JP4176820B2 - スギ花粉アレルゲンCryjIIエピトープ - Google Patents

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本発明は、スギ花粉症の診断、予防もしくは治療に有用な、スギ花粉アレルゲンCry j IIのエピトープのT 細胞エピトープを含むペプチド、または該ペプチドをコードするDNAに関する。
スギ花粉症は、スギ花粉が飛散する春先にほぼ全国的に観察されるアレルギー性疾患であり、くしゃみや鼻汁、目のかゆみ等を伴うアレルギー症状を呈する。その患者数は、1970年以降急激に増加しており、現在全国民の10% 弱に当たる約一千万人がスギ花粉症に苦しめられている。
アレルギー性疾患を形成するアレルギー反応は、R. G. H. Gell とR. R. A. Coombs によりI型〜IV型の4 種に分類されており、スギ花粉症はI型に属する。
I型アレルギーの発症機序は以下の通りである。
アレルギー反応を引き起こす分子をアレルゲン(本明細書では抗原ともいう)というが、花粉の場合このアレルゲンがタンパク質抗原である。これらの外来タンパク質抗原が体内に侵入すると、抗原提示細胞(マクロファージ)に取込まれ、タンパク分解酵素によって分解されてペプチド断片になり、主要組織適合抗原複合体(Major Histocompatibility Complex: MHC )クラスII分子(ヒトではHLA クラスII分子)と結合した状態で、細胞膜上に提示される。HLA クラスII分子は多型性を示すが、CD4 + T細胞のレセプターは、HLA クラスII分子と結合した抗原ペプチドを、そのHLA クラスII分子の多型性を示す部分と共に認識し、抗原特異的に活性化される。活性化されたCD4 + T細胞は、Th0 細胞、Th1 / Th2 細胞に分化し、種々のサイトカインを産生する。その際、それぞれの細胞のサイトカイン産生パターンは異なっており、Th1 はIL-2、IFN γを、Th2 はIL-4、IL-5、IL-10 等を、Th0 は両者のサイトカインを産生する。
一方、B 細胞は細胞表面にIgM あるいはIgD を表現しており、抗原を細胞内に取込むことによって活性化される。その際、Th2 から産生されるサイトカインの作用によって、活性化されたB 細胞は抗体産生細胞にまで分化増殖し、抗原特異的な免疫グロブリンE (IgE )を産生する。このようにして産生されたIgE は、気道あるいは鼻粘膜組織中のマスト(肥満)細胞や血液中の好塩基球にIgE レセプターを介して強固に結合し、感作が成立した状態になる。
再び、アレルゲンが体内に侵入すると、1 分子のアレルゲンは、直ちにマスト細胞や好塩基球上の2 分子以上のIgE と結合し、架橋構造を形成する。その結果、IgE 分子と結合しているレセプター同士が会合し、これが引き金となって、細胞膜内の幾種類もの酵素が活性化され、ヒスタミンやプロスタグランジン、ロイコトリエンといった種々の化学伝達物質が細胞から放出される。これらの化学伝達物質が鼻粘膜や気道などの局所に作用して、色々なアレルギー症状を引き起こす。
なお、T 細胞によって認識されるエピトープをT 細胞エピトープ、B 細胞によって認識されるエピトープをB 細胞エピトープという。
アレルゲンのエピトープは、I型アレルギーの発症及び増悪に直接関与していると考えられるので、アレルゲンのエピトープを同定することは、I型アレルギーの診断、予防及び治療に有用である。
スギ花粉の主要アレルゲンは、安枝らによって単離精製され、Sugi Basic Protein(SBP )と命名された(Yasueda, H., et al., J. Allergy Clin. Immunol. 71, 77-86, 1983;非特許文献1)。このSBP は、分子量が45〜50kDa で、WHO の命名法に従い現在Cry j I と呼ばれている。更にその後、Cry j I の分離精製の過程で、Cry j I とは抗原性の異なる、分子量が37kDa のCry j IIが分離された(Taniai, M. et al. FEBS Letters 239, 329-332,1988;非特許文献2、Sakaguchi, M. et al. Allergy 45, 309-312,1990;非特許文献3 )。
これらの結果、Cry j I とCry j IIとは全く異なるタンパクであることが明らかとなったが、スギ花粉症患者では、Cry j I とCry j IIの両者が反応していることが報告された。すなわち、145 名のスギ花粉症患者血清中、134 名(92.4% )の血清がCry j I 及びCry j IIと反応し、6 名(4.1%)の血清がCry j I とのみに反応し、5 名(3.4%)の血清がCry j IIとのみ反応することが判明した(1993年第43回日本アレルギー学会、橋本ら、日獣大、予研、国立相模原病院、林原生化研)。つまり、スギ花粉症の発症には、Cry j I 及びCry j IIのどちらも重要であることが示された。
Cry j I については、それをコードするcDNAがクローニングされ、その推定アミノ酸配列に基づき、T 細胞エピトープを含むペプチドが同定されている(WO94/01560、"ALLERGENIC PROTEINS AND PEPTIDES FROM JAPANESE CEDAR POLLEN";特許文献1)。Cry j IIについては、N 末端のアミノ酸配列のAla 、Ile 、Asn 、Ile 、Phe 、Asn 、Val 、Glu 、Lys 及びTyr の10アミノ酸残基が報告されている(Sakaguchi, M., et al., Allergy 45, 309-312, 1990;非特許文献3)に過ぎない。
WO94/01560、"ALLERGENIC PROTEINS AND PEPTIDES FROM JAPANESE CEDAR POLLEN" Yasueda, H., et al., J. Allergy Clin. Immunol. 71, 77-86, 1983 Taniai, M. et al. FEBS Letters 239, 329-332,1988 Sakaguchi, M. et al. Allergy 45, 309-312,1990
