JPH0763966B2 - 木質系材料並びにこの類似性質材料用の刃物 - Google Patents

木質系材料並びにこの類似性質材料用の刃物

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JPH0763966B2 JP24527487A JP24527487A JPH0763966B2 JP H0763966 B2 JPH0763966 B2 JP H0763966B2 JP 24527487 A JP24527487 A JP 24527487A JP 24527487 A JP24527487 A JP 24527487A JP H0763966 B2 JPH0763966 B2 JP H0763966B2
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は木質系材料とその類似性質材料の切削に用いて
仕上用或いは良好な面の切削屑製造用に好適な刃物に関
する。
従来技術 金属、特に鉄鋼の切削,剪断或いは成形加工用の工具,
金型等には高速度工具鋼または超硬合金を母材として種
々の硬質被覆が利用されている。硬質被覆の主なもの
は、PVDまたはCVD法によるTiN,TiC,TiCNの単層または複
合層でありほかにAl2O3のようなセラミックスも利用さ
れている。これらの利用法に於いては、刃先がさほど鋭
利でなくてよい。例えば刃先角は概ね90゜前後の鈍角で
あり、硬くてもろい硬質被覆層が比較的利用され易い。
このほかこれら硬質被覆層は、鉄鋼材料との化学的親和
性が低いという性質と高温での硬さが高いという性質に
より、凝着摩耗及び焼付きが有効に防止されるという際
立った特性があるため、特に鉄鋼材料加工の諸分野で多
くの表面被覆工具が使用されている。
また掘削機械刃具としては特開昭59−137146号で知られ
ているように刃具形状に熱間鍛造した直後の高温状態で
直接焼入し、さらに刃具の片側だけ高周波焼入れを施し
て刃具の表裏に硬度差を生じせしめて硬度の低い方を先
に偏摩耗させて先端が鋭利な形状とするものがある。さ
らにシート部材の切断用ナイフとしては特開昭62−1731
94号で知られているように切断用ナイフの全周をベース
より硬い材料でコーテイングして切断刃部の片面のコー
テイング部を研磨してベースを露出させ切断によって自
己研磨性を与えている。
このような近年に於ける表面処理技術の著しい発達によ
る多大な応用成果にも拘らず、木工用刃物の分野に於い
てはこれら表面処理技術を利用した刃物はまだ実用化さ
れていない。従来の木材切削用刃物は、切削が進むにつ
れ刃先から摩耗が始まり刃先は丸みをおびてくる。特に
逃げ面側の摩耗領域の丸みは切削分離直後の完全に削り
取れなかった被削面を押しつぶす形態となるので、切削
面を悪化させ、切削背分力も増加しすなわち被削材を刃
先に押し付ける力も摩さなければ切削できなくなり、ま
すます逃げ面摩耗を促進させ寿命に至っていた。
木工用刃物の新しい考えとして近年,木材加工業界に於
いては専門分業化が進みつつあり、従来の再研磨可能の
刃物とともに使い捨ての刃物が多用されつつある。この
ような使い捨て刃物いわゆる替刃の性能,寿命を改善
し、切削加工に於ける工具費を低減することは木材加工
分野に於ける急務となっている。
仕上鉋用使い捨て替刃として例えば実公昭59−5526号の
ように裏刃の作用を為す段部を備えたものがあるが、仕
上鉋では裏刃先端を刃先から後退量l=0.2〜0.3mmとい
う僅かな量だけ後退したところに位置させる必要があ
る。また木材切削の研究で自己研磨性を目指した研究と
して第8回ウッドマシニングセミナー(1985.10/7〜10/
9・於米国カルフオルニア大学・バークレー校)Saw tip
s with self −sharpening characteristicsと題するKi
rbach等の研究報告がある。
