−1/
日東紡績(株)製/分子量分布のピークの位置 200
0) 10部 チオジグリコール 10部 イオン交換水 77部 (*)アリルアミンオリゴマーも、機能材料、Vol.
5,29(1986)に記載の方法に基づき合成を行っ
た。以下、他の実施例についても同様である。
【0118】(液体組成物Fの組成) ポリアリルアミン(自社合成)/分子量分布のピークの
位置 650 5部 ポリアリルアミン塩酸塩(自社合成)/分子量分布のピ
ークの位置 85003部 チオジグリコール 10部 イオン交換水 72部。
【0119】(液体組成物Gの組成) ベンジルトリ−n−ブチルアンモニウムクロライド(東
京化成工業製 試薬グレード/Mw=311) 3部 ポリアリルアミン塩酸塩(自社合成)/分子量分布のピ
ークの位置 85003部 チオジグリコール 10部 イオン交換水 84部。
【0120】(記録インクの作成) (記録インク1の作成)下記成分を混合し、更にポアサ
イズが0.22ミクロンのメンブレンフィルター(商品
名;フロロポアフイルター、住友電工製)にて加圧濾過
し、記録インク1のイエローインク、シアンインク、マ
ゼンタインク、ブラックインクを得た。
【0121】(記録インク1のイエローインク/Y1) C.I.ダイレクトイエロー142 2部 チオジグリコール 10部 アセチレノールEH(川研ファインケミカル製アセチレ
ングリコールEO付加物) 0.05部 イオン交換水 87.95部。
【0122】(記録インク1のシアンインク/C1)上
記イエローインクY1におけるC.I.ダイレクトイエ
ロー 86をC.I.ダイレクトブルー199 2.5
部に変え、イオン交換水を87.45部に変えた以外は
Y1と同じ組成にした。
【0123】(記録インク1のマゼンタインク/M1)
上記シアンインクC1におけるC.I.ダイレクトブル
ー199をC.I.アシッド92 2.5部に変えた以
外はC1と同じ組成にした。
【0124】(記録インク1のブラックインク/Bk
1)上記マゼンタインクM1におけるC.I.アシッド
92 2.5部をC.I.フードブラック 2 4.
0部に変え、イオン交換水を85.95部に変えた以外
はM1と同じ組成にした。
【0125】(記録インク2の作成)記録インク1の各
色に各々ジョンソン(株)製スチレン−アクリル共重合
体(商品名;ジョンクリル61J;Mw=10000)
を0.5部加えてイオン交換水の量を記録液全量が10
0部になるように調製した以外は、記録インク1のY
1、M1、C1、Bk1と全く同様にして記録インク2
のイエローY2、シアンC2、マゼンタM2、ブラック
Bk2の各色を作成した。
【0126】(記録インク3の作成)記録インク1の各
色に各々三洋化成工業(株)製アニオン性界面活性剤
(商品名;ビューライトESS;ポリオキシエチレンア
ルキル(C12〜C16)スルホコハク酸二ナトリウム
(2E.O.))を1.0部加えて、イオン交換水の量
を記録液全量が100部になるように調製した以外は、
記録インク1のY1、M1、C1、Bk1と全く同様に
して記録インク3のイエローY3、シアンC3、マゼン
タM3、ブラックBk3の各色インクを作成した。
【0127】(記録インク4の作成) (記録インク4のイエロー/Y4)アルカリ可溶性樹脂
(スチレン−アクリル酸−エチルアクリレート;酸価1
60;重量平均分子量8000)を分散剤として用いて
以下のイエロー分散体を作成した。尚、上記アルカリ可
溶性樹脂の中和剤としては、モノエタノールアミンを使
用した。アルカリ可溶性樹脂水溶液P1(固形分20重
量%) 35部 C.I.ピグメントイエロー 83 24部 トリエチレングリコール 10部 ジエチレングリコール 10部 エチレングリコールモノブチルエーテル 1.0部 イソプロピルアルコール 0.5部 イオン交換水 135部 以上の成分をバッチ式縦型サンドミル(アイメックス
製)に仕込み、1mm径のガラスビーズをメディアとし
て充填し、水冷しつつ3時間分散処理を行った。この分
散液を遠心分離機にかけ、粗大粒子を除去して、平均粒
子径100ミリミクロンの分散体を得た。
【0128】上記分散体にイオン交換水100部を加え
た後、充分に撹拌してpH9.5のイエローインクY4
を得た。
【0129】(記録インク4のシアン/C4)Y4を作
成したのと同じアルカリ可溶性樹脂水溶性P1を使用し
て、下記成分を混合後、Y4を作成したのと同一条件で
分散処理を行った。
【0130】アルカリ可溶性樹脂水溶液P1(固形分2
0重量%) 30部 C.I.ピグメントブルー15:3 24部 トリエチレングリコール 10部 ジエチレングリコール 10部 エチレングリコールモノブチルエーテル 1.0部 イソプロピルアルコール 3部 イオン交換水 135部 得られた分散体の平均粒子径は、120ミリミクロンで