本発明は、スギ花粉症の診断、予防及び治療に有用な、スギ花粉アレルゲンCry j IIのT 細胞エピトープを含むペプチドおよび該ペプチドをコードするDNAを提供することを目的とする。
本願発明者らは、上記課題を解決するために、
(1)Cry j IIをコードするcDNAのクローニングと推定アミノ酸配列の解明
(2)上記推定アミノ酸配列に基づき、該配列の全域をカバーするオーバーラップペプチドの作製
(3)Cry j IIを特異的に認識するT 細胞ラインを個人別に樹立
(4) 抗原提示細胞(B 細胞株)の樹立
(5)T細胞エピトープを含むペプチドの同定
を行い、本発明を完成した。すなわち、本発明は、
〔1〕配列番号6(ペプチド番号1)、配列番号7(ペプチド番号4)、配列番号8(ペプチド番号5)、配列番号9(ペプチド番号6)、配列番号10(ペプチド番号7)、配列番号11(ペプチド番号8)、配列番号12(ペプチド番号9)、配列番号13(ペプチド番号10)、配列番号14(ペプチド番号14)、配列番号15(ペプチド番号16)、配列番号16(ペプチド番号17)、配列番号17(ペプチド番号18)、配列番号18(ペプチド番号25)、配列番号19(ペプチド番号26)、配列番号20(ペプチド番号27)、配列番号21(ペプチド番号28)、配列番号22(ペプチド番号29)、配列番号23(ペプチド番号30)、配列番号24(ペプチド番号31)、配列番号25(ペプチド番号32)、配列番号26(ペプチド番号33)、配列番号27(ペプチド番号34)、配列番号28(ペプチド番号37)、配列番号29(ペプチド番号38)、配列番号30(ペプチド番号41)、配列番号31(ペプチド番号42)、配列番号32(ペプチド番号44)、配列番号33(ペプチド番号47)、配列番号34(ペプチド番号48)、配列番号35(ペプチド番号49)、配列番号36(ペプチド番号50)、配列番号37(ペプチド番号51)、配列番号38(ペプチド番号52)、配列番号39(ペプチド番号53)、配列番号40(ペプチド番号54)、配列番号41(ペプチド番号60)、配列番号42(ペプチド番号61)、配列番号43(ペプチド番号62)、配列番号44(ペプチド番号63)、配列番号45(ペプチド番号64)、配列番号46(ペプチド番号65)、配列番号47(ペプチド番号66)、配列番号48(ペプチド番号68)、配列番号49(ペプチド番号69)、配列番号50(ペプチド番号70)、配列番号51(ペプチド番号71)、配列番号52(ペプチド番号72)、配列番号53(ペプチド番号73)、配列番号54(ペプチド番号74)、配列番号55(ペプチド番号78)、配列番号56(ペプチド番号79)、配列番号57(ペプチド番号86)、および配列番号58(ペプチド番号87)からなる群より選ばれるペプチド;
または、上記ペプチドにおいてアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加されたペプチドであって、かつ、2以上の平均刺激係数を有するペプチド。
〔2〕配列番号14(ペプチド番号14)、配列番号16(ペプチド番号17)、配列番号22(ペプチド番号29)、配列番号28(ペプチド番号37)、配列番号29(ペプチド番号38)、配列番号34(ペプチド番号48)、配列番号48(ペプチド番号68)、配列番号49(ペプチド番号69)、配列番号50(ペプチド番号70)、および配列番号51(ペプチド番号71)からなる群より選ばれる、スギ花粉アレルゲンCry j IIの少なくとも1つのT細胞エピトープを含む〔1〕記載のペプチド。
〔3〕〔1〕又は〔2〕に記載されたペプチドをコードするDNA。
〔4〕〔1〕又は〔2〕に記載されたペプチド、またはそれらの混合物を有効成分として含有する、スギ花粉症の予防又は治療剤。
(1)Cry j II の全アミノ酸配列の解明
(i) cDNAのクローニング
a. RNAの抽出
RNA を抽出する際、通常、初期段階で蛋白質を除去する。このため一般的な方法として、フェノール抽出方法、グアニジウム塩、界面活性剤、尿素などの蛋白質変性剤などを用いる方法がある。
スギ花粉からのRNA 抽出は、Breiteneder ら(Int. Arch. Allergy Appl. Immunol. 87: 19-24, 1988 )の方法に改良を加えて行うことができる。
スギ花粉を、10〜20倍量の抽出緩衝液(100mM LiCl、10mMNa2 EDTA、1%SDS 、20% メルカプトエタノール、100mM Tris-HCl pH 9.0 )に懸濁し、これに等量のフェノールとクロロホルムの混液(フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール=24:24:1 )を加えホモジェナイズする。次いで遠心(10,000g 、10〜15分)し、フェノール・クロロホルム層と、水層の二層に分離する。このとき変性した蛋白質はフェノール・クロロホルム層に、核酸は水層に移行する。水層にフェノール・クロロホルム混液を加え、振盪し水層に残存している蛋白質などの不純物をフェノール・クロロホルム層に移行させ除去する。このような操作を2回繰り返す。
得られた水層からRNA を抽出するには、高濃度のLiCl(2〜4M) またはCH3 COO Na(3M)が存在するとDNA 及び蛋白質は上清に残り、tRNA以外のRNA は沈殿する性質を利用する。水層に同量の2 〜4MのLiClを添加し、RNA を沈殿させる。次いでこの水層を水に溶解し、0.1 〜0.3 容の冷エタノール(-20 ℃)を加え、RNA を沈殿させる(エタノール沈殿)。次いで遠心(10,000g 、30分)して沈殿を回収し、水に溶解して全RNA 分画を得る。
b. mRNA の調製とcDNAの合成
