JPH0813360A - 酵素による捺染方法及びアゾ系染料脱色用酵素 - Google Patents

酵素による捺染方法及びアゾ系染料脱色用酵素

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JPH0813360A
JPH0813360A JP6168876A JP16887694A JPH0813360A JP H0813360 A JPH0813360 A JP H0813360A JP 6168876 A JP6168876 A JP 6168876A JP 16887694 A JP16887694 A JP 16887694A JP H0813360 A JPH0813360 A JP H0813360A
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弘道 富張
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 使用する染料種類の制約が少なく、基材の痛
みも少なく、色境界部分のにじみが少なく、ぼかし模様
及び鮮やかな色を有する着色抜染も容易にできる酵素に
よる捺染方法、この捺染を可能とするアゾ系染料脱色用
酵素を提供する。 【構成】 アゾ系染料(非アゾ系染料を含んでもよい)
により染色された染色基材上に、アゾ系染料、非アゾ系
染料及びバチルス属に属する菌種の菌体BacillusOY1
−2(受託番号;微工研菌寄第13118号)が産生す
る酵素Azoreductase(diaphoraseに属する酵素)のうち
の少なくとも該酵素を含む液若しくは糊剤(染料を含ん
でもよい)を所望形状に塗布し、該酵素を作用させてこ
の着色を消失又は低減させて捺染(直接捺染、白色抜
染、着色抜染又は防染)を行う。染色されていない基材
と酵素及びアゾ染料等を含む液等とを組み合わせること
もできる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、酵素による捺染方法及
びアゾ系染料脱色用酵素に関し、更に詳しく言えば、ア
ゾ系染料により又はアゾ系染料及び非アゾ系染料により
染色された基材、又は特定の菌及びアゾ系染料を少なく
とも含む糊液等にて描かれた模様をもつ基材を、特定の
菌を用いて処理して捺染する方法、及びアゾ系染料を資
化させるアゾ系染料脱色用酵素に関する。ここで「捺
染」とは、直接捺染(白地或いは地染の生地に模様をプ
リントするもの)、抜染[地染の生地に模様をつけるも
の(白色抜染、着色抜染及び半抜染を含む。)]及び防
染(染色を阻害するもので模様を書き、染めるもの)を
含む。
【0002】
【従来の技術】上記「抜染」としては、予め無地染め
をした布帛に還元剤若しくはアルカリを含む糊液等を望
みの模様に付着させて熱処理を行い、還元反応又は分散
染料のカルボン酸エステルのケン化反応により脱色して
白抜の模様をつける「白色抜染」、脱色と同時に別の
色を染めるという、いわゆる「着色抜染」、白色抜染
を途中で止めて地色よりもやや淡い色で模様を残す「半
抜染」が行われている。また、上記「直接捺染」は、所
定の色糊を用いて基材上に所定の模様を塗布(プリント
等)し、その後乾燥し、蒸熱し洗浄して仕上げるもので
ある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記捺染方法
(特に抜染方法)では、脱色に還元剤或いはアルカリを
使用するため、はじめの無地染めの染料(いわゆる地染
め染料)は脱色し易い染料を選ぶ必要があり、また、脱
色時にプリントする染料(差し色染料)も還元反応やア
ルカリに抵抗力のある染料に限定される等の制約があ
る。更に還元剤で布帛が痛む、ハレーション(色境界部
分のにじみ)が起き易い等の欠点がある。
【0004】本発明は、上記欠点を克服するものであ
り、染料の制約が少なく、基材の痛みも少ない上、色境
界部分のにじみが少ないため細かくて複雑な模様の作成
が可能で、鮮やかな色を有する着色抜染が可能で、更に
ぼかし模様も容易に作成できる、酵素による捺染方法、
及びアゾ系染料に作用させて上記のような有用な捺染方
法を可能とするアゾ系染料脱色用酵素を提供することを
目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、微生物が
産生する酵素によるアゾ系染料の脱色に着目し、染色排
水その他の試料からアゾ系染料を脱色する酵素を見出す
べく検索を行った結果、バチルス属に属する菌株 Baci
llusOY1−2が産生する酵素Azoreductase(diaphora
seに属する酵素)がアゾ系染料を脱色することを見つけ
だし、本発明を完成するに至ったのである。
【0006】本第1発明の酵素による捺染方法は、アゾ
系染料により染色された染色基材上に、アゾ系染料、非
アゾ系染料及びバチルス属に属する菌種の菌体Bacillus
OY1−2(受託番号;微工研菌寄第13118号)が
産生する酵素Azoreductase(diaphoraseに属する酵素)
