JPH08223790A - 超電導限流器 - Google Patents

超電導限流器

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JPH08223790A
JPH08223790A JP7020603A JP2060395A JPH08223790A JP H08223790 A JPH08223790 A JP H08223790A JP 7020603 A JP7020603 A JP 7020603A JP 2060395 A JP2060395 A JP 2060395A JP H08223790 A JPH08223790 A JP H08223790A
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JP
Japan
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superconducting
current
superconductor
heater
fault current
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Application number
JP7020603A
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English (en)
Inventor
Kazuyuki Tsurunaga
和行 鶴永
Jun Matsuzaki
順 松崎
Junji Fujiwara
純二 藤原
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Publication date
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    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
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    • Y02E40/60Superconducting electric elements or equipment; Power systems integrating superconducting elements or equipment

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  • Superconductor Devices And Manufacturing Methods Thereof (AREA)
  • Containers, Films, And Cooling For Superconductive Devices (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】超電導限流素子の局部的温度上昇を防ぐ。 【構成】ヒータ1cに絶縁基板1bを載せ、この絶縁基
板1bの上に超電導体1aの被膜を形成する。超電導体
1aの電源側の端部とヒータ1cの電源側の端部は、短
絡板1dで接続する。ヒータ1cの負荷側には、変流器
22bと半導体のスイッチ22を直列に接続した後、超電導
体1aの負荷側に接続する。超電導体1aには、クエン
チセンサ22aを並列に接続し、超電導体1aがクエンチ
すると、スイッチ22を投入し、過電流をヒータ1cに分
流させる。ヒータ1cの温度が上がると、このヒータの
熱によって超電導体1aを均一に加熱して、超電導体1
a全体を均一に加熱して、局部的過熱を防ぐ。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電路に流れる短絡電流
を限流する超電導限流器に関する。
【0002】
【従来の技術】送電線路や配電線路に相間短絡や地絡事
故が発生すると、数十kAにも及ぶ事故電流が流れて、
系統及び機器に大きな損傷を与えてしまう。このような
事故電流を瞬時に検出するとともに、この事故電流を抑
制するための限流技術の一つに、最近超電導を応用した
ものが提案されている。
【0003】なかでも、酸化物超電導体の常電導への転
移(以下、クエンチという)を応用した超電導限流器
は、冷却コストが安価で、外形を小形化することができ
るため、近年実用化に向けた研究が進められている。
【0004】例えば、酸化物超電導体の限流素子を電源
と負荷の間に接続する方法である。すなわち、事故電流
が限流素子の臨界電流値(Iq)以下であれば、限流素
子は超電導状態(インピーダンスゼロ)を維持して、熱
損失は発生せず電圧降下もない。
【0005】しかし、前述した相間短絡や接地事故が発
生して、線路に接続された限流素子の臨界電流値以上の
電流が流れると、限流素子がクエンチして抵抗体に転移
し、事故電流を抑制する。
【0006】図11は、このような酸化物超電導体を用い
た限流素子の一例を示す外観斜視図で、特開昭64-89922
号公報に開示されている。この限流素子では、酸化物超
電導体22を薄膜化してその臨界電流密度を上げるととも
に、通電経路を円筒状基板21の外周に螺旋状に蒸着さ
せ、薄膜の長さを延ばすことで、クエンチ後の抵抗の増
加による事故電流の限流を図っている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところが、このように
構成された酸化物超電導限流器においては、限流素子の
クエンチ電流値のばらつきによる局部発熱(焼損)や復
帰時間(限流素子冷却時間)が問題となる。
【0008】なぜならば、酸化物超電導体は、金属系超
電導体に比べて、臨界電流密度のばらつきが大きく、か
