JPH0754603A - ガスタービン翼、ガスタービン用高温材料、およびその製造方法 - Google Patents

ガスタービン翼、ガスタービン用高温材料、およびその製造方法

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JPH0754603A
JPH0754603A JP19965893A JP19965893A JPH0754603A JP H0754603 A JPH0754603 A JP H0754603A JP 19965893 A JP19965893 A JP 19965893A JP 19965893 A JP19965893 A JP 19965893A JP H0754603 A JPH0754603 A JP H0754603A
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oxide
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bond layer
gas turbine
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JP19965893A
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Keizo Honda
多 啓 三 本
Itaru Senda
田 格 千
Atsuhiko Izumi
泉 敦 彦 和
Junji Ishii
井 潤 治 石
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高温の使用条件の下で基材上に設けられたセ
ラミックス層の剥離を確実に防止することができるガス
タービン用高温材料およびその製造方法を提供する。 【構成】 NiあるいはCoのいずれかを主成分とする
基材1上に、NiあるいはCoのいずれかあるいはその
両方を主成分とし、更にCrとAlを含みむボンド層2
を成形する。ボンド層2上にAlを拡散させ、その後拡
散されたAlを拡散を酸化処理して、予めAl酸化物層
3を形成する。このAl酸化物層3上に、セラミックス
層4を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高温腐食環境下で用い
られるガスタービン翼、ガスタービン用高温材料、およ
びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に発電用ガスタービンプラントの発
電効率を向上させるためには、ガスタービンの作動ガス
の高温化、すなわちプラントの高温化技術が不可欠とな
る。これらの技術的観点から高温部材、特にガスタービ
ンの動翼及び静翼を構成する材料の耐熱温度を高める努
力が従来から行われている。耐熱温度を高める方法とし
て、高温材料すなわち高温用耐熱合金の開発が継続的に
なされている。しかしながら高温材料の耐熱温度は85
0℃程度が限界であり、特に発電用ガスタービンプラン
トにおける高温酸化や高温腐食を考慮すると、高温用耐
熱合金における寿命は十分ではない。
【0003】また、さらに高温耐久性を向上させる目的
から、高温材料としてセラミックスが検討され、種々の
研究成果をあげている。しかしながら、高温回転体であ
るガスタービンの動翼、および飛来する粒子に対する対
称撃性が要求される静翼では、耐力性に問題があり、本
格的に実用化されていない。
【0004】そこで、高温化対応の別の方策として、高
温材料表面を被覆する方法が注目された。特に高温材料
表面に熱伝導等の小さいセラミックス層をコーティング
する熱遮蔽コーティング(Thermal Barrier Coating 、
以下TBCと称す)は、合金系材料の実質温度を抑制で
き、かつガスタービンの高温化に対応できるので、多く
の研究がなされている。セラミックス層の熱遮蔽効果
は、50〜100℃程度という研究報告がなされてい
る。しかしながら、TBCはガスタービンプラントの燃
焼器において主に用いられているが、研究の数の割りに
は実例が限られている。特にガスタービンの動翼では、
