JPH0772299A - X線用ミラーおよびこれを用いた露光装置などの光学装置 - Google Patents

X線用ミラーおよびこれを用いた露光装置などの光学装置

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JPH0772299A
JPH0772299A JP21945693A JP21945693A JPH0772299A JP H0772299 A JPH0772299 A JP H0772299A JP 21945693 A JP21945693 A JP 21945693A JP 21945693 A JP21945693 A JP 21945693A JP H0772299 A JPH0772299 A JP H0772299A
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rays
ray
mirror
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JP21945693A
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Yoshiaki Fukuda
惠明 福田
Yutaka Watanabe
豊 渡辺
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 シンクロトロン放射光などの大強度のX線に
対しても、照射損傷を起こさず、長期間使用できるX線
用ミラーを提供する。 【構成】 石英などからなる基材1とX線を反射するた
めの反射層2との間に、1ないし複数層の下引き層31
〜3nを設ける。各下引き層31〜3nは、上層側からの
蛍光X線を吸収し、あるいはより波長の長い蛍光X線に
変換するように、材質を選択する。最終的に基材1に入
射するX線の強度が著しく弱められ、その波長が酸素の
K吸収端よりも長くなるようにする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、X線を反射させるため
のX線用ミラーおよびこれを用いた光学装置に関し、特
に、シンクロトロン放射光であるX線に対して使用され
るX線用ミラーおよびこれを用いた光学装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、シンクロトロン放射光に関する研
究が進み、放射光施設の充実とともに、理学領域をはじ
め工学、医学などの広汎な分野にわたってシンクロトロ
ン放射光が利用されるようになってきた。放射光関連の
技術の発展により、蓄積リングに蓄積されるエネルギー
の高エネルギー化と大電流化が進んでいる。このため、
放射光用として使用されるミラーの満たすべき仕様(波
長域、耐久性など)も厳しくなってきている。特に、大
強度のX線の反射に用いられるミラーの耐久性が問題と
なっている。
【0003】X線用ミラーとして、従来よりさまざまな
ものが開発・利用されているが、最も入手が容易でかつ
比較的安価ではあるが性能は優れたものとして、溶融石
英もしくは溶融石英を主たる材料としたミラーがある。
これは、溶融石英が素材として安定である、研磨特性に
優れるなどの理由によるものであって、一般に、溶融石
英の表面をミラー研磨し、必要に応じてその表面に金属
膜をコーティングしたものである。表面のコーティング
は、反射光に必要とされるスペクトル等によって材料が
異なるが、例えば、タングステン・白金・金などの金属
膜を蒸着等の方法によって適当な厚さに被着することに
よって形成されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た従来のX線用ミラーの場合、実際にシンクロトロン放
射光施設等で使用しているうちにミラー表面に細かなひ
び割れが発生したり、表面形状が変化したりすることに
よる反射率低下が見い出され、ある期間ごとにミラーを
交換することを余儀なくされていた。
【0005】成分が二酸化ケイ素である溶融石英は、X
線の照射により変質することが知られており[例えば、
Jpn. J. Appl. Phys., 30B(11), 3209-3214(1991)(ジ
ャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジッ
クス第30巻11B号、3209〜3214頁、1991年)など]、石
英表面にX線が直接照射される場合ばかりでなく、その
表面に金属膜のコーティングが施されている場合にも変
質が生じ得る。その結果、放射光の照射の進行とともに
溶融石英の表面の形状が初期研磨形状から変化し、必要
