JPH0790528A - 亜鉛系めっき浴浸漬ロールの使用方法 - Google Patents

亜鉛系めっき浴浸漬ロールの使用方法

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JPH0790528A
JPH0790528A JP23135993A JP23135993A JPH0790528A JP H0790528 A JPH0790528 A JP H0790528A JP 23135993 A JP23135993 A JP 23135993A JP 23135993 A JP23135993 A JP 23135993A JP H0790528 A JPH0790528 A JP H0790528A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】浸漬ロール表面の溶射層を損傷させることなく
酸洗を行い、浸漬ロール表面に付着したドロス等の付着
物を効果的に除去する。 【構成】表面にWC−CoまたはMoからなる溶射層を
形成した浸漬ロールを、鋼帯への溶融亜鉛系めっき浴中
に浸漬状態で継続使用した際に、その浸漬ロール表面へ
のドロスの付着量が限度となったとき、浸漬ロールを、
濃度1.5〜10%の硫酸または塩酸で、20分〜18
0分の時間、酸洗して前記浸漬ロール表面のドロスを除
去した後、再利用に供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、溶融亜鉛系めっき浴中
において浸漬状態で使用する、表面を溶射層を形成した
浸漬ロールの表面に付着したドロスを除去して、その再
利用を図る方法に関する。
【0002】
【従来の技術】たとえば溶融亜鉛またはZn−Fe系め
っき設備における亜鉛系めっき浴中においては、鋼帯か
ら溶出するFeが浴中のZnと反応し、Fe−Znを主
成分とするドロス等の合金物が生成される。このドロス
がめっき浴中に浸漬状態で配設されているシンクロー
ル、サポートロール等の浸漬ロールの表面に付着する
と、鋼帯の表面に押し込み疵を発生させる原因となる。
【0003】そこで、浸漬ロール表面にドロスが付着
し、製品に押し込み疵が発生するのを防止するため、従
来より、浸漬ロール表面に、溶射によってWC−Coま
たはMoからなる溶射層を形成して、ドロスの付着を防
止するようにしていた。ちなみに、WC−Co系溶射層
は、CoをバインダーとしてWCを結合した炭化物サー
メット層を形成したもので、その被膜厚は約100μm
程度とされる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前述の溶射層
を形成した浸漬ロールにおいても、ドロスの付着を完全
に防止することはできず、したがって、押し込み疵の発
生を招き製品の品質の悪化の要因となっている。
【0005】その結果、ドロスが浸漬ロールに付着しそ
の付着量が過度になった場合には、鋼帯へのめっきを停
止し、めっき浴中に放置し、浸漬ロールに付着したドロ
スがめっき浴中に再溶解するのを待つ方法を採っている
いる。しかし、ドロスの再溶解には長い時間を要し、め
っき設備の停機による操業効率を低下させる要因とな
る。
【0006】そこで、ドロスの再溶解が困難な場合に
は、新品の浸漬ロールに取り替える必要がある。しか
し、前述の溶射費用は高くつき、その都度、新品ロール
に交換するのは経済的ではない。
【0007】したがって本発明の課題は、浸漬ロール表
面に付着したドロスを、溶射層を損傷させることなく確
実に除去して、溶射層を生かしたまま、再利用を図るこ
とにより、ランニングコストを低減し、しかも押し込み
疵の発生を防止することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明は、表面にWC−CoまたはMoからなる溶
射層を形成した浸漬ロールを、鋼帯への溶融亜鉛系めっ
き浴中に浸漬状態で継続使用した際に、その浸漬ロール
表面へのドロスの付着量が限度となったとき、前記浸漬
ロールを、濃度1.5〜10%の硫酸または塩酸で、2
0分〜180分の時間、酸洗して前記浸漬ロール表面の
ドロスを除去した後、再利用に供することを、その構成
とするものである。
【0009】
【作用】本発明者等は、浸漬ロールの付着ドロスを酸洗
によって除去できないかとの発想に基づいて後の実施例
に示すような種々の実験を行った。その結果、1.5〜
10%の濃度の硫酸または塩酸(以下、断りのない限り
酸と総称する)によって、20〜180分の時間、酸洗
を行うことにより、溶射層を破壊することなく浸漬ロー
ル表面のドロスを確実に除去できることが判り、本発明
を完成させるに至った。
【0010】本発明者らは、当初、酸洗はむしろ弊害が