のうちの少なくとも該酵素を含む液若しくは糊剤を所望
形状に塗布し、その後、該酵素を作用させて上記アゾ系
染料による着色を消失若しくは低減させて捺染を行うこ
とを特徴とする。
【0007】本第2発明の酵素による捺染方法は、アゾ
系染料及び非アゾ系染料により染色された複合染色基材
上に、アゾ系染料、非アゾ系染料及びバチルス属に属す
る菌種の菌体BacillusOY1−2(受託番号;微工研菌
寄第13118号)が産生する酵素Azoreductase(diap
horaseに属する酵素)のうちの少なくとも該酵素を含む
液若しくは糊剤を所望形状に塗布し、その後、該酵素を
作用させて上記アゾ系染料による着色を消失若しくは低
減させて捺染を行うことを特徴とする。
【0008】本第3発明の酵素による捺染方法は、染色
されていない基材若しくは非アゾ系染料により染色され
た染色基材上に、アゾ系染料、非アゾ系染料及びバチル
ス属に属する菌種の菌体BacillusOY1−2(受託番
号;微工研菌寄第13118号)が産生する酵素Azored
uctase(diaphoraseに属する酵素)のうちの少なくとも
該アゾ系染料及び該酵素を含む液若しくは糊剤を所望形
状に塗布し、その後、該酵素を作用させて上記アゾ系染
料による着色を消失若しくは低減させて捺染を行うこと
を特徴とする。本第4発明の酵素による捺染方法は、上
記第1〜3発明において、上記アゾ系染料による着色を
消失若しくは低減させる温度を20〜70℃とした方法
である。
【0009】本第5発明の酵素による捺染方法は、上記
酵素を含む液若しくは糊液が塗布されて形成された所望
形状の一部の上に、70℃以上の温度に加熱された模
様を描く工程、pH10.5以上のアルカリ性の液若
しくは糊剤、又はpH4以下の酸性の液若しくは糊剤で
模様を描く工程のうちの少なくとも1つを実施する方法
であり、所謂「防染」といえるものである。即ち、酵素
の作用を阻害させる(反応を阻害させる)液若しくは糊
剤を用いて模様を描くことにより、この部分の脱色を防
止してアゾ染料による着色を維持させることにより、捺
染を行うものである。
【0010】上記において70℃以上に加熱するのは、
これにより本酵素の反応活性が阻害されるためである。
この加熱手段は特に問わない。また、上記アルカリ液等
及び酸性液等に含まれる各アルカリ成分及び酸成分の種
類は問わない。尚、所定の温度(70℃以上でもよい
し、それ以下でもよい。)及びpH(10.5以上でも
4以下でもよいし、それ以外でもよい。)並びに処理時
間等を種々選択することにより、酵素の作用を略完全に
阻止させてもよいし、また不完全に阻止させてもよい。
後者においては、ぼかし模様(色違い模様)とすること
ができるし、この両者を組み合わせることにより、更に
複雑且つ美観に優れた模様を作成することもできる。
【0011】本第6発明のアゾ系染料脱色用酵素は、ア
ゾ系染料に作用させて該アゾ系染料による着色を消失若
しくは低減せしめる、バチルス属に属する菌種の菌体Ba
cillusOY1−2(受託番号;微工研菌寄第13118
号)が産生する酵素Azoreductase(diaphoraseに属する
酵素)からなることを特徴とする。本第7発明のアゾ系
染料脱色用酵素は、20〜50℃にて生育可能なもので
ある。即ち、本酵素は20〜70℃の比較的高温におい
ても活性を有する、極めて有用なものである。
【0012】本発明の「アゾ系染料脱色用酵素」は下記
の方法にて分離された。 採取地 大阪染工株式会社 染料排水処理の汚泥 採取年月日 平成2年9月22日 この酵素の馴養処理方法は、以下の通りである。即ち、
集積培地2mlを入れた試験管に試料を3白金耳添加
し、30℃で振盪培養し、随時褪色又は脱色した試験管
を植え継いだ。そして2回植え継いでも、なお脱色、褪
色した試験管から以下に示す一般細菌用寒天培地(染料
を0.02%添加)に混釈し、平板寒天で染料色素を脱
色し、“ハロ”が抜けた細菌を分離菌株(これを、以下
に示す如く「バチルス属のBacillus OY1−2菌株」
と命名した。)とした。この染料としては、住友化学株
式会社製アゾ系染料「Roccelline NS conc 120%(C.I.Ac
id Red88) 」を用いた。
【0013】上記集積培地組成は、以下の通りである。 NaCl 0.1% K2 HPO4 0.1% MgSO4 ・7H2 O 0.05% FeSO4 ・7H2 O 0.001% ZnSO4 ・7H2 O 0.0001% CuSO4 ・7H2 O 0.0001% MnSO4 ・7H2 O 0.0001% (NH4)2 SO4 0.5% 染料(Roccelline NS conc 120%) 0.02% 希釈水は蒸留水を使用。
【0014】上記「バチルス属のBacillus OY1−2
菌株」は、工業技術院酵素工業技術研究所に寄託され、
受託番号は微工研菌寄第13118号(FERM P−
13118号)である。本菌の科学的性質は下記の通り
である。形態は大きさが0.6〜0.8×3.0〜5.