Cry j IIのmRNAは、3'末端にポリ(A) 鎖を持つので、これと相補するリガンドとして12〜18塩基のデオキシチミジン(dT)を結合したオリゴdTセルロースカラム(Clontech Laboratories Inc. 社製、CA、USA)にmRNAを吸着させる。スギ花粉RNA に緩衝液(3M NaCl、1mM EDTA、10mM Tris-HCl、pH7.4)を加えてmRNAをカラムに吸着させる。mRNAは、ベッド体積の2 〜3 倍量のNaClを含まない緩衝液(1mM EDTA 、10mM Tris-HCl 、pH7.4)で溶出する。
得られたmRNAからのcDNAライブラリーの作製は、現在市販されているファージをベクターに用いたcDNAライブラリー作製キット(Amersham International plc.社製、Buckinghamshare 、England)を用いて行うことが出来る。
c. Cry j II cDNAのスクリーニング
Cry j IIのN 末端アミノ酸10残基が既に判明しているが、このアミノ酸配列から推定した塩基配列を持つ合成DNA をプローブとして、Cry j II cDNA をスクリーニングすることができる。プローブに用いるDNA を合成する場合、可能性のあるコドンを含むオリゴヌクレオチドを全て合成するよりも、可能性のある複数のコドン配列に対してハイブリダイズするようなオリゴヌクレオチドを設計することが望ましい。この合成オリゴヌクレオチドプローブの5'末端を[ γ- 32P]ATP とポリヌクレオチドキナーゼによって標識し、プラークハイブリダイゼーション法により、前記cDNAライブラリーから陽性クローンをスクリーニングする。
得られた陽性クローンよりファージDNA を調製し、挿入cDNA断片を分離し、pUC18 等のプラスミドにサブクローンする。必要に応じてオリゴヌクレオチドプライマーを合成し、Sanger法等により塩基配列を決定し、クローンを同定する。本発明者らが単離したCry j II cDNA の全長の塩基配列を、配列番号5に示す。
Cry j IIをコードするcDNAは、全体で1733bpからなり、翻訳開始と想定されるコドン(45〜47位のヌクレオチドATG )から終止コドン(1587〜1589位のヌクレオチドTAA )に至るオープンリーディングフレームを含み、514 アミノ酸をコードしている。オープンリーディングフレーム部分の塩基配列を配列番号3に示し、また該塩基配列がコードするアミノ酸配列を配列番号1に示す。配列番号3で示される塩基配列には、個体間での対立遺伝子変異による多型性(polymorphism) 及びその結果としてのアミノ酸配列の変異が考えられるがそのような変異を有するCry j IIの塩基配列及びアミノ酸配列も本発明に包含される。207 〜236 位のDNA 配列のコードするアミノ酸配列はAla 、Ile 、Asn 、Ile 、Phe 、Asn 、Val 、Glu 、Lys 、Tyr であり、成熟型Cry j IIのN 末端アミノ酸配列(Sakaguchi, M., et al., Allergy 45, 309-312, 1990)と一致する。N 末端の54アミノ酸は、他のシグナルペプチドに見られる疎水性アミノ酸に富み、また成熟型Cry j IIに含まれていないことからシグナルペプチドと考えられる。
配列番号5の207 位から終止コドン1587〜1589位までのDNA 配列がコードするCry j IIは、N 末端のAla からC 末端のPro まで460 個のアミノ酸残基からなり、成熟型Cryj IIと考えられる。該成熟型Cry j IIに対応する塩基配列を配列番号4に、該塩基配列にコードされる成熟型アミノ酸配列を配列番号2に示す。配列番号2に示すアミノ酸配列からなるCry j IIの理論上の分子量は50,444Daである。一方、天然の成熟型Cry j IIは、還元条件下のSDS-ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-polyacrylamide gel electrophoresis)で45KDa の位置にそのバンドが現れる(Sakaguchi, M., et al., Allergy 45, 309-312, 1990)。このことから、Cry j IIのC 末端はプロセッシングを受けているものと考えられる。また成熟Cry j IIのアミノ酸配列の中には、N-グリコシド結合の可能性のあるAsn-X-Ser/Thr が3ヶ所(配列番号2のアミノ酸配列の375〜377位、406〜408位および418〜420位)存在する。
Cry j IIをコードするDNA の全長またはその一部を含むDNA は、螢光標識、放射性標識あるいは酵素標識等によって標識することにより、生化学検査または関連蛋白質若しくは類似の配列を含む蛋白質をコードするDNA のスクリーニング等のためのプローブ、プライマーとして使用できる。また発現ベクターに接続して、少なくとも1つのエピトープを含むタンパク質またはペプチドを発現させることもできる。
(ii)組換えCry j II(rCry j II )の発現
rCry j II タンパク質または少なくとも一つのCry j IIのT細胞エピトープを含むペプチドは、それぞれをコードするcDNAを発現ベクターに組込み、大腸菌、昆虫細胞、酵母または哺乳動物に導入し、発現させることにより得ることができる。しかし、大腸菌などの原核細胞を使う発現系は、適切な糖鎖の付加(glycosylation) が行われないために、rCry j II の発現には酵母などの真核細胞を使用することが好ましい場合がある。
幾つかの発現システムの例を以下に示す。
a. 大腸菌での発現
T7ファージのプロモーターとRNA ポリメラーゼを用いる系(F. W. Studier, A. H. Rosenberg, J. J. Dunn, J. W. Dubendonff, "Methods in Enzymology", ed. by D. D. V. Goeddel, vol. 185, p. 60, Academic Press, New York, 1990)は、極めて発現の成功率が高いので、本発明に好適に使用できる。この系は、T7ファージのポリメラーゼ遺伝子を持つ大腸菌宿主BL21(DE3) に、T7ファージプロモーターの下流のマルチクローニングサイトに目的の遺伝子を挿入した組換えプラスミドを導入して、IPTG存在下で、目的の遺伝子を発現させるシステムである。例えば発現ベクターとしてpGEMEX-1(Promega 社)などが使用できる。
