JPH08209291A - 低降伏比を有する高強度ラインパイプ用鋼 - Google Patents

低降伏比を有する高強度ラインパイプ用鋼

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JPH08209291A
JPH08209291A JP7018308A JP1830895A JPH08209291A JP H08209291 A JPH08209291 A JP H08209291A JP 7018308 A JP7018308 A JP 7018308A JP 1830895 A JP1830895 A JP 1830895A JP H08209291 A JPH08209291 A JP H08209291A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 HAZ靱性、現地溶接性の優れた引張強さ9
50MPa以上(API規格X100超)の超高強度・
低降伏比ラインパイプ用鋼を提供する。 【構成】 低炭素−高Mn−Ni−Mo−Nb−微量T
i系で、そのミクロ組織がマルテンサイト・ベイナイト
と分率にして20〜90%のフェライトの硬軟2相混合
組織からなり、かつフェライト中に50〜100%の加
工フェライトを含有し、5μm以下のフェライト粒径を
有すること。 【効果】 低温靱性、現地溶接性の優れた超高強度・低
降伏比ラインパイプ用鋼(X100超)の製造が可能と
なった。その結果、パイプラインの安全性が著しく向上
すると共に、パイプラインの施工能率、輸送効率の大幅
な向上が可能となった。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は950MPa以上の引張
強さ(TS)を有する低温靱性・溶接性の優れた超高強
度鋼に関するももので、天然ガス・原油輸送用ラインパ
イプをはじめ、各種圧力容器、産業機械などの溶接用鋼
材として広く使用できる。
【0002】
【従来の技術】近年、原油・天然ガスを長距離輸送する
パイプラインに使用するラインパイプは、高圧化によ
る輸送効率の向上やラインパイプの外径・重量の低減
による現地施工能率の向上のため、ますます高強度化す
る傾向にある。これまでに米国石油協会(API)規格
でX80(降伏強さ551MPa以上、引張強さ620
MPa以上)までのラインパイプの実用化がされている
が、さらに高強度のラインパイプに対するニーズが強く
なってきた。
【0003】現在、超高強度ラインパイプ製造法の研究
は、従来のX80ラインパイプの製造技術(たとえばN
KK技報 No.138(1992), pp24-31、およびThe 7th Offs
horeMechanics and Arctic Engineering(1988), Volume
V, pp179-185)を基本に検討されているが、これではせ
いぜい、X100(降伏強さ689MPa以上、引張強
さ760MPa以上)ラインパイプの製造が限界と考え
られる。パイプラインの超高強度化は強度・低温靱性バ
ランスを始めとして溶接熱影響部(HAZ)靱性、現地
溶接性、継手軟化など多くの問題を抱えており、これら
を克服した画期的な超高強度ラインパイプ(X100
超)の早期開発が要望されている。
【0004】
【発明が解決しようとする問題点】本発明は前記要望を
充足すべく、強度と低温靱性のバランスが優れ、かつ現
地溶接が容易な引張強さ950MPa以上(API規格
X100超)の超高強度・低降伏比ラインパイプ用鋼を
提供するものである。
【0005】
【問題点を解決する為の手段】本発明者らは、引張強さ
が950MPa以上で、かつ低温靱性・現地溶接性、の
優れた超高強度鋼を得るための鋼材の化学成分(組成)
とそのミクロ組織について鋭意研究を行い、新しい超高
強度溶接用鋼を発明するに至った。
【0006】すなわち、本発明の要旨とするところは、 (1) 重量%で、C :0.05〜0.10%、 S
i:0.6%以下、Mn:1.8〜2.5%、
P :0.015%以下、S :0.003%以下、
Ni:0.1〜1.0%、Mo:0.35〜0.
60%、 Nb:0.01〜0.10%、Ti:0.