この報告では、超硬チップ付丸鋸刃での木材の切断に於
いて、超硬合金チップを母材とし、すくい面にAl2O3−T
iC(CVD法)被覆を行い、自己研磨性が得られるという
結果を示している。
発明が解決しようとする問題点 建築,建具,装飾品に使用する板,角材の切削面の仕上
り具合は商品価値を左右する重大な影響がある。従って
刃物の安定した性能,寿命は常にその切削仕上面を優れ
たものとするために不可欠のものである。特開昭59−13
7146号では土砂掘削用で長く掘削が効率的に行える程度
の鋭利な爪形を保持されれば良いものであるため、焼入
層が薄膜層例えば0.01mm以下では破損されて意味がなく
なり相当の厚み例えば数mmの高周波焼入層が寿命を延ば
すために必要である。
また特開昭62−173194号では刃が容易になまくらになら
ず自己研磨によって鋭利なナイフブレードの刃を保ちシ
ート部材が良く切断できれば良いことから、刃の何れか
片側に比較的低摩耗性材がコーテイングされていれば良
いものであり、また刃先は正確に数μmの鋭利さを必要
としないものである。これら上記の技術は木工用刃物と
比較すると被削材,切削形式が異なり、また所要の刃先
鋭利度や被削材の摩耗作用も木工用刃物のそれとは著し
く異なっており、木工用のように切削面の良し悪しが重
要な問題とされるものでない。このため出願人が目的と
する木工用刃物に直ちには採用できないものである。
さらにKirbach等の研究は木材の表面仕上げ切削でなく
切断切削におけるもので、出願人の目指す仕上面精度に
は考慮する必要のないものであるため刃の逃げ面に被覆
するのでなくすくい面にコーテイングしてすくい面側に
摩耗によるだれが生じないように自己研磨しているもの
である。即ち逃げ面側の摩耗が優先的に進行すること
で、すくい面側のだれが防がれる効果を得ているが、逃
げ面摩耗の特徴としてその摩耗面は凸面となり、真に鋭
利な刃先が維持されないと同時に、逃げ面が強く切削面
に当たることを前提にしているわけで、このような切削
は理想的な切削からは程遠いものである。
さらに実公昭59−5526号では替刃の刃先からの裏刃後退
量が微少であるためこの段部の精密成形が困難で量産上
の問題であった。
問題点を解決するための手段 出願人は高品質の仕上面をうる木工用刃物特に替刃にも
有効で長寿命の刃物の研究において、先ず表面処理なし
の刃物の木材切削による刃先摩耗形状を精密に観察する
ことを通じて、いわゆる低合金工具鋼を刃物母材とする
時、すくい面が切り屑の流れにより金属切削におけるク
レータ摩耗に似た形でえぐられることを確認し他方逃げ
面の摩耗が切削面の劣化,切削抵抗の増大に強く影響す
ることを確認した。この様な刃先摩耗現象を考察し、最
も効果的な表面処理としてすくい面は母材のままとしす
くい面ではなく逃げ面に硬質の薄膜を被覆し逃げ面の摩
耗と刃先の後退を抑制し、すくい面が好ましい凹面状に
えぐられる自己研磨特性を知見し鋭利な刃先を維持させ
る方法に到着しえたのである。そしてその薄膜は硬質ク
ロム,クロム合金の鍍金若しくは炭化チタン,窒化チタ
ン,炭窒化チタン,炭化バナジウム,炭化クロム,炭化
タングステン,炭化ハフニウム等の6μm以下の厚みに
被覆されたものである。
実施例 木工用刃物刃先を示す第1図において刃物母材1は刃物
鋼,炭素工具鋼,合金工具鋼,高速度工具鋼等及びこれ
と同等材が用いられ切刃先の逃げ面1a及びすくい面1bの
表面に硬質被覆層2を形成する。被覆は硬質クロム鍍金
若しくはTDプロセスによる炭化バナジウム(VC)が被覆
されたものである。そしてその被覆膜厚みは6μm以下
好ましくは0.5〜5μmである。このような被覆材に対
して適合した砥石によりすくい面1b上の被覆層を研磨し
て除去し刃付をした。
この効果を実験によって確認するにあたり切削速度8m/
分の実験室的な低速木材切削試験機による基礎実験及び
第12図に示すような刃部を有する仕上鉋盤での実用機に
