JPH08176191A - 合成ペプチド誘導体または、その塩 - Google Patents

合成ペプチド誘導体または、その塩

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JPH08176191A
JPH08176191A JP7200175A JP20017595A JPH08176191A JP H08176191 A JPH08176191 A JP H08176191A JP 7200175 A JP7200175 A JP 7200175A JP 20017595 A JP20017595 A JP 20017595A JP H08176191 A JPH08176191 A JP H08176191A
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bmp
group
amino acid
peptide
peptide derivative
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JP7200175A
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Takashi Kurita
孝 栗田
Tomoaki Matsumoto
智明 松本
Reiko Kikuno
玲子 菊野
Yoko Hamamoto
洋子 濱本
Buraipooru Geruharudo
ゲルハルド・ブライポール
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Sanofi Aventis KK
Original Assignee
Hoechst Japan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、薬理活性をもつ新規な合成ペプチ
ド誘導体に関する。 【構成】 本発明は、以下の一般式 P−R−P (式中、Pは配列表の配列番号1のアミノ酸配列を有
するペプチド又はこれらのアナログを、Pは配列表の
配列番号2のアミノ酸配列を有するペプチド又はこれら
のアナログを、Pは前記ペプチド類P、PのN末
端に結合するリンカーを示すし、Rは前記ペプチドセ
グメントP、Pの活性に干渉することのないよう調
製されたリンカー群であればよい。)で示されるペプチ
ド誘導体又はその製薬学的に許容し得る塩に関する。さ
らに本発明は、これらのペプチド誘導体又はその製薬学
的に許容し得る塩からなる骨誘導因子アンタゴニスト様
活性を有する医薬に関する。 【効果】 異所性骨形成又は石灰沈着を伴う骨代謝性疾
患の症状を抑える医薬品の開発にとして利用することが
できる。BMPとその受容体の結合に競合するような薬
物のスクリーニングや評価系における試薬としても有用
である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、薬理活性をもつ新規な
合成ペプチド誘導体又はその塩に関する。本発明の合成
ペプチド誘導体又はその塩は、骨誘導因子アンタゴニス
ト様活性を示し、骨誘導因子アンタゴニスト活性を有す
る。本発明は、異所性石灰沈着、異所性骨形成又は石灰
沈着を伴う骨代謝性疾患、例えば、神経性骨化症、手術
侵襲よる異所性骨化、外傷性骨化性筋炎、酸素供給不足
による骨化、骨原性腫瘤、後縦靭帯骨化症、動脈硬化等
の治療、予防に有用な骨誘導因子拮抗剤にも関する。
【0002】
【従来の技術】骨誘導因子(Bone morphog
enetic protein:以降BMPと呼ぶ)
は、脱灰骨組織に含有される骨誘導活性を有する蛋白質
である。1970年代から精力的にBMPの精製が試み
られてきたが、単一の蛋白質としての分離には到ってい
ない。1989年にウォズニー(Wozney)らはB
MP活性のある画分を酵素処理して未知のペプチドを分
離してそのアミノ酸配列を手がかりに分子生物学的手法
により、BMPと考えられる遺伝子のクローニングに成
功した。この遺伝子は直ちに動物培養細胞に導入され、
発現した蛋白質の活性がインビボ(in vivo)で
測定され、この蛋白質にBMP活性が確かにあることが
証明された(Wang,E.A.et al.,(19
90)Proc Natl.Acad.Sci US
A,vol.87,p.2220−2224)。引き続
きホモロジーを利用した類似活性を有する蛋白質のクロ
ーニングが行われ、現在までBMP−2からBMP−9
まで複数の蛋白質が確認されている。これらの蛋白質は
いずれもTGF−βジーンスーパーファミリーに属し、
基本的にin vivoで異所性骨形成を引き起こす活
性を有することが確認されている。BMPによる骨形成
は内軟骨性といわれており、胎生期の長骨の形成を再現
するものと考えられている。したがって、BMPそのも
のは骨欠損部を補う形での治療薬として利用し得るもの
である。
【0003】一方、BMP遺伝子が明らかにされ、その
特異的抗体が作成されるようになってから、今日まで治
療法がなかった異所性石灰化、異所性骨化症等の発症部
位にもBMPが発現しており、これらの発症にBMPが
関与している可能性が示されるようになってきた。例え
ば、神経性骨化症、手術侵襲よる異所性骨化、外傷性骨
化性筋炎、酸素供給不足による骨化、骨原性腫瘤、特定
疾患(難病)に指定されている後縦靭帯骨化症(oss
ification of the posterio
r longitudinal ligament:以
降OPLLと呼ぶ)(Spine,17−3S,S3
3,1992)や、動脈硬化石灰化部位(J.Cli
n.Invest.,vol.91,p.1800,1
993)に、BMPが発現したり含有されたりしている
ことが近年明らかにされている。また、偽悪性転位骨化
症(pseudomalignant heterot
opic ossification:以降PHOと呼
ぶ)、偽悪性骨性腫瘍(pseudomalignan
t osseou tumor)、限局性骨化性筋炎
(myosistis ossificans cir
cumscripta)などは痛みを伴い、筋肉内に硬
組織の塊の出現が主な症状である。これらの疾患の詳細
な原因は未だ不明であるが、BMPが患者の筋肉内の硬
組織の出現に関与するものと考えられている。これら
は、本来は発現しないはずの組織でBMPが発現し、オ
ートクライン(autocrine)に作用して骨様の
硬組織が形成されるものと考えられている。
【0004】OPLLについては現在のところ有効な治
療法もなく、圧迫性の神経症状が重度であれば外科的に
切除を試みるが、予後は必ずしも良いものではない。ま
た、動脈の石灰化にしても治療法はない。BMPの発現
を抑制することが、これらの病変の治療の主要な手段の
一つと推察されるが、それ以外に、例えば、BMPアン
タゴニスト(拮抗剤)の投与も有効と考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】したがって、上記の骨
様組織の形成に関連する疾患に対する有効な治療剤が切
望されていた。BMPアンタゴニスト様活性をもつもの
としてはBMP受容体やBMPに対する中和抗体とBM
Pの結合部位に対応するペプチドなどが考えられる。本
