JPH0790521A - 亀裂成長抵抗性に優れたジルカロイ管 - Google Patents
亀裂成長抵抗性に優れたジルカロイ管Info
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Abstract
対して抵抗性を有する被覆管。 【構成】 微細な析出物を含有する外部領域と粗大な析
出物を含有する内部領域とから成るジルカロイ製被覆管
が提供される。外部領域は被覆管の肉厚の約10%を占
めており、また内部領域は被覆管の肉厚の約90%を占
めている。かかるジルカロイ製被覆管は亀裂成長抵抗性
を示す共に、沸騰水型原子炉(BWR)内において耐食
性を示す。また、常法に従って被覆管の内面上にジルコ
ニウム製またはジルコニウム合金製のライナを配置する
ことにより、ペレットと被覆管との相互作用によって引
起こされる損傷に対する抵抗性を得ることもできる。
Description
のジルカロイ製被覆管に関するものである。更に詳しく
言えば、本発明は軸方向における亀裂成長抵抗性の向上
した被覆管に関する。
からの隔離のため、密封された被覆管内に収容されてい
る。本明細書中において使用される「被覆管」という用
語は、ジルコニウム基材に少なくとも1種の金属を添加
して成るジルコニウム合金製の管を意味する。また、本
明細書中において使用される「析出物」という用語は、
ジルコニウム合金母材中に独立した相を生成するような
被覆管中の添加金属を意味する。これらの析出物は金属
間化合物を生成することもあれば生成しないこともあ
る。通例、これらの析出物は(粒度は様々に変化するも
のの)母材中に一様に分布している。更にまた、いわゆ
る微細な析出物(すなわち、0.1ミクロン未満の析出
物)は一様な分布状態を成すこともあれば、あるいはい
わゆる二次元配列状態(すなわち、析出物がジルコニウ
ム合金の外面付近においてシート状の層を成して分布し
ている状態)を成すこともある。
を有する管から成っていて、その内部には通例ペレット
状の核燃料が収容されている。これらのペレットは、1
60インチ程度の長さを有する被覆管のほぼ全長にわた
り、互いに接触しながら堆積されている。被覆管にはま
た、燃料ペレットを中心に配置するためのばねおよび核
分裂生成ガスを吸収するためのいわゆる「ゲッタ」が設
けられているのが通例である。最後に、核分裂反応から
生じるガスの消散を最適化するために燃料棒の内部が各
種のガスで加圧され、次いで燃料棒の両端が封止され
る。
れの合金は優れた核燃料被覆材である。なぜなら、それ
らは小さい中性子吸収断面積を有すると共に、約398
℃より低い温度(すなわち、運転中の原子炉の炉心温度
以下の温度)においては脱イオン水または蒸気の存在下
で優れた強度、延性、安定性および非反応性を示すから
である。「ジルカロイ」は、広く使用されている一群の
耐食性ジルコニウム合金被覆材の名称である。かかるジ
ルカロイは98〜99重量%のジルコニウムから成って
いて、残部はスズ、鉄、クロムおよびニッケルである。
「ジルカロイ−2」および「ジルカロイ−4」は、被覆
目的のために使用されている2種のジルコニウム基合金
である。(なお、ジルカロイ−4からはニッケルが省か
れている。)被覆管の腐食は、沸騰水型原子炉(BW
R)および加圧水型原子炉(PWR)のいずれにおいて
も起こり得る問題である。たとえばPWRにおいては、
水は沸騰しない(ただし、最新のPWRにおいては一部
の燃料棒の上端において僅かに沸騰が起こることがあ
る)。酸素レベルは比較的低くて、約20ppbであ
る。注入された水素が約200ppbの濃度で水減速材
中に存在しており、それによって酸素レベルが抑制され
る。水圧は2000psi程度であり、また温度は原子
炉の運転状態に応じて300〜380℃の範囲内にあ
る。
であるが、それはジルカロイ被覆材中における析出物の
粒度に関係する。小さい析出物は一様腐食現象を実際に
促進することが判明している。それ故、PWR用のジル
カロイ製被覆管においては析出物の粒度が比較的大きい
ことが好ましい。PWR内の放射線環境においては、照
射に伴って析出物が溶解して小さくなる。一様腐食現象
の促進を回避するため、PWR用被覆管における析出物