な光学特性が維持されなくなるという問題が生じる。
【0006】初期研磨形状からの変化に際しては、再研
磨を行なうことも考えられるが、再研磨に必要なコスト
が大きいため、実際には、ミラー自体が高価であること
と相まって、性能劣化によって満足できない状態となっ
たミラーを交換せずにそのまま使用することが一般的で
あった。
【0007】ミラーの損傷の原因は、コーティング膜を
ささえる基板(溶融石英など)の放射線によるひび割
れ、変形が主たるものであり、ミラーを長期間にわたっ
て安定に使用するにはこの問題を解決しなければならな
い。
【0008】本発明の目的は、シンクロトロン放射光の
ような大強度のX線に対し長期間にわたって安定に使用
できるX線用ミラーと、このX線用ミラーを使用した光
学装置とを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明のX線用ミラー
は、X線を反射するための反射層が基材表面に設けられ
たX線用ミラーにおいて、前記反射層と前記基材との間
に1層以上の下引き層が積層されている。反射層と下引
き層との間に、反射層を構成する材料より大きな原子番
号の材料からなる阻止層が設けられていてもよい。
【0010】
【作用】以下、基材材料が溶融石英であるミラーを例と
して、その照射損傷と本発明に基づく損傷回避の方法を
説明する。
【0011】放射線照射による溶融石英の変質は、その
材料である二酸化ケイ素の、特に軟X線の照射効果によ
る変質であることが、放射光を用いた今までの研究で明
らかとなっている。特に顕著な破壊プロセスとして、石
英の構成元素であるケイ素および酸素が軟X線により励
起され酸素−ケイ素の結合が切断されるために、室温
(温度上昇があっても、特に加熱しない状態をいう)で
あっても酸素が選択的に脱離する、という過程が考えら
れている。また脱離に対する効果は、酸素原子のK殻励
起の方がケイ素原子のL殻励起よりも大きいことが知ら
れている。したがってこの脱離現象を抑止するために
は、基板である石英に軟X線が侵入しないようにし、特
に酸素のK殻励起を抑制することが効果的である。
【0012】これらのことから、溶融石英の表面をその
まま露出させたものは、酸素原子のX殻励起を生じさせ
るようなエネルギー領域の光(X線)に対しては、ミラ
ーとして好ましいものではないことが明らかである。こ
のようなエネルギー領域の光を反射するためには、溶融
石英の表面に遮蔽を目的としたコーティング層を形成す
べきであるが、その場合には、コーティング層からの蛍
光X線による被曝が問題となる。一般にX線ミラーは斜
入射ミラーとして使用され、入射X線は入射角が小さい
ためにコーティング材料中を比較的長い距離で通過す
る。しかし、蛍光X線は等方的拡がりを示すので、コー
ティング層を通り抜けて基板深くにまで到達する。
【0013】本発明は、この蛍光X線の効果を減弱する
ことに主眼をおいてなされたものであって、基材表面に
2層以上のコーティング層を設け、最表面のコーティン
グ層をX線を反射するための反射層とし、基材側のコー
ティング層を反射層からの蛍光X線を吸収するための層
としたものである。
【0014】図1は、本発明のX線用ミラーの構成を典
型的に示す模式断面図である。このX線用ミラーは、石
英からなる基材1の上に、反射層2およびn層の下引き
層3 1〜3nが被着積層された構成となっている。最表面
が反射層2であり、反射層2に接して1番目の下引き層
1が設けられ、1番目の下引き層31の下に2番目の下
引き層32が設けられ、以下同様にして、n番目の下引
き層3nは基材1に接して設けられている。
【0015】ある物質に入射したX線は、一般に、その
物質のある吸収端よりもエネルギーが大きければ吸収さ
れ、入射X線よりも小さなエネルギーの蛍光X線として
放出される。図2は、原子番号に対する蛍光収率の変化
を示すグラフであり、入射X線が蛍光X線として放出さ
れる割合は、K殻励起、L殻励起などの励起レベルや吸
収した物質を構成する元素によって異なる。したがって
入射X線に対して物質を適当に選ベば発生する蛍光X線
の強度を小さくすることができ、かつエネルギーの低い
X線に変換することができる。
【0016】本発明のX線用ミラーでは、反射層からの
蛍光X線−例えばL系列の特性X線−のエネルギーより
もわずかに小さいエネルギーをL吸収端あるいはM吸収
端としてもつような材料を下引き層として採用すること
により、よりエネルギーの小さいX線への変換ととも
に、X線強度自体を数%ないし数十%減少させることが
できる。このような効果を有する下引き層を基材の表面
と反射層との間に1ないし複数層設ければ良い。
【0017】これを具体的に達成するためには、同系列
