JPH0784456B2 - δ−ラクトン誘導体の製法 - Google Patents

δ−ラクトン誘導体の製法

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JPH0784456B2
JPH0784456B2 JP61257042A JP25704286A JPH0784456B2 JP H0784456 B2 JPH0784456 B2 JP H0784456B2 JP 61257042 A JP61257042 A JP 61257042A JP 25704286 A JP25704286 A JP 25704286A JP H0784456 B2 JPH0784456 B2 JP H0784456B2
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明はチエナマイシン類の合成に有用な中間体である
下記一般式(I) (式中、R1は水素又は、たとえばメチル基、エチル基、
プロピル基、ベンジル基等の如きカルボキシル保護基で
あり、R2は水素又はアルキル基である)で表わされるδ
−ラクトン誘導体の製法に係る。
従来の技術及び問題点 チエナマイシンは、天然にはストレプトマイセス・キヤ
ツトレヤ(Streptomyces Cattleya)により生産され
る、グラム陽性菌、グラム陰性菌(緑膿菌を含む)及び
嫌気性菌に強力かつ広域な抗菌活性を示すと共に、β−
ラクタマーゼ阻害作用を有する新規なβ−ラクタム系化
合物であり、その構造式は次のとおりである。
この化合物は科学的に合成されており、多数の合成法が
報告されている。中でも、D.D.Melilloらにより「テト
ラヘドロン・レターズ(Tetrahedron Letters)」22,91
3-916,1981に報告されている方法が特に有効である。か
かる方法は、アセトンジカルボン酸エステルを原料と
し、合成中間体として、構造式 を有するδ−ラクトン誘導体を経由し、チエナマイシン
を合成するものである。この場合、該δ−ラクトンが、
最終目的生成物であるチエナマイシンの立体配置を発現
するための立体配置上の条件を充足していることから、
かかる合成法がチエナマイシンの有利な合成法として利
用される1つの要因となつている。
しかしながら、上述のMelilloらの方法では、合成中間
体であるδ−ラクトン誘導体を含め、チエナマイシンが
ラセミ体で生成されるため、光学分割が必要となる欠点
があつた。
さらに、チエナマイシン合成に有用なδ−ラクトン類を
経由する合成法として、その後、糖(Ikotaら「ケミカ
ル・アンド・フアーマスーテイカル・ブレテイン(Che
m.Pharm.Bull.)」30(5)1929-1931(1982)参照)、
カルボン酸(新田ら「第28回天然有機化合物討論会講演
要旨集」p543)、テルペノイド類(新間ら「日本薬学会
第104回年会講演要旨集」p211)などの光学活性体を原
料とする多数の合成法が報告されているが、いずれも、
工程数、収率、反応条件等の点で大量合成法には適さな
い方法が多い。
問題点を解決するための手段 発明者らは、市販のl−カルボンから容易に調製されか
つチエナマイシン類に必要な立体配置を有する一般式
(II) (式中、R1及びR2は前記と同意義であり、Xはケトン保
護基である)で表わされる化合物を原料とし、後述の
如く一連の化学処理を行なうことにより、極めて容易か
つ短工程で前記一般式(I)で表わされるδ−ラクトン
誘導体を合成できることを見出し、本発明に至つた。
作用 本発明によるδ−ラクトン誘導体の合成工程は下記の如
く表わされる。
次に、上記合成過程における各工程について詳述する。
工程(a): この工程は原料のシクロペンタンカルボキシレート誘導
を酸化する工程であり、反応には、オゾン、四酸化
オスミウム、過ヨウ素酸ナトリウム、四酸化ルテニウム
などの通常使用される酸化開裂剤が使用される。オゾン
による酸化反応は、ジクロロメタン、酢酸エチル、アセ
トンの如き不活性溶媒中、温度−100ないし+50℃、好