つ、熱伝導率も低い。したがって、線路に流れる過電流
に対して酸化物超電導体22は局所的にクエンチし、その
結果、事故電流が限流されると、その後は熱伝導によっ
てクエンチ領域が広がっていく。
【0009】しかも、酸化物超電導体やそのベースとな
るセラミックス製の円筒状基板21の熱伝導率は一般に低
く、超電導状態を維持している部分の熱的クエンチ伝播
(広がり)速度が極めて遅いので、限流動作時の素子抵
抗値の増加速度も遅い。
【0010】したがって、従来の酸化物超電導限流素子
においては、限流素子全体がクエンチしないことから、
クエンチ後の全体の抵抗値が低く、事故電流値が大きく
通電時間が長くなって、限流時の損失(Pc)が式
(1)に示すように増加する(限流時の損失は素子クエ
ンチ抵抗値に反比例)。
【0011】
【数1】 ここで、E(t) :回路電圧(V) Re(t):限流素子の抵抗値(Ω) t :限流時間(sec)
【0012】限流素子の限流時の損失が増えると、超電
導体の温度上昇も増え、素子が焼損するおそれがあるだ
けでなく、限流動作後に冷凍機によって冷却(熱交換)
される限流素子の冷却時間が長くなり、それだけ限流装
置の復帰も遅くなる。そこで、本発明は、超電導限流素
子の局部的温度上昇を抑制するとともに、復帰時間を短
縮することのできる超電導限流器を得ることを目的とす
る。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の超電導限流器
は、超電導被膜が片側に形成され超電導被膜と並列に接
続される電熱板が他側に隣接された絶縁板を備えたこと
を特徴とする。なお、超電導被膜のクエンチによって投
入されるスイッチを電熱板に直列に接続してもよく、電
熱板にコンデンサを直列に接続してもよい。
【0014】また、超電導被膜に並列抵抗器を接続し、
この並列抵抗器と超電導被膜との並列回路の電源側に遮
断器を直列に接続してもよい。また、超電導被膜に並列
に接続されこの超電導被膜のクエンチを検出し超電導被
膜のクエンチによりスイッチをオンするクエンチ検出器
と、電熱板に流れる電流を検出しこの電流があらかじめ
設定した値を超えるとスイッチをオフする電流検出器を
設けてもよい。
【0015】また、絶縁板の片側に超電導被膜の組織を
整えるバッファ層を形成してもよく、電熱板に流れる電
流を蛇行させる複数条の溝を電熱板に形成してもよい。
さらに、超電導被膜を酸化物超電導材で形成し、複数の
超電導被膜が並列接続され複数の電熱板が直列接続され
た複数のユニットを直列に接続し、これらのユニットの
電熱板群を直列に接続してもよく、冷凍機で冷却される
冷却板を絶縁層を介して超電導被膜の外面に隣接しても
よい。
【0016】
【作用】このような手段による超電導限流器において
は、過電流が超電導被膜に流れてこの超電導被膜がクエ
ンチすると、このクエンチにより電熱板に分流した電流
によって、電熱板は均一に温度が上昇し、この電熱板で
発生した熱は、超電導被膜全体に絶縁板を介して均一に
伝達されて、超電導被膜は全体に亘って均一にクエンチ
する。
【0017】
【実施例】以下、本発明の超電導限流器の一実施例を図
面を参照して説明する。図1は、本発明の超電導限流器
の第1の実施例を示す接続図で、図2は、図1の限流素
子の構成図を示す。
【0018】図1及び図2において、符号1は図2で後
述する限流素子、符号1aは後述する超電導体、符号1
bは同じく絶縁基板、符号1cはヒータ、符号1dは短
絡板である。
【0019】また、符号22はGTO素子を使った高速動
作の双投形のスイッチ、符号22aはクエンチセンサ、符
号22bは変流器、符号22cはスイッチ制御ユニット、符
号23は並列抵抗、符号11は電源、符号12は真空遮断器、
符号13は負荷、符号14は線路抵抗を示す。ただし、後述
する表1で示すように、図2で示す超電導体1a及び絶
縁基板1bとヒータ1cの厚みは幅と長さに比べて誇張
して示している。さらに、符号Teは超電導体1aの負
荷側の端子、符号Th1 ,Th2 はヒータ1cの端子、
符号Ts1 ,Ts2 はスイッチ22の端子を示す。
【0020】図1で示す回路のように、電源11から供給
される電力は、真空遮断器12を経て限流素子1の電源側
に供給され、この限流素子1の負荷側を経て負荷13に供
給される。
【0021】また、限流素子1の内部は、超電導体1a
の電源側とヒータ端子Th1 とが短絡板1dによって短
絡され、超電導体端子Teとスイッチ端子Ts2 及びヒ
ータ端子Th2 とスイッチ端子Ts1 も各々接続されて
いる。さらに、限流素子1の両端には、並列抵抗33が並
列に接続されている。
【0022】図1において、クエンチセンサ22aが超電
導体1aのクエンチを検知すると、クエンチセンサ22a
からの指令でスイッチ22はオンされるとともに、ヒータ
1cの限流時の発生熱量が所定の値に達すると、スイッ
チ制御ユニット22cによってスイッチ22はオフされる。
【0023】そのため、クエンチセンサ22aには、超電
導体1aにクエンチが生じたときの超電導体1aの端子
電圧の値が予め基準値として内部回路に記憶されてお
り、その値を超える変化が実際に生じた場合に、超電導
体1aのクエンチ信号を出力する。クエンチセンサ22a
は、このようにして超電導体1aのクエンチを検知する
と、スイッチ22に対して瞬時にオン指令を出力するとと
もに、真空遮断器12に対してオフ指令を出力する。
【0024】スイッチ22がオンすると、ヒータ1cにも
事故電流が転流するが、このヒータ電流の値は、変流器
22bによって検出され、スイッチ制御ユニット22cに出
力される。このスイッチ制御ユニット22cの内部には、
ヒータ電流からヒータ1cの発熱量を演算する回路があ
らかじめ組み込まれており、ヒータ1cの発熱量が所定