よる平削り、第16図の回転鉋胴を有する実用機による回
転削りを行った。
以下の説明で切削方向は木材の繊維走行方向との関係を
示すもので、縦切削,横切削,木口切削の3方向に大別
される。実用的には木材切削加工の多くは縦切削であ
る。実験では縦切削,横切削及び木口切削を行い、また
実用機試験は縦切削で行い、逃げ面の被覆の有り無しの
刃物での切削抵抗の変化と刃先形状の測定及び同一木取
り面を切削して被切削面粗さの比較測定を行った。なお
刃先形状は、東京精密製粗さ測定器サーフコムを用いて
1000倍で測定した表裏の形状を合成し、或いは断面のレ
プリカの200倍の光学顕微鏡写真から求めた。また刃先
断面を切り出し精密に断面を研磨仕上げしたものを500
倍の走査電子顕微鏡で観察し、すくい面摩耗状況や刃先
形状を調べた。
実験第1例(被覆層の有無について) 〔切削条件〕 被切削材 ほうの木,気乾材 切込量 0.05mm 切削速度 8m/分 裏刃 なし 斜行角 0゜ 〔刃物の条件は表1に示す〕 結果 (a)・刃形形状I (電子顕微鏡写真第2,3,4図による) 被覆層を逃げ面に形成した第2図a,第3図a,第4図aで
はすくい面側は全体に凹面状に摩耗するに対し逃げ面側
は摩耗は丸味を帯びる形でなく先端部は極めて鋭利であ
る。そのため刃先先端が逃げ面から離れず木材組織を切
り裂く部分のすくい面が元のすくい面にほぼ平行になっ
ている。一般に木工用刃物の刃付研磨状態は、細かな刃
こぼれや,まくれの存在により1μm程度の刃先先端厚
を有するものであって、ほぼこれと同様の鋭利さを維持
しつつ摩耗していると考えられる。このような刃先先端
が被覆層厚み程度即ち数μm以下しか逃げ面から離れ
ず、すくい面側の摩耗が少なくとも刃先端近傍において
凹状の曲線状に進み刃先先端におけるすくい面が元のす
くい面にほぼ平行な形になることを出願人は自己研磨特
性と定義する。
これに対し被覆層のない第2図b,第3図b,第4図bでは
何れも逃げ面,すくい面に摩耗が認められ、特に逃げ面
側の摩耗が大きく丸味を有して鈍化して刃先先端が逃げ
面から大きく離れる形となっている。
なお、刃形形状を示した上記及び以下の各図に於いて、
刃形図の上辺側がすくい面であり下辺側が逃げ面であ
る。
・刃先形状II(粗さ測定器による) 縦切削において、硬質クロム鍍金の膜厚0.5μmと1.0μ
mの刃物において各切削材長5000mで途中1000m毎に刃先
形状を測定した結果、膜厚0.5μmの第5図aでは膜厚
1.0μmの第5図bの場合より刃先後退が早く、またす
くい面の立ち上がりも早くなっていることが認められる
が0.5μmでも自己研磨特性が十分に現れている。
(b)切削抵抗 ・縦切削において(第6図) 被覆したものは切削材長が延びても主分力の増加が殆ど
なく一定である。背分力はマイナス側の値で殆ど変化が
認められない。この背分力は刃物の切れ味に大いに関係
し背分力がマイナスであるということは刃物が自然に被
削材に喰い込むような鋭利な状態であることを示す。
これに対し被覆のないものでは切削材長の増加とともに
背分力の顕著な増加が認められ主分力も明らかに増加傾
向にある。
・横切削において(第7図) 被覆したものは切削材長にかかわりなく、主分力,背分
力とも変化が認められない。これに対し被覆のないもの
は約200mまでは主分力,背分力とも上昇が認められる。
・木口切削において(第8図) 被覆したものは切削材長に伴って主分力,背分力が漸増
していることが認められる。このことは切削方向の特徴
として、すくい面の立ち上がりが少なめの切削材長で生
じ、切屑の摩擦作用が強くなる為である。しかし刃先先
端でのすくい面の凹面状摩耗により刃先の鋭利さは保た
れている。これに対し被覆のないものでは切削材長に伴
って主分力,背分力とも顕著な増加が認められる。
実験第2例 (母材鋼種と被覆層の関係について) 〔切削条件〕 第1例と同じ 但し 刃先角 30゜ すくい角 58゜ 逃げ角 2゜ 切削方向 縦切削 切削材長 1000m 〔母材鋼種は表2に示す。〕 (注)被覆層は硬質クロム鍍金 第9図(a)〜(f)の結果によればホ鋼,ヘ鋼に現れ