また、目的の蛋白質を、大量発現可能な蛋白質と融合させて発現させる系が市販されており、これらの系は精製にアフィニティーカラムが使え、精製効率がよく、本発明に好適に使用できる。例えば、融合蛋白質にβ- ガラクトシダーゼを有する発現ベクターpUEX(Amersham)を用いると、rCry j II はβ- ガラクトシダーゼとの融合蛋白質として得られ、アフィニティカラムで効率よく精製することが出来る。また、グルタチオンS-トランスフェラーゼを有するpGEX(Pharmacia) や、マルトース結合蛋白質を用いたpMAL(New England Biolabs、Berverly, MA) などは、その融合部位に血液凝固因子Xaの切断部位が導入されており、Cry j IIを分離することができる。
b. 酵母での発現
酵母を宿主とする系は発現産物のグリコシレーションが可能であり、このことは糖蛋白質であるCry j IIの発現に好都合である。例えば酵母による異種蛋白質の発現系としては、ピキア酵母を宿主として用いる方法が知られており(特開昭61-108383 号公報、特開昭61-173781 号公報、特開昭63-44899号公報、特開平1-128790号公報等)、本発明に好適に使用できる。その他の酵母による発現系については、D. Emr Scott, "Methods in Enzymology", ed. by D. V. Goeddel, vol. 185, p.231, Academic Press, New York (1990) に詳述されており、本発明で使用できる。
c. 昆虫細胞での発現
昆虫細胞中を宿主とする系は発現産物のグリコシレーションが可能である。バキュロウイルスを用いた外来遺伝子発現システムは市販されており(PharMingen, San Diego, CA, USA)、本発明に好適に使用できる。このシステムについては、Luckow, V. A. らの Trends in the Development of Baculovirus Expression Vector, Bio/Technology (1987年9 月11日)に記載されている。
d. 哺乳動物細胞での発現
哺乳類プロモーター(例えばメタロチオネイン)、ウイルスプロモーター(例えばSV40初期プロモーター)等を持つ発現ベクターに組み込み、哺乳動物細胞に導入することにより高発現させることができる。
(2) オーバーラップペプチドの合成
花粉症患者のT 細胞が認識するCry j IIのT細胞エピトープを分子レベルで解明するために、配列番号2に記載のアミノ酸配列に基づき、N 末端のAlaからC 末端のPro に至る全460 アミノ酸残基をカバーするオーバーラップペプチドを作製する。これらのオーバーラップペプチドは、市販されているペプチド自動合成装置により容易に合成することができる。これらのオーバーラップペプチドの中から、少なくとも一つのエピトープを含むペプチドを同定する。T 細胞エピトープを同定するためには、花粉症患者の末梢血リンパ球から、Cry j IIを特異的に認識し増殖応答するT 細胞ラインを樹立する必要がある。一般に、患者毎に反応するT 細胞エピトープが異なるので、患者毎にT 細胞ラインを樹立することが望ましい。
(3)T細胞ラインの樹立
Cry j II抗原特異的なT 細胞ラインを樹立するには、通常患者の末梢血リンパ球をCry j II抗原の存在下、7 日間程度培養して抗原刺激によりT 細胞を活性化し、さらに、活性化T 細胞を、抗原と抗原提示細胞と共に7 日間培養することを数回繰り返して抗原刺激することにより、抗原特異的T 細胞ラインを作製することができる。しかしながら、T 細胞が増殖因子のIL-2の存在下でよく増殖している場合は、抗原刺激は最初だけにすることが望ましい。T 細胞ラインを数度抗原刺激すると、増殖率の高いT 細胞が選択的に取れ、T 細胞エピトープを含むペプチドを同定する場合において、エピトープによっては十分な増殖応答を示さない場合が生じる。
使用する抗原としては、原理的には天然型Cry j II抗原が望ましいが、極微量しかスギ花粉から抽出できないことから、組換えCry j II(rCry j II )あるいはオーバーラップペプチドの混合物も好適に使用できる。rCry j II は、大腸菌で発現させ精製したものが利用できる。
(4) 抗原提示細胞(B 細胞株)の樹立
抗原提示細胞としては、T 細胞ラインと同一人の末梢血リンパ球を、マイトマイシンC 処理あるいは放射線照射して増殖能力を失わせたものが望ましい。しかし、採血回数が多くなるため、Epstein-Barr virus(EBV )を自己のB リンパ球に感染させトランスフォーメーションを起こさせたものは、in vitroで増殖し続けリンパ芽球様細胞株(B 細胞株)となるので、このB 細胞株を抗原提示細胞として用いてもよい。B 細胞株の樹立方法は既に確立されている[組織培養の技術第二版、187-191 頁、日本組織学会編(1988.8.10) ]。
(5)T細胞エピトープを含むペプチドの同定
それぞれの患者固有のT 細胞ラインが認識する、T 細胞エピトープを含むペプチドは以下のようにして同定される。ここで「認識する」という意味は、T 細胞レセプターが抗原エピトープ(MHC 分子を含めて)と特異的に結合し、その結果、T 細胞が活性化されることを意味し、活性化の状態は、リンホカインの産生や、DNA の合成を [ 3H] チミジンの取込み量を指標として測定することにより観察される。すなわち、T 細胞ラインとマイトマイシンC 処理した同一人のB 細胞株とを、96穴平底プレートに播種し、オーバーラップペプチドと共に混合培養し、 [ 3H] チミジンの取込み量(cpm )を液体シンチレーションカウンターで測定する。その際、 [ 3H] チミジンの取込みは、個々の培養系で異なるため、例えば、個々のペプチドに対するT 細胞ラインの [ 3H] チミジン取込み量(cpm )を、抗原を添加していないコントロールの [ 3H] チミジン取込み量(cpm )で除した数(stimulation index: SI )が2 以上をT 細胞エピトープを含むペプチドと同定する。同定されたT 細胞エピトープを含むペプチドは、図4に列挙されている。