(K系列、L系列、M系列など)の蛍光X線で比較した
場合、X線の質量吸収係数の極小値を与える原子番号
が、X線のエネルギーが小さいほど小さくなることを利
用する。図3は、いくつかのエネルギー(10〜2.5
keV)のX線に対する質量吸収係数と原子番号との関
係を示した特性図である。同じX線系列であれば、原子
番号の小さい元素からの蛍光X線の波長が、それより原
子番号が大きい元素からの蛍光X線の波長よりも長いこ
とを利用すればよい。
【0018】表1〜3は、原子番号ごとに、その原子番
号に対応する特性X線および吸収端のエネルギーを波長
換算したもの示しており、それぞれ、K系列、M系列、
L系列に対するデータである。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
【表3】 透過してくるX線エネルギーをより大きく減衰するため
には、隣り合う2層の間で上層(基板より遠い層)から
の蛍光X線を直下の層が吸収するように、L吸収端やM
吸収端を考慮して直下の層の材料を選択すると、より効
果的である。本発明では、2以上の膜を1回のバッチ処
理で積層コーティングするときに不可避的に生ずる極め
て薄い膜(真空チャンバ内の残留酸素による酸化膜、異
なる材料の連続的な積層による2つの物質の混合層ある
いは拡散層など)の影響は本発明の観点からは無視する
ことができ,隣り合う層というときにはこのような極め
て薄い層は考えない。
【0022】反射層としては、例えば金、白金、タング
ステン等がよく用いられるが、これらを用いた反射層に
対しては、ハフニウム、ルテニウム、ロジウム、モリブ
デン、銅、コバルト、ニッケル、鉄が蛍光X線を吸収す
る材料として挙げられる。もちろん、これら以外のもの
を蛍光X線の吸収に使用することも可能である。
【0023】石英基板を使用する場合に基板の変質を最
も効果的に抑止するためには、石英基板の表面に、酸素
のK吸収端よりも長い波長の蛍光X線のみをもつ材料か
らなる層あるいは層の組み合わせを設ければよい。ここ
で層の組み合わせとは、石英基板に直接接する層は蛍光
X線として酸素のK吸収端より短波長のものを含むが、
直接接する層の上側の層の蛍光X線の波長を適宜選択す
ることにより、石英基板に直接接する層では酸素のK吸
収端よりも短波長の蛍光X線が励起されないようなって
いるもののことをいう。アルミニウム、チタン、バナジ
ウムは、これらの元素のL系列の特性X線が酸素のK吸
収端より低エネルギーであるので、好ましい材料であ
る。またL系列の蛍光X線が酸素のK吸収端よりも高エ
ネルギーであるような材料であっても、この材料のK殻
励起を起こさないように低エネルギーのK殻励起または
K殻励起のみが生じるような材料と組み合わせることに
よって、効果を生じる。このような材料の組み合わせと
しては、炭素とクロム、あるいはチタンとバナジウムな
どがあり、これらの場合には、クロムやバナジウムが石
英基板に近い側に配置される。
【0024】反射層は、上述したような金や白金、タン
グステンなどを用いるほか、シリコンや炭化ケイ素な
ど、軽い元素で構成することもできる。軽い元素で反射
層を構成した場合、入射X線のうちエネルギーの高いも
の大部分が反射層を透過することになるので、基材の損
傷を招きやすい。このようなミラーにあっては反射層の
下に重い元素からなる阻止層を設け、入射X線の強度を
小さくするとともに蛍光X線発生による長波長化(低エ
ネルギー化)を図り、その上で上述した方法により基材
に侵入するX線を抑えればよい。
【0025】以上説明したように、ミラーの表面にX線
を反射するための反射層を設け、反射層からの蛍光X線
を吸収する第1の下引き層、反射層および第1の下引き
層からの蛍光X線を吸収するための第2の下引き層、以
下同様の構成によって、必要な機能の膜を必要な層数だ
け基材表面の積層コーティングすることにより、基材へ
のX線の到達量を可能な限り低減させることができ、耐
放射線性に優れたX線用ミラーが得られる。
【0026】
【実施例】次に本発明の実施例について図面を参照して
説明する。
【0027】《実施例1》図4は、本発明の実施例1の
X線用ミラーの構成を示す模式断面図である。基材10
は、低線膨張係数のガラスで構成され、表面形状は平面
であり、表面粗さを0.2nm rms程度に加工してあ
る。基材10の表面には、厚さ20nmクロムからなる
下引き層11、厚さ20μmの銅からなる下引き層1
2、波長1nmのX線を反射するための厚さ200nm
の金からなる反射層13が、基材10側からこの順に積
層、コーティングされている。
【0028】このX線用ミラーにX線を照射した場合、
まず最表面にある反射層13で金の蛍光X線(Au L,