の値に達すると、スイッチ制御ユニット22cはスイッチ
22をオフする。
【0025】図2は、限流素子1の具体的構造の一例を
示す図で、このうち、(a)は(d)のA矢視図、
(b)は(d)のB矢視図、(c)は(d)のC矢視図
である。まず、図2(d)において、図2(c)で示す
ヒータ1cの上面には、図2(b)で示す短冊状の絶縁
基板1bが重ねられ、この絶縁基板1bの上部には、図
2(a)で示す同じく短冊状の後述する酸化物の超電導
体1aの被膜が形成されている。
【0026】この酸化物超電導体1aの左端は、Z字形
の短絡板1dでヒータ1cに接続され、超電導体1aの
右端には、L字形の端子Teが接続されている。ヒータ
1cの両端には、端子Th1 ,Th2 が図2(c)に示
すように設けられている。
【0027】このように構成された超電導限流器におい
ては、定常時において、電力は抵抗ゼロの超電導体1a
を通って負荷13に損失なく給電される。一方、負荷13に
短絡などの事故が発生して回路に過電流が流れると、超
電導体1aがクエンチして高抵抗体となり、事故電流を
抑制する。
【0028】ただし、超電導体1aのクエンチ領域は臨
界電流値の低い部分のみとなり、超電導体の全体には及
ばない。限流素子1に部分的なクエンチが発生すると、
前述したようにクエンチセンサ22aがそれを検出し、直
ちにスイッチ22に対してはオン指令を、また真空遮断器
12に対してはオフ指令を出力する。
【0029】クエンチセンサ22aの指令により、スイッ
チ22は数十μsecでオン状態となるが、真空遮断器12
は引外機構が動作する時間だけ遅れるので、実際に回路
電流が遮断されるのは1/2〜1サイクル後となる。ス
イッチ22がオンすると、事故電流はヒータ1c及び並列
抵抗23側にも分流し、このヒータ1c及び並列抵抗23は
全体に亘って一様に発熱する。
【0030】ここで、ヒータ1cの発熱量は、変流器22
bとスイッチ制御ユニット22c内のヒータ発熱量演算回
路で演算され、その値が所定値(超電導体1aの温度を
オンセット温度以上に上昇し得る値以上の発熱量)に達
すると、スイッチ制御ユニットはスイッチ22をオフ状態
に戻す。
【0031】このように制御されるヒータ1cの発熱に
よって、超電導体1aの全体の温度は、部分クエンチ発
生後、極めて短時間のうちにオンセット温度まで上昇
し、超電導体1aは全長に亘ってクエンチし、その結果
抵抗値が上昇する。
【0032】したがって、超電導体1aを流れる事故電
流値は、極めて小さな値に抑制されるとともに、スイッ
チ22のオフ動作によりヒータ1cを流れる電流とそれに
よる発熱もゼロとなり、冷凍機によって冷却される極低
温領域での発生損失が大幅に減少する。以上の作用によ
り、事故電流の殆どが常温領域に配置された並列抵抗23
に転流し、この並列抵抗23によって最適な電流値に限流
される。
【0033】クエンチセンサ22aのクエンチ信号を受け
て遮断動作に入っていた真空遮断器12は、このように事
故電流が自己の遮断容量に対応した所定の値に限流され
た状態となった直後に回路を遮断する。
【0034】真空遮断器12による遮断が完了すると、超
電導体1a及び並列抵抗23の発熱は消滅し、これらの限
流素子は図示しない冷凍機や常温下で各々冷却され、初
期の温度(定常状態)に復帰する。
【0035】以下、図1及び図2で示した各構成要素の
材料特性を示す表1を含めて更に詳細に説明する。超電
導体1aは、表1に示すように、幅1cm,長さ25cm,厚
さ1μmのYBCO(イットリウム)系超電導体薄膜で
構成されている。
【0036】
【表1】
【0037】図3は、超電導体1aの臨界電流密度の温
度依存性とばらつきを示すグラフである。この超電導体
1aの臨界温度(Tc)は87Kで、77K冷却時における
臨界電流密度Jcの最大値Jcmaxは1×106 A/cm2
最小値Jcminは5×105 A/cm2 となっている。
【0038】すなわち、この超電導体1aが流すことの
できる電流密度の最大値は1×106A/cm2 、最小値は
5×105 A/cm2 であり、この臨界電流密度のばらつき
はランダムに分布している。また、超電導体1aの臨界
電流密度は、超電導体1aの温度に逆比例し、図3に示
すように冷却温度が低くなるほど上昇する。
【0039】図4は、超電導体1aの温度による固有抵
抗の変化を示すグラフである。超電導体1aの温度が臨
界温度(Tc)の87Kを超えると、超電導性を喪失して
常電導体となり、抵抗が発生する。
【0040】この超電導体1aの固有抵抗値の変化率
は、超電導体1aの温度によって異り、87Kから90Kま
では図4に示すように急激に上昇するが、その後は常温
領域にかけて緩やかに上昇する。この固有抵抗の温度特
性の分岐点をここではオンセット温度TONと表し、その
ときの固有抵抗率をオンセット抵抗率(ρON)と呼ぶ。
【0041】本実施例による超電導体1aのオンセット
温度は、図4に示すように90K、オンセット抵抗率は
0.5mΩ−cmとなっている。超電導体1aのその他の特
性としては、表1に示すように、熱伝導率λeは12W/
m・K、比熱Ceは 0.063J/cm3 ・K、熱容量HCe
は 1.5×10-4J/Kとなっている。
【0042】次に、絶縁基板1bは、幅 1.4cm,長さ27
cm,厚さ1mmの窒化アルミニウム(ALN)を母材と
し、前述の超電導体1aを蒸着する面には、超電導体1
aの膜の組織性の規則性を維持するバッファ層として、
厚さが数μm以下のイットリア安定化ジルコニア(YS
Z)セラミックス層が形成されている。この絶縁基板1
bの特性は、表1に示すように、熱伝導率λbは 200W
/m・K、比熱Cbは 0.2J/cm3 ・K、熱容量HCb
は 0.5J/Kとなっている。
【0043】ヒータ1cは、幅1cm、長さ27cm、厚さ