005〜0.030%、Al:0.06%以下、N :
0.001〜0.006%を含有し、必要に応じてさら
に、V :0.10%以下、 Cu:0.7%
以下、Cr:0.8%以下、 Ca:0.0
01〜0.006%の1種または2種以上を含有し、残
部が鉄および不可避的不純物からなり、下記式で定義さ
れるP値が1.9以上、2.8以下の範囲にあり、さら
にそのミクロ組織がマルテンサイト、ベイナイトおよび
フェライトからなり、フェライト分率が20〜90%
で、かつフェライト中に加工フェライトを50〜100
%含有し、フェライト平均粒径が5μm以下であること
を特徴とする低降伏比を有する低温靱性に優れた高強度
ラインパイプ用鋼、および P=2.7C+0.4Si+Mn+0.8Cr+0.4
5(Ni+Cu)+Mo+V−1 (2) 前記鋼をAc1 点以下の温度で焼戻し処理してなる
ことを特徴とする低降伏比を有する低温靱性に優れた高
強度ラインパイプ用鋼にある。ここで、フェライト平均
粒径は鋼材の厚み方向に測定したフェライトの平均粒界
間隔と定義する。
【0007】以下、本発明の内容について詳細に説明す
る。本発明の特徴は、Ni−Nb−Mo−微量Tiを
複合添加した低炭素・高Mn系(1.8%以上)である
こと、そのミクロ組織が微細なフェライト(平均粒径
が5μm以下で、ある一定量以上の加工フェライトを含
む)とマルテンサイト・ベイナイトの硬軟混合組織から
なることである。
【0008】従来より、低炭素−高Mn−Nb−Mo鋼
は微細なアシキュラーフェライト組織を有するラインパ
イプ用鋼としてよく知られているが、その引張強さの上
限はせいぜい750MPが限界であった。本基本成分系
で加工フェライトを含む微細フェライトとマルテンサイ
ト・ベイナイトの硬軟混合微細組織を有する高強度ライ
ンパイフ用鋼はまったく存在しない。これはNb−Mo
鋼のフェライトとマルテンサイト・ベイナイト硬軟混合
組織では950MPa以上の引張強さは到底不可能であ
るばかりか、低温靱性や現地溶接性も不十分と考えられ
ていたためである。
【0009】しかしながら本発明者らはNb−Mo鋼に
おいても化学成分、ミクロ組織を厳密に制御することに
より、超高強度と優れた低温靱性が達成できることを見
いだした。本発明鋼の特徴は、焼戻し処理なしでも優
れた超高強度、低温靱性が得られること、焼入れ・焼
戻し処理鋼に比較して降伏比が低く、鋼管成形性、低温
靱性(シャルピー遷移温度)に著しく優れること、など
が挙げられる(本発明鋼では、鋼板の状態で降伏強さが
低くても、鋼管成形によって降伏強さが上昇し、目的と
する降伏強さを得ることが可能である)。
【0010】まず本発明鋼のミクロ組織について説明す
る。引張強さ950MPa以上の超高強度を達成するた
めには、鋼材のミクロ組織を一定量以上のマルテンサイ
ト・ベイナイトとする必要があり、そのためにはフェラ
イト分率を20〜90%(マルテンサイト・ベイナイト
分率10〜80%)とする必要がある。フェライト分率
が90%を超えると、マルテンサイト・ベイナイト分率
が小さくなりすぎて、目的とする強度は達成出来ない
(フェライト分率はC量にも依存し、C量が0.05%
以上では、実質上フェライトを90%超とすることは困
難である)。本発明鋼において強度、低温靱性上、もっ
とも望ましいフェライト分率は30〜80%である。し
かし、本来フェライトは軟らかいものであり、たとえフ
ェライト分率が20〜90%であっても、加工フェライ
トの割合が少なすぎると、目的とする強度(とくに降伏
強さ)・低温靱性は達成できない。このため、加工フェ
ライトの割合を50〜100%とした。フェライトの加
工(圧延)は転位強化やサブグレイン強化によってフェ
ライトの降伏強さを高めると同時に、後で述べるように
シャルピー遷移温度の改善にも極めて有効である。
【0011】上述のようにミクロ組織の種類を限定して
も、優れた低温靱性を達成するには不十分である。この
ためには、加工フェライトの導入によるセパレーション
を利用するとともに、フェライト平均粒径を5μm以下
に微細化する必要がある。超高強度鋼においても、加工
フェライト(集合組織)の導入により、シャルピー衝撃
試験などの破面にセパレーションが発生し、破面遷移温
度は飛躍的に低下することがわかった(セパレーション
はシャルピー衝撃試験などの破面に発生する板面に平行
な層状剥離現象で、脆性亀裂先端での3軸応力度を低下
