JPH08184688A - 舶用原子炉 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 内面に断熱材を装着された水密容器により外
面を被包された一体型の原子炉圧力容器を格納容器内に
水没状態で設置してなる舶用原子炉について、原子炉圧
力容器の検査を行うことができるようにする。 【構成】 原子炉格納容器４内に原子炉圧力容器２が格
納容器水５に接触せずに浸漬された状態で収容されてお
り、原子炉圧力容器２の下部を空間を介して覆う中性子
遮蔽体１１は、原子炉圧力容器２と格納容器水５との接
触を遮断するとともに内面に断熱材８を装着される。そ
のため、中性子遮蔽体１１が原子炉圧力容器２を覆う範
囲では原子炉圧力容器２の周囲に水密容器７を設ける必
要がなくなり空間１３が拡大するため、この空間１３を
利用して検査装置を原子炉圧力容器２の外表面に近付け
ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は舶用原子炉に関し、具体
的には、原子炉圧力容器を、内部に充填された格納容器
水に接触させずに浸漬した状態で収容する原子炉格納容
器を用いた舶用原子炉について、原子炉圧力容器の検査
を行うことができるようにするものである。

【０００２】

【従来の技術】北極海や南極海等を航行する例えば解氷
船のような、航続距離が長大な大型船舶の主機関として
開発されている舶用原子炉としては、発電用原子炉での
使用実績および出力制御の容易さの双方の観点から一体
型加圧水炉が有力視される。一体型加圧水炉は、舶用原
子炉の安全性の向上と小型化とをともに図るため、１次
冷却系（加圧器、１次冷却水循環ポンプ、蒸気発生器
等）を全て原子炉圧力容器に内蔵しており、原子炉圧力
容器内に上部から下部へ向けて順に、制御棒駆動装置，
加圧器，１次冷却水循環ポンプ，蒸気発生器および炉心
等が内蔵される。

【０００３】近年に至り、舶用原子炉のさらなる安全性
の向上を目的に、上述の一体型加圧水炉を利用した新し
い舶用原子炉が提案・検討されている。図２はこのよう
な新しい舶用原子炉の一例の全体構造を示す縦断面図で
あり、図３は図２中の一点鎖線で囲まれた部分を拡大し
て示す縦断面図である。

【０００４】図２に示すように、この舶用原子炉１は一
体型加圧水炉を用いており、耐圧容器で構成された原子
炉圧力容器２の内部には、上部から順に制御棒駆動装
置，加圧器，主冷却水ポンプ，貫流式ヘリカルコイル型
の蒸気発生器（いずれも図示しない）および炉心３等が
内蔵される。

【０００５】この舶用原子炉１の特徴は原子炉圧力容器
２を格納容器４内に充填された格納容器水５に浸漬させ
て収容する点にある。すなわち、原子炉圧力容器２の外
部は格納容器水５に覆われているため、原子炉圧力容器
２の外へ１次冷却水が万一漏洩して原子炉圧力容器２の
内部の水圧が低下し始めても、原子炉圧力容器２内の水
圧と格納容器４内の水圧とが釣り合った時点で原子炉圧
力容器２からの１次冷却水の漏洩は自然に停止して炉心
冠水状態が維持される。

【０００６】このように、図２に示す舶用原子炉１で
は、原子炉圧力容器２を格納容器水５に浸漬することを
基本とするが、単に原子炉圧力容器２を格納容器４内に
水没させて設置したのでは、通常運転の際には低温の格
納容器水５に、蒸気を発生して高温状態にある原子炉圧
力容器２の温度が奪われ、原子炉圧力容器２からの放散
熱損失量が多大になって原子炉の発熱効率が著しく低下
してしまう。

【０００７】そこで、図２に示す舶用原子炉１では原子
炉圧力容器２と格納容器水５との直接の接触を防止する
ため、原子炉圧力容器２の外面を断熱空間６を介して覆
う水密容器７を設けるとともに水密容器７の内面に断熱
材８を貼付して断熱層を形成することにより、原子炉圧
力容器２の温度低下を防止している。

