JPH08174309A - 硬質膜被覆切削工具および硬質膜被覆切削工具の製造方法 - Google Patents

硬質膜被覆切削工具および硬質膜被覆切削工具の製造方法

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JPH08174309A
JPH08174309A JP33509194A JP33509194A JPH08174309A JP H08174309 A JPH08174309 A JP H08174309A JP 33509194 A JP33509194 A JP 33509194A JP 33509194 A JP33509194 A JP 33509194A JP H08174309 A JPH08174309 A JP H08174309A
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hard film
coated
hard
cutting edge
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JP33509194A
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English (en)
Inventor
Tsutomu Masuko
努 増子
Kunio Komaki
邦雄 小巻
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Resonac Holdings Corp
Original Assignee
Showa Denko KK
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 刃先の耐欠損性を向上し、耐摩耗性と耐欠損
性に優れ、安定した切削特性を有し、長寿命化を図るこ
とができる硬質膜被覆切削工具を提供する。 【構成】 基体である切削工具11の刃先のすくい面1
1aと逃げ面11bとに、ダイヤモンドを主体とする膜
又は立方晶窒化硼素(cBN)を主体とする膜の少なく
とも一つの膜を第1硬質膜13としてコーティングし、
刃先のすくい面と逃げ面との境界部近傍に、すくい面の
第1硬質膜と逃げ面の第1硬質膜とを不連続にする皮膜
不連続部14を形成し、該皮膜不連続部にダイヤモンド
膜を第2硬質膜15としてを改めてコーティングした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、切削工具の母材表面に
硬質膜を被覆した硬質膜被覆切削工具に関するもので、
特に刃先の耐摩耗性、耐欠損性を改善したものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、超硬合金製の切削工具の母材
表面に、ダイヤモンド,炭化チタン(TiC)、窒化チ
タン(TiN)又はアルミナ(Al23 )等を主体と
する硬質膜を、化学気相蒸着法(CVD法)や物理気相
蒸着法(PVD法)によりコーティングして、切削工具
の長寿命化が図られている。また、切削工具の母材表面
に、立方晶窒化硼素(cBN)を主体とする硬質膜をコ
ーティングすることも提案されている。このように、切
削工具の母材表面に硬質膜をコーティングすると、母材
のみの場合に比べて耐摩耗性が向上するので、切削工具
の長寿命化が達成される。しかしながら、これらの硬質
膜は靱性が低いので、断続切削等の大きな衝撃が加わる
切削加工では、切削工具の刃先部分の硬質膜が欠損しや
すいという欠点があった。この硬質膜の欠損を防止する
ために、例えば特開平1−51202号公報に記載され
ているように、母材の切刃部に、所定量のホーニング加
工を施した後、このホーニング加工を施した母材表面に
気相合成法によりダイヤモンド薄膜被覆層を設けたダイ
ヤモンドコーティング切削工具が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記し
