JPH075982B2 - 延性に富む高強度鋼板の製造方法 - Google Patents

延性に富む高強度鋼板の製造方法

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JPH075982B2
JPH075982B2 JP2757287A JP2757287A JPH075982B2 JP H075982 B2 JPH075982 B2 JP H075982B2 JP 2757287 A JP2757287 A JP 2757287A JP 2757287 A JP2757287 A JP 2757287A JP H075982 B2 JPH075982 B2 JP H075982B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は延性に富む高強度鋼板を製造する方法に関する
ものである。
(従来の技術) 自動車用鋼板の高強度化は石油危機以来の軽量化による
燃費軽減を目的として進められてきたが、近年は乗員の
安全確保や付属部品の増加に伴う重量増加の相殺を意図
して精力的に進められている。そのため、自動車メーカ
ーから要求される高強度鋼板の強度レベルは引張強度で
80〜100kgf/mm2以上に達しているが、従来から用いられ
てきた強化法ではこの強度レベルを有する鋼板に対して
は、せいぜい10%内外という低い伸びの値に象徴される
ように極めて劣った加工性しか確保できず、所要の部材
形状に成形加工するのは非常に困難であった。
これを解決しようとする手段には、特公昭56-11741号公
報等で提案されているように、軟質なフェライトに伸び
を、硬質なマルテンサイトに強度を分担させ、その結合
により改善された強度延性バランスを有するフェライト
・マルテンサイト2相鋼(Dual Phase鋼)が存在する。
しかし、この鋼でも引張強度と全伸びの積は、2000kgf/
mm2・%がせいぜいであり、自動車メーカーの要求する
厳しい加工性を100kgf/mm2内外以上の引張強度レベルで
満たすにはまだ相当の難しさを残していた。
ところが最近になって、低合金系ながら15%以上の残留
オーステナイトを含有し、その変態誘起塑性(Transfor
mation Induced Plasticity)を利用することにより、3
0%以上に達する全伸びを有しながら、80〜120kgf/mm2
程度もの引張強度がある高強度鋼板が、特公昭60-43430
号公報等に開示されている如く、製造できることが見い
出された。残留オーステナイトを有するこの種の鋼板
は、その量と変形に対する安定度に応じて、変態誘起塑
性に起因する極めて良好な成形性を有するものの、低合
金系の鋼で製造する場合には、スポット熔接を不可能と
するほどまでにC濃度を高める必要があった。
このことはその秀逸した強度延性バランスにもかかわら
ず、工業上広汎な利用を妨げていた。一方、本発明者ら
は二相域加熱後ベイナイト変態域へ急冷後保持して得ら
れるこの種鋼板の製造プロセスにおいて、パーライトノ
ーズ直上まで徐冷することが望ましいことを見い出し、
これについては、鉄と鋼,72(1986),S 1405により先に
報告を行なっているが、このプロセスを採用することに
より比較的低Cでも残留オーステナイトを含み高強度か
つ高延性の鋼板が得られた。強度はベイナイト域での保
持温度を下げることにより確保されるが、その場合、保
低時間を長くすることが必要であり、生産性の低下をも
たらすことに難点があった。
(発明が解決しようとする問題点) 本発明は前記したような従来技術の有する問題点を解決
し、生産性を阻害することなく、比較的低いC濃度なが
ら、残留オーステナイトを含み延性に富む高強度鋼板を
製造する方法を提供するものである。
(問題点を解決するための手段) 本発明では、高価な特殊合金元素を含まずに比較的低C
濃度で、従来存在しなかったようなすぐれた強度延性バ
ランスを有する鋼板が残留オーステナイトの変態誘起塑
性を利用することにより得られるが、これは二相域にお
いて適正なフェライトとオーステナイトの相比率とその
間における合金元素分配を達成した上でベイナイト変態
温度域へ急冷後、暫時保持しオーステナイト中にCを濃
縮して安定化することにより実現できる。
ここで二相域における加熱時間とベイナイト変態域にお
ける保持時間の選定は所要とする機械的特性値を得る上
で極めて重要である。すなわち、二相域における加熱時
間が短かすぎれば炭化物が固溶せずオーステナイト量は
ごく僅かであり、反対に長すぎてもオーステナイト量は