た自己研磨特性は予測通りであって、硬度も高く且つ硬
い炭化物が多く組織中に分散している高速度工具鋼のイ
鋼及びロ鋼においても、逃げ面の硬質クロム鍍金により
摩耗による刃先後退が抑制される結果すくい面が全体と
してゆるやかに凹面状に摩耗し鋭利な刃先を維持できる
ことが確認できた。また耐食性に優れている高クロム工
具鋼のハ鋼がこの実験において摩耗量が最も少なく、こ
の場合も自己研磨特性が得られている。
そしてよく知られているよう樹液による腐食作用が刃先
摩耗を促進するが、硬質クロム鍍金は実験の鋼種より硬
度が高いことのほかに耐食性が優れていることも摩耗を
抑制して鋭利な刃先をつくる要因ともなっている。
実験第3例 (被削材の樹種と自己研磨特性との関係について) 〔切削条件〕 第1例と同じ 但し 刃物母材 青紙1号 被覆層 硬質クロム鍍金 1.7μm 刃先角 30゜ すくい角 58゜ 逃げ角 2゜ 切削方向 縦切削 切削材長 1000m 切削後の刃先形状を第10図に示す。第10図の(a)は被
削材はスプルース,(b)はヘムロック,(c)はジェ
ルトン,(e)はぶなである。
第10図(a)〜(d)のように自己研磨特性は何れも十
分に認められる。
実験第4例 (刃先角と自己研磨特性の関係について) 〔切削条件〕 第1例と同じ 但し 刃物母材 SKH2 逃げ角 1゜ すくい角 刃先角の変更につれて変更 被覆 硬質クロム鍍金 0.5μm 被削材 ほうの木 切削方向 木口切削 斜行角 0゜ 切削材長 400m 切削後の刃先形状を第11図に示す。第11図の(a)の刃
先角は20゜,(b)は30゜,(c)は40゜,(d)は50
゜,(e)60゜,(f)は70゜,(g)は80゜である。
第11図(a)〜(g)において被覆厚みを0.5μmとし
母材が高速度工具鋼で耐摩耗性が高い為刃先角20゜,30
゜ではすくい面のえぐれ方が不十分であった。40゜〜80
゜ではすくい面のえぐれ方が顕著であり、自己研磨特性
が十分に認められる。
「実用機試験第1例」 (平削り実用機の場合の自己研磨特性について) 刃物母材 SKS3 刃先角 33゜ 逃げ角 2゜ 切削速度 61m/分 硬質クロム鍍金厚み、被削材等の条件を表3に示す。替
刃の取付状態を第12図に示す。
(a)刃先形状 第13図(a)〜(f)で同様に自己研磨特性を十分認め
ることができる。
表3のクロムメッキ膜厚5.5μmの場合も第13図(c)
に示すように自己研磨特性を示しているが、この膜厚だ
と刃付けした状態での刃先がぎざぎざとなり、切削開始
後数十mくらいまで切削面がやや悪かった。従ってこの
程度の膜厚が仕上鉋での膜厚の上限を示すものである。
(b)被切削面粗さ 従来使い捨てされている(イ)鋼の替刃で被覆なく1000
m切削後第15図の刃先形状の刃物及びSKS3の替刃で硬質
クロム鍍金1.2μm2000m切削後第13図(d)の刃先形状
の刃物で、それぞれスプールス追征面を切削しその被切
削面の粗さを示す第14図(a)(b)とでは(b)が被
覆による自己研磨特性の効果が明らかであり(b)の面
は手触りがつるつるとしており、仕上鉋の理想的な切削
状態であった。
なお表3中裏刃の後退量(第12図)l=0.8の切削にお
いては実質的に裏刃が効いていない状態であるが、この
場合も自己研磨特性が得られている。このことから従来
は逆目ぼれ防止の為、裏刃を効かせることが必要な場合
が多いのに対し本発明のように刃先が鋭利な状態に保た
れる場合切屑厚みが0.05mm以下となるようにすれば逆目
ぼれの発生がないことが従来よく知られているので本発
明の刃物の場合、必ずしも裏刃を効かせなくとも逆目ぼ
れを防止することが可能となる。