たダイヤモンドコーティング切削工具も硬質膜の欠損防
止にある程度の効果はあるが、依然として充分な耐欠損
性を得るには到っていない。また、このダイヤモンドコ
ーティング切削工具を含めて、従来の母材表面に硬質膜
を被覆した切削工具は、超硬合金等の母材に比べて、優
れた耐摩耗性を示すが、靱性に劣る場合が多い。したが
って、断続切削等の大きな衝撃の掛かる切削加工を行う
と、母材に比して硬質膜が欠損しやすいという問題があ
った。そして、硬質膜が欠損すると、欠損部分と隣接す
る硬質膜も広範囲に渡って剥離することがある。場合に
よっては、硬質膜に生じたクラックが母材にまで伝播す
ることがあり、コーティングを施していない場合に比べ
て、母材自体の欠損も起こり易くなるという問題があっ
た。
【0004】本願発明者は、硬質膜の欠損原因を考察す
べく、その欠損がどこから生じるのかを探究した。その
結果、図6に示すように、切削工具1の母材2のすくい
面Aと逃げ面Bとに硬質膜3をコーティングした場合、
切削加工に寄与している刃先部分のすくい面Aと逃げ面
Bとの境界部近傍にコーティングした硬質膜交合部4か
ら欠損が発生する頻度が非常に多いことが判明した。欠
損が発生する原因として、この硬質膜交合部4は、他の
部位に比べて切削時に大きな力が掛かること、切削方向
に対する母材2の支持が弱いこと、又、硬質膜自体に残
留している応力が集中しやすいこと等が考えられる。
【0005】そこで本発明は、上記欠損部分の起因とな
る部位に改良を加えることにより、刃先の耐欠損性を向
上し、耐摩耗性と耐欠損性との双方に優れ、安定した切
削特性を有し、長寿命化を図ることができる硬質膜被覆
切削工具を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成するために提案されたものであり、基体である切削工
具の刃先のすくい面と逃げ面とに、ダイヤモンドを主体
とする膜または立方晶窒化硼素(cBN)を主体とする
膜の少なくとも一つの膜を第1硬質膜としてコーティン
グした硬質膜被覆切削工具であって、上記刃先のすくい
面と逃げ面との境界部近傍に、すくい面の第1硬質膜と
逃げ面の第1硬質膜とを不連続にする皮膜不連続部を形
成し、該皮膜不連続部に第2硬質膜を改めてコーティン
グしたことを特徴とする硬質膜被覆切削工具である。
【0007】そして、第2硬質膜の表面と第1硬質膜の
境界部の段差は平均して30μm以下に加工することが
好ましい。
【0008】また、皮膜不連続部は、刃先の切れ刃稜を
母材が露出するようにホーニング加工を施すことにより
形成することが好ましい。
【0009】第2硬質膜は、炭化チタン(TiC)、窒
化チタン(TiN)、アルミナ(Al23 )、非晶質
カーボン、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、ダ
イヤモンド、立方晶窒化硼素(cBN)の内の少なくと
も一つを含む。
【0010】請求項5に記載の発明は、切削加工に寄与
する刃先のすくい面と逃げ面とに、ダイヤモンドを主体
とする膜または立方晶窒化硼素(cBN)を主体とする
膜の少なくとも一つの膜を第1硬質膜としてコーティン
グする工程と、上記刃先のすくい面と逃げ面との境界部
近傍に、すくい面の第1硬質膜と逃げ面の第1硬質膜と
を不連続にする皮膜不連続部を形成する工程と、該皮膜
不連続部に第2硬質膜をコーティングする工程と、から
なることを特徴とする硬質膜被覆切削工具の製造方法で
ある。
【0011】請求項5の構成に加えて、皮膜不連続部に
第2硬質膜をコーティングする工程で、第2硬質膜の表
面と第1硬質膜の境界部の段差が平均して30μm以下
になるように第2硬質膜をコーティングすることが好ま
しい。
【0012】
【作用】硬質膜被覆切削工具は、刃先のすくい面と逃げ
面との境界部近傍にコーティングした硬質膜交合部から
欠損することが生じることが多いが、本発明は、刃先の
すくい面と逃げ面との境界部近傍に皮膜不連続部を形成
することにより、すくい面の硬質膜と逃げ面の各第1硬
