JPH0754182A - 電解用電極基体及びその製造方法 - Google Patents

電解用電極基体及びその製造方法

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JPH0754182A
JPH0754182A JP5218169A JP21816993A JPH0754182A JP H0754182 A JPH0754182 A JP H0754182A JP 5218169 A JP5218169 A JP 5218169A JP 21816993 A JP21816993 A JP 21816993A JP H0754182 A JPH0754182 A JP H0754182A
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  • Electrolytic Production Of Metals (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 従来から電極基体を保護するための障壁であ
る中間層を基材と電極物質相間に形成することが試みら
れている。しかしいずれも欠陥があり、満足できる性能
の障壁を有する電極が要請されていた。本発明は、高電
流密度で主として酸素発生反応に使用する耐久性と耐フ
ッ素性を有しかつ電流逆転に対する耐性を有する電極基
体とその製造方法を提供することを目的とする。 【構成】 金属基材上に金属チタンと酸化チタンとを含
む部分酸化物である厚さ50から200 μmの溶射層を形成
する。該溶射層は電解時に陽極で発生する酸素イオンの
移動を防止し不働態化を遅らせて電極寿命を長くする。
更に前記部分酸化物は酸素不足により導電性酸化物とな
り、その結果良好な耐ハロゲン性及び逆電流耐性が得ら
れる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、本発明は、耐久性を有
する電解用電極基体及びその製造方法に関し、より詳細
には高電流密度で主として酸素発生反応に使用する耐久
性と耐フッ素性を有しかつ電流逆転に対する耐性を有す
る電解用電極基体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術とその問題点】工業電解特に無機酸を主体と
する電解は金属の電解製錬、電気めっき、有機物及び無
機物の電解合成等極めて広い範囲で行われている。これ
らの電解用電極特に陽極として鉛又は鉛合金電極、白金
めっきチタン電極、カーボン電極等が提案されているが
いずれの電極も欠点があり、幅広い用途の電解には使用
されていない。例えば鉛電極は表面に比較的安定で良導
電性である二酸化鉛が形成されるが、この二酸化鉛も通
常の電解条件で数mg/AHの溶解があり、しかも過電
圧が大きいという欠点がある。又白金めっきチタン電極
は高価なわりに寿命が短く、更にカーボン電極は陽極反
応が酸素発生反応であると該カーボン電極が発生酸素と
反応して二酸化炭素として自身を消耗させかつ導電性が
悪いという欠点がある。これらの各電極の欠点を解消す
るために寸法安定性電極(DSE)が提案され幅広く使
用されている。
【0003】このDSEはチタンに代表される弁金属を
基体とし陽極として使用される限りは、表面が不働態化
し、化学的に極めて安定な長寿命電極として機能する。
しかし該DSEも陰極として使用され陰分極を受ける
と、発生する水素と反応して水素化物となり基体自体が
脆弱化したり腐食により表面の被覆が剥離したりして電
極寿命を著しく縮めることになり、特に正負が反転する
つまり電流方向が反転する電解にDSEを使用する際の
大きな欠点となっている。更にフッ素やフッ化物等ある
種のハロゲンイオンが存在し又はアルコールやアルデヒ
ド類などの有機物が存在する液中で電解を行うと、それ
らの量が微量でも基体の異常腐食が起こったり活性溶解
を起こして表面に形成された電極物質を剥離させ、短期
間で通電不能になるという問題があった。
【0004】又10〜20KA/m2 という極めて大きな電
流密度で使用すると電極物質と基体間の界面が不働態化
してしまい、最終的に通電不能になるという問題点があ
り、この問題点を解決するために本発明者らは基体表面
に酸素障壁層として、白金の薄層を設けたり、予め基体
表面を半導性の酸化物になるように改質してたとえ不働
態化しても通電が可能になる構造としたり、酸化スズの
