JPH0793934B2 - 人工骨髄腔の形成による動物の骨の治療方法 - Google Patents

人工骨髄腔の形成による動物の骨の治療方法

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JPH0793934B2 JP11087593A JP11087593A JPH0793934B2 JP H0793934 B2 JPH0793934 B2 JP H0793934B2 JP 11087593 A JP11087593 A JP 11087593A JP 11087593 A JP11087593 A JP 11087593A JP H0793934 B2 JPH0793934 B2 JP H0793934B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、人工骨髄腔の形成に
よる動物の骨の治療方法に関する。犬や猫など小動物の
整形外科において、四肢長骨の接骨手術後に起きがちな
跛行を防止するために、骨空隙部に移植した生体活性型
の固形人工骨や骨セメントペーストの早期完全骨化を図
ることができるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】自動車に轢かれたり、高層マンションの
上から墜落するなどして、犬や猫では四肢の粉砕骨折が
多い。また接骨手術の失敗による骨吸収や、骨腫瘍その
他を治療するために、患部の骨の一部を輪切りにして除
去する場合も少なくない。いずれも骨の欠損箇所が大き
いため、従来より、空隙部に生体活性型の非吸収性人工
骨を移植したり、人工骨と骨断端との接続面に、「つな
ぎ」としてペースト状の骨セメントを注入していた。
【0003】これらの生体活性型人工骨材は、骨の無機
成分であるハイドロキシアパタイトと同質の合成セラミ
ックスを、連通する気孔に富む固形の人工骨に成形した
り、あるいは、生体内でハイドロキシアパタイトに変化
するリン酸カルシウムなどの粉末を、生理食塩水やタン
ニン酸などでペースト状に練って使用する骨セメントと
して市販されている。骨空隙部に移植された生体活性型
人工骨材が、やがて骨化して周囲の骨と癒合することが
できるのは、連通する微細間隙の働きによる。すなわ
ち、毛細管現象によって体液が人工骨材の内部に浸透
し、それに伴い造骨細胞が微細間隙の中へ導かれ、自己
の周囲に石灰塩類を沈着させて骨細胞になる。つまり、
生体活性型人工骨材は、優れた生体適合性によって骨と
の複合体を作るのであり、これを骨化、または新生骨の
形成と称している。
【0004】骨芽細胞とも呼ばれる造骨細胞には、繊維
芽細胞系と細網細胞系の2系統があり、繊維芽細胞系の
造骨細胞が、骨膜に分布する血管や骨の緻密質を貫通す
るハバース管を経由して骨折端へ運ばれるのに対し、細
網細胞系の造骨細胞は、骨髄の造血源である細網性結合
組織から生じるとされている。従って、四肢の長骨にお
いては、骨髄由来の造骨細胞を富有する骨髄液が、生体
活性型人工骨材の骨化に重要な役割を果たす。故に、骨
髄液を充たす骨髄腔の修復こそ、接骨技術の鍵になるわ
けである。
【0005】ところで、動物病院にとって最も恐いこと
の一つが、接骨手術後の跛行である。ビッコをひく犬や
猫は人目につきやすいので、あそこの病院で不具にされ
たという悪評は、たちまち周辺に広まってしまう。しか
し、犬猫の接骨手術で跛行が起きがちなのは、手術の失
敗が原因なのではなく、相手が動物ならではの、止むを
得ない事情による。すなわち、幼児よりも聞き分けのな
い動物に、じっと静かにしていることを求めるのが、無
理なのである。手術後しばらくの間は、強制的に安静状
態を保持しなければならないが、1週間以上も不動状態
で拘束することは、動物を激しく衰弱させるばかりでな
く、人間不信による咬み癖など、ペットとして不都合な
後遺症を残す危険がある。また飼い主の方でも、動物病