質膜とを不連続にしたので、第1硬質膜自体に残留して
いる応力を緩和でき、また、上記皮膜不連続部に第2硬
質膜を改めてコーティングしたので、刃先において硬質
膜の母材による支持が強くなって、母材と硬質膜の剥離
や被削材の刃先への融着などが抑制され、欠損の起点も
減少する。したがって、前記の欠損原因を除去すること
ができ、刃先の耐欠損性が向上して刃先の総合的な耐久
性が向上する。これらにより、硬質膜被覆切削工具の刃
先の耐欠損性を最大限に高めるとともに、充分に耐摩耗
性を向上させることができるし、切削時に大きな力が掛
かっても、硬質膜が欠損し難くなる。
【0013】
【実施例】以下、本発明に係る硬質膜被覆切削工具の実
施例を製造方法と共に図面に基づいて説明する。図1
は、各隅角部上端が刃先となるチップ形状の硬質膜被覆
切削工具11を示すものであり、図1(a)中、11a
はすくい面、11bは逃げ面、11cは切れ刃稜、図1
(b),(c)中、12はホーニング加工を施す部分で
ある。このように、本実施例では1つのチップに4つの
刃先を形成し、チップの取付方向を変換することによっ
て各刃先を選択して使用することができる。
【0014】次に、刃先の構成について説明する。図2
(a)〜(h)に示すように、基体である切削工具11
の刃先のすくい面11aと逃げ面11bに第1硬質膜1
3をコーティング(第1膜形成工程)し、このすくい面
11aと逃げ面11bとの境界部近傍には、すくい面1
1aの第1硬質膜13と逃げ面11bの第1硬質膜13
とが不連続となる皮膜不連続部14を形成(不連続部形
成工程)し、この皮膜不連続部14の存在により、第1
硬質膜13の残留応力を緩和する。そして、この皮膜不
連続部14に第2硬質膜15を改めてコーティング(第
2膜形成工程)する。この場合、図2(a)〜(e)に
示すように、第1硬質膜13に第2硬質膜15を一部ラ
ップさせてコーティングしてもよいし、或は図2(f)
〜(h)に示すように、第1硬質膜13にラップしない
ようにして第2硬質膜15をコーティングしてもよい。
【0015】前記のようにして、第1硬質膜13及び第
2硬質膜15をしっかりと支持することで、切削工具1
1の刃先の靱性を高めて、耐欠損性を向上させる。な
お、本願における「基体」とは、硬質膜をコーティング
する前の状態の母材すべてを含み、例えば母材に既にコ
ーティングが施されている場合には、このコーティング
膜も含めて基体とする。また、「すくい面と逃げ面との
境界部近傍」とは、すくい面11aと逃げ面11bとに
挟まれている切れ刃稜11c、ホーニング部分及びそれ
らの部分に隣接している領域を含むものである。
【0016】本発明に採用する第1硬質膜13の材質
は、耐摩耗性に優れているが耐欠損性に問題のあるダイ
ヤモンドや立方晶窒化硼素(cBN)を主成分とする膜
を採用すると、本発明の効果は絶大である。
【0017】また、第2硬質膜15の材質は、特に限定
されないが、炭化チタン(TiC)、窒化チタン(Ti
N)、アルミナ(Al23 )、非晶質カーボン、ダイ
ヤモンドライクカーボン(DLC)、ダイヤモンド、立
方晶窒化硼素(cBN)を採用することが望ましい。な
お、第2硬質膜15にダイヤモンド、立方晶窒化硼素を
再び使用して第1硬質膜13の材質と同一になっても耐
欠損が高まり、効果的である。これは、第1硬質膜13
をコーティングして刃先陵近傍に皮膜不連続部14を形
成することにより第1硬質膜13の残留応力が緩和され
るため、第1硬質膜13と第2硬質膜15が同一組織の
膜であっても、第2硬質膜15の支持は強化され、一体
コーティングした場合に比較して高い機械特性が得られ
る。
【0018】上記した皮膜不連続部14を形成するに
は、母材15の表面の目的部位に、予めマスキングを行
ったり、或いは第1硬質膜13の析出し難い物質を存在
させるなどして、第1硬質膜13をコーティングする。
また、母材16の表面に第1硬質膜13をコーティング
した後、目的部位の第1硬質膜13のみを研磨するなど
して除去してもよい。
【0019】さらに、第1硬質膜13の皮膜不連続部1
