JPH08176192A - ヒノキ花粉アレルゲン - Google Patents
ヒノキ花粉アレルゲンInfo
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Abstract
をコードするcDNAをクローニングし、Cha o I及びCha o
IIのアミノ酸配列を明らかにした。 【目的】 ヒノキ花粉アレルゲンCha o I及びCha o II
のアミノ酸配列に基づき、Cha o I及びCha o IIのT細胞
エピトープ及びB細胞エピトープを同定し、これらのエ
ピトープを含むペプチド(あるいはアナログペプチド)
を用いて、抗原特異的なヒノキ花粉症治療・予防薬を開
発する上で有用である。
Description
s obtusa)花粉症の診断、予防若しくは予防に有用な、
ヒノキ花粉アレルゲン(International Union of Immun
ological Societiesの命名法に従って、以下Cha o I及
びCha o IIという)、並びにこれらをコードするDNAに
関する。
入することにより発症し、眼のかゆみや痛み等のアレル
ギー性結膜炎、鼻炎、皮膚の炎症或いは喘息などの症状
を呈するアレルギー疾患である。
ないか、存在するとしても問題にならないほど稀である
と考えられていた。ところが、1960年代に入ってからス
ギ花粉症の存在が報告され、その後1970年代になるとス
ギ花粉症が激増し、新聞等で話題になりはじめた(北
村、「なぜ花粉症は激増するのか」扶桑社、1994年)。
そして、現在では全国民の10%弱に当たる約一千万人が
スギ花粉症に苦しめられている。
日本の林業政策にあると言われている。つまり、第二次
大戦以前には人工スギ林はおろか、天然スギ林もほとん
ど存在しなかったが、1958年以降には天然林を伐採して
人工造林するという拡大造林政策のもとで、スギという
単一樹種が短期間に一斉に植えられ、その結果、花粉産
生の適齢期である林齢16-35年になった1970年代以降に
花粉症が激増したものと考えられている(斉藤、井手、
「花粉症の科学」化学同人、1994年)。
一般の話題にはなっていないが、スギ花粉症の激増した
原因と同じ理由によって、今後増大して行くと予想され
ている。
さから、スギが伐採された後にヒノキが植えられるよう
になり、日本の針葉樹の人工林の植樹面積のうち、スギ
45%に対して、ヒノキは23%に達している(1986年林野庁
の調査)。その結果、1993年2月から4月の鳥取市におけ
る飛散花粉中のヒノキ花粉数とスギ花粉数の比は1.83:
1に達しており、ヒノキ花粉がスギ花粉よりも多くなっ
ている(岡野、西岡、永野、太田、増田、「アレルギ
−」43(9)、1179-1184、1994年)。同様に静岡市でも、
ヒノキ花粉数を測定し始めた1991年から年々増加し、19
93年にはスギとヒノキの花粉数の比が5.6:4.4に達して
いるとの報告がなされている(荒木、後藤、後藤、矢
島、日本鼻科学会会誌、74、1994年)。
性を持つことが報告されており(榎本、芦田、井手、
「アレルギ−の臨床」11(14)、(1093)73、1991年)、ス
ギとヒノキのそれぞれの主アレルゲンでの免疫学的な反
応性の比較検討も行われた(井手、芦田、「アレルギ−
の臨床」11(3)、174-178、1991年)。さらに最近では、
春期花粉症患者のアレルゲン特異的IgE抗体陽性率を検
討したところ、スギ花粉に陽性の患者が83.5%、ヒノキ
花粉に陽性の患者が80.0%であり、76.4%の患者がスギと
ヒノキの両者に陽性であった、との報告もなされている
(岡野、西岡、永野、太田、増田、「アレルギ−」43
(9)、1179-1184、1994年)。これらの報告が示すよう
に、スギ花粉症の患者はヒノキ花粉でも症状を発現し、
逆もまた成り立つことが一般的な認識となっている。
粉の飛散量とほぼ同量あるいは上回るようになりつつあ
り、しかも、ヒノキ花粉がスギ花粉と共通の抗原性を有
しているため、今後10年以内にはヒノキ花粉症の患者数
がスギ花粉症の患者数を上回る可能性がある。従って、
ヒノキ花粉症の治療薬及び予防薬を開発する意義は非常
に大きいものと考えられる。
応は、R. G. H. GellとR. R. A. CoombsによりI型〜IV
型の4種に分類されており、ヒノキ花粉症はI型に属す
る。
ある。
ゲン(本明細書では抗原ともいう)というが、花粉の場
合このアレルゲンがタンパク質抗原である。これらの外
来タンパク質抗原が体内に侵入すると、抗原提示細胞
(マクロファージ)に取込まれ、タンパク分解酵素によ
って分解されてペプチド断片になり、主要組織適合抗原
複合体(Major Histocompatibility Complex: MHC)ク
ラスII分子(ヒトではHLAクラスII分子)と結合した状
態で、細胞膜上に提示される。HLAクラスII分子は多型
性を示すが、CD4+T細胞のレセプターは、HLAクラスII
分子と結合した抗原ペプチドを、そのHLAクラスII分子
の多型性を示す部分と共に認識し、抗原特異的に活性化
される。活性化されたCD4+T細胞は、Th0細胞、Th1/Th
2細胞に分化し、種々のサイトカインを産生する。その
際、それぞれの細胞のサイトカイン産生パターンは異な
っており、Th1はIL-2、IFNγを、Th2はIL-4、IL-5、IL-
10等を、Th0は両者のサイトカインを産生する。
を表現しており、抗原を細胞内に取込むことによって活
性化される。その際、Th2から産生されるサイトカイン
の作用によって、活性化されたB細胞は抗体産生細胞に
まで分化増殖し、抗原特異的な免疫グロブリンE(IgE)
を産生する。このようにして産生されたIgEは、気道あ
