JPH08111990A - 超音波モータの出力伝達機構および光学機器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 超音波モータの有する起動および停止が速い
という特性を生かせ、高精度の位置決めを可能とする超
音波モータの出力伝達機構を提供する。 【構成】 棒状振動子１の駆動面に加圧接触し、該棒状
振動子に励起される駆動波により回転駆動される移動体
２を有する超音波モータにおける該移動体の外周部に被
伝達部材１１を側圧手段を介して摩擦接触させる。 【効果】 超音波モータの移動体の回転運動を摩擦力に
より被伝達部材の直線運動に直接変換するので、歯車伝
達機構が有していたバックラッシュ等の影響を受けるこ
とがなくなり、被伝達部材により駆動される部材の起動
・停止を速め、また超音波モータの有する起動停止特性
を最大限発揮させることができ、高精度の位置決めが可
能となる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は振動発生用素子と、該素
子からの振動を受けて振動する振動子に発生させた振動
によって、該振動子に圧接した移動体を相対的に移動さ
せる超音波モータの出力伝達機構および該出力伝達機構
を用いた光学機器に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】超音波モータ、特に棒形状に形成された
棒状超音波モータの回転出力を外部に取り出す出力伝達
機構としては、特開平４−９１６７９号公報に開示され
ている。この出力伝達機構は、図４に示すように、棒状
超音波モータＡの回転出力部材をなすギヤ３を歯車減速
機構の入力ギヤ４に噛合させている。

【０００３】棒状超音波モータＡの構造、駆動原理等に
ついては特開平３−１１９８１号公報、特開平５−２１
１７８５号公報等に詳細が開示されているので、ここで
は簡単に説明する。棒状超音波モータＡは、振動弾性体
間に駆動用の圧電素子等を挟持したものを振動子とし、
該駆動用の圧電素子に位相の異なる周波電圧を印加する
ことにより、該振動子の先端面の駆動面における表面粒
子に円又は楕円運動を励起させ、該駆動面に加圧手段を
介して加圧接触する移動体２を摩擦駆動するようにして
おり、移動体２にギヤ３が連結され、移動体２の回転と
一体となってギヤ３が回転し、モータＡの出力をギヤ４
に伝達する。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来例では外部に出力を伝達するためにギヤを使用してい
るので、ギヤのかみ合わせ時に必ず生じるバックラッシ
で、外部ギヤの停止位置精度が保てないばかりか、移動
用が回転してもギヤの歯同士がかみ合うまで移動体の空
転が起こり、外部ギヤの動作が生じるまでの時間を費や
すことになる。元々超音波モータは電磁モータと比較し
て、その起動及び停止に費やす時間が短いことに最大の
特徴があるわけだが、その出力を伝達する外部の構造
に、前述したギヤ伝達方式の様な欠点があっては、超音
波モータの特徴を発揮することは出来ない。

【０００５】本出願に係る発明の第１の目的は、超音波
モータの起動及び停止が速いという特徴を生かせる高精
度の位置決めが可能な超音波モータの出力伝達機構を提
供することにある。

【０００６】本出願に係る発明の第２の目的は、上記し
た第１の目的を実現した超音波モータの出力伝達機構を
利用して、高精度のレンズ位置制御を行える光学機器を
提供することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段および作用】本発明の第１
の目的を実現する第１の構成は、請求項１に記載のよう
に、棒状振動子の駆動面に加圧接触し、該棒状振動子に
励起される駆動波により回転駆動される移動体を有する
超音波モータにおける該移動体の外周部に被伝達部材を
側圧手段を介して摩擦接触させたことを特徴とする超音
波モータの出力伝達機構にある。

【０００８】この構成では、超音波モータの移動体の回
転運動を摩擦力により被伝達部材の直線運動に直接変換
するので、歯車伝達機構が有していたバックラッシュ等
の影響を受けることがなくなり、被伝達部材により駆動
される部材の起動・停止を速め、また超音波モータの有
する起動停止特性を最大限発揮させることができ、高精
度の位置決めが可能となる。

【０００９】本発明の第１の目的を実現する第２の構成
は請求項２に記載のように、請求項１において、被伝達
部材は棒形状に形成され、その長さ方向に沿って駆動さ
れるように支持されていることを特徴とする超音波モー
タの出力伝達機構にある。