は一様に大きい初期粒度(すなわち、0.2ミクロン以
上の粒度)を有している。その結果、小さい粒度の析出
物の生成が減速され、従って小さい粒度の析出物に関し
て起こるより急速な一様腐食が抑制されるのである。
素レベルは比較的高くて、約200ppbである。原子
炉の構造部品の安定性を得るために水素が注入されるこ
とがあるが、この水素は沸騰の一部として効果的に除去
され、そして水減速材中には20ppb程度の濃度で存
在している。水圧は1000psi程度であり、また温
度は本質的に圧力の関数であるが、大体は原子炉の全て
の運転速度にわたって一定(288℃)である。
腐食は、結節状(またはいぼ状)の腐食である。また、
一様腐食も起こるが、通常の場合はそれほど顕著でな
い。更にまた、被覆管の水接触面上には無機物および粒
子の沈着も起こる。このような腐食および沈着に由来す
る生成物は、被覆管の水接触面上においてかなりの厚さ
に達することがある。
しかしながら、原子炉内における燃料が長い寿命期間
(たとえば、40メガワット日/トンを越える使用期
間)を有する場合には、結節状腐食が高密度化する。か
かる結節状腐食が高密度化し、かつその他の粒子(たと
えば、銅イオン)と共に作用した場合には、それが被覆
管を局部的に貫通することがある。
ることが判明している。それ故、結節の形成を防止する
ためには、(0.1ミクロン以下の)小さい析出物を得
ることが望ましい。先行技術に従えば、コイルによる加
熱を用いて被覆管の水接触面を外部から処理することに
より、微細な析出物を含有する外面を形成し得ることが
知られている。この点に関しては、エデンス(Eddens)等
の米国特許第4576654号明細書を参照されたい。
照射に伴って析出物が溶解して小さくなる。結節状腐食
はかかる小さい析出物によって抑制されると共に、溶解
過程によって溶解状態になった合金元素によっても抑制
される。ジルコニウム合金に関しては様々な焼なまし操
作が使用されてきたが、それらは温度範囲の点から見て
次のように要約することができる。低温側から始めれ
ば、通例は金属の加工によって約70%の断面減少率を
達成した後、480℃より高い温度下における焼なまし
によって応力除去が行われる。約576℃における焼な
ましは応力除去をもたらすばかりでなく、金属の再結晶
をも開始させる。かかる焼なましにおいては、材料の延
性が最大になる。最後に、576℃より実質的に高い温
度下における焼なましは結晶の成長をもたらし、それに
よって一般に金属は軟化する。
処理は(毎秒5°より遅い速度の)緩徐な冷却を伴う高
温焼なましによって大きい粒度の析出物を保存する操作
を含んでいた。逆に、BWR用被覆管の熱処理は(毎秒
5°より早い速度の)急速な冷却を伴う低温焼なましに
よって小さい粒度の析出物を生成させる操作を含んでい
た。
イ母材中に一様に分布した小さい析出物粒子を生成させ
ることによって改善されてきた。ジルカロイ母材中に存
在する鉄、クロムおよびニッケル成分の一部は、母材と
異なる化学組成を有する不溶性の結晶質析出物を生成す
る。一般に、かかる析出物は化学式Zr(Fe,Cr)
2 およびZr2 (Fe,Ni)によって表わされる。通
例、かかる耐食性合金中において使用される析出物は約
0.1ミクロン未満の平均粒径を有している。
もたらすことがあるが、それらは基本的に相異なる現象
である。亀裂は被覆管壁の機械的な破断または破裂であ
るのに対し、腐食は被覆管の金属が電気化学的に酸化物
またはその他の非金属化合物に転化することである。亀
裂の発生は、機械的応力および腐食をはじめとする様々
な原因によって引起こされることがある。たとえ亀裂が
発生しても、それが小さな区域内に限定されている限り
はほとんど問題にならない。しかるにその亀裂が成長す
れば、被覆管は破裂し、そして遂には核燃料物質が冷却
材または減速材に接触することがある。結局、これは不
経済な原子炉の運転休止をもたらすことになる。
因は各種の機械的応力に帰することができる。亀裂が発
生するのは、金属の線、削り屑または粒子のごとき残骸
が燃料バンドル内の燃料棒の間を通って流れる炉水中に
混入した場合である。かかる残骸は被覆管壁に隣接しな
がら燃料棒スペーサの位置に留まることがある。その結