【０００８】原子炉圧力容器２は、胴部略中央部に斜め
下方に向けて鍛造により環状に形成された凸部２ａに溶
接された環状の支持脚９により支持される。水密容器７
および断熱材８はこの支持脚９により上下に２分割され
るが、２分割されたそれぞれは適宜手段により支持脚９
に固定されて、原子炉圧力容器２の水密および断熱が維
持される。

【０００９】支持脚９は、空間１０を介して水密容器７
の外側に設置されて炉心３の近傍を覆う垂直断面Ｕ字状
の袋状構造体である中性子遮蔽体１１の上端面１１ａに
例えばスタッドボルト１２により固定される。

【００１０】中性子遮蔽体１１は高さ方向略中央部に斜
め下方に向けて環状に形成された凸部１１ｂに適宜手段
により固定された環状の支持脚１２により支持され、こ
の支持脚１２は原子炉格納容器１１の下部コーナ部を構
成する環状の支持部４ａに例えばボルト１２´により固
定される。

【００１１】

【発明が解決しようとする課題】ところで、図２および
図３に示す舶用原子炉１について、供用期間中検査の一
つである原子炉圧力容器２の探傷検査を行おうとする
と、原子炉圧力容器２の下部は中性子遮蔽体１１により
覆われているために例えばファイバースコープ等の検査
装置を原子炉圧力容器２の表面に近付けることができ
ず、検査を行うことができない。

【００１２】例えば、中性子遮蔽体１１の一部に検査装
置出し入れ用の開閉孔を設ければ、中性子遮蔽体１１の
内側の空間１０までは検査装置の出し入れを行うことは
可能になるが、原子炉圧力容器２は水密容器７および断
熱材８により外面を覆われているために検査装置を原子
炉圧力容器２の外面に近付けることはできない。

【００１３】さらに、水密容器７および断熱材８に検査
装置出し入れ用の開閉孔を設けても、図３に拡大して示
すように、原子炉圧力容器２と断熱材８との間の空間６
は狭く、この空間６には例えばファイバースコープのよ
うな小型の検査装置であっても出し入れすることはでき
ない。

【００１４】本発明は、このような従来の技術が有する
課題に鑑みてなされたものであり、具体的には、原子炉
圧力容器を、内部に充填された格納容器水に接触させず
に浸漬した状態で収容する原子炉格納容器を用いた舶用
原子炉について、原子炉圧力容器の検査を行うことがで
きるようにすることを目的とするものである。

【００１５】

【課題を解決するための手段】本発明にかかる舶用原子
炉は、原子炉の外殻を形成する原子炉格納容器内に、内
殻を形成する原子炉圧力容器が格納容器水に接触せずに
浸漬された状態で収容された舶用原子炉において、原子
炉圧力容器の一部を空間を介して覆う中性子遮蔽体は、
原子炉圧力容器と格納容器水との接触を遮断する機能を
一部担うとともに内面に断熱材を装着されてなることを
特徴とするものである。

【００１６】

【作用】本発明にかかる舶用原子炉では、中性子遮蔽体
が、原子炉圧力容器と格納容器水との接触を遮断する機
能を一部担うとともにその内面に断熱材を装着されるた
め、中性子遮蔽体が原子炉圧力容器を覆う範囲では原子
炉圧力容器の周囲に水密容器を設ける必要がなくなる。
そのため、中性子遮蔽体と原子炉圧力容器との間の空間
が拡大され、この空間を利用して検査装置を原子炉圧力
容器の外表面まで近付けることができるようになる。

【００１７】そのため、中性子遮蔽体の一部に検査装置
出し入れ用の開閉孔を設け、この開閉孔から検査装置を
出し入れして、原子炉圧力容器の例えば超音波探傷検査
を行うことができるようになる。

【００１８】

【実施例】以下、本発明にかかる舶用原子炉の一実施例
を添付図面を参照しながら詳細に説明する。

【００１９】図１は、本発明にかかる舶用原子炉の一実
施例の一部の構造を示す縦断面図である。図１は図３と
全く同じ部分を示しており、この部分以外の他の構造は
図２に示す舶用原子炉１と全く同一であるため、本発明
にかかる舶用原子炉の全体図は省略することとし、以降
の本発明にかかる舶用原子炉の説明は図１とともに図２
を適宜参照しながら行う。