発明はこの考え方に基づき上記の骨関連疾患に有効な新
規な合成ペプチド誘導体を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】従来からBMPの構造活
性相関について種々の検討がなされているが成熟型BM
P−2のどの部分が受容体との結合に関与するか知られ
ておらず、受容体との結合能を有するBMP−2部分ペ
プチドについても知られていない。本発明者らは、受容
体の結合部位に結合してBMPアンタゴニストとして働
くペプチドを設計する目的でBMP−2と相同な蛋白質
であるTGF−β2立体構造をもとに、BMP−2の立
体構造を類推し、受容体結合部位を推定した。
【0007】BMPの活性型はダイマーであること、及
び、受容体結合部位は蛋白質分子の外側に露出した部分
であると考えられることから、BMP−2がダイマーを
形成したときに隣接する2つのペプチド領域(BMP−
2の成熟型での各分子中の各々残基番号で22番目のA
spから38番目のTyrと61番目のAlaから77
番目のAlaまで)が受容体結合部位を形成していると
推定した。この推定に基づき、これらの2つのペプチド
を両端にカルボキシル基を有するリンカーで結合させた
本発明のペプチド誘導体を設計した。好適なリンカーと
しては、類推されたBMP−2の立体構造に類似した構
造のペプチド誘導体を構成するような二価の有機基であ
る。
【0008】本発明の合成ペプチド誘導体は次式、 P−R−P 示される。式中、Pは配列表の配列番号1のアミノ酸
配列を有するペプチド又はこれらのアナログを、P
配列表の配列番号2のアミノ酸配列を有するペプチド又
はこれらのアナログを、Rは各々のペプチドP、P
のN末端を結合するリンカーを示す。リンカーR
前記ペプチドセグメントP、Pの活性に干渉するこ
とのないよう調製された前記ペプチドセグメントを結合
するものであればよい。
【0009】好適なリンカーとしては、例えば、次式化
学式1で示されるマレイン酸イミド基を有するリンカー
又は次式化学式2で示されるジスルフィド基を有するリ
ンカー等が挙げられる。
【0010】
【化1】又は
【0011】
【化2】(式中、Rはそれぞれ独立してC〜C
アルキレン、C〜Cのシクロアルキルアルキレン、
又は、C〜Cのフェニルアルキレンを示し、R
水素、アルキル、アリール、アルカノイルアミノ、又
は、アリーロイルアミノのいずれかを示す。) 前記式で示されるリンカーR中の基RにおけるC
〜Cのアルキレンとしては、例えばメチレン、エチレ
ン、プロピレン、ブチレンなどを挙げることができ、C
〜Cのシクロアルキルアルキレンとしては、例えば
シクロヘキシルメチレン−4−イル、シクロヘキシルエ
チレン−3−イルなどを挙げることができ、C〜C
のフェニルアルキレンとしては、例えばフェニルメチレ
ン、フェニルエチレンなどを挙げることができるが、メ
チレン基、メチレン−4−シクロヘキシル基などが特に
好ましい。前記式で示されるリンカーR中の基R
おけるアルキルとしては直鎖又は分枝したものが挙げら
れ、好ましくは炭素数1〜10の低級アルキル基、より
好ましくは炭素数1〜5の低級アルキル基を挙げること
ができ、さらに具体的にはメチル基、エチル基、n−プ
ロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル
基、などを挙げることができる。アリール基としては単
環式のものや多環式のものや、環中に異項原子を有する
ものや、低級アルキルなどの鎖状の原子鎖を介して結合
するもの(例えば、ベンジル基などのアリールアルキル
基)、又は環中に置換基を有するものなどが挙げられ、
好ましくは炭素数6〜12のアリール基、より好ましく
は炭素数6〜10のアリール基を挙げることでき、さら
に具体的にはフェニル基、ナフチル基などを挙げること
ができる。アルカノイルアミノ基としては、直鎖若しく
は分枝した脂肪酸又は置換された脂肪酸から誘導される
アシル基でアシル化されたアミノ基が挙げられ、好まし
くは炭素数1〜10のアルカノイルアミノ基、より好ま
しくは炭素数1〜5のアルカノイルアミノ基を挙げるこ
とができ、さらに具体的にはアセチルアミノ基、プロピ
オニルアミノ基などを挙げることができる。アリーロイ
ルアミノ基としては、アリール基を有するカルボン酸か
ら誘導されるアシル基でアシル化されたアミノ基又はア
リールカルボン酸から誘導されるアシル基でアシル化さ
れたアミノ基が挙げられ、好ましくは炭素数7〜13の
アリーロイルアミノ基、より好ましくは炭素数7〜11
のアリーロイルアミノ基を挙げることができ、さらに具
体的にはベンゾイルアミノ基などを挙げることができ
る。基Rは、アルカノイルアミノ基が好ましく、より
具体的にはアセチルアミノ基が好ましい。
【0012】本発明におけるリンカーの好ましい例とし
ては、次式で示される、
【化3】
【0013】
【化4】 などを挙げることができる。
【0014】また、各ペプチドP,Pにおけるこれ
らのアナログとは、そのアミノ酸配列が1個又はそれ以
上のアミノ酸の置換、削除、付加によって修飾されたも
のをいう。したがって、これらのアナログは、本発明の
合成ペプチド誘導体のアミノ酸配列を、その部分配列と
して蛋白質中の一部分に持つ蛋白質を含むことは当然で
ある。更にこれらのアナログは、本発明の合成ペプチド
誘導体の主要な性質を保持する程度にこれらのアミノ酸
配列の主要な性質を持った蛋白質とも定義される。この
ような蛋白質としては、本発明のペプチドのいずれか一
方又は両者のアミノ酸配列のうちの少なくとも85%以
上、好ましくは90%以上のアミノ酸を、その部分配列
中に共通して有している蛋白質などを例として挙げるこ
とができる。
【0015】本発明のこれらのアナログとしては、アミ
ノ酸配列の修飾によってその性質が改良されたミュータ
ントと称されるものも含んでいる。本発明の合成ペプチ
ド誘導体およびアナログは、他の蛋白質と融合させて融
合蛋白質とすることができる。したがって、本発明はこ
のような融合蛋白質をもカバーする。さらにこれらのペ
プチドのアナログとしては、BMP類やTGF類のアミ
ノ酸配列を有するものを挙げることができる。より具体
的には、P及び/又はPのアミノ酸配列が、脊椎動
物、特にヒトの骨誘導因子(BMP)のアミノ酸配列の
一部に相当する配列を有するもの、又は、脊椎動物、特
にヒトの骨誘導因子−2(BMP−2)のアミノ酸配列
の一部に相当する配列を有するものを挙げることができ
る。さらに具体的には、ペプチドPのアナログの好適
なものの例としては図1に示されるようなものを挙げる
ことができ、また、ペプチドPのアナログの好適なも
のの例としては図2に示されるようなものを挙げること
ができる。これらのペプチドは、前記BMP−2の受容
体への結合箇所に相当する部分であり、BMP−2から
誘導される前記ペプチドP、ペプチドPと同等な活
性を期待することができるであろう。
【0016】アミノ酸配列については、特に明記しなけ
ればD体、L体又はラセミ体を示すものとする。本発明
は上記のアミノ酸配列で示される新規な合成ペプチド誘
導体及びその薬理学的に許容し得る塩よりなる。
【0017】本発明の合成ペプチド誘導体のBMP−2
アンタゴニスト様作用は、児玉ら(Kodama,H.