院の狭いケージに収容されている犬猫が可哀相でなら
ず、まだ早すぎる段階で退院させたがる。そういう無理
解な飼い主に対し、断固として妥協せず、入院中の面会
も許さないのが臨床獣医師の心得であるが、そうもゆか
ない場合もあって難しいところである。手術後の養生が
不十分なまま帰宅した犬猫は、ギブスをしたまま走った
り跳んだりするので、とうてい人間並のリハビリは望め
ない。
【0006】このような事情であるから、人間ならギブ
スによる外固定だけで簡単に治療できる単純骨折でも、
犬猫の場合には、骨折部を切開して折れた骨の断端と断
端を密着させた後、骨プレートと呼ばれる接骨用金属板
をネジで取り付け、骨折端が動かないように固定してお
かなければならなかった。ところが、せっかく金属板で
固定した骨折端が、動物の激しい動きによってズレてし
まうことがある。僅かでもズレが生じると、骨折端と骨
折端を連結し始めた血管が切れてしまい、骨折部に慢性
的な出血が続く。その反応として結合組織が増生するの
で、骨折端どうしの癒合が妨げられ、偽関節が形成され
る。偽関節ができても、接骨用金属板で支持されている
ので、当初は跛行が目立たない。それだけ動物の体重が
金属板に掛かるわけであるから、やがて金属疲労によっ
て金属板が曲ってしまう。そうなると顕著な跛行を呈す
るばかりでなく、骨吸収という深刻な状態に進んでいる
場合が多い。すなわち、偽関節の結合組織が仮骨化して
骨髄腔を閉塞するため、骨折端の退縮現象が起こるので
ある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】以上説明したように、
単純骨折の治療でさえ、犬猫の場合は油断できない。ま
してや粉砕骨折となると、治療が格段に難しくなる。し
かるに、従来の治療方法では、とかく骨接ぎという昔な
がらの概念にとらわれ、折れた骨の緻密質を癒合させる
こと、それが接骨技術であると認識されがちであった。
確かに、緻密質を貫通するハバース管が断絶すると、血
行停止による栄養不良のために、骨が壊死して癒着しな
くなる。その恐れから、粉砕骨折で割れた骨片を1個ず
つ大切に扱い、図5に示すように、ジグソーパズルをす
る如く、慎重に骨片7どうしの割れ目を接ぎ合わせて密
着させることに、たいへんな手間と時間を掛けていた。
しかも、接ぎ合わせた骨片がズレたりしないように、多
肢型の接骨用金属板8を用いて、骨片を抱きかかえるよ
うに固定する必要があった。また、粉々に砕けた破片は
金具で固定できないので、空隙部の形どおりに削った固
形人工骨9をはめ込まなければならなかったが、これに
も多大な時間を要した。
【0008】幸い、便利な生体活性型骨セメントの出現
によって、骨片どうしの接ぎ合わせに、以前ほど神経を
磨り減らす必要がなくなったものの、依然として、骨と
骨をつなげるのが接骨という旧来の通念が根強く残り、
せっかくの人工骨材を使いこなせないでいる。すなわ
ち、骨片間の「つなぎ」として、ペースト状の生体活性
型骨セメントを注入する際、隙間を完全に埋め尽くすこ
とを重視するあまり、本来なら中空の腔所であるべき骨
髄腔の奥にまで、骨セメントを充填することが奨励され
ていた。また、骨折部を内側から補強する目的で、本来
なら骨髄腔が存在すべき骨の中心部へ、芯として丸い金
属棒や人工骨を挿入し、その上に骨片を載せる場合が多
かった。さらに、骨化を促進させるための便法として、
別の長骨から採取した骨髄を骨セメントペーストに混合
したり、骨髄液を固形人工骨に染み込ませたりするた
め、手術中の動物に余分の負担を与えていた。
【0009】ところが、毛細管現象によって、生体活性
型人工骨材の内部へ体液を導入できる距離には限界があ
り、気孔やセメント粒のサイズを変えても、せいぜい骨
断端から5mm程度にすぎないとされている。それ故、
人工骨材の長さや厚さが5mm以上の場合、骨断端から
進行する第一次的な骨化に加え、更にもう一段階、第2
次的な骨化過程が必要になる。すなわち、骨断端の骨膜
