JPH0772089B2 - 三価クロムあるいは六価クロムもしくは両者が混在するクロム含有組成物より高純度のクロム(vi)酸溶液を製造する方法 - Google Patents

三価クロムあるいは六価クロムもしくは両者が混在するクロム含有組成物より高純度のクロム(vi)酸溶液を製造する方法

Info

Publication number
JPH0772089B2
JPH0772089B2 JP27061491A JP27061491A JPH0772089B2 JP H0772089 B2 JPH0772089 B2 JP H0772089B2 JP 27061491 A JP27061491 A JP 27061491A JP 27061491 A JP27061491 A JP 27061491A JP H0772089 B2 JPH0772089 B2 JP H0772089B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
chromium
solution
acid
salt
iii
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP27061491A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH05105451A (ja
Inventor
和正 大塚
Original Assignee
和正 大塚
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 和正 大塚 filed Critical 和正 大塚
Priority to JP27061491A priority Critical patent/JPH0772089B2/ja
Publication of JPH05105451A publication Critical patent/JPH05105451A/ja
Publication of JPH0772089B2 publication Critical patent/JPH0772089B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Inorganic Compounds Of Heavy Metals (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、クロム(III)塩を含む
水溶液、粗クロム(VI) 酸またはその塩を含む水溶液、
あるいはクロム(III)塩とクロム(VI) 酸またはその塩
との混合液をキレート作用を有する有機カルボン酸また
はその塩、もしくは既知の方法により合成された、該有
機カルボン酸イオンを配位子とするクロム(III)錯体と
処理して、クロム成分をすべて有機カルボン酸イオンを
配位子とするクロム(III)錯体とし、次に酸化すること
によって、原料クロムの系外への逸散が起こらない、再
利用が可能な高純度のクロム(VI) 酸溶液として回収す
る方法に関する。さらに詳しくは、本発明で扱うクロム
成分を含む原料としては、硝酸クロム、クロム明礬など
のクロム(III)塩の水溶液、生皮のクロム鞣めし工場か
ら排出されるクロム廃液、クロム鞣し革の削り屑である
シェービング屑、クロムめっき工場から排出されるクロ
ム酸廃液、クロムの無機化学薬品を製造する工場におい
て原料として使用されるクロム鉄鉱からの残渣として排
出されるクロム(III)やクロム(VI) 酸塩を含んだ鉱
滓、さらに一般の理化学の実験研究室や工場試験室にお
いて、実験用ガラス器具等の洗浄に使用されるクロム酸
混液の使用済みクロム(VI) 酸廃液等が挙げられる。
【0002】(i)本発明に使用する原料、または原料
溶液中のクロム成分がクロム(III)塩のみの場合には、
該有機カルボン酸またはその塩をそのままクロム成分の
水溶液内に溶解させるか、あるいは周知の合成法による
該有機カルボン酸イオンを配位するクロム(III)錯体を
クロム成分の水溶液内に溶解させて溶液のpHを3.0な
いし4.0に保ち一定時間(1ないし6時間)室温また
は加温の条件下で放置することにより行なう。 (ii) 本発明に使用する原料、または原料溶液中のクロ
ム成分がクロム(VI)酸またはその塩のみからなる場合
には、クロム成分の溶液に該有機カルボン酸またはその
塩と該還元剤との混合液を加えるか、クロム成分と該有
機カルボン酸またはその塩との混合液に該還元剤の固形
もしくは水溶液を加えるか、あるいは該有機カルボン酸
またはその塩と該還元剤との混合液にクロム成分液を加
えて得られる混合液のpH強酸性ないし10の範囲内に保
つことにより行なう。これは、特にアルカリ性側におい
て作用しない還元剤が含まれている場合が意図される。 (iii)本発明に使用する原料、または原料溶液中のクロ
ム成分がクロム(VI)酸またはその塩とクロム(III)塩
との混合で成り立つ場合には、共存するクロム(III)の
クロム(VI) 酸に対するモル比に関して以下の(1)、
(2)のように分類する。 (1)上記のクロム(III)のクロム(VI) 酸に対するモル
比が1/2以下の場合には、クロム成分液の液性を強酸
性ないしpH3の範囲に入るように調整しておき、このク
ロム成分液に、該有機カルボン酸またはその塩と該還元
剤との混合液を加えるか、あるいは逆に、該有機カルボ
ン酸またはその塩と該還元剤との混合液に、液性が強酸
性ないしpH3の範囲に入るように調整された上記のクロ
ム成分液を加えて得られる混合液の液性を強酸性ないし
10の範囲に保つことにより行なう。 (2)上記のクロム(III)のクロム(VI) 酸に対するモル
比が1/2以上の場合には、クロム成分液の液性をpH3
ないし4の範囲に入るように調整しておき、このクロム
成分液に、該有機カルボン酸またはその塩と該還元剤と
の混合液を加えるか、あるいは逆に、該有機カルボン酸
またはその塩と該還元剤との混合液に、液性がpH3ない
し4の範囲に入るように調整された上記のクロム成分液
を加えて得られる混合液の液性をpH3ないし4の範囲に
保ち一定時間(1ないし6時間)室温または加温の条件
下で放置することにより行なう。中性、アルカリ性水溶
液においてもクロム(III)水酸化物様の沈殿を生じな
い、実質的に可溶な、有機カルボン酸イオンを配位子と
するクロム(III)錯体溶液を生成する方法は以上の通り
である。
【0003】上記によって得られたクロム(III)酸の有
機カルボン酸イオンを配位子とする錯体溶液をpH11以
上のアルカリ性において過酸化水素水などの無機または
有機過酸化物を加えてクロム(VI) 酸に酸化し、酸化と
ともに遊離する有機カルボン酸を難溶性のアルカリ金属
塩またはアルカリ土金属塩として析出させ、これを濾去
することによる、該有機カルボン酸を含まず、かつ原料
クロム成分の系外への逸散が起こらないことを特徴とす
る、粗クロム成分を高純度のクロム(VI) 酸溶液として
再生回収する方法に関する。
【0004】
【従来の技術および本発明が解決しようとする課題】近
年、六価クロムあるいは三価クロムの取扱上の規制は一
段と厳しくなり危険物取扱法においても六価クロムおよ
び三価クロムはともに劇薬に分類されている。特に六価
クロムのクロム(VI) 酸のかもし出す公害は深刻な社会
問題となっている。このような趨勢とは裏腹に、クロム
めっきや生皮のクロム鞣しの分野ではクロム(VI) 酸や
クロム(III)塩なしでは済まされないのが現状である。
特に、上述の分野を含めた諸産業におけるクロム(VI)
酸の有用性は大きい。
【0005】現在、上に記述した産業において排出され
るクロム廃液やクロムを含有する廃物あるいは鉱滓の処
理方法は、各分野毎にそれぞれ異なっているものの、以
下のように要約される。六価クロムを含む鉱滓または廃
液については、それらの中に含まれる六価クロムを一旦
三価クロムに還元する。そしてこの処理後に鉱滓を土中
に埋める。廃液については、始めから三価クロムのみを
含む廃液、例えば一浴法クロム鞣めし工場から排出され
るクロム廃液の場合もこれと同様であるが、先ず、液を
アルカリ性とし液中のクロム(III)を難溶性のクロム
(III)水酸化物状のスラッジとして分離して廃棄してい
る。また、このスラッジを取り除いたあとの微小濃度の
三価クロムを含有する濾液は、そのままの状態かまたは
若干の処理を施してから河川に放流している。また、ク
ロム鞣し革の削り屑のシェービング屑についても、いろ
いろの処理が試みられてはいるが、そのままで埋めてい
るのが大勢と言えよう。以上が現在におけるクロムの廃
水、廃物の処理法の概要であるが、現実に要求される六
価クロムまたは三価クロムに対する環境衛生上の規制に
対して、これらの処理法は必ずしも満足できるものでは
ない。
【0006】この現状を考慮するならば、クロム廃水や
クロム革屑あるいはクロム鉱滓などの現行の処理とは別
途に、容易で安全かつ経済的な方法により再利用が可能
な状態でクロム成分を回収することができるならば、ク
ロムを資源的に有効に利用することになるとともに、環
境衛生的にも大きく寄与することになることは言を待た
ない。
【0007】本発明者はクロムを有効に再利用できるよ
