JPH08109492A - スズ−アンチモン合金用電気めっき浴 - Google Patents

スズ−アンチモン合金用電気めっき浴

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JPH08109492A
JPH08109492A JP27295694A JP27295694A JPH08109492A JP H08109492 A JPH08109492 A JP H08109492A JP 27295694 A JP27295694 A JP 27295694A JP 27295694 A JP27295694 A JP 27295694A JP H08109492 A JPH08109492 A JP H08109492A
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JP
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bath
alloy
tin
electroplating
antimony alloy
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JP27295694A
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Kazuo Ito
和生 伊藤
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Yuken Kogyo Co Ltd
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Yuken Kogyo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 フッ素化合物のような危険な錯化剤を使用し
なくてもも、高濃度のSbを安定して含有させることが
でき、生産性良好に高品質なSn−Sb電気めっきが可
能な電気めっき浴を提供すること。 【構成】 耐熱性が要求される電気・電子部品へスズ−
アンチモン合金被膜を形成するのに好適なスズ−アンチ
モン合金用電気めっき浴。可溶化錯化剤として、低級炭
化水素の水素が1個または2個のホスホン酸基(−P=
O(OH)2)で置換された構造と、低級炭化水素の水
素がヒドロシル基及び/またはカルボキシル基で置換さ
れた構造とを有する化合物を含み、めっき成分として第
一スズイオン(Sn2+)及び3価のアンチモニン(Sb
(III ))を含む。浴pH2〜7の範囲で調整して使用
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はスズ−アンチモン(Sn
−Sb)合金用電気めっき浴に関し、特に、耐熱性が要
求される電気・電子部品へスズ−アンチモン合金被膜を
形成するのに好適な発明である。
【0002】なお、以下の説明で「%」は、特に、断ら
ない限り、「重量%」を意味する。
【0003】
【従来の技術】Sn中にSbは室温で約7%固溶し、そ
れ以上にSb含有率が増すと金属間化合物が晶出するこ
とが知られている。このSnーSb合金はSnーNi、
SnーCo合金などに比べ抗張力に優れ、濃厚な硝酸に
対する耐食性に優れている。(石田求、川口寅之輔;日
本金属学会誌、8巻、389頁(1944年)参照) SnーSb合金はブリタニアメタルとして、化学的に安
定でSnより硬く広い用途がある。(柴田雄次;無機化
学全書IV−4(窒素族)、頁320(丸善発行,19
54年発行参照) また、このSnーSb合金は、高融点はんだの主成分と
して使用されており、高温度(約240℃)にさらされ
る電気・電子部品の接合、太陽を利用した加熱装置や冷
凍装置などに使用される銅管類の接合に利用されてい
る。
【0004】SnーSb合金を得るための電気めっき浴
については、例えば、Sbを1〜2×10ー3mol/L
含有する硫酸浴(ソビエト連邦特許第768,859
号)、カリウム浴(米国特許第2,825,683)な
どがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらのめっ
き浴は、Sb濃度:1〜2×10ー3mol/Lであり、