【００１０】この構成では、被伝達部材を棒形状とする
ことで、該被伝達部材を直線移動させるのに好適とな
る。

【００１１】本発明の第１の目的を実現する第３の構成
は、請求項３に記載のように、請求項１または２におい
て、超音波モータの移動体における被伝達部材との接触
部は、溝部あるいは突部に形成されていることを特徴と
する超音波モータの出力伝達機構にある。

【００１２】この構成では、移動体に対する被伝達部材
の小さな側圧力で、双方の当接部に大きな垂直抗力を発
生させることができ、超音波モータの駆動に影響を与え
ることなく大きいトルクで被伝達部材を駆動させること
ができる。

【００１３】本発明の第１の目的を実現する第４の構成
は、請求項４に記載のように、請求項１，２または３に
おいて、被伝達部材は、超音波モータの移動体への加圧
接触力で弾性的に変形して側圧力を生じさせることを特
徴とする超音波モータの出力伝達機構にある。

【００１４】この構成では、被伝達部材自身が弾性変形
することで、被伝達部材と移動体との確実な加圧接触が
保証される。

【００１５】本発明の第１の目的を実現する第５の構成
は、請求項５に記載のように、請求項１，２，３または
４において、加圧接触力を発生する手段は、被伝達部材
を支持する部材あるいは超音波モータを支持する部材に
設けたバネ部材であることを特徴とする超音波モータの
出力伝達機構にある。

【００１６】この構成では、被伝達部材と移動体との間
の相対的な位置精度が許容され、双方に間隔が多少ずれ
ても確実な加圧接触が補償される。

【００１７】本発明の第１の目的を実現する第６の構成
は、請求項６に記載のように、請求項５において、加圧
接触力を発生する手段は、バネ部材に加えて被伝達部材
自身の撓みも利用することを特徴とする超音波モータの
出力伝達機構にある。

【００１８】この構成では、上記した第５の構成の有す
る作用効果に加え、被伝達部材の当接位置に係りなく、
双方の加圧接触力を一定にすることができる。

【００１９】本発明の第２の目的を実現する構成は、請
求項７に記載のように、請求項１ないし６のいずれかに
記載の超音波モータの出力伝達機構により、レンズ光学
系を駆動することを特徴とする光学機器にある。

【００２０】この構成では、超音波モータにより、例え
ばオートフォーカス用のレンズを高精度に位置決め制御
することが可能となる。

【００２１】

【実施例】図１は本発明の第１の実施例を示す。

【００２２】本実施例の超音波モータは、図４に示す従
来の超音波モータと同様に棒状の超音波モータであっ
て、振動子の軸央部に設けられた支持ピン６の先端部に
固定された固定部材７が取付体８にネジ止めされること
により、超音波モータＡが該取付体８に固定される。

【００２３】本実施例の超音波モータＡの移動体２は円
筒形状に形成され、該移動体２の外周面の接線方向に延
びる被伝達部材をなす棒状部材１１を該移動体２の外周
面に加圧接触させている。Ｂは、テーパ形状に形成され
た一対のローラ１２を枠部材１３により支持して構成さ
れた軸受部材で、棒状部材１１の長さ方向に沿って一対
配置され、ローラ１２のテーパ面に棒状部材１１の外周
面が当接し、該棒状部材１１をその軸方向に沿って移動
可能に支持している。

【００２４】この軸受部材Ｂは、例えばレンズ鏡筒の固
定筒等の取付体８に取付けられ、棒状部材１１を超音波
モータＡの移動体２の外周面に押し付けできるように超
音波モータＡとの間隔を有している。

【００２５】棒状部材１１は例えばフォーカスあるいは
ズームのためのレンズ群１４を保持する保持枠に連結さ
れ、超音波モータＡの駆動により移動体２が連結される
と、光軸方向に沿ってレンズ群１４を移動させる。本実
施例において、棒状部材１１は、例えば中空の円筒形状
に形成され、軸心に垂直な断面での形状は円形の一部を
直線にした（弦）形状で、該直線部分を超音波モータＡ
の移動体２の側面に加圧接触させている。ここで、棒状
部材１１は移動体２の側面に圧接されることにより、棒
状部材自身がバネのように機能して撓み、移動体２に対
する加圧接触を確実なものとしている。なお、このとき
のバネ定数は軸受部材Ｂの一対のローラ１２同士の間隔
が決められている場合、棒状部材１２の太さと材質を変
更することで自由に選定することができる。

