JPH0772344B2 - 対向ターゲット式スパッタ装置 - Google Patents

対向ターゲット式スパッタ装置

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JPH0772344B2
JPH0772344B2 JP63153569A JP15356988A JPH0772344B2 JP H0772344 B2 JPH0772344 B2 JP H0772344B2 JP 63153569 A JP63153569 A JP 63153569A JP 15356988 A JP15356988 A JP 15356988A JP H0772344 B2 JPH0772344 B2 JP H0772344B2
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【発明の詳細な説明】 [利用分野] 本発明は、ターゲットを対向させた対向ターゲット式ス
パッタ装置に関し、更に詳しくはターゲット使用効率が
高く膜厚分布の制御が容易な磁気記録媒体,光磁気記録
媒体,透明導電性部材等の記録・電子部材の製造に好適
な基板を移送しつつ連続的に所望の薄膜を形成する対向
ターゲット式スパッタ装置に関する。
[従来技術] 前述の対向ターゲット式スパッタ装置は、特開昭57−15
8380号公報等で公知の通り、真空槽内で対向させたター
ゲットの対向方向に磁界を発生させ、ターゲットの側方
に配した基板上に膜形成するスパッタ装置で、各種材料
中でも磁性材の低温,高速の膜形成ができる特徴を有
し、磁性薄膜,薄膜型の磁気記録媒体等の製造に利用さ
れている。
ところが、従来の対向ターゲット式スパッタ装置を用い
て膜形成例えば垂直磁気記録媒体のCo−Cr合金膜を連続
形成した場合、ターゲットはその中心部に侵食が集中
し、ターゲットの利用効率が低いことがわかった(IEEE
I rans on Magnetics MAG17,p3175(1981))。又基
板の巾方向においても膜厚分布が生じ、生産性面で問題
があることがわかった。
これに対して、本発明者らは特開昭58−164781号公報及
び特開昭59−116376号公報において、第9図の構成すな
わち、ターゲットの周囲に磁界発生機構のコアを配置
し、磁界をターゲットの周囲に発生させるようにした構
成を提案した。すなわち、同図は、対向ターゲット式ス
パッタ装置のターゲット部のみを示したもので、対向タ
ーゲットT,T′の周囲にシールドを兼ねて、端部301a,30
2aをターゲットT,T′の表面に臨むように折曲させたコ
ア301,302の脚部301b,302bに磁界を発生させるコイル又
は永久磁石からなる磁界発生源301′,302′を磁気的に
結合させて設け、図示のごとく磁界HをターゲットT,
T′の周囲のみに発生させるようにしたものである。図
において310は真空槽壁,311,312はターゲットホルダー,
311a,312aはターゲット冷却のための冷却配管である。
この構成により磁界はターゲットを経由しないで直接コ
ア間に形成されるので、磁化の分布がターゲット材の透
磁率,飽和磁化,ターゲットの厚みに影響されずに安定
し且つ、プラズマ捕捉用磁界がターゲット周囲に形成さ
れるのでその侵食領域が中心部から周辺部へ拡大し、タ
ーゲットの利用率が向上した。しかしながら、スパッタ
の際放電電圧が高くなり、高いスパッタガス圧でないと
高い生産性を得ることができない、又高いスパッタガス
圧のために望むところの結晶組織を得るといった対向タ
ーゲット法の特長を発現しにくい。又基板巾が広くなり
ターゲットの巾が広くなると、前述の基板巾方向でその
中心部と端部の薄膜厚差が大きくなると共に、中心部の
侵食が速く全体としてのターゲットの利用率が低下する
という問題があることがわかった。
又、磁性薄膜,薄膜型磁気記録媒体等では、Fe,Ni,Co等
の遷移金属元素合金の結晶、非晶質を安定に形成する