4を母材16でしっかり支持するために、皮膜不連続部
14を形成したい母材16の表面に予め凸部を形成して
おき、この凸部に隣接する部位に第1硬質膜13をコー
ティングした後、凸部を研磨等により除去し、母材16
の露出部と第1硬質膜13とを同一平面もしくはそれに
近い状態に仕上げてもよい(一例として図2(a))。
【0020】しかし、最も簡単かつ効果的な方法として
は、図3に示すように、切削工具11の刃先のすくい面
11a及び逃げ面11bに第1硬質膜13をコーティン
グした後、母材16が露出するように、チャンファーホ
ーニング加工または丸ホーニング加工のいずれか又はこ
れらを組み合わせて、切れ刃稜11cを加工するとよ
い。なお、図3(a)は、チャンファーホーニング加工
した刃先を示し、(b)は、丸ホーニング加工した刃先
を示す。
【0021】このようなホーニング加工を施すと、母材
16の露出部を境にすくい面11aの第1硬質膜13
と、逃げ面11bの第1硬質膜13とが不連続となって
皮膜不連続部14が形成され、しかも皮膜不連続部14
に露出した母材16の表面と隣接する第1硬質膜13と
には段差が無いか、もしくは非常に小さな段差状態とな
る。したがって、第1硬質膜13を母材16によって強
固に支持する理想的な構造となる。そして、ホーニング
面を正面から観察すると、図4に示すように、すくい面
11aの第1硬質膜13と逃げ面11bの第1硬質膜1
3とが母材16をサンドイッチ状に挟み込んだ状態にな
る。
【0022】そして、この後に第2硬質膜15を少なく
とも第1硬質膜13の皮膜不連続部14にコーティング
する。
【0023】切削工具11の刃先に第1硬質膜13の皮
膜不連続部14が存在しても、この皮膜不連続部14に
隣接する第1硬質膜13の効果で耐摩耗性は向上し、皮
膜不連続部14に第2硬質膜15をコーティングすれば
被削材の融着は更に抑制される。
【0024】第1硬質膜13と第2硬質膜15の境界部
の段差の大きさは30μm以下でなるべく小さい方が好
ましい。これは、第1,第2硬質膜13,15の段差が
30μmよりも大きいと、第1硬質膜13が欠損しやす
くなったり、段差部分に被削材が融着しやすくなり、構
成刃先等の原因となるからである。
【0025】そして、本実施例における刃先の耐欠損性
は、同一形状の超硬合金等の母材16のみの場合と同等
の強さを維持することができる。
【0026】さらに、母材16を丸ホーニング加工また
はチャンファーホーニング加工した後、ホーニング加工
した母材16の表面に気相合成法によりダイヤモンドの
薄膜被覆層を設けることにより、ホーニング部に母材1
6が露出しないように作成した従来のダイヤモンド被覆
切削工具と比べても、本発明は刃先の耐欠損性を極めて
高めることができる。即ち、本発明によれば、硬質膜の
耐摩耗性と、超硬合金等の母材と同等の耐欠損性(靱
性)とを併せ持った硬質膜被覆切削工具を実現すること
ができる。
【0027】また、良好な切削性能を得るためには、図
3に示すように、チャンファーホーニング加工のすくい
面11aに対する角度θを2〜90°、好ましくは10
〜60°の角度に設定し、ホーニング幅aを2〜500
μm、好ましくは20〜100μmに設定するとよい。
【0028】さらに、第1硬質膜13の膜厚は、膜材質
によっても異なるが0.5〜100μm、好ましくは1
〜30μmである。そして、ホーニング部に露出する母
材16の幅bは、前記条件と膜厚から決定されるが、好
ましくは100μm以下が良い。
【0029】丸ホーニング加工を施す場合は、θ,a,
bが各適正値になるように加工すれば良い。
【0030】第2硬質膜15の膜厚は、膜材質によって
も異なるが0.5〜20μm、好ましくは1〜10μm
である。
【0031】これらの各適正値をはずれると、切れ味が
低下したり、切り粉の排出性が低下したり、被削材の刃
先への融着が増加したり、又は、耐欠損性の向上効果が
小さかったりして好ましくない。
【0032】このような硬質膜被覆切削工具11のチッ
プを対象として、本発明の作用効果を確認するため、以