殆ど適用の例が認められない。このことはTBCの技術
な課題に基づく事象が原因である、といわれている。す
なわち、遮熱特性を有するセラミックス層、(一般にZ
rO2 (ジルコニア)を主成分とし、MgO、Y
2 3 、Ce2 3 等を適宜添付したセラミックス層)
は、基材を構成する耐熱合金(一般にNi基あるいはC
o基のもので、材料の特性要求からCr、W、Mo、T
i、Nb、Hf、Ta、Al等が適宜添加されている)
との物性値が異なるので、セラミックス層のコーティン
グを信頼性高く形成することが難しい。そこで従来の研
究者は、セラミックス層と耐熱合金からなる基材との間
に、金属材料からなるボンド層を設けることを見出だし
た。
【0005】ボンド層は基材合金とセラミックス層との
物性差を緩和するものとしてNi又はCoを主成分と
し、Cr、Al、さらに添加元素として、Y、Hf、T
a、Si等を適宜添加した、いわゆるMCrAlY系合
金(M: Ni or Coor Ni/Co)が選定
されている。
【0006】一般にTBCを構成するセラミックス層
は、プラズマ溶接法によって形成される。これは、セラ
ミックス層の遮熱効果を得るためには、溶射被膜の多孔
質な構造が適していること、さらに多孔質のため使用中
のきびしい熱サイクルに対し空孔やマイクロクラックが
熱応力緩和効果を発揮するためである。なお、D,J,Wort
man 他:Thermal Barrier Coating for Gas Turbine US
A,Materials Science and Engineeriy,A121(1989)433-4
40の研究成果からセラミックス層のポロシティは10〜
15%程度が適していると言われている。このセラミッ
クス層をMCrAlY系合金からなるボンド層上に形成
することによりTBCが完成する。
【0007】またMCrAlY系合金からなるボンド層
も、セラミックス層と同様、一般に溶射法によって形成
される。特にTBC開発の初期において、ボンド層は大
気中でセラミックス層と同様に成膜された。しかしなが
ら、その後の、溶接冶金シンポジウム「厚膜形成による
硬度試料機能化」1990-12-19(社)溶接学会 溶接冶金
研究委員会 p51の研究において、大気中でMCrAl
Y系ボンド層を形成するとボンド層中のAl元素が成膜
中に酸化され、消耗してしまうことが判明した。また、
その後の使用環境下で、セラミックス層が供給する酸素
によってボンド層表面に厚膜のCr2 3 系酸化物が生
成し、これが新たな熱応力発生源となってTBCの新規
寿命を短くしてしまうことも明らかとなった。
【0008】これらのことを背景として、TBCのボン
ド層としては、MCrAlY系合金からなるボンド層を
成膜する際にAlが損耗されずに保存されるよう、不活
性ガス雰囲気下でプラズマ溶付あるいは真空蒸着法によ
ってボンド層を成膜することが一般的となっている(D,
J,Wortman 他:Thermal Barrier Coating for Gas Turb
ine USA,Materials Science and Engineeriy,A121(198
9)433-440)。また、セラミックス層の成膜の際も溶射
法による多孔質被膜の代りに、真空蒸着法によって粗大
な柱状晶を形成させて、柱状晶間の応力緩和を利用する
方法も提案されている(S,Manning Meier 他:The Evol
ution of Thermal Bsrrier Cotings in Gas Turbine Ap
plcations,92-GT-206,ASME)。
【0009】これらの最近のTBC技術を総括すると、
セラミックス層は熱遮蔽性及び耐熱衝撃性を考慮した成
膜法により形成され、ボンド層はAlの損耗を起さない
よう不活性ガス中、あるいは真空中での成膜法により形
成される。しかしながら、このようにして形成されたT
BCでも、満足した剥離寿命が得られないことがある。
例えば、ZrO2 に8%Y2 3 を添加したセラミック
ス層(大気溶射によって成膜)とCoに29%Cr、6
%Al、1%Yを添加したボンド層(不活性ガス雰囲気
中でプラズマ溶射)からなるTBCをガスタービンの動