るいは鼻粘膜組織中のマスト(肥満)細胞や血液中の好
塩基球にIgEレセプターを介して強固に結合し、感作が
成立した状態になる。
分子のアレルゲンは、直ちにマスト細胞や好塩基球上の
2分子のIgEと結合し、架橋構造を形成する。その結果、
IgE分子と結合しているレセプター同士が会合し、これ
が引き金となって、細胞膜内の幾種類もの酵素が活性化
され、ヒスタミンやプロスタグランジン、ロイコトリエ
ンといった種々の化学伝達物質が細胞から放出される。
これらの化学伝達物質が鼻粘膜や気道などの局所に作用
して、色々なアレルギー症状を引き起こす。
プをT細胞エピトープ、B細胞及び抗体によって認識され
るエピトープをB細胞エピトープという。
ーの発症及び増悪に直接関与していると考えられるの
で、アレルゲンのエピトープを同定することは、I型ア
レルギーの診断、予防及び治療に有用である。
であるCry j I(分子量45〜50kDa)とCry j II(分子量
45kDa)のそれぞれをコードするcDNAが既にクローニン
グされており、推定全アミノ酸配列も明らかにされてい
る(Cry j I:WO94/01560、"ALLERGENIC PROTEINS AND
PEPTIDES FROM JAPANESE CEDAR POLLEN"、Cry j II:Ko
miyama, N., Sone, T., Shimizu, K., Morikubo, K., a
nd Kino, K., Biochem. Biophys. Res. Commun. 201, 1
021-1028 (1994))。しかしながら、ヒノキ花粉アレル
ゲンのcDNAのクローニング及び推定アミノ酸配列につい
ては、まだ報告がない。
キ花粉アレルゲンCha o Iを単離精製し、かつ、遺伝子
工学的な手法を用いて、Cha o Iの全一次構造配列を明
らかにすることである。すなわち本発明は、Cha o Iに
ついて、それをコードするDNA配列及び当該DNA配列から
推定されるアミノ酸配列を提供することを目的とする。
レルゲンと考えられるCha o IIについて、Cry j IIの一
次構造配列の情報をもとにして、Cha o IIをコ−ドする
DNA配列を明らかにし、該DNA配列から推定されるCha o
IIのアミノ酸配列を提供することを目的とする。
Iのアミノ酸配列に基づき、Cha o I及びCha o IIのT細
胞エピトープ及びB細胞エピトープを同定し、これらの
エピトープを含むペプチドを用いて、抗原特異的なヒノ
キ花粉症治療・予防薬を開発することである。
花粉アレルゲンのDNA配列及び該配列がコードするアミ
ノ酸配列を決定するためには、 (1)ヒノキ花粉アレルゲンの単離精製 (2)ヒノキ花粉症患者血清IgEとの反応性の確認 (3)cDNA配列の決定と該配列に基づく全アミノ酸配列
(一次構造)の解明を行う。T細胞エピトープを同定す
るには、更に、 (4)ヒノキ花粉アレルゲンの全アミノ酸配列をカバーす
るオーバーラップペプチドの作製 (5)ヒノキ花粉アレルゲンを特異的に認識するT細胞ライ
ンを個人別に樹立 (6)抗原提示細胞(B細胞株)の樹立 (7)T細胞エピトープを含むオーバーラップペプチドの同
定 の各ステップを経る必要がある。
に続いて、 (5)'酵素抗体法による一次スクリーニング (6)'競争阻害試験 (7)'ヒスタミン遊離阻害試験 の各ステップを経る必要がある。これらのステップを以
下詳細に説明する。
び同定 ヒノキ花粉アレルゲンの分離・精製 ヒノキ花粉を有機溶媒で脱脂し風乾する。乾燥した花粉
に抽出緩衝液(10 mMTris緩衝液、pH 7.8)を加え、ホ
モジェナイザ−でホモジェナイズし、遠心してその上清
を得る。pHを再度pH 7.8に調整した後、抽出緩衝液で平
衡化したイオン交換カラムに懸け、非吸着分画を集め
る。これを10 mM 酢酸緩衝液、pH 5.0で透析し、さらに
同じ緩衝液で平衡化させたイオン交換カラムに吸着さ
せ、0.5 M NaCl、10 mM Tris緩衝液、pH 7.8で溶出させ
る。さらに、C4逆相カラムを用いた液体クロマトグラフ
ィ−(HPLC)で最終精製を行う。
あるCha o Iを、還元条件下のSDS-ポリアクリルアミド
ゲル(8%)電気泳動(SDS-PAGE)にかけた結果を、模式
的に図1に示す。Cha o Iは、約49KDa及び約52KDaの位
置にバンドが現れる。これは、タンパク主鎖が同一で糖
鎖構造の違いにより、2本のバンドとして認められるも
のと考えられる。
造解析 精製したヒノキ花粉アレルゲンのN末端からの一次構造
配列の解析は、エドマン分解法、DABITC法、DNS-Cl法
(ダンシル法)、アミノペプチダーゼ法等の周知の方法
を用いることができる。エドマン分解法による自動分析
装置(プロテインシークエンサー)を用いて、Cha o I
のN末端から23残基解析した結果を図2に示す。なお、
比較のために、Cry j IのN末端の一次構造(Taniai M.,
et al., FEBS Lett., 239, 329-332, 1988;Sone T.,
et al., Biochem. Biophys. Comm. 199, 619-625, 199
4)と並べて示す。
確認 上記の方法でスギ花粉より単離精製されたタンパク質
が、ヒノキ花粉アレルゲンであることを確認するため
に、ヒノキ花粉症患者血清IgEとの反応性を測定する。
精製タンパク質を96穴プレートにコーティングし、ヒノ
キ花粉症患者血清を加えて反応させる(陰性対照として
健常人の血清を用いる)。反応終了後プレートの各穴を
よく洗浄した後、標識抗IgE抗体と反応させる。反応終
了後、プレートの各穴をよく洗浄し、発色物質を加えて
