JPH0788177B2 - ハニカムサンドイツチ構造の車体パネルの形成方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、自動車の車体パネルの形成方法に関するもの
で、特に、第１面板と第２面板との間にハニカムコアを
挟んだハニカムサンドイッチ構造のパネルによって構成
される車体パネルの形成方法に関するものである。

（従来の技術） 一般に、自動車の車室床面を形成するフロアパネルやエ
ンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネル等の車体
パネルには、そのパネルが設けられる場所に応じた種々
の性質を有することが求められる。

例えば、フロアパネルは、特に車室の床面を形成する部
分においては、走行中の車体振動等によって変形するこ
とのないようにしなければならない。また、そのフロア
パネルには、エンジン等の各機器からの微小振動の抑制
及び車室内に伝えられる騒音の遮断という大きな役割も
求められている。

ところで、一般に、フロアパネルは、一枚の平板を用い
て、車体の前後方向に延びるセンタトンネルを構成する
センタトンネルメンバと一体にプレス成形された車体パ
ネル部分によって形成されることが多い。その場合、そ
のような車体パネル部分を単純に平面状とすると、フロ
アパネルは比較的大面積となっているので、フロアパネ
ルの剛性が低下してしまい、フロアパネルは簡単に変形
してしまう。

そこで、通常は、フロアパネルに凹凸部を形成したり、
クロスメンバ等の補強部材を取り付けたりして、剛性を
高めるようにしている。

また、そのようなフロアパネルは、エンジン等から伝え
られる微小振動を減衰することができないばかりでな
く、走行音等の騒音を遮断することもできないので、フ
ロアパネルに制振材であるメルシートや遮音材であるイ
ンシュレータを取り付けて、微小振動を減衰させたり、
騒音を車室内に伝わらせないようにしている。

しかしながら、フロアパネルはできるだけ平面とするこ
とが求められるが、凹凸部を形成すると、平面を得るこ
とができない。また、フロアパネルに補強材、メルシー
ト、及びインシュレータを取り付けたのでは、重量が極
めて大きくなってしまう。

このようなことから、実開昭57−133479号公報に示され
ているように、フロアパネルを、第１面板と第２面板、
すなわち下面板と上面板との間にハニカムコアを挟んだ
ハニカムサンドイッチ構造とすることが提案されてい
る。

このようなサンドイッチ構造のフロアパネルは、軽量で
ありながら極めて剛性が高く、しかも遮音性に優れたも
のとなる。したがって、そのようなフロアパネルを用い
ることにより、車室床面の平面図を大面積とすることが
可能となる。しかしながら、このようなハニカムパネル
は剛性が極めて高いので、例えばフロアパネルをハニカ
ムサンドイッチ構造とする場合、それをセンタトンネル
等の車体強度部材と一体成形することは不可能である。
したがって、ハニカム構造のフロアパネルを単体として
形成し、それを車体強度部材に結合するようにしなけれ
ばならない。そのためには、センタトンネルメンバと一
体にプレス成形される車体パネル部分によってフロアパ
ネルを形成するようにしている従来の車体組立ライン
を、大幅に変更することが必要となる。

このようなことから、ハニカムパネルの下面板をセンタ
トンネルメンバと一体にプレス成形し、その下面板の上
にハニカムコアと上面板とを接合することにより、フロ
アパネルをサンドイッチ構造とすることが考えられてい
る。

このように構成すれば、下面板として従来のようなセン
タトンネルメンバと一体の車体パネル部分を用いること
ができる。したがって、ハニカムサンドイッチ構造のフ
ロアパネルの組み立てに当たって従来と組立ラインをほ
とんど変更することなく、そのまま利用することができ
る。

（発明が解決しようとする問題点） ところで、このようなサンドイッチ構造のフロアパネル
を備えた車体フロア部を形成する場合、一般には、車体
組立ラインにおいて下面板とセンタトンネルメンバとを
一体にプレス成形した後、すぐにその下面板に、接着剤
によりハニカムコアと上面板とを順に接合するようにす
ればよいと考えられている。

しかしながら、そのようにすると、ハニカム構造のフロ
アパネルを形成したホワイトボデーが塗装ラインに搬送
されることになる。そして、塗装工程ではボデーの水洗
いが行われるので、その洗浄水がハニカムコア内に浸入
し、コアが濡れてしまう。ハニカムコアは紙等によって
形成されているので、水に濡れると劣化してしまう。ま
た、浸入した水により上、下面板の内面に錆が発生する
こともある。そのために、上、下面板の間のシールを確
実に行わなければならないので、組付作業に手間がかか
ってしまう。