翼に成膜して実環境で回転試検を行なったところ、所定
の100サイクル合計500時間の耐久試検で剥離が多
発した。
【0010】これに対し、TBCの剥離寿命を改善する
ための方法として、大きくわけて2つの技術開発の流れ
がある。一つの方法は、熱サイクル負荷時に発生する熱
応力を緩和するため、セラミックス層とボンド層の中間
に混合層を設けたり、あるいは組成がセラミックス層か
らボンド層に向って傾斜するように配慮した中間層をセ
ラミックス層とボンド層の間に設ける方法である。これ
らについても、D,S,Duvall他:Ceramic ThermalBarrier
Coatings for Turbine Engine Components,82-GT-322,
ASMEの研究報告や特許出願(特開平3-20451 1989-6-1
6 出願)等が出されているが必ずしも効果を発揮してい
ない。すなわち単に混合層を設けても混合層の直下には
セラミックス層から供給された酸素が容易に運ばれるた
め、ボンド層表面の酸化を促進する結果となり、セラミ
ックス層が剥離することがある。また、混合層あるいは
傾斜組成の中間層とセラミックス層の中間に、さらに酸
素供給を避けるためMCrAlY等かなる合金層を設け
る方法(特開平3-20451 1989-6-16 出願)もあるが、こ
の場合はTBC形成が非常に複雑化し、実用上困難とな
る。またこのMCrAlY等からなる合金層を設ける方
法では、セラミックス層直下に新たに設けたMCrAl
Yからなる中間層へ酸素が容易に供給されるため、この
部分で著しい酸化が生じこれに起因する熱応力のため、
TBCの剥離寿命の改善は難しい。
【0011】他方、TBCの剥離寿命を改善するため
に、内部応力発生上問題となるセラミックス層とボンド
層の中間に生ずる酸化層を制御する方法が検討されてい
る。その第1の方法はPreoxidation(以下、予備酸化)
と呼ばれる方法である。この方法はセラミックス層とボ
ンド層とからなるTBCを形成したのちに、大気中にお
いて700〜1200℃の温度範囲で1〜50時間保持
するものであり、この酸化熱処理によりボンド層表面に
酸化膜を形成させセラミックス層とボンド層の密着力を
単にボンド層に対する機械的結合力のみならず酸化膜と
の化学的結合力からも得ようとするものである(特開昭
62-210327 1986-3-12 出願)。
【0012】その後の綿密な研究によれば、MCrAl
Yからなるボンド層を単に予備酸化しても得られる中間
の酸化層は単にAl酸化物からなるものではなく、MC
rAlY中に多量に含まれるCr酸化物との混合体とな
ることが判明した(W,Lihs:Eftects of Band Coat Pre
oxidation on the Properties of ZrO2 −8wt%Y
2 3 /Ni−22Cr−10Al−Y Thermal-Bsrr
ier Cotings,Oxidation of Metals,Vol.36,Nos,3 4,199
1 )。したがって、ボンド層を不活性ガス雰囲気中でプ
ラズマ溶射して成膜した予備酸化のないTBCに対して
は、あまり著しい効果が得られないことが明らかとなっ
ている。この結果は前述の予備酸化を用いた(特許出願
特開昭62-210327 1986-3-12 出願)の明細書中の実施
例とも一致する。大気溶射を用いたボンド層からなるT
BCに対する効果は明らかであるが不活性ガス中のプラ
ズマ溶射を用いたボンド層からなるTBCに対しては、
予備酸化は明瞭な効果を発揮できない。
【0013】さらに予備酸化の効果を明瞭にするため
に、ボンド層の表面にAl元素を拡散浸透法等で投入
し、その後同様に予備酸化する方法が提案された(S,F,
Changs:ZrO2 /Pack-aluminixes Co−29Cr−
6Al−1Y Thermal Barriercoatings,J,Vac,Sci,Te
chnol,A9(4)Jul /Ang,1991)。しかし、ここにおいて
も予備酸化の効果は1075℃以上の高温て確認された
が、1000℃〜1050℃領域ではあまり明瞭とは言
えない程度のものであった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】以上のようにTBCの