諸物性に優れたSb含有率5%以上のSnーSb合金を
得ることはできなかった。Sbを高濃度としようとする
と浴安定性に欠け、Sn、Sbの水酸化物が沈殿してし
まい、めっき不可となる。
【0006】そこで、フッ化アンモニウム等のフッ素化
合物を錯化剤として使用し、Sb高濃度化を可能とした
硫酸浴がソビエト連邦特許第768,859号で報告さ
れている。
【0007】しかし、この硫酸浴は、有毒で腐食性のあ
るフッ素化合物を含むため、作業環境上望ましくないと
共に、めっき浴を含めためっき装置を傷め易い。
【0008】本発明は、上記にかんがみて、フッ素化合
物のような危険な錯化剤を使用しなくても、高濃度のS
bを安定して含有させることができ、生産性良好に高品
質な(Sb含有率の高い)Sn−Sb電気めっきが可能
な電気めっき浴を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために、良好な電流効率が期待される酸性領
域で、良好な浴安定性が得られる浴種を検討した結果、
1ーヒドロキシエタンー1,1ージホスホン酸(以下
「HEDP」と略す)が浴安定性に優れることを見いだ
し、下記構成のSn−Sb合金用電気めっき浴に想到し
た。
【0010】可溶化錯化剤として、低級炭化水素の水素
が1個または2個のホスホン酸基で置換された構造と、
低級炭化水素の水素がヒドロシル基及び/またはカルボ
キシル基で置換された構造とを有する化合物を含み、め
っき成分として第一スズイオン及び3価のアンチモン
(Sb(III )を含む、pH2〜7の範囲で調整して使
用されることを特徴とする。
【0011】
【手段の詳細な説明】以下、本発明の各手段について、
詳細に説明をする。
【0012】(1) 可溶化錯化剤である、低級炭化水素の
水素が1個または2個のホスホン酸基(−P=O(O
H)2 )で置換された構造と、低級炭化水素の水素がヒ
ドロシル基及び/またはカルボキシル基で置換された構
造とを有する化合物の代表例として、炭化水素の第一炭
素の水素を、ホスホン酸基とヒドロキシル基で置換させ
た、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸(H
EDP)及びHEDPのエタンを、メタン、プロパン、
ブタン等の低級炭化水素に置換した化合物を挙げること
ができる。さらには、低級炭化水素置換アミンの同一ま
たは別の炭化水素の水素をホスホン酸基、ヒドロキシル
基、又は、カルボキシル基で置換させた、下記ホスホン
酸誘導体類を例示できる。
【0013】ニトリロ酢酸−ジ(メチレンホスホン
酸)、N−ヒドロキシエチル−イミノジ(メチレンホス
ホン酸)、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジア
ミン−N,N′,N′−トリ(メチレンホスホン酸)、
N,N′−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン
−N,N′−ジ(メチレンホスホン酸)。
【0014】以下、HEDPを、主として例に採り説明
するが、上記各化合物でも同様である。
【0015】このとき、HEDPの濃度は、通常、0.
1〜1.5mol/dm3 、望ましくは0.5〜1.0
mol/dm3 とする。HEDPが過少では、十分な浴
安定性を得難く、過多となると、多量の沈殿が発生し易
い。である。
【0016】(2) めっき成分の一つである第一スズイオ
ン(Sn2+)は、第一スズ化合物の形態で導入する。通
常、酸化第一スズ(その水和物)を使用するが、塩化第
一スズ、硫酸第一スズ、亜スズ酸塩等を、HEDPの浴
安定化作用を阻害しない範囲で使用可能である。
【0017】ここで、Sn2+の濃度は、0.05〜1.
0mol/dm3 、望ましくは、0.1〜0.5mol
/dm3 とする。
【0018】他方のめっき成分である3価のアンチモン
(Sb(III ))は、アンチモン化合物の形態で導入す
る。本発明に使用可能なアンチモン化合物としては、通
常、三酸化二アンチモンを使用するが、アンチモン酸
(III )塩でも、HEDPの浴安定化作用を阻害しない
範囲で使用可能である。
【0019】(3) 上記スズ化合物またはアンチモン化合
物の含有率は、浴におけるHEDP濃度、浴pH、要求