反応させる。反応を停止させ、発色の度合を測定する。
Cha o Iについての結果を表1に示す。
健常人血清IgEのCha oIに対する反応性の2〜60倍に達す
ることから、Cha o Iはヒノキ花粉アレルゲンの一つで
あると考えられる。
ミノ酸配列(一次構造)の解明 cDNAのクローニング a. RNAの抽出 RNAを抽出する際、初期段階で蛋白質を除去する必要が
ある。このため一般的な方法として、フェノール抽出方
法、グアニジウム塩、界面活性剤、尿素などの蛋白質変
性剤などを用いる方法がある。
ら(Int. Arch. Allergy Appl. Immunol. 87: 19-24, 1
988)の方法に改良を加えて行うことが出来る。
(100mM LiCl、10mM Na2EDTA、1%SDS、20%メルカプトエ
タノール、100mM Tris-HCl pH 9.0)に懸濁し、これに
等量のフェノールとクロロホルムの混液(フェノール:
クロロホルム:イソアミルアルコール=24 : 24 : 1)
を加えホモジェナイズする。次いで遠心(10,000g、10
〜15分)し、フェノール・クロロホルム層と、水層の二
層に分離する。このとき変性した蛋白質はフェノール・
クロロホルム層に、核酸は水層に移行する。水層にフェ
ノール・クロロホルム混液を加え、振盪し水層に残存し
ている蛋白質などの不純物をフェノール・クロロホルム
層に移行させ除去する。このような操作を2回繰り返
す。
濃度のLiCl(2〜4M)またはCH3COONa(3M)が存在する
と、DNA及び蛋白質は上清に残り、tRNA以外のRNAは沈殿
する性質を利用する。すなわち、水層に同量の2〜4MのL
iClを添加し、RNAを沈殿させる。次いでこの水層を水に
溶解し、2.5〜3容の冷エタノール(-20℃)を加え、RNA
を沈殿させる(エタノール沈殿)。次いで遠心(10,000
g、30分)して沈殿を回収し、水に溶解して全RNA分画を
得る。
つので、これと相補するリガンドである、12〜18塩基の
デオキシチミジン(dT)を結合したオリゴdTセルロースカ
ラム(Clonetech Laboratories Inc.社製、米国カリフ
ォルニア州)に吸着される。そこで、ヒノキ花粉RNAに
緩衝液(3M NaCl、1mM EDTA、10mM Tris-HCl、pH7.4)を
加えてmRNAをカラムに吸着させる。次いで、ベッド体積
の2〜3倍量のNaClを含まない緩衝液(1mM EDTA、10mM T
ris-HCl、pH7.4)でmRNAを溶出する。得られたmRNAから
のcDNAライブラリーの作製は、ファージをベクターとし
て用いるcDNAライブラリー作製キット、例えばcDNA Syn
thesis Kit(Pharmacia P-LBiochemicals Inc.社製)に
より行うことが出来る。
j I cDNAあるいはCryj II cDNAをプローブとしてハイ
ブリダイゼーションを行うと、Cry j I、Cry jIIとも
に、スギ花粉mRNAと同程度にヒノキ花粉mRNAともハイブ
リダイズする。このため、Cha o IはCry j Iと、Cha o
IIはCry j IIとそれぞれ相同性が高いと予想される。そ
こでCha o I cDNAのクローニングのためのプローブとし
てはCryj I cDNAを、Cha o II cDNAのクローニングのた
めのプローブとしてはCry j IIcDNAを用いる。
II cDNAを[α-32P]dCTPを用い、マルチプライムDNAラ
ベリングシステム(Amersham International plc.社
製、英国Buckinghamshare)によって標識し、プラーク
ハイブリダイゼーション法により、上記b.で作製したcD
NAライブラリーから、陽性クローンをスクリーニングす
る。得られた陽性クローンよりファージDNAを調製し、
挿入cDNA断片を分離して、pUC18等のプラスミドにサブ
クローンする。必要に応じてオリゴヌクレオチドプライ
マーを合成し、Sanger法により塩基配列を決定してクロ
ーンを同定する。
の塩基配列を配列番号5に、Cha oII cDNAの全長の塩基
配列を配列番号8に示す。
からなり、翻訳開始と想定されるコドン(50〜52位のヌ
クレオチドATG)から終止コドン(1175〜1177位のヌク
レオチドTGA)に至るオープンリーディングフレームを
含み、375アミノ酸をコードしている。オープンリーデ
ィングフレーム部分の塩基配列を配列番号4に示し、該
塩基配列がコードするアミノ酸配列を配列番号2に示
す。配列番号4で示される塩基配列には、個体間での対
立遺伝子変異による多型性(polymorphism)及びその結
果としてのアミノ酸配列の変異が考えられるが、そのよ
うな変異を有するCha o Iの塩基配列及びアミノ酸配列
も本発明に包含される。また、配列番号5の113〜142位
のDNA配列がコードするアミノ酸配列は、Asp、Asn、Pr
o、Ile、Asp、Ser、Cys、Trp、Arg、Glyであり、精製Ch
a o IのN末端の一次構造配列(図2)と一致する。N末
端の21アミノ酸は、シグナルペプチドに特徴的な疎水性
アミノ酸に富み、また精製Cha o Iには含まれていない
ことから、シグナルペプチドと考えられる。
NA配列がコードするCha o I(配列番号1)は、N末端の
AspからC末端のSerまで354個のアミノ酸残基からなり、
成熟型Cha o Iと考えられる。該成熟型Cha o Iに対応す
る塩基配列を配列番号3に、該塩基配列がコードするア
ミノ酸配列を配列番号1に示す。
a o Iの理論上の分子量は38,082Daである。一方、精製C
ha o Iは、還元条件下のSDS-PAGEで約49KDa及び約52KDa