【００２０】図１に示すように、本発明にかかる舶用原
子炉１は、原子炉圧力容器２と，原子炉圧力容器２の下
部を断熱空間１３を介して水密状態で被包するとともに
原子炉圧力容器２を支持する中性子遮蔽体１１と、中性
子遮蔽体１１の上端面１１ａに支持脚９を介して水密状
態で接続されて原子炉圧力容器２の上部を断熱空間１４
を介して水密状態で被包する水密容器７と，中性子遮蔽
体１１および水密容器７を水没状態で格納および支持す
る格納容器４とから構成される。

【００２１】図２に示すように、原子炉圧力容器２は、
上部から下部へ向けて順に、制御棒駆動装置，加圧器，
主冷却水ポンプ，蒸気発生器（いずれも図示しない）お
よび炉心３が内蔵されており、一体型の原子炉圧力容器
である。この原子炉圧力容器２は耐圧容器であり、強度
を確保するために鍛造により各構成部品を製作しこれら
構成部品を溶接することにより構築される。

【００２２】図１に示すように、この原子炉圧力容器２
は、炉心３が内蔵された範囲である、後述する支持脚９
の下端よりも下部に位置する原子炉圧力容器２の周囲を
水密状態で被包する中性子遮蔽体１１により断熱空間１
３を介して支持される。

【００２３】すなわち、炉心３の内蔵部である原子炉圧
力容器２の胴部略中央には下方外向きの凸部２ａが鍛造
により環状に形成され、この凸部２ａに、下方に向かう
につれて拡径する筒状の支持脚９の上端面９ａが例えば
溶接により固定され、その下端部である水平フランジ部
９ｂは、上部が開口した垂直断面がＵ字状の袋状構造体
である中性子遮蔽体１１の上端面１１ａにスタッドボル
ト１２により締結されており、中性子遮蔽体１１が原子
炉圧力容器２を支持するとともにその下部を断熱空間１
３を介して水密状態で被包している。

【００２４】支持脚９の下端部である水平フランジ部９
ｂの底面全周には環状の溝が穿設されており、この溝に
Ｏリング１５が嵌設されて支持脚９の水平フランジ部９
ｂと中性子遮蔽体１１の上端面１１ａとの間の水密性が
確保される。

【００２５】中性子遮蔽体１１の内周面の全面と，支持
脚９の高さ方向のほぼ中央部までとにかけて、断熱材８
が例えば貼付されて装着され、中性子遮蔽体１１からの
放散熱量の低減が図られている。

【００２６】中性子遮蔽体１１の厚さは、中性子遮蔽体
１１が図３に示す舶用原子炉１における水密容器８が有
する設計外圧を越える外圧（格納容器設計内圧相当）を
確保できるとともに中性子遮蔽体１１単独で必要な中性
子遮蔽力を確保できる最低限の厚さ以上とする。

【００２７】図１および図２に示すように、中性子遮蔽
体１１により被包されない原子炉圧力容器２の上部は、
中性子遮蔽体１１に支持脚９を介して水密状態で接続さ
れる水密容器７により断熱空間１４を介して水密状態で
被包される。水密容器７は下端が開口した袋状構造体で
あり、内周面の全面に断熱材８を例えば貼付されて装着
され、図１に示すように、その開口した下端部７ｂは支
持脚９の傾斜した上面に例えば溶接により固定される。

【００２８】このように、本実施例では、中性子遮蔽体
１１，水密容器７およびこれら両者と水密状態で接続さ
れる支持脚９により、原子炉圧力容器２の外面全てが水
密状態で被包されるが、かかる態様に限定する必要があ
るものではなく、支持脚９を介さずに直接的に中性子遮
蔽体１１と水密容器７とを、例えばシーリング材を介し
て円周方向に締結して水密状態で接続するように構成し
てもよい。

【００２９】原子炉圧力容器２に支持脚９を介して締結
された中性子遮蔽体１１の外面には、下方外向きに凸状
かつ環状に形成された脚部１１ｂが突設されており、こ
の脚部１１ｂは環状に形成された支持脚１２に適宜手段
により固定され、この支持脚１２は格納容器４の内面下
部に設けられた支持部４ａに例えばボルト１２´により
固定される。