et al.(1981)Jpn.J.Oral.Bi
ol.,vol.23,p.899)によりマウス頭蓋
冠から単一株化された骨芽細胞様の性質を有するMC3
T3−E1細胞株に添加培養することにより証明され得
る。本細胞株の培養は、多久和ら(Takuwa,Y.
et al.,(1991)Biochem.Biop
hys.Res.Comuni.,vol.174,
p.96−101)による記載の方法に準じて行い、血
清アルブミンを含む無血清α−MEM培地中で1cm
当たり約5×10細胞の密度に調製された培養細胞を
種々の濃度の本発明の合成ペプチド及び組み換えヒトB
MP−2(rh−BMP−2)で2日間処理し、細胞中
のアルカリホスファターゼ活性をp−ニトロフェニルリ
ン酸を基質として用いる比色法により定量した。アルカ
リホスファターゼ(ALPase)は骨芽細胞および軟
骨細胞の分化・成熟の指標酵素としてしばしば用いられ
る(Pfeilschifter,J.,et a
l.,Endocrinology(1987),vo
l.121,p 212−218;Rodan,G.
A.,et al.,calcium regulat
ing hormones and bone met
abolism,Elsevier Science
Publishers B.V.,(1992),p
183−196)。
【0018】本発明の合成ペプチド誘導体は骨芽細胞様
の性質を有するMC3T3−El細胞株の組換えヒトB
MP−2(rh−BMP−2)により誘導されたALP
ase活性の上昇を2×10−9から2×10−6M濃
度において用量依存的に抑制した。
【0019】本発明のペプチドは、OPLLや動脈硬化
の症状の進行を抑える薬剤及びBMPが発現している骨
や軟骨の腫瘍の治療、その他骨代謝疾患の治療剤として
有用である。本発明は前記ペプチド誘導体又はその製薬
学的に許容し得る塩を含有することを特徴とする医薬組
成物に関する。また、本発明は前記ペプチド誘導体又は
その製薬学的に許容し得る塩からなる骨誘導因子(BM
P)桔抗剤に関する。さらに、本発明は前記ペプチド誘
導体又はその製薬学的に許容し得る塩からなる、異所性
骨化、異所性骨形成又は石灰沈着を伴う代謝性疾患の治
療又は予防剤に関する。その投与方法としては静脈内及
び筋肉内投与が可能であり、静脈内投与の場合は通常の
静脈内注射の他点滴静注が可能である。療法投与とし
て、本発明の合成ペプチド誘導体は、投与に適した有機
又は無機の固体又は液体形剤のような製薬学的に許容さ
れる担体を含む添加物中に前記ペプチド誘導体を含有す
るような薬剤の形態で用いられる。注射用製剤として
は、例えば注射用粉末製剤とすることができる。その場
合は、適当な水溶性賦形剤、例えばマンニトール、ショ
糖、乳糖、マルトース、ブドウ糖、フルクトース糖の1
種又は2種以上を加えて水で溶解し、バイアル又はアン
プルに分注した後、凍結乾燥し、密封して製剤とするこ
とができる。
【0020】臨床における成人1日当たりの投与量は、
投与法、患者の年齢、体重、症状等によって異なるが、
通常は本ペプチド誘導体として1〜500mgの範囲で
ある。以下に実施例により、本発明を詳述する。なお、
本発明はこれらの実施例により限定されるものではな
い。
【0021】
【実施例】
実施例1 ペプチド誘導体の合成 本発明ペプチド誘導体はApplied Biosys
tem社製430Aペプチド合成機を使った固相法によ
り合成した。試薬、溶媒は全てAppliedBios
ystem社製のものを用いた。ただし、樹脂は国産化
学(株)より購入のP−メチルベンズヒドリルアミン樹
脂を用い、リンカーとしてN−9−フルオレニルメトキ
シカルボニル−[(5−カルボキシレイトエチル−2,
4−ジメチルオキシフェニル)−4’−メトキシフェニ
ル]−メチルアミンを使用し樹脂と結合した(0.52
mmol/g)。各アミノ酸はα−アミノ基をFmoc
(9−フルオレニルオキシカルボニル)基で保護した保
護アミノ酸(1mmol/gを用いた。ただし、Fmo
c−Trp(Boc)−OHはノババイオケム社製を、
SMCC(スクシンイミヂル4−(N−マレイミドメチ
ル)−シクロヘキサン1−カルボキシレイト)はピアス
社製を4−メチルメルカプトフェノールはアルドリッチ
化学社製を使用した。リジンのε−アミノ基はBoc
(tert−ブチルオキシ)基で、セリンのβ−水酸
基、スレオニンのγ−水酸基、チロシンのp−ベンジル
水酸基、及びアスパラギン酸のβ−カルボシキル基はt
ert−ブチルで、アスパラギンのβ−アミド基、グル
タミン酸のγ−アミド基、システインのγ−メルカプト
基はトリチル基で保護してある。
【0022】(1) 配列表配列番号2で示されるフラ
グメントPの合成 ペプチド合成機でC末端から17番目のアラニンまで合
成した。ペプチドが結合した樹脂(110mg)に1m
lのN−メチルピロリンドン(NMP)を溶媒として、
SMCC(succinimidyl 4−(N−ma
leimidomethyl)cyclohexane
1−carboxylate)(50mg)を加え
(室温、15時間)反応させ、N−末端に4−(N−マ
レイミドメチル)シクロヘキサン1−カルボニル基を導
入した。その後、ペプチド樹脂(109.9mg)をT
FA処理(TFA1.8ml、4−メチルメルカプトフ
ェノール(MMP)80mg、メタノール0.2ml、
トリエチルシラン0.1ml:室温、2時間)により樹
脂からの切断と全脱保護を行い、tert−ブチルメチ
ルエーテルで結晶化した。10%酢酸に溶解し、ODS
カラムを用いた分析用高速液体クロマトグラフィー(H
PLC)により溶出位置を確認した後分取用HPLCに
より精製した。分析用HPLC(日立 L−6200シ
ステム、検出器:日立 L−4000)の溶出条件は、
カラム:Vydac Protein& Peptid