波長0.127nm)が発生するが、この蛍光X線は、
下引き層12において銅により大きく吸収され、銅の蛍
光X線(Cu K,波長0.154nm)となって再放出
される。このときの蛍光収率は50%以下である。さら
に、銅の蛍光X線は、クロムからなる下引き層11を透
過して、基材10にまで到達するが、その強度は20%
程度まで低下する。
【0029】このX線用ミラーを超高真空雰囲気のミラ
ーチャンバ内に設置し、シンクロトロン放射光施設のビ
ームラインに接続して、分光測定実験用の最も光源(発
光点)に近いミラーとして用いた。したがってこのX線
用ミラーには、放射光の全てのスペクトル成分が照射さ
れたことになる。放射光(強度1.5W/cm2)を斜入
射角2°の条件で入射させ、1000時間使用したとこ
ろ、表面形状には全く変化が生じなかった。
【0030】X線用ミラーとして石英表面になんらコー
ティングを施さなかったものを使用した場合には、ここ
で述べた照射条件では、照射開始ともに表面の変形がみ
られることから、本発明のX線用ミラーは著しく照射耐
性が向上していることが分かった。
【0031】《比較例》図5に示す従来のX線用ミラー
を作成した。このX線用ミラーは、基材20として実施
例1の基材10と同一組成のガラスを使用し、基材20
上に、厚さ5nmのクロムからなる層21と厚さ200
nmに金からなる反射層22を順次積層コーティングし
た構成となっている。この従来の形式のX線用ミラーを
実施例1と同様にビームラインに中に設置し、シンクロ
トロン放射光(強度1.5W/cm2)を斜入射角2°で
入射させたところ、照射開始後約1000時間程度でコ
ーティング表面に亀裂を生じ、基材20の内部にも数m
mの深さに大きなひびが発生した。
【0032】実施例1と比較例との比較から明らかなよ
うに、本発明のX線用ミラーは、従来の膜構成のミラー
に比べ、著しく照射耐性が向上していることが分かっ
た。
【0033】《実施例2》図6は、反射層と基材との間
に3層の下引き層を有するX線用ミラーを示している。
このX線用ミラーは、石英を基材30として用い、実施
例1と同様に基材30を研磨加工したのち、基材30側
から、厚さ20nmのバナジウムからなる層31、厚さ
10μmのコバルトからなる層32、厚さ20μmのハ
フニウムからなる層33、厚さ200nmの金からなる
反射層34をこの順にコーティングしたものである。
【0034】このX線用ミラーにX線を照射したとき、
反射層34の金からの蛍光X線(Au K,波長0.12
7nm)は、ハフニウムからなる層33によって、20
%程度の蛍光収率でハフニウムの蛍光X線(Hf L,波
長0.157nm)となり、さらにコバルトからなる層
32により、蛍光収率30%以下でCo K線(波長0.
179nm)となる。したがって、反射層34からの金
の蛍光X線は、オージェプロセスを経て蛍光X線として
再放出されるものを含めても、10%以下に低減され
る。
【0035】シンクロトロンを光源とする装置にこのX
線用ミラーを設置して使用したところ、下引き層(層3
1〜33)の効果により、基材20に入射する蛍光X線
の強度を十分に減弱できたため、照射による損傷は見ら
れなかった。
【0036】《実施例3》図7は、反射層と基材との間
に4層の下引き層を有するX線用ミラーを示している。
このX線用ミラーは、石英からなる基材40を使用し、
実施例1と同様に研磨加工したのち、基材40側から、
厚さ30nmのチタンからなる層41、厚さ100nm
のアルミニウムからなる層42、厚さ25μmの銅から
なる層43、厚さ20μmのパラジウムからなる層44
をこの順に積層コーティングし、最上層にX線を反射す
るための層として厚さ200nmの白金からなる反射層
45を成膜した。
【0037】このX線用ミラーでは、反射層45を構成
する白金からの蛍光X線(Pt L,波長0.131n
m)は、パラジウムからなる層44を通過する際に40
%程度減衰するとともに、この層44によって蛍光収率
約5%でパラジウムのPd L線(波長0.437nm)
に変換される。さらに銅の層43により吸収され、Cu
K線およびCu L線に変換される。銅からなる層43
から最終的に出射するX線は、反射層45からの蛍光X
線に対して数%程度にまで低減されている。銅の層43
から透過してくるわずかな量のX線によって、アルミニ
ウムの層42とチタンの層41においても蛍光X線を発
するが、チタンの層41から基材40に入射するX線
は、低エネルギーであって、基材40の構成元素である
酸素のK殻励起を起こすことができない。これにより、
酸素のK殻励起に起因する損傷は生じない。
【0038】実施例1と同様に、シンクロトロン放射光