させ、脆性亀裂伝播停止特性を改善すると考えられてい
る)。
【0012】さらにフェライト平均粒径を5μm以下と
することによってフェライト以外のマルテンサイト・ベ
イナイト組織も同時に微細化することができ、遷移温度
の著しい改善や降伏強さの増加が得られることがわかっ
た。
【0013】以上により、従来低温靱性が悪いと考えら
れていたNb−Mo鋼のフェライトとマルテンサイト・
ベイナイト硬軟混合組織の強度・低温靱性バランスの大
幅な向上に成功した。
【0014】しかしながら、上述のように鋼のミクロ組
織を厳密に制御しても目的とする特性を有する鋼材は得
られない。このためにはミクロ組織と同時に化学成分を
限定する必要がある。以下に成分元素の限定理由につい
て説明する。
【0015】C量は0.05〜0.10%に限定する。
炭素は鋼の強度向上に極めて有効な元素であり、フェラ
イトとマルテンサイト・ベイナイト硬軟混合組織におい
て目的とする強度を得るためには、最低0.05%は必
要である。また、この量はNb、V添加による析出硬
化、結晶粒の微細化効果の発現や溶接部強度の確保のた
めの最小量でもある。しかしC量が多すぎると母材、H
AZの低温靱性や現地溶接性の著しい劣化を招くので、
その上限を0.10%とした。
【0016】Siは脱酸や強度向上のため添加する元素
であるが、多く添加するとHAZ靱性、現地溶接性を著
しく劣化させるので、上限を0.6%とした。鋼の脱酸
はTiあるいはAlでも十分可能であり、Siは必ずし
も添加する必要はない。
【0017】Mnは本発明鋼のミクロ組織を微細なフェ
ライトとマルテンサイト・ベイナイトの硬軟混合組織と
し、優れた強度・低温靱性のバランスを確保する上で不
可欠な元素であり、その下限は1.8%である。しか
し、Mn量が多すぎると鋼の焼入性が増加してHAZ靱
性、現地溶接性を劣化させるだけでなく、連続鋳造鋼片
の中心偏析を助長し、母材の低温靱性をも劣化させるの
で上限を2.5%とした。望ましいMn量は1.9〜
2.1%である。
【0018】Niを添加する目的は低炭素の本発明鋼の
強度を低温靱性や現地溶接性を劣化させることなく向上
させるためである。Ni添加はMnやCr,Mo添加に
比較して圧延組織(とくにスラブの中心偏析帯)中に低
温靱性に有害な硬化組織を形成することが少ないばかり
か、微量のNi添加がHAZ靱性の改善にも有効である
ことが判明した。HAZ靱性上、とくに有効なNi添加
量は0.3%以上である。しかし、添加量が多すぎる
と、経済性だけでなく、HAZ靱性や現地溶接性を劣化
させるので、その上限を1.0%とした。また、Ni添
加は連続鋳造時、熱間圧延時におけるCuクラックの防
止にも有効である。この場合、NiはCu量の1/3以
上添加する必要がある。
【0019】Moを添加する理由は鋼の焼入性を向上さ
せ、目的とする硬軟混合組織を得るためである。また、
MoはNbと共存して制御圧延時にオーステナイトの再
結晶を強力に抑制し、オーステナイト組織の微細化にも
効果がある。このような効果を得るために、Moは最低
0.35%必要である。しかし過剰なMo添加はHAZ
靱性、現地溶接性を劣化させるので、その上限を0.6
%とした。
【0020】また、本発明鋼では、必須の元素としてN
b:0.01〜0.10%、Ti:0.005〜0.0
30%を含有する。NbはMoと共存して制御圧延時に
オーステナイトの再結晶を抑制して結晶粒を微細化する
だけでなく、析出硬化や焼入性増大にも寄与し、鋼を強
靱化する作用を有する。しかしNb添加量が多すぎる
と、HAZ靱性や現地溶接性に悪影響をもたらすので、
その上限を0.10%とした。
【0021】一方、Ti添加は微細なTiNを形成し、
スラブ再加熱時および溶接HAZのオーステナイト粒の
粗大化を抑制してミクロ組織を微細化し、母材およびH
AZの低温靱性を改善する。またAl量が少ない時(た
とえば0.005%以下)、Tiは酸化物を形成し、H
AZにおいて粒内フェライト生成核として作用し、HA
Z組織を微細化する効果も有する。このようなTi添加
効果を発現させるには、最低0.005%のTi添加が
必要である。しかしTi量が多すぎると、TiNの粗大
化やTiCによる析出硬化が生じ、低温靱性を劣化させ
るので、その上限を0.03%に限定した。
【0022】Alは通常脱酸剤として鋼に含まれる元素
で組織の微細化にも効果を有する。しかしAl量が0.