0μmの捍菌であり、運動性があり、鞭毛を有し、胞子
を形成する。グラム染色は陽性である。生育は空気中で
生育し、嫌気性条件下でも生育する。20℃から50℃
の温度で生育する。38℃でよく生育する。pHは5〜
7において生育する。食塩は2%を越えると生育しない
が2%以下ではよく生育する。
【0015】以下に菌の科学的性質、性状を示した。 グラム反応 + 形 捍菌 大きさ 0.6〜0.8×3.0〜5.0μm 芽胞の形 卵円形 芽胞の位置 中立、準端立、端立 菌体の膨張 − 運動性 + 空気中での生育 + 嫌気条件下での生育 + カタラーゼ + オキシターゼ D OFテスト − 5℃における生育 − 10℃における生育 − 42℃における生育 + 50℃における生育 + 55℃における生育 − pH 5及び7における生育 + NaCl 2%における生育 + NaCl 5%における生育 − 硝酸塩の還元 + VP反応 + インドールの産生 − 尿素の分解 + クエン酸塩の利用 + デンプンの加水分解 + カゼインの加水分解 + ゼラチンの加水分解 − 炭水化物:酸 グルコース + マンニット + アラビノース − キシロース − ガス(グルコース)の産生 −
【0016】本発明者らは本菌株を「Bacillus OY1
−2」と命名した。本菌により分解されるアゾ系染料は
通常種々の異性体の混合物として使用されているが、本
菌はそれらの全てを資化することができる。また、本菌
は40〜50℃の比較的高温下においても活性を有する
ので、捺染処理時間を短縮できるし、雑菌を死滅させる
ことにより雑菌の混入を防止できる。
【0017】本発明の酵素は、以下のようにして産生、
精製される。即ち、まず、上記Bacillus OY1-2の菌を接
種し、所定条件下において培養させて酵素を生成させ、
この酵素を遠心分離、各種クロマトグラフィーを行って
精製分離した。この酵素の性質は、以下の実施例にて行
った結果によれば、以下の通りである。 〔酵素の性質〕 (1)酸化還元反応に関係する酵素である。 (2)菌体内で生産される酵素である。 (3)酵素の生産時期は、定常期前期に産生される。 (4)アゾ基を2個のアミン基にまで還元する。 (5)この酵素による反応には補酵素として、NADP
H(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド−リン
酸)、NADH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチ
ド−水素化物)が必要である。 (6)この酵素の至適pHはpH7.5で反応する。 (7)至適温度は70℃である。20〜70℃は安定で
ある。 (8)pHの安定性はpH4.0〜10が安定である。 (9)温度に対して70℃まで安定であるから、耐熱性
を持っている。この温度において安定性を持つので、保
存、腐敗に強いものである。また、65℃で殺菌が可能
である。 (10)エタノール、アセトンに安定である。そして、
酵素をエタノール、アセトンで抽出することができるの
で、工業化には有利である。 (12)菌体内酵素であるので、細胞膜を破壊して酵素
を溶出(抽出)するために超音波処理、リゾチーム処理
ができる。
【0018】また、本酵素の作用と基質特異性は、例え
ば図1及び図2に示す各アゾ系染料について説明すれ
ば、補酵素のNADPHの作用を借りて本酵素の作用に
より、各アゾ系染料のアゾ基が2個のアミン基にまで還
元される。これによりアゾ系染料のアゾ基に基づく着色
が消滅することとなる。
【0019】また、本発明における上記「基材」は、ア
ゾ系染料等にて染色可能のものであれば良く、通常は、
織布(繊維材料種、織り方等は問わない。)等である
が、これに限らず、不織布、紙、樹脂シート等であって
もよい。
【0020】上記「アゾ系染料」は、ベンゼンアゾ系、
ナフタレンアゾ系及び複素環アゾ系染料等の全てに適用
できる。また、このアゾ系染料は、直接染料、酸性染
料、反応染料及び分散染料等の種類にかかわらず、表1
に示す対象素材別に及び官能基別に分類される全てのア
ゾ系染料に適用できる。
【0021】
【表1】
【0022】本発明においては、所定の酵素を含む液
(染料の含有の有無は問わない。染料を含む場合は着色
液となる。)、所定の酵素及び糊成分を含む糊剤(染料
の含有の有無は問わないし、液状、ペースト状等の形態
も問わない。染料を含む場合は色糊剤となる。)を所定
の基材上に塗布する方法は、特に限定されず、例えば、
型紙印捺方式、インクジェット方式、手書き方式、ロー
ラー印捺方式、スクリーン印捺方式等の所望の塗布方法
とすることができる。この糊剤は、通常、直接捺染に用
いられ、これに含まれる上記糊成分としては、でんぷん
類(小麦でんぷん等)、加工でんぷん(ブリティッシュ
ガム等)、加工天然ガム(ローカストビーンガム等)、
アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナ
トリウム、合成糊料(ポリビニルアルコール、ポリ酢酸
ビニル等)等を用いることができる。
【0023】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。 A.酵素Azoreductase(diaphoraseに属する酵素)の産
生及びその特性 (1)酵素の産生及び精製 まず、乾燥(普通)ブイヨン(日水製薬社製)200m
lにアゾ系染料(「Roccelline NS conc.120% 」、住友
化学株式会社製)0.02%を添加し、500mlの坂
口フラスコに菌株Bacillus OY1-2を接種し、38℃で4
8時間振盪培養し、その培養液を遠心分離(3000X
g、20分間)し、菌体を集め、0.1Nりん酸緩衝液
(pH7.0、1.0mM DTT)で洗浄後、遠心分
離(5000Xg、10分間)して得た沈澱菌体の懸濁
液を作成する。更に、これに超音波破砕装置で200
W、15分間(30秒間隔)下にて超音波を照射して酵
素のリゾチームにより細胞膜を破壊させ、その後、これ