うな形で回収することを目的として、以下のように方針
を立てた。三価クロムおよび六価クロムがもたらす公害
の程度の問題、例えば両者の毒性などの比較はさてお
き、六価クロムおよび三価クロムについてそれぞれの有
用性や物理的、化学的性質などを比較するとクロム(V
I) 酸のほうがクロム(III)より利用価値が高い。この
ことから廃水や革屑あるいは鉱滓中のクロムは、クロム
(VI) 酸またはその塩として回収するのが合目的的と考
えられる。本発明者は、硝酸クロムなどのクロム(III)
塩をクロム(VI) 酸に変えることから始め、次いでクロ
ム廃水、クロムめっきのクロム(VI) 酸廃液やシェービ
ング屑あるいは鉱滓中に含まれる粗クロム(III)塩や粗
クロム(VI) 酸またはその塩を高純度のクロム(VI) 酸
溶液として取り出すことを試みた。
【0008】従来、クロム(III)をクロム(VI) 酸に酸
化する方法の一つとして以下の方法が知られている。硝
酸クロム、クロム明礬などのクロム(III)塩水溶液に水
酸化ナトリウムなどの苛性アルカリ溶液を過剰に加えて
強アルカリ性水溶液とし、次に過酸化水素水を加えて酸
化してクロム(VI) 酸とする方法である。しかしなが
ら、この方法には以下に述べる欠点がある。上述の硝酸
クロムなどのクロム成分であるアクアクロム(III)は一
般にpH4以上の中性およびアルカリ性溶液において難溶
性のクロム(III)水酸化物様の沈殿となる。この沈殿が
生成している条件下における酸化は不均一反応であり反
応収率は著しく低い。この沈殿は強アルカリ性水溶液に
溶解する性質があるが、その溶存状態は不安定であっ
て、放置または加温などによって容易に再びクロム(II
I)水酸化物様の沈殿となる。工業的に多量のアクアクロ
ム(III)塩溶液をアルカリ性にする場合には沈殿し易
い。特にクロム(III)濃度が高く、クロム(III)溶液の
中和の発熱量が大きい場合には、氷などを添加して冷却
しない限り、液温は60℃ないし沸騰するまでに上昇す
ることさえある。このように高温になると、一旦は強ア
ルカリ性溶液に溶解したクロム(III)であっても容易に
多核化を起こして沈殿する。
【0009】もしこのようなアルアクロム(III)の欠点
が解消されるならば、この酸化による方法は、クロム
(III)をクロム(VI) 酸に変える方法のうちで、最も容
易で安全かつ経済的な方法になると思われる。
【0010】
【課題を解決するための手段】上述のアクアクロム(II
I)の欠点をもたないクロム金属イオンとは、結局そのよ
うな欠点のないクロム(III)錯体を意味する。ここにお
ける問題は、このような欠点のないクロム(III)錯体を
見いだすことである。ただし、このクロム(III)錯体に
関しては以下の条件が必要である。 a)アルカリ性水溶液において難溶性の水酸化物様沈殿
を生成せず、過酸化物で容易に酸化されること、 b)見つけ出したクロム(III)錯体溶液が本発明の扱う
クロム(III)塩やクロム廃水、クロム革屑、クロムめっ
き廃液およびクロム鉱滓などから容易に、安全かつ経済
的に製造できること、 c)最終目的物のクロム(VI) 酸溶液には不都合な不純
物が混入しないこと。以上の3点が挙げられる。
【0011】クロム(VI) 酸により酸化を受ける物質は
c項に該当する不純物であることは云うまでもない。こ
の意味において、クロム(III)錯体の配位子が酸化され
るならば、クロム(VI) 酸溶液中に配位子が混入してく
ることは決して好ましいことではない。しかしながら、
現実にはクロム(III)が酸化されると、配位子はクロム
から遊離するので、得られるクロム(VI) 酸溶液に配位
子が混入することは避けられない。故にクロム(VI) 酸
溶液中からこの遊離配位子を容易にかつ経済的に除去出
来るかどうかということが重要な問題となる。
【0012】以上のa)、b)およびc)に記載された
諸条件を満たすものとして、本発明者はシュウ酸のよう
にカルボキシル基を2個以上有しており、かつキレート
作用を示す有機カルボン酸を1個以上、好ましくは1個
ないし2個を配位するクロム(III)錯体を見いだした。
【0013】以下においては硝酸クロムなどのクロム
(III)塩、クロム鞣し廃液、シェービングクロム革屑、
クロムめっき廃液、クロム鉱滓およびクロム(VI) 酸混
液の廃液についてそれらのクロム成分に上述の有機カル
ボン酸イオンを結合させてクロム(III)錯体とする操
作、方法を始めに説明する。取り扱うクロムの組成状態
に応じて処理の方法を次のように分類した。
【0014】I.硝酸クロムなどのクロム(III)塩やク
ロム鞣し廃液(一浴法の廃液)などのようにクロム成分
が三価クロムのみからなる溶液の場合:廃液中に浮遊夾
雑物があれば、濾去した後に、液性をpH3ないし4の範
囲に調整する。シュウ酸のように2個またはそれ以上の
カルボキシル基を有して、キレート作用を示す有機カル
ボン酸またはその塩を、溶存するクロム(III)に対し1
ないし2倍モル、さらに必要な場合には2倍モル以上を
加えるか、あるいは該有機カルボン酸を用いる代わり
に、公知の合成法による該有機カルボン酸イオンを配位
子とするクロム(III)錯体の必要量、またはそれ以上を
加える。ただし、ここで言う必要量とは、加えるクロム
(III)錯体を含めた全クロム(III)量に対して、加えた
クロム(III)錯体中に結合している有機カルボン酸量が
1ないし2モル倍の範囲に入るようになる量を意味す
る。適当な時間(1ないし6時間)室温または加温して
放置することにより溶存クロム(III)イオンをすべて該
有機カルボン酸イオンを配位子とするクロム(III)錯体
を変えることが出来る。一般に、クロム(III)は典型的
な置換不活性な金属イオンであり、有機カルボン酸イオ
ンがクロム(III)イオンに配位するのにかなりの時間が
必要である。また、その置換反応の間にクロム(III)が
クロム(III)水酸化物様の沈殿とならないようにするた
めにクロム(III)溶液を終始pH4以下の酸性に保つこと
が必要である。またpH3以下の酸性では置換反応速度が
著しく小さくなる傾向がある。従って、クロム(III)の
液性および反応時間について前記のような条件が必要と
なる。
【0015】II.クロムめっき廃液、クロム鉱滓の細粉
懸濁液や化学試験室、研究室から排出されるクロム酸混
液の廃液などのように溶存クロム成分がクロム(VI) 酸
またはその塩とクロム(III)塩との混合で成り立つ場合
であるが、混合液中のクロム(III)とクロム(VI) 酸と
の比に応じて以下のようにII−1、II−2に分けた。た
だし、溶液内のクロム(III)濃度およびクロム(VI) 酸
濃度を求めるには、全クロム濃度(1)とクロム(VI)
酸濃度(2)とをそれぞれ化学分析法、分光光度法で求
めた。クロム(III)濃度は((1)−(2))として得
られる。ただし、分光光度法によるクロム(VI) 酸濃度
の測定はアルカリ性溶液内の372.5nmにおけるクロ
ム酸イオンの分子吸光係数を4.82×103 /dm3
mol -1・cm-1として求めた。
【0016】II−1.クロム成分中のクロム(III)量が
クロム(VI) 酸の約1/2モル倍以下の場合には、溶液
をpH3以下の酸性に調整してから溶液中の全クロム量の
1ないし2モル倍、さらに必要な場合には2モル倍以上
の量の該有機カルボン酸またはその塩を、クロム成分中
のクロム(VI) 酸またはその塩をクロム(III)に還元す
るのに充分な量の還元剤、例えば亜二チオン酸塩と亜硫
酸塩(または亜硫酸水素塩)との混合液に溶解した還元
性有機カルボン酸溶液を、前記のようにpH3以下の酸性
に調整したクロム組成液中によく攪拌しながら加える
か、もしくは逆にこのクロム成分液を上記の還元性有機
カルボン酸溶液中に加える。ただし、それぞれの溶液を
注加終了するまでの混合液の液性はpH10以下であれば
差し支えない。以上の操作によって得られるクロム組成
物について、溶存するクロム(III)はすべて該有機カル
ボン酸イオン配位子とするクロム(III)錯体となってい
た。このことは、以下のようにして確認された。還元反
応終了直後のクロム成分液の一部を採取し、これにアン
モニア水または水酸化ナトリウム溶液を加えてアルカリ
性にした場合にクロム(III)水酸化物様の沈殿や濁りが
認められなかったという事実に基づいている。
【0017】II−2.クロム成分液内のクロム(III)量
がクロム(VI) 酸の約1/2モル倍以上の場合には、上
述のII−1に述べたのと同様の操作で、クロム成分液を
有機カルボン酸と還元剤との混合液で還元すると、得ら
れるクロム成分液中に有機カルボン酸を結合していない
クロム(III)が溶存することが認められた。その根拠と
して、得られたクロム成分液の一部を採取し、これにア
ンモニア水または水酸化ナトリウム水溶液を加えてアル
カリ性とした場合にクロム(III)水酸化物様の沈殿の生
成が認められることに基づいている。
【0018】従って、このクロム(III)を有機カルボン
酸を配位する錯体とするには、クロム成分液の液性を、
還元反応中においてはpH4以下の酸性に、また還元後の
室温放置処理においてはpH3ないし4の範囲に保持する