あると考えた。すなわち、一般に溶射層には、5%程度
の気泡が存在しており、この気泡を封じ込めるため封孔
処理が施されているが、酸洗を行うと、この封孔処理が
破壊され、めっき浴に浸漬した場合、めっき浴が気泡を
通してロール表面に達し、ロール表面を腐食させ、ロー
ル表面に形成されている溶射層が剥離し、溶射層の破壊
が生じることとになると考えた。また、溶射層と浸漬ロ
ール本体との熱膨張係数の差が大きく{溶射層の熱膨張
係数=(7〜9)×10-6、浸漬ロール本体の熱膨張係
数=(11〜18)×10-6}、めっき浴中において、
熱膨張量の差により、さらに溶射層の剥離および破壊が
促進されると考えた。
【0011】しかるに、本発明に従って、ある条件の下
では、酸洗によって、溶射層の剥離および破壊が生じな
いことを知見した。
【0012】本発明において、酸の濃度が1.5〜10
%、より好ましくは2.0〜10%とされる。酸の濃度
が1.5%未満であると、溶射層表面の付着物の除去が
不十分となり、10%を超えると、溶射層の破壊(剥
離)が生じる。
【0013】一方、酸洗時間については、酸濃度との相
関を有するが、いずれにしても20分未満であると、溶
射層表面の付着物除去が十分でなく、また180分を超
えると溶射層の破壊が生じる。以上の理由により、酸濃
度および酸洗時間を上記のように限定した。
【0014】なお、酸洗終了後水洗を行い、ロール表面
に付着している酸を洗い流すのが望ましい。水洗を行う
時間としては、20分以上で30分以下で十分である。
また、酸洗の温度としては、室温近傍、すなわち約10
〜40℃の範囲で行うのが、ロール本体の腐食防止の点
で好ましい。
【0015】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面により具体的に
説明する。図1は、溶融亜鉛めっき設備の要部を示した
もので、めっき浴1中に、シンクロール2およびサポー
トロール3,4が浸漬状態で配設されている。また、め
っきを施される鋼帯5は、スナウト6を経てからめっき
浴1中へと進入し、シンクロール2によって方向転換さ
れ、サポートロール3,4に支えられて上昇しながらめ
っき浴1から進出する。
【0016】この亜鉛めっき設備の操業に伴って、めっ
き浴1中のシンクロール2およびサポートロール3,4
には、めっき浴1中で発生するドロスが付着する。そこ
で、たとえば7〜10日間程度連続使用した後に、図2
に示すフローにしたがって、浸漬ロール表面に付着した
ドロスを除去して、再利用を図る。すなわち、ある期間
操業に供した後、ラインを停止し浸漬ロールおよびその
支持アームなどめっき浴から引き上げ、別の浸漬ロール
と交換し、当該浸漬ロールについては、空冷した後、濃
度1.5〜10%の酸が入っている酸洗槽に20〜18
0分間浸漬して酸洗を行う。続いて、水洗槽に20〜3
0分間浸漬して水洗を行い、浸漬ロール表面に残存して
いる酸を洗い流す。この水洗の後、軸受部の摩耗が激し
い場合には、これを取り外し解体作業を行い、続いて新
品または摩耗補修済軸受と交換する組立作業を行った
後、再びめっき浴1中に浸漬して再利用を図る。
【0017】以下に、本発明の完成に至るまでに、酸の
濃度および酸洗時間の好適範囲を調べた各種実験につい
て述べる。 <実験1>WC−Coの溶射層を形成した650mmφの
シンクロール2および250mmφおよび300mmφのサ
ポートロール3,4を、めっき浴中にて10日間浸漬使
用した後、酸洗処理を行った。酸洗処理にあたっては、
濃度2.5%の硫酸の酸洗槽中に浸漬した。酸洗開始
後、10分毎に引き上げてロール表面の付着物の状況を
観察した。そのときの時間の経過と付着物除去状況を表
1に示す。なお、サポートロール3,4については、除
去状況が実質的に同一であったため、結果を同一欄に記
載している。
【0018】
【表1】
【0019】表1から判るように、サポートロール3,
4については、酸洗開始後、30分経過すると、一部の
みに付着物が残存する程度まで付着物除去が行われ、6
0分経過後においては、完全に付着物がない状態とな
る。一方、シンクロール2については、酸洗開始後、2
0分経過すると、一部のみに付着物が残存する程度まで
付着物除去が行われ、40分経過後においては、完全に
付着物がない状態となることが判る。付着物が除去され
た溶射層の被膜厚を調べたところ、当初と同じ100μ
m であり、再使用が可能であることが判った。
【0020】一方、酸洗開始後、180分を経過した時
点で、溶射層に変化が見られ始め、200分を経過した
以降は、溶射層の剥離が発生した。
【0021】<実験2>硫酸の濃度を5.0%とし、他
の条件は上記の実験1と同一として実験を行った。その
結果を表2に示す。
【0022】
【表2】