の位置にバンドが現れる。また、成熟型Cha o Iのアミ
ノ酸配列の中には、N-グリコシド結合の可能性のあるAs
n-X-Ser/Thrが存在する。このことから、Cha o Iは糖
鎖を有していると考えられる。
pからなり、翻訳開始と想定されるコドン(32〜34位の
ヌクレオチドATG)から終止コドン(1574〜1576位のヌ
クレオチドTAA)に至るオープンリーディングフレーム
を含み、514アミノ酸をコードしている。オープンリー
ディングフレーム部分の塩基配列を配列番号7に示し、
該塩基配列がコードするアミノ酸配列を配列番号6に示
す。配列番号7で示される塩基配列には、個体間での対
立遺伝子変異による多型性(polymorphism)及びその結
果としてのアミノ酸配列の変異が考えられるが、そのよ
うな変異を有するCha o IIの塩基配列及びアミノ酸配列
も本発明に包含される。
長またはその一部を含むDNAは、螢光標識、放射性標識
或いは酵素標識によって標識することにより、生化学検
査または関連タンパク質若しくは類似の配列を含むタン
パク質をコードするDNAのスクリーニング等のためのプ
ローブやプライマーとして使用できる。また発現ベクタ
ーに接続して、Cha o IあるいはCha o IIを発現させる
ことができる。
現 組換えCha o Iまたは組換えCha o IIは、それぞれをコ
ードするcDNAを発現ベクターに組込み、大腸菌、昆虫細
胞、酵母あるいは哺乳動物細胞などに導入し、これらの
細胞を培養することにより得ることができる。しかし、
大腸菌などの原核細胞を使う発現系は、適切な糖鎖の付
加(glycosylation)が行われないために、Cha o Iまた
はCha o IIの発現には酵母などの真核細胞を使用するこ
とが好ましい場合がある。
システムの例を以下に示す。
系(F. W. Studier, A.H. Rosenberg, J. J. Dunn, J.
W. Dubendonff, "Methods in Enzymology", ed. by D.
D. V. Goeddel, vol. 185, p. 60, Academic Press,
New York, 1990)は、極めて発現の成功率が高いので、
本発明に使用できる。この系は、T7ファージのポリメラ
ーゼ遺伝子を持つ大腸菌宿主BL21(DE3)に、T7ファージ
プロモーターの下流のマルチクローニングサイトに目的
の遺伝子(本発明ではCha o I cDNAまたはCha o II cDN
A)を挿入した組換えプラスミドを導入して、IPTG存在
下で、目的の遺伝子を発現させるシステムである。例え
ば発現ベクターとしてpGEMEX-1(Promega社製)などが
使用できる。
白質と融合させて発現させる系が市販されており、これ
らの系は精製にアフィニティーカラムが使え、精製効率
がよく、本発明に好適に使用できる。例えば、融合蛋白
質にβ-ガラクトシダーゼを有する発現ベクターpUEX(A
mersham社製)を用いると、組換えCha o Iまたは組換え
Cha o IIはβ-ガラクトシダーゼとの融合蛋白質として
得られ、アフィニティカラムで効率よく精製することが
できる。また、グルタチオンS-トランスフェラーゼを有
するpGEX(Pharmacia社製)や、マルトース結合蛋白質
を用いたpMAL(New England Biolabs社製、米国マサチ
ューセッツ州Berverly)などは、その融合部位に血液凝
固因子Xaの切断部位が導入されており、Cha o IやCha o
IIを分離することができる。
であり、このことは糖蛋白質であるCha o I及びCha o I
Iの発現に好都合である。例えば酵母による異種蛋白質
の発現系としては、ピキア酵母を宿主として用いる方法
が知られており(特開昭61-108383、特開昭61-173781、
特開昭63-44899、特開平1-128790等)、本発明に好適に
使用できる。その他の酵母宿主−ベクター系について
は、D. EmrScott, "Methods in Enzymology", ed. by
D. V. Goeddel, vol. 185, p.231,Academic Press, New
York (1990)に詳述されており、本発明で使用できる。
可能である。バキュロウイルスを持ちいた外来遺伝子発
現システムは市販されており(PharMingen社製、米国カ
リフォルニア州San Diego)、本発明に使用できる。こ
のシステムについては、Luckow, V. A.らのTrends in t
he Development of Baculovirus Expression Vector, B
io/Technology(1987年9月11日)に記載されている。
ーター(例えばメタロチオネインプロモーター)、ウイ
ルスプロモーター(例えばSV40初期プロモーター)等を
持つ発現ベクターに組み込み、哺乳動物細胞に導入する
ことにより高発現させることができる。
a o IあるいはCha o IIのT細胞エピトープあるいはB細
胞エピトープを、分子レベルで余すところなく解明する
ために、Cha o I cDNAあるいはCha o II cDNAのコード
する推定アミノ酸配列に基づき、オーバーラップペプチ
ドを作製する。これらのオーバーラップペプチドは、市
販されているペプチド自動合成装置により容易に合成す
ることができる。これらのオーバーラップペプチドの中
から、少なくとも一つのT細胞エピトープを含むペプチ
ドあるいは一価のB細胞エピトープを含むペプチドを同
定する。
者の末梢血リンパ球から、Cha o IあるいはCha o IIを
特異的に認識し、増殖応答するT細胞ラインを患者毎に