ことが必要である。上述のことがらを念頭にいれて以下
にII−2のクロム組成液の処理法を記す。溶液内の浮遊
夾雑物を濾去した後に、溶液中に含まれる全クロム量
(クロム(III)とクロム(VI) 酸との合計モル量)に対
し1ないし2モル倍、さらに必要な場合には2倍以上の
量の該有機カルボン酸またはその塩と、クロム成分中の
クロム(VI) 酸またはその塩をクロム(III)に還元する
のに充分な量の還元剤、例えば亜二チオン酸塩と亜硫酸
水素塩とを混ぜ合わせた還元剤との混合液を調製する。
この溶液を上記のクロム成分液によく攪拌しながら加え
るか、または逆にクロム成分溶液を、該有機カルボン酸
またはその塩と該還元剤との混合液中によく攪拌しなが
ら加える。この場合に、還元反応中の反応液の液性を終
始pH4以下の酸性に保つようにする。得られたクロム
(III)溶液の液性をpH3ないし4の範囲に保持しながら
1ないし6時間室温に放置する。この操作によって溶液
中のクロム成分をすべて該有機カルボン酸イオンを配位
子とするクロム(III)錯体とした。
【0019】III .使用回数が多く、塩濃度が高くなっ
た、特開平1−230700の方法による、生皮を浸漬
するのに使用したクロム(VI) 酸のアルカリ性溶液のよ
うに、廃液のクロム成分がほとんどクロム(VI) 酸また
はその塩から成り立つ場合を指し、その処理方法は前述
のII−1とあまり変わらない。
【0020】クロム溶液中の浮遊夾雑物を濾去する。液
性を強酸性ないし10までの範囲に入るように調整す
る。(出発物のクロム成分液の液性条件のみがII−1と
異なる。)溶液中に含まれるクロム(VI) 酸に対し1な
いし2モル倍、特に必要な場合には2モル倍以上の該有
機カルボン酸またはその塩とクロム(VI) 酸をクロム
(III)に還元するのに充分な量の該還元剤との混合液
を、クロム(VI) 酸溶液中に攪拌しながら加えるか、逆
にクロム(VI) 酸溶液を該有機カルボン酸と該還元剤と
の混合液に攪拌しながら加える。また、該クロム(VI)
酸溶液の液性がpH5以上の中性ないしアルカリ性の場合
には、該クロム(VI) 酸溶液に該有機カルボン酸または
その塩を溶解し、この混合液に該還元剤の固形または水
溶液を加えるという添加順序もある。II−1の場合と同
様にして、還元反応を経て溶液中のクロム(VI) 酸は速
やかに該有機カルボン酸イオンを配位するクロム(III)
錯体となる。
【0021】上記のI、IIおよびIII 項に述べた方法に
よって得られたクロム(III)錯体溶液は、いずれも中性
ないしアルカリ性水溶液において実質的に可溶性である
ということ以外に、配位する有機カルボン酸イオンがク
ロム(III)当り1ないし2個であることから以下の利点
が挙げられる。 ア)アルカリ性水溶液内における酸化反応速度は、正八
面体のすべての頂点にカルボキルシ基が結合するトリス
(オキサラト)クロム(III)酸塩の酸化反応速度に比べ
て同一反応条件下では遙かに大きく、工程操作上の時間
が掛からず都合がよい。さらに次の大きい利点がある。 イ)pH3〜4の弱酸性のクロム(III)溶液をアルカリ性
とする場合の中和の熱量を、本発明の場合とアクアクロ
ム(III)塩の場合のそれと比較すると、ヘキサアクアク
ロム(III)から成り立つ硝酸クロムの水溶液をアルカリ
性にする場合には、中和による液温の上昇は50℃ない
し場合により沸騰することすらあるのに対し、本発明の
方法で得られた同一濃度のpH3ないし4のクロム(III)
錯体溶液では液温の上昇度は高々15℃程度であり、発
熱量は遙かに少ない。
【0022】以上のア)、イ)に述べた根拠に基づい
て、使用する有機カルボン酸の量をクロム(III)に対し
1ないし2倍モルと定めた。この場合に、特に2倍モル
以上を使用しなければならない場合とは、アルカリ性水
溶液中でクロム(III)から外れ易い有機カルボン酸の場
合を指すが、本発明に挙げる有機カルボン酸については
この現象はみられなかった。
【0023】また、該有機カルボン酸は水溶液中におい
て、アルカリ金属イオンやアルカリ土金属イオンのうち
のいずれかと溶解度が著しく小さな塩を生成するという
特性をもつことを必要条件とした。何故ならば、クロム
(III)錯体がクロム(VI) 酸に酸化されると同時に配位
子がクロムから遊離するので、このように遊離した有機
カルボン酸を、予め溶存していたか、または反応後に添
加するアルカリ金属イオンまたはアルカリ土金属イオン
と結合させて、析出した塩の沈殿を濾過して取り出すこ
とにより、該有機カルボン酸を回収するとともに、濾液
から有機カルボン酸濃度の僅少なクロム(VI) 酸溶液の
製造を可能とするからである。
【0024】本発明において好ましく用いることができ
る上述の特性を有する有機カルボン酸には、シュウ酸、
マロン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸およびクエン酸
などがある。
【0025】本発明のクロム(III)錯体の酸化に使用さ
れる過酸化物は特に制限的でない。好ましい過酸化物と
しては、過酸化水素水、ペルオクソ硫酸塩、ペルオクソ
二硫酸塩、ペルオクソ硼酸塩、ペルオクソ炭酸塩や過酸
化ナトリウム、過酸化カリウムのようなアルカリ金属の
過酸化物、過酸化カルシウムのようなアルカリ土金属の
過酸化物、過酸化鉛のような重金属の過酸化物などの無
機過酸化物;過酢酸、過酸化ベンゾイルやその他の有機
過酸化物を挙げることができる。これらの過酸化物のう
ちで、酸化反応の後に不要な塩類、有機物などが残留し
ないこと、入手が容易であること、経済性などの条件を
考慮すると過酸化水素水が特に好ましい。酸化に使用さ
れる過酸化物の好ましい量は、クロム(III)錯体溶液の
液性、温度および溶液中に含まれる夾雑物によっても異
なるが、一般にクロム(III)の1モル当り1.5〜5モ
ルである。
【0026】前述の条件下におけるクロム(III)錯体の
酸化反応時の液性はpH11以上であることが好ましい。
これらのクロム(III)錯体の水溶液は、アンモニア水;
水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属
の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアル
カリ金属炭酸塩;および水酸化マグネシウム、水酸化カ
ルシウムなどのアルカリ土金属水酸化物を単独でまた
はこれらの混合物として使用して所定のアルカリ性のpH
に調整することができる。
【0027】以上の処方によりクロム(III)錯体溶液か
ら有機カルボン酸をほとんど含まないクロム(VI) 酸溶
液を調製出来るが、使用目的によっては、余分なアルカ
リ金属イオン、アルカリ土金属イオンや硫酸イオン、塩
化物イオンなどを含まない、より高純度のクロム(VI)
酸溶液を必要とする場合には、上述の方法により得られ
たクロム(VI) 酸の中性ないしアルカリ性溶液に塩化バ
リウムまたは水酸化バリウムなどのバリウム塩を加え、
析出する難溶性のクロム(VI) 酸バリウムの沈殿を濾過
して取り出し、これを適当な濃度の希硫酸に溶解し生ず
る硫酸バリウムの沈殿を濾去することにより所定の濃度
の高純度クロム(VI) 酸溶液とした。
【0028】以上の操作により原料クロムが系外へ逸散
することなくクロム(VI) 酸溶液を製造することが出来
た。このことは、原料クロムから生成クロム(VI) 酸溶
液への収率がほぼ100%であることで裏づけられてい
る。以下では実施例により本発明の具体例を述べる。
【0029】実施例1.硝酸クロム Cr(NO3)3 ・9H2Oの
12.0kgを42リットルの水に溶かした液に、結晶粉
末状のシュウ酸 C2H204 ・2H2Oの1.6kgを加え、70
℃に30分間加温した。次いで攪拌しながらシュウ酸ナ
トリウム Na2C2O4の2.4kgを添加し、この温度に1時
間保った。この操作により液は緑青色から赤紫色に変わ
った。放冷後、水酸化ナトリウムの9.6kgを水18リ
ットルに溶解した溶液を加えて液をpH12以上のアルカ
リ性とした。中和による液温の上昇度は17℃であり、
液は透明な緑紫色となった。この液に35%過酸化水素
水7リットルを注加し攪拌した。そのまま一夜放置し、
翌日に液を70℃に1時間加温した。法令後、析出した
シュウ酸ナトリウムの沈殿を濾去した。この沈殿は乾燥
重量で4.1kgであった。このことから添加したシュウ
酸はほぼ100%近く回収されたものと判断された。濾
液に塩化アンモニウム5.4kgおよび第三燐酸ナトリウ
ム・十二水塩760gを溶解した。液の全容は74リッ
トルであり、pHは10であった。以上の操作においては
原料から最終製品のクロム(VI) 酸に至るまでの工程中
にクロムの系外への逸散は起っていない。このクロム
(VI) 酸の溶液を用い特開平1−230700号に記載
された方法によるクロム鞣しを、ベーチングまでの準備
処理を終えたステア裸皮に施した。得られたクロム鞣革
は、同一原料の裸皮から従来の一浴法により得られるク
ロム革と比較して銀面のきめがよりこまやかであること
が確認された。
【0030】実施例2.硝酸クロム Cr(NO3)3 ・9H2Oの
6.0kgを水20リットルに溶解し、これにトリス(オ