ような酸化状態で極めて安定であると共に導電性を失わ
ない中間層を有したりする電極を提案した。
【0005】これらの電極は極めて有効であり、中間層
又は基体を改質しない電極と比較して2〜10倍又はそれ
以上の電極寿命を有することが確認されている。しかし
ながらこのような大電流密度下では改質層や中間層を有
していてもそれらを通して基体側に不働態層を数μmの
厚さで形成し電極物質が活性を維持しているにもかかわ
らず、通電不能に陥る場合がしばしば認められ、より長
寿命で電極物質をより有効に使用するためのより効果的
な表面改質法や中間層形成法が要請されていた。又電解
条件によっては、必然的に逆電流が生ずることがあり、
その場合は例えば酸化スズは瞬間的に還元されて脱離
し、改質層も比較的容易に電極物質を脱落させるという
問題点を有していた。
【0006】更にこれらの中間層や改質層は、前述の有
機物やある種の腐食性のハロゲン化物に対して耐性を有
するものの決して十分でなく、前記中間層や改質層が薄
いため、基体自体の耐食性に頼ってしまうという問題点
があった。前述の従来技術の欠点、特に中間層の不働態
化を防止するためにタンタルの線材を溶射して中間層を
形成する方法が提案されている(特開平5−156480
号)。このタンタル溶射では金属タンタルと酸化タンタ
ルの混合した部分酸化物からなる中間層が形成されると
報告されている。しかしタンタルは酸化されやすくつま
り他の金属より不働態化が進行しやすく、特に過酷な条
件下での使用では長寿命を期待できず、更に高価である
ため用途が限定されてしまうという欠点を有している。
【0007】
【発明の目的】本発明は、従来の電極基体特にDSE等
の基体に関する前述の問題点を解消し、高電流密度下で
の十分な耐久性と化学的な安定性並びに正負反転を伴う
電解等における陰分極下での使用に対して安定で長期間
使用できる電解用電極基体及びその製造方法を提供する
ことを目的とする。
【0008】
【問題点を解決するための手段】本発明は、予め粗面化
した導電性金属基材上に、金属チタン及び酸化チタンと
を含む部分酸化物である厚さ50から200 μmの溶射層を
形成したことを特徴とする電解用電極基体及びその製造
方法である。
【0009】以下本発明を詳細に説明する。本発明によ
り金属チタンと酸化チタンを含む溶射層を金属基材上に
形成すると、該溶射層がアーク溶射やプラズマ溶射独自
の緻密で実質表面積が大きく、電解での使用時に実質的
な電流密度を下げることができ、更に金属による良好な
導電性及び溶射層と基材金属との強固な付着性を確保で
き、かつ多量に存在する金属に起因する部分酸化物の酸
素不足による導電性酸化物形成により生ずる良好なフッ
素を含む耐ハロゲン性及び逆電流耐性を有する電解用電
極基体が得られ、更にチタンの有する通常の電解条件に
おける耐酸化性のため不働態化の進行が抑制され、長期
間の使用が可能になる。
【0010】本発明で使用する導電性金属基材は、電極
としての使用時に表面に形成される溶射層により隔離さ
れるため導電性であれば通常は特に制約されないが、溶
射層の厚さが最大でも200 μm程度で時としてピンホー
ルの存在の可能性もあり例えば強酸中で陽極として使用
される場合は比較的耐食性の高いチタンで代表される弁
金属を使用することが望ましく、特に加工性が良好で、
比較的価格の安いチタンやチタン合金の使用が望まし
い。勿論他の電解ではニッケルやステンレス又は商品名
ハステロイ等の耐食合金も目的に応じて使用できること
はいうまでもない。
【0011】この金属基材上に溶射層を形成するに先立
って、該基材表面の粗面化を行う。前記溶射層は表面層
としては厚い50〜200 μmの厚さを有するため該溶射層
を保持しより強固な付着性を得るためのアンカー効果及
び前記基材と該溶射層との強い化学結合を得るために前
記粗面化を行う。代表的な粗面化法として物理的方法と
化学的方法とがある。この粗面化は粗面化後の基材表面
に不純物が残らないこと及び化学的に不安定な加工層が
残らないよう注意して行う。粗面化の程度は特に限定さ
れないが、JISRa =10〜20μm、JISRmax =50
〜200 μm程度が望ましい。
【0012】前述の粗面化の物理的方法としては、例え
ばブラストによる粗面化があり、アルミナ等のセラミク
スサンドにより基材表面を研磨して凹凸を形成する。こ
のブラスト法の場合には、最終的に生成する電極の基材
表面まで電解液が浸透する可能性を考慮してブラスト粉