果、かかる残骸は通過する蒸気/水混合物の作用下で振
動して被覆管壁を摩擦する。このような振動が続くと、
やがて亀裂が発生するのである。
ある。その上、製造時の欠陥が亀裂の出発点となること
もある。更にまた、原子炉内における使用期間中に存在
する腐食性の高圧環境においては、亀裂の成長が燃料棒
の内側から始まることもある。密封された被覆管の内側
からの亀裂について述べれば、核燃料、被覆管、および
核反応から生じる核分裂生成物の間における様々な相互
作用のために被覆管の脆性破壊が起こることがある。か
かる望ましくない現象は、核燃料と被覆管との間におけ
る膨張の差および摩擦の結果として被覆管上に生じた局
部的な機械的応力に原因することが判明している。ヨウ
素やカドミウムのごとき特定の核分裂生成物の存在下に
おいてかかる局部的な応力およびひずみが生じると、応
力腐食割れおよび液体金属脆化として知られる現象によ
って被覆管の破壊が起こることがある。また、その他の
現象(たとえば、被覆管の局部的な水素化並びに酸素、
窒素、一酸化炭素および二酸化炭素の存在)が被覆管の
破壊を助長し、そして燃料棒の破裂を引起すこともあ
る。
0492および437281号並びにアダムソン(Adams
on) の米国特許第4894203号の明細書中には、被
覆管の内側に隔壁を配置することによって亀裂の発生を
防止するための解決策が提唱されている。内側に配置さ
れた隔壁を含む被覆管は、「複合」被覆管または2つの
相異なる冶金層を有する被覆管と呼ばれることがある。
いものであるが、万一亀裂が発生した場合には、それの
成長を回避する必要がある。特にBWR環境において
は、軸方向の亀裂成長に対して抵抗性を有する被覆管が
要望されている。また、軸方向の亀裂成長、亀裂の発生
および腐食の全てに対して抵抗性を有する被覆管も要望
されている。
析出物を含有する外部領域と粗大な析出物を含有する内
部領域とから成るジルコニウム合金製被覆管が提供され
る。粗大な析出物は(特に軸方向における)亀裂成長抵
抗性を付与し、また微細な析出物は原子炉内における結
節状腐食に対する抵抗性を付与する。更にまた、被覆管
の内面上にジルコニウム製または希薄ジルコニウム合金
製のライナを配置することにより、ペレットと被覆管と
の相互作用によって引起こされる燃料棒容器の損傷に対
する抵抗性を得ることもできる。
用途)においては代表的なジルコニウム合金製被覆管の
外面上における結節状腐食が最も大きな問題となるか
ら、上記のごとき実施の態様においては、被覆管の外部
領域中のみに微細な析出物が生成されている。他方、改
善された亀裂成長抵抗性を付与するため、被覆管の大部
分は粗大な析出物を含有している。微細な析出物を含有
する外部領域と粗大な析出物を含有する内部領域との間
の遷移領域は、比較的鮮明な境界として存在している。
特定の実施の態様を詳しく説明しよう。
用途および形状を有する金属部品を意味する。更に、
「管」という用語は様々な用途を有する金属管を意味
し、また「燃料棒容器」もしくは単に「容器」という用
語は燃料ペレットを封入するため燃料棒において使用さ
れる管を意味する。なお、燃料棒容器は「被覆管」と呼
ばれることもある。
「燃料棒」と呼ばれる)燃料要素14は燃料芯材16を
包囲する燃料棒容器17を含んでいる。かかる燃料要素
14は、燃料棒容器17と燃料芯材16との間における
優れた熱的接触、最小の寄生中性子吸収、および冷却材
の高速流れによって時折引起こされる弓そりや振動に対
する抵抗性をもたらすように設計されている。通例、燃
料芯材16は核分裂性物質および(または)燃料親物質
から成る複数の燃料ペレットである。燃料芯材16は、
円柱状ペレット、球または小さい粒子のごとき各種の形
状を有し得る。ウラン化合物、トリウム化合物およびそ
れらの混合物をはじめとする各種の核燃料を使用するこ
とができるが、好適な核燃料は二酸化ウランまたは二酸
化ウランと二酸化プルトニウムとの混合物である。
を含有する内部領域30と微細な析出物を含有する外部
領域33とを有している。燃料棒容器17の内部領域お
よび外部領域はいずれも、ジルカロイ−2またはジルカ
ロイ−4のごときジルコニウム合金から成ることが好ま
しい。ジルカロイ−2は、約1.5重量%のスズ、0.