および緻密質で新生される血管が人工骨材の内奥に伸長
し、深奥部まで造骨細胞が血流に乗って運ばれてくるの
を待たなければならない。しかし、骨断端から新生し始
める血管の伸びは、意外なほど遅い。また、骨セメント
に骨髄一杯の海綿骨を混合しても、新生血管が到達しな
ければ壊死してしまうから、本当に骨化促進効果がある
のかどうか疑問視されている。そのため、骨断端に密接
する人工骨材の第一次的な骨化が、おおむね1週間前後
で終了するのに対し、骨断端から10mm以上離れる
と、3ヵ月後にもまだ完全に骨化しない場合が少なくな
かった。その結果、骨空隙部が大きくて、移植した人工
骨材の長さが数cmに及ぶようなときは、動物が激しく
動いた拍子に、骨化不完全な中間部が折れてしまい、不
本意な跛行を惹起しがちであった。
【0010】この発明が解決しようとする課題は、市販
の各種生体活性型人工骨材を用いて動物の骨を治療する
とき、移植する人工骨材の大きさに制約されることな
く、これを一日も早く、かつ完全に骨化させるために
は、どのような手段を講じればよいかという点にある。
【0011】
【課題を解決するための手段】この発明の発明者は、長
年、犬猫の接骨手術を手がけてきた経験に基づき、骨髄
腔の重要性に着目した。特に、骨折端の閉塞による骨吸
収を顧みれば、粉砕骨折の治療に際し、骨折端に開口す
る骨髄腔を金属棒や人工骨材で閉鎖することが、根本的
に間違っていたのではないかと気付いた。
【0012】この発明は、切断された骨髄腔を再建する
ことに接骨技術の基本があるとの見地から、人工骨髄腔
形成という新しい技術思想によって、上記課題の解決に
成功したものである。すなわち、骨空隙部に移植する生
体活性型人工骨材の中心部に、骨髄腔とほぼ同径の管状
腔所を貫通させ、この腔所の両端を、それぞれ骨空隙部
両側に開口する骨髄腔に連結して人工骨髄腔を形成す
る。
【0013】
【作用】この発明によれば、骨空隙部に移植された生体
活性型人工骨材の中心部に形成される管状腔所が、人工
骨髄腔の働きをする。すなわち、切断された骨髄腔と骨
髄腔とを管状腔所で連結することにより、この腔所内に
造骨細胞を含む骨髄液が充満するようになる。その骨髄
液が腔所周囲の人工骨材の中へ、毛細管現象によって、
まんべんなく全面的に内側から浸透する。それに伴い、
骨髄由来の豊富な造骨細胞が人工骨材の微細間隙にくま
なく大量に移行する。従って、骨折端からの距離に関係
なく、人工骨髄腔の周囲5mm以内にある人工骨材は内
側から速やかに骨化する。このため、骨折端から始まる
骨化進行速度に比べ、格段に早く、しかも一挙に人工骨
材全体を確実に骨化させることができる。
【0014】
【実施例】以下、この発明に係わる人工骨髄腔の形成に
よる動物の骨の治療方法について、添付図面を参照しな
がら、更に詳しく実施例を説明する。
【0015】
【実施例1】図1は、この発明の実施例1を示す斜視図
である。実施例1では、人工骨髄腔を形成するための手
段として、大きさ約30μの造骨細胞が通過することの
できる微小孔または網目状間隙を有する非吸収性移植材
の薄板を用い、これを骨髄腔とほぼ同径の管状に成形し
て人工骨髄腔形成器1としている。人工骨髄腔形成器1
の両端を、それぞれ骨空隙部4の左右両側骨断端5、6
に開口する各骨髄腔へ挿入し、切断された骨髄腔と骨髄
腔とを連結する。そして、人工骨髄腔形成器1の周囲
に、隙間なくペースト状の骨セメント3を塗布すること
により、骨空隙部4へ移植した生体活性型人工骨材の中
心部に管状腔所2が貫通し、ここに人工骨髄腔が形成さ
れる。
【0016】実施例1に用いる非吸収性移植材として、
ポリプロピレンメッシュ(商品名:マーレックスメッシ
ュ、米国バード社製)などの合成布や網材、およびステ
ンレスなど金属製の網または多孔性薄板を好適とする
が、材質を特に限定するものではない。ただし、柔軟す
ぎると腰が弱くて管状に成形できないから、ある程度の