樹立する必要がある。一般に、患者毎に反応するT細胞
エピトープが異なるので、患者毎にT細胞ラインを樹立
することが好ましい。Cha o IあるいはChao II抗原特異
的なT細胞ラインを樹立するには、通常患者の末梢血リ
ンパ球をChao IあるいはCha o II抗原の存在下、7日間
程度培養して抗原刺激によりT細胞を活性化し、さら
に、活性化T細胞を、抗原と抗原提示細胞と共に7日間培
養することを数回繰り返して抗原刺激することにより、
抗原特異的T細胞ラインを作製することができる。しか
しながら、T細胞が増殖因子のIL-2の存在下でよく増殖
している場合は、抗原刺激は最初だけにすることが望ま
しい。T細胞ラインを数度抗原刺激すると、増殖率の高
いT細胞が選択的に取れ、T細胞エピトープを含むペプチ
ドを同定する場合において、エピトープによっては十分
な増殖応答を示さない場合が生じる。
原あるいはCha o II抗原が最も望ましいが、極微量しか
ヒノキ花粉から抽出できないことから、組換えCha o
I、組換えCha o II、あるいはオーバーラップペプチド
の混合物も好適に使用できる。組換えCha o Iや組換えC
ha o IIは、大腸菌で発現させ精製したものが利用でき
る。
リンパ球を、マイトマイシンC処理あるいは放射線照射
して増殖能力を失わせたものが望ましいが、採血回数が
多くなるため好ましくない。そこで、Epstein-Barr vir
us(EBV)を自己のBリンパ球に感染させ、トランスフォ
ーメーションを起こさせたものは、invitroで増殖し続
けリンパ芽球様細胞株(B細胞株)となるので、このB細
胞株を抗原提示細胞として用いてもよい。B細胞株の樹
立方法は既に確立されている[組織培養の技術第二版、
187-191頁、日本組織学会編(1988.8.10)]。
ペプチドの同定 それぞれの患者固有のT細胞ラインが認識する、T細胞エ
ピトープを含むペプチドは以下のようにして同定され
る。ここで”認識する”という意味は、T細胞レセプタ
ーが抗原エピトープ(MHC分子を含めて)と特異的に結
合し、その結果、T細胞が活性化されることを意味し、
活性化の状態は、リンホカインの産生や、DNAの合成を[
3H]チミジンの取込み量を指標として測定することによ
り観察される。すなわち、T細胞ラインとマイトマイシ
ンC処理した同一人のB細胞株とを、96穴平底プレートに
播種し、オーバーラップペプチドと共に混合培養し、[3
H]チミジンの取込み量(cpm)を液体シンチレーション
カウンターで測定する。その際、[3H]チミジンの取込み
は、個々の培養系で異なるため、個々のペプチドに対す
るT細胞ラインの[3H]チミジン取込み量(cpm)を、抗原
を添加していないコントロールの[3H]チミジン取込み量
(cpm)で除した値(stimulation index: SI)が一定値
以上(例えば2)をT細胞エピトープを含むペプチドと同
定する。
はCha o IIの少なくとも一つのT細胞エピトープを含む
ペプチドについては、以下のことが考えられる。
るペプチドの長さは、ペプチドの解析結果(Chicz, R.
M. et al.: J. Exp. Med., 178: 27-47, 1993)から、
およそ10〜34のアミノ酸残基からなるものと考えられる
ので、少なくとも一つのT細胞エピトープを含むペプチ
ドは、このような長さのペプチドも含まれる。また、こ
れらのペプチドに、アミノ酸置換、欠失あるいは付加な
どの修飾を行い、これらの修飾ペプチドに対する患者毎
のT細胞ラインの増殖応答を測定することによって、Cha
o IあるいはCha o IIの少なくも一つのT細胞エピトー
プを含むペプチドと免疫学的に同機能を有する修飾ペプ
チドを容易に作製することも可能である。
剤は花粉から抽出された粗抗原であり、多量の多糖類を
含んでいる。ロット差がかなりあり、一旦減感作療法を
開始した後、ロットを変えるとアナフィラキシーを起こ
すことが稀にある。また、減感作の治療効果も、減感作
治療が開始されて以来余り改善されておらず、減感作療
法で著効と診断されるのは約30%の患者である。
ち、ヒノキ花粉症患者の半分以上のT細胞ラインと反応
する各々のペプチドは、これらの各ペプチドを単独もし
くはいくつかを混合したペプチドを用いて減感作療法を
行った場合には、治療した患者の半分以上で減感作が行
える可能性がある。また、使用するペプチドは、化学的
に合成されたペプチドであるため、アナフィラキシーの
ような副作用を生じる可能性は低くなると考えられる。
経口投与して、経口免疫寛容を行うことも可能と考えら
れる。経口免疫寛容(経口減感作)は現在開発中の治療
法であるが、可能性を示唆する結果が報告され始めてい
る。例えば、Myelin Basic ProteinのT細胞エピトープ
(ペプチド配列21-40、71-90)をマウスに経口投与する
と、Experimental Autoimmune Encephalomyelitis(略
してEAE)発症を抑制したことが報告されている[上野
川修一、久恒辰博、八村敏志、経口免疫寛容の分子生物
学、蛋白質核酸酵素、39、2090-2101(記載頁2098右、9
-24行)1994年]。これらの例から、ヒノキ花粉症にお
いても、同定したT細胞エピトープを含むペプチドをそ
のまま経口投与するか、あるいは胃で消化されないよう
に何らかのカプセルに封入する等の工夫を行って経口投
与すれば、免疫寛容状態になる可能性がある。ヒノキ花
粉飛散時期の前、具体的には12〜1月期に経口的にT細胞
エピトープを含むペプチドを投与し、免疫寛容状態を誘
導しておく。この状態だとヒノキ花粉が飛散して鼻粘膜
に花粉が付着しても、症状が出ないか、あるいは症状が