される合金組成等、により異なるが、Sn2+の濃度は、
0.05〜1.0mol/dm3 、望ましくは、0.1
〜0.5モルとし、Sb(III )濃度は、0.005〜
1.0mol/dm3 、望ましくは、0.01〜0.5
モルとする。
【0020】(4) 本発明のめっき浴は、通常、各金属塩
を、予めSn2+(HEDP)溶液及びSb(III )(H
EDP)溶液として調製し、その後、両溶液を混合して
調製することが、安定したメッキ浴がより得易くて望ま
しい。
【0021】そして、本発明の浴はpH2〜7の範囲で
使用される。pHが低過ぎると、多量の沈殿が発生し易
く、高すぎると、陰極電流効率が低くなり望ましくな
い。このpH調製は、通常、アンモニアで行い、HED
Pは、遊離酸及びアンモニウム塩としてのめっき浴中に
含まれることとなる。なお、pH調製は、他の、アルカ
リ性化合物(例えば、水酸化アルカリ類、アミン類)、
さらには、上記第一スズ化合物またはアンチモン化合物
で行ってもよい。
【0022】(5) 本発明のめっき浴を使用してのSn−
Sb合金の電着(電気めっき)は、次のようにして行
う。
【0023】例えば、陽極は白金電極とし、陰極には被
メツキ物(例えば、銅板、鉄板、ニッケル板)を接続
し、浴温:室温〜 50℃ 、定電流または定電位電解
により、めっき厚等に応じて所定の電気量を通電して行
う。
【0024】ここで、例えば、定電流の場合は、5〜1
00mA・cm-2(望ましくは、8〜60mA・c
-2)とし、電流効率50%以上(望ましくは70%以
上)の範囲で行う。
【0025】こうして被めっき物上に、Sbを5wt%以
上含有する高品質のSb−Sn合金を、生産性良好に電
着できる。
【0026】
【試験例】以下、本発明の効果を確認するために行った
試験例について説明をする。
【0027】即ち、HEDP浴からのSnーSb合金電
気めっきについて、合金組成と陰極電流効率ならびに合
金電着物に及ぼす浴組成、電解条件の影響を電気化学的
方法により検討した。
【0028】<実験方法> (1) 電解液の調製 電解液は表1に示す濃度となるように調製した。pH2
となるようにアンモニア水で調整した。
【0029】SnおよびSbのHEDP塩の作成方法は
つぎのようである。
【0030】10%ーSnのHEDP溶液の作製:6
0%ーHEDP300gに攪拌下、濃アンモニア水11
3mLを徐々に加える。冷却後、開封直後の酸化第一ス
ズ114gを少量ずつ添加して2時間攪拌する。わずか
な濁りはろ過して液量を1Lとする。
【0031】5%−SbのHEDP溶液の作製:60
%−HEDP580gに三酸化二アンチモン60gを添
加し、2時間攪拌して溶解させた後、濃アンモニア水1
00mLを徐々に添加する。ろ過して液量を1Lとす
る。
【0032】(2) 実験条件および測定方法 電気めっきは定電流および定電位電解で所定の電気量通
電した。陽極にはPt電極を用い、陰極には電着部分
(1cm×1.5cm)を除いてScotch製のマス
キングテープにて絶縁被覆した純銅板を使用した。撹拌
はマグネチッイクスターラーで行い、液温度は20±2
℃に保持した。
【0033】定電位電解および陰極分極曲線の測定にお
いては、先端を陰極に軽く接触させる程度に固定したL
uggin管とそれを塩橋で介した銀/塩化銀(飽和K
CI)電極を参照電極として用いた。
【0034】電気めっき物の表面形態は、高分解能走査
型電子顕微鏡(SEM:日本電子(株)製「JSM−6
300F」)により観察した。
【0035】(3) めっき液および電着物の組成分析 めっき液および電着物の分析は主にICP(セイコー電
子工業(株)製SPS7000)により行った。めっき
液は純水で希釈して分析し、合金電着物の組成は純銅板
上に電気めっきさせた皮膜を塩酸+過酸化水素に溶解さ
せ分析した。
【0036】<試験結果および考察> (1) 電着物合金組成と各種電気めっき条件の関係 電着物合金中のSb含有率(%)および陰極電流効率
とめっき浴組成との関係を、電流密度、10、20、5
0mA・cm-2の場合についてまとめ、図1に示す。
【0037】電着物合金中のSb含有率は、浴中のSb
濃度が20%まではすべての電流密度において電着物合
金組成と浴組成とがほぼ等しくなる。
【0038】浴中Sb濃度を20%以上に増加させると
