JP3551878B2 - 高延性高穴拡げ性高張力鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、絞り加工や伸びフランジ加工などのプレス加工により様々な形状に成形される構造部材として好適な高延性かつ高穴拡げ性を備えた高張力鋼板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車をはじめ各種機械・装置類は高性能化と同時に軽量化が強く推進されている。鋼の強度が高まるほど軽量化効果が大きくなるため、これらの構造部材に加工される鋼板の強度も次第に高くなってきており、例えば自動車用構造部材では引張強さが500MPaを超えるような高張力鋼板の適用も検討されている。
【0003】
延性や、穴広げ加工のような伸びフランジ変形での成形性(穴広げ性)などで代表される鋼の加工性は、その強度が高くなるにつれて低下する。その低下の度合いは例えば引張強さと伸び値との積(強度−延性バランス)や、引張強さと穴広げ率伸び値との積(強度−穴広げ性バランス)などの強度−加工特性バランスの大きさで評価できる。
【0004】
鋼の強度を高めるには、MnやSiの含有量を高める固溶強化法、NbやTiなどの炭窒化物の析出を利用する析出強化法、あるいは結晶組織をマルテンサイトやベーナイトを有するものとして強化する変態強化法などが知られている。
【0005】
固溶強化法は強度特性バランスは良好に保てるが、得られる強度が低く、コストも高いので高強度材の製造法としては限界がある。
【0006】
析出強化鋼や変態強化鋼は製造コストは低いが、強度上昇に伴う特性劣化が著しく、プレス加工が困難になるという問題がある。変態強化鋼の中でも結晶組織をフェライト+マルテンサイトの2相組織としたいわゆる2相鋼は析出強化鋼などに比較すると延性は改善されてはいるが穴広げ性が良くないという問題がある。従って高い強度と良好な加工性とを兼ね備えた鋼板の実現が強く要望されてきた。
【0007】
高強度、高延性の特性が得られる鋼として結晶組織が残留オーステナイトを含むものとし、加工時に残留オーステナイトによる変態誘起塑性を生じさせて加工性を改善した高張力鋼(残留オーステナイト鋼)が知られている。
【0008】
例えば特公昭62−35461号公報では、質量%で(以下、化学組成を表す%表示は質量%を意味する)0.7〜2.0%のSiと0.5〜2.0%のMnを含有する鋼板を、焼鈍過程においてフェライト+オーステナイト2相域に加熱した後、冷却過程の650〜450℃の間で10〜50秒間保持することにより、ベイナイトおよび/またはマルテンサイト中に体積率で10%以上のフェライトと残留オーステナイトを含む複合組織鋼板とする方法が開示されている。
【0009】
また、特開昭61−157625号公報には、0.4〜1.8%のSiと0.2〜2.5%のMnを含有し、必要によりCu、Cr、Ti、Nb、V、Mo、P、Niの内の1種または2種以上を適当量含有する鋼板をフェライト+オーステナイト2相域に加熱した後、冷却途中で500〜350℃の温度域に30秒〜30分間保持することにより前記複合組織を実現し高強度化する方法が開示されている。
【0010】
しかしながら上記のような複合組織を有する鋼板は一般に引張試験において良好な伸び値(全伸び)を示したとしても局部延性(局部伸び値)が十分ではなく、穴広げ性が良くないという問題があった。
【0011】
特開平5−70886号公報には、上記のような複合組織を有する鋼板の欠点である穴拡げ性を改善するために、鋼に含有されるSiの一部をAlに置換した残留オーステナイト鋼板およびその製造方法が開示されている。ここに開示されている鋼板は、特公昭62−35461号公報や特開昭61−157625号公報で開示された複合組織を有する鋼板と比較すると強度−穴広げ性バランスが改善されているもののそのレベルは未だ十分ではない。
【0012】