十分なもののC,Mn等の合金元素濃度が低下するため、最
終的に得られる残留オーステナイト量は僅かであり、機
械的性質に優れたものが得られない。またベイナイト変
態域における保持時間が短かければオーステナイト中へ
のC濃度が不十分なためマルテンサイトが生成し、高強
度なものとなるものの延性劣化が著しく、あまり長時間
保持した時にはオーステナイトは全量がベイナイトへ分
解し、強度延性バランスは陳腐なものとなる。そして、
高強度を意図して保持温度を下げることは必然的に望ま
しい強度延性バランスを達成するために必要な時間を長
くすることにつながるが、それは生産設備の過大化や、
生産性の低下をもたらす。ところで、この最適な加熱お
よび保持時間は鋼板の化学成分のみならず、熱処理を開
始する前におけるミクロ組織と密接な関わりをもつもの
であることに本発明者らは着目し、冷間圧延した鋼板に
おいては熱延仕上温度や最終圧下率が重要な因子である
ことを見出して、本発明を成したものである。
即ち、本発明は重量%でC:0.12〜0.35%,Si:0.50〜2.00
%,Mn:0.20〜2.50%,Sol.Al:0.10%以下を含み、残部が
Feおよび不可避的不純物からなる鋼を最終圧下率25%以
上で仕上げ温度を700〜850℃として熱間圧延を行い、冷
間圧延してから、730〜900℃の二相域温度に加熱し、15
秒〜3分保持後600〜700℃までを1〜10℃/s、それ以下
を30〜500℃/sの速度で300〜450℃まで冷却し引き続い
てこの温度域内で15秒〜8分保持してから室温まで冷却
することにより、延性に富む高強度鋼板を製造する方法
である。
〔作用〕
最初に本発明の対象とする鋼の成分範囲の限定理由につ
いて述べる。
まずCはオーステナイト中に濃縮されそれを安定に残留
させることに大きく寄与し、変態誘起塑性による伸びの
向上に効果を有する。その量は溶接性や衝撃性の観点か
らは低いことが望ましいが0.12%未満では本発明の工程
では強度延性バランスを向上させるのに有効な残留オー
ステナイトを10%以上含ませることができない。一方0.
35%を超えると残留オーステナイト量を確保するのは容
易であるものの溶接性の劣化が著しく実用に耐えないも
のとなる。
次にSiは300〜450℃のベイナイト変態温度範囲域内にお
いて過飽和に存在するCが炭化物として析出するのを抑
制し、残存するオーステナイト中へのCの濃縮を起こり
やすくするとされるが、本発明のC量の範囲ではSi含有
量が0.50%未満の場合その効果は認められない。一方2.
00%を超えることは高温で表面にスケールを生じやすく
し、A3変態点温度を極端に上昇させるといった難点をも
たらすから避ける必要がある。
またMnはオーステナイト形成元素としてその中に濃化し
てオーステナイトを安定化するとともに、二相域からベ
イナイト変態温度域への冷却に際しパーライトへの分解
を抑えるのに必要とされる。Mn0.2%未満では、熱間圧
延に際して熱間脆性を引き起こす危険性が大である。一
方、2.50%を超えると期待した効果が飽和するのみなら
ず、著しいバンド組織を形成し、特性劣化が顕著とな
る。
さらにsol.Alは脱酸元素として、またAlNによる熱延素
材の細粒化を通じて後述するヒートサイクルの短縮と材
質の向上に結びつくから、0.10%以下の添加を必要とす
る。しかし、これを超えた添加は介在物による靱性劣化
をもたらすため0.10%以下に限定する。
以上が本発明の対象とする鋼の基本成分であるが、本発
明鋼板は以上の各元素およびFe以外にP,S,Nその他一般
に鋼に対し、不可避的に混入する不純物を含むものであ
る。
次に工程上の限定理由を詳述する。
まずこの鋼は最終圧下率25%以上で仕上温度を700〜850
℃とした熱間圧延を行った後に、冷間圧延を施こしてか
ら、一連のサイクルからなる熱処理工程を通る。熱間圧
延の最終圧下率を25%以上で仕上温度を700〜850℃とす
るのは、熱間圧延終了後の組織が通常の条件で熱間圧延
を終了するよりも結晶粒が細かく組織の均一性が良いた
め、冷間圧延終了後の一連のヒートサイクルに必要な加
熱時間や保持時間を短縮できるからである。最終圧下率
が25%未満であったり、仕上温度が850℃を超えるよう
な時には、冷間圧延後のヒートサイクルで適当な加熱時
間と保持時間を選べば、残留オーステナイト量はある程
度確保でき、その量に対応するすぐれた強度延性バラン
スが得られるが必要な加熱時間,保持時間は本発明によ
る場合と比較して長くなり、得られる特性も劣る。仕上
温度を700℃未満とすることは莫大な圧下力を必要とす