際、結晶組織間の残留応力、あるいは高分子基板と薄膜
との界面に生じる歪のため、カールなどの媒体変形が生
じやすいという問題がある。特に、ハイビジョン用ディ
ジタルVTR等の高密度記録テープでは記録層となる金属
薄膜を形成する基板に10μm厚み以下の高分子フイルム
を使用したいが、前述の残留応力によるカールの解消が
できないという問題がある。
[発明の目的] 本発明はかかる問題に鑑みなされたもので、巾の広いタ
ーゲットにおいても上述の問題のない生産性のよい改良
された対向ターゲット式スパッタ装置を第1の目的とす
るものである。
そして、前述の金属磁性薄膜を記録層とした高密度記録
用テープの作成に必要な結晶組織間に生ずる残留応力を
調整することを可能とする対向ターゲット式スパッタ装
置を第2の目的とするものである。
[発明の構成及び作用] すなわち、本発明は、前述の特開昭58−164781号公報,
特開昭59−116376号公報開示の対向ターゲット式スパッ
タ装置の改良として先に出願した特願昭62−293980号明
細書で提案した対向ターゲット式スパッタ装置の改良
で、所定距離を隔てて対向したターゲットの夫々の周囲
に沿って磁界発生手段を設け、ターゲット対向方向のプ
ラズマ捕捉用の垂直磁界を発生させて、対向したターゲ
ット間の対向空間の側方に配置した基板上に膜形成する
ようにした対向ターゲット式スパッタ装置において、夫
々のターゲットの周辺部又は/及び磁界発生手段の前面
近傍に電子を反撥する反射電極を具備すると共に、前記
基板にバイアス電圧を付与するバイアス電圧手段を具備
したことを特徴とする対向ターゲット式スパッタ装置で
ある。
上述の本発明のなかでも、ターゲットの周辺部の前面近
傍に電子を捕捉するターゲット面と平行な成分を有する
補助磁界を形成したものでは、ターゲットの侵食領域の
拡大面で特に大きな特徴がある。
又、基板の保持手段をターゲット及び真空槽と電気的に
絶縁したものでは、後述のように得られる膜の局部的不
良の発生が防止され、又安定生産面でも効果が得られ
る。
ところで、上述の本発明は、以下のようにしてなされた
ものである。すなわち特開昭58−164781号公報,特開昭
59−116376号公報をはじめ、従来のスパッタ装置の前記
問題は、これらスパッタ装置に配設されているシールド
(陽極部)と、γ電子を拘束させる垂直磁界の相互作用
に着目し、種々検討した結果、該シールドがプラズマ中
の電子(γ電子,熱電子)を吸収する作用を奏している
のではないかと考えられた。そこでターゲット外周部に
沿って設けた磁界発生手段によって制御される電子の軌
道域に従来のシールドに替えてシールドと全く反対の作
用を奏する反射電極を設けて、電子を反撥させるように
したところ、放電特性が大巾に改良され、低ガス圧,低
電圧で良好な特性の膜形成ができることが見出された。
又、上述の構成おいて、基板にバイアス電圧を与えると
そのバイアス電圧により磁性薄膜の歪や磁気特性を大巾
に調整できることが見出された。そして、更にターゲッ
ト外周部に沿って、その前面近傍に電子を捕捉するター
ゲット面に平行な成分を有する補助磁界を形成すると、
前記放電特性が更に改良されると共に侵食領域が大巾に
拡大し、場合により従来不可能と思われていたターゲッ
ト全面の均一な侵食もできることが見出された。本発明
はこれら知見に基いてなされたものである。
従って本発明によれば、(1)ターゲットの侵食領域と
その分布が調節でき、基板巾方向の膜厚分布の均一性が
大幅に拡大できること、(2)スパッタ電圧が低くで
き、スパッタ膜質を向上させることのできる高真空スパ
ッタが容易に実現できること、(3)基板への熱衝撃の
基板巾方向でさらに均一化されること、更に(4)基板
のバイアス電圧により形成される膜の残留応力,膜質等
を調整できること等従来の問題が解決された理想に近い
対向ターゲット式スパッタ装置が実現される。
又、本発明によれば、上述の通り前述した課題が解決さ
れる上、磁界発生手段をターゲットの周囲に配置する構