また、自動車などに適用される高張力鋼鈑の引張強さレベルは次第に高くなり、現在では780MPaクラスの高張力鋼板の適用が検討されているが、高強度化に伴い、強度−延性バランスが低下しないまでも、伸びの絶対量は低下するため、高強度鋼板の加工性を容易にするには延性のさらなる改善も必要とされている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的はこれらの問題点を解決し、プレス加工により様々な形状に成形される構造部材として好適な高延性かつ高穴拡げ性を備えた高張力鋼板、特に引張強さが700MPaを超える高張力鋼板およびその製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
従来の製造方法に従って引張強さが780MPaクラスの残留オーステナイト鋼板を製造する場合には、鋼板中のC含有量を高くし、ベイナイトと残留オーステナイトの体積率を高めることにより鋼板の強度を高める。このように鋼板のC含有量を高めると生成する残留オーステナイト中のC含有量が必然的に高くなり、残留オーステナイトは極めて安定なものとなる。このため、鋼板が加工された際の応力誘起変態が生じ難くなり、変態誘起塑性をもたらすことが困難となる。
【0015】
言い換えれば、従来の方法では、高強度化に伴う強度−延性バランスの劣化は防止できても伸び値の絶対値が小さくなるという問題がある。さらに、ベイナイトと残留オーステナイトの体積率が大きい残留オーステナイト鋼板では、プレス加工時の変形初期にフェライトに歪みが集中する。このために鋼の延性のみならず穴広げ性も著しく損なわれる。
【0016】
本発明者らは様々な化学組成と結晶組織を有する残留オーステナイト鋼板を実験室で作製し、強度−特性バランスの改善方法に関して種々研究を重ねた。その結果、残留オーステナイト鋼板の引張強さが700MPaを超える場合は、鋼に適量のCとNbを含有させてそのフェライト中に適度にNbCを析出させることにより、強度−延性バランスおよび強度−穴拡げ性バランスが大幅に改善されることを知見した。
【0017】
その理由は必ずしも明確になっていないが、以下のように推測される。
【0018】
NbCをフェライト中に析出させて鋼を強化することにより、鋼板中のベイナイト体積率を増大させることなく、引張強さを高めることができるので、鋼のC含有量を低く制限することが可能となる。これにより残留オーステナイトの安定性を適度な範囲に保つことができ、残留オーステナイトの応力誘起変態を容易にすることができる。
【0019】
また、フェライト中にNbCを析出させることによりフェライトが強化されるので、引張強さを高くしたにもかかわらずベイナイトや残留オーステナイトとフェライトとの間の硬度差が小さくなり、変形初期のフェライトへの歪の集中を防止することができる。これにより引張加工を受けた際のくびれが発生し難くなり、延性と穴広げ性をさらに改善する効果が得られる。
【0020】
本発明は上記の知見を基にして完成されたものであり、その要旨は下記(1)および(2)に記載の高延性高穴拡げ性高張力鋼板およびその製造方法にある。
【0021】
(1)化学組成が質量%でC:0.05〜0.30%、Si:1.0 %以下、Al:0.10%を超え、2.0 %以下、Mn:0.5 〜3.0 %、Ni:0 〜5.0 %、Nb:0.020 〜0.070 %、P:0.1 %以下、S:0.001 %以下 ( 但し、 0.001 %の場合を除く ) 、N:0.01%以下、かつ、Si (%) +Al (%) ≧0.50および Mn(%) + (1/3)Ni(%) ≧1.0 を満足し、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物からなり、さらに結晶組織が体積率で5%以上の残留オーステナイトを含むものであることを特徴とする高延性高穴拡げ性高張力鋼板。
【0022】
(2)上記化学組成を有する鋼片を熱間圧延して300〜720℃で巻取り、次いで脱スケール処理した後に圧下率:30〜80%で冷間圧延し、その後、Ac1変態点以上、Ac3変態点以下の温度域に加熱し、冷却の途中で550〜350℃の温度領域で30秒間以上保持するか、または該温度域を100℃/分以下の冷却速度で冷却する焼鈍を施すことを特徴とする上記(1)に記載の高延性高穴拡げ性高張力鋼板の製造方法。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を詳細に述べる。
【0024】
a.鋼板の化学組成