下の比較を行った。
【0033】(実施例1)図4に示した切削工具11の
母材16としてISO:K−10超硬合金製スローアウ
ェイチップ(型番SEKN1203AE)を用い、その
母材16上に第1硬質膜13として厚さ5μmのダイヤ
モンド薄膜をコーティングした切削工具を作成した。ダ
イヤモンド薄膜のコーティングには、熱フィラメントC
VD法を採用した。
【0034】このように形成した切削工具11の刃先
を、図3(a)に示すように、すくい面となす角θ=4
5°、ホーニング幅a=40μmとなるようにチャンフ
ァーホーニング加工した。その結果、ホーニング面に露
出した母材16の露出幅bは27μmであった。
【0035】そして、この刃先部分にPVD法により第
2硬質膜15として厚さ1μmのTiNをコーティング
した。
【0036】そして、この切削工具11を用いて、図5
に示すように、溝切り加工したAHP92(Al−Si
(18%)−AZ砥粒分散)(T6処理品)の被削材1
7を、切削速度800m/min、送り0.2mm/r
ev、切り込み1mmの条件下で、5km乾式で旋削加
工を行った。旋削加工後の刃先を観察したところ、刃先
部分の欠損は皆無であり、摩耗も第2硬質膜15に見ら
れただけで、母材16及び第1硬質膜13には殆ど観察
されなかった。また、被削材17の刃先への融着も殆ど
見られなかった。
【0037】(比較例1−1)実施例1と同種の母材1
6′をチャンファーホーニング加工した後に、実施例1
と同様の方法で母材16′の表面に厚さ5μmのダイヤ
モンド薄膜13′をコーティングした。即ち、図7に示
したように、母材16′は露出していない状態にし、そ
のθ,aを実施例1のθ,aと同じ値に設定した。
【0038】実施例1と同じ被削材17で、同一の切削
条件下で切削を行った後、刃先を観察したところ、ダイ
ヤモンド膜13′が欠損し、剥離はすくい面11a′や
逃げ面11b′のダイヤモンド膜13′にまで伝播して
いた。また、ダイヤモンド膜13′が剥離して露出した
母材16′にも欠損が見られた。さらに、刃先には被削
材17が融着して刃先が構成され、その結果、切削後の
被削材17の表面は実施例1に比べ荒れた状態で不安定
になっていた。
【0039】(比較例1−2)実施例1と同種の母材
に、コーティングをしない状態で実施例1と同一形態
(θ,aが同じ値)のチャンファーホーニング加工をし
た。
【0040】実施例1と同じ被削材17で、同一の切削
条件下で切削を行った後、刃先を観察したところ、刃先
には欠損は見られなかったが、摩耗が進行して逃げ面摩
耗幅は260μmに達し、被削材17の刃先への融着が
ひどくて切削不能の状態となっていた。
【0041】(実施例2)実施例1と同種の母材16を
採用し、その表面に第1硬質膜13として厚さ1μmの
立方晶窒化硼素(cBN)の膜をコーティングした。立
方晶窒化硼素(cBN)膜のコーティングには、イオン
プレーティング法を採用した。その後、ホーニング面と
すくい面とのなす角θ=30°、ホーニング幅a=30
μmとなるようにチャンファーホーニング加工を行っ
た。その結果、母材露出幅b=27μmとなった。
【0042】そして、この刃先に第2硬質膜15として
厚さ2μmのダイヤモンドライクカーボン(DLC)を
プラズマCVD法によりコーティングした。
【0043】実施例1と同じ被削材17で、同一の切削
条件下で切削を行った後、刃先を観察したところ、刃先
部分の欠損は皆無で、第2硬質膜15に摩耗が観察され
たが、母材と第2硬質膜15には殆ど変化は見られなか
った。また、被削材17の刃先への融着も殆ど見られな
かった。
【0044】(比較例2)実施例1と同種の母材16′
を予めチャンファーホーニング加工をした後、実施例2
と同様の方法で母材16′の表面に厚さ1μmの立方晶
窒化硼素(cBN)の膜を刃先全面にコーティングし
た。即ち、図7に示したように、母材16′は露出して
いない状態にし、そのθ,aを実施例2のθ,aと同じ
値に設定した。
【0045】実施例1と同じ被削材17で、同一の切削