このようにして得られた本発明のCry j IIの少なくとも一つのT 細胞エピトープを含むペプチドについては以下のことが考えられる。HLA クラスII分子と結合して抗原提示されるペプチドの長さは、ペプチドの解析結果(Chicz, R. M. et al.: J. Exp. Med., 178: 27-47, 1993 )から、およそ10〜34のアミノ酸残基からなるものと考えられるので、本発明のT 細胞エピトープを含むペプチドはこのような長さのペプチドも含まれる。また、本発明のペプチドにアミノ酸置換、欠失あるいは付加などの修飾を行い、これらの修飾ペプチドに対する患者毎のT 細胞ラインの増殖応答を測定することによって、本発明のCry j IIの少なくとも一つのT 細胞エピトープを含むペプチドと免疫学的に同機能を有する修飾ペプチドを容易に作製することは、当業者が容易に実施しうることであるので、これらの修飾ペプチドも本発明に包含される。
現在、減感作療法で使用されている減感作剤はスギ花粉から抽出された粗抗原であり、多量の多糖類を含んでいる。ロット差がかなりあり、一旦減感作療法を開始した後、ロットを変えるとアナフィラキシーを起こすことが稀にある。また、減感作の治療効果も、減感作治療が開始されて以来余り改善されておらず、減感作療法で著効と診断されるのは約30% の患者である。
本発明のT 細胞のエピトープを含むペプチドのうち、花粉症患者の半分以上のT 細胞ラインと反応する各々のペプチドは、これらの各ペプチドを単独もしくはいくつかを混合したペプチドを用いて減感作療法を行った場合には、治療した患者の半分以上で減感作が行える可能性がある。また、使用するペプチドは、化学的に合成されたペプチドであるため、アナフィラキシーのような副作用を生じる可能性は低くなると考えられる。例えば、図5は、18名の花粉症患者から樹立されたT 細胞ラインがそれぞれ認識するオーバーラップペプチドを、重要度指数[「平均刺激係数」(「オーバーラップペプチド刺激によるT 細胞ラインの [ 3H] チミジン取込み量(cpm) 」を「抗原を添加しない場合の [ 3H] チミジン取込み量(cpm) 」で割った値の平均値)と「出現頻度(%) 」(「試験した全T 細胞ライン」に対する「被験ペプチドをT 細胞エピトープとして認識したT 細胞ライン」の割合(%) )とを乗じた値]で示したものであるが、図中の番号14、17、29、38、48、68、70および71のペプチドは平均刺激係数が約3.9 以上である上、重要度指数が200 を超えており、減感作治療に特に有効であると考えられる。
なお、本発明者が明らかにし、図5に示された少なくとも一つのT 細胞エピトープを含むペプチドの中には、後述のB 細胞エピトープを含むことが判明した2種類のペプチドと共通部分を有するペプチドは含まれていない。従って本発明のペプチドは、B 細胞エピトープを刺激しないと考えられるので、減感作剤として実用化可能であると考えられる。
また、本発明のT 細胞のエピトープを含むペプチドを経口投与して、経口免疫寛容を行うことも可能と考えられる。経口免疫寛容(経口減感作)は現在開発中の治療法であるが、効果を示す結果が報告され始めている。例えば、Myelin Basic ProteinのT 細胞エピトープ(ペプチド配列21-40 、71-90 )をマウスに経口投与すると「Experimental Autoimmune Encephalomyelitis (略してEAE )発症」を抑制したことが報告されている[上野川修一、久恒辰博、八村敏志、経口免疫寛容の分子生物学、蛋白質核酸酵素、39、2090-2101 (記載頁2098右、9-24行)1994年]。これらの例から、スギ花粉症においても、同定したT 細胞エピトープペプチドをそのまま経口投与するか、あるいは胃で消化されないように何らかのカプセルに封入する等の工夫を行って経口投与すれば、免疫寛容状態になる可能性がある。スギ花粉飛散時期の前、具体的には12〜1 月期に経口的にエピトープペプチドを投与し、免疫寛容状態を誘導しておく。この状態だとスギ花粉が飛散して鼻粘膜に花粉が付着しても、症状が出ないか、あるいは症状が軽くなることが期待される。
さらにまた、本発明のT 細胞のエピトープを含むペプチドに、アミノ酸置換、欠失あるいは付加などの修飾を加えたアナログペプチドを合成し、HLA クラスII分子には結合するが、T 細胞には情報が伝わらないアナログペプチドを同定する。これらのペプチドは、例えば点鼻薬として患者に使用すれば、天然のT 細胞エピトープを競合的に阻害するので、発症予防が期待される。
なお、B細胞エピトープの同定は、オーバーラップペプチドと患者血清IgE 抗体との反応性の測定、オーバーラップペプチドによる患者血清と抗原との結合の阻害の検出等の公知の方法によって行うことができる(特開平6−69336号参照)。既に、1価のB 細胞エピトープは、アレルギー反応の抑制に有用であることが知られている。これは、1価のB 細胞エピトープは、肥満細胞または好塩基球上の対応するIgE 分子と結合し、多価エピトープによるIgE 分子架橋の形成を阻害することによるものと考えられている。本発明者らは、本発明のCry j IIの全アミノ酸配列をカバーするオーバーラップペプチドを合成し、これらのペプチドとスギ花粉症患者血清IgE 抗体との反応を酵素抗体法で測定した結果、ペプチド「Gln Cys Lys Trp Val Asn Gly Arg Glu Ile Cys (アミノ酸配列113 〜123 )」および「Cys Thr Ser Ala Ser Ala Cys Gln Asn (アミノ酸配列293 〜301 )」はB 細胞エピトープを含んでいることを明らかにした。このようなCry j IIのB 細胞エピトープを含むペプチドは、スギ花粉症の診断、予防及び治療に有用である。