剥離寿命を改善するため多くの研究開発が行われている
が、現在のところ有効な成果は得られていないのが実状
である。このため、TBCの剥離寿命は現在のところ十
分なものではなく、特にガスタービン動翼および静翼の
ように高い信頼性が求められる材料へのTBCの適用は
むずかしい。特にTBC技術において、セラミックス層
が酸素を供給するので、ボンド層とセラミックス層との
間に酸素層が形成されることは避けられず、供給酸素が
存在することを前提にガスタービン用高温材料の剥離寿
命の改善等を検討しなければならない。
【0015】本発明はこのような点を考慮してなされた
ものであり、セラミックス層から供給される酸素によっ
てセラミックス層とボンド層との間に生じる酸化物層に
よる熱応力の増大を抑制することができるガスタービン
翼、ガスタービン用高温材料、およびその製造方法を提
供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、
NiあるいはCoのいずれかを主成分とする基材と、こ
の基材上に設けられたNiあるいはCoのいずれかある
いはその両方を主成分とするとともに更にCrとAlを
含み、前記基材より耐熱性および耐酸化性に優れたボン
ド層と、このボンド層上に設けられたセラミックス層と
を備え、前記ボンド層と前記セラミックス層との間に、
酸化熱処理により形成されたAl酸化物を主成分とする
酸化物層を介在させたことを特徴とするガスタービン翼
である。
【0017】請求項2記載の発明は、NiあるいはCo
のいずれかを主成分とする基材と、この基材上に設けら
れたNiあるいはCoのいずれかあるいはその両方を主
成分とするとともに更にCrとAlを含み、前記基材よ
り耐熱性および耐酸化性に優れたボンド層と、このボン
ド層上に設けられたセラミックス層とを備え、前記ボン
ド層と前記セラミックス層との間に、酸化熱処理により
形成されたAl酸化物を主成分とする酸化物層を介在さ
せたことを特徴とするガスタービン用高温材料である。
【0018】請求項3記載の発明は、NiあるいはCo
のいずれかを主成分とする基材を準備する工程と、この
基材の表面にNiあるいはCoのいずれかあるいはその
両方を主成分とするとともに更にCrとAlを含み、前
記基材より耐熱性および耐酸化性に優れたボンド層を形
成する工程と、このボンド層上にAlを拡散させる工程
と、拡散されたAlを酸化熱処理してAl酸化物を主成
分とする酸化物層を形成する工程と、この酸化物層上に
セラミックス層を形成する工程と、を備えたことを特徴
とするガスタービン用高温材料の製造方法である。
【0019】
【作用】請求項1および2記載の発明によれば、Niあ
るいはCoいずれかを主成分とする基材上に設けられ、
NiあるいはCoいずれかあるいはその両方を主成分と
し更にCrとAlを含むボンド層上に、Al酸化物を主
成分とする酸化物層を予め形成したことにより、高温酸
化および熱衝撃環境において高温材料を使用した場合、
この酸化物層に新たな酸化物が形成されることはなく、
このため酸化物層上に形成されたセラミックス層の剥離
を確実に防止することができる。
【0020】請求項3記載の発明によれば、Niあるい
はCoのいずれかを主成分とする基材上に、Niあるい
はCoのいずれかあるいはその両方を主成分とし更にC
rとAlを含むボンド層を形成し、このボンド層上にA
lを拡散させ、拡散されたAlを酸化熱処理してAl酸
化物を主成分とする酸化物層を形成し、その後この酸化
物層上にセラミックス層を形成することにより、高温酸
化および熱衝撃環境において高温材料を使用した場合セ
ラミックス層のボンド層からの剥離を確実に防止するこ
とができる。
【0021】一般的に実際の使用環境下におかれたガス
タービンの動翼等の高温材料は、高温材料の基材の耐熱
温度を考慮して、基材の表面温度が最高800℃〜95
0℃となるように設計されている。すなわちガスタービ
ンの高効率化のために動作ガス温度を従来の1100℃
から1300℃〜1500℃へと高温化する場合であっ
ても、高温材料の基材合金の設計強度に対する制約から
基材表面温度は800℃〜950℃の範囲を越えること