e C18(直径 4.6mm×長さ 25cm)、移
動相:0→75%アセトニトリル/0.1%TFA、4
5minグラジエント、流速:1ml/min、カラム
温度:室温、検出波長:214nmであり、一方、分取
用HPLC(Waters 600Eシステム、検出
器:Waters 484)の条件は、カラム:Vyd
ac Protein & Peptide C
18(直径 20mm×長さ 25cm) 移動相:0
→75%アセトニトリル/0.1%TFA、45min
グラジエント、流速:15ml/min、カラム温度:
室温、検出波長:230nmであった。
【0023】(2) 配列表配列番号1で示されるフラ
グメントPの合成 ペプチド合成機でC末端から17番日のアスパラギン酸
まで合成し、さらにシステインを付加した後、ジクロロ
メタン中20%無水酢酸でシステインのN末端をアセチ
ル化した。その後、ペプチド樹脂(300mg)をTF
A処理(TFA9ml、MMP 400mg、メタノー
ル 1ml、トリエチルシラン 0.1ml:室温、2
時間)で樹脂からの切断と全脱保護を行い、tert−
ブチルメチルエーテルで結晶化した。10%酢酸に溶解
し、フラグメントPと同様に、ODSカラムを用いた
分析用HPLCにより溶出位置を確認した後、分取用H
PLCにより精製した。
【0024】(3) ペプチド誘導体の合成 SMCCでN末端を修飾したフラグメントP(2.5
mg,125μmol)をジメチルホルムアミド(DM
F)0.3ml、アセトニトリル0.3ml、10%酢
酸0.1mlに溶解し、この溶液にDMF0.9ml中
に溶解したフラグメントP(5.0mg,2.40μ
mol)とEDTA(2μmol)の溶液を加えた。さ
らにフラグメントP(5.0mg、2.50μmo
l)を溶解したDMF0.5ml、アセトニトリル0.
3ml、10%酢酸0.2mlの溶液を加え、分析用H
PLCで反応の進行を確認した。反応液をそのまま分取
用HPLCで精製した。最終精製物合成ペプチド誘導体
1.5mg(0.37μmol、収率:15%を得た。
アミノ酸分析、マススペクトル分析により合成ペプチド
誘導体の構造を次式、化3で示されるものであると確認
した。
【0025】
【化3】
【0026】(4)アミノ酸分析 合成ペプチド誘導体は6NHClによる加水分解(11
0℃、24hr,4%チオグリコール酸添加)の後日立
アミノ酸分析機(Hitachi L8500)により
アミノ酸組成を調べた。結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】(5)マススペクトル分析 合成ペプチド誘導体は宝酒造(株)に依頼しマススペク
トル分析を行った。結果は理論値の分子量(MW)が4
083.65のところ、実測値ではMWが4083.2
4(±0.3)であった。
【0029】実施例2 BMP活性抑制の検定 実施例1で得られた本発明の合成ペプチド誘導体のBM
P−2アンタゴニスト様作用は、児玉ら(前述)による
マウス頭蓋冠から単一株化された骨芽細胞様の性質を有
するMC3T3−E1細胞株に添加培養することにより
検定された。本細胞株の培養は、多久和ら(前述)によ
る記載の方法に準じて行い、0.3%牛血清アルブミン
を含む無血清α−MEM培地中で1cm当たり約5×
10細胞の密度に調製された培養細胞を種々の濃度の
本発明の合成ペプチド誘導体及びrh−BMP−2で2
日間処理し、細胞中のALPase活性をp−ニトロフ
ェニルリン酸を基質として用いる比色法により定量し
た。表2に示すごとく、5ng/mlのrh−BMP−
2はMC3T3−E1細胞株中のALPase活性を非
添加対照群の約3倍に上昇させた。本発明の合成ペプチ
ド誘導体は2×10−9から2×10−6M濃度におい
て用量依存的にそのALPase活性の上昇を抑制し
た。
【0030】
【表2】
【0031】
【発明の効果】本発明の合成ペプチド誘導体は異所性骨
化や動脈硬化の症状の進行を抑える医薬品として利用で
きる。そのほかBMPを発現している骨や軟骨の腫瘍の
治療、OPLL以外の靭帯や骨周辺の軟部組織の骨化を
防止するために使用することが可能である。また、異所
性骨代謝が高進している状態、たとえばページェット病
に対し使用することにより、骨芽細胞の機能を低下させ
症状の進行を抑えられる。また、BMPから出発したペ
プチドや低分子化合物で、BMPとその受容体の結合に
競合するような薬物のスクリーニングや評価系における
試薬としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】ペプチドPのアナログをアミノ酸の一文字記
号で例示した図である。各ペプチドの左側は、そのアミ
ノ酸配列を有する蛋白質を示し、ペプチドの両端の番号
は、その蛋白質におけるアミノ酸番号を示している。図
中の「−」は、ペプチドPとのコンセンサスを比較し
て並べたときに、相当するアミノ酸が欠如していること
を示す。
【図2】ペプチドPのアナログをアミノ酸の一文字記
号で例示した図である。各ペプチドの左側は、そのアミ
ノ酸配列を有する蛋白質を示し、ペプチドの両端の番号
は、その蛋白質におけるアミノ酸番号を示している。図
中の「−」は、ペプチドPとのコンセンサスを比較し
て並べたときに、相当するアミノ酸が欠如していること
を示す。
【配列表】
【配列表】
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成7年10月11日
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】発明の詳細な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、薬理活性をもつ新規な
合成ペプチド誘導体又はその塩に関する。本発明の合成
ペプチド誘導体又はその塩は、骨誘導因子アンタゴニス