本発明のCry j IIの少なくとも一つのT 細胞エピトープを含むペプチドは、スギ花粉症の診断、予防及び治療に有用である。
さらにまた、HLA クラス 分子には結合するが、T 細胞には情報が伝わらないようなアナログペプチドを合成し、これらのペプチドを競争阻害によるスギ花粉症発症予防に用いることも可能である。
以下本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
<スギ花粉の採取>
スギ花粉は静岡県及び神奈川県内で2 月に伐採されたスギの枝に着花した雄花から採取した。Cryj II 抗原性精製用のスギ花粉は-70 ℃で保存し、RNA 調製用のスギ花粉は液体窒素中で急速凍結した後、-70 ℃で保存した。
<RNA の抽出>
Breiteneder ら(Int. Arch. Allergy Appl. Immunol. 87:19-24 1988) の方法を基にして改良を加えることによりスギ花粉からRNA を抽出した。
凍結保存したスギ花粉1gを氷冷した15mlの抽出緩衝液(100mM LiCl 、10mMNa2 EDTA、1%SDS 、20% 2-メルカプトエタノール、100mM Tris-HCl、pH 9.0)に懸濁し、さらに、15mlのフェノール:クロロフォルム:イソアミルアルコール(24:24:1) を添加した。この懸濁液をテフロン(登録商標)ホモジェナイザーに移し、テフロン(登録商標)ペステルをモーターで最高回転で回しながら、20〜30ストロークホモジェナイズした。この後、遠心操作(10,000g、15分) で水層と有機層に分離して水層を得た。水層に同量のフェノール:クロロフォルム:イソアミルアルコールを加え、5 分間振蕩の後、遠心分離(10,000g、15分) で水層を得た。同様の操作を2 回繰り返し、さらに15mlのクロロフォルム:イソアミルアルコール(24:1)を用いて1 回行った。得られた水層に同量の4M LiCl を添加して-20 ℃で一晩放置した。凍結した溶液を室温で溶解し、遠心操作(20,000g、30分) で沈澱を得た。この沈澱を少量の滅菌蒸留水に溶解し、0.3 容の3M CH 3 COONa 、pH 5.2と2.5 容のエタノールを加え、-20 ℃で60分間放置した。遠心操作(10,000g、30分) により回収した沈渣を滅菌蒸留水に再溶解して全RNA 分画とした。
<スギ花粉mRNAの調製とcDNAの合成>
スギ花粉全RNA1mgを出発材料として同量の結合緩衝液(3M NaCl、1mM EDTA、10mM Tris-HCl 、pH 7.4) を添加した後、オリゴdTセルロースを事前にパックしたスパンカラム(CLONETECH Laboratories Inc.社製、CA、USA)に吸着させ、溶出緩衝液(1mM EDTA 、10mM Tris-HCl 、pH 7.4) で溶出することにより約10μg のmRNAを精製した(CLONETECH Lab. Inc.社添付プロトコールに従った)。続いて、精製mRNA 5μg からcDNA合成システムプラス(Amersham International plc.社製、Buckinghamshare 、England)を使用し、添付されているプロトコールに従ってcDNA約4 μg を合成した。
<オリゴヌクレオチドプローブの合成>
Cry j IIのN 末端から10残基のアミノ酸配列を図1Aに示す。このアミノ酸配列から予想されるcDNAの配列は図1Bである。オリゴヌクレオチドプローブ(Oligo CJII)としてその配列に相補的に、また4カ所で2種類の塩基を用いているので、合計16種類の混合物として合成した(図1C)。混合物として種類を減らすためにG:T 塩基対を許容している。
<Cry j II cDNA のクローニング>
cDNAライブラリーの作製はcDNAクローニングシステムλgt10(Amersham International plc. 社製、Buckinghamshare 、England )を使用し、添付されているプロトコールに従って行った。上述のcDNA 1μg をλgt10に組み込みcDNAライブラリーを作製した。約50万のライブラリーのうち約5,000 のクローンを直径150mm のプレート1枚にまいた。スクリーニングのためのプローブは上記のオリゴヌクレオチド(Oligo CJII)をT4 polynucleotide kinaseにより[ γ- 32P]ATP (7,000Ci/mmol ICN Biochemicals, Inc. 社製)で標識して用いた。ファージDNA を固定化したニトロセルロースフィルターを5 ×SSPE(1 ×SSPE:0.18M NaCl 、10mMリン酸ナトリウム、1mM EDTA)、5 ×FBP (1 ×FBP:0.02% Ficoll、0.02% 牛血清アルブミン、0.02% ポリビニルピロリドン)、0.3%SDS 、100 μg/ml tRNA を含む溶液に48℃1 時間以上浸すことによりプレハイブリダイズした。この後ニトロセルロースフィルターを新たに調製した同溶液に浸し、32P ラベルしたプローブ(Oligo CJII)を加えて48℃で一晩ハイブリダイゼイションを行った。この後フィルターを6 ×SSC (1 ×SSC:0.15M NaCl、0.015Mクエン酸ナトリウム)と0.1%SDS を含む溶液で室温30℃、48℃5 分洗浄した後、オートラジオグラフィーを行った。4 個の強いシグナルが検出され、そのうちの1つのファージDNA を抽出し、制限酵素EcoRI で切断したところ約1.7KbpのDNA 断片が挿入されていることが判明した。挿入断片をpUC118にサブクローニングし、キロシークエンスデレーションキット(宝酒造社製)を用いてデレーションミュータントを作製し全塩基配列の決定に用いた。塩基配列は合成プライマーと色素標識ジデオキシターミネイターを用いてプライマー伸長反応を行い、自動シークエンサー(モデル370A、Applied Biosystems、Japan )で判読することにより決定した。決定されたcDNA全塩基配列を配列番号5に示す。また、オープンリーディングフレームのみの塩基配列を配列番号3に(該塩基配列がコードするアミノ酸配列を配列番号1に)、成熟Cry j IIをコードする塩基配列を配列番号4に(該塩基配列がコードするアミノ酸配列を配列番号2に)示す。