【００３０】このようにして、図１に示すように、格納
容器４の内部には格納容器水５が充填されており、原子
炉圧力容器２は中性子遮蔽体１１に支持されるとともに
中性子遮蔽体１１および水密容器７により断熱空間１３
および１４を介して水密状態で被包され格納容器４の内
部の格納容器水５に水没した状態で格納および支持され
る。格納容器４の外面上部は搭載される船舶に例えば緩
衝部材を介して固定される。

【００３１】以上のように構成された本発明にかかる舶
用原子炉１の運転においては、原子炉圧力容器２内に供
給された１次冷却水が主冷却水ポンプにより原子炉圧力
容器２内を循環し、炉心３により加熱された１次冷却水
が蒸気発生器内を通過する間に２次冷却水と熱交換され
て２次冷却水が蒸気を発生し、発生した蒸気が主動力源
として主蒸気管から取り出される。

【００３２】さらに、図１に示す本発明にかかる舶用原
子炉１について、供用期間中検査の一つである原子炉圧
力容器２の探傷試験を行おうとすると、原子炉圧力容器
２の下部は、水密容器７が存在しなくなった分だけ拡大
された空間１３を介して中性子遮蔽体１１により覆われ
るため、中性子遮蔽体１１および断熱材８に検査装置出
入れ用の開閉孔を蓋により開閉自在に設けておくことに
より、原子炉圧力容器２と断熱材８との間の空間１３に
例えばファイバースコープ等の検査装置を出し入れする
ことが可能となる。

【００３３】したがって、図１に示す本発明にかかる舶
用原子炉１によれば、原子炉圧力容器の検査を確実に行
うことができる。

【００３４】さらに、図１に示す本発明にかかる舶用原
子炉１では、支持脚９の周囲の空間も拡大されるため
に、供用期間中検査を行う際に、原子炉圧力容器２の凸
部２ａと支持脚９の上端面９ａとの溶接部近傍にファイ
バースコープを挿入してこの溶接部の超音波探傷試験を
行うこともでき、原子炉圧力容器２本体の溶接部以外の
溶接部に対する探傷検査への対応も容易となる。

【００３５】

【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明にか
かる舶用原子炉では、中性子遮蔽体が原子炉圧力容器と
格納容器水との接触を遮断する機能を一部担うとともに
その内面に断熱材を装着されるために、例えば供用期間
中検査等の検査において原子炉圧力容器の溶接部の超音
波探傷検査を行う場合に、例えばファイバースコープ等
の検査装置を原子炉圧力容器の外面に近付けることが可
能となる。

【００３６】さらに、本発明にかかる舶用原子炉では、
原子炉の供用期間中検査を行う場合、原子炉圧力容器下
部の周囲の空間が拡大されるため、この空間内に超音波
探傷装置を移動させて、原子炉圧力容器本体の溶接部の
検査を行うことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明にかかる舶用原子炉の一実施例の一部の
構造を示す縦断面図である。

【図２】新しい舶用原子炉の一例の全体構造を示す縦断
面図である。

【図３】新しい舶用原子炉の一例の一部の構造を示す縦
断面図である。

【符号の説明】

１ 舶用原子炉 ２ 原子炉圧力容器 ３ 炉心 ４ 格納容器 ５ 格納容器水 ６ 断熱空間 ７ 水密容器 ８ 断熱材 ９ 支持脚 １０ 空間 １１ 中性子遮蔽体 １３ 空間 １４ 空間 １５ Ｏリング

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 原子炉の外殻を形成する原子炉格納容器
   内に、内殻を形成する原子炉圧力容器が格納容器水に接
   触せずに浸漬された状態で収容された舶用原子炉におい
   て、前記原子炉圧力容器の一部を空間を介して覆う中性
   子遮蔽体は、前記原子炉圧力容器と前記格納容器水との
   接触を遮断する機能を一部担うとともに内面に断熱材を
   装着されてなることを特徴とする舶用原子炉。