Sbの優先的な析出が認められ、電流密度が小さいほど
電着物合金中のSb含有率は増加した。従って、HED
P浴からのSnーSb合金電気めっきは、電気化学的に
貴なSbが優先的に析出する。
【0039】陰極電流効率は、陰極電流密度が50mA
・cm-2の場合、浴中のSb濃度が増すとともに高くな
り、浴中のSb濃度が20%以上で、ほぼ80%一定に
なる。しかし、陰極電流密度が、低い10、20mA・
cm-2の場合、陰極電流効率は、浴中のSb濃度が低い
とほぼ100%を示すが、浴中のSb濃度が増加すると
ともに低下傾向となる。
【0040】このように浴中のSb濃度が20%以上に
増加すると、電着物合金中のSb含有率が浴組成より高
くなる。電流効率が低下する現象は、Sbの優先析出に
より、Snの析出が抑制されるためと考えられる。
【0041】電着物合金中のSb含有率および陰極電
流効率とpHとの関係を、図2に示す。
【0042】電着物合金中のSb含有率は、pH4〜5
までは、減少し、pH4〜5を超えると増大傾向とな
る。電流密度10、20mA・cm-2では、pH2.5
を超えると、電位依存性を示すようになる。pH4〜5
までは、pH上昇とともに、HEDPのSbに対する錯
形成力が強くなり、錯塩の安定性が増して、Sbの析出
が抑制されるためと思われる。実際には、pH2.5か
らpH4〜5のpH領域で、合金電気めっきが析出電位
の影響を受ける挙動を示していると考えられる。
【0043】また、陰極電流効率は、10、20、50
mA・cm-2、いずれの電流密度においても、pH4〜
5までは、上昇するが、pH4〜5を超えると下降傾向
となる。この現象は、pH4〜5までは、pHが高くな
るにつれ、陰極からのH2 発生量が抑制されるのとSb
の析出が強く抑制されるため、Snが析出し易くなり、
全体として電流効率の向上をもたらしたと考えられる。
Snの析出量が増加したことは、pH2.5からpH4
〜5.0のpH領域におけるHEDPの錯化力が、Sb
に比べSnに対して弱いと推測される。また、pH4〜
5を超えるpH領域では、SnへのHEDPの錯化力が
徐徐に強くなり、Snの電流効率が低下するので、全電
流効率が低下する。
【0044】攪拌による合金中のSb析出量と陰極電
流効率に与える影響を、図3に示す。
【0045】攪拌を強く変化させていくとSb析出量の
増加と電流効率の向上が認められた。Sn−Sb合金電
気めっきが陰極面へのイオンの拡散の影響を受ける。
【0046】(2) 合金電気めっきの分極挙動 次に、Sn−Sb合金めっき浴について陰極分極曲線を
測定した。
【0047】Sn、Sbのそれぞれの単独浴とSn−
Sb合金浴(浴AB−50)の陰極分極曲線を図4に示
す。
【0048】分極曲線aはSn単独浴(浴A)で、−
0.6VからSn析出が起こり、電位を卑に移行させる
と、H2 発生に伴い電流の増加が認められるが、−0.
67V付近で一旦電流増加は止まり、−0.7V付近で
2 発生が止むと同時に電流低下が起こり、再び多量の
2 発生とともに電流増加が認められた。これは銅およ
びSn上の水素過電圧の相違によって起こるもので、水
素過電圧の小さい銅上ではSn析出と水素発生が同時に
進行するが、銅基坂の全面がSnで被覆されると、Sn
上の水素発生反応になるため、一旦水素発生が止み、再
びSn上の過電圧に達すると水素が発生するためであ
る。
【0049】分極曲線bはSb単独浴(浴B)で、Sn
単独浴より0.4V貴な電位から析出が起こり、陰極電
位を卑に移行させると電流が上昇し、−0.3Vで限界
電流に達する。
【0050】分極曲線cはSbを50%含む合金浴(浴
AB−50)のものであり、この分極曲線は−0.61
Vより卑な領域ではSn単独浴の分極曲線と類似してお
り、外観が黒色から灰色の粗雑な電着物が得られる。−
0.61Vより貴な領域では黒色の電着物が得られる。
【0051】浴組成が陰極分極曲線に与える影響を、
図5に示す。
【0052】曲線aは、Sbを10%含む合金浴(浴A
B−10)の分極曲線であり、析出電位が−0.65V
で、他の合金浴より0.35V卑な電位である。
【0053】曲線b、c、dは、それぞれSb濃度2
0、30、40%の合金浴(浴AB−20・30・4
0)の分極曲線である。どの合金浴も析出電位は−0.
