JPH079672Y2 - スライド栓付筆記具 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、スライド栓付の筆記具に関するものである。

〔従来技術とその問題点〕

有底のインキ筒内にインキを充填し、このインキをペン
体に伝達して筆記する筆記具では、通常は、インキ筒と
ペン体の間にペン芯を介在させる。このペン芯は、筆記
に消費されるインキ量と等量の空気をインキ筒内に導入
する機能と、過剰に吐出されるインキを貯溜してインキ
のボタ落ちを防止する機能を有する。ここで、インキが
過剰に吐出するのは、筆記具を高温の場所に放置した
り、筆記者の手の体温が伝達してインキ筒内の温度が上
昇すると、インキ筒内の空気が膨張して、インキ筒内の
圧力が大きくなり、これによってインキが押し出される
ためであるが、ペン芯のインキ貯溜能力に限界があるの
で、吐出量がこの限界を越えるとボタ落ちする。従っ
て、ペン芯を使用せずにインキ筒内にスライド栓を配置
し、インキと空気の置換を行わずに、インキの消費につ
れてスライド栓が前進するようにすれば、インキ筒内に
は空気が存在しないので、圧力の上昇に起因するインキ
のボタ落ちを防止することができるが、更には、部品点
数が少なくなり、インキ筒の容量が大きくなって、筆記
可能距離が増大する利点を有する。

しかしながら、かかるスライド栓付筆記具において、ス
ライド栓をインキ筒内に大きな摺動抵抗で液密に配置す
る必要があり、一方においては、筆記時のインキがスム
ーズに出るためにインキ筒内を簡単にスライドすること
が要求される。このように、スライド栓の摺動抵抗値が
重要であり、適切な値に設定する必要があるが、これが
なかなか困難である。このため、インキ筒内に弁機能を
有するバルブ栓を配置して、インキ筒内を主インキ室と
副インキ室に区画し、副インキ室からペン体にインキを
供給するようにし、筆記によって副インキ室のインキが
消費されて副インキ室内の圧力が低下するとバルブ栓の
弁が開いて主インキ室からこの副インキ室にインキが供
給され、副インキ室は常にインキが充満した状態にする
ことが検討されている。また、筆記具を床上に落下させ
た時のように、インキ室に衝撃が加わって瞬間的に大き
な圧力変化が生じたときでも、このバルブ栓によって緩
衝されるので、インキのボタ落ちが防止される。しかし
ながら、インキの消費によって生じる主インキ室と副イ
ンキ室の圧力差は僅かであり、従来のバルブ栓は、この
僅かな圧力差ではなかなか正確に作動しなかった。

〔考案の目的〕

そこで本考案は、インキの消費によって生じる主インキ
室と副インキ室の僅かな圧力差で正確に作動するバルブ
栓を有するスライド栓付筆記具を提供することを目的と
するものである。

〔考案の構成とその作用〕

本考案の構成は、インキ筒内にインキの消費につれて前
進するスライド栓が配置されてインキ室が形成され、こ
のインキ室内にバルブ栓が配置されて該インキ室がスラ
イド栓側の主インキ室とペン体側の副インキ室とに区画
されたスライド栓付筆記具において、前記インキ筒内に
固着されたバルブ栓は、外周に縦方向のインキ溝が形成
されるとともに、前面に磁石が取付けられ、この磁石に
磁性流体が塗布されてインキ溝を塞ぎ、副インキ室のイ
ンキが消費されて主インキ室と副インキ室に圧力差が生
じるとこの圧力によって磁性流体が流動し、インキ溝を
インキが通過することを特徴とするものである。

磁性流体は、マグネタイトなどの強磁性体を超微粒子に
して界面活性剤によって流動パラフィンなどの溶媒中に
分散させたものであり、磁力によって液体とてしの流動
性を保持しながら磁化する性質を有する。そして、流動
性の程度は磁力によって変化し、任意に調整することが
できるので、主インキ室と副インキ室の圧力差によって
流動するように磁力を調整しておく。かかる磁性流体が
スライド栓の前面に取付けられた磁石に塗布されてイン
キ溝を塞いでいるので、磁性流体がシールの役割を果た
して弁が閉じた状態となり、副インキ室のインキが消費
されて主インキ室と副インキ室に圧力差が生じるとこの
圧力によって磁性流体が流動して弁が開いた状態にな
る。そして、インキが移動して圧力差がなくなると、磁
性流体が磁力によって引き寄せられ、再びインキ溝を塞
いで弁を閉じる。