「実用機試験第2例」 (回転削り実用機の場合の自己研磨特性について) 鉋胴の替刃取付状態 第16図 刃先円直径 φ120mm 主軸回転数 5000r.p.m.(1884m/分) 切削形式 アップカット 1パス当たりの削代 0.8mm 被削材送り速度 5m/分 被削材樹種 スプルース 気乾材 刃数 1枚 裏刃後退量 l=2mm (実質的に裏刃の効果なし) 替刃の母材 刃先角,すくい角,逃げ角度 被覆は表4のとおり。なお表中Crは硬質クロム鍍金、VC
はTDプロセスによるバナジウム炭化物被覆である。
(a)刃先形状及び刃先後退量 切削材長と刃先後退量Lとの関係は第17図に示すとお
り。
第18図(b)はVC被覆厚が6μmと厚すぎるために炭化
物の脆さが現れ刃先後退が脆性的に早く進み被覆厚みの
限界を表している。第18図(c)のVC被覆厚が2.5μm
では硬質クロム鍍金とほぼ同様の結果が得られた。VC被
覆の結果からTiC,TiN,TiCN等の炭化物や窒化物その他W,
Cr,Hfの炭化物を被覆層とすることが可能であるがその
硬さ及び耐食性が十分ある反面、脆さを考慮して硬質ク
ロム鍍金被覆より膜厚を薄くするのが好ましい。
逆目ぼれに対しては通常裏刃を効かせるが、回転切削で
は実用的な方策としては刃先摩耗により切削抵抗特に主
分力が著しく増大し、主軸動力が過大になるという難点
を有するもののすくい角を20゜程度に小さくすることで
逆目ぼれを緩和できる。この角度の刃物効果を示す第18
図(e)のように刃先後退も抑制され、すくい面に強い
えぐりも生じ元のすくい角よりも大きなすくい角が生じ
る形になり、また刃部の立ち上がりにより裏刃が形成さ
れた形になっている。そして刃先先端が鋭利であるので
切削抵抗の増大もなく形成された裏刃の作用と相俟って
かえってよい切削状態が得られた。
(b)被切削面粗さ 第18図(a)のように高速度工具鋼替刃で被覆なし500m
切削して摩耗した刃物と、第18図(e)のようにSKS3を
母材として硬質クロム鍍金を2.2μm被覆の刃物で2000m
切削した刃物とでスプルース木裏面を順目切削した時の
切削面粗さを第19図(a)(b)で示した。このような
切削面に生じがちな目違いの発生が第19図(a)におい
て著しく現れている。
なお刃物長さが少なくとも250mm以上に及び長い刃物の
場合は全長に所定の均一膜厚を被覆するには55℃前後の
低温で処理できる硬質クロム鍍金が歪みの発生がなく好
ましい。通常の長さが150mm以下のものでは高温処理で
はあるが歪みの発生を懸念する必要がないのでTDプロセ
ス法によるVC被覆が膜厚の均一性,量産性がよく好まし
い。
効果 以上詳述したように本発明は逃げ面に母材より硬度の高
い硬質クロム鍍金,クロム合金鍍金,または炭化チタ
ン,窒化チタン,反窒化チタン、炭化バナジウム,炭化
クロム,炭化タングステン,炭化ハフニウム被覆した6
μm以下の被覆層を形成したので、切削によるすくい面
のクレータ状摩耗で刃先に自己研磨特性を付与して鋭利
な刃先を現出し再研磨することなく切れ味の良い長い寿
命の刃物をうることができる。例えば最も鋭利な切れ味
の要求される仕上鉋で従来使用されているCoを多く含む
高級な高速度工具鋼製刃物で大凡500m〜1000mであるに
対し安価なSKS3の母材を使用して2000m以上の寿命を有
し、しかも美麗な切削仕上げ面を達成した。特に使い捨
て替刃の経済性を著しく改善することができた。
また鋭利な刃先が保たれるので切屑厚みを0.05mm以下と
することによって裏刃なしで逆目ぼれを防止でき、わず
らわしく熟練を要する裏刃の取付調整を不要とすること
ができ、また出願人が実公昭59−5526号で述べた裏刃の
作用をなす段部加工が不要となり、押さえ金の隙間に切
屑が入るのを防止する巣喰い防止の段部を形成する場合
は巾広く精度のあらい段部でよいため替刃の量産性が著
しく向上する。
この発明はすくい面を再研磨する形になっている刃物例
えば木工旋盤用バイト、特に逃げ面が種々の形状に成形
されている総形バイト,円筒外周面を逃げ面とし円筒内