キサラト)クロム(III)酸カリウム(K3[Cr(C2O4)3] ・
3H2O) 〔新実験化学講座(日本化学会編、丸善刊、昭和
52年6月20日発行)第8巻、「無機化合物の合成
(III)」の第1101頁参照〕の6.0kgの結晶を少し
ずつ添加し混合液のpHを3ないし4に保った。添加しな
がら水10リットルを追加した。添加後、室温において
5時間放置した後に50℃に1時間加温した。放冷後
に、25%水酸化ナトリウムの適当量を注加してpH1
2.6のアルカリ性とした。この時の液温の上昇度は1
0℃であった。この溶液に35%過酸化水素水の6.0
リットルを注加しオキサラトクロム(III)錯体を酸化し
た。一夜放置して溶液を70℃に1時間加温し、残存す
る過酸化水素を分析した。放冷後に、析出したシュウ酸
ナトリウムの沈殿を濾去した。濾液に塩化アンモニウム
の5kgを加えて遊離の水酸化ナトリウムを水酸化アンモ
ニウムに変えた。そのときの液量は60リットルであ
り、pHは約10であった。以上の操作中原料クロムの系
外への逸散は起こっていない。このクロム(VI) 酸溶液
を用いて特開平1−230700号に記載の方法による
クロム鞣しを脱灰およびベーチングまでの準備作業を終
えたステア裸皮に施した。得られたクロム革は、同一原
料の裸皮を用いた実施例のクロム鞣し(一浴法)革に比
べて銀面のきめがよりこまやかであった。
【0031】実施例3.硝酸クロム Cr(NO3)3 ・9H2Oの
2.0kgを水6リットルに溶解し、これにマロン酸 C3H
4O4 の680gを加え60℃で1時間加温し、同じ温度
において25%水酸化ナトリウム1リットルを0.5リ
ットルずつ20分間隔で2回に分けて加えた。注加後、
さらに1時間加温を続行した。放冷後に、25%水酸化
ナトリウムの6.2リットルを加えた。これにより溶液
色は明るい黄緑色に変わりpH13以上となった。これに
35%過酸化水素水1.3リットルを少量ずつよく攪拌
しながら注加した。一夜放置後、液を70℃に1時間加
温してから冷却し、塩化アンモニウム1kgを加えてpHを
9.5とした。塩化カルシウム(無水塩)725gを水
2リットルに溶かした水溶液をよく攪拌しながら注加
し、析出したマロン酸カルシウムの沈殿を濾去した。以
上の操作中において原料クロムの系外への逸散は起こっ
ていない。得られたクロム(VI)酸溶液を生皮のクロム
鞣しに使用して実施例1および2の場合と同様のクロム
鞣し革を得た。以下の実施例4においては特開平1−2
30700の方法によるクロム鞣しの際に生成する廃液
から、実施例5においては従来の「一浴法」クロム鞣し
の際に生成する廃液からクロム成分をクロム(VI) 酸溶
液として再生し回収する方法を述べる。この場合に、そ
の前提としてこれらの廃液が生成する過程およびこれら
の廃液中にどんな夾雑物質が混入してくるかについて予
備知識をもつことが必要であるので、各実施例の最初の
部分にそれぞれのクロム鞣しの処方を簡単に記載する。
【0032】実施例4 ステア裸皮に脱灰およびベーチングまでの準備工程を施
した湿潤状態の半裁皮を溶液A(クロム(VI)酸アンモ
ニウム、第三燐酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウムの
混合液)に浸し、液を皮の内部にまで充分浸透させた。
皮を取り出し、溶液B(ギ酸を水に溶解した液に亜二チ
オン酸ナトリウムおよび亜硫酸水素ナトリウムを溶解し
た液)に漬け、よく攪拌し皮のクロム鞣しを行なった。
革を処理した後のA、B両液のCrに関する化学分析値は
以下の通りであった。 表 1. 容量(リットル) Crの状態 Cr(モル) pH A液 53 Cr(VI) 10.7 9.1 B液 26 Cr(III) 0.58 4.3 〔Cr(モル)欄は液内の全含有量を示す〕 A液からのクロム(VI)酸の回収:A液の使用が2ない
し3回までの場合には、液内の塩濃度はそれ程高くな
い。故に、液中に浮遊する生皮に由来する有形の夾雑物
を濾去して、不足分のクロム(VI)酸アンモニウムおよ
び水酸化ナトリウムを補って再利用する。しかしなが
ら、さらに数回繰り返して使用すると塩類濃度が高くな
りクロム鞣しに支障が起こるので、一度高純度のクロム
(VI)酸溶液に再生することが必要となる。表1の組成
をもつA液中の浮遊夾雑物を濾去した後にシュウ酸2.
3kgを加え、亜硫酸水素ナトリウム3.6kgを水7リッ
トルに溶解した溶液を攪拌しながら注加した。得られた
クロム(III)錯体溶液に10%硫酸を加えて液のpHを約
3とし、室温においてさらに2時間、75℃で30分間
空気を吹き込み液中の二酸化硫黄を追い出した。10%
水酸化ナトリウムを加えてpHを11.5とし、室温にお
いて35%過酸化水素水2.2リットルを注加し、その
まま一夜放置した。翌日70℃において1時間加温し、
残存過酸化物を分解した。塩化アンモニウム2kgを加え
てpHを10以下にしてから、塩化カルシウム2.03kg
を水5リットルに溶解した溶液を加えて溶存するシュウ
酸をシュウ酸カルシウムの難溶性沈殿とし、これを濾去
した。濾液に塩化バリウム2.23kgを水10リットル
に溶解した液を加えてクロム(VI)酸をバリウム塩とし
て沈殿させた。この沈殿を取りだし、よく水洗してから
98%硫酸1.07kgを水10リットルで希釈して得た
希硫酸中に入れてクロム(VI)酸を遊離させ、生じた硫
酸バリウムを濾去し、高純度のクロム(VI)酸溶液とし
て回収した。このクロム(VI)酸溶液に適当量のアンモ
ニア水を加えて中和し、クロム(VI)酸アンモニウム溶
液とした。上記の操作中において原料のクロムの系外へ
の逸散は起こっていない。得られた溶液は特開平1−2
30700号に記載のクロム鞣液の原料として充分使用
できる純度のものであった。 B液からクロム(VI)酸の回収:B液26リットルにシ
ュウ酸 C2H2O4 ・ 2H2Oの100gを加え攪拌して溶解
し、そのまま室温において3時間放置した。35℃に加
温し、同温度に1時間保持した。次に、28%アンモニ
ア水を1リットルおよび10%水酸化ナトリウムを加え
てpH11.7のアルカリ性とした。これを放冷した後
に、35%過酸化水素水300mlを加えた。約1時間後
に、液は橙褐色となった。吸光光度法によるクロム(V
I)酸濃度は0.020Mであった。この濃度では前記
のクロム鞣し液として使用するのには薄過ぎるので、以
下のように処理した。上述のクロム(VI)酸溶液に塩化
カルシウム88gを加え、シュウ酸イオンをシュウ酸カ
ルシウムの沈殿として濾去した。液を65℃に1時間加
熱し、放冷後、塩化バリウム114gを添加し、生じた
クロム(VI)酸バリウムの沈殿を濾過し、塩化物イオン
の存在がほとんど認められなくなるまで沈殿を水で洗浄
した。得られた沈殿を5.5%希硫酸溶液1リットル中
に入れてクロム(VI)酸を溶出し、生じた硫酸バリウム
の沈殿を濾去した。得られたクロム(VI)酸溶液は濃度
約0.5Mの高純度のクロム(VI)酸溶液であった。上
記の操作中において原料クロムの系外への逸散は起こっ
ていない。このクロム(VI)酸溶液をアンモニア水で中
和して得られるクロム(VI)酸アンモニウム溶液は、特
開平1−230700号に記載のクロム鞣し用として良
好なものであった。
【0033】実施例5 一浴法クロム鞣しについて、次に廃液中のクロム(III)
の酸化について記載する。ピックリングまでの準備工程
を終えた半裁ステア裸皮を水に浸漬し、ギ酸溶液を加え
て処理した後に、ベアクロム(Cr含有率17%の粉末
状)を加えて鞣し、次に7.6%炭酸水素ナトリウム溶
液を4回に分けて加え鞣し液のpHを3.9とした。2日
間革を鞣し液で湿らせた状態で放置してからクロム革を
取り出した。残ったクロム鞣し廃液の全量は21リット
ルであり、液性はpH3.9ないし4.0であり、また化
学分析結果によれば、全液内に含まれるCr量は64g
(=1.23モル)であった。この液に以下のような処
理を施した。皮に由来する有形の浮遊夾雑物を濾去した
後に、190gのシュウ酸( C2H2O4 ・ 2H2O)を加え攪
拌して溶解させた。5時間室温に放置してから、28%
アンモニア水200mlおよび10%水酸化ナトリウムを
注加してpH11.6とし、35%過酸化水素水300ml
を攪拌しながら少しずつ加えた。そのまま一夜放置し、
翌日に10%水酸化ナトリウム1リットルを加えてpHを
12.0とし、さらに35%過酸化水素水70mlを加え
て2時間放置した。次に75℃に昇温し、2時間この温
度に保った。放冷後に、塩化アンモニウムの200gを
加えて溶解させてから塩化カルシウムの167gを溶解
し、溶存するシュウ酸イオンをシュウ酸カルシウムの沈
殿として濾去した。濾液に塩化バリウム670gをよく
攪拌しながら加えて、クロム(VI)酸バリウムの沈殿と
した。これを濾過し、よく水洗して取り出し、98%硫
酸120gを2.2リットルの水に希釈して得た5%希
硫酸溶液中に加えた。生じた硫酸バリウムの沈殿を濾去
することによって、CrO3として濃度約5%の高純度のク
ロム(VI)酸溶液を得た。以上の操作中において扱った
原料クロムの系外への逸散は起こっていない。