成によりターゲットの全面冷却が可能となり、従来のタ
ーゲット背後に磁界発生手段の磁石を収納したものに比
較してターゲットの冷却効果を10倍以上高めることが可
能になり、従来のスパッタ堆積速度を大巾に改善でき
る。
さらに本発明を用いてポリエステルフイルム等のプラス
チックフイルム上にNi−Fe合金(パーマロイ)等の金属
薄膜を形成する場合にカールのない膜を形成できること
がわかった。そして垂直磁気記録媒体として注目される
Co−Cr合金垂直磁化膜の形成において、本発明を用いる
と他の蒸着法やスパッタ法と対比して低温で高い垂直抗
磁力を有する記録特性に優れた膜を形成できることもわ
かった。このように本発明は形成する薄膜の膜質向上,
適用できる基板材料の範囲の拡大等薄膜製造においても
大きな寄与をなすものである。
以下本発明の詳細を実施例に基いて説明する。第1図は
実施例の全体構成を示す概略図,第2図はその一方のタ
ーゲットの平面図,第3図は基板と直交する第2図のAB
線での側断面図である。
第1図から明らかな通り、本装置は前述の特開昭57−15
8380号公報等で公知の対向ターゲット式スパッタ装置と
基本的に同じ構成となっている。
すなわち、図において10は真空槽,20は真空槽10を排気
する真空ポンプ等からなる排気系,30は真空槽10内に所
定のガスを導入して真空槽10内の圧力を10-1〜10-4Torr
程度の所定のガス圧力に設定するガス導入系である。
そして、真空槽10内には、図示のごとくターゲット部10
0,100′により基板Sに面する辺が長い長方形の1対の
ターゲットT,T′が、空間を隔てて平行に対面するよう
に配設してある。
ターゲット部100,100′は全く同じ構成であり、以下そ
の一方のターゲット100に基いて説明する。
ターゲット部100は従来と異なり、第2図,第3図から
明らかなように、プラズマ捕捉用垂直磁界と補助磁界を
形成するように磁界発生手段120がターゲット1背後で
なく、その周囲に配置され、且つその前面にγ電子等の
電子を反撥する負電位の反射電極110を設けた構成とな
っている。すなわち、第2図,第3図において101は、
その上にターゲットTが取着されるターゲットホルダー
で、ターゲットTと同じ外形の所定肉厚の筒状体からな
り、その上には、テフロン(デュポン社商品名)等の絶
縁材からなる絶縁ブロック102を介して、図で上面にタ
ーゲットTを冷却するための第2図に点線で示すような
ジグザグの連続した冷却溝103aを全面に亘って穿設した
ステンレス等の熱電導性の良い材料からなる冷却板103
がボルトにより固定されている。そして、冷却板103上
には、ターゲットTがその周囲に所定間隔で穿設したボ
ルト穴104を介してボルト104aで固定されている。冷却
板103のこの冷却溝103aには、接続口103bに図示省略し
た冷却配管が接続され、冷却媒体の循環により直接ター
ゲットT全面を冷却するようになっている。なお、ター
ゲットホルダー101の上面,絶縁ブロック102,冷却板10
3,ターゲットTの各接触面は、当然の事ながらパッキン
(図示省略)によりシールされている。以上の構成によ
りターゲットTの交換が簡単になると共にターゲットは
隅々迄均一冷却が可能となり、従来の磁石内蔵型に比較
するとターゲットの冷却効率は10倍以上となり、堆積速
度が大巾に向上し、生産性,安定運転面で効果大であ
る。
電子を反射する反射電極110は、本例では断面L字型の
銅,鉄等により図示の通りターゲットTの周囲に沿った
枠構成として、冷却板103の側面に直接ボルトで取着
し、冷却板103を介して冷却できるようにすると共にそ
の電位はターゲットTと同電位になるようになってい
る。
なお、本例では反射電極110は、その対向辺部110aがタ
ーゲットTの前面より対向空間側(図で上方)に数mm程
度突き出すように配置してある。これは磁性体ターゲッ
トの場合に対向辺部110aを後述の磁界発生手段120の磁