条件下で切削を行った後、刃先を観察したところ、cB
N膜は欠損し、すくい面11a′や逃げ面11b′の広
範囲に剥離が伝播していた。また、cBN膜が剥離して
露出した母材16′にも欠損が見られた。
【0046】(実施例3)実施例1と同種の母材16を
採用し、その表面に第1硬質膜13として厚さ3μmの
ダイヤモンドの膜をコーティングした。ダイヤモンド膜
のコーティングには、マイクロ波プラズマCVD法を採
用した。その後、ホーニング面とすくい面とのなす角θ
=30°、ホーニング幅a=30μmとなるようにチャ
ンファーホーニング加工を行った。その結果、母材露出
幅b=21μmとなった。
【0047】そして、このホーニング面以外の面をすべ
てタングステン製薄板を用いてマスキングを行なってか
ら、ホーニング面に第2硬質膜15として厚さ3μmの
ダイヤモンド膜をコーティングした。
【0048】実施例1と同じ被削材17、切削条件下で
切削を行った後、刃先を観察したところ、刃先部分の欠
損は皆無で、摩耗も極く僅かであった。また、被削材1
7の刃先への融着も殆ど見られなかった。
【0049】(比較例3)実施例3と同種の母材16′
を予めチャンファーホーニング加工をした後、実施例2
と同様の方法で母材16′の表面に厚さ3μmのダイヤ
モンドの膜を刃先にコーティングし、そのθ,aを実施
例3のθ,aと同じ値に設定してダイヤモンドコーティ
ングチップを作製した。
【0050】実施例3と同じ被削材17、切削条件下で
切削を行った後、刃先を観察したところ、ダイヤモンド
膜が欠損し、剥離はすくい面11a′や逃げ面11b′
の広範囲に伝播していた。また、刃先には被削材が融着
して構成刃先ができており、その結果切削後の被削材表
面は実施例3に比べて荒れた状態になっていた。
【0051】(実施例4)実施例1と同種の母材16
で、その表面に第1硬質膜13として厚さ0.8μmの
立方晶窒化硼素膜(cBN)の膜をイオンプレーティン
グ法によりコーティングした。そして、その後、ホーニ
ング面とすくい面とのなす角θ=30°、ホーニング幅
a=30μmとなるようにチャンファーホーニング加工
を行った。その結果、母材露出幅b=27.4μmとな
った。
【0052】そして、このホーニング面以外の面をすべ
てタングステン製薄板を用いてマスキングを行なってか
ら、ホーニング面に第2硬質膜15として厚さ0.8μ
mの立方晶窒化硼素膜(cBN)の膜をコーティングし
た。
【0053】実施例1と同じ被削材17、切削条件下で
切削を行った後、刃先を観察したところ、刃先部分の欠
損は皆無で、僅かに摩耗が観察されただけであった。ま
た、被削材17の刃先への融着も殆ど見られなかった。
【0054】(比較例4)実施例3と同種の母材16′
をθ=30°として予めチャンファーホーニング加工を
した後、実施例4と同様の方法で母材16′の表面に厚
さ0.8μmの立方晶窒化硼素膜(cBN)の膜を刃先
にコーティングし、そのθ,aを実施例4のθ,aと同
じ値に設定して立方晶窒化硼素膜(cBN)コーティン
グチップを作製した。
【0055】実施例1と同じ被削材17で、同一の切削
条件下で切削を行った後、刃先を観察したところ、立方
晶窒化硼素膜(cBN)膜が欠損して、剥離はすくい面
11a′や逃げ面11b′の立方晶窒化硼素膜(cB
N)に伝播していた。また、立方晶窒化硼素膜(cB
N)膜が剥離して露出した母材にも欠損が見られた。刃
先には被削材が融着して構成刃先ができており、その結
果切削後の被削材表面は実施例4に比べて荒れた状態に
なっていた。
【0056】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る硬質
膜被覆切削工具によれば、硬質膜コーティングの欠点で
あった耐欠損性の低さを改善し、耐摩耗性と耐欠損性と
の双方に優れ、安定した切削特性を有し、長寿命化を図
ることができるという優れた効果を発揮する。特に、本
発明は、切削工具の刃先に大きな衝撃の掛かるフライス
切削等の断続切削、深い切り込み量が要求される荒削り