また、車体組立ラインに接着工程を新たに設ける必要が
ある。したがって、新規設備を導入しなければならず、
大幅に設備費がかかってしまう。しかも、接着剤の硬化
のための時間を要することになるので、その時間と組立
ラインの他の工程との調整も必要となる。

このように、センタトンネルメンバと下面板との一体に
プレス成形した直後に、下面板にハニカムコアと上面板
とを接合しようとすると、困難な問題がある。

本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであっ
て、その目的は、従来の車体組立ラインを大幅に変更す
ることなく、ハニカムサンドイッチ構造の車体パネルを
形成することができるようにすることである。

また、本発明の他の目的は、そのような車体パネルにお
いて、第１及び第２面板の間のシールを簡単に済ますこ
とができるようにすることである。

（問題を解決するための手段） この目的を達成するために、本発明では、ハニカムサン
ドイッチ構造の車体パネルを構成する第１面板を、車体
強度部材に結合されている車体パネル部分で形成し、ま
た第２面板とハニカムコアの一端とを予め接合するとと
もに、そのハニカムコアの他端、すなわち第１面板とそ
接合端に接着性を有する熱可塑性シートを貼付すること
により、サブハニカム構造体を形成するようにしてい
る。

そして、塗装工程の水洗い終了後に、そのサブハニカム
構造体を第１面板にセットするようにしている。

（作用） このように構成することにより、ハニカムサンドイッチ
構造の車体パネルを構成する第１面板が、車体強度部材
に結合される車体パネル部分がプレス成形される従来の
組立ラインと同じ工程で形成されるようになる。

また、サブハニカム構造体を第１面板に接合する場合、
その構造体の熱可塑性シートを第１面板に貼付すればよ
いことになる。したがって、そのような熱可塑性シート
の第１面板への貼付は従来のメルシート貼付工程と同じ
工程で行うことができる。その結果、従来の車体組立ラ
インを大幅に変更する必要がなくなる。

また、サブハニカム構造体は、第１面板が接合されてい
ないので、極めて容易に変形するようになっている。す
なわち、サブハニカム構造体は可撓性を有するものとな
るので、第１面板にねじれ等による歪みが生じていて
も、サブハニカム構造体はその第１面板の形状になじん
で追従することができるようになる。したがって、ハニ
カムコアと第１面板とは、均一かつ確実に結合されるよ
うになる。

更に、サブハニカム構造体の第１面板へのセットは、塗
装工程における水洗い終了後に行われるので、ハニカム
コア内に洗浄水が浸入するようなことはなくなる。した
がって、第１及び第２面板の間のシールは簡単なものよ
いことになる。

（実施例） 以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。

図は、本発明によるハニカムサンドイッチ構造の車体パ
ネルの形成方法の一実施例を、その車体パネルをフロア
パネルに適用した例を用いて説明するもので、第１図は
そのフロアパネルを車体フロア部とともに示す分解斜視
図であり、第２図はその車体フロア部の車体左右方向の
垂直断面図である。

第1,2図から明らかなように、車体フロア部の車室床面
に相当する位置には、その左右両側に、前後方向に延び
る一対のサイドシル1,1が設けられている。そのサイド
シル１はサイドシルアウタメンバ２とサイドシルインナ
メンバ３とかなり、中空閉断面とされている。

また、左右のサイドシル1,1のほぼ中間には、前後方向
に延びる一対のセンタフレーム4,4が設けられている。
このセンタフレーム４は上方に開いたチャンネル状のも
のとされている。

更に、中央に形成され、下方に開いたチャンネル状のセ
ンタトンネルメンバ５と、そのメンバ５から左右のサイ
ドシル1,1にまで延びる車体パネル部分６とが、一枚の
平板を用いて一体にプレス成形されている。そして、セ
ンタトンネルメンバ５が一対のセンサフレーム4,4間に
架設され、これらの互いに接合することにより、中空閉
断面図の補強部を備えたセンタトンネル７が形成される
ようになっている。また、車体パネル部分６のセンタト
ンネル７とは反対側の端部にはフランジ８が設けられ、
そのフランジ８がサイドシルインナメンバ３の側壁3aに
接合されている。こうして、車体強度部材であるサイド
シル１とセンタトンネル７とに、車体パネル部分６が結
合されるようになっている。