を遠心分離(12000Xg、60分間)にかけて、上
澄液である酵素液を得た。更に、硫酸アンモニウム液
(硫酸アンモニウム濃度40%)を加えて懸濁液とし、
透析液を、以下の、、及びのクロマトグラフィ
ー処理を順次行って精製し、特性評価用及び抜染用酵素
液とした。 DEAE-sepharose CL-6B chromatography(溶離液;0 〜
0.5N NaCl) Blue cellulofine affinity chromatography(溶離
液; 10 mM NADH) Red sepharose CL-6B affinity chromatography (溶
離液;10 mM NADH) Gel chromatography(Hiload 16/60 Superdex 200pg)
〔(溶離液;0.02 M phosphto Buffer pH 7.0(0.1M NaC
l)〕
【0024】(2)至適pH及び安定pH範囲 至適pHは、以下の表2に示す各pHで酵素反応の実験
を行って求めた。尚、pH4.0〜5.5は酢酸緩衝液
を用い、pH6.0〜8.0はりん酸緩衝液を用い、p
H8.5〜9.5はトリス緩衝液を用い、pH10はホ
ウ砂緩衝液を用いた。この結果を表2に示す。
【0025】 表2 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− pH 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 酵素活性(%) 5.2 8.6 23.1 39.2 57.3 68.5 87.9 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− pH 7.5 8.0 8.5 9.0 9.5 10.0 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 酵素活性(%) 100 83.2 59.7 33.4 11.2 2.5 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− この結果から、この酵素の至適pHは7.5であり、酵
素反応のpH範囲は5.5〜9.0である。
【0026】尚、酵素活性(力価)の測定は、以下のよ
うにして行った。以下の試験例についても同様である。 〔酵素活性(力価)の測定〕基質は染料の40μM Rocc
ellin NS 120%溶液1.0mlに10mM β−N
ADPH溶液100μl、酵素液と0.1Mりん酸緩衝
液で液量2.1mlに調整し、37℃における505n
mの吸光度の減少を追跡することにより行った。酵素単
位は、37℃、1分間に1μM基質を還元できる酵素量
とした。酵素活性(力価)測定液組成を以下に示す。
【0027】(3)安定pH範囲 pHの安定性の実験は、37℃、1時間、表3に示す所
定のpHに置き、その後、1Mりん酸緩衝液(pH7.
5)を添加し、氷冷した後、酵素活性測定を行った。こ
の結果を表3に示す。
【0028】 表3 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− pH 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 酵素活性(%) 48.5 58.9 76.9 85.9 92.0 96.3 101 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− pH 7.5 8.0 8.5 9.0 9.5 10.0 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 酵素活性(%) 100 101 96.3 86.1 80.0 62.1 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− この結果から、安定pH範囲はpH5.0〜9.5の広
い範囲である。pH4.0、pH10でも1時間位で
は、50%位しか失活しない。
【0029】(4)作用適温の範囲 至適温度の実験は、酵素反応を表4に示す各温度に設定
して行う。この結果を表4に示す。 表4 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 温度(℃) 20 30 37 40 50 60 65 70 75 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 酵素活性(U) 65 139 207 266 438 603 695 715 596 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−− 温度(℃) 80 85 −−−−−−−−−−−−− 酵素活性(U) 470 452 −−−−−−−−−−−−− この結果から、至適温度は70℃である。
【0030】(5)酵素の温度安定性 酵素の温度安定性実験は、酵素液をりん酸緩衝液でpH
7.0に調整し、表5に示す各温度で1時間反応させ、
直ちに氷冷し、そして酵素活性測定した。 表5 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 温度(℃) 20 30 37 40 50 55 60 65 70 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 酵素活性(U) 426 449 426 426 454 423 456 425 426 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−− 温度(℃) 75 80 −−−−−−−−−−−−− 酵素活性(U) 51 12 −−−−−−−−−−−−−
【0031】(6)pH、温度等による失活の条件 pHによる失活は、上記に示したpHの安定性より推測
されるように、pH4.5〜10.0の間は50%以上
の酵素安定性があるが、pH4.0以下、pH10.5