極として用いるためである。
ターゲットホルダー101の外側にはステンレス等の非磁
性導電材からなるチャンネル型の磁石ホルダー105がボ
ルト(図示省略)により固定されている。磁石ホルダー
105は、その内部に磁界発生手段120のコア121,永久磁石
122が収納できるようにその先端部外側にチャンネル型
ホルダー部105aが形成されており、又ターゲットT及び
冷却板103と所定の間隙106を有するように配置されてい
る。
磁界発生手段120のコア121と永久磁石122とは、図示の
通り、鉄,パーマロイ等の軟磁性材の板状体からなる発
生磁界を全周に亘って均一化するためのコア121が図で
上部の前面側に位置し、その背後に永久磁石122がター
ゲットTのスパッタ面に垂直方向の磁界を発生する磁極
配置で、非磁性体ターゲットの場合に有効な補助磁界が
形成できるようにコア121の前面が略ターゲットTの前
面に略一致するように磁石ホルダー105にボルト等によ
り固定される。なお、永久磁石122は所定長の角棒状磁
石をその合成磁界が前記プラズマ捕捉用磁界を形成する
ように並設したものである。
従って磁界は反射電極110の材質によりコア121又は反射
電極110の対向辺部110aの前面を磁極として発生するの
で、ターゲットTの周辺に均一な前述の垂直磁界及び補
助磁界からなるプラズマ捕捉用磁界を生ずる。なお磁界
発生手段120はターゲットホルダー101を介して設置され
ている。
設置されたリング状のアノード電極130が、反射電極110
前方(図で上部)の近傍空間にターゲット間空間を囲む
ように設けられている。このアノード電極130の配置に
よって、スパッタ時のγ電子の捕集を調節でき、その位
置によりターゲットTの侵食及び基板巾方向の膜厚分布
の調節が出来る。
磁石ホルダー105のホルダー部105aの外面には、ステン
レス等からなる金網107が布設されている。金網107によ
り、これら部位に堆積するスパッタ付着物のスパッタ中
での剥離すなわち異常放電が防止され、又清掃が簡単に
なり、生産性,安全運転面で大きな効果が得られる。反
射電極110は冷却板103に直接取り付け、アノード電極13
0は冷却媒体を通す冷却器131を設けてあり、水冷するこ
とによりこれらの加熱が防止されるため、スパッタ速度
をあげても、基板への輻射熱が少ないので基板の熱変形
が少なく、高速生産性が実現される。
アノード電極130の材質は導電材であれば良く、前述の
コア121と同様の軟磁性材でも良く、その他銅,ステン
レス等でも良い。反射電極110は目的に応じ導電材,絶
縁材共に適用される。例えば電位を電源から積極的にか
ける場合は導電材が、直流スパッタリングで自己バイア
スを利用する場合は絶縁材が適用される。図の配置及び
後述するその作用から明らかな通り、反射電極110はス
パッタされるので、反射電極110の材質はターゲット材
そのもの、又はこれらの構成材の一つあるいはその組み
合わせを用いることが、形成される薄膜に余分の成分が
混入する恐れがない点で好ましい。
なお、本例では、反射電極110の電位をターゲットTと
同一にしているがγ電子等を反射するに必要な負電位に
なるようにターゲット電位と異なる電源又は、ターゲッ
ト電位とアース電位とを分割して形成することが出来
る。そして反射電極110はスパッタされない電位にする
ことが好ましい。
第1図に戻って、以上の構成のターゲット部100,100′
に取着された対向ターゲットT,T′の側方には、磁性薄
膜などが形成される長尺の基板Sを保持する基板保持手
段40が設けられている。基板保持手段40は、図示省略し
た支持ブラケットより夫々回転自在かつ互いに軸平行に
支持された、ロール状の基板Sを保持しつつ移送する繰
り出しロール41,支持ロール42,巻取りロール43及びガイ
ドロール44,45の5個のロールからなり、基板Sをター
ゲットT′,T間の空間に対面するようにスパッタ面に対
して略直角方向に保持するように配してある。支持ロー