車体パネル部分６には、所定形状の凹部９が形成されて
おり、その凹部９の底10は平面とされている。

一方、車体パネル部分６と比較して薄い一枚の平板によ
り、上面板11が形成されている。そして、その上面板11
の下面に、その外周端部を残して、紙等からなるハニカ
ムコア12を接合し、更に、ハニカムコア12の下端に接着
性を有する熱可塑性シートであるメルシート13を貼付す
ることにより、サブハニカム構造体14が形成されてい
る。この構造体14はハニカムコア12の一側に上面板11が
接合されているだけであるので、比較的簡単に曲げるこ
とができるものとなっている。すなわち、構造体14は可
撓性を有するものとなっている。また、上面板11は、凹
部９に完全に覆い、かつ車体パネル部分６の凹部９周縁
部と重合し得る大きさとされている。更に、ハニカムコ
ア12は、その凹部９内に完全に収容され得る大きさとさ
れている。

このようなサブハニカム構造体14は、車体組立におい
て、サイドシル１、車体パネル部分６、及びセンタトン
ネル７等が組み付けられたホワイトボデーの塗装工程の
水洗い終了後に、第２図に示されているように、ハニカ
ムコア12で凹部９内に収容されるようにして、車体パネ
ル部分６にセットされる。この状態で、上面板11の外周
端部が、シーラ等のシール材を介して車体パネル部分６
に接合される。そして、塗装工程の乾燥時の熱あるいは
その余熱によりメルシート13が溶けて、ハニカムコア12
と凹部９の底10とが接合される。その場合、ハニカムコ
ア12が紙によって形成されていると、溶けたメルシート
13がそのコア12に浸透するようになる。したがって、コ
ア12と底10との接合力は大きくなる。すなわち、メルシ
ート13は接着剤として機能する。そして、メルシート13
によってコア12と車体パネル部分６とは強固に接合され
ることになるので、上面板11の外周端部と車体パネル部
分６との接合は比較的簡単なものでよいことになる。

こうして、サイドシル１とセンタトンネル７との間に、
センタトンネル７と一体のハニカムサンドイッチ構造の
フロアパネル15が形成される。その場合、センタトンネ
ルメンバ５と一体に成形された車体パネル部分６は下面
板16を構成する。

この下面板16と上面板11とはそれぞれ本発明の第１面板
と第２面板とを構成している。

このように構成されたフロアパネル15においては、下面
板16とセンタトンネルメンバ５とが一枚の平板により一
体にプレス成形されることになるが、そのような一体成
形は従来の車体組立ラインと同じ工程で成形することが
できる。また、サブハニカム構造体14を下面板16に接合
する場合、メルシート13を下面板16に貼付するだけでよ
いので、従来のメルシート貼付工程と同じ工程で行うこ
とができる。したがって、接着剤塗布工程が不要とな
る。しかも、塗装工程における水洗い終了後に、サブハ
ニカム構造体14を車体パネル部分６の上方、すなわち一
側からセットして、上面板11の外周端部を下面板16に接
合し、その状態で塗装工程における乾燥時の熱を用いて
メルシート13を溶融させるだけで、ハニカム構造のフロ
アパネル15を簡単に形成することができる。そのように
すればハニカムコア12が洗浄水に触れるようなこともな
くなるので、上面板11と下面板16との間のシールは特に
厳格にする必要はない。したがって、ハニカムコア12に
対する防水処理が簡単となり、フロアパネル15の製造は
更に簡単になる。その上、特に新たな設備を必要とする
こともなく、従来の車体組立ラインをほとんど変更せず
に使用することができるばかりでなく、メルシート13が
他の接着剤に比べて安価であるので、そのフロアパネル
15は比較的低コストで製造されるようになる。

また、車体パネル部分６には凹部９が形成されるので、
その形状効果により剛性が大きいものとなっている。し
たがって、車体パネル部分６は撓むこともなく、サブハ
ニカム構造体14が取り付けられる前の、車体パネル部分
６とセンタトンネルメンバ５との一体プレス成形品の治
具等への設置作業も正確かつ容易に行うことができる。

しかも、その凹部９内に構造体14のハニカムコア12を単
に収容するだけで、構造体14を車体パネル部分６にセッ
トすることができるようになる。したがって、車体パネ
ル部分６に対する構造体14の位置決めのために、特に手
段を講じる必要もない。