12重量%の鉄、0.09重量%のクロムおよび0.0
5重量%のニッケルを含有している。ジルカロイ−4は
実質的にニッケルを含有しないと共に約0.2重量%の
鉄を含有しているが、その他の点ではジルカロイ−2と
同様である。本発明において使用し得る別の合金は、約
1重量%のスズ、約1重量%のニオブおよび約0.2重
量%未満の鉄を含有するジルコニウム基合金である「ジ
ルロ(Zirlo) 」である。本発明において使用し得る更に
別の合金は、少なくとも約98重量%のジルコニウム、
約0.06〜0.25重量%の鉄、約0.03〜0.1
重量%のニッケルおよび約0.8〜1.7重量%のスズ
から成るものである。その他の添加剤としては、ニオ
ブ、ビスマス、モリブデン、および当業界において使用
されるその他各種の元素が挙げられる。最も一般的に述
べれば、金属間化合物を生成する任意のジルコニウム合
金を使用することができる。
素または燃料棒Rを含む独立した燃料単位である燃料バ
ンドル(または燃料集合体)10の部分切欠き斜視図が
示されている。かかる燃料バンドル10は、上端に上部
取手12を具備しかつ下端にノーズピースLおよび下部
取手11を具備するチャネルCを含んでいる。チャネル
Cの上端は開放された出口13を成しており、またノー
ズピースLの下端には冷却材流入用の開口が設けられて
いる。チャネルC内には一群の燃料棒Rが配置されてお
り、そして上部タイプレートUおよび下部タイプレート
(図示せず)によって支持されている。一部の燃料棒は
タイプレート同士を連結するために役立ち、従ってしば
しば「タイロッド」(図示せず)と呼ばれる。更にま
た、燃料棒R同士の整列状態および燃料棒Rとチャネル
Cとの整列状態を維持するため、1個以上のスペーサS
がチャネルC内に配置されることもある。燃料バンドル
10の使用時には、通例、液体冷却材がノーズピースの
下端の開口を通って流入し、燃料棒Rの周囲を通って上
昇し、そして部分的に気化した状態で上部の出口13か
ら流出する。
両端は燃料棒容器17に溶接された端栓18によって封
止されている。なお、端栓18は燃料バンドル10内に
おける燃料棒Rの装着を容易にするためにスタッド19
を有することがある。燃料棒Rの一端には、燃料芯材1
6の縦方向膨張および燃料芯材16から放出されたガス
の蓄積を可能にするための空間(またはプレナム)20
が設けられている。なお、核分裂反応に由来する各種の
有害なガスおよびその他の生成物を除去するためにゲッ
タ(図示せず)が使用されるのが通例である。また、燃
料棒Rの取扱いおよび輸送時におけるペレット中の軸方
向運動を防止するため、つる巻きばねから成る核燃料保
持部材24が空間20内に配置されている。
の顕微鏡組織が略示されている。管壁104の外部領域
においては、ジルコニウム合金は結晶粒100として存
在している。また、管壁104の内部領域においては、
ジルコニウム合金は結晶粒106として存在している。
一般に、内部領域および外部領域における結晶粒はほぼ
同じ大きさを有している。しかしながら、これら2つの
領域における結晶粒の顕微鏡組織は異なっている。図示
のごとく、外部領域の結晶粒は微細な析出物108を高
い密度で含有するのに対し、内部領域の結晶粒は粗大な
析出物102を低い密度で含有している。なお、一部の
実施の態様においては、管壁104の内面上にジルコニ
ウム製のライナまたは隔壁層が配置される。
は、粗大な析出物を含有するジルカロイ領域に比べ、結
節状腐食に対する抵抗性が大きい。本発明においては、
腐食性の沸騰水環境に通例暴露される管壁の外面には
「微細」な析出物が存在する一方、管壁の内面および本
体部分には「粗大」な析出物が存在するように顕微鏡組
織が変化させられる。粗大な析出物は、特に管の軸方向
における亀裂成長抵抗性を付与するものと考えられてい
る。