C:最も強力なオーステナイト安定化元素である。オーステナイト安定化効果を確保するにはオーステナイト中に1%以上のCが含有されることが必要である。しかしながら鋼板のC含有量としては、焼鈍のヒートサイクルを最適化することにより、0.05%以上含有させることで十分である。従ってC含有量は0.05%以上とする。好ましくは0.10%以上である。
【0025】
C含有量を増すことにより、より高強度の高張力冷延鋼板を製造することができる。しかしながらC含有量が0.30%を超えると鋼板が硬くなりすぎ、通常の製板工程では薄鋼板に加工することができなくなる。従ってC含有量は0.30%以下とする。好ましくは0.20%以下である。
【0026】
Si:Alと同様にフェライト安定化元素であり、2相域温度で焼鈍する際のフェライトの体積率を増加させることにより、平衡するオーステナイトのC濃度を高める作用を有している。同時にSiにはフェライトを強化する作用もある。しかしながらSiを過剰に含有させるとSi含有鋼板に特有のスケールが発生して鋼板の表面品質を損なうことがあり、これを避けるためにSi含有量は1.0%以下とする
【0027】
なお、Si含有量は同様にフェライト安定化作用を有するAlとの関係で制御するのがよく、フェライト安定化において所望の効果を得るには、Si(%)+Al(%)の値が0.50以上となるように調整する必要がある。好ましいのは上記式の値が1.0以上となるように調整する。
【0028】
Al:Siと同様にフェライト安定化元素であり、2相域温度で焼鈍する際のフェライトの体積率を増加させることにより、平衡するオーステナイトのC濃度を高める作用を有している。Siと比較するとオーステナイト安定化作用が強く、0.10%を超えて含有させると局部延性を向上させる効果が得られる。従ってAl含有量は0.10%を超える範囲とする。好ましくは0.30%以上である。Al含有量が2.0%を超えると鋼板中に介在物が多くなり延性を損なうため、Al含有量は2.0%以下とする。但し、フェライト安定化元素としての所望の効果を確保するには、Si(%)+Al(%)の値が0.50以上となるように調整する必要がある。なお、ここでのAl含有量はsol.Al含有量を意味する。
【0029】
MnおよびNi:Mnは鋼中のSをMnSとして固定して熱間脆性を防止する作用を有しており、この効果を確保するためにMnを0.5%以上含有させる。Mnを過度に含有させると鋼板が硬くなりすぎ高延性が得られない場合があるのでMn含有量は3.0%以下とする。
【0030】
MnはNiと共にオーステナイト安定化作用を有するので、室温において所望の量のオーステナイトを得るためにこれらの元素を含有させる。Niのオーステナイトを安定化する作用はMnの3割程度であるうえ、Mnに比べて高価であるので、オーステナイトの安定化は基本的にはMnによるのがよい。
【0031】
連続式溶融亜鉛めっきラインを用いて鋼板に溶融亜鉛めっきを施す場合に、鋼板にMnを大量に含有させると鋼板表面にMn酸化物が生成してめっき濡れ性が劣化する傾向がある。Niにはこれを防止する作用があるので、上記めっき鋼板を製造する場合などではNiを含有させてもよい。
【0032】
これらの元素の含有量は、オーステナイトを安定化させるために、Mn(%)+(1/3)Ni(%)で計算される値が1.0以上になる範囲とする。好ましくは1.3以上になる範囲である。Niは高価であるのでNiを含有させる場合のNi含有量の上限は5.0%とする。
【0033】
Nb:鋼中のCと結合してNbCとして析出してフェライトを強化し、プレス加工された際の変形初期にフェライトに歪みが集中するのを抑制する作用があり、特に穴広げ性が著しく改善されるという効果が得られる。この効果を確保するためにNbを0.020%以上含有させる。好ましくは0.025%以上である。Nbを過剰に含有させると、フェライトのみならず残留オーステナイトも硬化し穴広げ性改善作用がなくなるので、Nb含有量は0.070%以下とする。好ましくは0.050%以下である。
【0034】
P:不可避的不純物であり鋼板の延性を阻害するので低い方が好ましい。特に0.1%を超えて含有すると鋼板の延性が顕著に劣化する。これを避けるためにP含有量は0.1%以下とする。
【0035】