ト様活性を示し、骨誘導因子アンタゴニスト活性を有す
る。本発明は、異所性石灰沈着、異所性骨形成又は石灰
沈着を伴う骨代謝性疾患、例えば、神経性骨化症、手術
侵襲よる異所性骨化、外傷性骨化性筋炎、酸素供給不足
による骨化、骨原性腫瘤、後縦靭帯骨化症、動脈硬化等
の治療、予防に有用な骨誘導因子拮抗剤にも関する。
【0002】
【従来の技術】骨誘導因子(Bone morphog
enetic protein:以降BMPと呼ぶ)
は、脱灰骨組織に含有される骨誘導活性を有する蛋白質
である。1970年代から精力的にBMPの精製が試み
られてきたが、単一の蛋白質としての分離には到ってい
ない。1989年にウォズニー(Wozney)らはB
MP活性のある画分を酵素処理して未知のペプチドを分
離してそのアミノ酸配列を手がかりに分子生物学的手法
により、BMPと考えられる遺伝子のクローニングに成
功した。この遺伝子は直ちに動物培養細胞に導入され、
発現した蛋白質の活性がインビボ(in vivo)で
測定され、この蛋白質にBMP活性が確かにあることが
証明された(Wang,E.A.et al.,(19
90)Proc.Natl.Acad.Sci.US
A,vol.87,p.2220−2224)。引き続
きホモロジーを利用した類似活性を有する蛋白質のクロ
ーニングが行われ、現在までBMP−2からBMP−9
まで複数の蛋白質が確認されている。これらの蛋白質は
いずれもTGF−βジーンスーパーファミリーに属し、
基本的にin vivoで異所性骨形成を引き起こす活
性を有することが確認されている。BMPによる骨形成
は内軟骨性といわれており、胎生期の長骨の形成を再現
するものと考えられている。したがって、BMPそのも
のは骨欠損部を補う形での治療薬として利用し得るもの
である。
【0003】一方、BMP遺伝子が明らかにされ、その
特異的抗体が作成されるようになってから、今日まで治
療法がなかった異所性石灰化、異所性骨化症等の発症部
位にもBMPが発現しており、これらの発症にBMPが
関与している可能性が示されるようになってきた。例え
ば、神経性骨化症、手術侵襲よる異所性骨化、外傷性骨
化性筋炎、酸素供給不足による骨化、骨原性腫瘤、特定
疾患(難病)に指定されている後縦靭帯骨化症(oss
ification of the posterio
r longitudinal Iigament:以
降OPLLと呼ぶ)(Spine,17−3S,S3
3,1992)や、動脈硬化石灰化部位(J.Cli
n.Invest.,vol.91,p.1800,1
993)に、BMPが発現したり含有されたりしている
ことが近年明らかにされている。また、偽悪性転位骨化
症(pseudomalignant heterot
opic ossification:以降PHOと呼
ぶ)、偽悪性骨性腫瘍(pseudomalignan
t osseous tumor)、限局性骨化性筋炎
(myosistis ossificans cir
cumscripta)などは痛みを伴い、筋肉内に硬
組織の塊の出現が主な症状である。これらの疾患の詳細
な原因は未だ不明であるが、BMPが患者の筋肉内の硬
組織の出現に関与するものと考えられている。これら
は、本来は発現しないはずの組織でBMPが発現し、オ
ートクライン(autocrine)に作用して骨様の
硬組織が形成されるものと考えられている。
【0004】OPLLについては現在のところ有効な治
療法もなく、圧迫性の神経症状が重度であれば外科的に
切除を試みるが、予後は必ずしも良いものではない。ま
た、動脈の石灰化にしても治療法はない。BMPの発現
を抑制することが、これらの病変の治療の主要な手段の
一つと推察されるが、それ以外に、例えば、BMPアン
タゴニスト(拮抗剤)の投与も有効と考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】したがって、上記の骨
様組織の形成に関連する疾患に対する有効な治療剤が切
望されていた。BMPアンタゴニスト様活性をもつもの
としてはBMP受容体やBMPに対する中和抗体とBM
Pの結合部位に対応するペプチドなどが考えられる。本
発明はこの考え方に基づき上記の骨関連疾患に有効な新
規な合成ペプチド誘導体を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】従来からBMPの構造活
性相関について種々の検討がなされているが成熟型BM
P−2のどの部分が受容体との結合に関与するか知られ
ておらず、受容体との結合能を有するBMP−2部分ペ
プチペについても知られていない。本発明者らは、受容
体の結合部位に結合してBMPアンタゴニストとして働
くペプチドを設計する目的でBMP−2と相同な蛋白質
であるTGF−β2立体構造をもとに、BMP−2の立
体構造を類推し、受容体結合部位を推定した。
【0007】BMPの活性型はダイマーであること、及
び、受容体結合部位は蛋白質分子の外側に露出した部分
であると考えられることから、BMP−2がダイマーを
形成したときに隣接する2つのペプチド領域(BMP−
2の成熟型での各分子中の各々残基番号で22番目のA
spから38番目のTyrと61番目のAlから77
番目のAlaまで)が受容体結合部位を形成していると
推定した。この推定に基づき、これらの2つのペプチド
を両端にカルボキシル基を有するリンカーで結合させた
本発明のペプチド誘導体を設計した。好適なリンカーと
しては、類推されたBMP−2の立体構造に類似した構
造のペプチド誘導体を構成するような二価の有機基であ
る。
【0008】本発明の合成ペプチド誘導体は次式、 P−R−P で示される。式中、Pは配列表の配列番号1のアミノ
酸配列を有するペプチド又はこれらのアナログを、P
は配列表の配列番号2のアミノ酸配列を有するペプチド
又はこれらのアナログを、Rは各々のペプチドP