ル42はその表面温度が調節可能となっている。
なお、ターゲット部100,100′の他の(図で左側の)側
方に、もう1つの長尺の基板Sを保持する基板保持手段
(図示せず)を設けることが出来る。
ここで、基板Sを保持する基板保持手段40、具体的に繰
り出しロール41,支持ロール42,巻取りロール43及びフリ
ーロール44,45は電気的にターゲットT,T′及びアースす
なわち真空槽10から絶縁された構成、具体的に図示省略
したこれらの支持ブラケットにおいて絶縁した構成とな
っている。そして、フリーロール44,45と真空槽10すな
わちアース間にバイアス用電源51が接続され、バイアス
電圧Vbを基板Sにその表面に形成された金属薄膜を介し
て与えるようになっている。なお、誘電体膜等の絶縁膜
の場合は支持ロール42にバイアス用電源51を接続すれば
良い。又基板搬送手段40は絶縁されており、そのため基
板Sには自己バイアス電圧が与えられるので、場合によ
ってはバイアス用電源51は省略できる。すなわち本発明
のバイアス電圧手段は自己バイアスを与える絶縁構成を
含むものである。
一方、スパッタ電力を供給する直流電源からなる電力供
給手段50はプラス側をアースに、マイナス側をターゲッ
トT,T′に夫々接続する。従って、電力供給手段50から
のスパッタ電力は、アースをアノードとし、ターゲット
T,T′をカソードとして、アノード,カソード間に供給
される。
以上の通り、上述の構成は前述の特開明57−158380号公
報のものと基本的には同じ構成であり、公知の通り高速
低温スパッタが可能となる。すなわち、ターゲットT,
T′間の空間に、プラズマ捕捉用磁界の作用によりスパ
ッタガスイオン,スパッタにより放出されたγ電子等が
束縛された高密度プラズマが形成される。従って、ター
ゲットT,T′のスパッタが促進されて前記空間より析出
量が増大し、基板S上への堆積速度が増し、高速スパッ
タが出来る上、基板SがターゲットT,T′の側方にある
ので低温スパッタが出来る。
ところで、ターゲットT,T′の表面からスパッタされる
高いエネルギーを持つγ電子は前述のターゲットT,T′
の空間に放射されるが、ターゲットの中央及び外周部近
傍までは磁界の影響を受けないため、ほぼ一様なγ電子
密度になりスパッタに使われるがAr+イオンの形成がタ
ーゲットT,T′の全面でほぼ一様になされる。一方、タ
ーゲット外周縁部に形成されている強い磁界領域には、
第4図に示すようにターゲットT,T′に亘るターゲット
面に垂直方向の垂直磁力線Mのほか、ターゲットTを介
しての帰還磁気回路によりターゲット面に平行な成分を
有する補助磁力線M′が形成されている。図で点線は非
磁性ターゲットで非磁性の反射電極110を用いた場合す
なわち磁極がコア121の前面となる場合、一点鎖線は磁
性ターゲットで磁性の反射電極110を用いた場合すなわ
ち磁極が反射電極110の前面となる場合である。このた
めターゲットT,T′の中央部の表面から放射された陰極
電位降下部(ターゲット表面数mmの間隔)で加速される
γ電子は、垂直磁力線Mに沿ってつる巻き状に拘束さ
れ、ターゲットT,T′の間を往復運動するが、ターゲッ
ト外縁部で生ずるγ電子の一部は、補助磁力線M′に拘
束されて磁界発生手段120のコア121面に向かって運動す
る。ところが、第9図に示す特開昭59−166376号公報等
の従来技術で使用しているアノードとして作用する接地
されたシールドを磁界発生手段120上に設ける場合又は
そのコアと兼ねて用いる場合にはターゲット外縁部に捕
捉されたγ電子の一部はシールドに吸収されると考えら
れ、従って、ターゲット周辺部ではプラズマ密度が中央
部より小さくなり、ターゲットのエロージョン,形成さ
れる膜の厚さが中心部に片寄る傾向があった。これを解
決するためにはターゲットT,T′で発生するγ電子をタ
ーゲット面で吸収されることなく往復させる必要があ
り、スパッタ電圧を高くする、あるいはスパッタガス圧