約0.01〜0.15ミクロンの範囲内の平均粒径を有
することが好ましく、また約0.02〜0.06ミクロ
ンの範囲内の平均粒径を有することがより好ましい。な
お、微細な析出物の平均粒径は約0.04ミクロンであ
ることが最も好ましい。粗大な析出物は約0.15〜2
ミクロンの範囲内の平均粒径を有することが好ましく、
また約0.2〜1ミクロンの範囲内の平均粒径を有する
ことがより好ましい。上記のごとき析出物の粒径は、当
業界において公知の標準的な透過電子顕微鏡検査(TE
MおよびSTEM)によって容易に測定される。析出物
はジルカロイ母材中において一様な状態もしくは二次元
配列状態で分布し得ることが認められている。本発明に
おいては、外部領域における微細な析出物はいずれの状
態で分布することもあり得る。それに対し、粗大な析出
物はもっぱら一様に分布するのが普通である。
るのが通例であるが、亀裂の発生および成長は管壁の全
域にわたって起こる。それ故、本発明の管は外面付近の
みに微細な析出物を含有すると共に、管の大部分におい
ては粗大な析出物を含有することが好ましい。好適な実
施の態様に従えば、微細な析出物を含有する外部領域は
管の肉厚の約5〜20%を占める一方、粗大な析出物を
含有する内部領域は管の肉厚の約80〜95%を占め
る。なお、外部領域は管の肉厚の約5〜15%を占める
ことがより好ましく、また管の肉厚の約10%を占める
ことが最も好ましい。すなわち、30ミルの肉厚を有す
る典型的な管の場合、外部領域は約3ミルの厚さを有す
ることが好ましいのである。
ないが、粗大な析出物はそれの大きい粒度がもたらす効
果並びに析出物/母材界面における局部的な鉄およびニ
ッケル濃度にそれが及ぼす効果によって亀裂成長抵抗性
を付与するものと考えられる。ジルカロイ−2について
述べれば、ジルコニウム、ニッケル、鉄およびクロムの
比率は析出物中においては一定に保たれるが、ジルカロ
イ母材(特に析出物/母材界面付近のジルカロイ母材)
中においては変化することがある。
の析出物中に残留する鉄およびニッケルは減少する。そ
れ故、微細な析出物を含有するジルカロイにおいては、
析出物付近の母材相中における鉄およびニッケルの濃度
が(比較的低いレベルにおいてではあるが)増加する傾
向を示す。これら2つの効果(すなわち、析出物粒度の
減少および溶質濃度の増加)が亀裂成長抵抗性の低下を
もたらすものと考えられる。
延性の増大をもたらす傾向がある。それ故、亀裂の先端
が析出物/母材界面に出会った場合、それの成長はより
低い溶質濃度ひいてはより高い延性を有する領域内にお
いて減速(そして時には停止)するものと考えられるの
である。これまでに述べた析出物の特性は、製造直後か
つ原子炉内への設置前の管中に存在する析出物に関する
ものである。原子炉内における使用に際しては、中性子
照射が析出物の特性を変化させることが良く知られてい
る。このような変化としては、(1) 元来は結晶質のZr
(Fe,Cr)2 析出物が非晶質化すること、(2) Zr
(Fe,Cr)2 析出物中の鉄がジルカロイ母材中の溶
質に移行すること、(3) (ジルカロイ−2の場合には)
Zr2 (Fe,Ni)析出物中のニッケルがジルカロイ
母材中の溶質に移行すること、および(4) 析出物の粒度
が減少することが挙げられる。場合によっては、析出物
から非常に多くの元素が移行するため、周囲のジルカロ
イ母材が鉄およびニッケルで局部的に過飽和状態になる
こともある。これらの変化はいずれも、結節状腐食抵抗
性を改善すると共に亀裂成長抵抗性を低下させるような
ものである。これらの変化の速度は、中性子フルエンス
(原子炉内における使用時間)および元の析出物粒度の
関数である。大きい析出物に比べ、小さい析出物の場合
には変化がより急速に進行する。それ故、ジルカロイ管
の大部分における大きい析出物の数を最大にすることに