0.01cm で、前述した図2(c)で示すように、通電経
路が蛇行して長くなるように両側から溝が等間隔に加工
された高固有抵抗金属(コンスタンタン)が用いられて
いる。
【0044】このヒータ1cの特性は、表1に示すよう
に、抵抗率ρh は43μΩ−cm、抵抗値Rh は 0.325Ω、
熱伝導率λh は20W/m・K、比熱Ch は1J/cm3
K、熱容量HCh は 0.25 J/Kとなっている。
【0045】なお、このようなシート状酸化物の超電導
体1aは、レーザーアブレーション法と称する製法で製
作される。また、ヒータ1cを基板1b(窒化アルミニ
ウム)へ接合し任意のパターンを形成することも、熱拡
散接合法など既存技術により形成されるが、ここでは詳
細な説明を省く。
【0046】次に、このように構成された超電導限流素
子を、図1に示す回路に組み込んだ超電導限流器の作用
について説明する。図1において、電源11の電圧は、表
1にも示すようにAC 400V−50Hz、負荷13の抵抗値R
は12Ω、線路14の抵抗値RL は 0.01 Ω、並列抵抗22の
抵抗値は 1.2Ωとする。
【0047】本発明の超電導限流器が運転状態に入るに
は、限流素子を図示しない冷凍機によって常温から77K
まで冷却する過程が必要となるが、この冷却過程で、セ
ラミックスである絶縁基板1bと金属製のヒータ1c間
に熱膨張係数の差による応力が発生する。すなわち、ヒ
ータ1cの収縮量が絶縁基板1bの収縮量よりも大きい
ため、絶縁基板1bを湾曲させようとする応力が生じ
る。
【0048】ヒータ1cに施された溝1c1 の第1の作
用は、ヒータの熱収縮時応力を極度に低下させること
で、絶縁基板1bに変形や歪を生じさせないことにあ
る。冷凍機によって限流素子1が77Kまで冷却される
と、超電導限流器への通電が可能となる。
【0049】図5は、定常時及び短絡事故時における本
発明の第1の実施例の作用を示すグラフである。真空遮
断器12が定常時に投入されると、回路には最大値が回路
電圧の最大値Emと回路の全抵抗RO との比で決まる負
荷電流が流れる。
【0050】限流素子1の合成抵抗値は、超電導体1a
が超電導状態にあるから0Ωとなっており、回路には負
荷13の抵抗分(R)と線路抵抗14の抵抗分(RL )だけ
が存在する。したがって、このときの回路電流の最大値
は式(2)に示すように、 i=Em/RO ・・・(2) =Em/(R+RL ) = 566/12.01 =47A となり、超電導体1aの最小臨界電流値(50A)以下に
なることから、この限流素子は、図5(e)に示すよう
に、超電導状態(抵抗ゼロ)を維持し、図5(a)に示
すように、正常に負荷13に電流を供給し続ける。
【0051】このような定常状態において問題となるの
が、ヒータ1cに流れる渦電流による損失で発生する熱
である。ヒータ1cに形成された溝1c1 の第2の作用
は、この渦電流による損失の低減である。すなわち、超
電導体1aに流れる電流で発生する磁束線は、ヒータ1
c内を貫通することから、その磁束線を打ち消す方向に
ヒータ1c内に渦電流が流れる。
【0052】この渦電流による損失の値Peは、式
(3)に示すように、ヒータ貫通磁束線量とその時間変
化割合とヒータの抵抗値によって決まる。 Pc=Ee2 /Rh (W) ・・・(3) ここで、 Ee:超電導体電流によりヒータに誘起される電圧 Ee=dφ/dt (V) dφ:超電導体電流により生じ、且つ、ヒータの断面を
貫通する単位時間当たりの磁束線の量 dt:上記磁束線の時間変化率 Rh:ヒータの抵抗値(Ω) したがって、ヒータ1cに形成された溝により、ヒータ
の抵抗値を溝なしの場合の数倍〜数十倍に大きくできる
ので、それだけ、渦電流損失を低減できる。
【0053】次に、負荷13に短絡事故が発生した場合の
限流素子の作用について説明する。今、回路の電圧及び
電流の位相が同相で負荷13に短絡事故が発生したとする
と、そのときの事故電流値は、電源電圧の最大値Emを
線路抵抗RL で除した値、すなわち、 566/ 0.01 =5
6,600(A)に上昇しようとする。事故電流が超電導体
1aの最小臨界電流値50Aを超えると、超電導体1aは
クエンチして図5(e)に示すように瞬時に所定の抵抗
値に上昇する。
【0054】このときの超電導体1aの抵抗値は、超電
導体1aの特性のばらつきにもよるが、全体の約10%
(実験値),12.5Ω程度となり、これにより事故電流は
図5(a)の曲線I1 に示すように限流される。
【0055】クエンチセンサ22aは、この超電導体1a
のクエンチを瞬時に検出してスイッチ22をオンにする。
スイッチ22は、先述したゲートターンオフサイリスタ
(GTO)を使用した高速動作の双方向スイッチで、超
電導体1aのクエンチが生じてから数十μsec以内に
図5(b)に示すようにオフ状態からオンする。この結
果、事故電流は図5(c)に示すように並列に接続され
たヒータ1cにも分流する。この分流の実効値は式
(4)により求められる。
【0056】
【数2】 ここで、 ih:ヒータ電流実効値(Arms) t :通電時間(sec) Im:ヒータ電流の最大値(A) Im=Em/Rh = 566/ 0.325 =1742 A ω :電流の角速度 ω=2・π・f = 100・π (rad/sec) ヒータ1cは 0.325Ωの抵抗体となっており、式(5)
に示すように転流した電流の実効値ih の2乗に比例し
たジュール発熱Ph を生じる。
【0057】
【数3】 Rh:ヒータ抵抗値(Ω) このヒータ1cによるジュール発熱Phによって、ヒー
タ1c自身は勿論、絶縁基板1bと超電導体1aの温度
は式(6)に示すように上昇する。
【0058】
【数4】 HC:ヒータ及び絶縁基板と超電導体の熱容量の合計