以上は失活すると思われる。温度による失活は、上記に
示した温度安定性より70℃までは安定であるが、それ
以上になると酵素が失活する。
【0032】(7)結晶構造 この酵素(Azoreductase)のタンパク質のアミノ酸配列
については、その全アミノ酸配列は未だ解明できていな
いが、N末端から一部分が分析により配列が分かってい
る。N−末端 メチオニン以下は下記の通り(詳しくは
表6に示す)である。即ち、MKLVVINGTPRK
FGRTRVVAの20個が決定されている。尚、タン
パク質構成アミノ酸の種類と略号は、表7に示す。
【0033】 表6 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− Call First Second Third −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 1 M G S 2 K P N 3 L E W 4 V Y M 5 V T S 6 I C D 7 N W F 8 G Y S 9 T Q F 10 P H C 11 R P C 12 K R A 13 F S E 14 G L I 15 R P C 16 T I V 17 R I L 18 V A L 19 V C W 20 A G S −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0034】
【表7】
【0035】B.本発明の抜染用酵素液の使用例 以下、具体的実施例及び比較例により本発明の酵素液の
使用例を説明する。 (1)白色抜染 実施例1 3重量%濃度のアゾ系直接染料「Direct Brilliant Blu
e RW」(三菱化成ヘキスト株式会社製)を用いて常法に
より、レーヨン100%タフタの布を染色すると、この
布は青色に染め上がった。この青色に染め上がった布に
水玉の模様を切り抜いたゴム板を置き、この切り抜いた
模様の中に、前記に示す本抜染用酵素液を流し込み、こ
のゴム板を除去した後、布を湿った状態にして、60℃
の恒温槽に1時間入れて白色抜染処理を行った。この結
果、布を染めているアゾ系染料が完全に脱色されて、青
色の地に白色の水玉の模様が得られた。また、この色境
界部分のにじみもなく、鮮明な模様を示した。
【0036】実施例2 本実施例では、使用した布の材質として、ナイロン1
00%タフタを用いたこと、この布の染色用染料とし
て、3重量%濃度のアゾ系酸性染料「SuminolMilling B
rilliant Red BS 」(住友化学株式会社製)を用いたこ
と(地色;赤色)、三角模様を切り抜いた、酵素液注
入用ゴム板を用いたこと、抜染処理条件は50℃、2
時間であること以外は、実施例1と同様にして白色抜染
処理を行った。この結果、赤色の地に白色の三角模様が
得られた。また、この場合も、鮮明な模様を示した。
【0037】実施例3 本実施例では、使用した布の材質として、ウール10
0%モスリンを用いたこと、この布の染色用染料とし
て、1重量%濃度のアゾ系酸性染料「KayanolMilling Y
ellow 0」(日本化薬株式会社製)及び1重量%濃度の
アゾ系酸性染料「Kayanol Milling Red BW」(日本化薬
株式会社製)を用いたこと(地色;オレンジ色)、星
型模様を切り抜いた、酵素液注入用ゴム板を用いたこ
と、抜染処理条件は40℃、3時間であること以外
は、実施例1と同様にして白色抜染処理を行った。この
結果、布を染めている2種類のアゾ系染料が同時に資化
されて、オレンジ色の地に白色の星型模様が得られた。
尚、抜染処理条件を20℃、8時間で行っても同様の結
果が得られる。尚、上記アゾ系酸性染料「Kayanol Mill
ing Red BW」は還元剤による抜染性が劣るため、通常の
抜染には使用されない。従って、本例によれば、抜染に
通常では使用できないアゾ系酸性染料を用いても、確実
に抜染を行うことができた。
【0038】(2)着色抜染 実施例4 本実施例では、使用した布の材質として、綿100%
ギャバを用いたこと、この布の染色用染料として、1
重量%濃度のアントラキノン系反応染料「Mikasion Bri
lliant Blue RS」(日本化薬株式会社製)及び1重量%
濃度のアゾ系反応染料「Remazol Red B 150 」(三菱化
成ヘキスト株式会社製)を用いたこと(地色;紫色)、
染色布に筆を用いて、実施例1で用いた抜染用酵素液
を使用して模様を描いたこと、抜染処理条件は70
℃、1時間であること以外は、実施例1と同様にして着
色抜染処理を行った。この結果、処理した綿布は、布を
染めているアゾ系染料が資化されるとともに、布を染め
ている非アゾ系染料が脱色されず残存して、紫色の地に
抜染酵素液で描いた模様が青色(上記アントラキノン染
料による染色色彩)になって得られた。また、この色境
界部分のにじみもなく、鮮明な模様を示した。
【0039】実施例5 本実施例では、使用した布の材質として、ウール10
0%モスリンを用いたこと、この布の染色用染料とし
て、1重量%濃度のアントラキノン系酸性染料「Alizar
ine Rubinol 3G 115% 」(山田化学工業株式会社製)及
び1重量%濃度のアゾ系酸性染料「Kayanol Navy Blue
R 」(日本化薬株式会社製)を用いたこと(地色;紫
色)、水玉模様を切り抜いた、酵素液注入用ゴム板を
用いたこと、抜染処理条件は50℃、3時間であるこ
と以外は、実施例1と同様にして着色抜染処理を行っ
た。この結果、処理したウール100%の布は、布を染
めているアゾ系染料が50℃下短時間にて良好に脱色さ
れるとともに、布を染めている非アゾ系染料が脱色され
ず残存して、紫色の地に赤色の水玉模様が得られた。ま
た、この場合も、鮮明な模様を示した。
【0040】実施例6 本実施例では、使用した布として、ジアセテート10
0%平織り布を用いたこと、この布の染色用染料とし
て、3重量%濃度のアゾ系分散染料「KayalonFast Yell
ow G 」(日本化薬株式会社製)、3重量%濃度のアゾ