として酸やアルカリに耐性のあるアルミナやシリカを使
用することが好ましい。アルミナ等を使用するとたとえ
粉末が基材表面に残留しても電極として異常溶出が起こ
ることがなく安定に使用することができる。勿論表面に
食い込んだこれらの粉末の残留を防止するために酸洗処
理等を行うことは更に望ましい。
【0013】又前述の化学的粗面化法は薬品で基材表面
に凹凸を形成して粗面化する方法である。例えばチタン
やチタン合金を基材とする場合には、85〜90℃程度の約
20%の塩酸水溶液中に予め洗浄した前記基材を浸漬し数
時間保持することにより粒界腐食を起こして粗面化が行
われる。又基材がチタンやステンレスの場合には40〜60
℃の程度の約10%のヨウ素酸水溶液に前記基材を浸漬す
ることにより、所謂ピッティングコロージョンを起こし
て表面が粗面化される。
【0014】次いでこの粗面化された基材表面に金属チ
タンと酸化チタンを含む溶射層をアーク溶射やプラズマ
溶射等により形成して電極基体とする。使用する溶射粉
の粒度は目的に応じて選択すればよいが、勿論電極基体
である以上、実質表面積が大きい方が望ましい。電極基
体としての表面粗度はほぼJISRmax ≧100 μm、J
ISRa ≧10μmであることが望ましく、この表面粗度
を達成するためには、粒径が20〜100 μmの溶射粉を使
用することが好ましいが線材を溶射することも可能であ
る。粒径が20μm未満であると緻密な溶射層が形成でき
るが、表面粗度が小さくなり溶射時の酸化が進行しすぎ
る可能性がある。一方100 μmを越えると、緻密で貫通
孔のない溶射層の形成が困難になる。又溶射材料を金属
のみとする場合は、アーク溶射法により金属ワイヤを原
料として溶射層を形成することができる。この場合は、
プラズマ溶射より緻密性が5〜10%程度劣るが、その分
表面の凹凸が大きくなるという特徴があるので、用途に
応じて選択できる。
【0015】形成される溶射層の厚さは50〜200 μmが
適当であり、50μm未満であると貫通孔が残る恐れが大
きく、又200 μmを越えると溶射層が重くなり過ぎ、剥
離しやすくなり、場合によっては電気抵抗が大きくなる
という問題点がある。通常のプラズマ溶射により溶射物
を形成すると、溶射物自体は強い還元性雰囲気にあり、
該雰囲気では酸化物生成はないが、実際の被覆形成時に
は冷却過程で金属が酸化物に変換されやすく酸化物表面
が形成されることがある。従来はこの酸化物形成を防止
するために窒素やアルゴン等の不活性ガスをシールガス
として使用し酸化を抑制していた。
【0016】これに対し本発明では、むしろ積極的にこ
の酸化物を形成する現象を利用し、金属チタンを溶射す
るのみで溶射チタンの一部を酸化チタンに変換して非化
学量論な組成化を進め導電性酸化物を含む溶射層の形成
を意図する。しかし本発明方法はこの製法に限定される
訳ではなく、他に次の2種類の方法つまり酸化性シール
ガスの使用及び酸化物溶射粒子の使用による酸化物生成
方法を含んでいる。
【0017】粗面化した基材表面に通常の溶射条件に従
って、金属チタン粉末や線材をアルゴンとヘリウムの混
合ガスをプラズマガスとして溶射する。その際に周囲の
シールガスを酸化性ガスとすると溶射されるチタンの一
部が酸化されて溶射チタンと酸化チタンとを含む部分酸
化物である混合溶射層が形成される。生成する酸化物量
は条件によって異なるが、例えば酸化性ガスを空気と
し、溶射チタンの粒径を30〜60μmとすると、溶射チタ
ンの20〜30%が酸化チタンに変換され、70〜80%の溶射
チタンと30〜20%の酸化チタンとを含む部分酸化物であ
る混合溶射層が形成される。酸素の含有量を50%程度に
高めると酸化物量も50%程度まで上昇する。しかし酸化
チタン量を更に高めると絶縁酸化物が形成され導電性が
損なわれる恐れがあり、かつ爆発的に酸化が進行する危
険があるため、シールガス中の酸素含有量は最大50%程
度とする。
【0018】又溶射物として前述の金属チタン粒子又は
線材だけでなく、酸化チタン粉末又は線材を混合し、同
様の溶射条件で溶射すると、所定の割合で金属チタンと
酸化チタンを含む部分酸化物である混合溶射層が形成さ
れる。なお例えば耐ハロゲン性を向上させる等の目的で
部分酸化物中に少量のタンタルやニオブを添加すること
が望ましいことがある。その場合にこの酸化物粉末を溶
射粉末の一部として使用する方法では各金属同士及び溶
射金属と溶射酸化物との割合を所定値に設定できるため
非常に好都合であり、幅広い用途に本発明を適用するこ