【0034】実施例6 一浴法クロム鞣し革から削り出されたクロムシェービン
グ革屑10kg(成分分析値:水分49%;乾燥屑の Cr2
O3含有率3.2%)を採取し、水酸化カルシウム360
gを水50リットルに加えた水酸化カルシウム飽和液に
浸漬し、室温で約2時間ときどき攪拌し、そのまま一夜
放置した。翌日革屑を濾過して取り出した。ほとんど無
色の濾液は適当な濃度の希硫酸溶液で中和して放流し
た。革屑を硫酸アンモニウム600gと28%アンモニ
ア水1リットルとを含む水50リットルで、次に28%
アンモニア水500mlを含む水20リットルで洗浄し
た。この革屑をシュウ酸(C2H2O4・ 2H2O )450gと
98%硫酸100gを含む水40リットルに浸漬し、2
時間攪拌したのち革屑を濾過した。この濾液をI液と呼
ぶ。28%アンモニア水500mlを水20リットルに希
釈したアンモニア水中に上記の革屑を入れ、これに10
%水酸化ナトリウム溶液を加えpHを11とした。室温に
おいて35%過酸化水素水50mlを加えて攪拌し、2時
間放置した後に革屑を濾過した。この溶液をII液と呼
ぶ。革屑は水洗してから20リットルの水に浸し、攪拌
しながら5%硫酸を加えて浸漬水のpHを6とし、硫酸ナ
トリウム1kgを加えて液を約5%濃度の硫酸ナトリウム
溶液として革屑の膨潤を抑え、取りだした革屑は肥料等
の蛋白源に使用した。濾液IIにシュウ酸アンモニウム5
0gを加えておき、亜硫酸水素ナトリウム40gを添加
し、30分間攪拌してから10%塩酸を加えてpHを3.
0とし、室温において1時間、さらに60℃において1
時間空気を吹き込み液内の二酸化硫黄を追い出した。こ
の液と濾液Iとを混合した。液中の浮遊夾雑物を濾去し
てから10%水酸化ナトリウム溶液を加えて液性をpH
9.5とし、若干のシュウ酸カルシウムを濾去した。そ
の後、さらに10%水酸化ナトリウム溶液を加えて液性
をpH12.0とした。室温において過酸化水素450ml
を加えて30分間攪拌し、一夜放置した。翌日、液を加
温して70℃に1時間保った後に放冷し、10%希硫酸
を加えて液のpHを9.5として、液内にシュウ酸カルシ
ウムおよび硫酸カルシウムの沈殿が生じなくなるまで1
0%塩化カルシウム溶液を滴下した。生じた沈殿を濾去
した。濾液の全量は65リットルであり、分光光度法に
よるクロム(VI)酸イオン濃度は0.032Mであっ
た。塩化バリウム640gを水2リットルに溶解した液
を攪拌しながら注加し、クロム(VI)酸をバリウム塩の
沈殿とした。沈殿を濾過して取り出し、よく水洗し、9
8%硫酸210gを水4リットルに希釈した希硫酸溶液
に入れてクロム(VI)酸を遊離させた。硫酸バリウムの
沈殿を濾去して得られたクロム(VI)酸溶液は、容量4
リットルであり、その濃度は0.52Mの高純度のもの
であった。以上の操作中における原料クロムの系外への
逸散はほとんど起こっていないことも確認された。
【0035】実施例7 数回のめっき作業の結果、ニッケル浴から持ち込まれた
ニッケルイオン、塩素イオンの存在が僅かながら認めら
れ、かつクロム(III)イオンが許容濃度を越えているサ
ージェント浴の廃液(溶存する主要成分の分析値:CrO3
220g/リットル(=2.20M);Cr(III)9g/
リットル(=0.17M); H2SO4 2.5g/リット
ル)の処理法を述べる。ただし、クロムめっき廃液を扱
う実施例7〜9においてはサージェント浴の処理量を1
リットルとして処方を記す。このサージェント浴液に4
%水酸化ナトリウムを加えて液のpHを約2とし、放置し
て液温を室温まで下げた。液中のクロム(VI)酸の2.
0倍モルに相当するシュウ酸 C2H2O4 ・ 2H2O 554g
を秤取して水6リットルに溶解した。このシュウ酸溶液
に亜硫酸水素ナトリウムの700gと亜二チオン酸ナト
リウム200gとを加えてシュウ酸を含む還元性溶液を
調製した。この液に、前述のpH2としたサージェント浴
液をよく攪拌しながら注加した。この操作中における液
のpHは3以下であった。加え終わってから室温において
1時間空気を吹き込み、次いで80℃において30分間
空気を吹き込み続けた。この操作によって溶液内に残留
する二酸化硫黄の大部分を追い出した。得られたクロム
(III)錯体溶液に10%水酸化ナトリウム溶液を攪拌し
ながら注加して液性を約pH10にした。生じた微量の水
酸化ニッケルの緑色沈殿を濾去した。濾液にさらに10
%水酸化ナトリウム溶液を加えてその液性をpH11.8
とした後、35%過酸化水素水の600mlをよく攪拌し
ながら注加した。攪拌を5時間続けてから一夜放置し
た。翌日、75℃に30分間加温し、残存する未反応の
過酸化水素を分解した。放冷後、溶存していると考えら
れるシュウ酸イオン4.36モルと等モルの塩化カルシ
ウム484gを加えてシュウ酸カルシウムの沈殿として
濾去した。濾液に塩化バリウム500g(=2.40モ
ル)を水1.6リットルに溶解した溶液を攪拌しながら
加え、液内のクロム(VI)酸イオンをクロム(VI)酸バ
リウムとして沈殿させた。沈殿を濾過して取り出し、よ
く水洗した後に550mlの水に入れ、さらに98%濃硫
酸237g(=2.37モル)を水250ml中に加えて
得られる希硫酸を攪拌しながら少しずつゆっくりと加え
た。加え終わって放冷した後に硫酸バリウムの沈殿を濾
去し、濾液内のバリウムイオンが消失するまでさらに1
0%希硫酸を攪拌しながら一滴ずつゆっくりと加えた。
生じた少量の硫酸バリウムの沈殿を除去し、濾液にさら
に濃硫酸の2.5gを加えた後に溶液を75℃に1時間
加熱して溶存する微量のシュウ酸を酸化分解した。この
ようにして得られたクロム(VI)酸溶液に関して、原料
から最終生成物に至るまでのクロムの系外への逸散は起
こっていない。このことは、工程の処理前のクロム量に
対する回収されたクロム(VI)酸の収率が100%であ
ることにより確認された。放冷後、必要に応じてCrO3
よび硫酸を追加した溶液はサージェント浴として充分良
好なものであった。
【0036】実施例8 使用済みの低濃度サージェント浴の廃液(成分化学分析
値:CrO3104g/リットル(=1.04M);Cr(II
I)3.1g/リットル(=0.06M); H2SO4 1.
2g/リットル)に10%アンモニア水を加えて液のpH
を約2.5としたサージェント浴液を、酒石酸アンモニ
ウム(NH4)2C4H4O6 の370g(=2.0モル)、亜硫
酸水素ナトリウム(粉末状)300gおよび亜二チオン
酸ナトリウム100gを水1リットルに溶解した還元性
溶液中によく攪拌しながら注加した。得られた溶液をpH
3.8に調整した。この溶液に硫化水素を吹き込み、析
出した硫化ニッケルの沈殿を濾去し、濾液に10%希硫
酸を加えてpH3以下の酸性としてから空気を吹き込みな
がら75℃において1時間加温して液中の二酸化硫黄を
追い出した。このクロム(III)錯体溶液に10%水酸化
ナトリウム溶液を追加してpHを11.5とし、攪拌しな
がら過酸化ナトリウムの粉末190gを少量ずつ添加
し、5時間攪拌を続けてそのまま一夜放置した。翌日7
5℃に30分間加温して残存する過酸化物を分解し、放
冷後に20%塩酸をよく攪拌しながら加えてpHを7.8
とした。硫酸カルシウムと酒石酸カルシウムの沈殿が生
じなくなるまで20%塩化カルシウム溶液を加えた。放
冷後に沈殿を濾去した。塩化バリウムの230gを水1
リットルに溶解した液を濾液に注加し、液内のクロム
(VI)酸をバリウム塩として沈殿させ、濾過し、水洗し
た。98%硫酸110gを水に希釈して得た20%希硫
酸溶液中にこのバリウム塩を溶解してクロム(VI)酸を
遊離させた。析出した硫酸バリウムの沈殿を濾過して得
たクロム(VI)酸溶液を75℃に1時間加温して溶存す
る微量の酒石酸を酸化分解した。以上の操作中において
原料のクロムの系外への逸散は起こっていない。このこ
とは、得られたクロム(VI)酸の、原料からのクロムに
ついての物質収支から確認された。放冷後に水400ml
およびCrO310gと少量の硫酸とを追加した。得られた
溶液は低濃度サージェント浴として良好なものであっ
た。
【0037】実施例9 使用済みの低濃度サージェント浴のクロム(VI)酸溶液
(成分分析値:CrO398g/リットル(=0.98
M);Cr(III)2.8g/リットル(=0.054
M); H2SO4 1.2g/リットル)に10%水酸化ナ
トリウムを加えて溶性をpH2.5とした。マロン酸 C3H
4O4 の208g(2.0モル)を水1リットルに溶解
し、これに亜硫酸水素ナトリウム300gと亜二チオン
酸ナトリウム100gとを加えて溶解した。この混合液
中に上記のpH2.5に調整したサージェント浴液をよく
攪拌しながら注加した。得られた溶液に10%希硫酸を
滴下してpHを2.0とした。この液に空気を吹き込みな
がら80℃に1時間加温して二酸化硫黄を追い出してか
ら10%水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを約10と
し、生ずる少量の水酸化ニッケルの沈殿を濾去した。濾
液にさらに10%水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを1
2.0とした。攪拌しながら35%過酸化水素水の25