3Vで同一であり、分極曲線も類似しており、明瞭に合
金浴AB−10とは異なっている。
【0054】図4と参照対比すると、浴中のSb含有率
が低い場合は、Sn単独に分極曲線に類似し、Sb含有
率が20%以上ではSbの分極曲線に接近する。Sbが
Snに固溶するα相合金では、分極曲線もSn単独の場
合とほとんど変わらないことが分かる。
【0055】(3) 合金電気めっきの部分分極曲線と部分
電流効率 次に、種々の陰極電位で、Sn−Sb合金浴(AB−5
0)から析出した電着物合金の部分分極曲線を、図6に
示す。
【0056】全分極曲線は、各設定電位で電気めっきし
た時の定常電流値を示した。−0.62〜−0.65V
の電位範囲で、電着物合金中のSb析出量が急激に減少
し、逆にSnの析出量が急増する挙動を示す。SnとS
bの部分分極曲線は共に−0.62Vから立ち上がり、
Snの分極曲線は−0.67Vまで電流が増加して限界
電流密度に達するが、SbはSnより貴な電位−0.6
3Vで限界電流密度に達する。また、H2 の発生は−
0.65V付近から始まり、−0.67V付近で急に止
む。したがって−0.67〜−0.7Vの電位範囲での
電流密度の減少は、主にH2 発生反応の抑制によるもの
で、これは先に述べた素地金属の水素過電圧の相違に起
因するものである。
【0057】先に−0.62〜−0.65Vの電位範囲
で電着物合金中のSb析出量が急激に減少すると述べた
が、こうした状況を各設定電位における電着物合金と両
金属の部分電流効率としてまとめ、図7に示す。
【0058】Sn−Sb合金浴(AB−50)からの電
気めっきにおいては、陰極電位が−0.61〜−0.6
5Vの範囲で最も組成変化が激しく、−0.61Vより
貴な領域で、Sb85%以上、−0.62V付近でSb
65%の含有率を示す黒色の電着皮膜が得られる。この
電位領域では、電位を卑にするとSb析出電流効率の減
少と、Sn析出電流効率の増加が認められ、SnとSb
の電流効率曲線は互いに接近する。一方−0.65Vよ
り卑な電位では、Sb50%に近い安定した合金組成の
皮膜が得られる。
【0059】皮膜外観は、光沢のある黒色皮膜から明瞭
にSn析出量増加が認められる金属Snに近い外観へと
変化する。
【0060】なお、−0.7Vより卑な電位ではH2
発生が増加し、めっき条件によっては、SnSb金属間
化合物と思われる金属光沢外観を有する皮膜が得られ
る。
【0061】(4) 合金電気電着物の表面形態 図8(a)〜(g)に浴組成を変化させたとき、電着物
表面のSEM写真を示す。
【0062】めっき(電着)は、20℃、pH2、0.
20mA・cm-2の条件で、攪拌下で行った。
【0063】SEM写真(a)はSn単独浴からの電着
物で、凹凸が顕著に認められ、無光沢である。
【0064】この表面形態はSbを含有させることで大
きく影響され、めっき浴AB−5、AB−10から電着
した、Sbを5%、10%含有する電着物は、それぞれ
写真(b)、(c)で示すように、Sn単独浴の場合と
は明らかに異なり、平盤状結晶が柱状に成長した形態を
呈する。表面は黒みを帯びた外観を示す。
【0065】めっき浴AB−15、AB−20から電着
したSbを15%、20%含有する電着物は、写真
(d)、(e)で示すように、結晶は等方成長して粒状
にとなり、微細化して表面は平滑となる。表面外観は光
沢のない白色である。
【0066】めっき浴AB−40から電着したSbを4
9%含有する電着物は、写真(f)に示す如く、表面に
は2〜10μmの不均一な粒子状の結晶が多くあり、半
光沢面を形成している。
【0067】さらに、合金浴AB−50から電着した、
Sbを61%を含有する電着物になると、写真(g)に
示す如く、黒色光沢性を有する微細結晶となるが、表面
には多数のクラックが観察される。この電着物は、内部
応力の高い皮膜であることが推測される。
【0068】なお、表2に、Sn−Sb電着物合金の外
観及び被膜の構造(X線回析による)を、まとめるとと
もに、参考に合金融点(冶金学上の)を示す。
【0069】<結論>酸性HEDP(1−ヒドロキシエ
タンー1,1−ジホスホン酸)浴からのSnーSb合金
電着について行った、上記実験結果の検討して得たた結
論を次に述べる。
【0070】陰極分極曲線から、SbはSnより貴な電
位で析出することがわかり、そこで貴な金属であるSb
の浴中濃度比率を増加させると、電流密度の低下、浴温
度の上昇、攪拌の強化等の条件下で、電着物合金中のS
b含有率が浴中の濃度比率より高いSb優先析出の結果
が得られた。
【0071】一方、浴pHのpH4〜5までの上昇は、
Sbの優先析出から、Snの優先析出へと変化させた。
この現象は、HEDPのSbに対する錯化力がpH上昇
とともに強くなり、錯体安定が増して、電気めっきに関
するSb(III )の濃度が低下するためと考えられる。
また、pH4〜5を超えると、HEDPのSnに対する
錯化力が強くなり、Sn2+としての濃度が低下するため
Sbの共析量が増加してくる。
【0072】Sn−Sb電着物合金の表面形態は電着物
中のSb含有率により大きく変化する。Sb含有率が5
%、10%の場合、異方成長性の強い柱状結晶であった
が、Sb含有率を15〜50%と増加させると、結晶は