あった。
【0131】上記分散液に水100部を加え、充分に撹
拌して、pH9.2のシアンインクC4を得た。
【0132】(記録インク4のマゼンタ/M4)Y4を
作成したのと同じアルカリ可溶性樹脂水溶液P1を使用
して、下記成分を混合後、Y4を作成したのと同一条件
で分散処理を行った。
【0133】アルカリ可溶性樹脂水溶液P1(固形分2
0重量%) 20部 C.I.ピグメントレッド 122 24部 グリセリン 15部 イソプロピルアルコール 3部 イオン交換水 135部 得られた分散体の平均粒子径は、115ミクロンであっ
た。
【0134】上記分散液に水100部を加え、充分に撹
拌して、pH9.4のマゼンタインクM4を得た。
【0135】(記録インク4のブラックインク/Bk4
の作成)下記成分を混合し、ウオーターバスで70℃に
加温し、樹脂分を完全に溶解させる。
【0136】スチレン−アクリル酸−アクリル酸エチル
共重合体(酸価160;重量平均分子量8000)
1.5部 モノエタノールアミン 1.2部 イオン交換水 81.5部 この溶液にカーボンブラックMCF88(三菱化成製)
10部、イソプロピルアルコール1部を加え、30分間
プレミキシングを行った後、下記の条件で分散処理を行
った。
【0137】 分散機 サンドグラインダー(五十嵐機械製) 粉砕メディア ジルコニウムビーズ 粉砕メディアの充填率 50%(体積) 粉砕時間 3時間 更に遠心分離処理(12000rpm、20分間)を行
ない、粗大粒子を除去して分散液とした。
【0138】次に、下記成分を混合し、pH9.5の記
録インク4のブラックインクBk4を得た。
【0139】上記分散液 30部 グリセリン 10部 エチレングリコール 5部 N−メチルピロリドン 5部 イソプロピルアルコール 2部 イオン交換水 48部。
【0140】(記録インク5の作成)記録インク4にお
ける分散剤を同量のポリビニルピロリドンPVP K−
15(インターナショナルスペシャリティケミカルス製
/Mw=7000)に置き換えた以外は全く同様にして
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインクを作成
した。
【0141】次に上記で得られたインクに三洋化成工業
(株)製アニオン性界面活性剤(商品名;ビューライト
ESS;ポリオキシエチレンアルキル(C12〜C1
6)スルホコハク酸二ナトリウム(2E.O.))を上
記各色のインク100部に対して、1.0部添加した
後、充分に撹拌して、記録インク5のイエローY5、シ
アンC5、マゼンタM5、ブラックBk5を得た。
【0142】次に、上記のようにして得られた液体組成
物及びインクを用いて、キヤノンPPC用紙に記録を行
なった。使用したインクジェット記録装置としては、図
4に示したのと同様の記録装置を用い、図7に示した5
つの記録ヘッドを用いてカラー画像を形成した。尚、こ
こで用いた記録ヘッドは、360dpiの記録密度を有
し、駆動周波数は、5KHzとした。又、1ドットあた
りの吐出体積は、イエローインク、マゼンタインク、シ
アンインク及び液体組成物については、40pl/do
tのヘッドを使用し、ブラックインクについては、記録
剤として染料を使用した場合のインクについては80p
l/dotヘッドを使用して、記録剤として顔料を使用
したインクについては、60pl/dotのヘッドを使
用した。
【0143】次ページ第1表に記した液体組成物と記録
インク及び両者の印字順の組合せを変えて、夫々印字を
行った。
【0144】
【表1】
【0145】
【表2】
【0146】記録画像の評価は、以下の方法で行った。
【0147】1.画像濃度 ベタ画像を液体組成物とブラックのインクで形成し、1
2時間放置後の反射濃度を反射濃度計マクベスRD91
5(マクベス社製)にて測定した。評価基準は以下の通
りである、 ◎:反射濃度が1.30以上 ○:反射濃度が1.25以上〜1.30未満 △:反射濃度が1.15以上〜1.25未満 ×:反射濃度が1.15未満。
【0148】2.定着性 液体組成物とイエロー、マゼンタのインクを用いて、レ
ッドのベタ画像を形成した後、別の白紙をその自重で記
録画像の上に重ね、紙の裏側に記録した画像の転写がな
くなり、地汚れが発生しなくなるまでの時間を記録終了
時を時間ゼロとして測定して、定着性の尺度とした。評
価基準は以下の通りである、 ◎:定着性が20秒未満 ○:定着性が20秒以上〜30秒未満 △:定着性が30秒以上〜40秒未満 ×:定着性が40秒以上。
【0149】3.文字品位 液体組成物とブラックインクを用いて、ブラックの英数
