JP4072213B2 - α−Al2O3スケールを生成させることにより断熱皮膜とボンディングコートとの間の密着性を高める、ガスタービンエンジンでの使用に適した製品の製造方法 - Google Patents

α−Al2O3スケールを生成させることにより断熱皮膜とボンディングコートとの間の密着性を高める、ガスタービンエンジンでの使用に適した製品の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、概括的には、金属基板用のセラミックコーティング系に関するものであり、より詳細には、超合金製の動翼や静翼などの、ガスタービンエンジンの金属部品用の防護多層セラミック断熱皮膜系に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知の通り、ガスタービンエンジンの出力及び効率は一般に公称作動温度の上昇に伴って増大するが、タービンがどれだけ高い温度で作動し得るかは、タービン部品(特に静翼と動翼)が衝突高温ガス流の熱、酸化及び腐食作用にどれだけ耐えられ、しかも充分な機械的強度を維持し得るかによって制限される。そのため、より高い温度及び応力で作動する高性能ガスタービンにおいて充分に機能するような部品に使用するための先端材料系を見出すことが絶えず必要とされている。
【0003】
改良タービン部品を提供する一つの方法は、その部品の形状をした強くて安定な基板(substrate) を製造し、高温燃焼ガス流の酸化及び腐食作用に耐える薄い保護皮膜で基板を被覆することである。被覆される基板(通常ニッケル基又はコバルト基超合金組成物)は、かつては通常の鍛造法又は単純な鋳造法で成形されていたが、現在では一方向凝固法で製造した冷却翼の使用によって向上した性能が得られている。早期故障を引き起こすおそれのある結晶粒界を全くもたない単結晶として基板を鋳造し、所要とされるクリープ破断寿命及び疲労寿命を満足するように単結晶配向を選択することによって、さらに高い作動温度が得られる。
【0004】
遮蔽セラミック皮膜を設けると、冷却翼に伝達される熱量が低減し、冷却空気の必要性(性能には不利である)が低減するので、タービン性能がさらに向上する。また、セラミック皮膜は超合金部品内の金属温度及び熱応力を最小限に抑えるのでタービン部品の耐久性も高まる。
一般に、最近のセラミック皮膜系は、最良の組合せの効果が得られるように、幾つかの組成及び性質の異なる層を有している。例えば、一つの層は遮蔽効果を与えるために比較的厚くて多孔質とし得るが、それ自体は酸化、浸食又は腐食に対する耐性をほとんど与えない。かかる層の外表面に薄くて硬い緻密な表面層を施すことによってエロージョンから保護することができる。
【0005】
一般に、高温燃焼ガス流の酸化作用に対して耐性を示す酸化アルミニウムのような接着性酸化物スケールの形成によって基板を保護するため、セラミックの下には薄い金属層(すなわちボンディングコート)が施されている。かかるボンディングコートに存在するその他の元素は、ガスタービンの幾多の始動と停止のサイクルの間ずっと基板にセラミック保護皮膜が接着する能力に寄与する。
【0006】
高温でのセラミック皮膜の寿命は、ボンディングコート上での酸化物スケールの過度の成長並びに金属ボンディングコートと遮蔽セラミック層との間の境界域で発生するきずによって制約される。熱で誘起される境界域での劣化と、熱的過渡現象及びセラミック−超合金間の熱膨脹性の不一致による応力とが相俟って最後は遮蔽層のスポーリングに至る。
【0007】
以上の従来技術についての総括的説明から明らかな通り、高性能ガスタービンエンジンにおける厳しさを増す一方の作動条件に適応するには、コーティング系(皮膜系)の効力と耐用寿命の双方をさらに一段と改良する必要がある。
そこで、ボンディングコートに対する断熱皮膜の密着性を高めることによって、ガスタービンエンジン部品用のセラミックベースの皮膜系の質的向上を図るための新規な改良法を提供することが一般に望まれている。
【0008】
【発明の目的】
したがって、本発明の目的は、金属基板にセラミックコーティングを施すための改良法を提供することである。ボンディングコートに対する断熱皮膜の密着度が、この技術の高温環境下での利用拡大に対して大きな障壁となっている。
【0009】
【発明の概要】