S:不可避的不純物であり鋼板の穴広げ性を損なうので低い方が好ましい。特に0.001%を超えて含有するとMnSとして析出して穴拡げ性が著しく損なわれる。これを避けるためにS含有量は0.001%以下とする。
【0036】
N:不可避的不純物であり鋼の延性を損なうので低い方が好ましい。特に0.01%を超えて含有するとAlNとして析出して延性を著しく損なう。これを避けるためにN含有量は0.01%以下とする。
【0037】
b.オーステナイトの体積率
最終製品としての本発明鋼の延性は製品中に含まれる残留オーステナイトの体積率により左右され、該体積率が5%に満たない場合には残留オーステナイトの変態誘起塑性による加工性改善効果が得られない。このため、残留オーステナイトの体積率は5%以上とする。好ましくは10%以上である。残留オーステナイトの体積率が過度に大きくなると局部延性が劣化するので該体積率は20%以下とするのがよい。
【0038】
c.製造方法
本発明の鋼板は以下の方法で製造するのが好適である。
【0039】
上記の化学組成を有する鋼は、転炉、電気炉などで溶製し、必要があれば真空脱ガスなどの処理を施した溶鋼を公知の方法、例えば連続鋳造法や鋼塊にした後に分塊圧延するなどの方法で鋼片とし、熱間圧延する。溶鋼から直接鋼板を製造するいわゆるストリップキャスト等の方法でも構わない。
【0040】
熱間圧延前の鋼片の加熱や圧延は公知の条件でおこなえばよい。熱間圧延後の鋼板の巻取温度を低くしすぎると鋼に焼きが入り硬くなり、その後の酸洗や冷間圧延が困難になる。逆に巻取温度を高くしすぎるとセメンタイトが粗大化して軟質になり、酸洗や冷間圧延は容易になるものの、焼鈍の均熱時にセメンタイトの再固溶に時間がかかりすぎ、残留オーステナイト生じにくくなる。そのため、熱間圧延後の巻取りは上記不都合が回避できる300℃以上、720℃以下の温度範囲でおこなう。上記巻取り温度は酸洗や冷間圧延に支障のない範囲で低い温度で巻取るのがよく、好ましくは550℃以上、650℃以下の範囲である。
【0041】
巻取り後の鋼板は酸洗し、冷間圧延し、次いで過時効処理を伴う短時間の焼鈍を施す。酸洗や冷間圧延は公知の方法でおこなえばよいが、冷間圧延圧下率は全圧下率で30%以上とする。圧下率が30%に満たない場合にはその後の焼鈍時の再結晶が不十分となり、延性が良くない。好ましくは50%以上である。全圧下率が80%を超えると圧延負荷が増して冷間圧延が困難となるので、全圧下率は80%以下とする。好ましくは65%以下である。
【0042】
焼鈍は以下の条件でおこなう。まず、鋼板を、フェライト+オーステナイト2相組織にするために鋼をAc1変態点以上、Ac3変態点以下の温度域に加熱する。加熱温度が前記範囲よりも低すぎるとセメンタイトが再固溶するのに時間を要し、高すぎるとオーステナイトの体積率が大きくなりすぎてオーステナイト中のC濃度が低下することから、望ましいのは800℃以上、850℃以下の温度範囲である。上記温度での均熱時間は5秒以上であればよい。
【0043】
均熱終了後はフェライトを成長させてオーステナイト中のC濃度を高めるために、700℃までは10℃/秒以下の冷却速度で冷却するのが望ましい。700℃以下、過時効処理温度に達するまでの温度域では、オーステナイトのパーライト変態を抑制するために、冷却速度は50℃/秒以上の冷却速度で急速冷却するのが望ましい。
【0044】
過時効処理は550℃以下、350℃以上の温度範囲で2分以上保持するか、上記温度範囲を100℃/分以下の冷却速度で冷却する。これにより、オーステナイトをベイナイト変態させながら、オーステナイトへのCの濃縮を促進することができる。過時効処理温度が550℃を上回るとベイナイト変態が生じず、350℃未満では下部ベイナイトになってオーステナイトへのCの濃縮が十分ではなくなる。過時効処理後の冷却速度はとくに限定する必要はない。焼鈍した鋼板には、調質圧延や、各種の電気めっき処理をおこなっても構わない。
【0045】
【実施例】
(実施例1)
実験用真空溶解炉にて表1に示す各化学組成を有する鋼を溶製し、これらを熱間鍛造して厚さが25mmの実験用鋼片を得た。
【0046】
【表1】
Figure 0003551878
【0047】