文字を印字し、目視にて評価した。フェザリングがほと
んど目立たないものを◎とし、フェザリングがやや目立
つが実用上問題ないレベルのものを○とし、それ以下の
レベルのものについては、×とした。
【0150】4.ブリーディング キヤノン製カラーバブルジェットプリンターBJC−8
20J(商品名)の印字モードE(1Pass、片方向
印字)と同じ印字モードで、液体組成物とイエロー、マ
ゼンタ、シアン、ブラックの各色のベタ部を隣接して印
字し、各色の境界部でのブリーディングの程度を目視に
より観察した。ブリーディングがほとんど発生しないも
のを◎とし、ややブリーディングが発生するが、実質上
問題無いレベルであるものを○とし、それ以外のレベル
の物は×とした。
【0151】5.耐水性 イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のベタ画
像及び英数文字を印字し、1時間放置した後、水温20
℃の水道水中へ10秒間浸漬した。その後、水からとり
だし、そのまま風乾し、目視にて耐水性を評価した。イ
エロー、マゼンタ、シアン、ブラックのうち、耐水性の
最も低いインクを耐水性の評価結果とした。耐水性の評
価基準は以下の通りである、 ◎:余白部分への記録剤の流れ出しがなく、地汚れがほ
とんどみられない。英数文字のにじみもほとんど発生し
ていない ○:余白部分への記録剤の流れだしがやや発生し、英数
文字がややにじんではいるが実使用上問題ないレベルで
ある ×:余白部分への記録剤の流れだしがひどく、地汚れが
著しい。又、英数文字のにじみもひどい 尚、本発明の実施例1及び比較例1を通じて、液体組成
物の記録媒体への付着領域は、インクの画像形成領域と
同一領域であり、印字のデューティは液体組成物、イン
クのどちらも全て100%である。
【0152】印字評価結果を第2表にまとまた。
【0153】(比較例)記録インク1から5のインクを
用いて、液体組成物を使用しなかったことを除けば、実
施例と全く同様の印字試験及び評価を行った。その結果
を第3表に示す。
【0154】
【表3】
【0155】
【表4】
【0156】
【表5】
【0157】(液体組成物H及びIに用いるポリマーの
合成)「機能材料」Vol.5, 29, (1986) に記載されてい
る方法に基づき、GPCで測定したときに下記の分子量
分布を有する2種類のポリアリルアミン塩酸塩を合成し
た。
【0158】ポリマー(1):分子量分布のピーク位置
900 但し、分子量1000を越えるフラクションが全体の3
0重量%を占めるもの ポリマー(2):分子量分布のピーク位置 1400 但し、分子量1000以下のフラクションが全体の20
重量%を占めるもの (液体組成物Hの組成) ポリマー(1) 6部 ジエチレングリコール 10部 イソプロパノール 10部 イオン交換水 74部 (液体組成物Iの組成) ポリマー(2) 5部 ジエチレングリコール 10部 イソプロパノール 10部 イオン交換水 75部 以上の様に調製した液体組成物H及びIを用いて下記第
4表に示した液体組成物と記録インク及び印字プロセス
の組合わせにより実施例47ー54を行い得られたイン
ク画像を評価した。上記実施例47ー54において用い
た記録条件、記録装置及びインク画像の評価方法や評価
基準は全て実施例1と同じである。上記実施例47ー5
4で得られたインク画像の評価結果を第5表に示す。
【0159】
【表6】
【0160】
【表7】
【0161】(比較例)比較例に用いる液体組成物J及
びKとして以下の組成物を調製した。
【0162】 (液体組成物Jの組成) ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド(商品名:エレクトロストリッ パーQE ;花王(株)社製/ Mw=340): 4部 チオジグリコール :10部 イオン交換水 :86部 (液体組成物Kの組成物) ポリアミンスルホン塩酸塩(商品名:PAS−A−1、日東紡績(株)社製/ 分子量分布のピーク位置 2000) : 5部 チオジグリコール :10部 イオン交換水 :85部 (なお上記ポリアミンスルホン塩酸塩にはGPCで測定
した時に分子量1000以下の成分は認められない)。
【0163】次に上記液体組成物、記録インク及び印字
プロセスを下記第6表に示す組合わせで比較例6及び7
を行い得られたインク画像を評価した。なお比較例6及
び7で用いた記録条件、記録装置及びインク画像の評価
方法や評価基準は全て実施例1と同じである。上記比較
例6及び7で得られたインク画像の評価結果を第7表に
示す。
【0164】
【表8】
【0165】
【表9】
【0166】
【発明の効果】以上説明したように、普通紙に対するカ
ラーインクジェット記録を行う場合に本発明を実施する