ができない。したがって、ガスタービンの高温化のため
に動作ガス温度を上昇させる場合には、高温材料の基材
側の冷却効率を向上させると共に、TBCによる遮熱効
果を有効活用するのが一般的である。
【0022】高温材料の基材側の冷却効率を向上させる
方法として、たとえばガスタービンの動翼では動翼内部
を空気冷却するリターンフロー方式と呼ばれる手法が用
いられ、動翼全体が有効に冷却されるように考慮されて
いる。また内部の冷却空気がフィルム状に表面を包み込
み動作ガスからの伝熱を抑制するよう、動翼表面にフィ
ルム冷却孔が設けられる場合がある。このように、より
高温化したガスタービン用の高温材料では、冷却効率が
良好な冷却方式を用いて局部的な過熱を防止し、TBC
を併用して基材の合金表面温度が最大で800℃〜95
0℃になるよう設計されている。
【0023】一方、従来のTBCの耐剥離性についての
研究では、剥離特性評価試験は1000℃〜1200℃
の範囲で行なわれている。これは特性評価のための高温
酸化試験や熱サイクル試験の効率化を図るため、試験条
件を加速化して短時間で評価結果を得ようとするためで
ある。この場合、大気プラズマ溶接によって形成された
ボンド層の上に大気プラズマ溶射によってセラミックス
層を設けたTBCに対し、不活性ガス雰囲気中でプラズ
マ溶射したボンド層を有するTBCの効果は明瞭に把握
することができる。しかしながら、不活性ガス中でプラ
ズマ溶射により形成されたボンド層有するとともに、予
備酸化を併用した従来のTBCやAlの拡散浸透をボン
ド層に施した従来のTBCは1000℃〜1050℃で
は明瞭な効果を示さず1050℃を越える極端な条件で
剥離寿命が何割か増加する程度の有効性を示すだけであ
る。
【0024】これに対し本件発明者は、ガスタービンの
動翼表面温度、特にTBC中のボンド層表面温度に着目
し、TBCの厳密な評価を行なった。従来からよく知ら
れているように、高温化により酸化物の生成速度が著し
く上昇する。特に1000℃以上になると、Cr酸化物
が容易に分解するためボンド層表面では酸化物の生成と
分解が同時に生ずる。この結果、TBCの剥離寿命が低
下すると考えられる。
【0025】そこで本件発明者は1000℃を越える高
温化による加速評価試験によって評価を見誤らないよう
にするため、800℃〜980℃の実用温度範囲でTB
Cの寿命評価を行なった。この結果、800℃〜980
℃の温度範囲では、ボンド層のMCrAlY表面にAl
酸化物の他にCr酸化物が多量に生成され、これらの酸
化物の厚さは500H(時間)、1000H、2000
Hと高温熱処理時間が長くなるにつれて単調に増加する
ことが判明した。
【0026】これらの結果から酸化が放物線則に従うと
仮定する。
【0027】
【数1】 ただし x:酸化膜厚さ t:時間 (斉藤他:金属の高温酸化、内田老鶴圃,1986) (1)式から Paraboric Rate Constant K を求めると
(0.5〜3)×10-12 の範囲であった。また、分析
の結果、酸化物はCrとAlの混合酸化物であった。
【0028】これらの結果から単に予備酸化を行なって
も、セラミックス層とボンド層の中間に生ずる酸化物は
MCrAlY中のAlとCrの両方の酸化物であり、こ
のためAl酸化物単体を形成することができないことが
判明した。このような酸化膜は単調に増加するだけであ
り、予備酸化の効果はなくTBCの剥離原因となる。
【0029】次に本件発明者はAlの拡散浸透処理をボ
ンド層に施した後に、酸化熱処理を施した場合の評価を
行なった。酸化物の重量はほぼ200Hまでに飽和し、
その後の増加は微量であった。酸化物を分析した結果、
酸化物はほぼAl単体からなる酸化物であった。Parabo
ric Rate Constant を求めると(3〜5)×10-13
範囲であった。
【0030】これらの結果から、Alの拡散浸透処理を
ボンド層に施し、その後、酸化熱処理するとボンド層表
面温度が1000℃以下の場合、Alの拡散浸透層に生
成される酸化物層がほぼAl酸化物単体となった。また
Al酸化物の増加速度はきわめて遅く、このためTBC
の剥離寿命を飛躍的に改善することができた。