ましくは−78ないし0℃で行なわれる。
工程(b): この工程は、前記工程(a)を介して得られた一般式
(III) (式中、R1、R2及びXは前記と同意義である)で表わさ
れる化合物をオキシム化する工程である。オキシム化
にあたつては、ヒドロキシルアミン又はその塩酸塩を使
用し、反応に不活性な溶媒、たとえばジクロロメタン、
クロロホルム、メタノール、エタノール中で行なわれ
る。反応温度は0℃ないし室温が好適である。
工程(c): この工程は、前記工程(b)を介して得られた一般式
(IV) (式中、R1、R2及びXは前記と同意義である)で表わさ
れる化合物についてベツクマン転位反応を行なう工程
である。反応にあたつては、ベツクマン転位反応に一般
式に使用される試薬、たとえばオキシ塩化リン、塩化チ
オニル、五塩化リンなどが使用される。この反応は、反
応に不活性な溶媒、たとえばジクロロメタン、クロロホ
ルム、ベンゼン、又はピリジン、トリエチルアミン等の
有機アミン中で行なわれ、反応温度は0℃ないし室温が
望ましい。この反応により、対応するアミド体の異性体
混合物が生成さる場合もあるが、この異性体混合物は、
たとえばクロマトグラフィー等の常法により、容易に分
離され、その後、脱ケトン保護化を行なうことによつ
て、一般式(V) (式中、R1及びR2は前記と同意義である)で表わされる
化合物4が生成される。
工程(d): この工程は、前記化合物についてバイヤー−ピリガー
反応を行なう工程である。かかる酸化反応にあたつて
は、一般的に使用される過酸類、たとえばm−クロロ過
安息香酸、過酢酸、トリフルオロ過酢酸、過安息香酸、
過ギ酸などが使用される。反応溶媒としては、反応に不
活性な溶媒、たとえばジクロロメタン、クロロホルム、
酢酸エチルなどを使用できる。
本発明によれば、上述の一連の反応を経て、チエナマイ
シン合成の有用な中間体である前記一般式(I)で表わ
されるδ−ラクトン誘導体が高収率で合成される。
本発明をさらに詳述するため、(4R、5S、6R)−4−ア
セチルアミノ−3,4,5,6−テトラヒドロ−5−メトキシ
カルボニル−6−メチル−2H−ピラン−2−オンの合成
に係る実施例を例示するが、本発明はこれに限定されな
い。
実施例 (4R,5S,6R)−4−アセチルアミノ−3,4,5,6−テトラ
ヒドロ−5−メトキシカルボニル−6−メチル−2H−ピ
ラン−2−オンの合成 (1S,2R,5R)−2−イソプロペニル−5−メチル−4−
オキソシクロペンタン−1−カルボン酸(1)を出発原
料とし、下記の反応過程を経て、(4R,5S,6R)−4−ア
セチルアミノ−3,4,5,6−テトラヒドロ−5−メトキシ
カルボニル−6−メチル−2H−ピラン−2−オン(8)
を合成した。
i メチル(1S,2R,5R)−2−イソプロペニル−5−メ
チル−4−オキソシクロペンタン−1−カルボキシレー
ト(2)の生成 同一出願人に係る特願昭61-175787号に開示された(1S,
2R,5R)−2−イソプロペニル−5−メチル−4−オキ
ソシクロペンタン−1−カルボン酸(1)60g(0.33モ
ル)をMeOH 400mlに溶解し、氷冷下、ジシクロヘキシル
カルボジイミド(DCC)102g(0.49モル)及び4−(N,N
−ジメチルアミノ)ピリジン触媒量を添加し、室温で24
時間攪拌した。
反応終了後、反応液に5%塩酸50mlを加え、室温にて10
分間攪拌し、その後MeOHを留去した。残留物をベンゼン
に溶解し、不溶性物質を去した。液を飽和食塩水、
飽和NaHCO3水溶液、飽和食塩水によつて順次洗浄し、Na
2SO4にて乾燥した後、溶媒を留去した。得られた残留物
を減圧蒸留に付し、所望の化合物(2)55gをbp95-100
℃/1mmHgの無色油状物として得た(収率84.6%)。この
生成物を放置したところ、mp42-43℃〔文献値mp42-42.5
℃(「Tetrahedron Letters」30 3257,1974参照)〕の
無色結晶となつた。さらに、該生成物について行なつた
各種スペクトルデータは文献値と一致した。
ii メチル(1S,2R/S,5R)−3,3−エチレンジオキシ−