ことで、高速定着、高印字品位、ブリードレス、完全耐
水性を満足した画像を得ることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 インクジェット記録装置のヘッド部の縦断面
図である。
【図2】 インクジェット記録装置のヘッド部の横断面
図である。
【図3】 インクジェット記録装置のヘッド部の外観斜
視図である。
【図4】 インクジェット記録装置の一例を示す斜視図
である。
【図5】 インクカートリッジの縦断面図である。
【図6】 記録ユニットの斜視図である。
【図7】 本発明の実施例で使用した複数の記録ヘッド
が配列した記録部を示した斜視図である。
【図8】 本発明に使用する別の記録ヘッドの斜視図で
ある。
【図9】 本発明にかかる液体組成物の実施態様の分子
量分布の概略説明図である。
【図10】 本発明にかかる液体組成物の実施態様の分
子量分布の概略説明図である。
【図11】 本発明にかかる液体組成物の実施態様の分
子量分布の概略説明図である。
【図12】 本発明にかかる液体組成物の実施態様の分
子量分布の概略説明図である。
【符号の説明】
13 ヘッド 15、28 発熱ヘッド 21 インク 25 記録媒体 40 インク袋 44 インク吸収体 45 インクカートリッジ 61 ワイピング部材 65 記録ヘッド 66 キャリッジ 70 記録ユニット 71 ヘッド部 72 大気連通孔
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 村井 啓一 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内

Claims (36)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カチオン性物質を含む液体組成物であっ
    て該液体組成物は、その分子量分布をゲル・パーメーシ
    ョン・クロマトグラフィー(GPC)で測定した時に分
    子量の異なる領域のそれぞれに少なくとも1つのピーク
    を有し、該ピークは該カチオン性物質由来のものである
    ことを特徴とする液体組成物。
  2. 【請求項2】 前記領域の1つが分子量1000以下の
    範囲にあり、且つ他の領域が分子量1500以上の範囲
    にある請求項1に記載の液体組成物。
  3. 【請求項3】 前記カチオン性物質を0.05〜20重
    量%の範囲で含有する請求項1に記載の液体組成物。
  4. 【請求項4】 前記カチオン性物質が少なくとも2種類
    以上の化合物からなる請求項1に記載の液体組成物。
  5. 【請求項5】 前記カチオン性物質のうち少なくとも一
    種が界面活性剤である請求項1に記載の液体組成物。
  6. 【請求項6】 請求項1乃至5の何れかに記載の液体組
    成物と、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、レッ
    ド、ブルー、グリーンの少なくとも1つのインクとを組
    み合わせたことを特徴とするインクセット。
  7. 【請求項7】 請求項1乃至5の何れかに記載の液体組
    成物と、イエロー、マゼンタ、シアンの3色のインクと
    を組み合わせたことを特徴とするインクセット。
  8. 【請求項8】 請求項1乃至5の何れかに記載の液体組
    成物と、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4
    色のインクとを組み合わせたことを特徴とするインクセ
    ット。
  9. 【請求項9】 インクがアニオン性化合物を含む請求項
    6乃至8の何れかに記載のインクセット。
  10. 【請求項10】 インクがアニオン性基を有する水溶性
    染料を含む請求項6乃至8の何れかに記載のインクセッ
    ト。
  11. 【請求項11】 インクが顔料とアニオン性化合物とを
    含む請求項6乃至8の何れかに記載のインクセット。
  12. 【請求項12】 アニオン性化合物が分子量1000以
    上の高分子物質である請求項9又は請求項11に記載の
    インクセット。
  13. 【請求項13】 アニオン性化合物が界面活性剤である
    請求項9又は請求項11に記載のインクセット。
  14. 【請求項14】 請求項1乃至5の何れかに記載の液体
    組成物を記録媒体の少なくとも画像形成領域に付着させ
    る工程(A)と、少なくともアニオン性化合物を含有す
    るインクをインクジェット方式により前記記録媒体に付
    与する工程(B)を含むことを特徴とする画像形成方