とが可能になる。
【0019】基材表面に導電性酸化物のみから成る被覆
層を形成した電極基体に、例えば酸化イリジウムを含む
電極物質の被覆を形成して電極とし、該電極を酸水溶液
中で陽極として電解を行うと、酸素発生と同時に酸素イ
オンが電極内に拡散し、基材と電極被覆間に不働態酸化
物を形成して通電不能になる。前述の本発明の電極基体
では基材上に溶射により形成された溶射層が部分的に酸
化物に変換されこの部分酸化物が極めて有効に前記酸素
イオンの移動を防止し不働態化を遅らせる。これにより
実質的な電極寿命が極めて長くなる。
【0020】又本発明に係わる電極基体はフッ化物イオ
ンを含有する浴中においても金属溶射層のみを有する電
極基体と比較すると、陽極として使用した場合に最低3
倍程度の寿命の延びが期待できる。これは前記部分酸化
物の形成により被覆全体が導電性酸化物として機能する
ためと推測される。更に逆方向の電流を流した場合にも
最低2倍程度の寿命の伸びが見られ、逆電流に対する耐
性を有することも判る。
【0021】
【実施例】次に本発明による電極基体の製造の実施例を
記載するが、該実施例は本発明を限定するものではな
い。
【0022】
【実施例1】縦100 mm、横100 mm、厚さ3mmの市
販のJIS第2種の純チタン板を基材として、その表面
をサンドブラスト処理して表面組織を破壊した後、マッ
フル炉中600 ℃、2時間焼鈍を行った。このチタン表面
のグレインサイズはJISNo.6相当であった。このチタ
ン板を85℃の20%の塩酸水溶液中で2時間酸洗し粒界腐
食による表面の粗面化を行った。表面の粗度はRmax
約150 μmであった。
【0023】プラズマガスとしてアルゴンとヘリウムを
70:30に混合したガスを使用しシールガスとして空気を
吹き付けながら、試料表面に粒径が40〜60μmのチタン
金属粉末を溶射厚が平均で100 μmとなるようにプラズ
マ溶射しかつ還元性雰囲気中で冷却した。生成したプラ
ズマ溶射試料の表面粗度はRmax =180 μm、Ra =15
μmであった。該試料の表面は淡青色から濃青色を呈
し、酸化チタンの存在を示唆していた。X線回折により
溶射層の状態を観察したところ、チタン金属約80に対し
ルチル型酸化チタンが約20の割合で存在した。その他に
同定できない幾つかの回折線が見られたが、これらは低
次の酸化物であると考えられる。
【0024】前記試料の表面に金属ペーストを塗布し、
これを電極として層の厚さ方向の抵抗を測定したとこ
ろ、約4×10-4Ωcmであり、金属チタンと比較して導
電性を有するものの電気抵抗は僅かに高かった。この試
料に、イリジウム:タンタル=60:40(モル比)から成
る電極物質を含む塗布液を塗布し530 ℃で焼き付けた。
これを10回繰り返し、被覆量が8g−イリジウム/m2
である電極試料とした。銅ワイヤ切断器を使用して該電
極試料から20×40mmの電解用試料を切り出し電解試験
を行った。電解は60℃の150 g/リットル−硫酸ナトリ
ウム+100 g/リットル−硫酸の水溶液中で行い、約16
0A/dm2 の電流密度で正方向に2分、逆方向に1分の
インターバルで正電流及び逆電流を流した。2000時間経
過後でも安定な電解を継続することができた。
【0025】
【比較例1】溶射時のシールガスを使用せず、減圧プラ
ズマ法で溶射を行い酸化物が全く形成されないようにし
たこと以外は実施例1と同様にして溶射を行い、かつ電
極物質の形成及び電解試験を行った。本比較例の酸化物
を含まない電極試料では、350 時間で電圧の上昇が始ま
り、約1600時間後には通電不能になった。
【0026】
【実施例2】実施例1と同じチタン基材を使用し、平均
粒径1.2 mmのアルミナサンドを使用してブラスト掛け
を行った。その結果表面の粗度はRmax =150 μm、R
a =15μmであった。このチタン基材を超音波洗浄器を
使用しアセトンで脱脂した。この表面に粒度範囲40〜70
μmのチタン金属にその10%相当の同じ粒度の精製した
ルチル鉱(酸化チタン)を混合したものを実施例1と同
じ条件で溶射して試料とした。シールガスはアルゴンと
酸素を1:1で混合した混合ガスを使用した。
【0027】これにより被覆厚が平均80〜120 μmで表
面粗度がRmax 160 μmである濃青色の溶射層が得られ
た。X線回折の結果からチタン:酸化チタン=1:1で
あることが判った。なお酸化チタンは主としてルチル型
結晶層であることが判った。これは導電性があることか