弾発性を備えた材質のものが望ましい。多少腰が弱くて
も、二重か三重に巻き重ねることによって、目的にかな
った保形性が得られることもある。
【0017】実施例1による人工骨材の骨化促進効果
は、次のような動物実験で確認された。すなわち、体重
約4kgの成熟した雄ウサギの左右大腿骨中央部を正確
に3cmずつ切り取り、左足の骨空隙部には、ポリプロ
ピレンメッシュを管状に丸めた長さ4cm×外径8mm
の人工骨髄腔形成器を挿入した後、切除した大腿骨と同
じ太さになるように、タンニン酸で練ってペースト状に
した歯科用生体活性型骨セメント(商品名:ボネトリッ
クス、新田ゼラチン社製)を、人工骨髄腔形成器の周囲
に約3mmの厚さで塗布した。一方、比較のため、右足
の骨空隙部には人工骨髄腔を形成しないまま、固形の合
成ハイドロキシアパタイト(商品名:アパセラム、旭光
学工業社製)の円柱状人工骨(長さ3cm×直径14m
m)を移植し、骨断端との接合面に前記歯科用骨セメン
トを注入して隙間を埋めた。左右両足とも接骨用金属板
による内固定は行なわず、1ヵ月間、特殊なギブス包帯
の外固定だけで後足を不動状態にしておいた。人工骨材
の移植後、10〜30日間隔で3ヵ月後まで、毎回1〜
3羽のウサギを麻酔し、インテスコ万能材料試験機を用
いて、皮膚の上から人工骨材の中間部における曲げ強度
を測定した。
【0018】その結果、対照の正常な雄ウサギ3羽の後
肢6本が平均6.2kgの加重で折れたのに対し、実施
例1の方法で人工骨髄腔を形成した左足は、人工骨材移
植後20日で早くも約6kgの負荷に耐え、30日後に
は対照と同等の強度を示した。さらに、3ヵ月後まで計
8羽の左足を測定したところ、低加重で折れた骨は一本
もなく、全例とも骨セメントの完全骨化に成功した。一
方、固形の円柱状人工骨を移植して骨髄腔を遮断した右
足は、1ヵ月後でも僅か0.5kgの加重で簡単に折れ
てしまい、3ヵ月たっても強度の向上は認められなかっ
た。骨セメントと固形人工骨との材質の違いや、人工骨
髄腔形成器が持つ弾性の影響などを考慮に入れてもな
お、明らかに実施例1による骨化速度の急速なることが
証明された。
【0019】前記動物実験の結果に自信を得て、粉砕骨
折の犬32頭、猫15匹、骨吸収の犬4頭、および骨腫
瘍の犬と猫各1頭について、実施例1による治療を行な
ったところ、全例ともすべて跛行を呈すことなく、完全
に治癒した。そのうち人工骨髄腔が最長の1例について
述べれば、次のとおりである。自動車に轢かれて左大腿
骨の骨幹部を粉砕骨折した体重6kgの柴犬系雑種の雌
を手術するに当たり、まずレントゲン検査によって使用
する人工骨髄腔形成器の長さを15cm、直径約2cm
と見定めた。そこで、ポリプロピレンメッシュを鋏で所
要の大きさに切り取り、メッシュの両縁を縫い合わせて
管状に成形した。次に、患犬を麻酔して骨折部を切開
し、10数個に割れた遊離骨片を摘出したところ、骨折
後の経過時間が短かったために、骨片が壊死していなか
った。そこで、この症例では、高価な骨セメントを倹約
するために大きな骨片を再利用することにした。ただ
し、骨片が壊死している場合は、洗浄・消毒が厄介であ
る上、かえって人工骨材よりも骨化が遅いので、なるべ
く使用しない方が望ましい。
【0020】骨片摘出後、正常な右大腿骨と同じ長さに
なるまで左大腿骨を足の上から牽引し、図2に示すよう
に、骨折部両側の堅い緻密質に接骨用金属板8をネジで
固定した。そして、足を牽引したままの状態で、ポリプ
ロピレンメッシュ製の人工骨髄腔形成器1の両端を、そ
れぞれ5mmずつ各骨髄腔の切断口へ挿入し、骨折によ
って切断された骨髄腔を管状腔所2で連結した。つい
で、大きな骨片7の裏側に、ペースト状に練ったカルボ
キシレート系歯科用生体活性型骨セメント(商品名:バ
イオメント、山八歯材工業社製)を薄く塗り、なるべく
元どおりの位置へ置くようにしつつ人工骨髄腔形成器1
の上に貼り付けた。骨片間の空白が広いところには小骨