るので現実的ではない。同様の理由で50%程度が望まし
い最大限である。
冷間圧延後、鋼板は730〜900℃は加熱され、15秒〜3分
保持される。この加熱条件は本発明の成分系を有し、以
上に説明した条件の熱間圧延を行った冷延鋼板におい
て、炭化物が完全に固溶し、ほぼ40〜80%のフェライト
とオーステナイトの二相共存域に相当するものであり、
CおよびMnの濃化したオーステナイトと、それら合金元
素の希薄なフェライトの混合した組織を出現させ、引き
続く一連の熱処理を完了し室温まで持ち来たしても10%
以上のオーステナイトが残留し、すぐれた機械的性質が
もたらされる。
730℃未満の加熱温度では、工業的に実用性のあるよう
な加熱時間とした場合には未固溶炭化物の存在する可能
性が大であり、引き続く一連の熱処理を行っても十分な
量の残留オーステナイトが得られず所要の機械的性質は
得られない。一方、900℃を超えるような温度では、フ
ェライトがほとんど、さらには全く存在せず、オーステ
ナイト単相となるため、合金元素は均一に分布し全てが
希薄な領域となるため、以下の工程でオーステナイト中
への合金元素濃縮を意図しても不十分にしか達成するこ
とができず、最終的に伸びの向上に寄与する残留オース
テナイトの確保は困難で目的とする強度延性バランスを
得ることはできない。
この温度域での加熱時間は加熱前の初期組織とともに既
に説明してきたように二相の存在比率とその間の合金元
素の分配状態を決定する重要な因子である。加熱時間が
15秒未満では炭化物の固溶が不十分な状態で、また再結
晶も完了しない。一方、3分を超える加熱を行うと、引
き続く一連の熱処理完了時点で伸びの低下が認められ
る。本発明の熱間圧延を行った冷延鋼板では、通常の熱
間圧延による冷延鋼板と比較して同一の強度延性バラン
スを得るための望ましい加熱時間が短縮され、最適な時
間とした場合には強度延性バランス自体に向上が認めら
れる。
本発明では引き続いて600〜700℃までを1〜10℃/s,そ
れ以下を30〜500℃/sの速度で300〜450℃まで冷却する
が、その目的はC,Mn等の合金元素のオーステナイトへの
一層の濃化を図った上でパーライトヘの分解を引き起こ
さずにベイナイト変態温度域へ組織を凍結することで引
き続く熱処理を有効なものとし、最終的に得られる鋼板
の強度延性バランスを向上するものである。
ここで600〜700℃までの冷却速度が1℃/s未満ではパー
ライトが生成し、残留オーステナイト安定化に有効なC
を減じることとなり、また10℃/sを超えるとフェライト
が針状に生成するようになり、いずれの場合も強度延性
バランスを悪化させることになる。1〜10℃/sの緩冷の
終了温度が700℃よりも高い時にはフェライトの生成量
が少なくまたオーステナイト中への合金元素濃化が不十
分であるため最終的に得られる鋼板の伸びが小さい。ま
たこの緩冷終了温度が600℃未満となるとパーライトへ
の分解が急速におこるため陳腐な機械的性質しかもたら
されない。600〜700℃以下の冷却速度が30℃/s未満の時
にはパーライトが生成し、強度延性バランスが悪化し、
また500℃/sを超えるような時には目的とした温度で冷
却を終了することはきわめて困難であるし、たとえ達成
できても鋼板の形状は実用上支障のあるものとなりやす
い。この冷却終了温度が450℃よりも高いとその後引き
続いて保持する間にパーライトが生じまた300℃未満で
は炭化物がすみやかに析出するためオーステナイトへの
C濃化によるその安定化が起こりにくくなり、さらには
マルテンサイトも生成するので強度延性バランスの劣化
が顕著となる。
この後、本発明では300〜450℃で15秒〜8分保持してか
ら室温まで冷却するが、前述したようなSiを合金元素と
して含むことの効果でオーステナイトが一部ベイナイト
へ変態するとともに、その部分から吐き出されたCが残
存するオーステナイトへ濃化し、その安定化を進めるた
め、室温まで冷却しても残存し塑性誘起変態を起こすた
め伸びを著しく向上させることを目的として行うもので
ある。この温度域内での保持時間はその間におけるC原
子の有効拡散距離が鋼の成分や初期組織によって決まる
一定範囲内におさまるように設定するものであるが、本
発明で規定したような熱間圧延を行った鋼板ではその距
離範囲が短かいため、通常の条件で熱間圧延した鋼板と
比較して保持時間が短かくて済むといった特徴を有し、
また最も望ましい条件に保持した際には強度延性バラン
スそれ自体の向上が見られる。しかし、この温度域内で