【0031】本発明によれば、高温酸化および熱衝撃環
境において、Al酸化物を主成分とする酸化物層に新た
な酸化物が形成されることはない。このため、酸化物上
に形成されたセラミックス層の剥離を確実に防止するこ
とができる。また酸化物層に新たな酸化物が形成するこ
とはないので、使用中における内部応力の発生が防止で
き、この点からもセラミックス層の寿命を長くすること
ができる。
【0032】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例につい
て説明する。図1および図2は本発明の第一の実施例を
示す図である。
【0033】図1において、ガスタービン用高温材料
は、Ni基耐熱合金からなる基材1と、基材1上に設け
られたNiCoAlY系の合金製ボンド層2と、ボンド
層2上に設けられた略Al単体の酸化物層3と、Al酸
化物層上に設けられZrO2 −7%Y2 3 からなるセ
ラミックス層4とからなっている。
【0034】このうちボンド層2の厚さは150μmと
なっており、酸化物層3の厚さは4μmとなっており、
またセラミックス層4の厚さは250μmとなってい
る。
【0035】次に、ガスタービン用高温材料の製造方法
について説明する。
【0036】まず、上述のNi基耐熱合金からなる基材
1上に、NiCoCrAlY系合金ボンド層(Ni−2
3%Co−17%Cr−12.5%Al−0.5%Y)
2を、不活性ガス雰囲気中でかつ50Torrの減圧条
件でプラズマ溶射して形成する。
【0037】その後、ボンド層2に対してAlの拡散浸
透処理が施される。具体的にはAl2 3 粉70wt
%、Al−Cr合金粉30et%および活性剤としてN
3 F、HFを微量添加したものを十分に混合し、この
粉末中に基材1を埋め、これらをレトルト中に納めてA
r雰囲気中で980℃、4時間保持する。このようにし
て、ボンド層2に対してAlの拡散浸透処理が施され
る。
【0038】その後、基材1を大気中で950℃、80
時間、過熱する(酸化熱処理する)ことにより、Alの
拡散浸透層にAl2 3 層が形成される。
【0039】次にAl2 3 層上に、ZrO2 −7%Y
2 3 からなるセラミックス層を大気中でプラズマ溶射
により形成する。その後、再び全体を過熱してボンド層
2の拡散熱処理を施す。
【0040】このようにして、図1に示すようなガスタ
ービン用高温材料が得られる。このガスタービン用高温
材料は、ガスタービン用の動翼または静翼等の翼として
用いられる。
【0041】次にこのような高温材料からなる翼に対し
て、セラミックス層4の剥離実験を行なった。この実験
は次のように行われた。
【0042】まず、過熱源により高温材料のセラミック
ス層4表面を過熱し、基材1側を空気冷却した。過熱条
件を種々変化させ、ボンド層2表面の温度を熱電対によ
って計測した値を過熱温度とした。セラミックス層4表
面の過熱保持時間を40分とし、その後過熱を中断して
空冷し、160℃まで冷却した。これを1サイクルとし
て、セラミックス層4が剥離するまでのサイクル数を求
めた。
【0043】これらの過熱温度、冷却温度、および剥離
までのサイクル数を図2に示す。
【0044】図2において、試料No. 11〜14が本発
明による高温材料である。比較のため、図2に比較例1
(試料No. 1〜5)および比較例2(試料No. 6〜1
0)のセラミックス層の剥離までのサイクル数を示す。
【0045】比較例1および比較例2は、次のようにし
て製造される。比較例1は従来のものと同様であり、N
iCoCrAlY系合金ボンド層(Ni−23%Co−
17%Cr−12.5%Al−0.5%Y)を、Ni基
の耐熱合金からなる基材1に大気中のプラズマ溶射にて
形成し、この上にZrO2 −7%Y2 3 からなるセラ
ミックス層を同じく大気中プラズマ溶射にて形成するこ
とにより得られる。
【0046】比較例2も従来のものと同様であり、Ni
CoCrAlY系ボンド層(Ni−23%Co−17%
Cr−12.5%Al−0.5%Y)を不活性ガス雰囲
気中のプラズマ溶射(ここでは均一被覆のため50To
rrに減圧)によりNi基耐熱合金からなる基材1上に