0mlを注加し、3時間攪拌を続けた一夜放置した。翌
日、75℃に1時間加温してから室温になるまで放置
し、浮遊夾雑物を濾去した後、塩化アンモニウムの25
0gを溶解し、液のpHを11以下に下げ、硫酸カルシウ
ムとマロン酸カルシウムの沈殿が生じなくなるまで20
%塩化カルシウム溶液を加えた。沈殿を濾去した後に濾
液に塩化バリウム218g(=1.05モル)を水70
0mlに溶解した液を加え、クロム(VI)酸をバリウム塩
として沈殿し、これを濾過しよく水洗して取り出し、9
8%硫酸の105gを水900mlに溶かした希硫酸中に
入れて、クロム(VI)酸を遊離させた。析出した硫酸バ
リウムの沈殿を濾去した。得られたクロム(VI)酸溶液
中のクロム量の、原料のクロムに対する収率は100%
である。従って、工程中におけるクロムの系外への逸散
は起っていないことが確められた。このクロム(VI)酸
溶液に不足分としてCrO3を10gおよび98%硫酸1.
3gに相当する硫酸として5%希硫酸の25mlを追加し
て75℃に1時間加温した。得られた溶液は低濃度サー
ジェント浴として良好なものであった。
【0038】実施例10 Cr2O3 として約50%含むクロム鉄鉱1.0トン、炭酸
ナトリウム720kgおよび95%消石灰540kgをそれ
ぞれ粉砕し混合したものを回転炉内で空気酸化しながら
ばい焼し、得られたばい焼混合物を水で浸出し、クロム
鉄鉱中に含まれていたクロムの大部分をクロム(VI)酸
ナトリウムの形で抽出した。この工程で生ずる残渣すな
わち鉱滓の60kgを採取した。化学分析の結果に基づき
この鉱滓60kg中にクロム成分のクロム(VI)酸および
クロム(III)が合計で約25モル含まれており、その主
成分はクロム(VI)酸であることが確認された。上記量
の鉱滓を水80リットルに浸した液に、98%硫酸5kg
を水20リットルに希釈して得た希硫酸を加えた。この
時の液にpHは約2であった。この溶液を35℃に加温し
たまま5時間時折攪拌した。溶解しない夾雑物を濾去し
た濾液を、亜硫酸水素ナトリウムの5.0kg(48モ
ル)とシュウ酸アンモニウムの4.0kg(32モル)と
を水20リットルに溶解した溶液中へよく攪拌しながら
注加した。1時間攪拌を続けた後、そのまま一夜放置し
た。翌日室温において2時間、さらに60℃において3
0分間空気を吹き込んで液中の二酸化硫黄を追い出し、
二酸化硫黄臭がほとんど認められなくなるようにした。
28%アンモニア水を加えて液性をpH5以上とし、さら
に28%アンモニア水の1リットルを加えてアンモニア
アルカリ性としてから溶液中の沈殿物を濾去した。化学
分析の結果に基づいて、この沈殿物は水酸化第二鉄を主
成分とする残渣であった。得られたアンモニアアルカリ
性の濾液(容量約130リットル)中によく攪拌しなが
ら20%水酸化ナトリウムを加えて液のpHを11.7と
し、室温において35%過酸化水素水4.5リットルを
攪拌しながら注加し、6時間室温に保った。次いで、液
を35℃に1時間、さらに70℃に30分間加温した。
得られたクロム(VI)酸のアルカリ性溶液中の少量の浮
遊する沈殿物を濾去した後に塩化アンモニウムを加えて
pHを約10とし、塩化カルシウム(無水物)の9.1kg
(82モル)を水15リットルに溶かした溶液を加え
た。析出した硫酸カルシウムとシュウ酸カルシウムの沈
殿を濾去し、塩化バリウム5.3kgを水30リットルに
溶解した液を少量ずつ加えて液内のクロム(VI)酸イオ
ンおよび硫酸イオンをそれぞれ難溶性のクロム(VI)酸
バリウム、硫酸バリウムの沈殿とした。沈殿を濾過し、
水でよく洗浄し、洗浄液が硫酸酸性で硝酸銀による塩素
イオンの検出が認められなくなるまで洗浄した。12%
希硫酸20リットル中にクロム(VI)酸バリウムの沈殿
を入れ、よく攪拌しながら白色の硫酸バリウムの沈殿が
生じなくなるまで20%希硫酸を少量ずつ注加した。生
じた硫酸バリウムの沈殿を濾去して得られたクロム(V
I)酸溶液の濃度は約1.2Mであった。これは原料の
クロムの全量が回収されたことになり、かつ高純度のク
ロム(VI)酸溶液であった。
【0039】実施例11 使用済みのクロム酸混液を水で3倍(容量)に希釈した
液の化学分析値はCrO3 7g/リットル(=0.07
M);Cr(III)2.1g/リットル(=0.04M);
SO4 -2イオン 3.1Mであり、以下においては便宜
上、上記の希釈廃液1リットルを処理するデータを示す
ことにした。希釈廃液に10%水酸化ナトリウム液を加
えて液性をpH2.5とした。シュウ酸 C2H2O4 ・ 2H2Oの
22g(0.175モル)を水250mlに溶かしこれに
亜硫酸水素ナトリウム23gおよび亜二チオン酸ナトリ
ウム7gを溶かしたシュウ酸を含む還元性溶液を調製
し、この溶液に前述のpH2.5の希釈廃液をよく攪拌し
ながら注加した。この注加時の廃液のpHは3以下であっ
た。加え終わってから室温において1時間空気を吹き込
み、次いで75℃において30分間空気を吹き込み続け
た。得られたクロム(III)錯体溶液に10%水酸化ナト
リウム溶液を攪拌しながら注加して、液性をpH3.8と
して室温において5時間放置し、さらに35℃において
2時間放置したのち10%水酸化ナトリウム溶液を追加
してpH12として、室温において35%過酸化水素水3
0mlを攪拌しながら注加した。攪拌を2時間続けてから
一夜放置した。翌日75℃に30分間加温し残存する未
反応過酸化水素を分解した。放冷後塩化アンモニウム5
gを加えて溶液の液性をアンモニアアルカリ性としたの
ち、塩化カルシウム366gを加えて大部分の硫酸イオ
ンと遊離のシュウ酸イオンをそれぞれ硫酸カルシウム、
シュウ酸カルシウムの沈殿として析出させ濾去した。濾
液に、塩化バリウムの23gを水100mlに溶解した溶
液を攪拌しながら加え、液内のクロム(VI)酸イオンを
クロム(VI)酸バリウムとして沈殿させた。沈殿を濾過
して取り出しよく水洗したのちに、沈殿を30mlの水に
入れ98%硫酸11gを水10mlに加えて得られる希硫
酸を攪拌しながら少しずつ加えた。加え終わって放冷し
たのちに、硫酸バリウムの沈殿を濾去し、濾液内のバリ
ウムイオンが消失するまで、10%硫酸を攪拌しながら
滴下した。生じた硫酸バリウムの沈殿を濾去し、濾液に
98%硫酸の約0.1を加えてから溶液を75℃に1時
間加温して溶存する微量のシュウ酸を酸化分解した。得
られたクロム(VI)酸溶液は原料のクロムから計算する
とほぽ100%の収率を与えるものであり、かつ種々の
用途に適応する高純度のものであった。
【0040】実施例12 使用済みのクロム酸混液を水で3倍に希釈した廃液の化
学分析値はCrO3 5g/リットル(=0.05M);Cr
(III)4.2g/リットル(=0.08M); SO4 -2
オン 3.0Mである。以下においては、この希釈廃液
1リットルを処理するデータを示した。10%水酸化ナ
トリウム溶液を加えて液性をpH2.5とした。シュウ酸
C2H2O4 ・ 2H2Oの27.7g(0.22モル)を水30
0mlに溶かしこれに亜硫酸水素ナトリウム16gと亜二
チオン酸ナトリウム5gを溶かした溶液を調製した。こ
のシュウ酸溶液に前述のpH2.5のクロム酸溶液をよく
攪拌しながら注加した。この処理における混合液のpHは
3以下であった。加え終わってから室温において1時間
液に空気を吹き込み、次いで75℃において30分間空
気を吹き込み続けた。得られたクロム(III)溶液に10
%水酸化ナトリウム溶液をよく攪拌しながら注加し液性
をpH3.6として室温で5時間放置し、さらに35℃に
おいて2時間放置したのち、10%水酸化ナトリウム溶
液を加え液性をpH12.5としてから室温において35
%過酸化水素水30mlを攪拌しながら注加した。攪拌を
2時間続けてから一夜放置した。翌日75℃に30分間
加温し残存する過酸化水素を分解した。放冷後塩化アン
モニウム5gを加え溶液の溶性をアンモニアアルカリ性
としたのち、塩化カルシウム350gを加えて、大部分
の硫酸イオンと遊離のシュウ酸イオンとをそれぞれ硫酸
カルシウム、シュウ酸カルシウムの沈殿として析出させ
濾去した。濾液に、塩化バリウム27gを水100mlに
溶解した溶液を攪拌しながら加え、液内のクロム(VI)
酸イオンをクロム(VI)酸バリウムとして沈殿させた。
沈殿を濾過して取り出しよく水洗したのちに30mlの水
に入れ98%硫酸13gを水15mlに加えて得られた希
硫酸を攪拌しながら少しずつ加えた。加え終わり放冷し
たのちに硫酸バリウムの沈殿を濾去し、溶液内のバリウ
ムイオンが消失するまでさらに10%希硫酸を攪拌しな
がら滴下した。生じた少量の硫酸バリウムの沈殿を濾去
し、濾液に98%硫酸の約0.1gを加えてから75℃
に1時間加温して溶存する微量のシュウ酸を酸化分解し
た。得られたクロム(VI)酸溶液は原料のクロムに基づ
いて計算するとほとんど100%の収率で回収されてお
り、かつ高純度のものであった。
【0041】以上に本発明の具体的な実施例を示した
が、本発明はこれによって限定されるものでないことは
明らかであり、本発明の範囲ならびに精神を離れずに種
々の改良が可能であることも明白であり、これらはすべ
て本発明の範囲内に入るものである。