らマグネリ相酸化物であると推測できる。
【0028】実施例1と同様にして溶射層の電気抵抗を
測定したところ、厚さ方向で3×10-3Ωcmであり、か
なり大きいことが判った。前記試料に実施例1と同様に
してイリジウム−タンタル相を形成して電極試料とし
た。この電極試料を、20ppmのフッ素イオンを含むよ
うにフッ化ナトリウムを15%硫酸に添加した60℃の硫酸
水溶液中で160 A/dm2 で電解したところ、1000時間経
過後も電解の継続が可能であった。
【0029】
【比較例2】比較例1で作製した電極試料を使用して実
施例2と同じ条件で電解試験を行い、金属のみを溶射層
として含む試料のフッ素イオンに対する耐性を試験し
た。電解開始後360 時間で電圧が上昇し始め、390 時間
で溶射層が剥離し、通電不能になった。
【0030】
【実施例3】シールガスとして空気を使用せず、かつ冷
却を酸化性雰囲気(大気)中で行ったこと以外は実施例
1と同一条件で基材上に溶射層及び電極物質を形成して
電極試料を作製し、かつ電極試験を行った。溶射層が形
成された試料表面は淡青色から濃青色を呈し、酸化チタ
ンの存在を示唆していた。又電解開始後、1000時間経過
しても電圧上昇がなく、電解を継続できた。
【0031】
【発明の効果】本発明は、予め粗面化した導電性金属基
材上に、金属チタン及び酸化チタンとを含む部分酸化物
である厚さ50から200 μmの溶射層を形成したことを特
徴とする電解用電極基体である。本発明に係わる電極基
体は、金属チタンと酸化チタンを含む溶射層を有し、こ
の電極基体に電極物質を被覆して電極として電解に使用
すると、前述の部分的に酸化物に変換された溶射層が、
電解時に陽極で発生する酸素イオンの移動を防止し不働
態化を遅らせる。これにより実質的な電極寿命が極めて
長くなる。
【0032】又前記部分酸化物は酸素不足により溶射層
が導電性酸化物となり、その結果良好な耐ハロゲン性及
び逆電流耐性が得られる。又本発明に係わる電極基体の
第1の製造方法では、部分酸化物から成る溶射層の形成
が金属チタン粉末や線材の溶射を酸化性雰囲気中で行う
ことにより達成される。溶射雰囲気に存在する空気等の
酸化性ガスが金属チタンの一部を酸化チタンに変換して
部分的に酸化された溶射層が得られ、該溶射層は上述し
た通り酸素イオンの移動を防止して電極の長寿命化と、
その導電性による良好な耐ハロゲン性及び逆電流耐性を
有している。
【0033】又本発明に係わる電極基体の第2の製造方
法では、溶射に使用する金属チタン粉末や線材に酸化チ
タン粉末や線材を混合させることにより前述の部分酸化
物を含む溶射層を形成する。溶射粉末又は線材中に金属
チタンと酸化チタンが含まれることから生成する溶射層
も当然にこれらの混合物である部分酸化物から成り、該
溶射層は上述した通りの機能を有する。
【0034】本発明に係わる電極基体の第3の製造方法
では、溶射層形成後の冷却を酸化性雰囲気中で行うこと
により、この冷却時に金属チタンのみから成る溶射層の
一部を酸化して部分酸化物を形成する。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 予め粗面化した導電性金属基材上に、金
    属チタン及び酸化チタンとを含む部分酸化物である厚さ
    50から200 μmの溶射層を形成したことを特徴とする電
    解用電極基体。
  2. 【請求項2】 予め粗面化した導電性金属基材上に、金
    属チタンを酸化性雰囲気中で溶射することにより、溶射
    チタンと酸化チタンとを含む部分酸化物である厚さ50か
    ら200 μmの溶射層を形成することを特徴とする電解用
    電極基体の製造方法。
  3. 【請求項3】 予め粗面化した導電性金属基材上に、金
    属チタン及び酸化チタンを溶射することにより、溶射チ
    タンと酸化チタンとを含む部分酸化物である厚さ50から
    200 μmの溶射層を形成することを特徴とする電解用電
    極基体の製造方法。
  4. 【請求項4】 予め粗面化した導電性金属基材上に、金
    属チタンを溶射しかつ酸化性雰囲気中で冷却することに
    より、溶射チタンと酸化チタンとを含む部分酸化物であ
    る厚さ50から200 μmの溶射層を形成することを特徴と
    する電解用電極基体の製造方法。
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