片を適宜に貼り付け、残った空白の部分を同じ骨セメン
ト3で被覆すると共に、骨片どうしの合わせ目や骨片と
骨断端との接続部にも骨セメントペーストを注入して、
隙間を完全に埋めた。3〜5分後に骨セメントが硬化す
るのを待ってから、接骨用金属板8の中央部にネジ止め
を補足し、皮膚を縫合して足の牽引を外した後、トーマ
ス枠と呼ばれる動物用副木をテープで固定して接骨手術
を完了した。
【0021】手術後、エリザベスカラーと呼ばれる鍔広
の首伽を装着して患部を咬まないようにすると共に、狭
いケージに収容して起立できないようにし、安静を図っ
た。7日後に副木を外して退院させ通常の生活に戻した
が、術後2週間で患肢が着地し始め、3週間後には正常
に歩行できるようになり、飼い主に散歩をせがむまでに
回復した。4ヵ月後に再手術をして、骨折部に固定した
接骨用金属板を外したのであるが、その際の肉眼観察で
は、骨折部の表面に骨膜が形成されており、指先で触診
した限りでは全く異常が認められなかった。この犬は、
手術後10ヵ月の現在、全く跛行を呈することなく完治
している。
【0022】
【実施例2】図3は、この発明の実施例2を示す斜視図
である。実施例2では、管状に成形したステンレスなど
の薄い金属板に、多数の小孔列10を穿設すると共に、
多数の小管列11を突設し、各小孔と小管が管状腔所2
と連通するようにしたものを人工骨髄腔形成器1として
いる。この人工骨髄腔形成器1の両端を、骨空隙部左右
の骨断端5、6に開口する骨髄腔へ挿入し、周囲に骨セ
メントペーストを塗布するとき、突出した小管列11が
軟らかいペーストの支えとなるので、極めて保形性が良
い。そのため、骨空隙部の失われた骨の形状を元通り
に、骨セメントで簡単に再現することができる。
【0023】しかも、管状腔所2に充満する骨髄液が、
連通する小孔列10を通過して骨セメント内層へ浸透す
るのと同時に、小管列11の先端からも湧出して骨セメ
ント外層に浸透する。そのため、内外両層で並行的に骨
化が進行するので、骨セメント全体をより早くかつ、よ
り確実に骨化させることができる。
【0024】
【実施例3】図4は、この発明の実施例3を示す断面図
である。実施例3では、管状の固形人工骨9を用いて人
工骨髄腔形成器1としている。すなわち、円柱状の生体
活性型固形人工骨の中心部を刳り貫いて管状腔所2を設
け、固形人工骨そのものを人工骨髄腔の形成に利用した
ものである。管状の固形人工骨9を骨空隙部へはめ込む
とき、ポリプロピレンメッシュなど生体移植材を丸めた
短管状の連結器12を用い、これで骨断端に開口する骨
髄腔と管状腔所2とを連結するとよい。しかる後、固形
人工骨9の両端と骨断端5、6との接合面へペースト状
に練った骨セメント3を注入して隙間を埋めれば、完全
に密封された人工骨髄腔を形成することができる。実施
例3によれば、高価な骨セメントを小量しか使わないの
で、たいへん安上がりである。ただし、現在市販されて
いる各種の固形人工骨は、いずれも脆すぎて穿孔加工す
るのが難しく、長さ3cm×直径3cmの円柱ブロック
に、手作業で内径2cmの穴を開けるのは一日がかりの
大仕事である。従って、現状では実用性に乏しいもの
の、将来、材質の強化や専用加工具の改良、あるいは型
枠で管状に成形された各種サイズの製品が上市されるよ
うになれば、獣医臨床分野において、実施例3が最も普
及するものと期待される。
【0025】実施例3の治療効果は、乳腺腫瘍が転移し
た日本猫(13才、雌、体重3kg)の骨腫瘍を完治せ
しめたことで実証された。すなわち、左大腿骨の中央部
に、X線がよく透過して虫食い状に黒く抜けて見える箇
所があり、患部の前後を含め5cmの骨を切除したので
あるが、猫の大腿骨は直径2cmほどであり、細すぎて
固形人工骨材の円柱ブロックに穴を刳り貫くことができ
なかった。そこで、手術前に合成ハイドロキシアパタイ
ト(アパセラム骨補填材料)の板(長さ50mm×幅2