    法。
  15. 【請求項15】 前記インクジェット方式がオンデマン
    ド型インクジェット方式である請求項14に記載の画像
    形成方法。
  16. 【請求項16】 前記液体組成物をインクジェット方式
    により記録媒体に付着させる請求項14に記載の画像形
    成方法。
  17. 【請求項17】 前記インクジェット方式がインクに熱
    エネルギーを作用させるインクジェット方式である請求
    項14乃至16のいずれかに記載の画像形成方法。
  18. 【請求項18】 工程(A)を工程(B)に先立って行
    う請求項14に記載の画像形成方法。
  19. 【請求項19】 工程(A)を工程(B)の後に行う請
    求項14に記載の画像形成方法。
  20. 【請求項20】 請求項6乃至13の何れかに記載のイ
    ンクセットとインクジェット手段とを有することを特徴
    とする画像形成装置。
  21. 【請求項21】 請求項1乃至5の何れかに記載の液体
    組成物の収納部及び吐出手段を有する第1の記録ユニッ
    トと、少なくともアニオン性化合物を含有するインクの
    収納部及び吐出手段を有する第2の記録ユニットとを備
    えたことを特徴とする画像形成装置。
  22. 【請求項22】 前記吐出手段がインクジェット手段で
    ある請求項21に記載の画像形成装置。
  23. 【請求項23】 カチオン性物質を含む液体組成物であ
    って、該液体組成物はその分子量分布をゲル・ パーメー
    ション・ クロマトグラフィー(GPC)で測定したとき
    に分子量1000以下及び1000を越えるフラクショ
    ンを有する分子量分布を示すものであって、該分子量1
    000以下のフラクション及び分子量1000を越える
    フラクションに該カチオン性物質を含むことを特徴とす
    る液体組成物。
  24. 【請求項24】 該カチオン性物質に基づく分子量が連
    続的に分布している請求項23に記載の液体組成物。
  25. 【請求項25】 分子量1000以下のフラクションに
    含まれるカチオン性化合物が界面活性剤である請求項2
    3に記載の液体組成物。
  26. 【請求項26】 分子量1000以下のフラクションに
    含まれるカチオン性化合物がカチオン性オリゴマーであ
    る請求項23に記載の液体組成物。
  27. 【請求項27】 分子量1000以下のフラクション及
    び分子量1000を越えるフラクションの少なくとも一
    方に該カチオン性物質に基づくGPCのピークを有する
    請求項23に記載の液体組成物。
  28. 【請求項28】 請求項23に記載の液体組成物とイエ
    ロー、マゼンタ、シアン、ブラック、レッド、ブルー、
    グリーンの少なくとも1つのインクとを組合わせたこと
    を特徴とするインクセット。
  29. 【請求項29】 請求項23に記載の液体組成物とイエ
    ロー、マゼンタ、シアンの3色のインクとを組合わせた
    ことを特徴とするインクセット。
  30. 【請求項30】 請求項23に記載の液体組成物とイエ
    ロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色のインクと
    を組合わせたことを特徴とするインクセット。
  31. 【請求項31】 請求項23に記載の液体組成物を記録
    媒体の少なくとも画像形成領域に付着させる工程
    (A)、及び少なくともアニオン性化合物を含有するイ
    ンクをインクジェット方式により該記録媒体に付与する
    工程(B)を有することを特徴とする画像形成方法。
  32. 【請求項32】 前記工程(A)を工程(B)に先立っ
    て行う請求項31記載の画像形成方法。
  33. 【請求項33】 前記工程(A)を工程(B)の後に行
    う請求項31記載の画像形成方法。
  34. 【請求項34】 請求項23に記載のインクセットとイ
    ンクジェット手段を有することを特徴とする画像形成装
    置。
  35. 【請求項35】 請求項24に記載のインクセットとイ
    ンクジェット手段を有することを特徴とする画像形成装
    置。
  36. 【請求項36】 請求項23に記載の液体組成物の収納
    部及び吐出手段を有する第1の記録ユニットと少なくと
    もアニオン性化合物を含有するインクの収納部及び吐出
    手段を有することを特徴とする画像形成装置。
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