更に、サブハニカム構造体14は可撓性を有するものとな
っているので、車体パネル部分６にねじれ等による歪み
が生じていても、その構造体14は車体パネル部分６の形
状になじんで追従することができるようになる。したが
って、ハニカムコア12と凹部９の底10とがその全面にわ
たってほぼ均一かつ確実に接合することになる。その場
合、接着剤としてメルシート13が用いられているので、
車体パネル部分６の歪みは更に効率よく吸収される。

また、このようなハニカムサンドイッチ構造のフロアパ
ネル15においては、下面板16とハニカムコア12とがメル
シート13によって接合されているが、メルシート13が微
小振動を減衰する制振機能を有しているので、フロアパ
ネル15は、エンジン等の各機器からの微小振動を効果的
に吸収し得るものとなる。

更に、構造体14の上面板11が一枚の平板によって形成さ
れているので、車室床面には面積の大きな平面が形成さ
れ、車室内の居住空間がより有効なものとなる。

なお、上述の実施例においては、接着性のある熱可塑性
シートとしてメルシート13を用いるものとしているが、
他の樹脂シートのような接着性のある熱可塑性シートを
用いることもできる。

また、上述の実施例では、ハニカムサンドイッチ構造の
車体パネルをフロアパネル15に適用するものとして説明
しているが、エンジンルームからの振動、騒音、及び熱
を車室内へ伝えないようにすることが求められるダッシ
ュパネルを始め、制振、遮音、及び断熱等の機能が求め
られる他の車体パネルにも本発明によるハニカムサンド
イッチ構造の車体パネルの形成方法を適用することがで
きる。

（発明の効果） 以上の説明から明らかなように、本発明によれば、車体
強度部材に結合されている車体パネル部分を、第１面板
と第２面板との間にハニカムコアを挟んだハニカムサン
ドイッチ構造における第１面板として構成するようにし
ているので、その第１面板を、車体強度部材に結合され
る車体パネル部分をプレス成形する従来の車体組立ライ
ンと同じ工程で形成することができるようになる。しか
も、第２面板とハニカムコアとを接合し、そのコアに予
め熱可塑性シートを貼付してサブハニカム構造体を形成
しており、その構造体を第１面板に接合するに当たって
は、熱可塑性シートを第１面板に貼付することにより、
サブハニカム構造体を第１面板に接合するようにしてい
るので、その接合も従来のメルシート貼付工程と同じ工
程で貼付することができるようになる。したがって、従
来の車体組立ラインを大幅に変更しなくても済むことに
なり、新たな設備を取り入れる必要がない。その結果、
極めて低コストでハニカムサンドイッチ構造の車体パネ
ルを形成することが可能となる。

また、車体パネルをハニカムサンドイッチ構造とする場
合、第１面板にサブハニカム構造体を一側から単にセッ
トするだけでよいことになるが、その場合、構造体は可
撓性を有しているので、第１面板の面形状に追従するこ
とができるようになる。したがって、ハニカムコアを、
簡単かつ確実に第１面板へ接合することが可能となる。

更に、そのサブハニカム構造体の第１面板へのセット
は、塗装工程の水洗い終了後に行われるので、ハニカム
コアが洗浄水によって濡れるようなこともない。したが
って、第１及び第２面板の間のシールは厳格に行う必要
がなくなり、防水処理は極めて簡単とすることができ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本発明によるハニカムサンドイッチ構造の車
体パネルの形成方法の一実施例を、その車体パネルをフ
ロアパネルに適用した例を用いて説明するもので、その
フロアパネルを車体フロア部とともに示す分解斜視図、 第２図は、その車体フロア部の、車体左右方向の垂直断
面図である。 ６……車体パネル部分 11……上面板（第２面板） 12……ハニカムコア 13……メルシート（熱可塑性シート） 14……サブハニカム構造体 16……下面板（第１面板）

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】第１面板と第２面板との間にハニカムコア
   を挟んだハニカムサンドイッチ構造の車体パネルの形成
   方法において； 前記第１面板を、車体強度部材に結合されている車体パ
   ネル部分によって形成し、 前記第２面板と前記ハニカムコアとを接合するととも
   に、そのハニカムコアの、前記第１面板との接合面に、
   接着性を有する熱可塑性シートを貼付することによりサ
   ブハニカム構造体を形成し、 塗装工程の水洗い後に、前記サブハニカム構造体を前記
   第１面板にセットするようにした、 ハニカムサンドイッチ構造の車体パネルの形成方法。