JPH0776762A - アルミナイジング方法及び装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 環状又は筒状の鉄系素材の表面全体に均一に
アルミナンジング処理を施し得るようにする。 【構成】 素材Ｗをフック部材２に吊り下げた状態でア
ルミニウム浴３中に浸漬する。フック部材２を素材Ｗの
フック部材に対する係合点の接線ａ方向に傾むけ、この
状態でフック部材２を斜状振動板５の先端の係止部６に
係着する。振動板５をこれに搭載したバイブレータ１３
により振動させ、フック部材２をその軸線方向に振動さ
せる。フック部材２の傾斜により素材Ｗに上下方向と接
線方向の成分を持った振動が与えられ、接線方向の振動
成分により素材Ｗがアルミニウム浴中で回転して、素材
表面が全面に亘って均一にアルミナイジングされる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、環状又は筒状の鉄系素
材をフック部材に吊り下げた状態でアルミニウム浴中に
浸漬して、素材表面にアルミニウム被覆層を形成するア
ルミナイジング方法及びこの方法の実施に用いられるア
ルミナイジング装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、この種のアルミナイジング方法で
は、フック部材に吊り下げた素材をアルミニウム浴中に
浸漬して所定時間放置し、素材表面にアルミニウム拡散
層を形成している。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】素材をアルミニウム浴
に浸漬しただけでは処理むらができ易く、この場合アル
ミニウム浴中で素材を上下振動させて処理を均一化する
ことも考えられるが、このようにしてもフック部材に係
合する素材の部分は未処理のまま残る不具合がある。

【０００４】本発明は、以上の点に鑑み、素材表面を未
処理部を残すことなく全面に亘って均一にアルミナイジ
ングできるようにすることをその目的としている。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成すべく、
本発明は、環状又は筒状の鉄系素材をフック部材に吊り
下げた状態でアルミニウム浴中に浸漬して、素材表面に
アルミニウム被覆層を形成するアルミナイジング方法に
おいて、フック部材に少なくとも素材のフック部材に対
する係合点の接線方向の振動成分を持つ振動を与えるこ
とを特徴とする。

【０００６】

【作用】フック部材に与える振動の接線方向成分により
素材のフック部材に対する係合点が接線方向にずれ、素
材がずれた係合点を支点にして振り子運動して重心のと
れた状態に戻り、これが連続して繰返されて素材がアル
ミニウム浴中で回転する。かくて、素材のフック部材に
対する係合点は常に移動し、素材の表面が全面に亘って
アルミナイジングされる。

【０００７】処理の均一化を図るには、素材を上下方向
にも振動させることが望ましい。この場合、フック部材
を上下方向に振動させる加振手段と接線方向に振動させ
る加振手段とを設けても良いが、フック部材を素材のフ
ック部材に対する係合点の接線方向に傾むけて配置し、
フック部材をその軸線方向に振動させる加振手段を設け
れば、単一の加振手段によりフック部材にその傾きを利
用して上下方向の振動と接線方向の振動とを与えること
ができるようになり、装置構造を簡素化できる。この場
合、加振手段を、フック部材の軸線に略直交する方向に
長手で且つ先端にフック部材を係脱自在な係合部を有す
る斜状振動板と、該振動板に取付けた振動源とで構成す
れば、振動源の作動による斜状振動板の振動でフック部
材をその軸線方向に確実に振動できるようになり、且つ
該振動板の先端の係合部からフック部材を離脱させて素
材を簡易にアルミニウム浴中から引上げることができ、
有利である。

【０００８】

【実施例】図１を参照して、１はアルミナイジング用の
処理槽であり、鉄系素材Ｗをフック部材２に吊り下げた
状態で処理槽１内のアルミニウム浴３中に浸漬するよう
にした。

【０００９】図示例の素材Ｗは、エンジン用のアルミニ
ウム合金製ピストンのトップリング溝の耐摩耗性を確保
するためにピストンに鋳込むニレジスト環等の環状素材
であるが、エンジンのハブプーリの中央部に鋳込む鋳鉄
製センタースプライン等の筒状素材であっても良い。

【００１０】処理槽１の側部には基台４が設けられてお
り、該基台４上に先方に向って斜め上方に１０°〜３０
°の角度でのびる斜状振動板５を取付け、該振動板５の
先端に設けた係止部６に、フック部材２をこれに装着し
たホルダ７において振動板５の法線方向に沿った傾斜姿
勢で係着し得るようにした。尚、フック部材２を振動板
５に係着したとき、フック部材２の下端のフック部２ａ
は振動板５とフック部材２とを含む面に対し直交方向を
向くようになっており、かくてフック部材２はフック部
２ａに係合する素材Ｗの係合点の接線ａ方向に傾むく。