〔実施例〕

以下に図面に示す実施例に基いて本考案を具体的に説明
する。

インキ筒１は、筆記具の軸筒を兼ねており、先端にはペ
ン体２が取付けられている。このペン体２は連続気泡を
有するプラスチックからなるマーカーであるが、これが
ボールペンチップなどであってもよい。インキ筒１の後
端開口には尾栓８が通気可能に嵌着されており、インキ
筒１内には、スライド栓３が摺動可能に配置され、スラ
イド栓３より前方に水性インキＬが充填されている。そ
して、インキ筒１内のペン体２近傍にはバルブ栓４が嵌
着され、主インキ室６と副インキ室７に区画されてい
る。

ここで、バルブ栓４は、円柱状体であり、その外周に縦
方向の２本のインキ溝41が形成され、その先端面に磁石
５が取付けられているが、磁石５の両磁極はそれぞれイ
ンキ溝41に臨んでいる。そして、この磁石５には、磁性
流体51が塗布されている。磁性流体51は、強磁性体であ
るマグネタイトを直径が10nm程度の超微粒子にして界面
活性剤によって流動パラフィンに分散させたものであ
り、磁石５の磁場によって磁化されている。すなわち、
磁性流体61は流動状態を保持したまま、磁石５の外周に
固定され、第１図に示すように、インキ溝41を塞ぎ、弁
が閉じた状態になっている。磁性流体51の磁石５への固
定の程度、すなわち流動性の程度は磁石５の磁力によっ
て変化するが、主インキ室６と副インキ室７のわずかな
圧力差によって流動するように磁石５の磁力を調整して
ある。

しかして、筆記によって副インキ室７内の水性インキが
消費されると、副インキ室７内の圧力が低下し、この圧
力差によって、第２図に示すように、磁性流体51が前面
方向に流動してインキ溝41を開く。従って、主インキ室
６の水性インキが副インキ室７へ流入し、副インキ室７
は水性インキで充満する。これによって主インキ室６内
の圧力が低下し、スライド栓３が水性インキの消費量だ
け摺動して前進すると、主インキ室６と副インキ室７の
圧力差がなくなり、磁性流体51は、磁力の大きい両磁極
側に引き寄せられ、第１図の状態に戻ってインキ溝41を
塞ぐ。このように、バルブ栓４の弁機構は、僅かな圧力
差によって正確に作動する。また、筆記具を床上に落下
するなどしてインキ筒１内の圧力が急激に変化しても磁
性流体51の弁作用のために緩衝され、ペン体２に伝達さ
れないので、インキのボタ落ちも生じない利点がある。

〔考案の効果〕

以上説明したように、本考案のスライド栓付筆記具は、
バルブ栓に磁性流体による弁機構が付与されているの
で、インキの消費によって生じる主インキ室と副インキ
室の僅かな圧力差で正確に作動するバルブ栓を有するス
ライド栓付筆記具とすることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図と第２図は本考案実施例の断面図、第３図は第１
図のIII-III線におる断面図である。 １……インキ筒、２……ペン体、３……スライド栓 ４……バルブ栓、５……磁石、６……主インキ室 ７……副インキ室、８……尾栓、41……インキ溝 51……磁性流体、Ｌ……水性インキ

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】インキ筒内にインキの消費につれて前進す
   るスライド栓が配置されてインキ室が形成され、このイ
   ンキ室内にバルブ栓が配置されて該インキ室がスライド
   栓側の主インキ室とペン体側の副インキ室とに区画され
   たスライド栓付筆記具において、 前記インキ筒内に固着されたバルブ栓は、外周に縦方向
   のインキ溝が形成されるとともに、前面に磁石が取付け
   られ、該磁石に磁性流体が塗布されて該インキ溝を塞
   ぎ、副インキ室のインキが消費されて主インキ室と副イ
   ンキ室に圧力差が生じるとこの圧力によって磁性流体が
   流動し、インキ溝をインキが通過することを特徴とする
   スライド栓付筆記具。