(J/K) ここで、ヒータ1cの発熱が超電導体1aに伝導伝熱し
て超電導体1aの温度が上昇する場合の熱時定数τは、
式(7)に示すとおりとなる。
【0059】 τ=HC・HR (sec) ・・・(7) HR:超電導体1aとヒータ間の熱抵抗 (K/W) すなわち、超電導体1aの最終温度上昇値は式(6)に
よって決定され、温度上昇の時間的速さは式(7)によ
り概略求められる。
【0060】以下、以上の式(4),(5),(6),
(7)から、超電導体1aの温度上昇値とその時間的な
速さを試算する。試算条件としては、短絡発生位相は0
度で、瞬時に超電導体1aがクエンチし、スイッチ22も
瞬時(ほぼ、位相0度)にオン状態に制御されてヒータ
1cの発熱が開始、その後1msecでスイッチがオフ
状態に制御されるものとする。
【0061】まず、ヒータ1cへの転流電流の実効値を
式(4)により求めると、
【数5】
【0062】次に、このときヒータ1cに生じるジュー
ル発熱Ph を式(5)により求めると、
【数6】 但し、t=0.001sec このヒータ1cのジュール発熱Phによる超電導体1a
の温度上昇値を式(6)により求めると、
【0063】
【数7】 但し、t=0.001secで放熱はゼロと仮定 ここで、 HCe:超電導体1aの熱容量 0.00015(J/K) HCb:絶縁基板1bの熱容量 0.5 (J/K) HCh:ヒータ1cの熱容量 0.25 (J/K)
【0064】超電導体1aの温度上昇時熱時定数τは、
式(7)と式(8)から求められる。
【0065】τ=HC・HR = 0.75015・ 2.033×10-3 = 0.0015 (sec) ここで、 HR=1/(λa・Sa/La)+1/(λb・Sb/Lb)・・(8) =1/(12・ 2.5×10-3/1×10-6) +1/( 200・ 2.5×10-3/1×10-3) = 2.033×10-3 (K/W)
【0066】また、 λa:超電導体の熱伝導率 :12 (W/m・K) Sa:超電導体の伝熱方向断面積 : 2.5×10-3(W/m2 ) La:超電導体の伝熱方向距離 :1×10-6 (m) λb:絶縁ベースの熱伝導率 : 200 (W/m・K) Sb:絶縁ベースの伝熱方向断面積: 2.5×10-3(W/m2 ) Lb:絶縁ベースの伝熱方向距離 :1×10-3 (m)
【0067】次に、スイッチ22がオンした後、超電導体
1aの温度が定常冷却時温度(77K)からオンセット温
度(90K)まで上昇するのに要する時間tを式(9)に
より求めると、以下のとおりとなる。
【0068】 t=−τ・loge (1−θON/θm) ・・・(9) =− 1.2×10-3・loge (1−13/43) = 0.00043 (sec) 以上の結果をまとめると、回路に事故電流が流れると、
超電導体1aは局部的にクエンチして図5(e)に示す
ように12.5Ωの抵抗体となる。
【0069】この超電導体1aのクエンチ発生が検知さ
れると、スイッチ22が図5(b)に示すように瞬時にオ
ンし、ヒータ1cにも図5(c)に示すように事故電流
が分流する。すると、ヒータ1cは事故電流の転流によ
って発熱し、図5(d)に示すように 0.43 msecで
超電導体1aの全体の温度をオンセット温度90Kまで上
昇させる。
【0070】これにより、超電導体1aの抵抗値は、図
5(e)に示すように 125Ωまで上昇し、超電導体1a
の内部を流れる事故電流は部分クエンチ時(12.5Ω)の
約1/10に減少する。スイッチ22は、図5(b)に示す
ように、オン動作してから約1msec後にスイッチ制
御ユニット22aによってオフ状態に戻され、ヒータ1c
の発熱はこの時点で停止する。
【0071】以上の作用により、限流素子1を通過する
事故電流のピーク値は、事故発生後約1msecを経過
した時点の超電導体1aとヒータ1cを流れる電流の和
となり、次式に示すように 553Aに限流される。
【0072】 ie(t) =Em・Sinωt/Re(t) = 566・Sin(2・π・50・ 0.001)/12.5 = 175/12.5 =14 A ・・・(10) ih(t) =Em・Sinωt/Rh(t) = 566・Sin(2・π・50・ 0.001)/ 0.325 = 175/ 0.325 = 539 A ・・・(11) io(t) =ie(t) +ih(t) =14+ 539 = 553 A ・・・(12)
【0073】この値は、限流素子1が接続されていない
場合の事故電流(ピーク値)56.6kAの約1/ 100とな
り、極めて大きな限流効果が得られる。これにより、超
電導体1aを流れる事故電流I1 の値は、図5(a)に
示すようにさらに抑制され、超電導体1aにかかる熱ス
トレスが軽減される。
【0074】なお、並列抵抗23は、必ずしも必要ではな
いが、回路に誘導性負荷が接続されていた場合には、ス
イッチ22がオフしたときの急激な回路電流の減少による
サージ電圧の発生を抑制する。
【0075】すなわち、並列抵抗23を省いた場合には、
スイッチ22がオフすると、事故電流は限流素子1によっ
て殆ど遮断状態となり、回路が誘導性の場合、高いサー
ジ電圧が発生する。並列抵抗33はこのような現象を防ぐ
とともに、事故発生後の最終限流電流ピーク値を 472A
( 566V/ 1.2Ω)に抑制する。
【0076】また、同様の作用と効果を奏する手段とし
て、サージサプレッサ用非直線抵抗体やコンデンサと抵
抗を組み合わせたCRサプレッサなどを用いてもよい。
また、この実施例においては、スイッチ22も必ずしも必
要ではなく、ヒータ1cの定格を最適に設定することに
より並列抵抗23と同様に省略できる。
【0077】このように事故電流が抑制された後、クエ
ンチセンサ22bの指令により遮断動作に入っていた真空
遮断器12の主接点が開極して、回路は完全に遮断され、