軽くなることが期待される。
プチドにアミノ酸置換を入れたアナログペプチドを合成
し、HLAクラスII分子には結合するが、T細胞には情報が
伝わらないアナログペプチドを同定する。これらのペプ
チドは、例えば点鼻薬として患者に使用すれば、天然の
T細胞エピトープを競合的に阻害するので、発症予防が
期待される。
a o IIには、IgE抗体が特異的に結合する独立したB細胞
エピトープが複数(多価エピトープ)存在する。これら
の独立したそれぞれの一価のB細胞エピトープを含む1分
子の部分ペプチドは、Cha o IあるいはCha o IIで感作
された肥満細胞及び好塩基球上の、対応する1分子のIgE
抗体とのみ結合すると考えられる。従ってこのような部
分ペプチドを合成し投与すれば、Cha o IあるいはCha o
IIとIgE抗体との結合を抗原特異的に阻害し、I型アレ
ルギー発症のために必要不可欠な架橋構造形成を抑制す
ることが可能であると考えられる。この場合2分子のIgE
抗体が結合するCha o I分子上あるいはCha o II分子上
のエピトープの構造は互いに異なっているので、その一
方のエピトープのみを含む部分合成ペプチドでも架橋構
造の形成を抑制することが可能である。
ペプチドを合成するためには、Cha oIあるいはCha o II
のB細胞エピトープを同定する必要がある。
者らにより明らかにされたので、一価のB細胞エピトー
プを含むペプチドは次の方法を用いて同定することがで
きる。Cha o Iの全一次構造をカバーする4〜10残基のア
ミノ酸残基からなる部分ペプチドを、ペプチドシンセサ
イザーにより化学合成する。この場合、B細胞エピトー
プ部分の破壊を防ぐために、ペプチド間でのオーバーラ
ップ部分を3〜8残基程度とする必要がある。
されれば、上記と同様の方法を用いて、一価のB細胞エ
ピトープを含むペプチドを用いて同定することができ
る。
ら目的の一価のB細胞エピトープのみを含むペプチドを
スクリーニングするには、抗原抗体反応に基づいた以下
の方法が用いられる。
症患者血清IgE抗体とを、96穴プレート中で室温で反応
させた後、緩衝液(pH7.5)で洗浄し患者血清を除く。次
いで酵素標識抗ヒトIgE抗体を加えて室温で一晩反応さ
せた後、前記と同じ緩衝液で洗浄する。4-メチルウンベ
リフェリル-β-D-ガラクトピラノシド溶液を96穴プレー
トに加えて発色させ、96穴プレート用の螢光分光光度計
で各ウェルの吸光度を測定する。
領域を含むいくつかのペプチドが得られるが、これらの
ペプチドが患者IgE抗体とCha o IあるいはChao IIとの
結合を阻害するかどうかを、前記と同様の酵素抗体法で
調べる。
にコーティングし、ブロッキングを行った後、患者プー
ル血清と所定濃度のペプチドを加えて、37℃で4時間、
または室温で一晩反応させる。プレートを洗浄後、酵素
標識IgE抗体を加えて一晩反応させ、再度プレートを洗
浄する。基質溶液を加え37℃2時間反応させた後反応停
止液を加え、螢光分光光度計で各ウェルの吸光度を測定
する。
害するペプチドが、ヒノキ花粉症発症に必要不可欠な架
橋形成を抑制するかどうかを、患者好塩基球からのヒス
タミン遊離阻害試験により調べる。ヒノキ花粉症患者の
好塩基球には、すでにCha o IあるいはCha o IIに特異
的な患者IgE抗体が結合して存在しており、これらのIgE
抗体に対応する一価のエピトープを有するペプチドは、
IgE抗体と結合することにより、Cha o IあるいはCha o
IIによる架橋形成を阻止し、感作好塩基球からのヒスタ
ミン遊離を阻止すると考えられる。この阻害試験は次の
ようにして実施することができる。ヒノキ花粉症患者か
ら得られたヘパリン化末梢血とペプチドとを反応させ
る。次いでCha o IあるいはCha o IIを加えて反応させ
た後、遠心分離しその上清中の遊離ヒスタミン量を栄研
化学(株)のヒスタミンキット"栄研"を用いて測定する。
きない場合は、受身のヒスタミン遊離阻害試験の実験系
を用いる。アロタイプのヒノキ花粉症患者からヘパリン
採血した血液の白血球を酸性下で処理し、同患者の好塩
基球に結合しているIgE抗体を脱離させた後、目的のヒ
ノキ花粉症患者の血清を加えて反応させ、患者血清のIg
E抗体を好塩基球上のIgEレセプターに結合させ、人為的
にヒノキ花粉症患者血清IgEで受身感作された好塩基球
を作り出す。この好塩基球を用いてヒスタミン遊離阻害
試験を行うことが可能である。
ピトープを含むペプチドは、そのままで抗アレルギー剤
としての利用が期待できるが、生体内酵素により分解を
受ける部位を有している場合には、一価のエピトープ部
位はそのままで、酵素に感受性のある部位を他のアミノ
酸或いは他の化学構造に置換して用いることもできる。
あるいは、構成L体アミノ酸の一部をD体に変換したもの
も用いることができる。
するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではな
い。
内で4月に伐採されたヒノキの枝に着花した雄花から採
取した。抗原性精製用のヒノキ花粉は-70℃で保存し、R
NA調製用のヒノキ花粉は液体窒素中で急速凍結した後、
-70℃で保存した。
をエ−テル30mlで3回脱脂した後、これを一晩室温で風
乾した。乾燥した花粉に50mlの10 mM Tris緩衝液、pH
7.8を加え、テフロンホモジェナイザ−でホモジェナイ
ズし、12,000×g、20分遠心してその上清を得た。pHを
再度pH 7.8に調整した後、10 mM Tris緩衝液、pH 7.8で
平衡化したDE-52イオン交換カラム(Whatman社製)に懸
け、非吸着分画を集めた。これを10 mM 酢酸緩衝液、pH