より、中性子フルエンスに原因する(亀裂成長抵抗性の
点から見た)管の劣化が改善されることになる。 (2)隔壁層を含む管 ある種の好適な実施の態様においては、核燃料との相互
作用によって引起こされる管の劣化を防止するため、管
の内面上に中性子吸収の小さい隔壁層が配置される。公
知のごとく、核燃料、燃料棒容器、および核燃料からの
核分裂生成物の間における相互作用のために燃料棒容器
は破裂またはその他の劣化を生じることがある。上記の
ごとき隔壁層は、管の内面に対して冶金的に接合された
高純度ジルコニウム(たとえば、結晶棒ジルコニウム)
もしくは中純度ジルコニウム(たとえば、ジルコニウム
スポンジ)製のライナから成るのが通例である。この点
に関しては、アルミジョおよびコフィン(Armijo & Coff
in) の米国特許第4200492および4372817
号、バネショー(Vannesjo)の米国特許第4610842
号、並びにアダムソン(Adamson) の米国特許第4894
203号の明細書を参照されたい。(本発明の燃料棒容
器の第3の構成要素を成す)隔壁層は管の全厚の約1〜
30%を占めるのが通例であり、また管の全厚の約5〜
15%を占めることがより好ましい。
残部に接合されていることが必要である。管の材料と隔
壁層の材料との間には結合力を生み出すのに十分なだけ
の拡散が存在していなければならないが、結合領域から
離れた位置にはいかなる拡散も存在していてはならな
い。かかる隔壁層は管の全厚の約1〜30%を占めるこ
とが好ましく、また管の全厚の5〜15%を占めること
がより好ましい。特に好適な実施の態様に従えば、全厚
の10%を占める隔壁層がジルコニウム合金管に接合さ
れるが、これは良好な応力の低減をもたらすと共に、管
の破損を防止するのに十分な隔壁効果を示す。 (3)管の製造 析出物の粒度は各種の製造方法によって調整することが
できる。先ず最初に、析出物の粒度はβ相からの冷却速
度によって本質的に支配される。β相とは、高温(すな
わち、ジルカロイ−2に関しては約960℃より高い温
度)において安定な結晶質ジルコニウムおよびジルカロ
イの体心立方格子結晶構造を意味する。別の相(α相)
は、低温において安定なジルコニウムおよびジルカロイ
の最密六方格子結晶構造である。約825〜960℃の
範囲内においては、ジルカロイ中にα相およびβ相が共
存する。β相から(たとえば、毎秒約50℃より早い速
度で)急速に冷却すればより小さい析出物が得られるの
に対し、それよりも遅い速度で冷却すればより大きい析
出物が得られる。(β相からの冷却によって得られた)
初期の析出物粒度は、高温(たとえば、約621℃より
高い温度)下における焼なましのごとき熱処理によって
ある程度まで変化させることができる。これはジルカロ
イ母材相および小さい析出物中のニッケル、鉄およびク
ロム成分の一部を大きい析出物中に拡散させ、それによ
って析出物を粗大化する。各種の方法に対して広く適用
し得る指針として、「ジルコニウム・イン・ザ・ニュー
クリア・インダストリー(Zirconium in the Nuclear In
dustry) 」(ASTM STP939、1987年)の
417〜430頁に収載されたエフ・ガルザローリ(F.G
arzarolli) 等の論文「結節状腐食の知識の進展」中に
定義された「累積規格化焼なまし時間」が挙げられる。
十分に粗大な析出物を確実に得るためには、累積規格化
焼なまし時間が約10-17 時間より大きいことが好まし
い。
れるような本発明の不均一な析出物分布状態を実現する
ためには、少なくとも1つの工程に際して管の外部領域
および内部領域を相異なる温度に維持する必要がある。
これは、米国特許第4576654号明細書中に記載さ
れたような公知の誘導加熱処理操作によって簡便に達成