【0023】表2から、酸の濃度を濃くした場合、シン
クロール、サポートロールとも実験1の場合よりも早い
時間経過で付着物除去が行われていることが判った。ま
た、酸洗後の溶射層の被膜厚を調べたところ、当初と同
じ100μm であり、再使用が可能であることが判っ
た。
【0024】<実験3>硫酸の濃度を1.2%とし、他
の条件は上記の実験1と同一として実験を行った。その
結果を表3に示す。
【0025】
【表3】
【0026】表3から判るように、サポートロール、シ
ンクロールとも酸洗開始から100経過後も付着物除去
ができず、酸濃度が1.5%未満では、酸洗条件として
不十分である。
【0027】<実験4>本発明に従って酸洗を行ったサ
ポートロールを浸漬した場合と、従来例のように、酸洗
を行わない非酸洗サポートロールをめっき浴中に浸漬し
てドロスの溶解を待つ場合とについて、押し込み疵の発
生の無くなるまでの浸漬時間を測定した。その結果を表
4に示す。なお、酸洗条件は、2.5%の硫酸で60分
間酸洗を行ったものである。
【0028】
【表4】
【0029】表4から明らかなように、鋼帯に対する押
し込み疵が実質的に発生しなくなるまでの時間は、従来
の非酸洗ロールに対して、本発明に係る酸洗ロールの方
が約半分の3時間程度となることが判った。
【0030】<実験5>硫酸の代わりに塩酸を用いた以
外は、上記の実験1と同一の条件で実験した。結果を表
5に示した。
【0031】
【表5】
【0032】表5から判るように、さらに、酸濃度を変
化させた結果を示す図3からも明らかなように、硫酸の
代わりに塩酸を用いても、シンクロールおよびサポート
ロールの付着物の除去性能は実質的に同様であることが
判った。この場合、付着物が除去された溶射層の被膜厚
を調べたところ、当初と同じ100μm であり、再使用
が可能であることも判った。
【0033】<実験6>Moの溶射層を形成した650
mmφのシンクロール2および250mmφおよび300mm
φのサポートロール3,4を、めっき浴中にて10日間
浸漬使用した後、酸洗処理を行った。酸洗処理にあたっ
ては、濃度2.5%の硫酸の酸洗槽中に浸漬した。酸洗
開始後、10分毎に引き上げてロール表面の付着物の状
況を観察した。そのときの時間の経過と付着物除去状況
を表5に示す。なお、サポートロール3,4について
は、除去状況が実質的に同一であったため、結果を同一
欄に記載している。
【0034】
【表6】
【0035】表6から判るように、サポートロール3,
4については、酸洗開始後、30分経過すると、一部の
みに付着物が残存する程度まで付着物除去が行われ、6
0分経過後においては、完全に付着物がない状態とな
る。一方、シンクロール2については、酸洗開始後、2
0分経過すると、一部のみに付着物が残存する程度まで
付着物除去が行われ、40分経過後においては、完全に
付着物がない状態となることが判る。付着物が除去され
た溶射層の被膜厚を調べたところ、当初と同じ100μ
m であり、再使用が可能であることが判った。
【0036】一方、酸洗開始後、180分を経過した時
点で、溶射層に変化が見られ始め、200分を経過した
以降は、溶射層の剥離が発生した。
【0037】
【発明の効果】以上の通り、本発明によれば、浸漬ロー
ル表面に付着したドロスを、溶射層を損傷させることな
く確実に除去して、溶射層を生かしたまま、再利用を図
ることにより、ランニングコストを低減し、しかも押し
込み疵の発生を防止することができるなどの利点がもた
らされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶融亜鉛めっき設備のめっき浴を示す概要図で
ある。
【図2】本発明の方法のフローを示す図である。
【図3】硫酸および塩酸の酸濃度と、酸洗後の溶射層の
状態との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1…めっき浴、2…シンクロール、3,4…サポートロ
ール、5…鋼帯、6…スナウト。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】表面にWC−CoまたはMoからなる溶射
    層を形成した浸漬ロールを、鋼帯への溶融亜鉛系めっき
    浴中に浸漬状態で継続使用した際に、その浸漬ロール表
    面へのドロスの付着量が限度となったとき、 前記浸漬ロールを、濃度1.5〜10%の硫酸または塩
    酸で、20分〜180分の時間、酸洗して前記浸漬ロー
    ル表面のドロスを除去した後、再利用に供することを特
    徴とする亜鉛系めっき浴浸漬ロールの使用方法。
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