5.0で透析し、さらに同じ緩衝液で平衡化させたCM-52
イオン交換カラム(Whatman社製)に吸着させ、0.5 M N
aCl、10 mM Tris緩衝液、pH 7.8でCha o Iを溶出させ
た。さらにC4逆相カラム(Vydec社製)を用いたHPLCで
最終精製を行った。
と同時に、還元条件下のSDS-PAGEにかけた。得られた泳
動バンドを模式的に表したものを図1に示す。
から順に、フォスフォリラーゼb(94KDa)、ウシ血清ア
ルブミン(67KDa)、オボアルブミン(43KDa)及びカル
ボニックアンヒドラーゼ(30KDa)である。Cha o Iは、
右端のレーンに2本のバンドとして認められ、中央のレ
ーンのCry j Iの2本のバンド(約47KDa及び約44KDa)よ
りわずかに大きく、それぞれ約49kDa、及び約52KDaであ
った。
j Iでも同じように認められ、タンパク主鎖は共通であ
るが糖鎖構造の違いによって2本のバンドとして認めら
れることが報告されている(Taniai M. et al., FEBS L
ett. 239, 329-332, 1988)。従って、Cha o IもCry j
Iと同様に、糖鎖の違いによって2本のバンドとして認め
られたものと考えられる。
したCha o IのN末端から23残基の一次構造配列を、470A
Protein Sequenator(Applied Biosystems社製)によ
って解析した。その結果を図2に示す。なお、比較のた
めに、Cry j IのN末端の一次構造(Taniai M.,et al.,
FEBS Lett., 239, 329-332, 1988;Sone T., et al., B
iochem. Biophys. Comm. 199, 619-625, 1994)と並べ
て記した。
者血清IgEの反応性>アレルギ−診断薬AlaSTAT(日本DP
Cコーポレーション/三光純薬社製)により、ヒノキア
レルギ−陽性と診断された患者5名と、陰性と診断され
た健常人5名の、計10名の静脈血を、ヘパリン存在下に
採血して血漿を得た。精製Cha o Iを15μg/mlに調製
し、96穴ブラックプレ−ト(大日本製薬社製)に100μl
/wellずつ入れ、4℃一晩放置してCha o Iをコ−ティン
グした。4倍希釈ブロックエ−ス(大日本製薬社製)で
ブロッキングした後、10名のそれぞれの血漿を10倍希釈
ブロックエ−スで4倍に希釈して、各穴に100μlずつ入
れ、37℃で4時間反応させた。各穴を洗浄液(0.01% Twe
en、0.15M NaCl、10mM Tris緩衝液、pH 7.5)で5回洗浄
した後、ガラクトシダ−ゼ標識抗IgE抗体(Pharmacia社
製)を加えて室温で一晩放置した。各穴を洗浄液で5回
洗浄した後、4-メチルウンベリフェリル-β-D-ガラクト
ピラノシドを基質として37℃、2時間反応させた。反応
停止液(0.2M Glycin-NaOH、pH 10.3)を等量加えて、
反応を停止し、蛍光プレ−トリ−ダ−(Titertek Fluor
oskan II;Flow社製)で測定した。その結果を表1に示
す。
は、健常人の測定値の2〜60倍に達した。従って、本実
験でヒノキ花粉から精製したCha o Iがアレルゲン物質
であることが明らかとなった。
Allergy Appl. Immunol. 87:19-24 1988)の方法を基
にして改良を加えることによりヒノキ花粉からRNAを抽
出した。
の抽出緩衝液(100mM LiCl、10mM Na2EDTA、1%SDS、20%
2-メルカプトエタノール、100mM Tris-HCl、pH 9.0)
に懸濁し、さらに、15mlのフェノール:クロロフォル
ム:イソアミルアルコール(24: 24 : 1)を添加した。
この懸濁液をテフロンホモジェナイザーに移し、テフロ
ンペステルをモーターで最高回転で回しながら、20〜30
ストロークホモジェナイズした。この後、遠心操作(1
0,000g、15分)で水層と有機層に分離して水層を得た。
水層に同量のフェノール:クロロフォルム:イソアミル
アルコールを加え、5分間振蕩の後、遠心分離(10,000
g、15分)で水層を得た。同様の操作を2回繰り返し、さ
らに15mlのクロロフォルム:イソアミルアルコール(24
: 1)を用いて1回行った。得られた水層に同量の4M Li
Clを添加して-20℃で一晩放置した。凍結した溶液を室
温で溶解し、遠心操作(20,000g、30分)で沈澱を得
た。この沈澱を少量の滅菌蒸留水に溶解し、0.3容の3M
CH3COONa、pH 5.2と2.5容のエタノールを加え、-20℃で
60分間放置した。遠心操作(10,000g、30分)により回
収した沈渣を滅菌蒸留水に再溶解して全RNA分画とし
た。
ノキ花粉全RNA1mgを出発材料として同量の結合緩衝液
(3M NaCl、1mM EDTA、10mM Tris-HCl、pH 7.4)を添加
した後、オリゴdTセルロースを事前にパックしたスパン
カラム(Clonetech Laboratories Inc.社製)に吸着さ
せ、溶出緩衝液(1mM EDTA、10mM Tris-HCl、pH 7.4)
で溶出することにより約10μgのmRNAを精製した(スパ
ンカラムに添付のプロトコールに従った)。続いて、精
製mRNA 5μgからcDNA Synthesis Kit(Pharmacia P-L B
iochemicals, Inc.社製)を使用し、添付されているプ
ロトコールに従ってcDNA約4μgを合成した。
の作製はcDNAクローニングシステムλgt10(Amersham I
nternational plc.社製)を使用し、添付されているプ
ロトコールに従って行った。上述のcDNA1μgをλgt10に