を高める等の対策が考えられるが、前述の通りその効果
には限界があり、又それに伴う膜質等別の問題があっ
た。
これに対して本発明では、磁界発生手段120のコア121部
の前面にγ電子を反射する負電位の反射電極110を設け
ているので、第4図から自明のごとく、磁力線M,M′に
沿って運動する捕捉されたγ電子は、反射電極110表面
で反射し、吸収されることなくターゲットT,T′間に戻
される。従って、周縁部の強い磁界で捕捉されたγ電子
等は吸収されることなくターゲット間空間に蓄積される
ので、後述の膜形成例に示す通り放電特性が大巾に改良
され、従来実現が困難であった低電圧,低ガス圧のスパ
ッタが可能となり内部歪やアルゴンガス等の混入の少な
い高品質薄膜の形成が可能となったと考えられる。
又、バイアス電圧手段で与えるバイアス電圧Vbの値によ
り後述の実施例から明らかなように基板S上に形成され
る膜の残留応力や膜質例えば磁気的性質を精密に制御す
ることができる。これは、反射電極110により電子が反
射されてプラズマ空間に滞留する電子が多くなり、アル
ゴン等のスパッタガスのイオン化される確率が増大し、
基板S上におけるアルゴンイオンの衝撃効果が増加し、
バイアス電圧Vbによるその衝撃力の調節が上述の優れた
作用を奏するようになったものと考えられる。
又、大巾にターゲットのエロージョン領域が改良される
が、これは次のように考えられる。すなわち、補助磁力
線M′によりターゲット周縁部にはターゲット面と平行
な磁界によりマグネトロンスパッタと同様な捕捉磁界が
形成され、反射電極110で反射された電子等が効果的に
周縁部表面に捕捉され周縁部のプラズマ密度が高くで
き、よって周縁部まで略均一なスパッタすなわちエロー
ジョンが達成できると考えられる。また、アノード電極
130の配置によっては、γ電子の吸収を調節することが
できる。
このため、本発明によれば、ターゲットT,T′の全面を
一様にスパッタできることはもちろん、γ電子の拘束を
厳密に行なうことができるので、基板の巾方向の膜厚分
布を広い範囲に亘って任意に調節することができるほ
か、前述の種々の作用が得られるのである。
以上から明らかな通り、本発明の反射電極は、磁力線M,
M′に拘束された電子を反射するものであれば良く、従
ってターゲットと同極性の電位具体的に負電位であるこ
とが必要であるが、電位の大きさは形成する膜等により
異なり実験的に決めるべきである。ターゲットと同電位
にすると電源が簡略できる点で有利である。なお、直流
スパッタリングの場合には単に絶縁体を配するのみでも
良い。
又反射電極の設置箇所は、前述の電子を最も効果的に反
射できる磁束発生手段のコア前面が好ましが、この近傍
又は/及びターゲット周辺部の近傍であっても良いこと
はその作用から明らかである。
その形状も、ターゲット周囲を連続して囲むリング状が
好ましく、更には板状体でターゲットと磁界発生手段と
の間の隙間をカバーするものが好ましいが、場合によっ
ては必要箇所に部分的に設けるのみでも良く、その形状
も棒状体,網状体等でも良いことはその作用から明らか
である。
同じく、上述の作用から、本発明のバイアス電圧手段
は、膜形成域の基板に所定のバイアス電圧を与えるもの
であれば良く、前述の通り実施例のガイドロールにバイ
アス電源を接続するもの他、支持ロールに直接バイアス
電源を接続するもの、更には基板を真空槽,ターゲット
等の周囲の物から電気的に絶縁して自己バイアスを利用
するもの等適用できる。なお、基板の搬送手段を周囲の
物から電気的に絶縁することにより基板上に形成される
金属薄膜から基板搬送手段を介してのプラズマからの漏
洩電流がなくなり金属薄膜と基板搬送手段の不均一接触
によるジュール熱による局部加熱に基づく膜質異常,溶
断等の問題のない膜形成ができる利点がある。
又、前述の作用から本発明において補助磁界は必須でき
ないが、ターゲットエロージョン領域の拡大という点で
補助磁界を少なくともターゲット周辺部の前面近傍に形