超合金基板上のボンディングコートに対して優れた密着性をもつ断熱皮膜を与えるような、皮膜系、被覆製品並びに方法が提供される。ボンディングコートと断熱皮膜(thermal barrier coating;TBCと略)との接着はボンディングコート/TBC境界に成熟(mature)α−Al23(菱面体晶)スケールを生成させることによって達成される。ボンディングコートに対する断熱皮膜の密着性は、▲1▼ボンディングコートの予備酸化、▲2▼ボンディングコート表面の接種、▲3▼ボンディングコート表面の表面ドーピング(もしくは合金化)、及び▲4▼貴金属の添加、の工程のいずれか一つ以上を利用することによって高められる。上記の工程はいずれもα−Al23生成を増進するが、それにより望ましくない酸化物の相変態が阻止されてボンディングコートに対するTBCの密着性が改良される。
【0010】
【発明の実施の形態】
上述の通り、タービンブレードのような金属基板が金属製ボンディングコートで被覆される。金属基板は好ましくはニッケル基超合金又はコバルト基超合金である。ただし、分散強化合金、複合材及び一方向凝固共晶も本発明により保護し得る。
【0011】
NiCrAlY又はCoCrAlYからなる金属ボンディングコートは、好ましくは、米国特許第4055705号(その開示内容は文献の援用によって本明細書の内容の一部をなす)に記載されているようなプラズマ溶射法で基板表面に析出させる。しかし、基板に金属ボンディングコートを施すには、クラッド法、スラリー吹付法及び焼結法も使用し得る。厚さ約0.003〜0.007インチのNiCrAlYボンディングコートで満足のいく結果が得られている。金属ボンディングコートは、例えば、Bungardt他の米国特許第3677789号(その開示内容は文献の援用によって本明細書の内容の一部をなす)に開示されているようなCVD(chemical vapor deposition) 又はパック拡散浸透(pack cementation)処理で施工又は析出させた白金アルミニド又は拡散アルミニドでもよい。白金アルミニドのボンディングコートは好ましくは厚さ0.001〜0.004インチである。
【0012】
断熱皮膜は好ましくはイットリアで安定化されたジルコニアである。断熱皮膜は1990年10月30日発行のKojima他の米国特許第4966820号(その開示内容は文献の援用によって本明細書の内容の一部をなす)に開示されている。断熱皮膜は、溶射又は電子ビーム物理蒸着(electron bean physical vapor deposition;EBPVD)で施すことができる。イットリア安定化ジルコニアのスパッタリングは、電気推進技術から発展したタイプの電子衝撃イオン源からの直径10cmのアルゴンイオンビームを用いて行うことができる。このようなイオン源は、H.R.Kaufman著,「Advanced in Electronics and Electron Physics」第36巻365〜373頁に記載されている。ビーム抽出は、皿形二重グリッドイオン光学系(dished, two-grid ion optics system)で達成できる。このような系は、「A 30 cm Diameter Argon Ion Source」と題するAIAA Paper No.76−1017に記載されている。イオンビームの中和はプラズマブリッジニュートラライザー(plasma bridge neutralizer) を用いて行なうことができる。
【0013】
好適な断熱皮膜には、ZrO2 を主成分とし、Y23(例えば4〜20重量%)、MgO(例えば4〜24重量%)又はCaO(例えば4〜8重量%)を副成分とするセラミックスがある。典型的なイットリア安定化ジルコニアは、ジルコニアとイットリアの合計重量を基準にして、6〜30重量%のイットリア、さらに好ましくは6〜20重量%のイットリア、最も好ましくは6〜10重量%のイットリアを含有している。断熱層の厚さは1〜1000ミクロンの範囲から選択し得るが、好ましくは50〜300ミクロンの範囲から選択される。好適な断熱皮膜は1989年11月14日発行のStrangman他の米国特許第4880614号(その開示内容は文献の援用によって本明細書の内用の一部をなす)に開示されている。
【0014】
ボンディングコートは、MCrAlY合金の金属層と、その金属層上の連続的接着性アルミナ層(その場で(in situ) 形成されたもの)と、そのアルミナ層上の特定の柱状又はラメラ形態の不連続な純粋セラミック層からなる。