5−イソプロペニル−2−メチルシクロペンタン−1−
カルボキシレート(3)の生成 前述の如くして得られた化合物(2)6.82g(34.8ミリ
モル)、エチレングリコール4.3g(69.6ミリモル)及び
p−トルエンスルホン酸触媒量をベンゼン130mlに溶解
し、脱水条件下、20時間加熱還流した。
反応液を飽和NaHCO3水溶液及び飽和食塩水によつて洗浄
した後、Na2SO4にて乾燥し、溶媒を留去したところ、所
望の化合物(3)8.01gが無色油状物として得られた
(収率95.9%)。得られた生成物の各種スペクトルデー
タは次のとおりである。なお、この生成物については、
精製することなく次工程に使用した。
NMR(CCl4)δ:0.93(3H,brd,J=6Hz,CH3) 1.70(3H,s,CH3) 3.63(3H,s,OCH3) 3.87(4H,s,OCH2CH2O) 4.71(2H,br s,C=CH2) MS(m/z):240(M+) iii メチル(1R,2R,5R/S)−2−アセチル−4,4−エチ
レン−ジオキシ−5−メチルシクロペンタン−1−カル
ボキシレート(4)の生成 前記工程iiで得られた化合物(3)12.48g(52ミリモ
ル)をCH2Cl2 150mlに溶解し、−78℃において過剰量の
O3を通気せしめた。反応終了後、過剰のO3をN2気流にて
除去し、トリフエニルホスフイン16.37g(62.4ミリモ
ル)を加え、室温にて15時間攪拌した。反応液の溶媒を
留去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー
に付したところ、ベンゼン−酢酸エチル(4:1v/v)溶出
部より、所望の化合物(4)11.69g(収率92.9%)が無
色油状物として得られた。生成物の各種スペクトルデー
タは次のとおりである。
NMR(CCl4)δ:0.84及び1.00(合計3H,それぞれd,それ
ぞれJ=6Hz,CH3) 2.10(3H,s,CH3) 3.74(3H,s,OCH3) 3.90(4H,s,OCH2CH2O) MS(C12H18O5):理論値(m/z)242.1154(M+) 実測値(m/z)242.1165(M+) iv メチル(1S,2R/S,5R)−3,3−エチレンジオキシ−
5−(1E/Z−ヒドロキシイミノエチル)−2−メチルシ
クロペンタン−1−カルボキシレート(5)の生成 前記工程iiiで得られた化合物(4)7.74g(31.98ミリ
モル)、ヒドロキシルアミン塩酸塩2.67g(38.38ミリモ
ル)及びピリジン3.79g(47.97ミリモル)をCH2Cl2 60m
lに懸濁し、室温にて18時間攪拌した。反応終了後、溶
媒を留去し、残留物をAcOEtに溶解し、AcOEt層を水洗
し、Na2SO4で乾燥した後、溶媒を留去したところ、所望
の化合物(5)8.12g(収率98.8%)が無色油状物とし
て得られた。生成物の各種スペクトルデータは下記のと
おりである。なおこの生成物については、分離、精製す
ることなく、次工程に使用した。
NMR(CDCl3)δ:1.00(3H,d,J=6.5Hz,CH3) 1.87(3H,s,CH3) 2.73(3H,s,OMe) 3.98(4H,s,OCH2CH2O) 8.95(1H,br s,OH) MS(C12H19NO5):理論値(m/z)257.1264 実測値(m/z)257.1269 v メチル(1R,2R5R/S)−2−アセチルアミノ−4,4−
エチレンジオキシ−5−メチルシクロペンタン−1−カ
ルボキシレート(6a)の生成 前記工程vで得られた化合物(5)8g(31.1ミリモル)
をピリジン40mlに溶解し、氷冷下、POCl3 9.54g(62.2
ミリモル)をゆつくり滴加した。滴加終了後、反応液を
室温において3時間攪拌した後、氷水に注ぎ、CHCl3
て抽出した。CHCl3層をNa2SO4により乾燥した後、溶媒
を留去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフイ
ーに付し、AcOEt溶出部より化合物(6b)320mg(収率4.