その後、限流素子1は図示しない冷凍機により冷却さ
れ、超電導状態に復帰する。
【0078】したがって、このように構成された超電導
限流器においては、限流素子1に発生する損失を大幅に
減らすことができるので、この損失による温度上昇を抑
えることができる。
【0079】すなわち、ヒータや並列抵抗が接続されて
いない従来の限流素子では、限流時のクエンチ抵抗値が
12.5Ωに留まることから、AC 400Vrms−50Hzの回
路に適用し、真空遮断器が動作するまでの1/2サイク
ルの間限流を継続した場合の限流素子の損失は、式(1
3)に示すように 128Jとなる。 Pe=(E2 /Re)・t =( 4002 /12.5)・ 0.01 = 128 (J) ・・・(13)
【0080】一方、超電導体1aのクエンチ部分の発熱
を吸収する絶縁基板1bの実効熱容量は、クエンチ領域
の長さに比例することから、 0.05 J/K(10%長さ)
となる。このときの従来の限流素子のクエンチ部分の温
度上昇値は、式(14)に示すように2560Kにも達し、こ
のような場合、限流素子はクエンチ部分から確実に焼損
もしくは溶断する。 θe=Pe/HC = 128/ 0.05 =2560 (K) ・・・(14)
【0081】これに対して、本発明の超電導限流器の限
流素子1の限流時の発生熱量は、式(15),(16),(17)に
示すように超電導体1aが約13J,ヒータ1cが前述の
ように34Jとなり、合計45Jとなる。 Pe=(E2 /Re)・t =( 4002 / 125)・ 0.01 =13 (J) ・・・(15) Ph= (ih(t) 2 ・Rh(t) )dt = 3122 ・ 0.325・ 0.001 =32 (J) ・・(16) 但し、t= 0.001sec Po=Pe+Ph =45 ・・(17)
【0082】この発熱は限流素子1の全体で吸収され、
その熱容量は 0.75015J/Kとなっている。したがっ
て、限流素子1の限流時の温度上昇値は、式(18)に示
すように約60Kとなり、限流素子1の特性劣化につなが
るようなストレスを与えるおそれはない。 θe=Pe/HC =45/ 0.75015 =60 (K) ・・・(18)
【0083】本発明の超電導限流素子の第2の効果は、
限流動作後の復帰時間が短縮することである。この種の
超電導限流器は、限流動作後に回路を遮断し、超電導体
1aの発熱をゼロにした後、冷凍機で冷却され超電導状
態に復帰される。したがって、復帰時間の速さは、限流
時の限流素子の発生損失が少ないほど、また、冷却する
冷凍機の冷凍能力が大きいほど速くなる。
【0084】仮に、限流素子の超電導復帰時間を1se
cと規定すると、従来の限流素子では 256Wの冷凍機容
量が必要となるのに対して、本発明の超電導限流器で
は、60W(すなわち、4分の1以下)の冷凍機容量で対
応可能となる。
【0085】したがって、本実施例によれば、冷凍機容
量の大幅な低減によって定常時の運転電力を節減できる
とともに、冷凍機の定格の低下による超電導限流装置の
小形化を図ることができる。
【0086】前述した実施例では、AC 400V−50A−
50Hz定格の限流素子単体の構成と作用について述べた
が、この限流素子を複数個、直列もしくは並列に組み合
わせることで、以下に述べるように、容易に高電圧で大
容量の超電導限流器を得ることができる。
【0087】図6は、限流素子の通電容量を3倍にした
場合の超電導体1a、絶縁基板1b及びヒータ1cの分
解図と組立図を示し、図2に対応する図である。また、
図7は、図6(d)の組立図で示した限流素子の接続図
である。
【0088】図6及び図7において、符号1aは図2と
同様に超電導体、符号1bは同じく絶縁基板、符号1c
は同じくヒータ、符号4aは短絡板、符号4bは電極、
符号4cは絶縁層、符号4dは冷却板、符号Te1,T
e2は端子、符号Th1,Th2はヒータ端子、符号5
は冷凍機のコールドヘッドを示す。
【0089】この実施例では、例えば、冷凍機のコール
ドヘッド5で冷却されるアルミニウム材から成る冷却板
4dの片面をポリイミド樹脂などの絶縁層4cで覆い、
この絶縁層4cの両側の位置に電極4bを埋設してあ
る。
【0090】このように、共通の基板となる絶縁基板1
bの上に、3個の超電導体1aを図6(d)の矢視図を
示す図6(c)に示すように平行かつ対象的に載置し、
これらの超電導体1aの両端を電極4bに各々はんだ付
けすることで、3条の超電導体1aを並列に接続する。
【0091】その一方で、各ヒータ1cは、図6(d)
のD矢視図を示す図6(a)に示すように短絡板4aに
よって、直列となるよう接続する。したがって、本実施
例の超電導限流器では、図7に示すように接続すること
で、超電導体の通電容量とヒータの抵抗値を第1の実施
例の3倍とする。
【0092】また、3個の超電導体1aが事故電流によ
り部分的にクエンチした場合には、3個のヒータ1cが
同時に発熱して温度上昇し、各超電導体のクエンチ抵抗
値を最大にする。
【0093】ここで、ヒータを直列にする理由は、前述
したように超電導限流器の適用電圧を高くした場合のた
めである。すなわち、超電導限流器が適用される回路の
電圧が上ると、限流動作時におけるヒータ消費エネルギ
は電圧の2乗に、また、ヒータ電流値は電圧に比例して
増える。
【0094】したがって、超電導限流器の適用電圧の範
囲を広げるためには、超電導体のクエンチ抵抗値を高め
る必要があるだけでなく、ヒータ抵抗値の値も高めて限
流時におけるヒータの消費エネルギとヒータの電流値
(通過事故電流波高値)を適度に抑制する必要がある。
【0095】この目的を奏する手段の一つが本実施例で
あり、ヒータの材料の固有抵抗値やヒータ断面積(板
厚)の限界を超えて、限流素子の適用電圧の範囲を広げ