金属層はMCrAlY合金からなるが、この合金は広い範囲の組成を有していて、クロムは10〜30%、アルミニウムは5〜15%、イットリウム(又はハフニウム、ランタン、セリウム及びスカンジウム)は0.01〜1%で、残余を構成するMは鉄、コバルト、ニッケル及びそれらの混合物からなる群から選択される。その他の元素も少量存在し得る。このような合金を単独で保護皮膜として使用することは従来技術で知られており、米国特許第3542530号、同第3676085号、同第3754903号及び同第3928026号など、多数の米国特許に記載されている(これらの米国特許の開示内容は文献の援用によって本明細書の内容の一部をなす)。また、Bungardtの米国特許第3677789号(その開示内容は文献の援用によって本明細書の内容の一部をなす)に開示されているような白金アルミニド層も好適である。
【0015】
断熱皮膜は各種の金属基板又はセラミック基板に適している。断熱皮膜は、好ましくは、ニッケル基超合金基板を主体とする部品の様々な用途のいずれにおいても、超合金基板を被覆するボンディングコートのオーバーレイコートとして施される。このような用途の一つが、図1に示すジェットエンジンガスタービンブレード(10)(部品、製品)上の断熱皮膜である。ブレード(10)の基板は好適な超合金で形成できる。そうした超合金の一例がルネ80(Rene′ 80)という周知のニッケル基超合金であり、その公称組成は、14重量%クロム、9.5重量%コバルト、5重量%チタン、4重量%タングステン、4重量%モリブデン、3重量%アルミニウム、0.17重量%炭素、0.06重量%ジルコニウム、0.015重量%ホウ素、残部のニッケルである。別の例は、もっと先進的なニッケル基超合金であり、例えば、7.5重量%コバルト、9.0重量%クロム、3.7重量%アルミニウム、4.2重量%チタン、1.5重量%モリブデン、4.0重量%タンタル、6.0重量%タングステン、0.5重量%ニオブ、残部のニッケルという組成を有するルネN4(Rene′ N4)である。
【0016】
これらの基板超合金は例として挙げたものに過ぎず、皮膜はこれらの基板での使用だけに限定されることはない。好ましい材料は市販されている周知の合金であるルネNS(Rene NS)である。
好適なニッケル基超合金は40〜80重量%のニッケル、5〜20重量%のクロムを必須成分として含んでおり、任意成分として10重量%以下のモリブデン、5.5重量%以下のチタン、6.5重量%以下のアルミニウム、3重量%以下のニオブ、9重量%以下のタンタル、13.5重量%以下のタングステン、2重量%以下のハフニウム、6重量%以下のレニウム、20重量%以下のコバルト、3重量%以下の鉄を含有し得る。ニッケル基合金は、また、少量の炭素、ホウ素、ジルコニウム、ケイ素及びマンガンを含有していてもよい。また、イオウ、銅及びリンのような望ましくない不純物を微量含んでいる可能性もある。
【0017】
本発明の複合製品のコアの基板として使用するのに好ましい合金は、いわゆるコバルト基超合金から選択される。これらの合金は、50〜75重量%のコバルト、20〜30重量%のクロム、約10.5重量%以下のニッケル、10重量%もしくは11重量%以下のタングステンを必須成分として含んでいる。通常は、少量(すなわち1重量%未満)の炭素、マンガン及びケイ素も含まれている。さらに、チタン、ホウ素、ケイ素、鉄、タンタル及びニオブの1種類又はそれ以上が合計で約6重量%又は7重量%以下含まれていることが多い。また、少量のイオウ、銅又はリンといった不純物が含まれていることもある。好適な基板の具体例はShockley他の米国特許第3955935号(その開示内容は文献の援用によって本明細書の内用の一部をなす)に記載されている。
【0018】
上述の通り、被覆製品(ブレード)(10)は、(a)基板(22)、(b)基板(22)上の断熱皮膜(26)、及び(c)基板(22)と断熱皮膜(26)の間に存在するボンディングコート(24)を有する。
図2に示す通り、被覆製品は、(a)超合金基板(22)、(b)ボンディングコート(24)、(c)α−Al23境界層(28)、及び(d)断熱皮膜(26)からなる。好ましくは、超合金基板の厚さは>20ミルであり、ボンディングコートの厚さは2〜4ミルであり、境界の厚さは0.01〜0.25ミルであり、断熱皮膜の厚さは5〜15ミルである。
【0019】