0%)を得、さらにAcOEt−MeOH(95:5v/v)溶出部より
所望の化合物(6a)6.344g(収率79.3%)を無色結晶と
して得た。得られた生成物の各種スペクトルデータは次
のとおりである。
化合物(6a) NMR(CDCl3)δ:0.97及び1.00(合計3H,それぞれd,それ
ぞれJ=4Hz,CH3) 1.66(1H,dd,J=14Hz,4Hz,C3−H) 1.94及び1.95(合計3H,それぞれs,CH3) 3.70及び3.72(合計3H,それぞれs,OMe) 3.84−4.05(4H,m,OCH2CH2O) 4.36−4.68(1H,m,C2−H) 6.08(1H,br s,NH) MS(m/z):257(M+) 元素分析(C12H19NO5):理論値C56.02;H7.44;N5.44 実測値C56.07;H7.66;N5.44 化合物(6b) NMR(CDCl3)δ:1.04(3H,d,J=7Hz,CH3) 2.76(3H,d,J=5Hz,NMe) 3.68(3H,s,OMe) 3.90(4H,s,OCH2CH2O) 6.10(1H,br s,NH) MS(m/z):257(M+) vi メチル(1R,2R,5R/S)−2−アセチルアミノ−5−
メチル−4−オキソシクロペンタン−1−カルボキシレ
ート(7)の生成 前記工程で生成、分離した化合物(6a)5.14g(20ミリ
モル)をMe2CO 100mlに溶解し、60%HClO4触媒量を加
え、室温にて15時間攪拌した。反応終了後、反応液に過
剰量のNaHCO3を加え、室温にて30分攪拌し、過した。
液から溶媒を留去し、残留物をシリカゲルカラムクロ
マトグラフイーに付し、AcOEt−MeOH(95:5v/v)溶出部
より所望の化合物(7)4.22g(収率99.1%)を無色結
晶として得た。得られた生成物の各種スペクトルデータ
は次のとおりである。
NMR(CDCl3)δ:1.02及び1.15(合計3H,それぞれd,J=
7.4Hz,6.4Hz,CH3) 1.98(3H,s,CH3) 3.72及び3.75(合計3H,それぞれs,OMe) 4.37−4.76(1H,m,C2−H) 6.94(1H,br s,NH) MS(m/z):213(M+) 元素分析(C10H15NO4): 理論値C56.32;H7.09;N6.57 実測値C56.23;H7.19;N6.85 vii (4R,5R,6R)−4−アセチルアミノ−3,4,5,6−テ
トラヒドロ−5−メトキシカルボニル−6−メチル−2H
−ピラン−2−オン(8)の生成 前記工程viで得られた化合物(7)422mg(1.98ミリモ
ル)及びm−クロロ過安息香酸518mg(3ミリモル)をC
H2Cl2 30mlに溶解し、3日間加熱還流した。反応終了
後、反応液に過剰量のNaHCO3を加え、室温にて30分間攪
拌し、過した。液から溶媒を留去し、残留物をシリ
カゲルカラムクロマトグラフイーに付し、AcOEt溶出部
より所望の化合物(8)450mg(収率99.2%)を無色油
状物として得た。得られた生成物の各種スペクトルデー
タは次のとおりである。
NMR(CDCl3)δ:1.41(3H,d,J=6.5Hz,CH3) 1.97(3H,s,CH3) 3.77(3H,s,OMe) 4.30−5.00(2H,m,C4−H及びC6−H) 7.22(1H,br s,NH) さらに、このようにして得られた生成物が所望の化合物
であることを確認するため、該生成物458mg(2ミリモ
リ)を濃塩酸15mlと加熱還流処理することにより加水分
解し、さらに「Chem.Pharm.Bull.」1982,1929記載の方
法に従つてβ−ラクタム体(9)291mg(収率54.5%)
へと導いた。このようにして得られたβ−ラクタム体の
各種スペクトルデータ及び比旋光度は前記文献に記載の
値と一致するものであつた。この結果からも、得られた
生成物が、本発明の目的化合物の(4R,5S,6R)−4−ア
セチルアミノ−3,4,5,6−テトラヒドロ−5−メトキシ
カルボニル−6−メチル−2H−ピラン−2−オンである
ことが明らかである。
発明の効果 以上述べたように、本発明による方法では、市販のl−
カルボンから容易に調製され、しかもチエナマイシン類
に必要な立体配置を有する(1S,2R,5R)−2−イソプロ
ペニル−5−メチル−4−オキソシクロペンタン−1−
カルボン酸を使用して、チエナマイシン類合成の重要な
中間体であるδ−ラクトン誘導体を、特殊な反応条件、
特殊な試薬等を必要とせず、短工程で収率よく合成でき
る。従つて、本発明の方法は大量合成に最適である。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式(I) (式中、R1は水素又はカルボキシル保護基であり、R2
    水素又はアルキル基である)で表わされるδ−ラクトン
    誘導体の製法において、一般式(II) (式中、R1及びR2は前記と同意義であり、Xはケトン保
    護基である。以下、後述の各一般式(III)ないし
    (V)において同じ。)で表わされる化合物を酸化開裂
    し、得られる一般式(III) で表わされる化合物をオキシム化し、ついで得られる一
    般式(IV) で表わされる化合物をベツクマン転位反応に付した後、
    脱保護化し、得られた一般式(V) で表わされる化合物をバイヤー−ビリカー酸化すること
    を特徴とする、δ−ラクトン誘導体の製法。
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