のN末端を結合するリンカーを示す。リンカーR
は前記ペプチドセグメントP、Pの活性に干渉する
ことのないよう調製された前記ペプチドセグメントを結
合するものであればよい。
【0009】好適なリンカーとしては、例えば、次式化
学式1で示されるマレイン酸イミド基を有するリンカー
又は次式化学式2で示されるジスルフィド基を有するリ
ンカー等が挙げられる。
【0010】
【化1】 又は
【0011】
【化2】 (式中、Rはそれぞれ独立してC〜Cのアルキレ
ン、C〜Cのシクロアルキルアルキレン、又は、C
〜Cのフェニルアルキレンを示し、Rは水素、ア
ルキル、アリール、アルカノイルアミノ、又は、アリー
ロイルアミノのいずれかを示す。) 前記式で示されるリンカーR中+の基RにおけるC
〜Cのアルキレンとしては、例えばメチレン、エチ
レン、プロピレン、ブチレンなどを挙げることができ、
〜Cのシクロアルキルアルキレンとしては、例え
ばシクロヘキシルメチレン−4−イル、シクロヘキシル
エチレン−3−イルなどを挙げることができ、C〜C
のフェニルアルキレンとしては、例えばフェニルメチ
レン、フェニルエチレンなどを挙げることができるが、
メチレン基、メチレン−4−シクロヘキシル基などが特
に好ましい。前記式で示されるリンカーR+の基R
におけるアルキルとしては直鎖又は分枝したものが挙げ
られ、好ましくは炭素数1〜10の低級アルキル基、よ
り好ましくは炭素数1〜5の低級アルキル基を挙げるこ
とができ、さらに具体的にはメチル基、エチル基、n−
プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチ
ル基、などを挙げることができる。アリール基としては
単環式のものや多環式のものや、環中に異項原子を有す
るものや、低級アルキルなどの鎖状の原子鎖を介して結
合するもの(例えば、ベンジル基などのアリールアルキ
ル基)、又は環中に置換基を有するものなどが挙げら
れ、好ましくは炭素数6〜12のアリール基、より好ま
しくは炭素数6〜10のアリール基を挙げることでき、
さらに具体的にはフェニル基、ナフチル基などを挙げる
ことができる。アルカノイルアミノ基としては、直鎖若
しくは分枝した脂肪酸又は置換された脂肪酸から誘導さ
れるアシル基でアシル化されたアミノ基が挙げられ、好
ましくは炭素数1〜10のアルカノイルアミノ基、より
好ましくは炭素数1〜5のアルカノイルアミノ基を挙げ
ることができ、さらに具体的にはアセチルアミノ基、プ
ロピオニルアミノ基などを挙げることができる。アリー
ロイルアミノ基としては、アリール基を有するカルボン
酸から誘導されるアシル基でアシル化されたアミノ基又
はアリールカルボン酸から誘導されるアシル基でアシル
化されたアミノ基が挙げられ、好ましくは炭素数7〜1
3のアリーロイルアミノ基、より好ましくは炭素数7〜
11のアリーロイルアミノ基を挙げることができ、さら
に具体的にはベンゾイルアミノ基などを挙げることでき
る。基Rは、アルカノイルアミノ基が好ましく、より
具体的にはアセチルアミノ基が好ましい。
【0012】本発明におけるリンカーの好ましい例とし
ては、次式で示される、
【化3】
【0013】
【化4】 などを挙げることができる。
【0014】また、各ペプチドP,Pにおけるこれ
らのアナログとは、そのアミノ酸配列が1個又はそれ以
上のアミノ酸の置換、削除、付加によって修飾されたも
のをいう。したがって、これらのアナログは、本発明の
合成ペプチド誘導体のアミノ酸配列を、その部分配列と
して蛋白質中の一部分に持つ蛋白質を含むことは当然で
ある。更にこれらのアナログは、本発明の合成ペプチド
誘導体の主要な性質を保持する程度にこれらのアミノ酸
配列の主要な性質を持った蛋白質とも定義される。この
ような蛋白質としては、本発明のペプチドのいずれか一
方又は両者のアミノ酸配列のうちの少なくとも85%以
上、好ましくは90%以上のアミノ酸を、その部分配列
中に共通して有している蛋白質などを例として挙げるこ
とができる。
【0015】本発明のこれらのアナログとしては、アミ
ノ酸配列の修飾によってその性質が改良されたミュータ
ントと称されるものも含んでいる。本発明の合成ペプチ
ド誘導体およびアナログは、他の蛋白質と融合させて融
合蛋白質とすることができる。したがって、本発明はこ
のような融合蛋白質をもカバーする。さらにこれらのペ
プチドのアナログとしては、BMP類やTGF類のアミ
ノ酸配列を有するものを挙げることができる。より具体
的には、P及び/又はPのアミノ酸配列が、脊椎動
物、特にヒトの骨誘導因子(BMP)のアミノ酸配列の
一部に相当する配列を有するもの、又は、脊椎動物、特
にヒトの骨誘導因子−2(BMP−2)のアミノ酸配列
の一部に相当する配列を有するものを挙げることができ
る。さらに具体的には、ペプチドPのアナログの好適
なものの例としては図1に示されるようなものを挙げる
ことができ、また、ペプチドPのアナログの好適なも
のの例としては図2に示されるようなものを挙げること
ができる。これらのペプチドは、前記BMP−2の受容
体への結合箇所に相当する部分であり、BMP−2から
誘導される前記ペプチドP、プチドPと同等な活性
を期待することができるであろう。
【0016】アミノ酸配列については、特に明記しなけ
ればD体、L体又はラセミ体を示すものとする。本発明
は上記のアミノ酸配列で示される新規な合成ペプチド誘
導体及びその薬理学的に許容し得る塩よりなる。
【0017】本発明の合成ペプチド誘導体のBMP−2
アンタゴニスト様作用は、児玉ら(Kodama,H.
et al.(1981)Jpn.J.Oral.Bi
ol.,vol.23,p.899)によりマウス頭蓋
冠から単一株化された骨芽細胞様の性質を有するMC3
T3−E1細胞株に添加培養することにより証明され得
る。本細胞株の培養は、多久和ら(Takuwa,Y.