形成し、その後大気プラズマ溶射によりZrO2 −7%
2 3 からなるセラミックス層を形成し、更に、11
00℃、3時間過熱してボンド層と基材との間の拡散熱
処理を行なうことにより得られる。
【0047】図2に示すように、ボンド層2を形成する
ために大気中のプラズマ溶射を用いた比較例1(試料N
o. 1〜5)は、きわめて短いサイクルでセラミックス
層の剥離が生じた。比較例1の剥離組織を調査したとこ
ろ試料No. 1,2,3,4では主にCr酸化物からなる
酸化層が中間に厚く形成されていた。他方、試料No. 5
はCr酸化物とAl酸化物が共に認められた。
【0048】比較例2(試料No. 6〜10)は、比較例
1に比べて改善が認められるが、耐剥離性はさほど大き
くない。比較例2の剥離組織調査では、試料No. 6〜9
においてCr酸化物の多い酸化物層が認められ、試料N
o. 10においてはAl酸化物とCr酸化物が共に認め
られた。
【0049】また本発明(試料No. 11〜14)は、比
較例2に比べて2〜3倍の剥離寿命を示した。しかしな
がら、過熱温度が1100℃の試料No. 14は過熱温度
1090℃の試料No. 10に比して改善はさほど大きく
ない。本発明(試料No. 11〜14)の剥離組織調査で
は、セラミックス層4とボンド層2との間にAl酸化物
を主とする酸化物が薄く金域に生成しているのか認めら
れた。
【0050】次に本発明、比較例1および2の各々の高
温材料に対して、別途酸化試験を行なった。いずれも過
熱温度は図2と同様とし、過熱保持時間は200時間と
した。
【0051】酸化試験の結果、比較例1の場合はセラミ
ックス層4に剥離が認められた。一方、比較例2および
本発明の場合、セラミックス層4の剥離は生じなかっ
た。しかしながら酸化試験の各試料を切断し酸化物層の
観察を行なったところ、酸化物の種類および形態は熱サ
イクル試験の結果と一致した。
【0052】以上説明したように、本実施例によれば、
ボンド層2上に予め薄く均一なAl酸化物層3を形成し
たことにより、高温酸化および熱衝撃環境において使用
した場合Al酸化物層3に新たな酸化物が形成されるこ
とはない。このため、新たな酸化物形成によるセラミッ
クス層の剥離が防止でき、また酸化形成によって内部応
力が生じることはない。
【0053】次に本発明の第2の実施例について説明す
る。
【0054】上述の実施例と同様の試料を準備し、電子
ビーム蒸着法を用いてボンド層2を形成し、その表面に
Al拡散温度処理および酸化熱処理によりAl酸化物層
を形成し、その後セラミックス層4を同じく電子ビーム
等を用いた真空蒸着法にて形成した。この場合も上述の
実施例と同様の効果を得ることができる。
【0055】なお、Al拡散浸透処理において、前述の
気相拡散法の他に真空化学蒸着、いわゆるCVD法を用
いてもよい。また、基材として、Ni基耐熱合金によら
ず、同様の目的で一般に用いられるCo基耐熱合金を用
いてもよい。また、ボンド層2に用いる合金はMCrA
lYと称されるNi、CoあるいはNiCo、CoNi
をベースとし、Cr、Alを4〜30%加え、Y、H
f、Ta、Siを0〜5%加えたものが望ましい。また
高温材料の各層の厚さは、ボンド層2が40〜800μ
m、酸化物層3が0.5〜15μm、セラミックス層4
が80〜1000μmとなっていることが望ましい。
【0056】またAlの拡散浸透層に対する酸化処理条
件として、1000℃を越えるとAl酸化物の成長速度
が速すぎて薄いAl酸化層を均一に形成することが困難
となる。また局部的にAlが欠乏した位置ではCr酸化
物が形成され、この点からも薄い均一なAl酸化層の形
成が難しい。また800℃未満ではAl酸化層の形成が
きわめて遅い。このようにAl酸化層の形成に長時間を
要するため、実用的でなく、また均質なAl酸化膜の形
成が妨げられる。またAl拡散浸透層に対する酸化処理
時間は、10〜20時間程度が膜厚の観点から望まし
い。
【0057】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
高温酸化および熱衝撃環境において、Al酸化物を主成
分とする酸化物層に新たな酸化物が形成されることはな