<組換えCry j IIの大腸菌での発現>
Promega 社より市販されている大腸菌発現ベクターpGEMEX-1はT7プロモーター、T7 gene10 のコーディングシークエンスおよびT7ターミネーターをもち、オープンリーディングフレームをT7 gene10 の下流のマルチクローニングサイトに挿入してT7 RNAポリメラーゼを発現する大腸菌(例BL21(DE3) )に導入することにより高発現を行うベクターである。Cry j II cDNA をBamHI (cDNAの両端に連結したアダプターはBamHI サイトを含む)で消化してcDNAフラグメントを切り出しpGEMEX-1のBamHI サイトに組み込みCry j IIの発現ベクターpEXCJII を構築した。pEXCIIはT7 gene10 発現産物(23kD)とCry j II蛋白質(50kD)との融合蛋白質(T7 Cry j II 、73kD)を発現し得る。pEXCIIを大腸菌BL21(DE3) に導入した形質転換体を培養しIPTGでT7 RNAポリメラーゼを誘導してCry j IIの発現を行った。発現した大腸菌の細胞抽出液をSDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけた。pEXCIIを保持するBL21(DE3) には、約73kDのT7 Cry j II と思われるバンドが見られた。しかし、対照のpGEMEX-1を保持するBL21(DE3) または親株BL21(DE3) には、これらのバンドは見られなかった。
<Cry j IIとT7 gene10 との融合タンパク質(T7Cry j II)のスギ花粉症患者血清との反応性>
T7 Cry j II を発現した大腸菌の抽出液を、SDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動した後、Millipore 社製PVDF膜にウェスタンブロッティング(Western Blotting)し、スギ花粉症患者5 人、健常人3 人の血清との反応性を検討した。対照としてpGEMEX-1を保持するBL21およびT7 gene10 とCry j I との融合蛋白質(T7 Cry j I)を発現したBL21の抽出液、スギ花粉より精製した天然型Cry j I を同時にブロットして反応を調べた。図2に示すように、2 人の患者血清がT7 Cry j II と反応した。2 人の患者血清ともT7 Cry j II 、天然型 Cry j Iには反応しているがpGEMEX-1を保持するBL21抽出液およびT7 Cry j Iには反応していない。これらの結果からT7Cry j IIはスギ花粉症患者血清中のIgE と反応する抗原性を持っていることが確認された。
<オーバーラップペプチドの合成>
オーバーペプチドの合成は、Peptide Synthesizer PSSM-8(島津製作所製)を用いて行なった。配列番号2に示すCry j IIの一次構造を基にして、N 末端側55番目のAla から始まり、C 末端のPro まで、10残基のオーバーラップ部分を含む15量体のオーバーラップペプチド90種類を合成した。図3〜6にアミノ酸の1文字コードを用いて、合成した全てのオーバーラップペプチドを示す。
<B 細胞株の樹立>
Ficoll-Paque比重遠心法で得た末梢血リンパ球(1 ×106 )を、約1 ×106 PFU (plaque forming units)のEpstein-Barr virus(EBV )と共に37℃で1 時間インキュベートし、ウイルスを細胞に感染させた。このウイルス感染細胞を24ウェル培養プレートに移し、100ng/mlのサイクロスポリンA の存在下で2 週間前後培養すると、B 細胞コロニーが出現してくる。この時点で半分に分け、新しいウェルに植え継いだ。順次この操作を繰り返して継代培養を行っていくと、自己増殖可能なB 細胞が出現してくる場合がある。この自己増殖B 細胞を含むウェルの細胞をイクスパンド(expand)し、増殖を確認した後、25cm2 培養フラスコに移して更に30〜50日間培養を行い、EBV によってトランスフォームされた(EBV-transformed )B 細胞株を得た。B 細胞株の一部は凍結保存した。
<Cry j II抗原特異的T 細胞ラインの樹立>
スギ花粉症患者18名末梢血からリンパ球を通常用いられているFicoll-paque比重遠心法で単離し、使用するまで液体窒素中に保存した。スギ花粉症患者の末梢血リンパ球(4 ×106 個)を、2 mlの自己の血漿20% を添加したRPMI-1640 に懸濁し、10μg/mlの大腸菌で発現させ精製した組換えCry j II抗原と共に24穴培養プレート上で7-8 日間培養した。Cry j II抗原刺激を受けて活性化された(幼弱化反応、blastogenesis )T 細胞が顕微鏡下で確認できた時点で5 Unit/ml のIL-2を添加し、一晩培養した。翌日からは、20 Unit/ml IL-2 、20% ヒトAB型血清(市販品)を添加したRPMI-1640 で毎日培養液を代えながら、9 日間培養した。この時点で、Cry j II抗原を特異的に認識する増殖したT 細胞ラインの一部を凍結保存した。さらにT 細胞ラインを上記培養液中で4 日間培養し、T 細胞エピトープの同定用の細胞とした。
<T 細胞エピトープを含むペプチドの同定>
18名の花粉症患者から樹立したT 細胞ラインについてそれぞれスギ花粉アレルゲンオーバーラップペプチドとともに培養し、Cry j II抗原特異的T 細胞エピトープを含むペプチドの同定を行った。