06%を超えるとAl系非金属介在物が増加して鋼の清
浄度を害するので、上限を0.06%とした。脱酸はT
iあるいはSiでも可能であり、Alは必ずしも添加す
る必要はない。
【0023】NはTiNを形成し、スラブ再加熱時およ
びHAZのオーステナイト粒の粗大化を抑制して母材、
HAZの低温靱性を向上させる。このために必要な最小
量は0.001%である。しかしN量が多すぎるとスラ
ブ表面疵や固溶NによるHAZ靱性の劣化の原因となる
ので、その上限は0.006%に抑える必要がある。さ
らに本発明では、不純物元素であるP,S量をそれぞれ
0.015%以下、0.003%以下とする。この主た
る理由は母材およびHAZの低温靱性をより一層向上さ
せるためである。P量の低減は連続鋳造スラブの中心偏
析を軽減するとともに、粒界破壊を防止して低温靱性を
向上させる。また、S量の低減は制御圧延で延伸化した
MnSを低減して延性、靱性を向上させる効果がある。
【0024】次にV,Cu,CrおよびCaを添加する
目的について説明する。基本となる成分にさらにこれら
の元素を添加する主たる目的は、本発明鋼の優れた特徴
を損なうことなく、強度・低温靱性などの特性の一層の
向上や製造可能な鋼材サイズの拡大をはかるためであ
る。したがって、その添加量は自から制限されるべき性
質のものである。
【0025】VはほぼNbと同様の効果を有するが、そ
の効果はNbに比較して弱い。しかし、超高強度鋼にお
けるV添加の効果は大きく、NbとVの複合添加は本発
明鋼の優れた特徴をさらに顕著なものとする。Vはフェ
ライトの加工(熱間圧延)によって歪誘起析出し、フェ
ライトを著しく強化することがわかった。Vの上限はH
AZ靱性、現地溶接性の点から0.10%まで許容で
き、特に0.03〜0.08%の添加が望ましい範囲で
ある。
【0026】CuはNiとほぼ同様な効果をもつととも
に、耐食性、耐水素誘起割れ特性の向上にも効果があ
る。またCu析出硬化によって強度を大幅に増加させ
る。しかし過剰に添加すると、析出硬化により母材、H
AZの靱性低下や熱間圧延時にCuクラックが生じるの
で、その上限を0.7%とした。
【0027】Crは母材、溶接部の強度を増加させる
が、多すぎるとHAZ靭性や現地溶接性を著しく劣化さ
せる。このためCr量の上限は0.8%である。V,C
u,Crのそれぞれの元素添加による材質上の効果が顕
著になる最小量は、それぞれ0.01%、0.1%、
0.1%である。
【0028】Caは硫化物(MnS)の形態を制御し、
低温靱性を向上(シャルピー衝撃試験の吸収エネルギー
の増加など)させる。とくに超高強度ラインパイプを主
用途とする本発明鋼では、不安定延性破壊の伝播防止の
ため高シャルピー吸収エネルギーが要求されるので、S
量の低減とCa処理は重要である。
【0029】しかし、Ca添加量が0.001%以下で
は実用上効果がなく、また0.005%を超えて添加す
るとCaO−CaSが大量に生成して大型クラスター、
大型介在物となり、鋼の清浄度を害するだけでなく、現
地溶接性にも悪影響をおよぼす。このためCa添加量の
上限を0.005%に制限した。なお超高強度鋼では、
S,O量をそれぞれ0.001%、0.002%以下に
低減し、かつESSP=(Ca)〔1−124(O)〕
/1.25Sを0.5≦ESSP≦10.0とすること
がとくに有効である。なお、ESSPとは、有効硫化物
形態制御パラメターの略である。
【0030】以上の個々の添加元素の限定に加えて本発
明では、さらにP=2.7C+0.4Si+Mn+0.
8Cr+0.45(Ni+Cu)+Mo+V−1を1.