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 クロム(III)塩を含む水溶液に有機カル
    ボン酸またはその塩を添加して得られる該有機カルボン
    酸陰イオンを配位子とするクロム(III)錯体溶液に過酸
    化物を加えて酸化することによってクロム(VI)酸溶液
    を製造する方法。
  2. 【請求項2】 前記クロム(III)錯体溶液が:クロム
    (VI)酸またはその塩とニッケルイオンを含有する液
    を、もしくはクロム(VI)酸またはその塩、クロム(II
    I)塩、およびニッケルイオンを含有する液を、有機カル
    ボン酸またはその塩と混合し、続いてこの混合液に還元
    剤を添加し、得られたクロム(III)錯体液をアルカリ性
    とし、生成したニッケルの水酸化物を濾別して得られた
    溶液である請求項1の方法。
  3. 【請求項3】 前記クロム(III)錯体溶液が:クロム
    (VI)酸またはその塩とニッケルイオンを含有する液
    と、もしくはクロム(VI)酸またはその塩、クロム(II
    I)塩、およびニッケルイオンを含有する液と、有機カル
    ボン酸またはその塩と還元剤とを同時に混合し、得られ
    たクロム(III)錯体液をアルカリ性とし、生成したニッ
    ケルの水酸化物を濾別して得られた溶液である請求項1
    の方法。
  4. 【請求項4】 有機カルボン酸またはその塩と混合さ
    れ、続いてこの混合液に還元剤が添加されるべきクロム
    (VI)酸又はその塩、クロム(III)塩、およびニッケル
    イオンを含有する溶液の液性がpH4以下の酸性範囲に調
    整された溶液である請求項2の方法。
  5. 【請求項5】 有機カルボン酸またはその塩および還元
    剤と同時に混合されるべきクロム(VI)酸またはその
    塩、クロム(III)塩、およびニッケルイオンを含有する
    溶液の液性がpH4以下の酸性範囲に調整された溶液であ
    る請求項3の方法。
  6. 【請求項6】 該有機カルボン酸がシュウ酸、マロン
    酸、コハク酸、酒石酸およびクエン酸からなる群より選
    ばれる請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 【請求項7】 該還元剤が亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、亜
    二チオン酸塩およびチオ硫酸塩などの含硫黄オクソ酸塩
    からなる群より選ばれる請求項2乃至5のいずれか1項
    に記載の方法。
  8. 【請求項8】 クロム成分液からクロム(III)錯体溶液
    を製造するに至るまでの過程のクロム成分液の液性が強
    酸性ないしpH10までの範囲に保持される請求項2また
    は3に記載の方法。
  9. 【請求項9】 該酸化が、過酸化水素、過酸化ナトリウ
    ム、過酸化カルシウムやペルオクソホウ酸塩、ペルオク
    ソ炭酸塩、ペルオクソ硫酸塩、ペルオクソ二硫酸塩、過
    酢酸、過酸化ベンゾイルより選ばれた少なくとも一つの
    過酸化物を用いて行われる請求項1乃至8のいずれか1
    項に記載の方法。
  10. 【請求項10】 該酸化が、pH11.0以上のアルカリ
    性の水溶液で行われる請求項1乃至9のいずれか1項に
    記載の方法。
  11. 【請求項11】 該酸化工程に用いる過酸化物をクロム
    (III)の1.5ないし5モル倍使用する請求項1乃至1
    0のいずれか1項に記載の方法。
  12. 【請求項12】 該有機カルボン酸は、アルカリ金属類
    またはアルカリ土類金属類のうちのいずれかの金属イオ
    ンと水溶液内の溶解度が著しく小であるかないしは難溶
    性であることによりクロム(III)錯体の酸化の際に遊離
    される該有機カルボン酸を上記の金属塩として析出除去
    することによる有機カルボン酸を含まないクロム(VI)
    酸溶液の製造を可能とする請求項1乃至11のいずれか
    1項に記載の方法。
JP27061491A 1991-10-18 1991-10-18 三価クロムあるいは六価クロムもしくは両者が混在するクロム含有組成物より高純度のクロム(vi)酸溶液を製造する方法 Expired - Lifetime JPH0772089B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP27061491A JPH0772089B2 (ja) 1991-10-18 1991-10-18 三価クロムあるいは六価クロムもしくは両者が混在するクロム含有組成物より高純度のクロム(vi)酸溶液を製造する方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP27061491A JPH0772089B2 (ja) 1991-10-18 1991-10-18 三価クロムあるいは六価クロムもしくは両者が混在するクロム含有組成物より高純度のクロム(vi)酸溶液を製造する方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH05105451A JPH05105451A (ja) 1993-04-27
JPH0772089B2 true JPH0772089B2 (ja) 1995-08-02

