JPH0754797Y2 - 連続スクラップ装入式アーク炉の炉体構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は、金属材料の溶解、溶融金属の精錬等に使用さ
れる連続スクラップ装入式アーク炉に関する。

［従来の技術］ 精錬用のアーク炉として、炉内に装入した溶融金属の上
方に配置した電極と、炉底、側壁等の炉壁に取り付けた
電極との間に電流を流し、溶融金属の精錬を行う直流ア
ーク炉、また炉内に装入した溶融金属の上方に配置した
三本の電極間に電流を流し、溶融金属の精錬を行う交流
アーク炉が知られている。この種のアーク炉はスクラッ
プをバケットにてバッチ装入を行うものが多く、このた
めスクラップ投入時の炉蓋開閉時間が必要となり生産性
が低下し、また炉蓋開閉時に炉内の熱量を炉外雰囲気に
放散しエネルギー効率面よりもスクラップを連続して装
入するアーク炉の実用化が期待されている。

そこで、この実用化のため各種の提案が行われている
が、例えば特許出願公表昭61−502899号公報において
は、炉体の炉壁部にスクラップを連続して装入するため
の投入口を設け、スクラップは排ガスダクト内に設置し
た固定式搬送装置で炉内に装入する構造を有したアーク
炉が開示されている。

［考案が解決しようとする課題］ この時、スクラップの連続装入速度とスクラップの溶解
速度とのバランスがとれない場合にはスクラップの装入
部分にスクラップが山積み状態となり生産に支障をきた
すこととなり、スクラップの溶解速度の高速化が重要な
ポイントとなる。このためスクラップの溶解熱の構成の
大半を占める溶融金属からの受熱量に大きく関与するス
クラップと溶融金属との伝熱面積を多くするため浸漬比
率を大きくする必要があるが、しかるに、従来の炉体プ
ロフィールでは湯溜まり深さＨが湯面部直径Ｄに比し小
さく、H/D＝0.2程度が中心となっており装入されたスク
ラップの溶融金属への浸漬比率は小さくスクラップと溶
融金属との伝熱面積は多くできず、特に従来のアーク炉
より炉容量の大きく、生産性の高いアーク炉になるにつ
れスクラップの装入速度の面で不利となる欠点を有して
いた。

つまり、炉容量の増大に比例しスクラップの装入速度は
大きくなるが、炉体プロフィールの湯溜まり深さは炉容
量の増加にともない深くはなるもその関係はほぼ炉容量
の1/3乗に比例し、同様に炉径も炉容量の1/3乗に比例し
て増加してスクラップの固定式搬送装置の幅も同程度の
増加率となり、これよりスクラップの溶融金属との伝熱
面積の増加は炉容量の2/3乗に比例し増加する。このた
め、従来の炉体プロフィールでは炉容量の大きくなった
場合、スクラップの必要装入速度が溶解速度を上回るこ
ととなり装入速度を溶解速度に見合ったレベルとせざる
を得ず、その結果生産性が低下してしまう欠点を有して
いる。

本考案は、連続して装入するスクラップが炉内でその溶
解速度を効果的に高めスクラップの装入速度の制約限界
を高くすることが可能な連続スクラップ装入式アーク炉
を提供することを目的とする。

［課題を解決するための手段］ 本考案の連続スクラップ装入式アーク炉は、その目的を
達成するために、スクラップを連続して装入するアーク
炉において、溶融金属の湯溜まり深さＨと湯面直径Ｄの
関係がH/D＝0.3以上となるプロフィールを有した炉体を
備え、かつ炉底部にガス吹込用の羽口を備えたことを特
徴とする。

［作用］ 本考案においては、炉体プロフィールは湯溜まり深さが
深くなるため溶融金属と接するスクラップの表面積の増
大が図れ、スクラップの溶解速度を高めることが可能と
なり、更に装入したスクラップが堆積する炉底部より底
吹きガスを羽口より吹き込むことで溶融金属の攪拌流動
を増大させてスクラップと溶融金属との熱伝達率を高め
ることができ、スクラップの溶解速度を一層高めること
が可能となり、安定したスクラップの溶解特性の向上が
図れることとなる。