9≦P≦2.8に制限する。これはHAZ靭性、現地溶
接性を損なうことなく、目的とする強度・低温靱性バラ
ンスを達成するためである。P値の下限を1.9とした
のは950MPa以上の強度と優れた低温靱性を得るた
めである。また、P値の上限を2.8としたのは優れた
HAZ靱性、現地溶接性を維持するためである。
【0031】次に、請求項2について説明する。請求項
2は請求項1の鋼をAc1 点以下の温度で焼戻し処理を
行うものである。焼戻し処理によって延性、靱性は適度
に回復する。焼戻し処理はミクロ組織分率など、そのも
のを変えず、本発明の優れた特徴を損なうものではな
い。
【0032】
【実施例】次に本発明の実施例について述べる。実験室
溶解(50kg,120mm厚鋼塊)または転炉−連続鋳造
法(240mm厚)で種々の鋼成分の鋳片を製造した。こ
れらの鋳片を種々の条件で厚みが15〜32mmの鋼板に
圧延し、諸機械的性質、ミクロ組織を調査した。(一部
の鋼板については焼戻し処理を付加)。
【0033】鋼板の機械的性質(降伏強さ:YS,引張
強さ:TS,シャルピー衝撃試験の−40℃での吸収エ
ネルギー:vE-40 と50%破面遷移温度:vTrs)は圧延
と直角方向で調査した。HAZ靱性(シャルピー試験の
−20℃での吸収エネルギー:vE-20 )は再現熱サイク
ル装置で再現したHAZで評価した(最高加熱温度:1
400℃,800〜500℃の冷却時間〔Δt
800-500 〕:25秒)。また現地溶接性はY−スリッ
ト溶接割れ試験(JIS G3158)においてHAZ
の低温割れ防止に必要な最低予熱温度で評価した(溶接
方法:ガスメタルアーク溶接,溶接棒:引張強さ100
MPa,入熱:0.5kJ/mm,溶着金属の水素量:3cc
/100g)。
【0034】実施例を表1および2に示す。本発明法に
従って製造した鋼板は優れた強度・低温靱性バランス、
HAZ靱性および現地溶接性を有する。これに対して比
較鋼は化学成分またはミクロ組織が不適切なため、いず
れかの特性が著しく劣る。
【0035】鋼9はC量が多すぎるため、母材およびH
AZのシャルピー吸収エネルギーが低く、かつ溶接時の
予熱温度も高い。鋼10はNiが添加されていないた
め、母材およびHAZの低温靭性が劣る。鋼11はMn
添加量、P値が高すぎるため、母材およびHAZの低温
靭性が悪く、かつ溶接時の予熱温度も著しく高い。鋼1
2はMo添加量が多すぎるため、母材の低温靭性が悪
く、かつ溶接時に予熱を要する。鋼13はNbが添加さ
れていないため、強度不足で、かつフェライト粒径が大
きく母材の靭性が悪い。鋼14はS量が多すぎるため、
母材およびHAZの低温靭性が劣る。鋼15はMo添加
量が少なすぎるため、目標とする強度が達成できない。
鋼16はフェライト分率が小さすぎるため、引張強さは
十分であるが、降伏強さが低すぎる。鋼17は加工フェ
ライト分率が小さすぎるため、強度不足で、かつ母材の
シャルピー遷移温度が劣る。鋼18はフェライト粒径が
大きいため、低温靭性が著しく劣る。鋼19はフェライ
ト分率、加工フェライト分率がともに小さすぎるため、
降伏強さが低く、かつシャルピー遷移温度が劣る。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【発明の効果】本発明により、低温靱性、現地溶接性の
優れた低降伏比の超高強度ラインパイプ(引張強さ95
0MPa以上、API規格X100超)用鋼が安定して
大量に製造できるようになった。その結果、パイプライ
ンの安全性が著しく向上するとともに、パイプラインの
輸送効率、施工能率の飛躍的な向上が可能となった。
フロントページの続き (72)発明者 寺田 好男 東京都千代田区大手町2−6−3 新日本 製鐵株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C :0.05〜0.10%、 Si:0.6%以下、 Mn:1.8〜2.5%、 P :0.015%以下、 S :0.003%以下、 Ni:0.1〜1.0%、 Mo:0.35〜0.60%、 Nb:0.01〜0.10%、 Ti:0.005〜0.030%、 Al:0.06%以下、 N :0.001〜0.006%を含有し、残部が鉄お
    よび不可避的不純物からなり、下記式で定義されるP値
    が1.9以上、2.8以下の範囲にあり、さらにそのミ
    クロ組織がマルテンサイト、ベイナイトおよびフェライ
    トからなり、フェライト分率が20〜90%で、かつフ
    ェライト中に加工フェライトを50〜100%含有し、
    フェライト平均粒径が5μm以下であることを特徴とす
    る低降伏比を有する低温靱性に優れた高強度ラインパイ
    プ用鋼。 P=2.7C+0.4Si+Mn+0.8Cr+0.4
    5(Ni+Cu)+Mo+V−1
  2. 【請求項2】 請求項1記載の成分に加えて、重量%
    で、 V :0.10%以下、 Cu:0.7%以下、 Cr:0.8%以下の1種または2種以上を含有するこ
    とを特徴とする請求項1記載の低降伏比を有する低温靱
    性に優れた高強度ラインパイプ用鋼。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の成分に加えて、
    さらに重量%で、 Ca:0.001〜0.006%を含有することを特徴
    とする請求項1または2記載の低降伏比を有する低温靱
    性に優れた高強度ラインパイプ用鋼。
  4. 【請求項4】 請求項1,2または3記載の鋼であっ
    て、Ac1 点以下の温度で焼戻し処理した鋼からなるこ
    とを特徴とする低降伏比を有する低温靱性に優れた高強
    度ラインパイプ用鋼。
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