上記鋼片を電気炉で1250℃に1時間均熱し、実験用熱間圧延機により1150℃から930℃の温度範囲で3パスの圧延を施して厚さが5mmの鋼板とした。次いで巻取りシュミレーションとして、圧延終了後直ちに強制空冷あるいは水スプレー冷却により、500℃まで冷却し、500℃に保持した電気炉に挿入し、1時間保持した後に20℃/時間の冷却速度で炉冷した。
【0048】
次いで得られた熱間圧延鋼板の表面を研削して厚さが3.2mmの鋼板とし、全圧下率56%で冷間圧延して厚さが1.4mmの冷延板を得た。これらの冷延板は、赤外線加熱炉にて10℃/秒の加熱速度で820℃まで加熱し、その温度で40秒間保持した後、700℃まで3℃/秒の冷却速度で冷却し、さらに50℃/秒の冷却速度で400℃まで冷却し、その温度で3分間保持した後、10℃/秒の平均冷却速度で常温まで冷却して焼鈍鋼板を得た。
【0049】
これらの焼鈍鋼板からJIS5号引張試験片を採取して引張試験に供した。さらに70mm角の試験片を採取し、クリアランスが0.1mmの金型を用いて試験片中央部に直径が10mmの穴を打ち抜いて穴広げ試験片を作製した。上記試験片を30kNのしわ押さえ力で直径が36.5mmφのダイ穴を有するダイの表面に押し付け、試験片穴部に直径が33mmφのポンチを押し込み、亀裂が発生する限界の穴直径を測定した。また、各冷間圧延鋼板の残留オーステナイト量をX線反射強度測定法により測定した。これらの結果を表2に示す。
【0050】
【表2】
Figure 0003551878
【0051】
表2から明らかなように、本発明の規定する条件を満足する鋼1〜鋼12は優れた延性と穴広げ性を備えていた。これに対し、本発明の規定する条件を満たさなかった鋼13〜鋼26は、延性および/または穴広げ性が良くなかった。鋼9は参考例である。

【0052】
図1はNb以外の化学組成がほぼ同一である鋼1〜鋼3、鋼13〜鋼15の特性をNb含有量をパラメータにして示すグラフである。図1からわかるように、Nb含有量が増すにつれて強度が上昇し、延性は強度の増加に伴って若干低下するものの、穴拡げ性は顕著に改善される。特にNbを0.02%以上含有する場合の改善効果が顕著である。
【0053】
図2はS以外の化学組成がほぼ同一である鋼1、鋼23および鋼24の特性を、S含有量をパラメータにして示すグラフである。図2に示されているようにS含有量を0.001%以下にすることにより優れた穴広げ性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼の特性に対するNb含有量の影響を示したグラフである。
【図2】鋼の特性に対するS含有量の影響を示すグラフである。
【発明の効果】
本発明の高張力鋼板は極めて優れた延性と穴広げ性を有するので自動車の構造部材のように複雑な形状への加工が容易であり、構造部材の高強度化と軽量化を実現する材料として好適である。また本発明の鋼板はC含有量が少ないので溶接性にも優れる。本発明の鋼板は化学組成と熱延条件および焼鈍条件の調整により、容易に製造することができる。

Claims (2)

  1. 化学組成が質量%でC:0.05〜0.30%、Si:1.0 %以下、Al:0.10%を超え、2.0 %以下、Mn:0.5 〜3.0 %、Ni:0 〜5.0 %、Nb:0.020 〜0.070 %、P:0.1 %以下、S:0.001 %以下 (但し、0.001 %の場合を除く) 、N:0.01%以下、かつ、Si (%) +Al (%) ≧0.50および Mn(%) + (1/3)Ni(%) ≧1.0 を満足し、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物からなり、さらに結晶組織が体積率で5%以上の残留オーステナイトを含むものであることを特徴とする高延性高穴拡げ性高張力鋼板。
  2. 上記化学組成を有する鋼片を熱間圧延して300 〜720 ℃で巻取り、次いで脱スケール処理した後に圧下率:30〜80%で冷間圧延し、その後、Ac1 変態点以上、Ac3 変態点以下の温度域に加熱し、冷却の途中で550 〜350 ℃の温度領域で30秒間以上保持するか、または該温度域を100 ℃/分以下の冷却速度で冷却する焼鈍を施すことを特徴とする請求項1に記載の高延性高穴拡げ性高張力鋼板の製造方法。
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