等方成長して粒状になり、微細化して表面平滑化とな
り、無光沢から半光沢を有する外観が得られる。
【0073】さらに、Sb含有率60%以上では黒色光
沢性のある非晶質に近いと思われる皮膜が得られる。こ
の皮膜は内部応力が高いため、多数のクラックを生じて
いるのが観察された。
【0074】これら種々濃度のSbを含有するSn−S
b合金皮膜は、浴組成の組合せおよび定電位電解法で作
製することができる。特に定電位法において、過電圧−
0.65V以上で、電着物合金組成が浴中比とほぼ同一
になったことは、広い電流密度範囲で合金組成一定の皮
膜(合金電着物)が得られることを示すもので実用上有
効である。
【0075】
【発明の作用・効果】本発明のSn−Sb合金用電気め
っき浴は、上記のように、可溶化錯化剤として、低級炭
化水素の水素が1個または2個のホスホン酸基で置換さ
れた構造と、低級炭化水素の水素がヒドロシル基及び/
またはカルボキシル基で置換された構造とを有する化合
物を含み、めっき成分としてSn2+及びSb(III )を
含み、pH2〜7の範囲に調整して使用される構成によ
り、下記のような作用・効果を奏する。
【0076】フッ素化合物のような危険な錯化剤を使用
しなくてもも、高濃度のSbを安定して含有させること
ができ、生産性良好に高品質(Sn含有率5%以上)な
Sn−Sb電気めっきが可能となる。
【0077】従って、本発明のSn−Sb合金用電気め
っき浴は、鉛の排水規制が強化され現状にかんがみ、P
bレスのはんだ代替めっきとして広範囲な利用が期待で
きる。
【0078】なお、HEDPを使用し、他に錯化剤を併
用しないSn−Sb合金めっき浴の報告は見あたらない
が、ZhuangらによるSnーPb合金浴の報告があ
る(Zhuang, RUIfang and Wang, Kefei; Proc. AESEF A
nnu. Tech. Conf.,77th(Vol 1), 515-27 (1990)参
照)。当該文献は、本発明の発明性に何ら影響を与える
ものではない。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】電着物中のSb含有率と陰極電流効率に及ぼす
浴中の金属濃度比の影響を示すグラフ。
【図2】電着物中のSb含有率と陰極電流効率に及ぼす
浴中のpHの影響を示すグラフ。
【図3】電着物中のSb含有率と陰極電流効率に及ぼす
浴中の攪拌の影響を示すグラフ。
【図4】浴A、BとAB−50の陰極分極曲線を示すグ
ラフ。
【図5】浴組成(Sb含有率)が陰極分極曲線に与える
影響を示すグラフ。
【図6】浴AB−50の全分極曲線と部分分極曲線を示
すグラフ。
【図7】電着物中のSb含有率と陰極電流効率に及ぼす
陰極電位の影響を示すグラフ。
【図8】種々のSb含有率の浴から得られたSn及びS
n−Sb電着物合金の表面を撮影したSEM写真。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 可溶化錯化剤として、低級炭化水素の水
    素が1個または2個のホスホン酸基(−P=O(OH)
    2 )で置換された構造と、低級炭化水素の水素がヒドロ
    シル基及び/またはカルボキシル基で置換された構造と
    を有する化合物を含み、めっき成分として第一スズイオ
    ン(Sn2+)及び3価のアンチモン(Sb(III ))を
    含み、pH2〜7の範囲で調整して使用されることを特
    徴とするスズ−アンチモン合金用電気めっき浴。
  2. 【請求項2】 請求項1において、前記可溶化錯化剤
    が、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸(H
    EDP)であることを特徴とするスズ−アンチモン合金
    用電気めっき浴。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2に記載のスズ−アンチモ
    ン合金用電気めっき浴を使用して、スズ−アンチモン合
    金被膜を形成することを特徴とするスズ−アンチモン合
    金被膜の形成方法。
JP27295694A 1994-10-11 1994-10-11 スズ−アンチモン合金用電気めっき浴 Withdrawn JPH08109492A (ja)

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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN1311103C (zh) * 2001-09-13 2007-04-18 株式会社村田制作所 电镀陶瓷片电子元件的电极的方法
CN104388993A (zh) * 2009-07-31 2015-03-04 出分伸二 含锡合金电镀浴及使用该电镀浴的电解电镀方法
CN104884680A (zh) * 2012-07-31 2015-09-02 波音公司 用于镀锡锑的系统和方法
CN114059115A (zh) * 2021-12-20 2022-02-18 中国计量大学 锡锑电镀液及其制备方法

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