Family

ID=17488544

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP27061491A Expired - Lifetime JPH0772089B2 (ja) 1991-10-18 1991-10-18 三価クロムあるいは六価クロムもしくは両者が混在するクロム含有組成物より高純度のクロム(vi)酸溶液を製造する方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH0772089B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100401990B1 (ko) * 1998-12-21 2003-12-18 주식회사 포스코 6가 크롬함유 폐액을 이용한 크롬산화물 제조방법
CN114715939A (zh) * 2021-01-06 2022-07-08 中国科学院青海盐湖研究所 一种纳米三氧化二铬及其制备方法
CN113881849A (zh) * 2021-09-18 2022-01-04 荆门市格林美新材料有限公司 一种从硫酸盐溶液中去除铬的方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH05105451A (ja) 1993-04-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
AU2015339815B2 (en) Method for removing iron in the manufacture of phosphoric acid
EP0308175B1 (en) Stripping and recovery of dichromate in electrolytic chlorate systems
SU1447273A3 (ru) Способ получени раствора сульфата марганца
CN104891576A (zh) 一种一水合硫酸锰的制备方法
JPH0772089B2 (ja) 三価クロムあるいは六価クロムもしくは両者が混在するクロム含有組成物より高純度のクロム(vi)酸溶液を製造する方法
JP4321231B2 (ja) 非鉄金属硫酸塩溶液中の塩素イオン除去方法
US4166737A (en) Method for dissolving the non-ferrous metals contained in oxygenated compounds
US2537316A (en) Separation of columbium and tantalum values
GB1565752A (en) Hydrometallurgical process for the selective dissolution of mixtures of oxytgen-containing metal compounds
US4138466A (en) Producing chromate substantially free of vanadium
JPH0310576B2 (ja)
KR20000035098A (ko) 불순 황산 제2철 용액으로부터 유용한 생성물의 제조방법
US1409727A (en) Method of producing pure zinc solution
US4168240A (en) Process for the preparation of a chrome tanning agent and Glauber's salt
RU2157420C1 (ru) Способ переработки ванадийсодержащих конвертерных шлаков
US5624650A (en) Nitric acid process for ferric sulfate production
KR0122328B1 (ko) 염화제이철 수용액의 제조방법
RU2340688C1 (ru) Способ переработки медно-хлоридного плава, являющегося отходом очистки тетрахлорида титана
US3647686A (en) Method of treating industrial waste water without contamination of the environment
JP4815082B2 (ja) 含鉄硫酸溶液の処理方法
CN107619954A (zh) 一种浸取提钒的方法
JP3171605B2 (ja) 産業廃液の処理方法
US4048283A (en) Removal of heavy metals from aqueous solutions
JPH07275609A (ja) 鉄系無機凝集剤の製造方法
JPS582165B2 (ja) クロム酸廃液の処理方法

Legal Events

Date Code Title Description
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 19960119

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080802

Year of fee payment: 13

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080802

Year of fee payment: 13

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090802

Year of fee payment: 14

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090802

Year of fee payment: 14

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100802

Year of fee payment: 15

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110802

Year of fee payment: 16

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110802

Year of fee payment: 16

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120802

Year of fee payment: 17

EXPY Cancellation because of completion of term
FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120802

Year of fee payment: 17