成することが好ましい。この補助磁界は、実施例の如く
垂直磁界発生用の磁界発生手段と共用すると構成が簡単
となり、好ましいが、別体としても良いことは云うまで
もない。また、磁界発生手段も構成簡単な永久磁石を用
いる例を示したが、前述の第9図に示す構成等公知の他
の構成も適用できることは云うまでもない。
又、アノード電極も、電子の吸収が適切にできる位置に
設ければ良く、各反射電極,ターゲットの近傍又は周囲
に設けて良く、又ターゲット間の中間位置に1個設けて
も良い。その形状も実施例の棒状リングの他、網状体等
でも良く、ターゲット全周に亘ってシールドと兼ねて設
けても、必要な箇所のみに設けても良い。ターゲットの
エロージョンの均一化面からはその全周に亘ってそのタ
ーゲット間空間を囲むように設けることが好ましい。ア
ノード電極の配置は形成される膜の膜厚分布に大きな相
関を有するので、目的に応じて実験的に定めることが好
ましい。
又、本発明が適用されるターゲットの形状も矩形,円形
等特に限定されないことは本発明の趣旨から明らかであ
るが、膜厚分布の制御,エロージョンの不均一化等で問
題の多い巾広の長方形ターゲットにおいて本発明の効果
はより大きく発現する。なお、本発明は先に本発明者ら
が特願昭61−142962号で提案した分割されたターゲット
にも適用できる。
以下、本発明の効果を前記実施例の装置による膜形成例
に基づいて具体的に説明する。
膜形成例 ターゲットT,T′は124mm×575mmの巾広の長方形で厚さ
が20mmの鉄・ニッケル・モリブデンからなるパーマロイ
のターゲット、ターゲットT,T′の間隔lは200mmで、反
射電極110の電位をターゲットと同電位とした。磁界発
生手段120にアルニコ7磁石を用い、ニッケル材からな
る反射電極110表面の磁場強度を、表面と垂直方向に330
ガウスとした。反射電極110の外周部に数mmの間隔を設
けてアノードリング130を空間に配した。第5図にスパ
ッタ特性の1例を示す。Arガス圧1Pa〜0.1Paの範囲で45
0〜700Vとすぐれた電圧−電流特性を示した。
基板Sとして30μm厚みのポリエチレン−2,6−ジナフ
タレート(PEN)フイルムを用いて、フイルム張力を0.1
kg/cm幅として基板保持手段40の20cm直径の支持ロール4
2を介して走行させながら、0.4μmの鉄・ニッケル・モ
リブデンのパーマロイ層を基板Sの片面に形成した。第
6図に比較例としてバイアス電圧Vbを印加せず、ロール
温度66℃で膜形成した場合のガス圧と得られた媒体のカ
ールKp及び抗磁力Hcの関係を示す。なお、カールKpは、
29mmφの円板状にサンプルを打抜いて、第7図に示した
如く、各直径においてKp={(h1+h2)/2l}×100%を
求めその最大値とした。その正負は、磁性薄膜面側に凹
状に変形した場合を負とした。スパッダガス圧0.1PaでK
p=−19%,1PaでKp=−35%と、高真空程Kpは減少する
傾向になったが、いずれの場合も磁性薄膜には、基板に
対して引張応力が残留していた。又、抗磁力Hcは、いず
れも10oe(エルステッド)以上と軟磁気特性に乏しい状
態であった。
第8図には、本発明の実施例の装置によりスパッタガス
圧0.1Paとして、バイアス電圧Vbをガイドロール44,45を
介して印加して形成した磁性薄膜についKp,HcとVbの関
係を示す。
驚くべきことに、基板表面のバイアス電圧Vbを負にして
増大させるにつれてKは負から正に調節できることがわ
かった。また、Kpが負から正に変わるにつれてHcが小さ
くすなわち優れた軟磁気特性を発現することがわかっ
た。PENフイルムのガラス転移点は110℃であり、ロール
温度60℃で形成した。
第6図,第8図の結果と対比してロール温度30℃でスパ
ッタしてKp,HcとVcの関係を調べた。その結果、ロール
温度60℃,30℃とではほとんど同じ結果になった。この
ことから、PENフイルムにはガラス転移点を越える熱履