ることができる。
【0096】ヒータを直列に構成する他の目的は、適用
電圧がさらに高くなって、複数の超電導限流器のユニッ
トを、直列に構成する必要が生じた場合における各限流
器のユニットのクエンチの発生タイミングを極力揃える
ことである。
【0097】図8(a)は、図6に示した限流器ユニッ
トを3個直列に構成した第3の実施例である。図8
(a)において、(a)はスイッチ22を使用しないで限
流器ユニットを直列構成した例であり、符号CLD1〜
CLD3は限流器ユニットのデバイス番号、符号1aは
超電導体、符号1cはヒータを表す。
【0098】この実施例では、各々臨界電流値の異なる
複数の限流器ユニットCLD1〜CLD3が直列に接続
されており、各ユニットの臨界電流の値は、電源側に接
続された限流器ユニットCLD1が最小で、負荷側に接
続された限流器ユニットCLD3が最大となっている。
【0099】今、図8(a)で示す回路に対して、限流
器ユニットの定格を超えた事故電流が流れると、最も臨
界電流値の低い限流器ユニットCLD1の各超電導体1
aのみが、まずクエンチして事故電流を僅かに限流す
る。
【0100】その結果、事故電流は各ヒータ1cにそれ
ぞれ転流するが、このときの転流電流値の合成値は、限
流器ユニットCLD2,CLD3の臨界電流値以上とな
るように、ヒータ1cの抵抗値が定められていることか
ら、限流器ユニットCLD2が所定の時間遅れをもって
クエンチし、次いで、限流器ユニットCLD3もクエン
チに至る。
【0101】すなわち、どのような条件の部分にクエン
チが生じた場合においても、ヒータに分流する電流値の
最大値が、構成されるすべての超電導体の臨界電流値の
最大値以上となるようにヒータの抵抗値を決定しておく
ことで、すべての限流器ユニットは時間遅れを伴いなが
らも、順次クエンチする。なお、図8(a)に示した限
流器ユニットCLD1,CLD2,CLD3の配置は、
臨界電流が最小の限流器ユニットCLD1を電源側とし
たが、順序はランダムでもよい。
【0102】次に、第4の実施例について図8(b)を
参照して説明する。本実施例では、各限流器ユニットの
超電導体のみ、或いはヒータのみを各々直列に接続し、
両端で超電導体回路とヒータ回路を並列に接続してい
る。
【0103】今、この回路に事故電流が流れると、最も
臨界電流値の小さい限流器ユニットCLD1の各超電導
体1aのみが最初にクエンチする。このクエンチにより
超電導体回路を流れていた事故電流は急激に抑制され、
他の限流器ユニットCLD2,CLD3の超電導体は超
電導状態を維持する。
【0104】しかし、限流器ユニットCLD1のクエン
チ発生と同時に、これと並列に接続されているヒータ回
路にも事故電流が分流することから、すべてのヒータが
同時発熱して、瞬時にすべての超電導体の大部分の領域
をクエンチさせる。
【0105】これにより、超電導体中を流れる事故電流
の値は極めて小さいものとなり、限流時損失の低減と限
流素子の劣化や焼損を防止することができる。ヒータ電
流は、このような作用を行った後、スイッチ22によって
遮断される。
【0106】なお、スイッチ22は図8(b)に示したよ
うに、すべてのヒータ回路に1個用いる方法でも、ま
た、限流器ユニット毎に、或いは直列数や適用電圧に応
じて任意の数を用いてもよい。
【0107】この実施例では、冷却板の材料を金属板と
したが、必要によって冷却板に任意パターンのスリット
加工を施したり、素材をセラミックもしくは樹脂などの
絶縁材料にして、定常通電時における渦電流損失の低減
を図るとともに、絶縁強度を高めてもよい。
【0108】次に、第5の実施例を図9の接続図を参照
して説明する。図9において、図1と異なるところは、
ヒータ1cの負荷側に対してコンデンサ32が直列に接続
されており、図1に示したクエンチセンサ22a,22b、
制御ユニット22c、並列抵抗23は接続されていない。な
お、超電導体1a,絶縁基板1bとヒータ1cの組立及
び短絡板1dによる接続構造は、図2で示した第1の実
施例と同一である。
【0109】このように構成された超電導限流器におい
ても、第1の実施例と同様に、定常時において、回路電
流は抵抗ゼロの超電導体1aを経て負荷13に損失なく給
電される一方、負荷短絡などの事故が発生して回路に過
電流が流れると、超電導体1aがクエンチして高抵抗体
となり、事故電流を抑制する。
【0110】その際、超電導体1aのクエンチ領域は臨
界電流値の低い部分のみとなり、超電導体全体には及ば
ない。しかし、超電導体1aのクエンチによって超電導
体の両端には抵抗に比例した電圧降下が生じ、事故電流
は、図10(b)に示すようにヒータ1cとコンデンサ22
の直列回路側にも転流する。
【0111】この転流電流によって、ヒータ1cは全体
に亘って一様に発熱する。ヒータ1cの発熱によって、
超電導体1aの全体温度は短時間の内に図10(c)に示
すようにオンセット温度まで上昇し、超電導体はその全
長に亘ってクエンチしてさらに抵抗値が上昇する。
【0112】その結果、超電導体1aを流れる事故電流
値は、図10(a)の実線で示すように極めて小さな値に
抑制される。真空遮断器12は、限流器の作動を受けて、
所定の値に限流された状態の回路を遮断する。
【0113】真空遮断器12による遮断が完了すると、超
電導体1a及びヒータ1cの発熱は消滅し、これらの素
子は図示しない冷凍機によって冷却され、初期温度(定
常状態)に復帰する。この図9において、超電導体1a
に流れる過電流の値は、式(19)に示すように超電導体
1aのクエンチ発生位相と回路条件により決まる。