系分散染料「Kayalon Fast Rubine B 」(日本化薬株式
会社製)及び3重量%濃度のアントラキノン系分散染料
「Kayalon Fast Blue FN」(日本化薬株式会社製)を用
いたこと(地色;黒色)、三角模様を切り抜いた、酵
素液注入用ゴム板を用いたこと、抜染処理条件は60
℃、2時間であること以外は、実施例1と同様にして着
色抜染処理を行った。その結果、布を染めている2種類
のアゾ系染料が同時に資化されるとともに、布を染めて
いる非アゾ系染料が脱色されず残存して、黒色の地に青
色の三角模様が得られた。また、この場合も、鮮明な模
様を示した。
【0041】実施例7 本実施例では、使用酵素液として、上記実施例1で用
いた酵素液にアゾ系酸性染料「Kayanol Milling Yellow
3GW」(日本化薬株式会社製)を4重量%加えた着色抜
染液を用いたこと、布の材質としてウールを用いたこ
と、この布の染色用染料としてアントラキノン系酸性
染料「Alizarine Rubinol 3G 115% 」(山田化学工業株
式会社製)及びアゾ系酸性染料「Kayanol Navy Blue R
」(日本化薬株式会社製)を用いたこと(地色;紫
色)、抜染の後に100℃、60分間常圧でスチーム
処理を行い、更に水洗、湯洗を行ったこと以外は、実施
例1と同様にして着色抜染処理を行った。この結果、酵
素液側のアゾ系染料及び布を染めているアゾ系染料とも
に略脱色されるとともに、布を染めている非アゾ系染料
が脱色されずに残存して、紫色の地に略赤色の所定の模
様が得られた。
【0042】実施例8 本実施例では、使用酵素液として、上記実施例1で用
いた酵素液にアゾ系酸性染料「Kayanol Navy Blue R 」
(日本化薬株式会社製)及びアントラキノン系酸性染料
「Alizarine Rubinol 3G 115% 」(山田化学工業株式会
社製)を各2重量%加えた着色抜染液を用いたこと、
布の材質としてウールを用いたこと、この布の染色用
染料としてアゾ系酸性染料「Kayanol Navy Blue R 」
(日本化薬株式会社製)を用いたこと(地色;青色)以
外は、実施例7と同様にして着色抜染処理を行った。こ
の結果、酵素液側のアゾ系染料及び布を染めているアゾ
系染料ともにほぼ脱色されるとともに酵素液側の非アゾ
系染料が脱色されずに残存して、青色の地に赤色〜赤紫
色の所定の模様が得られた。
【0043】実施例9 本実施例では、使用酵素液として、上記実施例1で用
いた酵素液にアントラキノン系酸性染料「Suminol Fast
Blue G 」(住友化学株式会社製)を3重量%加えた加
えた着色抜染液を用いたこと、布の材質としてウール
を用いたこと、この布の染色用染料としてアゾ系酸性
染料「Kayanol Milling Yellow 0」(日本化薬株式会社
製)2重量%及びアゾ系酸性染料「Kayanol Milling Re
d RS 125」(日本化薬株式会社製)2重量%を用いたこ
と(地色;オレンジ色)以外は、実施例7と同様にして
着色抜染処理を行った。この結果、布を染めている2種
類のアゾ系染料が脱色されるとともに酵素液側の非アゾ
系染料が脱色されずに残存して、オレンジ色の地に青色
の所定の模様が得られた。
【0044】実施例10 本実施例では、使用酵素液として、上記実施例1で用
いた酵素液にアントラキノン系分散染料「Diacelliton
Fast Pink R 」(三菱化成ヘキスト株式会社製)を3重
量%加えた加えた着色抜染液を用いたこと、布として
ジアセテート100%平織り布を用いたこと、この布
の染色用染料としてアゾ系分散染料「Kayalon Fast Yel
low G 」(日本化薬株式会社製)1重量%、アゾ系分散
染料「Kayalon Fast Rubine B 」(日本化薬株式会社
製)1重量%及びアントラキノン系分散染料「Suminol
Fast Blue G 」(住友化学株式会社製)を用いたこと
(地色;黒色)、スチーム処理条件が100℃、30
分であること以外は、実施例7と同様にして着色抜染処
理を行った。この結果、布を染めている2種類のアゾ系
染料が脱色されるとともに、酵素液側及び染色布側の2
種類の非アゾ系染料が脱色されずに残存して、黒色地に
薄紫色の所定の模様が得られた。
【0045】実施例11 本実施例では、使用酵素液として、上記実施例1で用
いた酵素液に非アゾ系反応染料(アントラキノン系反応
染料)「Mikacion Brilliant Blue RS」(日本化薬株式
会社製)を3重量%加えたA液と、同染料0.1重量%
加えたB液とを用いたこと、布の材質として綿を用い
たこと、この布の染色用染料としてアゾ系反応染料
「Remazol Red B150」(三菱化成ヘキスト株式会社製)
2重量%を用いて赤色地に染めたこと、上記A液若し
くはB液の2種類の液を用いて所定の模様を各々描いた
こと、抜染処理条件が70℃、1時間であること、
後処理条件が、アルカリ液(90℃)に15秒間浸漬
し、水洗し、酢酸5重量%水溶液に15秒間浸漬して中
和し、その後湯洗及び水洗を行うこと以外は、実施例7
と同様にして着色抜染を行った。この結果、濃度の異な
る酵素液側の非アゾ系染料がそのまま残存して、赤色地
に濃い青色と薄い青色の2色の所定の模様が得られた。
尚、上記アルカリ液の組成(以下の「%」は重量%を表
す。)は以下の通りである。 無水芒硝:10%、炭酸ナトリウム:15%、炭酸カリ
ウム:5%、水酸化ナトリウム:2%、ケイ酸ナトリウ
ム:1%、水:67%(合計100%)。
【0046】比較例 3重量%濃度のアゾ系反応染料「Remazol/Diamira Bril
l.Red 5B」(三菱化成ヘキスト株式会社製)を用いて常
法により染色した綿100%ブロードの布に、水玉模様
を切り抜いたゴム板を置いた。そして、切り抜いた模様
部分に下記の着色抜染糊を印捺する。乾燥後100℃で
10分間蒸熱処理を行い、次に、170℃で7分間過熱
蒸気処理を行い、水洗後、過硼酸ナトリウム5g/リッ
トル、浴比1:40、50℃で10分間、酸化処理を行