0mm×厚さ10mm)を2枚用い、各板の中心に幅1
0mm×深さ5mmの半円溝を掘った。さらに溝の反対
面を丸く削り、溝と溝を向き合わせて2枚の板を骨セメ
ントで接着することにより、内径1cmの管状腔所を持
つ直径2cmの管状人工骨を作った。また、ポリプロピ
レンメッシュで長さ1cm×外径約1cmの連結器を2
個作り、それぞれ滅菌した。そして、管状人工骨の両端
に連結器をはめてから、これを骨断端に開口する骨髄腔
へ挿入し、外科的に切除された骨髄腔を人工骨で再建し
た。さらに、骨断端と管状人工骨との接続部に骨セメン
トペースト(ボネトリックス)を念入りに塗布し、骨髄
液が漏洩しないようにした。接骨用金属板のネジ止めや
トーマス枠による外固定など、後処置は犬の場合と同じ
である。
【0026】この猫は老齢のために回復が遅れ、患肢が
着地するまでに3週間かかり、正常に自立歩行したのは
1カ月後であった。しかし、跛行を呈することなく、乳
腺腫瘍の全摘出と制癌剤の投与が奏功したことも相俟っ
て、手術後1年5カ月間も余命を永らえさせることがで
きた。死後ただちに剖検したところ、移植した管状人工
骨の表面には骨膜が形成されており、接ぎ目に注入した
骨セメントが完全に骨化し、骨断端とも人工骨とも完全
に癒合していた。人工骨髄腔内には骨髄液が充満してい
た。各部位の薄切標本を病理組織検査に供した結果、人
工骨の気孔が骨細胞によって占められているばかりでな
く、緻密質と同様のハバース管の形成も認められた。
【0027】
【発明の効果】この発明は、生体活性型人工骨材の中心
部に人工骨髄腔を形成することによって、人工骨材を中
心部から骨化させるものである。従って、骨空隙部がど
んなに大きくても、人工骨髄腔を任意に長く延ばすこと
により、切断された骨髄腔を連結することができる。こ
のため、骨断端と骨断端との間隔の長短にかかわらず、
自由自在に生体活性型人工骨材を利用することができ
る。また、猫や小型犬はもちろん、大型犬の最も太い大
腿骨でも緻密質の厚さは4mm以下であるから、人工骨
髄腔を包囲する生体活性型人工骨材全体を、毛細管現象
で浸透する骨髄液中の造骨細胞によって、確実に、しか
も急速に骨化させることができる。このため、犬や猫の
接骨手術後に起こりがちな再骨折による跛行を、完全に
防止することができる。さらに、骨髄腔を連結した人工
骨髄腔には、速やかに骨髄液が充満するので、あらかじ
め人工骨材に骨髄を混合しておく必要がない。このた
め、他の長骨から骨髄を採取する手間が省ける上、手術
中の動物に余計な外科的侵襲を加えずに済むようにな
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例1の斜視図である。
【図2】実施例1の応用例の斜視図である。
【図3】この発明の実施例2の斜視図である。
【図4】この発明の実施例3の断面図である。
【図5】従来例の斜視図である。
【符号の説明】
1‥‥人工骨髄腔形成器、2‥‥管状腔所、3‥‥骨セ
メント、4‥‥骨空隙部 5,6‥骨断端、7‥‥骨片、8‥‥接骨用金属板、9
‥‥固形人工骨、10‥‥小孔列、11‥‥小管列、1
2‥‥連結器

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粉砕骨折や外科的切除によって生じた大
    きな骨空隙部へ移植する生体活性型人工骨材の中心部
    に、骨髄腔とほぼ同径の管状腔所を貫通させ、この腔所
    の両端を、それぞれ骨空隙部両側に開口する骨髄腔に連
    結して人工骨髄腔を形成したことを特徴とする、人工骨
    髄腔の形成による動物の骨の治療方法。
JP11087593A 1993-04-01 1993-04-01 人工骨髄腔の形成による動物の骨の治療方法 Expired - Lifetime JPH0793934B2 (ja)

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