の保持時間が15秒未満ではベイナイトの生成、Cの拡散
が不十分でオーステナイトは室温までの冷却途中にマル
テンサイトとなるので伸びが急減する。また8分を超え
て保持しても安定化を意図したオーステナイトが炭化物
を析出してベイナイトに分解してしまうため塑性誘起変
態によるような大きな伸びは期待できない。
(実施例) 第1表に成分を示す鋼を第2表に示す条件で熱間圧延し
4.0mm厚とした後、酸洗してから1.2mm厚に冷延し、第2
表に示すような熱処理を施した後、0.8%の調質圧延を
行ってから、JIS 5号引張試験片を採取し、ゲージ長さ5
0mm、引張速度10mm/minで常温引張試験を行なったとこ
ろ、同表に記載するような機械的特性値を得た。
ここで第2表の熱処理条件にある符号Ta,ta,R1等は第1
図に記載したようなサイクルの各段階での温度、時間お
よび冷却速度を示す。
本発明例である試料No.2,4,6,12,14,15,18〜20,23,26,2
9,32〜34,36,39,43はいずれも引張強度80kgf/mm2以上
で、なおかつ強度延性バランスの指標値とされる引張強
度と全伸びの積はいずれも2600kgf/mm2・%以上とな
り、高強度にもかかわらず厳しい加工に耐えうる性質を
持つことが明らかである。
これに対し、本発明成分範囲外の鋼a,f,g,iは最適と考
えうる条件で熱間圧延を行い冷間圧延後しかるべき熱処
理サイクルを経ても試料No.1,40,41,45にあるように、
また本発明成分鋼で規定した条件を満足する熱間圧延を
行っても冷間圧延後の熱処理条件が不適切な場合は、N
o.13,16,17,21,22,24,25,27,28,30,31,35,37のように強
度あるいは伸びまたは溶接性の一つあるいはそれ以上が
不十分であるため本発明の目的は達しえない。また通常
行われる条件で熱間圧延した場合には本発明成分鋼で冷
間圧延後しかるべき熱処理を行えば試料No.3,5,7〜11,3
8,42,44のようにある程度すぐれた強度延性バランスが
得られるが、以上に説明してきたように本発明で規定す
るような熱間圧延を施した場合と比較してその特性は劣
り、なおかつ熱処理時間が長くなるような傾向が存在し
実用上優位性が存在しない。
(発明の効果) 以上の実施例からも明らかなように本発明の成分、熱間
圧延条件および冷間圧延後の一連のヒートサイクルを満
足すれば、10%以上の残留オーステナイトを含み、その
変態誘起塑性の効果を十分に発揮できるために、80kgf/
mm2以上の引張強度を有し、なおかつ引張強度と全伸び
の積が2500kgf/mm2・%以上の延性に富む鋼板を工業的
に実用上困難を伴うことなく製造でき、これらは溶接性
や二次加工性・耐衝撃性にも良好なレベルに保てるた
め、産業上極めて顕著な効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】 第1図は冷間圧延後に行う熱処理工程サイクルを示す図
である。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%でC:0.12〜0.35%,Si:0.50〜2.00
    %,Mn:0.20〜2.50%,sol.Al:0.10%以下を含み、残部が
    Feおよび不可避的不純物からなる鋼を最終圧下率25%以
    上で仕上温度を700〜850℃として熱間圧延を行い、冷間
    圧延してから、730〜900℃の二相域温度に加熱し、15秒
    〜3分保持後600〜700℃までを1〜10℃/s、それ以下を
    30〜500℃/sの速度で300〜450℃まで冷却し引き続いて
    この温度域内で15秒〜8分保持してから、室温まで冷却
    することを特徴とする延性に富む高強度鋼板の製造方
    法。
JP2757287A 1987-02-09 1987-02-09 延性に富む高強度鋼板の製造方法 Expired - Lifetime JPH075982B2 (ja)

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FR2850398B1 (fr) * 2003-01-28 2005-02-25 Usinor Procede de fabrication de toles d'acier lamine a chaud et a froid a tres haute resistance et tole obtenue

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