et al.,(1991)Biochem.Biop
hys.Res.Comuni.,vol.174,
p.96−101)による記載の方法に準じて行い、血
清アルブミンを含む無血清α−MEM培地中で1cm
当たり約5×10細胞の密度に調製された培養細胞を
種々の濃度の本発明の合成ペプチド及び組み換えヒトB
MP−2(rh−BMP−2)で2日間処理し、細胞中
のアルカリホスファターゼ活性をp−ニトロフェニルリ
ン酸を基質として用いる比色法により定量した。アルカ
リホスファターゼ(ALPase)は骨芽細胞および軟
骨細胞の分化・成熟の指標酵素としてしばしば用いられ
る(Pfeilschfter,J.,et al.,
Endocrinology(1987),vol.1
21,p 212−218;Rodan,G.A.,e
t al.,calciumregulating h
ormones and bone metaboli
sm,Elsevier Science Publi
shers B.V.,(1992),p 183−1
96)。
【0018】本発明の合成ペプチド誘導体は骨芽細胞様
の性質を有するMC3T3−E1細胞株の組換えヒトB
MP−2(rh−BMP−2)により誘導されたALP
ase活性の上昇を2×10−9から2×10−6M濃
度において用量依存的に抑制した。
【0019】本発明のペプチドは、OPLLや動脈硬化
の症状の進行を抑える薬剤及びBMPが発現している骨
や軟骨の腫瘍の治療、その他骨代謝疾患の治療剤として
有用である。本発明は前記ペプチド誘導体又はその製薬
学的に許容し得る塩を含有することを特徴とする医薬組
成物に関する。また、本発明は前記ペプチド誘導体又は
その製薬学的に許容し得る塩からなる骨誘導因子(BM
P)拮抗剤に関する。さらに、本発明は前記ペプチド誘
導体又はその製薬学的に許容し得る塩からなる、異所性
骨化、異所性骨形成又は石灰沈着を伴う代謝性疾患の治
療又は予防剤に関する。その投与方法としては静脈内及
び筋肉内投与が可能であり、静脈内投与の場合は通常の
静脈内注射の他点滴静注が可能である。療法投与とし
て、本発明の合成ペプチド誘導体は、投与に適した有機
又は無機の固体又は液体形剤のような製薬学的に許容さ
れる担体を含む添加物中に前記ペプチド誘導体を含有す
るような薬剤の形態で用いられる。注射用製剤として
は、例えば注射用粉末製剤とすることができる。その場
合は、適当な水溶性賦形剤、例えばマンニトール、ショ
糖、乳糖、マルトース、ブドウ糖、フルクトース糖の1
種又は2種以上を加えて水で溶解し、バイアル又はアン
プルに分注した後、凍結乾燥し、密封して製剤とするこ
とができる。
【0020】臨床における成人1日当たりの投与量は、
投与法、患者の年齢、体重、症状等によって異なるが、
通常は本ペプチド誘導体として1〜500mgの範囲で
ある。以下に実施例により、本発明を詳述する。なお、
本発明はこれらの実施例により限定されるものではな
い。
【0021】
【実施例】 実施例1 ペプチド誘導体の合成 本発明ペプチド誘導体はApplied Biosys
tem社製430Aペプチド合成機を使った固相法によ
り合成した。試薬、溶媒は全てAppliedBios
ystem社製のものを用いた。ただし、樹脂は国産化
学(株)より購入のP−メチルベンズヒドリルアミン樹
脂を用い、リンカーとしてN−9−フルオレニルメトキ
シカルボニルー[(5−カルボキシレイトエチル−2,
4−ジメチルオキシフェニル)−4’−メトキシフェニ
ル]−メチルアミンを使用し樹脂と結合した(0.52
mmol/g)。各アミノ酸はα−アミノ基をFmoc
(9−フルオレニルオキシカルボニル)基で保護した保
護アミノ酸(1 mmol/g)を用いた。ただし、F
moc−Trp(Boc)−OHはノババイオケム社製
を、SMCC(スクシンイミヂル4−(N−マレイミド
メチル)−シクロヘキサン1−カルボキシレイト)はピ
アス社製を4−メチルメルカプトフェノールはアルドリ
ッチ化学社製を使用した。リジンのε−アミノ基はBo
c(tert−ブチルオキシ)基で、セリンのβ−水酸
基、スレオニンのγ−水酸基、チロシンのp−ベンジル
水酸基、及びアスパラギン酸のβ−カルボシキル基はt
ert−ブチルで、アスパラギンのβ−アミド基、グル
タミン酸のγ−アミド基、システインのγ−メルカプト
基はトリチル基で保護してある。
【0022】(1) 配列表配列番号2で示されるフラ
グメントPの合成 ペプチド合成機でC末端から17番目のアラニンまで合
成した。ペプチドがした樹脂(110mg)に1 ml
のN−メチルピロリンドン(NMP)を溶媒として、S
MCC(succinimidyl 4−(N−mal
eimidomethyl)cyclohexane
1−carboxylate)(50mg)を加え(室
温、15時間)反応させ、N−末端に4−(N−マレイ
ミドメチル)シクロヘキサン1−カルボニル基を導入し
た。その後、ペプチド樹脂(109.9mg)をTFA
処理 (TFA1.8ml、4−メチルメルカプトフェ
ノール(MMP)80mg、メタノール0.2ml、ト
リエチルシラン0.1ml:室温、2時間)により樹脂
からの切断と全脱保護を行い、tert−ブチルメチル
エーテルで結晶化した。10%酢酸に溶解、ODSカラ
ムを用いた分析用高速液体クロマトグラフィー(HPL
C)により溶出位置を確認した後分取用HPLCにより
精製した。分析用HPLC(日立L−6200システ
ム、検出器:日立L−4000))の溶出条件は、カラ
ム:Vydac Protein& Peptide
18(直径4.6mm×長さ25cm)、移動相:0
→75%アセトニトリル/0.1%TFA、 45mi
nグラジエント、流速:1ml/min、カラム温度:
室温、検出波長:214nmであり、一方、分取用HP
LC(Waters 600Eシステム、検出器:Wa
ters 484)の条件は、カラム:Vydac P
rotein & Peptide C18(直径20
mm× 長さ25cm)移動相:0→75%アセトニト
リル/0.1%TFA、45 minグラジエント、流
速:15ml/min、カラム温度:室温、検出波長:
230nmであった。
【0023】(2) 配列表配列番号1で示されるフラ
グメントP合成 ペプチド合成機でC末端から17番目のアスパラギン酸
まで合成し、さらにシステインを付加した後、ジクロロ
メタン中20%無水酢酸でシステインのN末端をアセチ
ル化した。その後、ペプチド樹脂(300mg)をTF
A処理(TFA9ml、MMP400mg、メタノール
1ml、トリエチルシラン0.1ml:室温、2時間)
で樹脂からの切断と全脱保護を行い、tert−ブチル
メチルエーテルで結晶化した。10%酢酸に溶解し、フ
ラグメントPと同様に、ODSカラムを用いた分析用
HPLCにより溶出位置を確認した後、分取用HPLC
により精製した。
【0024】(3) ペプチド誘導体の合成 SMCCでN末端を修飾したフラグメントP(2.5
mg、1.25μmol)をジメチルホルムアミド(D
MF)0.3ml、アセトニトリル0.3ml、10%
酢酸0.1mlに溶解し、この溶液にDHF0.9ml
中に溶解したフラグメントP(5.0mg、2.40
μmol)とEDTA(2μmol)の溶液を加えた。
さらにフラグメントP(5.0mg,2.50μmo
l)を溶解したDMF0.5ml、アセトニトリル0.