い。このため、酸化物上に形成されたセラミックス層の
剥離を確実に防止することができる。また酸化物層に新
たな酸化物が形成することはないので、使用中における
内部応力の発生が防止でき、この点からもセラミックス
層の寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるガスタービン用高温材料の一実施
例を示す断面図。
【図2】本発明によるガスタービン用高温材料に対する
剥離実験の実験結果を示す図。
【符号の説明】
1 基材 2 ボンド層 3 Al酸化物層 4 セラミックス層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石 井 潤 治 神奈川県横浜市鶴見区末広町2丁目4番地 株式会社東芝京浜事業所内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】NiあるいはCoのいずれかを主成分とす
    る基材と、 この基材上に設けられNiあるいはCoのいずれかある
    いはその両方を主成分とするとともに更にCrとAlを
    含み、前記基材より耐熱性および耐酸化性に優れたボン
    ド層と、 このボンド層上に設けられたセラミックス層とを備え、 前記ボンド層と前記セラミックス層との間に、酸化熱処
    理により形成されたAl酸化物を主成分とする酸化物層
    を予め介在させたことを特徴とするガスタービン翼。
  2. 【請求項2】NiあるいはCoのいずれかを主成分とす
    る基材と、 この基材上に設けられNiあるいはCoのいずれかある
    いはその両方を主成分とするとともに更にCrとAlを
    含み、前記基材より耐熱性および耐酸化性に優れたボン
    ド層と、 このボンド層上に設けられたセラミックス層とを備え、 前記ボンド層と前記セラミックス層との間に、酸化熱処
    理により形成されたAl酸化物を主成分とする酸化物層
    を予め介在させたことを特徴とするガスタービン用高温
    材料。
  3. 【請求項3】NiあるいはCoのいずれかを主成分とす
    る基材を準備する工程と、 この基材の表面にNiあるいはCoのいずれかあるいは
    その両方を主成分とするとともに更にCrとAlを含
    み、前記基材より耐熱性および耐酸化性に優れたボンド
    層を形成する工程と、 このボンド層上にAlを拡散させる工程と、 拡散されたAlを酸化熱処理してAl酸化物を主成分と
    する酸化物層を形成する工程と、 この酸化物層上にセラミックス層を形成する工程と、 を備えたことを特徴とするガスタービン用高温材料の製
    造方法。
  4. 【請求項4】約800℃以上でかつ約1000℃以下の
    条件で酸化熱処理して酸化物層を形成することを特徴と
    する請求項3記載のガスタービン用高温材料の製造方
    法。
  5. 【請求項5】気相拡散法によりボンド層上にAlを拡散
    させることを特徴とする請求項3記載のガスタービン用
    高温材料の製造方法。
  6. 【請求項6】真空蒸着法によりボンド層上にAlを拡散
    させることを特徴とする請求項3記載のガスタービン用
    高温材料の製造方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009511752A (ja) * 2005-10-20 2009-03-19 フォルシュングスツェントルム・ユーリッヒ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング 多層断熱層系及びその製造方法

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JP2009511752A (ja) * 2005-10-20 2009-03-19 フォルシュングスツェントルム・ユーリッヒ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング 多層断熱層系及びその製造方法

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