い、その後、洗浄、乾燥した。 [着色抜染糊の組成](以下の「%」は重量%を表
す。) スレン染料「Mikethren Brilliant Blue R」(三井東圧
染料株式会社製):3%、ロンガリットC:12%、炭
酸カリウム:7%、ナフカクリスタルガム35%水溶
液:60%、グリセリン:3%、水:15%(合計10
0%)。その結果、赤色の地に青色の水玉模様が得られ
た。この場合は、蒸気処理の設備が必要であり、薬剤も
多種類を用意する必要があり、更に工程も複雑である。
【0047】(3)直接捺染 実施例12 本実施例では、上記実施例1で用いた酵素液にアゾ系直
接染料「Kayarus Supra Yellow RL 」(日本化薬株式会
社製)4重量%及び銅フタロシアニン系直接染料「Sumi
light Supra Turquoise Blue G conc.」(住友化学株式
会社製)4重量%及びブリティッシュガム10重量%
(残部は水である。)を加えて練り上げた糊剤を着色抜
染糊剤とする。一方、3重量%濃度のアゾ系直接染料
「Kayarus Supra Red 6BL 」(日本化薬株式会社製)を
用いて常法により、レーヨン100%羽二重の布を染色
すると、この布は赤色に染め上がった。この赤色に染め
上がったレーヨン100%羽二重に着色抜染糊剤をチュ
ーブから絞り出して模様を書く。この布を湿潤状態のま
ま50℃の恒温槽に3時間入れて、更に恒温槽から取り
出した後100℃、40分間常圧でスチーム処理し、水
洗、湯洗を行った。この結果、糊液側及び染色布側の2
種類のアゾ系染料が略脱色される( 尚、糊液側のアゾ染
料がある程度残る。) とともに、糊液側の非アゾ系染料
が脱色されずに残存して、赤色の地に青緑色若しくは緑
青色の模様が得られた。
【0048】(4)抜染の程度について 実施例13 本実施例では、酵素液として上記実施例1で用いたも
のを用いたこと、使用した布はレーヨン又は綿の2種
類を用い、この各々の布にアゾ系直接染料「Kayarus Su
pra Yellow RL 」(日本化薬株式会社製)を用いて染色
したこと(地色;黄色)、抜染処理条件は40℃、3
時間であること以外は、実施例1と同様にして試験を行
った。この結果、綿の場合はこのアゾ系染料による着色
が完全に脱色されたが、レーヨンの場合は色が薄くなっ
たものの完全に脱色されなかった。尚、このレーヨンの
場合、同温度にて5時間かけて同様に処理した所、略完
全に脱色できた。従って、条件によってはアゾ系染料に
よる着色が脱色され若しくは減色されるとともに、布の
種類及び脱色温度によっては脱色の程度が異なることが
判る。
【0049】実施例14 本実施例では、使用酵素液として、上記実施例1で用
いた酵素液にアゾ系直接染料「Kayarus Supra Yellow R
L 」(日本化薬株式会社製)を3重量%加えた着色抜染
液を用いたこと、布の材質としてレーヨンを用いたこ
と、この布の染色用染料として3重量%のアントラキ
ノン系反応染料「Mikacion Brilliant Blue RS」(日本
化薬株式会社製)を用いたこと(地色;青色)、抜染
条件は50℃、1時間であること以外は、実施例1同様
にして半着色抜染処理を行った。この結果、このアゾ系
直接染料が全部脱色されずその一部が残存したので、青
色の地に緑がかった青の模様となった。このように、レ
ーヨン基材を用い且つこの抜染条件下においては、半抜
染されるので、ぼかし染色が可能となる。
【0050】実施例15 本実施例では、着色抜染糊液として、上記実施例1で
用いた酵素液に銅フタロシアニン系直接染料「Sumiligh
t Supra Turquoise Blue G conc.」(住友化学株式会社
製)4重量%、アゾ系直接染料「Kayarus Supra Yellow
RL 」(日本化薬株式会社製)4重量%及びブリティッ
シュガム10重量%(残部は水である。)を加えて練り
上げた糊剤A(緑色)と、このアゾ系直接染料「Kayaru
s SupraYellow RL 」のみを含まない糊剤Bとを用いる
こと、布の材質としてレーヨン100%羽二重を用
い、且つこの布は染色されていないこと、この布に2
種類の糊剤(A剤及びB剤)の各々を用いて所定の模様
を描くこと以外は、実施例12と同様にして直接捺染処
理を行った。この結果、この抜染条件下においては、糊
剤A側のアゾ系染料の一部が脱色される一方で、糊剤B
側には脱色されるべきアゾ系染料が含まれていないの
で、白色地に緑がかった青色(一部脱色された部分)と
青色の2種類の模様ができた。
【0051】(5)実施例の効果 上記各実施例において使用された種々のアゾ系染料(反
応染料、直接染料、酸性染料及び分散染料)のいずれに
おいても脱色されるとともに、非アゾ系染料(アントラ
キノン系反応染料、アントラキノン系酸性染料、アント
ラキノン系分散染料及び銅フタロシアニン系直接染料)
は脱色されないことから判るように、本菌体は優れた選
択性と脱色可能のアゾ系染料の適用の広さを示してい
る。
【0052】また、酵素液に含まれる各種アゾ系染料も
布に染色された各種アゾ系染料も脱色されるし、また各
種基材を種々変えてもこれに染色された各種アゾ系染料
が、その脱色程度が異なる場合があるものの、同様に脱
色された。従って、酵素液等に含まれる染料の種類(ア
ゾ系染料及び非アゾ系染料の有無を問わない。)と布に
染色された染料の種類(アゾ系染料及び非アゾ系染料の
有無を問わない。)との組み合わせを種々選択したり、
各組み合わせの複数を同時に実施することにより、目的
に合った着色及び/又はぼかしの模様を自由に作成でき
る。
【0053】更に、基材の種類、脱色温度及び脱色時間
等を変えることにより抜染程度を変えることができ(自
由に半抜染ができ)、そのため「ぼかし」等の模様も自
由に作ることができる。また、50〜70℃という比較
的高温においても抜染ができるとともに、特に65℃程
度の温度では雑菌の多くが死滅するので、保健衛生上好
ましい。
【0054】尚、本発明においては、前記具体的実施例