等に用いると効果的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】チップ形状の硬質膜被覆切削工具を示す説明図
であり、(a)はその斜視図、(b)はホーニング部分
を表した平面図、(c)はホーニング部分を表した側面
図である。
【図2】(a)〜(h)は、本発明の硬質膜被覆切削工
具の刃先形状例を示す縦断面図である。
【図3】ホーニング加工した場合の刃先を示す説明図で
あり、(a)はチャンファーホーニング加工した場合の
刃先の縦断面図、(b)は丸ホーニング加工した場合の
刃先の縦断面図である。
【図4】ホーニング加工した刃先をホーニング正面(刃
先方向)から見た状態における斜視図である。
【図5】(a)は旋削試験に用いた被削材(AHP9
2)の正面図、(b)はその側面図である。
【図6】硬質膜コーティングの欠損しやすい部位を示す
刃先の縦断面図である。
【図7】母材をチャンファーホーニング加工した後、硬
質膜をコーティングした刃先を示す断面図である。
【符号の説明】
11 硬質膜被覆切削工具 11a すくい面 11b 逃げ面 11c 切れ刃稜 12 ホーニング加工を施す部分 13 第1硬質膜 14 皮膜不連続部 15 第2硬質膜 16 母材 17 被削材 a ホーニング幅 b 母材露出幅 θ ホーニング面とすくい面とのなす角

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基体である切削工具の刃先のすくい面と
    逃げ面とに、ダイヤモンドを主体とする膜又は立方晶窒
    化硼素(cBN)を主体とする膜の少なくとも一つの膜
    を第1硬質膜としてコーティングした硬質膜被覆切削工
    具であって、 上記刃先のすくい面と逃げ面との境界部近傍に、すくい
    面の第1硬質膜と逃げ面の第1硬質膜とを不連続にする
    皮膜不連続部を形成し、該皮膜不連続部に第2硬質膜を
    改めてコーティングしたことを特徴とする硬質膜被覆切
    削工具。
  2. 【請求項2】 第2硬質膜の表面と第1硬質膜の境界部
    の段差が平均して30μm以下である請求項1に記載の
    硬質膜被覆切削工具。
  3. 【請求項3】 皮膜不連続部が、刃先の切れ刃稜を母材
    が露出するようにホーニング加工を施すことにより形成
    されている請求項1または2に記載の硬質膜被覆切削工
    具。
  4. 【請求項4】 第2硬質膜が炭化チタン(TiC)、窒
    化チタン(TiN)、アルミナ(Al23 )、非晶質
    カーボン、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、ダ
    イヤモンド、立方晶窒化硼素(cBN)の内の少なくと
    も一つを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれ
    かに記載の硬質膜被覆切削工具。
  5. 【請求項5】 切削加工に寄与する刃先のすくい面と逃
    げ面とに、ダイヤモンドを主体とする膜または立方晶窒
    化硼素(cBN)を主体とする膜の少なくとも一つの膜
    を第1硬質膜としてコーティングする第1膜形成工程
    と、 上記刃先のすくい面と逃げ面との境界部近傍に、すくい
    面の第1硬質膜と逃げ面の第1硬質膜とを不連続にする
    皮膜不連続部を形成する不連続部形成工程と、 該皮膜不連続部に第2硬質膜をコーティングする第1膜
    形成工程と、 からなることを特徴とする硬質膜被覆切削工具の製造方
    法。
  6. 【請求項6】 第2膜形成工程において、第2硬質膜の
    表面と第1硬質膜の境界部の段差が平均して30μm以
    下になるように第2硬質膜をコーティングするようにし
    た請求項5に記載の硬質膜被覆切削工具の製造方法。
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