される。一般に、管の内部に冷却水を流しながら誘導コ
イル内において管が加熱される。その結果、外部領域の
温度は十分に上昇してβ相への転移が起こるのに対し、
内部領域の温度は低いレベルに維持され、従って粗大な
析出物を含有する組織が保存される。次いで、管を急速
に冷却すれば、外部領域中のみに小さい析出物が得られ
るのである。
合金または隔壁層材料に対して不活性な任意の流体を使
用することができる。たとえば、かかる操作に際しては
ガス冷却材、水または蒸気を使用することができるので
ある。勿論、かかる方法を使用した場合、微細な析出物
を含有する外部領域と粗大な析出物を含有する内部領域
との間には冶金学的勾配または遷移領域が存在すること
になる。かかる遷移領域においては、析出物の粒度は所
望の微細な粒度と所望の粗大な粒度との間で変化してい
る。一般に、かかる遷移領域は比較的鮮明な境界を成し
ている。本発明においては、かかる遷移領域は外部領域
の一部と見なされる。通例、かかる遷移領域は外部領域
の高々約25%を占めるに過ぎないが、これは不可欠の
要求条件ではない。場合によっては、遷移領域が管の全
厚の5〜10%を占めることもある。
その他の様々な製造工程(たとえば、冷間加工、押出
し、熱処理および焼なまし工程)が使用されることがあ
る。これらの様々な工程を実施するために必要な設備お
よび作業条件は、当業者にとって自明であろう。なお、
それらは本願と同日(1993年4月23日)に提出さ
れかつ本発明の譲受人に譲渡された、「亀裂成長抵抗性
に優れたジルカロイ管の製造方法」と称する本発明者等
の米国特許出願第08/052,791号明細書中に記
載されている。
合金のビレットに対し、水タンク内に浸漬して1000
℃から約700℃まで急冷することによってβ焼入れが
施される。次に、約570℃の温度に維持しながらビレ
ットを高圧下で1組のテーパ付きダイスに通すことによ
って管が押出される。得られた押出製品は「管素材」と
呼ばれる。かかる管素材は、(アメリカ合衆国オレゴン
州アルバニー市所在の)テレダイン・ワーチャング(Tel
edyne Wahchang) 社、(アメリカ合衆国ユタ州オグデン
市所在のウェスティングハウス関連会社である)ウェス
タン・ジルコニウム(Western Zirconium) 社および(フ
ランス国所在の)セズス(Cezus) 社のごとき様々な販売
業者から指定の寸法で入手することができる。
回目の70%冷間加工が施され、それに続いて比較的高
い温度下における焼なまし(たとえば、650℃で4時
間の焼なまし)が施される。この時点において、管の外
側により小さい析出物を生成させるための熱処理が施さ
れる。この熱処理は(純粋なβ相範囲内にある)104
5℃の温度下で行われる。管の内部に水を流しながら、
誘導コイルによって管の外側15%の部分が所望の温度
にまで急速に加熱され、次いでエネルギーが遮断され
る。その結果、管は急速に(時には約2秒以内で)冷却
される。誘導コイルのエネルギーの浸透度は、誘導コイ
ルの周波数、誘導コイルのエネルギー、誘導コイル内に
おける管の移動速度、および水の温度(流量)を加減す
ることによって調整することができる。管の外側15%
の部分に小さい析出物を生成させるような熱処理を達成
するためにこれらの条件を調整する方法は、当業者にと
って自明であろう。この点に関する詳細な説明は、エデ
ンス等の米国特許第4576654号明細書中に見出す
ことができる。こうして得られた管は、内部領域中に粗
大な析出物を保有しながら良好な結節状腐食抵抗性を有
している。
それに続いて650℃で2時間の焼なましが施される。
更にまた、公知プロセスの場合と同じ条件下で3回目の
冷間加工および再結晶または応力除去焼なましが施され
る。こうして得られた管は、(軽微な修正および試験を