に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範
囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、
酵素液等に含まれる染料と基材に染色される染料とこの
基材の種類との組み合わせは、上記実施例以外のものと
することができるし、同時に使用する染料の数も特に限
定されず上記実施例以外の数とすることもできる。更
に、脱色(反応)条件も酵素液が活性な温度範囲内であ
れば、種々選択できる。また、染料の定着はアルカリ液
にて行われるので、アリカリ液に浸漬する場合のみなら
ず、アルカリ液をマイクロカプセル化しこれを、温度若
しくは剪断力等により破壊させることにより定着させる
こともできる。
【0055】
【発明の効果】本発明の酵素による捺染方法によれば、
還元剤又はアルカリを用いることがないので、染料の制
約が少なく、基材の痛みも少ないうえに、色境界部分の
にじみが少なく、そのため細かくて複雑な模様を作成で
きる。また、本捺染方法によれば、鮮やかな色を有する
抜染が可能であるし、ぼかし(半抜染)の模様も、抜染
条件を選択することにより自由に且つ容易に作成でき
る。更に、酵素液に含まれる染料の種類と布に染色され
た染料の種類との組み合わせを種々選択することによ
り、目的に合った着色及び/又はぼかしの模様を作成で
きる。また、加熱若しくはpH10.5以上のアルカリ
液等による処理を行うことにより、容易に酵素の活性を
抑えることができるので、容易に且つ確実に防染を行う
こともできる。また、本発明のアゾ系染料脱色用酵素を
用いれば、アゾ系染料による着色を確実に且つ容易に消
失させ若しくは低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の酵素及び補酵素を用いてアゾ系染料の
Roccellin を脱色する作用を説明する説明図である。
【図2】本発明の酵素及び補酵素を用いてアゾ系染料の
Methyl redを脱色する作用を説明する説明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 横山 正 神奈川県高座郡寒川町田端1580番地 ユシ ロ化学工業株式会社内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アゾ系染料により染色された染色基材上
    に、アゾ系染料、非アゾ系染料及びバチルス属に属する
    菌種の菌体BacillusOY1−2(受託番号;微工研菌寄
    第13118号)が産生する酵素Azoreductase(diapho
    raseに属する酵素)のうちの少なくとも該酵素を含む液
    若しくは糊剤を所望形状に塗布し、その後、該酵素を作
    用させて上記アゾ系染料による着色を消失若しくは低減
    させて捺染を行うことを特徴とする酵素による捺染方
    法。
  2. 【請求項2】 アゾ系染料及び非アゾ系染料により染色
    された複合染色基材上に、アゾ系染料、非アゾ系染料及
    びバチルス属に属する菌種の菌体BacillusOY1−2
    (受託番号;微工研菌寄第13118号)が産生する酵
    素Azoreductase(diaphoraseに属する酵素)のうちの少
    なくとも該酵素を含む液若しくは糊剤を所望形状に塗布
    し、その後、該酵素を作用させて上記アゾ系染料による
    着色を消失若しくは低減させて捺染を行うことを特徴と
    する酵素による捺染方法。
  3. 【請求項3】 染色されていない基材若しくは非アゾ系
    染料により染色された染色基材上に、アゾ系染料、非ア
    ゾ系染料及びバチルス属に属する菌種の菌体BacillusO
    Y1−2(受託番号;微工研菌寄第13118号)が産
    生する酵素Azoreductase(diaphoraseに属する酵素)の
    うちの少なくとも該アゾ系染料及び該酵素を含む液若し
    くは糊剤を所望形状に塗布し、その後、該酵素を作用さ
    せて上記アゾ系染料による着色を消失若しくは低減させ
    て捺染を行うことを特徴とする酵素による捺染方法。
  4. 【請求項4】 上記アゾ系染料による着色を消失若しく
    は低減させる温度が20〜70℃である請求項1〜3記
    載の酵素による捺染方法。
  5. 【請求項5】 上記酵素を含む液若しくは糊液が塗布さ
    れて形成された所望形状の一部の上に、70℃以上の
    温度に加熱された模様を描く工程、pH10.5以上
    のアルカリ性の液若しくは糊剤、又はpH4以下の酸性
    の液若しくは糊剤で模様を描く工程のうちの少なくとも
    1つを実施する請求項1〜4記載の酵素による捺染方
    法。
  6. 【請求項6】 アゾ系染料に作用させて該アゾ系染料に
    よる着色を消失若しくは低減せしめる、バチルス属に属
    する菌種の菌体BacillusOY1−2(受託番号;微工研
    菌寄第13118号)が産生する酵素Azoreductase(di
    aphoraseに属する酵素)からなることを特徴とするアゾ
    系染料脱色用酵素。
  7. 【請求項7】 20〜70℃にてアゾ系染料による着色
    を消失若しくは低減させることが可能である請求項6記
    載のアゾ系染料脱色用酵素。
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Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1998046820A1 (en) * 1997-04-17 1998-10-22 Novo Nordisk Biochem North America, Inc. Enzymatic discharge printing of dyed textiles
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