傾斜面をすくい面とする丸バイト(コッピングカッタ)
等にそのまま適用できる。またこの発明の使い捨て替刃
は平削り形式では仕上鉋盤,円盤鉋機、回転切削形式で
は板材の厚み切削,角材の直角(かね)出し切削を行う
各種自動鉋盤,手押鉋盤,板材の厚み削り,巾削り或い
は成形面取りを連続的に行うモルダー機に適用しうるこ
とはいうまでもない。さらに美麗な薄くてつやの良い削
り節をうる魚節削り機に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は刃先の切削分力を示す図、第2図は縦切削にお
ける刃先の電子顕微鏡拡大図(a)は被覆層あり(b)
は被覆層なし、第3図は横切削における同拡大図(a)
は被覆層あり(b)は被覆層なし、第4図は木口切削に
おける同拡大図(a)は被覆層あり(b)は被覆層な
し、第5図は被覆層の厚みと切削による刃先形状の変化
を示す図で(a)は0.5μm(b)は1.0μm、第6図は
縦切削における切削材長と切削力の関係図、第7図は横
切削における切削材長さと切削力の関係図、第8図は木
口切削における切削材長と切削力の関係図、第9図は刃
物母材鋼種を変えたときの刃先形状を示す図(a)はイ
鋼,(b)はロ鋼,(c)はハ鋼,(d)はニ鋼,
(e)はホ鋼,(f)はヘ鋼、第10図は被削材の樹種を
変えた時の刃先形状(a)はスプルース(b)はヘムロ
ック(c)はジェルトン(d)はぶな、第11図は刃先角
を変えた時の刃先形状(a)は20゜(b)は30゜(c)
は40゜(d)は50゜(e)は60゜(f)は70゜(g)は
80゜、第12図は仕上鉋の刃部関係図、第13図は実用機試
験平削りの刃先形状図、第14図は被削面粗さを示す図
(a)は被覆層なし(b)は被覆層あり、第15図は従来
の使い捨て替刃の刃先摩耗形状図、第16図は回転削りの
回転鉋の一部を示す図、第17図は切削材長と刃先後退量
との関係図、第18図は同刃先形状図、第19図は同被削面
の粗さを示す図(a)は被覆層なし(b)は被覆層あり
を示すものである。 1……刃物母材、1a……逃げ面 1b……すくい面、2……被覆層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 河合 孝男 愛知県丹羽郡大口町中小口1丁目1番地 兼房刃物工業株式会社大口工場内 (72)発明者 梅田 正 愛知県丹羽郡大口町中小口1丁目1番地 兼房刃物工業株式会社大口工場内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鋼材でなる刃物母材の被切削材と対向する
    逃げ面側に、該刃物母材より高い硬度の耐摩耗性表面被
    覆層を形成してなり、切削によって逃げ面の被覆層が残
    され被覆層のないすくい面が凹形に摩耗する自己研磨特
    性を付与して平滑で美麗な安定した切削面をうることを
    特徴とする木質系材料並びにこの類似性質材料用刃物。
  2. 【請求項2】刃物母材は刃物鋼,炭素工具鋼,合金工具
    鋼,高速度工具鋼でなる特許請求の範囲第1項記載の木
    質系材料並びにこの類似性質材料用刃物。
  3. 【請求項3】表面被覆層は硬質クロム鍍金,クロム合金
    鍍金,炭化チタン,窒化チタン,炭窒化チタン,炭化バ
    ナジウム,炭化クロム,炭化タングステン,炭化ハフニ
    ウムである特許請求の範囲第1項記載の木質系材料並び
    にこの類似性質材料用刃物。
  4. 【請求項4】表面被覆層の層厚は6μm以下である特許
    請求の範囲第1項記載の木質系材料並びにこの類似性質
    材料用刃物。
JP24527487A 1987-09-29 1987-09-29 木質系材料並びにこの類似性質材料用の刃物 Expired - Fee Related JPH0763966B2 (ja)

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