行った後には)燃料棒において好適に使用することがで
きる。
造プロセス中に少なくとも1つの追加工程が含まれる。
かかる工程の詳細は当業界において公知であって、たと
えば、米国特許第4894203号明細書中に開示され
ている。通例、隔壁層は押出し工程中においてライナと
して管に接合される。製造プロセス中におけるその他の
工程は上記のごとくにして実施される。 (4)結論 以上、特定の実施の態様に関連して本発明をかなり詳し
く説明したが、本発明の範囲内において様々な変更態様
が可能であることは自明であろう。たとえば、本明細書
中には好適なジルコニウム合金管が記載されているが、
その他の形状の部材も使用することができる。たとえ
ば、板やその他の形状の金属部材を使用することもでき
るのである。上記に記載されたジルカロイは、本発明に
おいて管として有利に使用し得る合金の一例に過ぎな
い。その他のジルコニウム基合金および類似の組織を有
する特定のチタン基合金やその他の合金についてもま
た、多くの場合、析出物に関する本発明の顕微鏡組織を
使用して腐食および亀裂の成長を抑制することができる
のである。
ことが好ましい。とは言え、本発明の冶金学的特性はそ
の他の原子炉部品においても使用し得ることを理解すべ
きである。たとえば、本明細書中に記載されたジルコニ
ウム合金の顕微鏡組織は原子炉内に存在する水管、スペ
ーサ、チャネルおよびその他のジルコニウム合金構造物
に関しても使用し得るのである。
る。
である。
本の燃料棒の内部が示されている。
な析出物の領域および粗大な析出物の領域を示す略図で
ある。
Claims (10)
- 【請求項1】 (1) より高い密度で分布した相対的に微
細な析出物を含有する、円周方向に沿って配置された耐
食性の外部領域と、(2) 621℃より高い温度下におけ
る粗大化焼なましによって生成されかつより低い密度で
分布した相対的に粗大な析出物を含有する、円周方向に
沿って配置された耐亀裂性の内部領域とから成ることを
特徴とする、冶金学的勾配を有するジルコニウム合金製
被覆管。 - 【請求項2】 前記内部領域が前記被覆管の横断面の約
80〜95%を占める請求項1記載のジルコニウム合金
製被覆管。 - 【請求項3】 隔壁層が追加包含される請求項1記載の
ジルコニウム合金製被覆管。 - 【請求項4】 前記粗大な析出物が約0.15〜2ミク
ロンの範囲内の平均粒径を有する請求項1記載のジルコ
ニウム合金製被覆管。 - 【請求項5】 前記ジルコニウム合金が少なくとも約9
8重量%のジルコニウム、約0.06〜0.25重量%
の鉄、約0.03〜0.1重量%のニッケルおよび約
0.8〜1.7重量%のスズから成る請求項1記載のジ
ルコニウム合金製被覆管。 - 【請求項6】 (1) より高い密度で分布した相対的に微
細な析出物を含有する、円周方向に沿って配置された耐
食性の外部領域と、(2) 全体として少なくとも10-17
時間の累積規格化焼なまし時間を有する1回以上の焼な
ましによって生成されかつより低い密度で分布した相対
的に粗大な析出物を含有する、円周方向に沿って配置さ
れた耐亀裂性の内部領域とから成ることを特徴とする、
冶金学的勾配を有するジルコニウム合金製被覆管。 - 【請求項7】 前記累積規格化焼なまし時間が少なくと
も約5×10-17 時間である請求項6記載のジルコニウ
ム合金製被覆管。 - 【請求項8】 前記内部領域が前記被覆管の横断面の約
80〜95%を占める請求項6記載のジルコニウム合金
製被覆管。 - 【請求項9】 隔壁層が追加包含される請求項6記載の
ジルコニウム合金製被覆管。 - 【請求項10】 前記粗大な析出物が約0.15〜2ミ
クロンの範囲内の平均粒径を有する請求項6記載のジル
コニウム合金製被覆管。
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