歴はなく、カールKpは鉄・ニッケル・モリブデンの結晶
組織間で残留応力による歪が主因と考えられる。バイア
ス電圧Vbにより、基板Sの表面近傍のAr+,電子は吸引又
は反発力を受けてスパッタ中の表面粒子に影響をする。
第6図の結果は次の如く解釈できる。スパッタされたF
e,Ni,Mo原子は高真空程エネルギーを保存して基板表面
に到達し薄膜を形成するが、原子間には引張り応力が残
留する。低真空程Fe,Ni,Moのスパッタ原子はエネルギー
を消失するため薄膜に残留する引張り応力が大きい。第
6図の比較例では基板面上のセルフバイアス電圧は0.1P
aで−30V,1Paで−25Vとほとんど同じ程度であった。第
8図に示すように、Vb=−60,−75VとAr+イオンの基板
表面衝撃エネルギーを増すことにより薄膜に残留する応
力は引張り応力が軽減し、やがて応力フリー状態を越え
て圧縮応力を生じるようにFe,Ni,Moの結晶組織が制御さ
れたと考えられる。
すなわち、本発明によれば連続走行する基板、従って大
面積の基板に薄膜を形成するに際して、結晶組織間に生
じ易い残留応力を調節することが可能になったといえ
る。
なお、本膜形成においては基板保持手段40を周囲と電気
的に絶縁したことにより微小の局部的不良のない良好な
膜が基板の溶断等のトラブルもなく形成された。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の実施例の全構成の説明図、第2図は
そのターゲット部の平面図、第3図は第2図のA−B線
での断面図、第4図は本発明の作用を説明するため磁力
線の分布の説明図、第5図は実施例による膜形成例での
スパッタ特性のスパッタガス圧とスパッタ電圧の関係を
示すグラフ、第6図は比較例の膜形成により得られた媒
体のカールKp及び膜質の抗磁力Hcとスパッタガス圧の関
係を示すグラフ、第7図はカールKpの測定方法の説明
図、第8図は実施例による膜形成により得られた媒体の
カールKp及び膜質の一つである抗磁力Hcとスパッタガス
圧の関係を示すグラフ、第9図は従来例のターゲット部
の構成の説明図である。 T,T′:ターゲット,10:真空槽, 51:バイアス用電源,110:反射電極, 120:磁界発生手段,130:アノード電極, M:垂直磁力線,M′:補助磁力線
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−270461(JP,A) 特開 平1−262610(JP,A) 特開 昭63−140079(JP,A) 特開 昭57−157511(JP,A) 特開 昭58−189371(JP,A) 特開 昭62−188777(JP,A) 特開 昭59−17222(JP,A)

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】所定距離隔てて対向したターゲットの夫々
    の周囲に沿って磁界発生手段を設け、ターゲット対向方
    向の垂直磁界を発生させて、ターゲット間の対向空間の
    側方に配置した基板上に膜形成するようにした対向ター
    ゲット式スパッタ装置において、夫々のターゲットの周
    辺部又は/及び磁界発生手段の前面近傍に電子を反撥す
    る反射電極を具備すると共に、前記基板にバイアス電圧
    を付与するバイアス電圧手段を具備したことを特徴とす
    る対向ターゲット式スパッタ装置。
  2. 【請求項2】前記基板の保持手段が真空槽及びターゲッ
    トと電気的に絶縁されている請求項第1項記載の対向タ
    ーゲット式スパッタ装置。
  3. 【請求項3】前記夫々のターゲットの少なくとも周辺部
    の全面近傍に電子を捕捉するターゲットの面に平行な成
    分を有する補助磁界が形成されている請求項第1項また
    は第2項記載の対向ターゲット式スパッタ装置。
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