【００２６】本実施例では、超音波モータＡの移動体２
と被伝達部材である棒状部材１１とを加圧接触させ、摩
擦力により移動体２の回転力を棒状部材１１の直進運動
に変換させる伝達機構を構成することにより、移動体２
の回転力を時間的な遅れを生じることなく棒状部材１１
に伝達することができ、また超音波モータＡの駆動停止
に伴い、棒状部材１１も直ちに停止する。これにより、
超音波モータＡの有する特性を有効に発揮でき、高精度
の位置決めを行うことができる。

【００２７】（第２の実施例）図２は本発明の第２の実
施例を示す。

【００２８】上記した第１の実施例において、棒状部材
１１を円筒形状とし、この棒状部材１１が当接する移動
体２の当接面は平坦面としているが、図２の（ａ）に示
す実施例では、棒状部材１１を円筒形状、移動体２の外
周面に断面Ｖ字形状の溝部２ａを形成し、この溝部２ａ
に移動体２を嵌め込んで加圧接触させるようにしてい
る。

【００２９】本実施例では前述の接触により摩擦力を生
じ、移動体２の回転力を棒状部材１１に伝達しているの
で、該棒状部材１１の推進力を大きくするには、前記摩
擦力を大きくしなければならない。該摩擦力は前記移動
体の前記接触部での回転力と同等程度が望ましい。

【００３０】ところで、この摩擦力を大きくする方法に
は２つある。１つは接触部の摩擦係数を大きくすること
である。これには互いの材料の選定が重要になる。本実
施例では移動体の表面にアルマイト膜を形成し、棒状部
材はステンレス鋼を使用している。もう１つの方法は、
接触部の垂直抗力を大きくすることである。但し、この
方法は単純には移動体への側力増大につながってしま
い、余りそれが大きいと超音波モータの摩擦しゅう動部
の接触状態を不均一なものにし、モータ性能に悪影響を
及ぼしてしまう。側力の存在は一般の電磁モータでは余
り問題にならないのだが、超音波モータでは重大な問題
である。

【００３１】そこで、本実施例では移動体２の外周部に
溝２ａを設け「くさび効果」により、小さい側力で接触
部に大きな垂直抗力を発生している。図２の（ｂ）に示
す実施例は移動体２の外周部に突起２ｂを設け、逆に棒
状部材１１の断面にはくさび部を設けて図２の（ａ）の
実施例と同等の効果を発生させている。図２の（ｃ）に
示す実施例は移動体２にＶ字溝３ａを有する摩擦力伝達
部材３を固定し、このＶ字溝３ａに円形の棒状部材１１
を加圧接触させている。本実施例では摩擦力伝達部材３
を移動体２とは別の材料を選定出来るので、摩擦係数の
大きな材質を使える。

【００３２】本実施例では該摩擦伝達部材３にナイロン
樹脂を用い、棒状部材１１にはピアノ線にニッケルメッ
キしたものを使っている。又、本実施例では摩擦力伝達
部材３が棒状部材１１と接触する接触位置を移動体２の
外径よりも小径にしている。この様に接触部の直径を調
整することで、回転−直動減速比を自由に選べることが
できる。

【００３３】図３は第３の実施例を示す。

【００３４】本実施例は、ビデオレンズ鏡筒の駆動用に
適用したものである。本実施例での重要な点は、例えば
図２の（ａ）に示すＶ字溝を有する移動体２とレンズ保
持部材１４の間に断面略Ｓ字形状のバネ１５が設けられ
ていることである。棒状部材１１は該バネ１５に結合さ
れ、又該バネ１５はレンズ保持部材１４に固定されてい
る。該バネ１５の役割は棒状部材１１と移動体２の相対
位置精度を許容するためのものである。

【００３５】すなわち、固定された移動体２の位置に対
して、棒状部材１１の位置が多少ずれても、該バネによ
りほぼ一定の前述した加圧接触力が得られる様になって
いる。なお該バネの形状は断面ぼＳ字形状とし、棒状部
材に垂直な方向のバネ剛性を小さくして移動体２の加圧
力に影響を与えないようにし、他の方向（棒の横方向）
には剛性が大きくなるように設計されている。