3ml、10%酢酸0.2mlの溶液を加え、分析用H
PLCで反応の進行を確認した。反応液をそのまま分取
用HPLCで精製した。最終精製物合成ペプチド誘導体
1.5mg(0.37μmol、収率:15%)を得
た。アミノ酸分析、マススペクトル分析により合成ペプ
チド誘導体の構造を次式、化3で示されるものであると
確認した。
【0025】
【化3】
【0026】(4)アミノ酸分析 合成ペプチド誘導体は6NHClによる加水分解(11
0℃、24hr,4%チオグリコール酸添加)の後日立
アミノ酸分析機(Hitachi L8500)により
アミノ酸組成を調べた。結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】(5)マススペクトル分析 合成ペプチド誘導体は宝酒造(株)に依頼しマススペク
トル分析を行った。結果は理論値の分子量(MW)が4
083.65のところ、実測値ではMWが4083.2
4(±0.3)であった。
【0029】実施例2 BMP活性抑制の検定 実施例1で得られた本発明の合成ペプチド誘導体のBM
P−2アンタゴニスト様作用は、児玉ら(前述)による
マウス頭蓋冠から単一株化された骨芽細胞様の性質を有
するMC3T3−E1細胞株に添加培養することにより
検定された。本細胞株の培養は、多久和ら(前述)によ
る記載の方法に準じて行い、0.3%血清アルブミンを
含む無血清α−MEM培地中で1cm当たり約5×1
細胞の密度に調製された培養細胞を種々の濃度の本
発明の合成ペプチド誘導体及びrh−BMP−2で2日
間処理し、細胞中のALPase活性をp−ニトロフェ
ニルリン酸を基質として用いる比色法により定量した。
表2に示すごとく、5ng/mlのrh−BMP−2は
MC3T3−E1細胞株中のALPase活性を非添加
対照群の約3倍に上昇させた。本発明の合成ペプチド誘
導体は2×10−9から2×10−6M濃度において用
量依存的にそのALPase活性の上昇を抑制した。
【0030】
【表2】
【0031】
【発明の効果】本発明の合成ペプチド誘導体は異所性骨
化や動脈硬化の症状の進行を抑える医薬品として利用で
きる。そのほかBMPを発現している骨や軟骨の腫瘍の
治療、OPLL以外の靭帯や骨周辺の軟部組織の骨化を
防止するために使用することが可能である。また、異所
性骨代謝が高進している状態、たとえばページェット病
に対し使用することにより、骨芽細胞の機能を低下させ
症状の進行を抑えられる。また、BMPから出発したペ
プチドや低分子化合物で、BMPとその受容体の結合に
競合するような薬物のスクリーニングや評価系における
試薬としても有用である。
【0032】
【配列表】
【0033】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図面の簡単な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【図面の簡単な説明】
【図1】ペプチドPのアナログをアミノ酸の一文字記
号で例示した図である。各ペプチドの左側は、そのアミ
ノ酸配列を有する蛋白質を示し、ペプチドの両端の番号
は、その蛋白質におけるアミノ酸番号を示している。図
中の「−」は、ペプチドPとのコンセンサスを比較し
て並べたときに、相当するアミノ酸が欠如していること
を示す。
【図2】ペプチドPのアナログをアミノ酸の一文字記
号で例示した図である。各ペプチドの左側は、そのアミ
ノ酸配列を有する蛋白質を示し、ペプチドの両端の番号
は、その蛋白質におけるアミノ酸番号を示している。図
中の「−」は、ペプチドPとのコンセンサスを比較し
て並べたときに、相当するアミノ酸が欠如していること
を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 A61K 38/00 ADD C07K 14/51 8318−4H A61K 37/02 ADD (72)発明者 濱本 洋子 埼玉県川越市南台1丁目3番2号 ヘキス トジャパン株式会社医薬研究開発本部内 (72)発明者 ゲルハルド・ブライポール ドイツ国フランクフルトアムメインディ− 65926 ヘキスト・アクチェンゲゼルシャ フト ゼネラルファーマリサーチ内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】以下の一般式 P−R−P (式中、Pは配列表の配列番号1のアミノ酸配列を有
    するペプチド又はこれらのアナログ、Pは配列表の配
    列番号2のアミノ酸配列を有するペプチド又はこれらの
    アナログ、Rは前記ペプチド類のN末端に結合し得る
    両端にカルボキシル基を有する有機基からなるリンカー
    を示す。)で示されるペプチド誘導体又はその製薬学的
    に許容し得る塩。
  2. 【請求項2】 リンカーRが次式 【化1】 又は 【化2】 (式中、Rはそれぞれ独立してC〜Cのアルキレ
    ン、C〜Cのシクロアルキルアルキレン、又は、C
    〜Cのフェニルアルキレンを示し、Rは水素、ア
    ルキル、アリール、アルカノイルアミノ、又は、アリー
    ロイルアミノのいずれかを示す。)で示され、前記各ペ
    プチドP及びPの活性に干渉することのない性質を
    有し得る基である請求項1のペプチド誘導体又はその製
    薬学的に許容し得る塩。
  3. 【請求項3】 P及び/又はPのアミノ酸配列が、
    脊椎動物、特にヒトの骨誘導因子(BMP)のアミノ酸
    配列の一部に相当する配列を有する請求項1又は2に記
    載のペプチド誘導体又はその製薬学的に許容し得る塩。
  4. 【請求項4】 P及び/又はPのアミノ酸配列が、
    脊椎動物、特にヒトの骨誘導因子−2(BMP−2)の
    アミノ酸配列の一部に相当する配列を有する請求項1、
    2又は3に記載のペプチド誘導体又はその製薬学的に許
    容し得る塩。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載のペプチ
    ド誘導体又はその製薬学的に許容し得る塩を含有するこ
    とを特徴とする医薬組成物。
  6. 【請求項6】 請求項1〜4のいずれかに記載のペプチ
    ド誘導体又はその製薬学的に許容し得る塩からなる骨誘
    導因子(BMP)拮抗剤。
  7. 【請求項7】 請求項1から4のいずれかに記載のペプ
    チド誘導体からなる、異所性骨化、異所性骨形成又は石
    灰沈着を伴う代謝性疾患の治療又は予防剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008538315A (ja) * 2005-04-12 2008-10-23 ウォーソー・オーソペディック・インコーポレーテッド 関節形成性人工円板の運動能力を保存する方法およびデバイス

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