本発明の密着力増大法では、ボンディングコート/TBC境界に成熟α−Al23(菱面体晶)スケールを形成してその密着性を高めるために、以下の工程:▲1▼予備酸化、▲2▼接種、▲3▼表面ドーピング(すなわち合金化)及び▲4▼貴金属のうちの一つ又はそれ以上の工程を用いる。
▲1▼予備酸化。ボンディングコートの予備酸化はTBCの析出前に実施するべきである。予備酸化は、熱サイクリングなしに、酸素に富んだ環境中で1000℃を上回る温度で1時間を超える時間をかけて実施するべきである。熱サイクリングは、ボンディングコート酸化物の破砕を引き起こす結果となる。減圧環境(真空)は必要ない。高い全圧(オートクレーブ)で予備酸化すると有利であるかもしれない。この操作は、ボンディングコート中のクラックや細孔を癒合し、原子体積の低いα−Al23相を熱力学的に安定化し得る。
【0020】
▲2▼接種。酸化物粒子のサブミクロンディスパージョンを(スラリー法、内部酸化法、有機金属化学蒸着(MOCVD)法、EBPVD法によって)配置することで、ボンディングコート酸化物を接種することができよう。サブミクロン酸化物は核形成部位として機能し、α−Al23生成の動力学的障壁を低下させる。α−Al23と結晶構造の同じ酸化物が最も有効であり、その例としてα−Al23、α−Fe23 、Y23及びCr23が挙げられる。
【0021】
▲3▼表面ドーピング。α−Al23と同じ結晶構造をもつ酸化物を生成させるために、Alよりも酸化速度の速い元素をボンディングコートの表面に添加(例えば、薄層メッキ処理、イオン注入処理又はスパッタリング処理)することができる。このような元素としてはFe、Cr及びYが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0022】
▲4▼貴金属。生成すべきAl23以外の酸化物(例えばNiOやCr23)の量を低減させると、α−Al23生成への移行が速くなる。安定な固体酸化物を形成しない金属によってこの偉業は達成される。
これらの工程はα−Al23の生成を増進し、それにより酸化物相変態が阻止されるのでボンディングコートに対するTBCの密着性が改良される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による皮膜をもつタービンブレードの透視図
【図2】 図1のブレードの線2−2に沿っての断面図
【符号の説明】
10 ジェットエンジンガスタービンブレード(被覆部品、製品)
22 超合金基板
24 ボンディングコート
26 断熱皮膜
28 α−Al23境界層

Claims (4)

  1. 超合金基板(22)と該基板上の金属ボンディングコート(24)と該ボンディングコート上の遮蔽セラミック断熱皮膜(26)とを含む、ガスタービンエンジンでの使用に適した製品(10)の製造方法であって、
    上記ボンディングコート(24)を酸素に富む環境中で1時間を超える時間1000℃を上回る温度で予備酸化し、次に、
    α−Al23生成の核形成部位として機能するα−Al23、α−Fe23、Y23及びCr23から選択される酸化物粒子のスラリーを前記ボンディングコートの表面に塗布することによって該表面に前記酸化物粒子を配置し、ボンディングコート(24)の表面にAlよりも酸化速度の速いFe、Cr及びYから選択される元素を施すことによって表面ドーピングし、次に、
    上記ボンディングコートに少なくとも1種類の貴金属を添加してα−Al23の生成を促して、α−Al2O3スケールを生成させることにより前記断熱皮膜(26)とボンディングコート(24)との間の密着性を高める、製造方法。
  2. 前記ボンディングコート(24)が、(i)アルミナイド化MCrAlY(ここで、MはNi、Co及びFeから選択される)、(ii)MCrAlY(ここで、MはNi、Co及びFeから選択される)、(iii) 拡散アルミナイド及び(iv)白金変性拡散アルミナイドからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
  3. 前記断熱皮膜(26)がY23で安定化されたZrO2 である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記予備酸化を1気圧より高い圧力で実施する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
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