【００３６】図３の（ｂ）には該バネ１５と棒状部材１
１の詳細を示している。バネ１５には切り欠き部１５ａ
が設けられている。これにより移動体２からの側力が棒
状部材１１に加わった時、その側力が棒状部材１１の軸
心方向のどの位置にかかっても、棒状部材１１からの反
力が同じ位になる様になっている。つまり、棒状部材１
１の中央付近に側力が加わった時は、該棒状部材自身の
たわみも生じる構造になっている。

【００３７】なお、該バネの目的は前述した通りなの
で、モータ固定部材１６がバネを兼ねた構造になってい
ても良い。

【００３８】

【発明の効果】請求項１に記載の発明によれば、超音波
モータの移動体の回転運動を摩擦力により被伝達部材の
直線運動に直接変換するので、歯車伝達機構が有してい
たバックラッシュ等の影響を受けることがなくなり、被
伝達部材により駆動される部材の起動・停止を早め、ま
た超音波モータの有する起動停止特性を最大限発揮させ
ることができ、高精度の位置決めが可能となる。

【００３９】請求項２に記載の発明によれば、被伝達部
材を棒形状とすることで、該被伝達部材を直線移動させ
るのに好適となる。

【００４０】請求項３に記載の発明によれば、移動体に
対する被伝達部位の小さな側圧力で双方の当接部に大き
な垂直抗力を発生させることができ、超音波モータの駆
動に影響を与えることなく大きいトルクで被伝達部材を
駆動させることができる。

【００４１】請求項４に記載の発明によれば、被伝達部
材自身が弾性変形することで、被伝達部材と移動体との
確実な加圧接触が補償される。

【００４２】請求項５に記載の発明によれば、被伝達部
材と移動体との間の相対的な位置精度が許容され、双方
に間隔が多少ずれても確実な加圧接触が補償される。

【００４３】請求項６に記載の発明によれば、上記した
請求項５に記載の発明が有する作用効果に加え、被伝達
部材の当接位置に係りなく、双方の加圧接触力を一定に
することができる。

【００４４】請求項７に記載の発明によれば、超音波モ
ータにより、例えばオートフォーカス用のレンズを高精
度に位置決め制御することが可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１の実施例を示し、（ａ）は縦断面
図、（ｂ）は横断面図。

【図２】本発明の第２の実施例における移動体と棒状部
材との形状を夫々示す。

【図３】本発明をビデオカメラのレンズ駆動系に用いた
第３の実施例を示し、（ａ）は断面図、（ｂ）はバネの
斜視図を示す。

【図４】従来の超音波モータの出力伝達機構を示す断面
図。

【符号の説明】

１…振動子 ２…移動体 ３…摩擦力伝達部材 ４…外部ギヤ １１…棒状部材 １５…バネ Ａ…棒状超音波モータ

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 金田 直也 東京都大田区下丸子３丁目30番２号 キヤ ノン株式会社内

Claims (7)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 棒状振動子の駆動面に加圧接触し、該棒
   状振動子に励起される駆動波により回転駆動される移動
   体を有する超音波モータにおける該移動体の外周部に被
   伝達部材を側圧手段を介して摩擦接触させたことを特徴
   とする超音波モータの出力伝達機構。
2. 【請求項２】 請求項１において、被伝達部材は棒形状
   に形成され、その長さ方向に沿って駆動されるように支
   持されていることを特徴とする超音波モータの出力伝達
   機構。
3. 【請求項３】 請求項１または２において、超音波モー
   タの移動体における被伝達部材との接触部は、溝部ある
   いは突部に形成されていることを特徴とする超音波モー
   タの出力伝達機構。
4. 【請求項４】 請求項１，２または３において、被伝達
   部材は、超音波モータの移動体への加圧接触力で弾性的
   に変形して側圧力を生じさせることを特徴とする超音波
   モータの出力伝達機構。
5. 【請求項５】 請求項１，２，３または４において、加
   圧接触力を発生する手段は、被伝達部材を支持する部材
   あるいは超音波モータを支持する部材に設けたバネ部材
   であることを特徴とする超音波モータの出力伝達機構。
6. 【請求項６】 請求項５において、加圧接触力を発生す
   る手段は、バネ部材に加えて被伝達部材自身の撓みも利
   用することを特徴とする超音波モータの出力伝達機構。
7. 【請求項７】 請求項１ないし６のいずれかに記載の超
   音波モータの出力伝達機構により、レンズ光学系を駆動
   することを特徴とする光学機器。