【0114】 ih=imsin(ωt+θ+φ) +{Im′sinθ−Imsin(θ+φ)}・ε-t/(rC) …(19) ここで、 Im:最大定常電流 Im=Vm/r2 +(1/εC)2 (A) Vm:回路の最大電圧 ω :電流の角周波数 ω=2πf (rad/sec) f:周波数 r :ヒータ抵抗値(Ω) C :コンデンサ容量(F) θ :クエンチ発生瞬時の回路電圧位相角 φ :電圧に対する電流の位相差(回路力率) φ=tan-1(1/ωC・r) Im′:最大過渡電流 Im′=Vm/r (A) ε :自然対数の底 ε= 2.718
【0115】ヒータ1cは抵抗体となっており、第1の
実施例で示した式(5)に示すように、転流電流の実効
値ih の2乗に比例したジュール熱Ph を生じる。ここ
でコンデンサ22は、超電導体1aが部分クエンチした直
後のヒータ電流値のピーク値を高めて超電導体の温度上
昇を速める作用と、超電導体全体がクエンチした後のヒ
ータ回路のインピーダンスを高めることで、ヒータの不
必要な発熱を抑制する。また、ヒータ1cとコンデンサ
32の直列回路は、超電導体1aがクエンチして限流作用
を行う際に生じる過電圧を抑制するサージサプレッサと
しても作用する。
【0116】
【発明の効果】以上、本発明によれば、過電流が通電さ
れる超電導被膜が片側に形成され超電導被膜と並列に接
続される電熱板が他側に隣接された絶縁板を備えること
で、過電流が超電導被膜に流れてこの超電導被膜がクエ
ンチすると、このクエンチにより電熱板に分流した電流
によって、電熱板の温度を均一に上昇させ、この電熱板
で発生した熱を、超電導被膜全体に絶縁板を介して均一
に伝達させ、超電導被膜を全体に亘って均一にクエンチ
させたので、過電流による超電導限流素子の局部的な温
度上昇を防ぎ、復帰時間を短縮することのできる超電導
限流器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の超電導限流器の第1の実施例を示す接
続図。
【図2】図1の超電導限流器に組み込まれる限流素子を
示す図で、(a)は超電導体、(b)は絶縁基板、
(c)はヒータ、(d)は限流素子の全体組立図を示
す。
【図3】本発明の超電導限流器に採用した超電導体の温
度と臨界電流密度との関係を示すグラフ。
【図4】本発明の超電導限流器に採用した超電導体の温
度に対する固有抵抗の変化を示すグラフ。
【図5】本発明の第1の実施例の作用を示すグラフ。
【図6】本発明の超電導限流器の第2の実施例に組み込
まれる限流素子を示す図で、(a)はヒータ、(b)は
絶縁基板、(c)は限流素子の部分組立図、(d)は限
流素子の全体組立図。
【図7】本発明の超電導限流器の第2の実施例を示す部
分接続図。
【図8】(a)は本発明の超電導限流器の第3の実施例
を示す部分接続図、(b)は本発明の超電導限流器の第
4の実施例を示す部分接続図。
【図9】本発明の超電導限流器の第5の実施例を示す接
続図。
【図10】本発明の超電導限流器の第5の実施例の作用
を示すグラフ。
【図11】従来の超電導限流器の一例を示す斜視図。
【符号の説明】
1…限流素子、1a…超電導体、1b…絶縁基板、1c
…ヒータ、1d…短絡板、5…コールドヘッド、11…電
源、12…真空遮断器、13…負荷、14…線路抵抗、22…半
導体スイッチ、22a…クエンチセンサ、22b…変流器、
22c…スイッチ制御ユニット、23…並列抵抗。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 超電導被膜が片側に形成され前記超電導
    被膜と並列に接続される電熱板が他側に隣接された絶縁
    板を備えた超電導限流器。
  2. 【請求項2】 超電導被膜のクエンチによって投入され
    るスイッチを電熱板に直列に接続したことを特徴とする
    請求項1に記載の超電導限流器。
  3. 【請求項3】 電熱板にコンデンサを直列に接続したこ
    とを特徴とする請求項1に記載の超電導限流器。
  4. 【請求項4】 超電導被膜に並列抵抗器を接続し、この
    並列抵抗器と前記超電導被膜との並列回路の電源側に遮
    断器を直列に接続したことを特徴とする請求項1,2又
    は請求項3に記載の超電導限流器。
  5. 【請求項5】 超電導被膜に並列に接続されこの超電導
    被膜のクエンチを検出し前記超電導被膜のクエンチによ
    りスイッチをオンするクエンチ検出器と、電熱板に流れ
    る電流を検出しこの電流があらかじめ設定した値を超え
    ると前記スイッチをオフする電流検出器を備えた請求項
    2又は請求項4に記載の超電導限流器。
  6. 【請求項6】 絶縁板の片側に、超電導被膜の組織を整
    えるバッファ層を形成したことを特徴とする請求項1乃
    至5のいずれかに記載の超電導限流器。
  7. 【請求項7】 電熱板に流れる電流を蛇行させる複数条
    の溝を電熱板に形成したことを特徴とする請求項1乃至
    6のいずれかに記載の超電導限流器。
  8. 【請求項8】 超電導被膜を酸化物超電導材で形成した
    ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の超
    電導限流器。
  9. 【請求項9】 複数の超電導被膜が並列接続され複数の
    電熱板が直列接続された複数のユニットを直列に接続
    し、このユニットの電熱板群を直列に接続したことを特
    徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の超電導限流
    器。
  10. 【請求項10】 冷凍機で冷却される冷却板を絶縁層を
    介して超電導被膜の外面に隣接したことを特徴とする請
    求項1乃至9のいずれかに記載の超電導限流器。
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