前述した如く炉容量の増加に伴うスクラップの必要装入
速度の増加に対し、スクラップの伝熱面積の増加は炉容
量の2/3乗に比例し、不足分は炉容量の1/3乗に比例した
伝熱面積であり、溶融金属の湯溜まり深さＨと湯面直径
Ｄの関係をH/D＝0.3とすると同一の炉容量で従来の炉体
のプロフィールに比べ湯溜まり深さＨは（H/D）の2/3乗
に比例するためスクラップの伝熱面積はほぼ1.3倍とな
り、従来の二倍程度の炉容量のアーク炉におけるスクラ
ップの必要装入速度の増加に相応するスクラップの伝熱
面積を確保できることとなる。さらに溶融金属の湯溜ま
り深さＨと湯面直径Ｄの関係をH/D＝0.3以上とすればス
クラップの伝熱面積の増加率が大きくなり、従来の二倍
以上の炉容量のアーク炉でも十分なる安定したスクラッ
プの溶解特性の向上が図れる。

［実施例］ 第１図は、本考案による連続スクラップ装入式アーク炉
の炉体構造を直流アーク炉タイプの場合の縦断面図であ
る。本考案による連続スクラップ装入式アーク炉の炉体
構造は交流アーク炉に適用出来ることは勿論であること
は言うまでもない。直流アーク炉は、炉体本体１と炉蓋
２とで容器を形成し、炉体本体１の溶融金属３と接触す
る内側は耐火物４のライニングを施し、溶融金属３と接
触しない上部には水冷ボックス５を設置し、炉蓋２の内
面にも水冷ボックス5aが取付けられている。

更に電気を流すために炉体本体１の下部には炉底電極６
が、上部よりは炉蓋２を貫通して上部電極７が配置され
ている。スクラップ８は炉体本体１に取付けられた装入
口９より連続してスクラップ８を供給する搬送装置10に
て炉内に装入され、炉底部に堆積し溶融金属３より熱を
受けながら次第に溶解していく。炉体プロフィールは溶
融金属３の湯溜まり深さ11が十分に溶融金属３と接触し
やすくなる構造とし、湯面部直径12との比を0.3以上と
しており、加えて炉底部に、炉体本体１、内側の耐火物
４を貫通して炉外より炉内の溶融金属３の攪拌流動を発
生させるガス吹き込みを行う羽口13を設置している。こ
れにより炉内に装入されたスクラップは溶融金属３との
接触頻度が相乗的に増加し、速やかに溶解されることと
なる。

［考案の効果］ 以上に説明したように、本考案による連続スクラップ装
入式アーク炉の炉体構造においては、スクラップを装入
する溶融金属の湯溜まり部分を深くすることで溶融金属
と接するスクラップの表面積の増大が図れ、スクラップ
の溶解速度を高めることを可能とし、更に装入したスク
ラップが堆積する炉底部からの底吹きガスによる溶融金
属の攪拌流動のためその溶解速度を一層高めることが可
能となり、安定したスクラップの溶解特性の大幅な向上
が図れ、連続スクラップ装入方式の本来的長所である生
産性の向上・エネルギーコストの低減に大きく貢献する
ものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の連続スクラップ装入式アーク炉の炉体
構造を直流アーク炉タイプに適用した例を示す縦断面図
である。 １…炉体本体、２…炉蓋、３…溶融金属、８…スクラッ
プ、10…搬送装置、13…羽口

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】スクラップを連続して炉内に装入する搬送
   装置を備えた連続スクラップ装入式アーク炉において、
   溶融金属の湯溜まり深さＨと湯面直径Ｄの関係がH/D＝
   0.3以上となるプロフィールを有した炉体を備え、かつ
   炉底部にガス吹込用の羽口を備えたことを特徴とする連
   続スクラップ装入式アーク炉の炉体構造。