T 細胞ラインと同一の患者から樹立した培養B 細胞株を50μg/mlのマイトマイシンC で30分間処理し、細胞をRPMI-1640 で4 回洗浄した。このB 細胞を96穴平底プレート(96-well flat-bottomed plate )に播種(5 ×104 /well )した後、Cry j II(25μg/ml最終濃度)あるいは各オーバーラップペプチド(最終濃度0.5 μM )を各々のウェルに添加し、約60〜90分間培養した。T 細胞ライン(2 ×104 /well )を各ウェルに播種し、48時間培養の後、0.5 μl/Ci[ 3 H]チミジンをウェルに添加し、さらに16時間培養した。細胞を細胞ハーベスターを用いてガラスフィルター上に捕集し、乾燥してから、細胞内に取込まれた[ 3 H]チミジンのカウント(cpm )を液体シンチレーションカウンターで測定した。
測定はtriplicate cultureで行い、結果は、オーバーラップペプチド刺激によるT 細胞ラインの[ 3 H]チミジン取込み量(cpm )を、抗原を添加しない場合(コントロール)の[ 3 H]チミジン取込み量(cpm )で割った値である刺激係数(stimulation index; SI )で算出し、SIが2 以上の値を示したオーバーラップペプチドを、少なくとも一つのT 細胞エピトープを含むペプチドと同定した(図7及び図8)。図9は、全てのオーバーラップペプチドの「平均刺激係数」(複数の実験によって得られた刺激係数の平均値)「出現頻度(%) 」「重要度指数」を示している。
スギ花粉アレルゲンCry j IIのN 末端から10残基のアミノ酸配列(A) 。スギ花粉アレルゲンCry j IIのN 末端から10残基のアミノ酸配列から予想されるDNA 配列(B) 。スギ花粉アレルゲンCry j IIをコードするcDNAをスクリーニングするためのプローブのDNA 配列(C) 。 T7 Cry j II の抗原性を、2 名のスギ花粉症患者の血清を用いて、ウェスタンブロット法により同定した結果を示す。レーン1はpMGEMEX-1 (陰性対照)を保持するBL21(DE3) 、レーン2はT7 Cry j Iを発現したBL21(DE3) 、レーン3はT7 Cry j II を発現したBL21(DE3) 、レーン4はスギ花粉より精製したCry j I をそれぞれ示す。A 、B は血清の由来する患者が異なるのみで、他は同じである。 成熟Cry j II(配列番号2)の全アミノ酸配列をカバーするオーバーラップペプチドを示す。 成熟Cry j II(配列番号2)の全アミノ酸配列をカバーするオーバーラップペプチドを示す。 成熟Cry j II(配列番号2)の全アミノ酸配列をカバーするオーバーラップペプチドを示す。 成熟Cry j II(配列番号2)の全アミノ酸配列をカバーするオーバーラップペプチドを示す。 Cry j IIの少なくとも一つのT 細胞エピトープを含むペプチドを示す。 Cry j IIの少なくとも一つのT 細胞エピトープを含むペプチドを示す。 18名のスギ花粉症患者から樹立されたCry j IIアレルゲンに特異的なT 細胞ラインがそれぞれ認識するオーバーラップペプチドの重要度指数を示す。

Claims (6)

  1. 配列番号28(ペプチド番号37)、配列番号48(ペプチド番号68)、配列番号49(ペプチド番号69)、および配列番号50(ペプチド番号70)からなる群より選ばれるアミノ酸配列から、N末端のみにおいてアミノ酸1〜5残基が欠失している配列からなるペプチドであって、スギ花粉アレルゲンCry j IIのT細胞エピトープである前記アミノ酸配列からなるペプチドと同等のT細胞の増殖応答を引き起こすことができる、ペプチド。
  2. 配列番号29(ペプチド番号38)、配列番号49(ペプチド番号69)、配列番号50 (ペプチド番号70)、および配列番号51(ペプチド番号71)からなる群より選ばれるアミノ酸配列から、C末端のみにおいてアミノ酸1〜5残基が欠失している配列からなるペプチドであって、スギ花粉アレルゲンCry j IIのT細胞エピトープである前記アミノ酸配列からなるペプチドと同等のT細胞の増殖応答を引き起こすことができる、ペプチド。
  3. 配列番号14(ペプチド番号14)、配列番号16(ペプチド番号17)、配列番号22(ペプチド番号29)、配列番号28(ペプチド番号37)、配列番号29(ペプチド番号38)、配列番号34(ペプチド番号48)、配列番号48(ペプチド番号68)、配列番号49(ペプチド番号69)、配列番号50(ペプチド番号70)、および配列番号51(ペプチド番号71)からなる群より選ばれるアミノ酸配列からなるペプチドのN末端、および/またはC末端に、アミノ酸1〜5残基が付加されている配列からなるペプチドであって、以下の性質を有するペプチド:
    (i)前記付加されている残基は、天然のCry j 2のアミノ酸配列において前記アミノ酸配列からなるペプチドのN末端、および/またはC末端に対応する残基である。
    (ii)スギ花粉アレルゲンCry j IIのT細胞エピトープである前記アミノ酸配列からなるペプチドと同等のT細胞の増殖応答を引き起こすことができる。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載されたペプチドをコードするDNA。
  5. 請求項1〜3のいずれか一項に記載されたペプチド、またはそれらの混合物を有効成分として含有する、スギ花粉症の予防又は治療剤。
  6. 配列番号14(ペプチド番号14)、配列番号16(ペプチド番号17)、配列番号22(ペプチド番号29)、配列番号28(ペプチド番号37)、配列番号29(ペプチド番号38)、配列番号34(ペプチド番号48)、配列番号48(ペプチド番号68)、配列番号49(ペプチド番号69)、配列番号50(ペプチド番号70)、および配列番号51(ペプチド番号71)からなる群より選ばれるアミノ酸配列からなるペプチド、またはそれらの混合物を有効成分として含有する、スギ花粉症の予防又は治療剤。
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