【００１１】前記係止部６は、振動板５の先端に形成し
た、ホルダ７の下向きの係合孔７ａに係合する爪部６ａ
と、爪部６ａとの間にホルダ７をクランプする、クラン
プ片６ｂとで構成されており、また、ホルダ７は、フッ
ク部材２に対して摺動自在に且つねじ７ｂで任意の位置
に固定自在に設けられている。

【００１２】前記振動板５は、その尾端部をこれに上方
から遊挿するボルト８に外挿したばね９で下方に付勢
し、その中間部をこれに斜め下方から遊挿するガイドロ
ッド１０に外挿したばね１１で上方に付勢して、基台４
に弾力的に支持されており、振動板５の中間部にステー
１２を介して振動源たるバイブレータ１３を搭載して、
振動板３をその法線方向、即ち、フック部材２の軸線方
向に振動させるようにした。

【００１３】アルミナイジングに際しては、フック部２
ａに素材Ｗを引掛けたフック部材２を振動板５の係止部
６に上記の如く係着して、素材Ｗをアルミニウム浴３中
に浸漬し、この状態でバイブレータ１３を作動させる。
これによれば、フック部２ａに係合する素材Ｗの係合点
の接線ａに対し傾斜したフック部材２の軸線方向にフッ
ク部材２が加振され、フック部２ａが上下方向及び接線
方向の振動成分を持って振動する。これにより素材Ｗが
上下振動すると共に、フック部２ａに対する素材Ｗの係
合点が接線方向にずれて、素材Ｗがずれた係合点を支点
にして振り子運動して重心のとれた状態に戻り、これが
連続して繰返されて素材Ｗがアルミニウム浴３中で回転
し、素材Ｗの表面全面に亘って均一にアルミナイジング
処理が施される。

【００１４】素材Ｗに６０００回／分の振動を１０〜３
０秒間与えることにより、素材Ｗの全表面に１０μｍ〜
２０μｍ程度の均一なアルミニウム拡散層が形成され
た。

【００１５】また、素材Ｗをアルミニウム浴３中の液面
下１０〜３０ｃｍ程度の比較的浅い位置に浸漬して、フ
ック部材２に相対速度で７ｃｍ／秒以上の振動を与える
と、素材Ｗの表面にキャビテーションが発生し、表面が
ポーラス状になってアルミニウムが素材表面に拡散され
易くなり、迅速に厚いアルミニウム拡散層が形成され
た。

【００１６】

【発明の効果】以上の説明から明らかなように、請求項
１の発明によれば、アルミニウム浴中で素材を回転させ
て、素材表面を未処理部を残すことなく均一にアルミナ
イジングすることができる。

【００１７】また、請求項２、３の発明によれば、素材
に上下振動と回転とを与えてアルミナイジング処理の均
一化を図れると共に、加振手段が共通１個で足りるた
め、装置構造が簡単になる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明装置の一例の側面図

【符号の説明】

Ｗ 素材 １ 処理槽 ２
フック部材 ３ アルミニウム浴 ５ 斜状斜動板 ６
係止部 １３ バイブレータ（振動源）

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 環状又は筒状の鉄系素材をフック部材に
   吊り下げた状態でアルミニウム浴中に浸漬して、素材表
   面にアルミニウム被覆層を形成するアルミナイジング方
   法において、フック部材に少なくとも素材のフック部材
   に対する係合点の接線方向の振動成分を持つ振動を与え
   ることを特徴とするアルミナイジング方法。
2. 【請求項２】 環状又は筒状の鉄系素材をフック部材に
   吊り下げた状態でアルミニウム浴中に浸漬して、素材表
   面にアルミニウム被覆層を形成するアルミナイジング装
   置において、フック部材を素材のフック部材に対する係
   合点の接線方向に傾むけて配置し、フック部材をその軸
   線方向に振動させる加振手段を設けたことを特徴とする
   アルミナイジング装置。
3. 【請求項３】 前記加振手段は、フック部材の軸線に略
   直交する方向に長手で且つ先端にフック部材を係脱自在
   な係合部を有する斜状振動板と、該振動板に取付けた振
   動源とで構成されることを特徴とする請求項２に記載の
   アルミナイジング方法及び装置。