施設のビームラインにこのX線用ミラーを設置して使用
したところ、ひびわれ等の損傷は見られなかった。
【0039】《実施例4》石英を基材とし、基材側から
クロム(厚さ20nm)、銅(厚さ20μm)、金(厚
さ10μm)をこの順に積層し、最後の反射層として厚
さ1μmの炭化ケイ素を積層コーティングした。反射層
として炭化ケイ素を用いたのは、反射光のスペクトルを
0.6nm以上の波長の光に限定するためである。この
X線用ミラーを使用した場合、シンクロトロン放射光の
短波長成分ははとんど反射せずにコーティング中に透過
してくるが、反射層直下の金の層のために吸収され、あ
るいは蛍光X線となって強度が低下する。そして、銅や
クロムの層は実施例1と同様の構成であるので、実施例
1と同様の過程によって石英基材に到達するX線は著し
く低減され、基材の照射損傷を著しく低減できる。
【0040】《実施例5》本発明によるX線用ミラーを
設置した実験装置の一例が、図8に示されている。シン
クロトロン放射光施設の蓄積リングSRから出た放射光
は、本発明のX線用ミラー50に入射し、波長選択と偏
向を兼ねて反射される。X線用ミラー50の出射側に
は、球面グレーティング51と検出器52を使用した分
光装置が設けられている。X線用ミラー50と球面グレ
ーティング51の間の光路及び検出器52の直前の位置
には、それぞれスリットS1,S2が配置されている。こ
の装置を用いて実験を行なったところ、X線用ミラー5
0にシンクロトロン放射光による被曝劣化が発生しない
ため、長期間にわたってミラー表面の変形や反射率変化
が生ぜず、実験条件が変化しなかった。そのため、極め
て再現性のよい実験結果が得られた。
【0041】《実施例6》本発明によるX線用ミラーを
設置した半導体露光装置の一例が、図9に示されてい
る。蓄積リングSRからのシンクロトロン放射光は、本
発明によるX線ミラー50によって反射され、半導体露
光部53に入射する。この半導体露光装置を用いて半導
体製造を行なったところ、シンクロトロン照射によるミ
ラーの損傷が生じないため、スペクトルの変化、反射率
の変化あるいは散乱光の増大などの光源性能の劣化が見
られず、長期間にわたって露光条件が変化しなかった。
このため、製造プロセスが安定し、パターン転写精度の
極めてよいデバイスの製造が可能となった。 《実施例7》次に、上述のX線用ミラーを使用する実施
例6に示したような露光装置を利用したデバイスの製造
方法の実施例を説明する。図10は微小デバイス(IC
やLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜
磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造の工程を示すフ
ローチャートである。ステップ71(回路設計)では半
導体デバイスの回路設計を行なう。ステップ72(マス
ク製作)では設計した回路パターンを形成したマスクを
製作する。一方、ステップ73(ウエハ製造)ではシリ
コン等の材料を用いてウエハを製造する。ステップ74
(ウエハプロセス)は前工程と呼ばれ、上記用意したマ
スクとウエハを用いて、リソグラフィ技術によってウエ
ハ上に実際の回路を形成する。次のステップ75(組み
立て)は後工程と呼ばれ、ステップ74によって作製さ
れたウエハを用いて半導体チップ化する工程であり、ア
ッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケ
ージング工程(チップ封入)等の工程を含む。ステップ
76(検査)ではステップ75で作製された半導体デバ
イスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行な
う。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、これ
が出荷(ステップ77)される。
【0042】図11は上記のウエハプロセスの詳細な工
程を示すフローチャートである。ステップ81(酸化)
ではウエハの表面を酸化させる。ステップ82(CV
D)ではウエハ表面に絶縁膜を形成する。ステップ83
(電極形成)ではウエハ上に電極を蒸着によって形成す
る。ステップ84(イオン打込み)ではウエハにイオン
を打ち込む。ステップ85(レジスト処理)ではウエハ
に感光剤を塗布する。ステップ86(露光)では上記の
露光装置によってマスクの回路パターンをウエハに焼付
露光する。ステップ87(現像)では露光したウエハを
現像する。ステップ88(エッチング)では現像したレ
ジスト像以外の部分を削り取る。ステップ89(レジス
ト剥離)ではエッチングが済んで不要となったレジスト
を取り除く。これらのステップを繰り返し行なうことに