組み込み、ヒノキcDNAライブラリーを作製した。約10万
のライブラリーのうち、Cha o I cDNA及びCha o II cDN
Aスクリーニング用としてそれぞれ約3万のクローンを、
直径150mmのプレート3枚ずつにまいた。スクリーニング
のためのプローブは、Cry j I cDNA及びCha o II cDNA
を、[α-32P]dCTP(3,000Ci/mmol;ICN Biochemical
s, Inc.社製)で標識して用いた。ファージDNAを固定化
したニトロセルロースフィルターを、4×SSC(1×SSC:
0.18M NaCl、15mMクエン酸ナトリウム)、5×FBP(1×F
BP:0.02% Ficoll、0.02%牛血清アルブミン、0.02%ポリ
ビニルピロリドン)及び100μg/ml tRNAを含む溶液に、
65℃1時間以上浸すことによりプレハイブリダイズし
た。この後、ニトロセルロースフィルターを新たに調製
した同溶液に浸し、32Pラベルしたプローブを加えて、6
5℃で一晩ハイブリダイゼイションを行った。この後フ
ィルターを0.1×SSCと0.1%SDSとを含む溶液で室温で30
分、次いで65℃で30分洗浄した後、オートラジオグラフ
ィーを行った。
グナルが検出され、そのうちの1つのファージDNAを抽
出し、制限酵素EcoRIで切断したところ、約1.2kbpのDNA
断片が挿入されていた。この挿入断片をpUC118にサブク
ローニングした。
シグナルが検出され、そのうちの1つのファージDNAを
抽出し、制限酵素Not Iで切断したところ、約1.7kbpのD
NA断片が挿入されていた。この挿入断片をpBluescript
IIにサブクローニングした。
ローニングしたプラスミドを、キロシークエンスデレー
ションキット(宝酒造社製)を用いてデレーションミュ
ータントを作製し、全塩基配列の決定に用いた。塩基配
列は、合成プライマーと[α-32P]dCTPを用いSanger法
によって決定した。結果をCha o Iについては配列番号
5に、Cha o IIについては配列番号8に示す。また、オ
ープンリーディングフレームのみの塩基配列を、Cha o
Iについては配列番号4に(該塩基配列がコードするア
ミノ酸配列を配列番号2に)、Cha o IIについては配列
番号7(該塩基配列がコードするアミノ酸配列を配列番
号6)に示す。さらに、成熟Cha o Iをコードする塩基
配列を3に(該塩基配列がコードするアミノ酸配列を配
列番号1に)示す。
a o I及びCha o IIをコードするDNA配列及び当該DNA配
列から推定されるアミノ酸配列が明らかになったので、
そのアミノ酸配列に基づき、ヒノキ花粉アレルゲンCha
o I及びCha o IIのT細胞エピトープ及びB細胞エピトー
プの同定が可能となり、抗原特異的なヒノキ花粉症治療
・予防薬の開発が可能となった。
アミドゲル(8%)電気泳動にかけた結果、現れた泳動バ
ンドを模式的に表したものである。左端のレーンは、分
子量マーカー(フォスフォリラーゼb=94KDa、ウシ血清
アルブミン=67KDa、オボアルブミン=43KDa及びカルボ
ニックアンヒドラーゼ=30KDa)であり、中央のレーン
はCry j Iを、右端のレーンはCha o Iを、各々表す。
である。比較のために、Cry jIのN末端からの一次構造
配列と並べて記す。図中?は、プロテインシーケンサー
で解析できなかった箇所を表す。
Claims (19)
- 【請求項1】 ヒノキ(Chamaecyparis obtusa)花粉ア
レルゲン。 - 【請求項2】 配列番号1記載のアミノ酸配列を有する
ヒノキ花粉アレルゲンCha o I。 - 【請求項3】 請求項2記載のヒノキ花粉アレルゲンCh
a o IをコードするDNA。 - 【請求項4】 配列番号3記載の塩基配列を有するもの
である請求項3記載のDNA。 - 【請求項5】 配列番号1記載のアミノ酸配列の一部を
含み、かつ、少なくとも一つのエピトープを含むタンパ
ク質またはペプチド。 - 【請求項6】 請求項5記載のタンパク質またはペプチ
ドをコードするDNA。 - 【請求項7】 配列番号3記載の塩基配列の一部を含む
ことを特徴とする請求項6記載のDNA。 - 【請求項8】 配列番号2記載のアミノ酸配列を有する
ヒノキ花粉アレルゲンCha o I。 - 【請求項9】 請求項8記載のヒノキ花粉アレルゲンCh
a o IをコードするDNA。 - 【請求項10】 配列番号4記載の塩基配列を有するも
のである請求項9記載のDNA。 - 【請求項11】 配列番号2記載のアミノ酸配列の一部
を含み、かつ、少なくとも一つのエピトープを含むタン
パク質またはペプチド。 - 【請求項12】 請求項11記載のタンパク質またはペ
プチドをコードするDNA。 - 【請求項13】 配列番号4記載の塩基配列の一部を含
むことを特徴とする請求項12記載のDNA。 - 【請求項14】 配列番号6記載のアミノ酸配列を有す
るヒノキ花粉アレルゲンCha o II。 - 【請求項15】 請求項14記載のヒノキ花粉アレルゲ
ンCha o IIをコードするDNA。 - 【請求項16】 配列番号7記載の塩基配列を有するも
のである請求項15記載のDNA。 - 【請求項17】 配列番号6記載のアミノ酸配列の一部
を含み、かつ、少なくとも一つのエピトープを含むタン
パク質またはペプチド。 - 【請求項18】 請求項17記載のタンパク質またはペ
プチドをコードするDNA。 - 【請求項19】 配列番号7記載の塩基配列の一部を含
むことを特徴とする請求項18記載のDNA。
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