よって、ウエハ上に多重に回路パターンが形成される。
本実施例の製造方法を用いれば、従来は製造が難しかっ
た高集積度の半導体デバイスを製造することができる。
【0043】
【発明の効果】以上説明したよう本発明は、ミラーの表
面にX線を反射するための反射層を設け、反射層からの
蛍光X線を吸収する第1の下引き層、反射層および第1
の下引き層からの蛍光X線を吸収するための第2の下引
き層などを順次設けることにより、基材へのX線の到達
量を可能な限り低減させることができ、耐放射線性に優
れたX線用ミラーが得られるという効果がある。これに
より、従来は照射損傷のために短期間しか性能の維持で
きなかった溶融石英製のミラー等を長期にわたり安定に
使用できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のX線用ミラーの典型的な構成を示す模
式断面図である。
【図2】原子番号と蛍光X線の蛍光収率との関係を示す
特性図である。
【図3】原子番号とX線の質量吸収係数との関係を示す
特性図である。
【図4】本発明の実施例1のX線用ミラーの構成を示す
模式断面図である。
【図5】従来のX線用ミラーの構成を示す模式断面図で
ある。
【図6】実施例2のX線用ミラーの構成を示す模式断面
図である。
【図7】実施例3のX線用ミラーの構成を示す模式断面
図である。
【図8】本発明のX線用ミラーを用いた実験装置の一例
を示すブロック図である。
【図9】本発明のX線用ミラーを用いた半導体露光装置
の一例を示すブロック図である。
【図10】半導体デバイスの製造工程を示すフローチャ
ートである。
【図11】ウエハプロセスの詳細な工程を示すフローチ
ャートである。
【符号の説明】
1,10,30,40 基材 2,13,34,45 反射層 31〜3n,11,12 下引き層 31〜33,41〜44 層 50 X線用ミラー SR 蓄積リング

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 X線を反射するための反射層が基材表面
    に設けられたX線用ミラーにおいて、前記反射層と前記
    基材との間に1層以上の下引き層が積層されていること
    を特徴とするX線用ミラー。
  2. 【請求項2】 下引き層を構成する主たる材料の原子番
    号が、反射層を構成する材料の原子番号よりも小さい請
    求項1に記載のX線用ミラー。
  3. 【請求項3】 X線を反射するための反射層と前記反射
    層に接しかつ前記反射層を構成する材料より大きな原子
    番号の材料からなる阻止層とを前記阻止層が基材側とな
    るように前記基材表面に設けたX線用ミラーにおいて、
    前記阻止層と前記基材との間に1層以上の下引き層が積
    層されていることを特徴とするX線用ミラー。
  4. 【請求項4】 下引き層を構成する主たる材料の原子番
    号が、阻止層を構成する材料の原子番号よりも小さい請
    求項3に記載のX線用ミラー。
  5. 【請求項5】 下引き層を2層以上有し、隣接する2つ
    の下引き層において、基材に近い方の下引き層を構成す
    る材料の原子番号の方が、前記基材から遠い方の下引き
    層を構成する材料の原子番号より小さい請求項1または
    3に記載のX線用ミラー。
  6. 【請求項6】 基材に接して設けられた下引き層からの
    蛍光X線のうちの最短波長のもののエネルギーが、前記
    基材を構成する元素のうちの少なくとも1つの元素のK
    吸収端よりも小さいエネルギーとなるように、前記下引
    き層の材料が選択されている請求項1または3に記載の
    X線用ミラー。
  7. 【請求項7】 下引き層を2層以上有し、基材側から数
    えて2番目の下引き層からのL殻蛍光X線のうちの最短
    波長のもののエネルギーが前記基材に接する下引き層を
    構成する元素のK吸収端よりも小さいエネルギーとなる
    ように、前記各下引き層の材料が選択されている請求項
    1または3に記載のX線用ミラー。
  8. 【請求項8】 基材が溶融石英からなる請求項1ないし
    7いずれか1項に記載のX線用ミラー。
  9. 【請求項9】 シンクロトロン放射光を使用する光学装
    置であって、請求項1ないし8いずれか1項に記載のX
    線用ミラーを搭載した光学装置。
  10. 【請求項10】 請求項9に記載の光学装置と、シンク
    ロトロン放射光によって基板に露光を行なう手段とを有
    する露光装置。
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